(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188983
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/34 20090101AFI20221215BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20221215BHJP
H04W 52/06 20090101ALI20221215BHJP
【FI】
H04W52/34
H04W84/12
H04W52/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097302
(22)【出願日】2021-06-10
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】相馬 朝康
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067GG08
5K067LL11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】Coordinated Spatial Reuseにおいて、Sharing APがOBSS APの送信電力を適切に決定できる通信装置を提供する。
【解決手段】無線通信ネットワークにおいて、アクセスポイントAPは、IEEE802.11規格で規定されたCoordinated Spatial Reuseを実行する場合に、他のアクセスポイントの情報を取得し、当該情報と、パワーマネジメントモードをアクティブモードにする指示とを、接続されたステーションに通知する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE802.11規格で規定されたアクセスポイントとして動作する通信装置であって、
IEEE802.11規格で規定されたCoordinated Spatial Reuseを実行する場合に、他のアクセスポイントの情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された情報と、パワーマネジメントモードをアクティブモードにする指示とを、前記通信装置に接続されたステーションに通知する通知手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通知手段は、IEEE802.11規格で規定されたMeasurement announcementフレームを用いて、前記情報及び前記指示を通知することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
IEEE802.11規格で規定されたステーションとして動作する通信装置であって、
IEEE802.11規格で規定されたCoordinated Spatial Reuseを実行する場合に、前記通信装置と接続されたアクセスポイントから、他のアクセスポイントの情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって前記情報を受信した場合に、パワーマネジメントモードをアクティブモードに設定する設定手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
前記受信手段は、IEEE802.11規格で規定されたMeasurement announcementフレームを受信し、
前記設定手段は、前記Measurement announcementフレームに含まれたパワーマネジメントモードの情報に基づいて、前記通信装置のパワーマネジメントモードをアクティブモードに設定することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記設定手段によって前記通信装置のパワーマネジメントモードをアクティブモードに設定した後、前記他のアクセスポイントから送信されたパケットを受信し、当該受信に基づくMeasurement announcementを前記通信装置と接続されたアクセスポイントに送信する送信手段を更に有することを特徴とする請求項3又は4に記載の通信装置。
【請求項6】
IEEE802.11規格で規定されたアクセスポイントの通信方法であって、
IEEE802.11規格で規定されたCoordinated Spatial Reuseを実行する場合に、他のアクセスポイントの情報を取得する取得工程と、
前記取得された情報と、パワーマネジメントモードをアクティブモードにする指示とを、前記アクセスポイントに接続されたステーションに通知する通知工程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項7】
IEEE802.11規格で規定されたステーションの通信方法であって、
IEEE802.11規格で規定されたCoordinated Spatial Reuseを実行する場合に、接続されたアクセスポイントから、他のアクセスポイントの情報を受信する受信工程と、
前記情報を受信した場合に、パワーマネジメントモードをアクティブモードに設定する設定工程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1から5の何れか1項に記載の通信装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の発展とともにインターネット使用量が年々増加しており、需要の増加に応えるべく様々な通信技術の開発が進められている。中でも無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)技術は、無線LAN端末によるパケットデータ、音声、ビデオなどのインターネット通信におけるスループット向上を実現しており、現在も様々な技術開発が盛んに行われている。
【0003】
無線LAN技術の発展において、無線LAN技術の標準化機構であるIEEEによる数多くの標準化作業が重要な役割を果たしており、WLAN通信規格の一つとして、IEEE802.11シリーズが知られている。ここでIEEEは、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略である。なお、WLANとはWireless Local Area Networkの略である。IEEE802.11シリーズ規格としては、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax規格などの規格がある。
【0004】
特許文献1には、IEEE802.11ax規格ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access、直交周波数分割多元接続)による無線通信を実行することが開示されている。IEEE802.11ax規格では、OFDMAによる無線通信を実行することで、高いピークスループットを実現している。
【0005】
近年、IEEE802.11シリーズの新たな規格として、IEEE802.11be規格の策定が検討されている。IEEE802.11beでは、IEEE802.11axと同様のOFDMAの採用に加え、Spatial Reuseを用いることによる周波数の利用効率を向上させるための技術検討が行われている。ここで、Spatial Reuseのうち、ひとつのAPがその他のAPの送信電力を決定するSpatial ReuseをCSR(Coordinated Spatial Reuse)と呼ぶ。
【0006】
通常、無線LANシステムでは2つ以上の通信が衝突することを避けるため、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)が採用されている。CSRは、お互いの通信が影響し合わないように無線LAN機器の送信電力を調整することで同時通信が可能になり、周波数利用効率を高めることができる。CSRにおいて、Sharing APがOBSS APの送信電力を決定する方法が検討されている。具体的には、Sharing APが、自装置に接続されているSTAとのダウンリンクの受信感度と、そのSTAとOBSS APとの間のパスロスとから、OBSS APの送信電力を決定する。ここでOBSSとは、Overlapping Basic Service Setの略である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CSRにおいてSharing APがOBSS APの送信電力を決定するためには、Sharing APに接続されたSTAが、OBSS APから送信電力情報を含むパケットを受信することで、STAとOBSS APとの間のパスロスを算出する。しかし、STAのパワーマネジメントモードがPower Save mode(PSmode)である場合は、決まったタイミングでのみダウンリンク通信を行うため、STAがOBSS APからのパケットを受信できず、パスロスを算出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の通信装置は、IEEE802.11規格で規定されたアクセスポイントとして動作する通信装置であって、IEEE802.11規格で規定されたCoordinated Spatial Reuseを実行する場合に、他のアクセスポイントの情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された情報と、パワーマネジメントモードをアクティブモードにする指示とを、前記通信装置に接続されたステーションに通知する通知手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の通信装置は、IEEE802.11規格で規定されたステーションとして動作する通信装置であって、IEEE802.11規格で規定されたCoordinated Spatial Reuseを実行する場合に、前記通信装置と接続されたアクセスポイントから、他のアクセスポイントの情報を受信する受信手段と、前記受信手段によって前記情報を受信した場合に、パワーマネジメントモードをアクティブモードに設定する設定手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
CSRにおいて、Sharing APがOBSS APの送信電力を適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】AP及びSTAのハードウェア構成例を示す図。
【
図4】Measurement announcementフレームの構成例を示す図。
【
図5】Neighbor Report elementの構成を示す図。
【
図6】Measurement Request elementの構成例を示す図。
【
図7】APにより実行される処理を示すフローチャート。
【
図9】Measurement Report elementの構成例を示す図。
【
図10】STAにより実行される処理を示すフローチャート。
【
図11】APにより実行される処理を示すフローチャート。
【
図13】STAにより実行される処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【実施例0014】
(実施例1)
(ネットワーク構成)
図1は、本実施形態における無線通信ネットワークの構成例を示す。
【0015】
無線通信ネットワーク101は、IEEE802.11be規格に準拠する通信装置である1つのアクセスポイント(AP102)と、1つ以上のステーション(STA103)とを含んで構成される。同様に無線通信ネットワーク104は、IEEE802.11be規格に準拠する通信装置である1つのアクセスポイント(AP105)と1つ以上のステーション(STA106)とを含んで構成される。各通信装置は、2.4GHz帯、5GHz帯、および/または6GHz帯の周波数帯において通信することができる。尚、各通信装置が使用する周波数帯は、これに限定されるものではなく、例えば60GHz帯のように、異なる周波数帯を使用してもよい。また、各通信装置は、20MHz、40MHz、80MHz、160MHz、および320MHzの帯域幅のいずれかを使用して通信することができる。AP102、AP105とSTA103、STA106はそれぞれ、OFDMA通信を実行することで、複数のユーザの信号を多重化し、マルチユーザ(MU、Multi User)通信を実現することができる。OFDMAとは、Orthogonal Frequency Division Multiple Access(直交周波数分割多元接続)の略である。また、AP102、AP105とSTA103、STA106はMIMO(Multiple-Input And Multiple-Output)通信を実行できてもよい。この場合、AP102、AP105とSTA103、STA106は複数のアンテナを有し、一方がそれぞれのアンテナから異なる信号を同じ周波数チャネルを用いて送る。受信側は、複数のアンテナを用いて複数ストリームから到達したすべての信号を同時に受信し、各ストリームの信号を分離し、復号する。このように、MIMO通信を実行することで、AP102、AP105とSTA103、STA106は、MIMO通信を実行しない場合と比べて、同じ時間でより多くのデータを通信することができる。また、AP102、AP105はそれぞれ、STA103、STA106と、IEEE802.11シリーズの規格で規定された、アソシエーションプロセス等の接続処理を介して無線リンクを確立することができる。なお、
図1に示す無線通信ネットワークの構成は説明のための例に過ぎず、例えば、さらに広範な領域に多数のbe機器、ax機器及びレガシー機器(IEEE802.11a/b/g/n/ac規格に従う機器)を含むネットワークが構成されてもよい。また、AP102、STA103は、IEEE802.11axより前の規格であるレガシー規格(IEEE802.11a/b/g/n/ac規格)に対応していてもよい。また、Bluetooth(登録商標)、NFC、UWB、Zigbee、MBOAなどの他の通信規格に対応していてもよい。なお、UWBはUltra Wide Bandの略であり、MBOAはMulti Band OFDM Allianceの略である。なお、OFDMはOrthogonal Frequency Division Multiplexingの略である。また、NFCはNear Field Communicationの略である。UWBには、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、Winetなどが含まれる。また、有線LANなどの有線通信の通信規格に対応していてもよい。
【0016】
AP102、AP105の具体例としては、無線LANルーターやPC、スマートフォンなどが挙げられるが、これらに限定されない。AP102、AP105は、他の通信装置とOFDMA通信を実行することができる通信装置であればよい。また、AP102、AP105は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる無線チップなどの情報処理装置であってもよい。また、STA103、STA106の具体的な例としては、カメラ、タブレット、スマートフォン、PC、携帯電話、ビデオカメラなどが挙げられるが、これらに限定されない。STA103、STA106は、他の通信装置とOFDMA通信を実行することができる通信装置であればよい。STA103、STA106は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる無線チップなどの情報処理装置であってもよい。また、
図1では1台のAPと1台のSTAからなる複数のネットワークによって構成されているが、ネットワークの数、APおよびSTAの台数はこれに限定されない。無線通信ネットワーク101と104は隣接して配置されており、CSRを実行するAPがSharing AP、Sharing APから見たOBSS APがShared APとなる。本実施例においてはAP102がSharing APとし、AP102と接続されているSTA103とOBSS AP105との間のパスロスを測定する手順におけるAP102とSTA103の機能構成及び処理について説明する。なお、AP105、STA106も同様の機能構成及び処理機能を有し、AP105がSharing APとなった場合にも同様の効果が得られる。さらに、これ以外の複数のネットワークが存在した場合も同様である。なお、無線チップなどの情報処理装置は、生成した信号を送信するためのアンテナに接続される。
【0017】
(AP及びSTAのハードウェア構成)
図2に、AP102、AP105のハードウェア構成例を示す。
【0018】
記憶部201は、ROMやRAM等の1以上のメモリにより構成され、後述する各種動作を行うためのコンピュータプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ROMはRead Only Memoryの、RAMはRandom Access Memoryの夫々略である。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。また、記憶部201が複数のメモリ等を備えていてもよい。
【0019】
通信部206は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信の制御を行う。また、通信部206は、IEEE802.11be規格に加えて、他のIEEE802.11規格シリーズに準拠した無線通信の制御や、有線LAN等の有線通信の制御を行ってもよい。通信部206は、アンテナ207を制御して、制御部202によって生成された無線通信のための信号の送受信を行う。AP102、AP105は、通信部206を複数有していてもよい。通信部206を複数有するAP102、AP105は、マルチリンク通信において複数のリンクを確立する場合に、1つの通信部206あたり少なくとも1つのリンクを確立する。あるいは、AP102、AP105は、1つの通信部206を用いて複数のリンクを確立してもよい。この場合、通信部206は時分割で動作する周波数チャネルを切り替えることで、複数のリンクを介した通信を実行する。なお、AP102、AP105が、IEEE802.11be規格に加えて、NFC規格やBluetooth規格等に対応している場合、これらの通信規格に準拠した無線通信の制御を行ってもよい。また、AP102、AP105が複数の通信規格に準拠した無線通信を実行できる場合、夫々の通信規格に対応した通信部とアンテナを個別に有する構成であってもよい。AP102、AP105は通信部206を介して、画像データや文書データ、映像データ等のデータをそれぞれSTA103、STA106と通信する。なお、アンテナ207は、通信部206と別体として構成されていてもよいし、通信部206と合わせて一つのモジュールとして構成されていてもよい。
【0020】
アンテナ207は、2.4GHz帯、5GHz帯、および6GHz帯における通信が可能なアンテナである。本実施形態では、AP102は1つのアンテナを有するとしたが、周波数帯ごとに異なるアンテナを有していてもよい。また、AP102、AP105は、アンテナを複数有している場合、各アンテナに対応した通信部206を有していてもよい。
【0021】
なお、STA103、STA106は、AP102と同様のハードウェア構成を有する。
【0022】
(AP102の機能構成)
図3は、AP102の機能構成例を示す。AP102は、OBSS AP情報取得部301、フレーム生成部302、フレーム送受信部303を含む。これらはソフトウェアによって構成されてもよいし、その一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよい。OBSS AP情報取得部301はOBSS AP105からのビーコンやマネジメントフレームを受信することでCSRの対象となるOBSS AP105のCapabilityを取得する。フレーム生成部302は、Measurement announcementフレームを生成する。Measurement announcementフレームはOBSS AP105の情報、Measurementの要求内容、Non-PSmode(Active mode)への変更通知を含むフレームである。Measurement announcementフレームのフレームフォーマットの一例を
図4に示す。本実施例におけるMeasurement announcementフレームは、Frame Controlフィールド内のうち、ReservedとなっているControl Frameを用い、新たなType、Subtypeを作成する。さらに、Power management field415のビットを1とすることでSTAにPower Save modeにならないように通知する。また、フレームボディには
図5に示すようにIEEE802.11で定義されているNeighbor Report elementを含む。これによりOBSS AP情報取得部301で取得した、CSRに参加するOBSS APの情報をSTAへ伝達する。さらに、フレームボディには
図6に示すようにパスロスのMeasurementを要求する新たなMeasurement Type605をもつMeasurement Request elementを用いる。当該elementを用いて、パスロスのMeasurement要求の内容をSTAへ伝達する。610は、Measurement Type605の一覧である。Measurement announcementフレームはManagement FrameやData Frameを用いて作成してもよい。また、OBSS APの情報及びMeasurementの要求内容は新たなElementを作成してもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0023】
フレーム送受信部303はマネジメントフレームやコントロールフレーム、データフレームの送受信を制御する。
【0024】
(AP102の処理)
続いて、上述したように構成されたAP102により実行されるCSRにおける処理について説明する。
【0025】
図7はAP102の処理を示すフローチャートである。なお、この動作フローは、AP102がCSRを実行する場合に、記憶部201に記憶されたコンピュータプログラムを制御部202が読み出し実行することで処理される。
【0026】
まず、AP102はOBSSを形成するAPからのビーコンやマネジメントフレームを受信することでCSRへ参加するOBSS APのCapabilityを取得する(S701)。続いてAP102は自BSSのSTAに対して、Measurement announcementフレームを送信する(S702)。このフレームはパスロスを測定するOBSS APの情報と、STAのパワーマネジメントモードをNon-Power Save modeに設定させる指示と、STAに対してパスロスの測定を開始させる指示とを含む。ここで、Non-Power Save modeはアクティブモードを指す。Measurement announcementフレームを送信した後、AP102は、パスロス測定結果を示すMeasurement ReportをSTAから受信する。S703でMeasurement Reportが受信できたかどうか判定する。S703でMeasurement announcementフレームを送信した後に一定時間経過してもMeasurement Reportを受信できず、パスロス情報を取得できなかった場合はS702に戻る。S703において、Measurement Reportを受信し、パスロス情報を取得できた場合はAP102がYesと判定し、動作を終了する。
【0027】
(STA103の機能構成)
図8は、STA103の機能構成例を示す。STA103はフレーム送受信部801、動作モード管理部802、パスロス算出部803、フレーム生成部804を含む。これらはソフトウェアによって構成されてもよいし、その一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよい。
【0028】
フレーム送受信部801はマネジメントフレームやコントロールフレーム、データフレームの送受信を制御する。
【0029】
動作モード管理部802は受信した
図4に示すフレームのPower management field415のビットを参照し、1のときはNon-Power Save mode、0のときはPower Save modeにパワーマネジメントモードを設定する。ここで、Non-Power Save modeはアクティブモードであることを示す。
【0030】
パスロス算出部803はOBSS APからのパケットを受信し、受信したパケットから得られる送信パワー情報と受信感度から自身とOBSS APとの間のパスロスを計算する。パスロスは送信パワーと受信感度の差を取ることで求めることができる。
【0031】
フレーム生成部804ではパスロス算出結果をAPに伝達するためのMeasurement Reportを生成する。Measurement Reportは、少なくとも、パスロスを測定した対象のOBSS APのBSSIDと、測定したパスロス値を示す情報を含む。それらを伝達するために
図9に示すMeasurement Report elementのReservedとなっているMeasurement Typeに、パスロスを測定するための新たなMeasurement Typeを作成する。測定対象のOBSS APのBSSIDとパスロス算出部で求めたパスロス値をそれぞれBSSID field907とPathloss field908に格納する。909は、Measurement Type905の一覧である。ただし、パスロス測定結果を伝達するためのフレームはMeasurement Report element以外のelementでもよく、本発明はこれに限定されない。
【0032】
(STA103の処理)
続いて上述したように構成されたSTA103により実行される処理について説明する。
図10はSTA103の処理を示すフローチャートである。なお、この動作フローは、STA103がCSRを実行する場合に、記憶部201に記憶されたコンピュータプログラムを制御部202が読み出し実行することで処理される。まず、STA103は接続しているAPから送信されたMeasurement announcementを受信する(S1001)。STA103は受信したMeasurement announcementで通知された情報に従ってパワーマネジメントモードをNon-Power Save modeに設定し、パスロス測定を開始する(S1002)。STA103はS1002で受信したMeasurement announcementに含まれるOBSS AP情報に示される測定対象のAPからのパケットの受信を開始し、S1003で送信電力情報を含むOBSS APのパケットの受信可否を判定する。STA103が所定時間内にOBSS APのパケットを受信できず、S1003でNoと判定した場合は再度OBSS APのパケットの受信を試みる。STA103がOBSS APのパケットを受信し、S1003でYesと判定した場合はS1004の処理へ進む。S1004で対象APとの間のパスロスを算出し、算出値をMeasurement Reportとして接続されているAPへ送信する。S1004でMeasurement Reportを送信したらSTA103は動作を終了する。
【0033】
本実施形態によると、上述するようにAP102がSTA103へNon-Power Save modeとなるように通知することでSTA103がOBSS APからのパケットを受信することを可能にする。その結果、CSRにおいてOBSS APの送信電力を決定する上で必要なパスロス情報を取得することができる。
【0034】
(実施例2)
実施例1ではAP102はMeasurement announcementフレーム内でPower management fieldにビットを立てることで、明示的にSTA103にNon-Power Save modeへの変更を通知した。本実施形態では、AP102がPower management fieldを用いて通知せずともSTA103がNon-Power Save modeになることでAP側の実装をよりシンプルにすることができる。さらに、Power management fieldを使用しないため、Measurement announcementをマネジメントフレームやコントロールフレーム、データフレーム等に含めてSTAへ通知するなどの実装形態をとることも可能になる。さらに、OBSS APからのパケットを受信できず、パスロスを算出できない場合にパスロスを所定値として扱うことでOBSS APからのパケットがSTA103で受信できないような環境にも対応することができる。また、STAがパスロスの測定を完了した後、パワーマネジメントモードを変更前の状態に戻す処理を加えることで、消費電力を最小限に抑えることができる。本実施例では実施例1と同様の効果に加えて上述した効果が得られる実施例について説明する。
【0035】
(APの機能構成)
図3に示すAP102の機能構成において実施例1と機能の異なる機能部について説明し、同様の機能である機能部については説明を省略する。
【0036】
フレーム生成部302は、実施例1と同じように
図4に示すMeasurement announcementフレームを生成する。しかし、本実施例ではMeasurement announcementフレームのPower management fieldは使用せず、STAへ明示的にパワーマネジメントモードの変更を通知しない。従って本実施例におけるMeasurement announcementフレームは実施例1と同様のNeighbor Report elementとMeasurement Request elementを含むフレームとなる。また、Measurement announcementを
図4に示すフレームを用いずにNeighbor Report elementとMeasurement Request elementと同様の情報を含むelementを新たに作成してもよい。作成したelementを他のマネジメントフレームやコントロールフレーム、データフレーム等に含めてもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
(AP102の処理)
図11は本実施例におけるAP102の動作を示すフローチャートである。基本処理は実施例1と同様であり、本実施例のAPの機能構成で説明したようにS1101で送信するMeasurement announcementの内容が異なるのみである。
【0038】
(STAの機能構成)
図12は、本実施例のSTAの機能構成である。STA103の機能構成において実施例1における機能構成(
図8)と同一もしくは同様の動作をする機能部には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0039】
実施例1では、
図8に示す動作モード管理部802は、受信した
図4に示すフレームのPower management field415のビットを監視し、当該ビットによりパワーマネジメントモードを変更した。本実施例では、受信したフレームのフィールド413、414からMeasurement announcementを受信したと判断した際に自らのパワーマネジメントモードをNon-Power Save modeに設定する。当該動作モードの管理は、動作モード管理部1201で管理される。従って、STAはAPから明示的にパワーマネジメントモードの変更通知を受けずとも自らパワーマネジメントモードを変更する。また受信したフレームのMeasurement Request elementとNeighbor Report elementのElementIDからMeasurement announcementを受信したと判断した際に動作モードを変更してもよい。
【0040】
(STA103の処理)
図13は、本実施例におけるSTA103の動作を示すフローチャートである。
図13のフローチャートにおいて、実施例1とフローチャート(
図10)と同一もしくは同様の動作をする処理には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0041】
本実施例においてSTA103はS1001において、Measurement announcementを受信する。S1001において、Measurement announcementを受信すると、パワーマネジメントモードをNon-Power Save modeにし、パスロスの測定を開始する(S1301)。S1003で送信電力情報を含むOBSS APのパケットの受信可否を判定する。STA103が所定時間内にOBSS APのパケットを受信できた場合、STA103はS1003でYesと判定し、S1004の処理に進む。S1004ではSTA103はパスロスを算出し、Measurement ReportをAP102へ送信する。STA103が所定時間内にOBSS APのパケットを受信できなかった場合、S1003でSTA103はNoと判定し、S1302の処理に進む。S1302ではSTA103がOBSS APのパケットの受信を試みた回数をカウントする。試行回数が所定回数未満である場合は再度OBSS APのパケットの受信を試みる。試行回数が所定回数以上である場合は、STA103はYesと判定し、S1303の処理へ進む。S1303ではパスロスを算出せずに所定値としてMeasurement ReportをAP102に送信する。ここで所定値のパスロスとは、
図9に示すMeasurement Reportのパスロス値を格納するPathlossフィールド908で表現可能な値のうち最も大きい値とする。S1004またはS1303の処理の後、S1301で変更したパワーマネジメントモードをもとの状態に戻してSTA103は処理を終了する。
【0042】
本実施形態によると、上述したAP102とSTA103の動作により、STA103はAP102から明示的なパワーマネジメント変更通知を受信せずとも自らパワーマネジメントモードを変更し、実施例1と同様の効果が得られる。加えて、OBSS APのパケットを受信できないような環境にも対応し、電力消費を最小限に抑えることができる。
【0043】
(その他の実施例)
上述の実施例は一例であり本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではなく、本発明には上述の実施例の他にも各種の変形例が含まれる。CSR(Coordinated Spatial Reuse)とは、Spatial Reuseの一方法であり、ひとつのAPがその他のAPの送信電力を決定する方法を含む概念である。また、上述の実施例では、無線LANの規格としてIEEE802.11be規格を例に説明したが、IEEE802.11シリーズのレガシー規格、後継規格を含む各種の規格(IEEE802.11x)や、同種の他の無線規格にも適用可能である。
【0044】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。