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特開2022-188991熱硬化性樹脂組成物、接着剤、接着剤ワニス、接着フィルム、及び、硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188991
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、接着剤、接着剤ワニス、接着フィルム、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221215BHJP
   C08K 3/014 20180101ALI20221215BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20221215BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20221215BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221215BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/014
C08K5/3415
C08G59/40
C09J201/00
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097310
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠
(72)【発明者】
【氏名】脇岡 さやか
(72)【発明者】
【氏名】北條 健太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002BG021
4J002CC031
4J002CC291
4J002CD001
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD131
4J002CD141
4J002CM021
4J002CM041
4J002CM042
4J002CP031
4J002EU026
4J002EU177
4J002EU187
4J002FD057
4J002FD142
4J002FD146
4J002GF00
4J002GJ01
4J036AA01
4J036AD08
4J036DB10
4J036DB22
4J036DC44
4J036DC48
4J036EA07
4J036FB14
4J036JA05
4J036JA06
4J036JA08
4J040EC061
4J040HC20
4J040HC25
4J040JB02
4J040KA16
4J040KA20
4J040LA08
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】UVレーザーによるビア加工性、及び、被着体を実装する際の実装性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供する。また、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤、接着剤ワニス、及び、接着フィルム、並びに、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物を提供する。
【解決手段】硬化前又は硬化後における光吸収スペクトルの極大波長が320nm以上380nm以下であり、かつ、常温から150℃まで10℃/minの昇温速度で加熱した際の60℃から150℃までの温度領域での最低溶融粘度が20Pa・s以上2000Pa・s以下である熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化前又は硬化後における光吸収スペクトルの極大波長が320nm以上380nm以下であり、かつ、常温から150℃まで10℃/minの昇温速度で加熱した際の60℃から150℃までの温度領域での最低溶融粘度が20Pa・s以上2000Pa・s以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化前又は硬化後における波長355nmにおける吸光度が2.5以上である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
イミド骨格又はマレイミド骨格を有する化合物を含有する請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
紫外線吸収剤を含有する請求項1、2又は3記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体100重量部に対して0.5重量部以上である請求項4記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
硬化物のポリイミドに対する初期接着力が3.4N/cm以上であり、かつ、200℃で100時間保管した後の硬化物のポリイミドに対する接着力が3.4N/cm以上である請求項1、2、3、4又は5記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱硬化性樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱硬化性樹脂組成物と溶剤とを含有する接着剤ワニス。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱硬化性樹脂組成物を含む接着層を有する接着フィルム。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UVレーザーによるビア加工性、及び、被着体を実装する際の実装性に優れる熱硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤、接着剤ワニス、及び、接着フィルム、並びに、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
低収縮であり、接着性、絶縁性、及び、耐薬品性に優れるエポキシ樹脂等の硬化性樹脂は、多くの工業製品に使用されている。特に電子機器用途では、短時間の耐熱性に関するはんだリフロー試験や繰り返しの耐熱性に関する冷熱サイクル試験において良好な結果が得られる熱硬化性樹脂組成物が多く用いられている。例えば、特許文献1、2には、エポキシ樹脂と硬化剤としてイミド化合物とを含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0003】
電子部品等の接着剤として用いられる熱硬化性樹脂組成物では、ポリイミドフィルム等の基材への塗布後又は硬化後にUVレーザーによってビア(貫通孔)を形成する加工を施されることがあるため、ビア加工性の良好な熱硬化性樹脂組成物が求められている。しかしながら、従来の熱硬化性樹脂組成物は、UVレーザーによるビア加工に長時間を要する等してビア加工性に劣るものであったり、ビア加工性には優れるものであっても、被着体を熱圧着により実装する際にビア内に樹脂のしみ出しが生じる等して実装性に劣るものであったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-270852号公報
【特許文献2】特表2004-502859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、UVレーザーによるビア加工性、及び、被着体を実装する際の実装性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤、接着剤ワニス、及び、接着フィルム、並びに、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、硬化前又は硬化後における光吸収スペクトルの極大波長が320nm以上380nm以下であり、かつ、常温から150℃まで10℃/minの昇温速度で加熱した際の60℃から150℃までの温度領域での最低溶融粘度が20Pa・s以上2000Pa・s以下である熱硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、従来の熱硬化性樹脂組成物においてビア加工性に劣るものは、硬化前又は硬化後における光吸収スペクトルの極大波長がUVレーザーの波長と大きく離れているため、ビア加工に長時間を要する等していると考えた。また、本発明者らは、実装性には加熱時の熱硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度が大きく寄与していると考えた。そこで、本発明者らは、熱硬化性樹脂組成物における、硬化前又は硬化後における光吸収スペクトルの極大波長をUVレーザーの波長を考慮した特定の範囲内となるようにした上で、常温から150℃までの温度範囲で加熱した際の60℃から150℃までの温度領域での最低溶融粘度を特定の範囲内となるようにすることを検討した。その結果、UVレーザーによるビア加工性、及び、被着体を実装する際の実装性の両方に優れる熱硬化性樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化前又は硬化後における光吸収スペクトルの極大波長の下限が320nm、上限が380nmである。上記光吸収スペクトルの極大波長がこの範囲であることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、UVレーザーによるビア加工性に優れるものとなる。上記光吸収スペクトルの極大波長の好ましい下限は325nm、より好ましい下限は330nmであり、好ましい上限は375nm、より好ましい上限は370nmである。
なお、上記熱硬化性樹脂組成物の光吸収スペクトルの極大波長は、硬化前、硬化後の少なくともいずれかにおいて320nm以上380nm以下であればよいが、硬化前及び硬化後のいずれも320nm以上380nm以下であることが好ましい。また、上記光吸収スペクトルの極大波長が複数存在する場合は、少なくとも1つの極大波長が320nm以上380nm以下であればよい。
上記光吸収スペクトルは、分光光度計を用いて測定することができる。上記分光光度計としては、例えば、U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)等が挙げられる。
【0009】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、加熱した際に温度上昇に伴い溶融粘度が低下して極小値に達した後、更なる温度上昇に伴って溶融粘度が上昇する特性を示す。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、常温から150℃まで10℃/minの昇温速度で加熱した際の60℃から150℃までの温度領域での最低溶融粘度の下限が20Pa・s、上限が2000Pa・sである。上記最低溶融粘度が20Pa・s以上であることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、被着体を実装する際にしみ出しを抑制する効果に優れるものとなる。上記最低溶融粘度が2000Pa・s以下であることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、接着性に優れるものとなる。上記最低溶融粘度の好ましい下限は30Pa・s、より好ましい下限は40Pa・sであり、好ましい上限は1500Pa・s、より好ましい上限は1000Pa・sである。
なお、本明細書において上記「常温」は、5℃~35℃を意味する。
また、上記60℃から150℃までの温度領域での最低溶融粘度は、熱硬化性樹脂組成物フィルムについて、回転式レオメーターを用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/分の条件にて常温から150℃まで加熱しながら粘度測定した際の60℃から150℃までの温度領域における粘度の最も低い値として求められる。上記熱硬化性樹脂組成物フィルムは、熱硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗工し、乾燥させることにより得ることができる。上記回転式レオメーターとしては、例えば、HAAKE MARSシリーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、VAR-100(レオロジカ社製)、ARES(TAインスツルメント社製)等が挙げられる。
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化前又は硬化後における波長355nmにおける吸光度が2.5以上であることが好ましい。上記波長355nmにおける吸光度が2.5以上であることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、UVレーザーによるビア加工性により優れるものとなる。上記波長355nmにおける吸光度のより好ましい下限は3.0、更に好ましい下限は3.5である。
また、上記波長355nmにおける吸光度の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は5.0である。
なお、上記波長355nmにおける吸光度は、硬化前、硬化後の少なくともいずれかにおいて2.5以上であることが好ましいが、硬化前及び硬化後のいずれも2.5以上であることがより好ましい。
上記波長355nmにおける吸光度は、分光光度計を用いて測定することができる。上記分光光度計としては、例えば、U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)等が挙げられる。
【0011】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物のポリイミドに対する初期接着力が3.4N/cm以上であることが好ましい。上記硬化物のポリイミドに対する初期接着力が3.4N/cm以上であることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、フレキシブルプリント回路基板のカバーレイ用接着剤等に好適に用いることができる。上記硬化物のポリイミドに対する初期接着力は、4N/cm以上であることがより好ましく、5N/cm以上であることが更に好ましい。
なお、上記ポリイミドに対する初期接着力は、1cm幅に切り出した試験片について、引張試験機を用いて、25℃において剥離速度20mm/minの条件でT字剥離を行った際の剥離強度として測定することができる。上記試験片としては、厚さ20μmの熱硬化性樹脂組成物フィルムの両面に厚さ50μmのポリイミドフィルムを積層し、190℃で1時間加熱することにより得られるものが用いられ、上記初期接着力は、該試験片作製後24時間以内に測定される値を意味する。上記熱硬化性樹脂組成物フィルムは、熱硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗工し、乾燥させることにより得ることができる。上記ポリイミドとしては、カプトン200H(東レ・デュポン社製、表面粗さ0.03~0.07μm)を用いることができる。上記引張試験機としては、例えば、UCT-500(ORIENTEC社製)等が挙げられる。
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、200℃で100時間保管した後の硬化物のポリイミドに対する接着力が3.4N/cm以上であることが好ましい。上記200℃で100時間保管した後の硬化物のポリイミドに対する接着力が3.4N/cm以上であることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、耐熱接着剤に好適に用いることができる。上記200℃で100時間保管した後の硬化物のポリイミドに対する接着力は、4N/cm以上であることがより好ましく、5N/cm以上であることが更に好ましい。
なお、上記200℃で100時間保管した後の硬化物のポリイミドに対する接着力は、上述した初期接着力の測定方法と同様にして作製した試験片を200℃で100時間保管した後、25℃まで放冷し、放冷後24時間以内に上記初期接着力と同様の方法で測定される値を意味する。
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、光吸収スペクトルの極大波長、60℃から150℃までの温度領域における最低溶融粘度、波長355nmにおける吸光度、及び、硬化物のポリイミドに対する各接着力をそれぞれ上述した範囲とする方法としては、熱硬化性樹脂組成物に含まれる各構成成分の種類やその含有割合を調整する方法が好適である。
特に、構成成分の少なくともいずれかにイミド骨格又はマレイミド骨格を有する化合物を含有することにより、上記光吸収スペクトルの極大波長や波長355nmにおける吸光度を上述した範囲に調整することが容易となり、また、耐熱性を向上させることもできる。また、後述する紫外線吸収剤を含有することによっても、上記光吸収スペクトルの極大波長や波長355nmにおける吸光度を上述した範囲に調整することが容易となる。
【0014】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂と硬化剤とを含有することが好ましい。上述したように、上記光吸収スペクトルの極大波長を上述した範囲に調整することが容易となり、また、耐熱性を向上させることもできることから、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、イミド骨格又はマレイミド骨格を有する化合物を、構成成分の少なくともいずれかに含有することが好ましく、上記硬化性樹脂、上記硬化剤、及び、後述する高分子化合物の少なくともいずれかに含有することがより好ましい。
【0015】
上記硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。なかでも、上記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、これらの硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合して用いられてもよい。
また、上記硬化性樹脂は、常温でのタック性や、フィルム加工する場合等の加工性をより良好にするために、25℃において液状又は半固形状であることが好ましく、25℃において液状であることがより好ましい。
【0016】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。なかでも、粘度が低く、得られる熱硬化性樹脂組成物の常温における加工性を調整しやすいことから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
上記硬化剤としては、例えば、主鎖にイミド骨格、末端に架橋性官能基を有するイミドオリゴマー、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、チオール系硬化剤、アミン系硬化剤、シアネート系硬化剤、活性エステル系硬化剤等が挙げられる。なかでも、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物の接着性及び長期耐熱性の観点から、上記硬化剤は、上記イミドオリゴマーを含むことが好ましい。
【0018】
上記イミドオリゴマーは、上記架橋性官能基を含む構造として、下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される構造を有することが好ましい。下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される構造を有することにより、上記イミドオリゴマーは、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂との反応性及び相溶性により優れるものとなる。
【0019】
【化1】
【0020】
式(1-1)及び式(1-2)中、Aは、酸二無水物残基であり、式(1-1)中、Bは、脂肪族ジアミン残基又は芳香族ジアミン残基であり、式(1-2)中、Arは、置換されていてもよい2価の芳香族基である。
【0021】
上記酸二無水物残基は、下記式(2-1)又は下記式(2-2)で表される4価の基であることが好ましい。
【0022】
【化2】
【0023】
式(2-1)及び式(2-2)中、*は、結合位置であり、式(2-1)中、Zは、結合手、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基である。式(2-1)及び式(2-2)中における芳香環の水素原子は置換されていてもよい。
【0024】
上記式(2-1)中のZが、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基である場合、これらの基は、置換されていてもよい。
上記結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、上記結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基が置換されている場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、脂環式基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0025】
上記酸二無水物残基の由来となる酸二無水物としては、例えば、後述する式(8)で表される酸二無水物等が挙げられる。
【0026】
上記式(1-1)中のBが上記脂肪族ジアミン残基である場合の該脂肪族ジアミン残基の炭素数の好ましい下限は4である。上記脂肪族ジアミン残基の炭素数が4以上であることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物が、硬化前における可撓性及び加工性、並びに、硬化後の誘電特性により優れるものとなる。上記脂肪族ジアミン残基の炭素数のより好ましい下限は5、更に好ましい下限は6である。
また、上記脂肪族ジアミン残基及び上記脂肪族トリアミン残基の炭素数の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は60である。
【0027】
上記脂肪族ジアミン残基の由来となる脂肪族ジアミンとしては、例えば、ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミンや、直鎖若しくは分岐鎖脂肪族ジアミンや、脂肪族エーテルジアミンや、脂肪族脂環式ジアミン等が挙げられる。
上記ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミンとしては、例えば、ダイマージアミン、水添型ダイマージアミン等が挙げられる。
上記直鎖若しくは分岐鎖脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2-メチル-1,9-ノナンジアミン、2,7-ジメチル-1,8-オクタンジアミン等が挙げられる。
上記脂肪族エーテルジアミンとしては、例えば、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、3,3’-オキシビス(プロピルアミン)、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン等が挙げられる。
上記脂肪族脂環式ジアミンとしては、例えば、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
なかでも、上記脂肪族ジアミン残基は、上記ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基であることが好ましい。
【0028】
上記式(1-1)中のBが上記芳香族ジアミン残基である場合の該芳香族ジアミン残基は、下記式(3-1)又は下記式(3-2)で表される2価の基であることが好ましい。
【0029】
【化3】
【0030】
式(3-1)及び式(3-2)中、*は、結合位置であり、式(3-1)中、Yは、結合手、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基である。式(3-1)及び式(3-2)中における芳香環の水素原子は置換されていてもよい。
【0031】
上記式(3-1)中のYが、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基である場合、これらの基は、置換されていてもよい。
上記結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、上記結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基が置換されている場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、脂環式基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0032】
上記芳香族ジアミン残基の由来となる芳香族ジアミンとしては、例えば、後述する式(9)で表されるジアミンが芳香族ジアミンである場合のもの等が挙げられる。
【0033】
また、上記イミドオリゴマーは、硬化後のガラス転移温度を低下させたり、被着体を汚染し接着不良の原因となり得ることから、構造中にシロキサン骨格を有さないイミドオリゴマーであることが好ましい。
【0034】
上記イミドオリゴマーの数平均分子量は、4000以下であることが好ましい。上記イミドオリゴマーの数平均分子量が4000以下であることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物が長期耐熱性により優れるものとなる。上記イミドオリゴマーの数平均分子量のより好ましい上限は3400、更に好ましい上限は2800である。
特に、上記イミドオリゴマーの数平均分子量は、上記式(1-1)で表される構造を有する場合は900以上4000以下であることが好ましく、上記式(1-2)で表される構造を有する場合は550以上4000以下であることが好ましい。上記式(1-1)で表される構造を有する場合の数平均分子量のより好ましい下限は950、更に好ましい下限は1000である。上記式(1-2)で表される構造を有する場合の数平均分子量のより好ましい下限は580、更に好ましい下限は600である。
なお、本明細書において上記「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、JAIGEL-2H-A(日本分析工業社製)等が挙げられる。
【0035】
上記イミドオリゴマーは、具体的には、下記式(4-1)、下記式(4-2)、下記式(4-3)、若しくは、下記式(4-4)で表されるイミドオリゴマー、又は、下記式(5-1)、下記式(5-2)、下記式(5-3)、若しくは、下記式(5-4)で表されるイミドオリゴマーであることが好ましい。
【0036】
【化4】
【0037】
式(4-1)~(4-4)中、Aは、上記酸二無水物残基であり、式(4-1)、式(4-3)、及び、式(4-4)中、Aは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(4-1)~(4-4)中、Bは、上記脂肪族ジアミン残基又は上記芳香族ジアミン残基であり、式(4-3)及び式(4-4)中、Bは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(4-2)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、式(4-4)中、Wは、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換されていてもよい1価の炭化水素基である。
【0038】
【化5】
【0039】
式(5-1)~(5-4)中、Aは、上記酸二無水物残基であり、式(5-3)及び式(5-4)中、Aは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(5-1)~(5-4)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、式(5-1)及び式(5-3)中、Rは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(5-2)及び式(5-4)中、Wは、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、式(5-3)及び式(5-4)中、Bは、上記脂肪族ジアミン残基又は上記芳香族ジアミン残基である。
【0040】
上記式(4-1)~(4-4)、及び、上記式(5-1)~(5-4)中のAは、下記式(6-1)又は下記式(6-2)で表される4価の基であることが好ましい。
【0041】
【化6】
【0042】
式(6-1)及び式(6-2)中、*は、結合位置であり、式(6-1)中、Zは、結合手、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基である。式(6-1)及び式(6-2)中における芳香環の水素原子は置換されていてもよい。
【0043】
上記式(4-1)~(4-4)、並びに、上記式(5-3)及び式(5-4)中のBは、下記式(7-1)又は下記式(7-2)で表される2価の基であることが好ましい。
【0044】
【化7】
【0045】
式(7-1)及び式(7-2)中、*は、結合位置であり、式(7-1)中、Yは、結合手、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基である。式(7-1)及び式(7-2)中における芳香環の水素原子は置換されていてもよい。
【0046】
上記式(1-1)で表される構造を有するイミドオリゴマーを製造する方法としては、例えば、下記式(8)で表される酸二無水物と下記式(9)で表されるジアミンとを反応させる方法等が挙げられる。
【0047】
【化8】
【0048】
式(8)中、Aは、上記式(1-1)中のAと同じ4価の基である。
【0049】
【化9】
【0050】
式(9)中、Bは、上記式(1-1)中のBと同じ2価の基であり、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の炭化水素基である。
【0051】
上記式(8)で表される酸二無水物と上記式(9)で表されるジアミンとを反応させる方法の具体例を以下に示す。
まず、予め上記式(9)で表されるジアミンを、反応により得られるアミック酸オリゴマーが可溶な溶媒(例えば、N-メチルピロリドン等)に溶解させ、得られた溶液に上記式(8)で表される酸二無水物を添加して反応させてアミック酸オリゴマー溶液を得る。次いで、加熱や減圧等により溶媒を除去し、更に、約200℃以上で1時間以上加熱してアミック酸オリゴマーを反応させる方法等が挙げられる。上記式(8)で表される酸二無水物と上記式(9)で表されるジアミンとのモル比、及び、イミド化条件を調整することにより、所望の数平均分子量を有し、両末端に上記式(1-1)で表される構造を有するイミドオリゴマーを得ることができる。
また、上記式(8)で表される酸二無水物の一部を下記式(10)で表される酸無水物に置き換えることにより、所望の数平均分子量を有し、一方の末端に上記式(1-1)で表される構造を有し、他方の末端に下記式(10)で表される酸無水物に由来する構造を有するイミドオリゴマーを得ることができる。この場合、上記式(8)で表される酸二無水物と下記式(10)で表される酸無水物とは、同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
更に、上記式(9)で表されるジアミンの一部を下記式(11)で表されるモノアミンに置き換えることにより、所望の数平均分子量を有し、一方の末端に上記式(1-1)で表される構造を有し、他方の末端に下記式(11)で表されるモノアミンに由来する構造を有するイミドオリゴマーを得ることができる。この場合、上記式(9)で表されるジアミンと下記式(11)で表されるモノアミンとは、同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
【0052】
【化10】
【0053】
式(10)中、Arは、置換されていてもよい2価の芳香族基である。
【0054】
【化11】
【0055】
式(11)中、Arは、置換されていてもよい1価の芳香族基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の炭化水素基である。
【0056】
上記式(1-2)で表される構造を有するイミドオリゴマーを製造する方法としては、例えば、上記式(8)で表される酸二無水物と下記式(12)で表されるフェノール性水酸基含有モノアミンとを反応させる方法等が挙げられる。
【0057】
【化12】
【0058】
式(12)中、Arは、置換されていてもよい2価の芳香族基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の炭化水素基である。
【0059】
上記式(8)で表される酸二無水物と上記式(12)で表されるフェノール性水酸基含有モノアミンとを反応させる方法の具体例を以下に示す。
まず、予め上記式(12)で表されるフェノール性水酸基含有モノアミンを、反応により得られるアミック酸オリゴマーが可溶な溶媒(例えば、N-メチルピロリドン等)に溶解させ、得られた溶液に上記式(8)で表される酸二無水物を添加して反応させてアミック酸オリゴマー溶液を得る。次いで、加熱や減圧等により溶媒を除去し、更に、約200℃以上で1時間以上加熱してアミック酸オリゴマーを反応させる方法等が挙げられる。上記式(8)で表される酸二無水物と上記式(12)で表されるフェノール性水酸基含有モノアミンとのモル比、及び、イミド化条件を調整することにより、所望の数平均分子量を有し、両末端に上記式(1-2)で表される構造を有するイミドオリゴマーを得ることができる。
また、上記式(12)で表されるフェノール性水酸基含有モノアミンの一部を上記式(11)で表されるモノアミンに置き換えることにより、所望の数平均分子量を有し、一方の末端に上記式(1-2)で表される構造を有し、他方の末端に上記式(11)で表されるモノアミンに由来する構造を有するイミドオリゴマーを得ることができる。この場合、上記式(12)で表されるフェノール性水酸基含有モノアミンと上記式(11)で表されるモノアミンとは、同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
【0060】
上記式(8)で表される酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、3,3’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシルフェノキシ)ジフェニルエーテルの酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
なかでも、溶解性及び耐熱性により優れるものとなることから、上記イミドオリゴマーの原料に用いる酸二無水物としては、融点が240℃以下の芳香族性酸二無水物が好ましく、融点が220℃以下の芳香族性酸二無水物がより好ましく、融点が200℃以下の芳香族性酸二無水物が更に好ましく、3,4’-オキシジフタル酸二無水物(融点180℃)、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(融点190℃)が特に好ましい。
なお、本明細書において上記「融点」は、示差走査熱量計を用いて、10℃/minにて昇温した際の吸熱ピークの温度として測定される値を意味する。上記示差走査熱量計としては、例えば、EXTEAR DSC6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)等が挙げられる。
【0061】
上記式(9)で表されるジアミンのうち、芳香族ジアミンとしては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)メタン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシフェニルメタン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル、ビスアミノフェニルフルオレン、ビストルイジンフルオレン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシフェニルエーテル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。なかでも、入手性に優れることから、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンが好ましく、更に溶解性及び耐熱性に優れることから、1,3-ビス(2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンがより好ましい。
【0062】
上記式(10)で表される酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、3-メチルフタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、1,2-ナフタル酸無水物、2,3-ナフタル酸無水物、1,8-ナフタル酸無水物、2,3-アントラセンジカルボキシ酸無水物、4-tert-ブチルフタル酸無水物、4-エチニルフタル酸無水物、4-フェニルエチニルフタル酸無水物、4-フルオロフタル酸無水物、4-クロロフタル酸無水物、4-ブロモフタル酸無水物、3,4-ジクロロフタル酸無水物等が挙げられる。
【0063】
上記式(11)で表されるモノアミンとしては、例えば、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,4-ジメチルアニリン、3,4-ジメチルアニリン、3,5-ジメチルアニリン、2-tert-ブチルアニリン、3-tert-ブチルアニリン、4-tert-ブチルアニリン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、1-アミノアントラセン、2-アミノアントラセン、9-アミノアントラセン、1-アミノピレン、3-クロロアニリン、o-アニシジン、m-アニシジン、p-アニシジン、1-アミノ-2-メチルナフタレン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,5-ジメチルアニリン、3,4-ジメチルアニリン、4-エチルアニリン、4-エチニルアニリン、4-イソプロピルアニリン、4-(メチルチオ)アニリン、N,N-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0064】
上記式(12)で表されるフェノール性水酸基含有モノアミンとしては、例えば、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、4-アミノ-o-クレゾール、5-アミノ-o-クレゾール、4-アミノ-2,3-キシレノール、4-アミノ-2,5-キシレノール、4-アミノ-2,6-キシレノール、4-アミノ-1-ナフトール、5-アミノ-2-ナフトール、6-アミノ-1-ナフトール、4-アミノ-2,6-ジフェニルフェノール等が挙げられる。なかでも、入手性及び保存安定性に優れ、硬化後に高いガラス転移温度が得られることから、4-アミノ-o-クレゾール、5-アミノ-o-クレゾールが好ましい。
【0065】
上述した製造方法で上記イミドオリゴマーを製造した場合、上記イミドオリゴマーは、上記式(1-1)で表される構造を有する複数種のイミドオリゴマー又は上記式(1-2)で表される構造を有する複数種のイミドオリゴマーと、各原料との混合物(イミドオリゴマー組成物)に含まれるものとして得られる。該イミドオリゴマー組成物は、イミド化率が70%以上であることにより、硬化剤として用いた場合に高温での機械的強度及び長期耐熱性により優れる硬化物を得ることができる。
上記イミドオリゴマー組成物のイミド化率の好ましい下限は75%、より好ましい下限は80%である。また、上記イミドオリゴマー組成物のイミド化率の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は98%である。
なお、上記「イミド化率」は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて全反射測定法(ATR法)にて測定を行い、アミック酸のカルボニル基に由来する1660cm-1付近のピーク吸光度面積から下記式にて導出することができる。上記フーリエ変換赤外分光光度計としては、例えば、UMA600(Agilent Technologies社製)等が挙げられる。なお、下記式中における「アミック酸オリゴマーのピーク吸光度面積」は、酸二無水物とジアミン又はフェノール性水酸基含有モノアミンとを反応させた後、イミド化工程を行わずに溶媒をエバポレーション等により除去することで得られるアミック酸オリゴマーの吸光度面積である。
イミド化率(%)=100×(1-(イミド化後のピーク吸光度面積)/(アミック酸オリゴマーのピーク吸光度面積))
【0066】
上記イミドオリゴマー組成物は、硬化剤として熱硬化性樹脂組成物に用いた場合における溶解性の観点から、25℃においてテトラヒドロフラン10gに対して3g以上溶解することが好ましい。
【0067】
硬化性樹脂と硬化剤(後述する硬化促進剤を含有する場合は更に硬化促進剤)との合計100重量部中における上記イミドオリゴマーの含有量の好ましい下限は20重量部、好ましい上限は80重量部である。上記イミドオリゴマーの含有量がこの範囲であることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物が、硬化前における可撓性及び加工性、及び、硬化後の耐熱性により優れるものとなる。上記イミドオリゴマーの含有量のより好ましい下限は25重量部、より好ましい上限は75重量部である。
なお、本発明にかかるイミドオリゴマーが上述したイミドオリゴマー組成物に含まれるものである場合、上記イミドオリゴマーの含有量は、該イミドオリゴマー組成物(更に他のイミドオリゴマーを併用する場合は該イミドオリゴマー組成物と他のイミドオリゴマーとの合計)の含有量を意味する。
【0068】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。上述したように、上記紫外線吸収剤を用いることにより、上記光吸収スペクトルの極大波長や上記波長355nmにおける吸光度を上述した範囲に調整することが容易となる。
【0069】
上記紫外線吸収剤は、光吸収スペクトルの極大波長が320nm以上380nm以下であることが好ましい。上記紫外線吸収剤の光吸収スペクトルの極大波長がこの範囲であることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、UVレーザーによるビア加工性により優れるものとなる。上記紫外線吸収剤の光吸収スペクトルの極大波長のより好ましい下限は325nm、更に好ましい下限は330nmであり、より好ましい上限は375nm、更に好ましい下限は370nmである。
【0070】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-ブチル-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-5-(1,1-ジ-メチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロピオン酸オクチル等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0071】
上記紫外線吸収剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部である。上記紫外線吸収剤の含有量が0.5重量部以上であることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物がビア加工性により優れるものとなる。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は1重量部である。
また、溶解性の観点から、上記紫外線吸収剤の含有量の好ましい上限は15重量部、より好ましい上限は10重量部である。
なお、上記「熱硬化性樹脂組成物の固形分全体」とは、熱硬化性樹脂組成物が後述する溶剤を含む場合は該溶剤以外の成分全体を意味する。
【0072】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、高分子化合物を含有することが好ましい。上記高分子化合物を用いることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ビア加工性や被着体を実装する際の実装性により優れるものとなり、かつ、硬化後の耐屈曲性にも優れるものとなる。
【0073】
上記高分子化合物の数平均分子量の好ましい下限は3000、好ましい上限は10万である。上記高分子化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物が被着体を実装する際の実装性により優れるものとなる。上記高分子化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は8万である。
【0074】
上記高分子化合物としては、例えば、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、耐熱性とビア加工性の観点から、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂が好ましい。
上記高分子化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0075】
上記高分子化合物の含有量は、硬化性樹脂と硬化剤(後述する硬化促進剤を含有する場合は更に硬化促進剤)との合計100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が20重量部である。上記高分子化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物が被着体を実装する際の実装性により優れるものとなる。上記高分子化合物の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0076】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することが好ましい。上記硬化促進剤を含有することにより、硬化時間を短縮させて生産性を向上させることができる。
【0077】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤、ホスフィン系硬化促進剤、光塩基発生剤、スルホニウム塩系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、貯蔵安定性及び硬化性の観点から、イミダゾール系硬化促進剤、ホスフィン系硬化促進剤が好ましい。
上記硬化促進剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0078】
上記硬化促進剤の含有量は、硬化性樹脂と硬化剤と硬化促進剤との合計重量に対して、好ましい下限が0.5重量%である。上記硬化促進剤の含有量が0.5重量%以上であることにより、硬化時間を短縮させる効果により優れるものとなる。上記硬化促進剤の含有量のより好ましい下限は0.8重量%である。
また、接着性等の観点から、上記硬化促進剤の含有量の好ましい上限は10重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0079】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、無機充填剤を含有してもよい。
【0080】
上記無機充填剤は、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、及び、炭酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、シリカ及び硫酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記無機充填剤としてシリカ及び硫酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有することにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、吸湿リフロー耐性、めっき耐性、及び、加工性により優れるものとなる。
【0081】
上記シリカ及び上記硫酸バリウム以外のその他の無機充填剤としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガラスパウダー、ガラスフリット、ガラス繊維、カーボンファイバー、無機イオン交換体等が挙げられる。
【0082】
上記無機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
また、上記無機充填剤としては、平均粒子径が50nm以上4μm未満のものが好適に用いられる。
【0083】
上記無機充填剤の含有量は、上記硬化性樹脂と上記硬化剤(上記硬化促進剤を含有する場合は更に上記硬化促進剤)との合計100重量部に対して、好ましい上限が200重量部である。上記無機充填剤の含有量がこの範囲であることにより、優れた接着性等を維持したまま、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物が吸湿リフロー耐性やめっき耐性により優れるものとなる。上記無機充填剤の含有量のより好ましい上限は150重量部である。
【0084】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、流動調整剤を含有することが好ましい。上記流動調整剤を含有することにより、上記最低溶融粘度を上述した範囲とすることが容易となる。
上記流動調整剤としては、例えば、アエロジル等のヒュームドシリカや層状ケイ酸塩等が挙げられる。
上記流動調整剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
また、上記流動調整剤としては、平均粒子径が100nm未満のものが好適に用いられる。
【0085】
上記流動調整剤の含有量は、上記硬化性樹脂と上記硬化剤(上記硬化促進剤を含有する場合は更に上記硬化促進剤)との合計100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記流動調整剤の含有量がこの範囲であることにより、上記最低溶融粘度を上述した範囲とすることがより容易となる。上記流動調整剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0086】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、応力緩和、靭性付与等を目的として有機充填剤を含有してもよい。
上記有機充填剤としては、例えば、シリコーンゴム粒子、アクリルゴム粒子、ウレタンゴム粒子、ポリアミド粒子、ポリアミドイミド粒子、ポリイミド粒子、ベンゾグアナミン粒子、及び、これらのコアシェル粒子等が挙げられる。なかでも、ポリアミド粒子、ポリアミドイミド粒子、ポリイミド粒子が好ましい。
上記有機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0087】
上記有機充填剤の含有量は、上記硬化性樹脂と上記硬化剤(上記硬化促進剤を含有する場合は更に上記硬化促進剤)との合計100重量部に対して、好ましい上限が200重量部である。上記有機充填剤の含有量がこの範囲であることにより、優れた接着性等を維持したまま、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物が靭性等により優れるものとなる。上記有機充填剤の含有量のより好ましい上限は150重量部である。
【0088】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、難燃剤を含有してもよい。
上記難燃剤としては、例えば、ベーマイト型水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物、ハロゲン系化合物、りん系化合物、窒素化合物等が挙げられる。なかでも、ベーマイト型水酸化アルミニウムが好ましい。
上記難燃剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0089】
上記難燃剤の含有量は、上記硬化性樹脂と上記硬化剤(上記硬化促進剤を含有する場合は更に上記硬化促進剤)との合計100重量部に対して、好ましい上限が200重量部である。上記難燃剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物が優れた接着性等を維持したまま、難燃性に優れるものとなる。上記難燃剤の含有量のより好ましい上限は150重量部である。
【0090】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、反応性希釈剤を含有してもよい。
上記反応性希釈剤としては、接着信頼性の観点から、1分子中に2つ以上の反応性官能基を有する反応性希釈剤が好ましい。
【0091】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更に、カップリング剤、分散剤、貯蔵安定化剤、ブリード防止剤、フラックス剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0092】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、硬化剤と、紫外線吸収剤や高分子化合物や硬化促進剤等とを混合する方法等が挙げられる。上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等が挙げられる。
【0093】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、広い用途に用いることができるが、特に電子材料用途に好適に用いることができる。例えば、航空、車載用電気制御ユニット用途や、SiC、GaNを用いたパワーデバイス用途におけるダイアタッチ剤等に用いることができる。また、例えば、プリント配線基板用接着剤、フレキシブルプリント回路基板のカバーレイ用接着剤、銅張積層板、半導体接合用接着剤、層間絶縁材料、プリプレグ、LED用封止剤、構造材料用接着剤、パワーオーバーレイパッケージ用接着剤等にも用いることができる。
なかでも、接着剤用途に好適に用いられる。本発明の熱硬化性樹脂組成物を含む接着剤もまた、本発明の1つである。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物と溶剤とを含有する接着剤ワニスもまた、本発明の1つである。
【0094】
上記溶剤としては、塗工性や貯蔵安定性等の観点から、沸点が200℃未満の溶剤が好ましい。
上記沸点が200℃未満の溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤、エーテル系溶剤、含窒素系溶剤等が挙げられる。
上記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール、2-エチエルヘキサノール等が挙げられる。
上記ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
上記エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
上記炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、イソオクタン、ノルマルデカン、ノルマルヘプタン等が挙げられる。
上記ハロゲン系溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン等が挙げられる。
上記エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、4-メチルアニソール等が挙げられる。
上記含窒素系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
なかでも、取り扱い性やイミドオリゴマーの溶解性等の観点から、沸点が60℃以上のケトン系溶剤、沸点が60℃以上のエステル系溶剤、及び、沸点が60℃以上のエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。このような溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等が挙げられる。
なお、上記「沸点」は、101kPaの条件で測定される値、又は、沸点換算図表等で101kPaに換算された値を意味する。
【0095】
本発明の接着剤ワニスにおける上記溶剤の含有量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は90重量%である。上記溶剤の含有量がこの範囲であることにより、本発明の接着剤ワニスは、塗工性等により優れるものとなる。上記溶剤の含有量のより好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0096】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗工し、乾燥させることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物で構成される熱硬化性樹脂組成物フィルムを得ることができ、該熱硬化性樹脂組成物フィルムを硬化させて硬化物を得ることができる。上記硬化性樹脂フィルムは、接着フィルムとして好適に用いることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物を含む接着層を有する接着フィルムもまた、本発明の1つである。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0097】
本発明によれば、UVレーザーによるビア加工性、及び、被着体を実装する際の実装性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤、接着剤ワニス、及び、接着フィルム、並びに、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0099】
(合成例1(イミドオリゴマー組成物の作製))
4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(東京化成工業社製)104重量部をN-メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製、「NMP」)300重量部に溶解させた。得られた溶液に1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(セイカ社製、「TPE-R」)29.2重量部をN-メチルピロリドン100重量部で希釈した溶液を添加し、25℃で2時間撹拌して反応させてアミック酸オリゴマー溶液を得た。得られたアミック酸オリゴマー溶液からN-メチルピロリドンを減圧除去した後、300℃で2時間加熱することにより、イミドオリゴマー組成物(イミド化率93%)を得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、イミドオリゴマー組成物は、上記式(4-1)又は(4-3)で表される構造を有するイミドオリゴマー(Aは4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物残基、Bは1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン残基)を含むことを確認した。また、該イミドオリゴマー組成物の数平均分子量は2010であった。
【0100】
(合成例2(ポリイミド樹脂溶液)の作製)
撹拌機、分水器、及び、窒素ガス導入管を備えた反応容器に4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(東京化成工業社製)54.6重量部、及び、シクロヘキサノン200重量部を仕込み、溶解させた。得られた溶液に、ダイマージアミンであるプリアミン1074(クローダ社製)56.1重量部とシクロヘキサノン55.0重量部の混合溶液を滴下した後、150℃で8時間かけてイミド化反応を行い、ポリイミド樹脂溶液を得た。なお、得られたポリイミド樹脂溶液の固形分濃度は30重量%、ポリイミド樹脂の数平均分子量は25000であった。
【0101】
(実施例1~6、比較例1~3)
表1に記載された配合比に従い、各材料を撹拌混合し、実施例1~6、比較例1~3の各熱硬化性樹脂組成物を作製した。表1中、「MEH-8000H」は、液状アリル基含有フェノール樹脂である。
得られた各熱硬化性樹脂組成物を厚みが約20μmとなるように基材PETフィルム上に塗工し、乾燥させることにより、基材PETフィルム上に熱硬化性樹脂組成物フィルムを作製した。
【0102】
(極大波長及び波長355nmにおける吸光度)
得られた熱硬化性樹脂組成物フィルムから基材PETフィルムを剥離して硬化前試験片を得た。また、得られた熱硬化性樹脂組成物フィルムから基材PETフィルムを剥離し、190℃で1時間加熱して熱硬化性樹脂組成物フィルムを硬化させることにより硬化後試験片を得た。得られた硬化前試験片及び硬化後試験片について、分光光度計を用いて200~800nmの波長における光吸収スペクトルを測定した。上記分光光度計としては、U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を用いた。得られた光吸収スペクトルから確認された極大波長、及び、波長355nmにおける吸光度を表1に示した。
【0103】
(最低溶融粘度)
得られた熱硬化性樹脂組成物フィルムから基材PETフィルムを剥離し、厚み500μmになるようにラミネーターにより積層し、積層体を得た。得られた積層体について、回転式レオメーター装置を用いて、昇温速度10℃/min、周波数1Hz、歪1%、常温から150℃までの条件で粘度を測定し、60℃から150℃までの温度領域での最低溶融粘度を表1に示した。上記回転式レオメーター装置としては、ARES(TAインスツルメント社製)を用いた。
【0104】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各熱硬化性樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0105】
(硬化物のポリイミドに対する接着力)
実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂組成物フィルムから基材PETフィルムを剥離し、ラミネーターを用いて、80℃に加熱しながら熱硬化性樹脂組成物フィルムの両面に厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、「カプトン200H」)を貼り合わせた。190℃、1時間の条件で加熱して熱硬化性樹脂組成物フィルムを硬化させた後、1cm幅に切り出して試験片を得た。作製後24時間以内の試験片について、引張試験機(ORIENTEC社製、「UCT-500」)により、25℃において剥離速度20mm/minでT字剥離を行い、初期接着力を測定した。また、同様にして作製した試験片を200℃で100時間保管した後、25℃まで放冷し、放冷後24時間以内の試験片について上記初期接着力と同様の方法で接着力を測定した。
得られた接着力が6.0N/cm以上であった場合を「◎」、3.4N/cm以上6.0N/cm未満であった場合を「○」、3.4N/cm未満であった場合を「×」として初期接着力及び200℃で100時間保管した後の接着力を評価した。なお、初期接着力の評価結果が「×」であったものについては、200℃で100時間保管した後の接着力の測定を行わなかった。
【0106】
(UVレーザーによるビア加工性)
実施例及び比較例で得られた各熱硬化性樹脂組成物を、卓上コーターを用いて、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、「カプトン200H」)上に厚さが20μmとなるように塗工し、乾燥させることにより、基材ポリイミドフィルム上に熱硬化性樹脂組成物フィルムを形成した積層体を作製した。これを「硬化前」サンプルとした。また、190℃、1時間の条件で加熱して熱硬化性樹脂組成物フィルムを硬化させ、これを「硬化後」サンプルとした。
次いで、硬化前、硬化後それぞれのサンプルについてレーザー加工装置3500U(EO TECHNICS社製)を用いて、積層体のポリイミドフィルム面側から波長355nmのUVレーザーを照射し、加工径設定100μm、出力1.5W、周波数80kHz、走査速度400mm/sでビア(貫通孔)を形成した。
ビアの形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより、レーザー加工性の評価を行った。加工径設定100μmに対し、熱硬化性樹脂組成物フィルムの底面側(レーザー照射面と対比する側)の孔径が設定径の90%(90μm)を越える場合を「○」、90%以下(90μm)であった場合を「×」として、UVレーザーによるビア加工性を評価した。
【0107】
(実装性)
上記「(UVレーザーによるビア加工性)」で得られたビアを形成した積層体(「硬化前」サンプル)の熱硬化性樹脂組成物フィルムが形成された面にフリップチップボンダーを用いてシリコンチップ(5mm×5mm角、厚さ100μm)を60℃、20Nの条件で5秒間押圧することによりシリコンチップ実装体を得た。フリップチップボンダーとしては、FC3000(東レエンジニアリング社製)を用いた。得られたシリコンチップ実装体をポリイミドフィルム側から走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、ビアの内部における樹脂のしみ出しが2μm未満の場合を「◎」、2μm以上10μm以下の場合を「○」、10μmを超える場合を「×」として、実装性を評価した。
【0108】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、UVレーザーによるビア加工性、及び、被着体を実装する際の実装性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤、接着剤ワニス、及び、接着フィルム、並びに、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物を提供することができる。