(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188993
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】経路探索情報処理システム、経路探索情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221215BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097312
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晶子
(72)【発明者】
【氏名】山根 慶大
(72)【発明者】
【氏名】三谷 佳一
(72)【発明者】
【氏名】高浦 則克
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
5H301KK03
5H301KK04
5H301KK08
5H301KK10
5H301KK18
5H301KK19
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】
経路最適化計算において必要以上の情報量とならないようにシステムにあげる情報を抑えて軽量化して、リアルタイムに経路を再計算して対応することができる経路探索情報処理システム、および、経路探索情報処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
この経路探索情報処理システムは、プロセッサと、記憶部と、を備えている。前記のプロセッサは、複数の自動搬送機それぞれについての経路を計算する。前記の記憶部は、計算された前記の自動搬送機の経路に関するデータを記憶する。前記のプロセッサは、自動搬送機の外部の情報と、前記の記憶部に記憶されている経路に関するデータと、を用いて、自動搬送機の経路をリアルタイムに再計算する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
記憶部と、を備え、
前記プロセッサは、
複数の自動搬送機それぞれについての経路を計算し、
前記記憶部は、
計算された前記自動搬送機の経路に関するデータを記憶し、
前記プロセッサは、
前記自動搬送機の外部の情報と、前記記憶部に記憶された経路に関するデータと、を用いて、前記自動搬送機の経路をリアルタイムに再計算する、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記自動搬送機の経路は、最適化計算を高速に行うための最適化装置において計算される、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記最適化装置は、高速な無線通信を用いて接続されるクラウド上に配置される、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記プロセッサは、
1ステップ前に計算されて前記記憶部に記憶された経路のデータを用いて、経路を再計算する、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記自動搬送機の外部の情報は、それぞれの前記自動搬送機に設けられるカメラから取得される、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記自動搬送機の外部の情報は、それぞれの前記自動搬送機が移動するエリアを監視するエリア監視カメラから取得される、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記自動搬送機が目的地に到達したかどうかについて識別した情報を前記自動搬送機から取得する、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項8】
請求項1に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記自動搬送機が通る座標の順序に関するパラメータを更新して目的関数を最小化することで、前記自動搬送機の経路を決定する相互作用モデルを、前記自動搬送機の経路の計算に用いる、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項9】
請求項8に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記相互作用モデルは、
前記自動搬送機同士を接近させないようにする項を含む、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項10】
請求項8に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記自動搬送機の経路は、最適化計算を高速に行うための最適化装置において計算される、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項11】
請求項8に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記自動搬送機に設けられるカメラより取得される前記自動搬送機の外部の画像のデータを用いて、前記目的関数に影響するパラメータを抽出する、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記自動搬送機の経路は、最適化計算を高速に行うための最適化装置において計算され、
前記最適化装置は、高速な無線通信を用いて接続されるクラウド上に配置され、
前記最適化装置は、経路の再計算にあたって、抽出した前記パラメータを受信して取得する、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項13】
請求項8に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記プロセッサは、
それぞれの前記自動搬送機が移動するエリアを監視するエリア監視装置により取得される前記自動搬送機の外部の画像のデータを用いて、前記目的関数に影響するパラメータを抽出する、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項14】
請求項13に記載の経路探索情報処理システムであって、
前記自動搬送機の経路は、最適化計算を高速に行うための最適化装置において計算され、
前記最適化装置は、高速な無線通信を用いて接続されるクラウド上に配置され、
前記最適化装置は、経路の再計算にあたって、抽出した前記パラメータを受信して取得する、
ことを特徴とする経路探索情報処理システム。
【請求項15】
プロセッサと記憶部とを用いて実行される経路探索情報処理方法であって、
複数の自動搬送機それぞれについての経路を計算し、
計算された前記自動搬送機の経路に関するデータを記憶し、
前記自動搬送機の外部の情報と、前記記憶部に記憶された経路に関するデータと、を用いて、前記自動搬送機の経路をリアルタイムに再計算する、
ことを特徴とする経路探索情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索情報処理システム、および、経路探索情報処理方法に関する。詳細には、複数の自動搬送機の経路探索を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動搬送車が移動する経路について計算する技術が知られている。特許文献1は、この種の技術を開示する。すなわち、特許文献1は、プランナーを用いて、各車両に対する輸送経路を計算する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物流、医療、介護、交通、飲食など、様々な業界で、人手不足の解消、生産性向上のため、自動搬送車(AGV)を用いた商品搬送の効率化が図られている。しかしながら、複数台のAGVを導入するときの経路最適化手法が確立されていないと考えられた。
【0005】
例えば、
図1に示すように、中央監視システムで所持する地図を基に、AGVの経路を計算し、AGVに割り振るようなシステムがあるとする。ここで、衝突しそうな向かい合う2台のAGVがあると考える。
【0006】
このとき、衝突しない経路を再計算するために、一度200の矢印のように中央監視システムに単純に情報を上げることでは、情報量の観点から時間がかかりすぎ、リアルタイムに回避することが容易ではない。その一方で、AGV側で衝突回避経路を再計算する場合、例えば、それぞれのAGVが個別で計算したとすると(
図1で矢印100の情報を考慮しない)、正面から向かってくるAGVに対して2台とも同じ方向に動くことが起こり得るため、うまくいかないことがあり得る。
【0007】
言い換えると、中央監視だけではリアルタイムに対応することが難しいと考えられる。また、エッジ側(つまり、AGV側)でリアルタイムに対応させようとしても、他のエッジの情報を考慮できないので、やはり対応できないと考えられる。そこで、AGV同士が衝突を回避するためには、どちらか一方のAGVが、他方の通過を待つ仕組みが一般的となっていると考えられる。
【0008】
さらに、対象エリア内に、予め経路を予測できていない人や物(別個体のAGVも含む)が入ってくる状況では、やはり対応できないと考えられる。このように動的に状況が変わる場合、最初にすべてのAGVの経路を決めてしまっても、例えば、走行経路に微妙なずれが生じたり、結局滞留が起こりうることが考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、経路最適化計算において必要以上の情報量とならないようにシステムにあげる情報を抑えて軽量化して、リアルタイムに経路を再計算して対応することができる経路探索情報処理システムおよび経路探索情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、下記の経路探索情報処理システムが提供される。経路探索情報処理システムは、プロセッサと、記憶部と、を備える。プロセッサは、複数の自動搬送機それぞれについての経路を計算する。記憶部は、計算された自動搬送機の経路に関するデータを記憶する。プロセッサは、自動搬送機の外部の情報と、記憶部に記憶された経路に関するデータと、を用いて、自動搬送機の経路をリアルタイムに再計算する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、下記の経路探索情報処理方法が提供される。経路探索情報処理方法は、プロセッサと記憶部とを用いて実行される。この方法は、複数の自動搬送機それぞれについての経路を計算し、計算された自動搬送機の経路に関するデータを記憶し、自動搬送機の外部の情報と、記憶部に記憶された経路に関するデータと、を用いて、自動搬送機の経路をリアルタイムに再計算する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経路最適化計算において必要以上の情報量とならないようにシステムにあげる情報を抑えて軽量化して、リアルタイムに経路を再計算して対応することができる経路探索情報処理システムおよび経路探索情報処理方法を提供することができる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】AGVと中央監視システムの概要の一例を示す図。
【
図5】計算される経路とAGVの動きの一例について説明するための図。
【
図6】目的地に到達するまでの処理の一例を示すフローチャート。
【
図9】最適化装置がクラウド上にある構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1実施形態の情報処理システム(経路探索情報処理システム)について、図を参照しながら説明する。
図2は、情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【0015】
情報処理システム1は、複数のAGV(自動搬送機)の経路を決定するシステムであり、
図2に示すように、本実施形態では、サーバとして構成されている。情報処理システム1は、プロセッサ11と、記憶部12と、インターフェース13と、計算部14と、を備える。
【0016】
プロセッサ11は、演算機能を有する構成であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)とすることができる。記憶部12は、データ(例えば、AGVの初期位置や座標情報、計算した経路情報など)を記憶する構成であり、記憶装置により構成することができる。記憶装置は、一例として、HDD(Hard Disk Drive)やROMとすることができる。インターフェース13は、通信に用いる構成であり、情報処理システム1とそれぞれのAGVは、インターフェース13を介して通信することができるように構成されている。計算部14(
図2において、最適化計算部1および2)は、経路の計算に用いられ、プロセッサ11により実行される。なお、経路の計算手法については、後で詳しく説明する。
【0017】
次に、AGVについて説明する。AGVは、カメラと、推論装置と、を備える。カメラは、AGVの外部情報を取得する構成である。カメラにより、AGV周辺の画像が取得され、例えば、滞留の原因となる人や物体の情報が取得される。推論装置は、カメラからのデータの入力に応じて目的地に到達したかどうかについて推論(推定)するモデルにより、目的地の到達を識別する機能を有している。そして、本実施形態では、AGVが取得する情報(すなわち、カメラを用いて取得する情報、および、推論装置により推論される結果の情報)は、情報処理システム1にリアルタイムで送信される。
【0018】
次に、情報処理システム1の計算処理について説明する。先ず、情報処理システム1は、AGVの初期位置と、座標情報と、を記憶装置に記憶する。ここで、座標情報は、AGVの経路を求めるエリアに座標を割り当てたデータであり、この座標情報には、経路計算においてAGVの通過点となり得る座標、AGVの目的地の座標、などの座標に関する情報が含まれる。
【0019】
そして、計算部14(
図2において最適化計算部1)が実行されて、記憶装置の情報を基に最適な経路が計算される。ここで、既に計算した経路情報を利用して複数回繰り返し計算することを想定し、少なくとも1ステップ前までの計算した経路情報が記憶装置に記憶される。
【0020】
そして、1ステップ目の経路計算(つまり、最初の経路計算)の後、すなわち、2ステップ目以降は、1ステップ目の経路計算とは異なる手法の計算が行われる(すなわち、最適化計算部2が実行される)。ここで、2ステップ目以降の経路計算は、記憶装置に記憶される1ステップ前の計算結果を追従し、AGVから送られる外部の情報を用いて、最適な経路が再計算される。このように、1ステップ前の計算結果に追従することで(言い換えれば、1ステップ前の計算結果を計算の初期状態とすることで)、リアルタイムでの経路の計算を容易に行うことができる。そして、一例として、AGVから通過不能となった座標が送られた場合、通過不能になった座標の情報を含めて最適な経路が計算され、通過不能となった座標を回避した最適な経路が計算される。
【0021】
ここで、通過不能となった座標は、適宜に方法により求められれば良く、例えば、AGV側で画像を解析して当該座標が求められてもよい。その一方で、AGVから画像が送信され、情報処理システム1が画像を解析して当該座標が求められてもよい。
【0022】
なお、AGVからの情報は、リアルタイムで情報処理システム1に送信され、情報処理システム1は、リアルタイムで経路計算を行う。従って、リアルタイムで適切な経路を(計算)決定する観点から、情報処理システム1は、高速に最適な経路を計算することができるように構成されていることが好ましい。また、最適化計算について、例えば、CPUでメインの計算を行う最適化ソルバなどが用いられてもよい。
【0023】
次に、経路計算に用いるモデルである相互作用モデルについて説明する。
図3と
図4は、相互作用モデルの一例を示す。
図3に示すように、相互作用モデルは、左辺の目的関数H(X)を最小化するパラメータを探索するモデルとすることができる。
【0024】
本実施形態では、
図4に示す相互作用モデルが用いられる。
図4に示す相互作用モデルにおいて、X
i,
j,
kは、i番目のAGVが点j(点jの座標)をk番目に通る場合に1、そうでない場合に0となるバイナリ変数である。Hは、相互作用モデルの目的関数である。Hの値を最小とするX
i,
j,
kに関する値を最適化計算部(計算部14)で決定することで、AGVの通る点の順序が決定する。なお、D
jj′は定数であり、点jと点j′の間の距離に関する。また、V
jも定数であり、その値が大きいほどAGV同士が遠ざかる効果を持つ(すなわち、V
jに関する項は、AGV同士を接近させないようにする効果を持つ)。
【0025】
そして、通過不能となった座標点の情報が取得された場合(例えば、通過不能となった座標点のみの情報が情報処理システム1に送信された場合)、情報処理システム1は、この相互作用モデルにおけるDjj′とVjの項に関する値を更新して経路の再計算を行い、通行不能の座標を回避した経路を求める。
【0026】
情報処理システム1は、記憶装置に計算したXi,j,kに関する値を記憶させ、経路を再計算する場合では、1つ前のステップで計算したXi,j,kに関する値から再計算を始めることで、計算時間の短縮を図ることができる。これにより、リアルタイムでの処理の容易化を図ることができる。
【0027】
次に、
図5を参照しながら、計算される経路とAGVの動きの一例について説明する。
図5は、計算される経路とAGVの動きの一例について説明するための図である。なお、
図5において、黒色で塗りつぶした部分は通行しない領域であり、この領域を区画する座標については、相互作用モデルを用いた計算の対象から外される。
【0028】
先ず、情報処理システム1は、初期位置および座標情報を取得する(ステップ101)。
【0029】
そして、情報処理システム1は、計算部14(最適化計算部1)を実行して、それぞれのAGVの経路を計算する(ステップ102)。ここで、同じ点において同じタイミングでAGVが重なる経路では、AGVが重ならない場合と比べて、相互作用モデルにおいてVjに関する項の値が大きくなる。従って、AGVが重なる経路では、目的関数であるHが最小にならず、AGVが重ならない経路が計算される。
【0030】
そして、AGVは、計算された経路に沿って移動するが、経路上で回避すべき対象(例えば、人や物の滞留)の情報を取得することがある。そして、この情報は情報処理システム1に送信され、情報処理システム1は、計算部14(最適化計算部2)を実行して、この情報を相互作用モデルに加えて経路の再計算を行うことにより、回避する経路を求める。なお、最適化計算部2の処理では、既に計算した経路の情報が利用される。そして、AGVは、求めた経路に沿って移動する(ステップ103)。
【0031】
上記したように、AGV側で通行不能の座標を求め、この座標のみの情報が情報処理システム1に送信されてもよい。その一方で、情報処理システム1は、AGVから送信されるデータを用いて通行不能の座標を求め、この座標を避ける経路を求めてもよい。例えば、AGVから外部の画像が送信され、情報処理システム1は、画像解析により、目的関数に影響するパラメータを抽出してもよい。情報処理システム1は、画像解析により、例えば、衝突の可能性があり通行不能となる座標のデータを求めてもよい。
【0032】
次に、情報処理システム1が実行することができる処理の流れの一例について、フローチャートを用いて説明する。
図6は、目的地に到達するまでの処理の一例を示すフローチャートである。
【0033】
情報処理システム1は、先ず、計算部14(最適化計算部1)を実行して、それぞれのAGVの初期位置の情報と座標情報を用いて、それぞれのAGVの経路を計算する(ステップ201)。
【0034】
そして、情報処理システム1は、計算した経路のデータ(例えば、相互作用モデルにおける変数)を記憶装置に記憶する(ステップ202)。
【0035】
そして、下記のステップ203~205の処理を繰り返し行う。なお、203~205の処理は、リアルタイムで行われる。
【0036】
ステップ203において、情報処理システム1は、AGVから送信される情報を取得する。
【0037】
そして、ステップ204において、情報処理システム1は、計算部14(最適化計算部2)を実行して、取得した情報と記憶装置に記憶されている情報を利用し、経路の再計算を行う。ここで、AGVから回避すべき対象の情報を取得しない場合では、前回の経路と同じ経路が計算されると考えられる。その一方で、AGVから回避すべき対象の情報を取得した場合では、前回の経路とは異なる、その対象を回避する経路が計算される。
【0038】
ステップ205において、情報処理システム1は、計算した経路のデータを記憶装置に記憶する。
【0039】
そして、それぞれのAGVが目的地まで移動して目的地に到達することで(ステップ206)、情報処理システム1の処理は終了する。本実施形態では、AGVが、推論装置を用いて目的地の到達を識別し、その情報を情報処理システム1に送信する。このように、エッジ(つまり、AGV側)で、計算負担が少ない簡単な方法で目的地の到達が識別され、サーバ(つまり、情報処理システム1側)に、その結果が送信される。
【0040】
例えば、物流倉庫において、商品棚を運搬し、ピッキング作業をする作業員がいるピッキングステーションまで運ぶタイプの自動搬送ロボット(低床式自動搬送装置)については、荷物の増加に伴う複数の自動搬送ロボットの移動時における滞留について、入庫~出庫工程の効率化(最適化)することで対応することが考えられる。
【0041】
その一例として、商品の通過する経路に関して、各商品の軌道の交点の数が極小、且つ、商品の移動距離が極小(または単位時間の生産性が極大)となることを満たす解を算出し、その結果に基づいて自動搬送機を制御することにより、自動搬送機の滞留が解消され、少量多品種品のピッキング効率が向上し、倉庫の生産性が向上すると考えられる。
【0042】
しかしながら、対象エリア内に、予め経路を予測できていない人や物(別個体のAGVも含む)が入ってくる動的な状況に対応することが容易ではないと考えられる。このように動的に状況が変わる場合、最初にすべてのAGVの経路を決めるだけでは、走行経路に微妙なずれが生じたり、結局滞留が起こりうることが考えられる。
【0043】
これに関して、本実施形態によれば、記憶装置(記憶部12)に記憶される計算済みの経路のデータを用いることで、サーバ(情報処理システム1)にあげる情報量の軽量化を図ったうえで、経路の再計算をリアルタイムで実行するので、動的に状況が変わる場合であっても適切な対応を行うことができ、滞留の発生も抑制することができる。
【0044】
次に、第2実施形態について説明する。上記で説明した内容と同様または重複する説明については省略することがある。
図7は、情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【0045】
本実施形態では、情報処理システム21は、高速な演算機能で高速な最適化計算技術を行うための最適化計算装置21を備える。計算部14(最適化計算部1と最適化計算部2)は、当該最適化計算技術を実装した最適化計算装置(最適化装置22)上で最適化計算を行う。
【0046】
ここで、高速な最適化計算技術とは、例えば、汎用型量子計算機、アニーリング型量子計算機、あるいは、量子インスパイア型の、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを利用した最適化計算専用型計算機、あるいは、前記最適化計算専用型計算機のアルゴリズムをGPU(Graphics Processing Unit)実装した計算技術を指す。
【0047】
そして、最適化装置22は、例えば、
図3の数1で示すような相互作用モデルを入力値とすることができる。
【0048】
本実施形態によれば、高速な最適化計算が実現するので、計算処理能力の向上を図ることができ、リアルタイム性の向上を図ることができる。
【0049】
次に、第3実施形態について説明する。上記で説明した内容と同様または重複する説明については省略することがある。
図8は、情報処理システムの構成の一例を示す図である。本実施形態では、初期位置や通過地点や目的地などの情報をTOFカメラ32(エリア監視装置)で取得して、TOFカメラ32で全体の地図(すなわち、AGVが移動し得るエリア)について把握する構成について説明する。
【0050】
TOFカメラ32は、TOF(Time of Flight)により対象物との距離を計測(測距)する。すなわち、TOFカメラ32は、光源で発光した光が対象物で反射して戻ってくるまでの時間を計測することで、対象物との距離を計測する。TOFカメラ32は、CCDやCMOSなどの2次元状に画素を配列したイメージセンサを備え、イメージセンサで露光した反射光を電気信号に変換する。そして、TOFカメラ32は、この電気信号を処理することで(一例として、電荷量に基づく計算を行うことで)、距離データの画像を取得する。
【0051】
本実施形態では、TOFカメラ32は、AGVが移動し得るエリア全体を監視することができるように設置され、例えば、屋内の天井に設置される。そして、エリア全体がリアルタイムで監視され、取得する距離データの画像が、情報処理システム21に送信される。
【0052】
情報処理システム21は、TOFカメラ32から送信されるデータ(距離データの画像)を用いて通行不能の座標を求め、この座標を避ける経路を求める。
【0053】
本実施形態によれば、対象となるエリア全体を監視する装置から情報を取得して、経路の再計算を行うことができる。
【0054】
なお、TOFカメラ32を用いる例について説明されたが、エリア全体について適切な監視と情報の取得を行うことができれば、他のセンサがエリア監視装置として用いられてもよい。
【0055】
次に、第4実施形態について説明する。上記で説明した内容と同様または重複する説明については省略することがある。
図9は、クラウド上に最適化装置を配置する一例を示す図である。
【0056】
図9に示すように、最適化装置22がクラウド上に配置される情報処理システム41であってもよく、AGVやTOFカメラ32などから外部の情報が入力されるサーバに関する情報処理装置42とクラウド上の最適化装置22が高速無線通信によって通信することができるように、情報処理システム41が構成されてもよい。
【0057】
本実施形態によれば、クラウド上に最適化装置22を配置する場合であっても、実現可能な高速モバイル通信技術(現在は5G、将来的に6Gなどが考えられる)を用いることにより、リアルタイム性の良い経路の計算を行うことができる。なお、AGVのカメラやTOFカメラ32から得た画像について、情報処理装置42で処理を行うことで、よりリアルタイム性を出すことができる。ここで、相互作用モデルのパラメータに影響する座標値は情報処理装置42で抽出することができる。
【0058】
以上実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0059】
プロセッサは、演算機能を有しており、所定の処理を実行することができる主体であれば、特に限定されない。
【0060】
本発明において適切なデータ処理を行うことができれば、記憶装置の配置は特に限定されない。高速無線通信を用いる場合、記憶装置はクラウド上に配置されてもよい。
【0061】
CMOSアニーリングなどの専用機や専用ソルバ、もしくは量子計算機を用いることで、最適化計算が高速に実行されてもよい。
【0062】
上記で説明された相互作用モデルは一例であり、適切な経路計算を行うことができればよく、他のモデルが相互作用モデルとして用いられてもよい。例えば、
図10に示すように、係数(D
0,
j,
k、および、V
0,
j,
k)がリアルタイムで更新されるイジングモデルであってもよい。すなわち、座標間の移動に係る移動コストを相互作用係数とするモデルであってもよい。
【0063】
図10に示す相互作用モデルでは、計算負荷を軽減するために1ステップ前に行った経路計算結果を{x}の初期状態としつつ、AGVで獲得した通過不能座標を回避するように更新した相互作用係数を求めることで、計算コストを軽減することができる。
【0064】
図10に示すように、相互作用モデルにおいて、D
0,
j,
k、および、V
0,
j,
kに関する項がコスト項とされ、制約項が付加されてもよい。制約項は、一例として、罰則に関する情報を定めることができる。また、上記の実施形態で説明された相互作用モデルについても同様に、コスト項の他に制約項が設けられてもよい。
【0065】
自動搬送機の一例として、AGVを用いる例について詳しく説明されたが、情報処理システムは、AGV以外の自動搬送機に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 情報処理システム
11 プロセッサ
12 記憶部
13 インターフェース
14 計算部
22 最適化装置