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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188996
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】回転打撃工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 16/00 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B25D16/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097318
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】特許業務法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 斉
(72)【発明者】
【氏名】古澤 正規
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慶
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058CA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回転打撃工具において、モードを切り替えるための操作部の損傷を抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】回転打撃工具100は、モータ2と、駆動機構3と、モータと駆動機構とを収容する工具本体10と、把持部170を有するハンドル17と、第1操作部材6とを備える。駆動機構は、モータの動力によって、先端工具101を駆動軸A1周りに回転駆動する動作を少なくとも行う第1モードと、先端工具を駆動軸に沿って直線状に駆動する動作のみを行う第2モードとを含む複数の動作モードで選択的に動作可能に構成されている。把持部は、駆動軸に交差する方向に延在しユーザによって把持可能に構成されている。第1操作部材は、ユーザによって操作されることで駆動機構の動作モードを切り替え可能に構成されている。第1操作部材は、工具本体のうち把持部と対向する位置に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転打撃工具であって、
モータと、
前記モータの動力によって、先端工具を駆動軸周りに回転駆動する動作を少なくとも行う第1モードと、前記先端工具を前記駆動軸に沿って直線状に駆動する動作のみを行う第2モードとを含む複数の動作モードで選択的に動作可能な駆動機構と、
前記モータ及び前記駆動機構を収容する工具本体と、
前記駆動軸に交差する方向に延在しユーザによって把持される把持部を有するハンドルと、
前記ユーザによって操作されることで前記駆動機構の前記動作モードを切り替え可能に構成され、前記工具本体のうち前記把持部と対向する位置に設けられた第1操作部材と、
を備える、回転打撃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の回転打撃工具であって、
前記把持部は、常時にはオフ位置に維持され、前記ユーザによって押圧されることでオン位置に移動して前記モータを駆動可能に構成された第2操作部材を備え、
前記第1操作部材は、前記第2操作部材に対向する位置に設けられている、回転打撃工具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転打撃工具であって、
前記第1操作部材は、
前記駆動軸に交差する方向における予め定められた範囲内を摺動可能であり、
前記予め定められた範囲内における第1位置に移動されるのに応じて前記駆動機構の前記動作モードを前記第1モードに切り替え、
前記予め定められた範囲内における、前記第1位置とは異なる第2位置に移動されるのに応じて、前記駆動機構の前記動作モードを前記第2モードに切り替えるように構成されている、回転打撃工具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記先端工具を取り外し可能に保持し、前記モータから伝達されたトルクによって前記駆動軸周りに回転駆動されるように構成されたツールホルダと、
前記ツールホルダ上に設けられて前記第1操作部材の操作に応じて前記駆動軸に沿って移動可能であり、前記駆動軸に沿った方向における第3位置に配置されることで前記トルクを伝達し、前記駆動軸に沿った方向における前記第3位置とは異なる第4位置に配置されることで前記トルクの伝達を遮断するように構成されたクラッチ部材と、を備え、
前記駆動機構は、前記クラッチ部材が前記第3位置に配置されることで前記第1モードで動作し、前記クラッチ部材が前記第4位置に配置されることで前記第2モードで動作するように構成されている、回転打撃工具。
【請求項5】
請求項3に従属する請求項4に記載の回転打撃工具であって、
前記第1操作部材の前記予め定められた範囲内の摺動を前記クラッチ部材に伝達して前記クラッチ部材を前記駆動軸に沿って移動させるように構成された伝達機構を更に備える、回転打撃工具。
【請求項6】
請求項5に記載の回転打撃工具であって、
前記伝達機構は、前記第1操作部材の前記予め定められた範囲内の直線状の摺動を回転運動に変換し、更に、前記回転運動を前記駆動軸に沿った直線運動に変換するように構成された変換機構を備える、回転打撃工具。
【請求項7】
請求項6に記載の回転打撃工具であって、
前記変換機構は、
前記第1操作部材の前記予め定められた範囲内の前記直線状の摺動に応じて摺動する第1ラックギヤと、
前記第1ラックギヤに係合する第1ピニオンギヤ及び前記第1ピニオンギヤの回転に応じて回転する第2ピニオンギヤと、
前記第2ピニオンギヤに係合し、前記第2ピニオンギヤの前記回転運動を前記駆動軸に沿った前記直線運動に変換する第2ラックギヤと、を備える、回転打撃工具。
【請求項8】
請求項3、請求項3に従属する請求項4、又は、請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記第1操作部材を付勢する付勢部材を更に備え、
前記第1操作部材は、前記付勢部材の付勢力によって前記第1位置に保持され、かつ、前記第2位置に保持されるように構成されている、回転打撃工具。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記把持部は、常時にはオフ位置に維持され、前記ユーザによって押圧されることでオン位置に移動して前記モータを駆動可能に構成された第2操作部材を備え、
前記回転打撃工具は、更に、
前記第2操作部材を前記オン位置でロック可能なロック可能位置と、前記第2操作部材を前記オン位置でロック不能なロック不能位置との間で、前記ユーザの操作によって移動可能に構成されたロック部材と、
前記駆動軸に沿って移動可能に構成され、前記第1操作部材の操作に応じて前記第1モードのとき前記ロック部材に干渉する位置に配置されて前記ロック部材を前記ロック不能位置に保持し、前記第1操作部材の操作に応じて前記第2モードのとき前記ロック部材に干渉しない位置に配置されて前記ロック部材の前記ロック可能位置への移動を許容するように構成された、ロック制御部材を備える、回転打撃工具。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記駆動機構の前記動作モードが少なくとも前記第1モードであることを検出するためのモード検出部と、
前記工具本体の前記駆動軸周りの回転状態を検出する回転検出部と、
前記モータの駆動を制御可能に構成され、前記回転検出部と前記モード検出部との前記検出結果を用いて、前記動作モードが前記第1モードであり、かつ、前記工具本体の状態が前記駆動軸周りに過度に回転した状態である場合に、前記モータを停止するように構成された制御部と、を備える、回転打撃工具。
【請求項11】
請求項10に記載の回転打撃工具であって、
前記ハンドルを前記工具本体に対して前記駆動軸に沿って相対移動可能に連結する弾性部材を備え、
前記回転検出部は、前記ハンドルに収容されている、回転打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
先端工具を所定の駆動軸に沿った方向に直線状に駆動する打撃動作のみを行うモードと、先端工具を駆動軸周りに回転駆動する回転動作を少なくとも行うモードとを含む複数のモードのうちから、選択されたモードに応じて動作するように構成された回転打撃工具が知られている。特許文献1には、動作モードを切り替えるためのモード切替ダイヤルを備えるハンマドリルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6778071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のハンマドリルでは、モード切替ダイヤルは、駆動機構を収容するハウジングの上端部に配置されている。しかし、このハンマドリルでは、例えば、ハウジングの上端部が鉛直下側に向いた状態で、ハンマドリルが落下した場合等に、モード切替ダイヤルが損傷する可能性がある。そのため、選択されたモードに応じて動作するように構成された回転打撃工具において、モードを切り替えるための操作部の損傷を抑制可能な技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、回転打撃工具が提供される。前記回転打撃工具は、モータと、駆動機構と、工具本体と、ハンドルと、第1操作部材とを備える。前記駆動機構は、前記モータの動力によって、先端工具を駆動軸周りに回転駆動する動作を少なくとも行う第1モードと、前記先端工具を前記駆動軸に沿って直線状に駆動する動作のみを行う第2モードとを含む複数の動作モードで選択的に動作可能に構成されている。前記工具本体は、前記モータ及び前記駆動機構を収容するように構成されている。前記ハンドルは、前記駆動軸に交差する方向に延在しユーザによって把持される把持部を有する。前記第1操作部材は、前記ユーザによって操作されることで、前記駆動機構の前記動作モードを切り替え可能に構成されている。前記第1操作部材は、前記工具本体のうち前記把持部と対向する位置に設けられている。
【0007】
この形態によれば、駆動機構のモードを切り替える第1操作部材は、工具本体のうち把持部に対向する位置に設けられるので、例えば、回転打撃工具が壁や地面等に衝突しても、第1操作部材は、壁や地面等と衝突しない。そのため、回転打撃工具に外部からの衝撃が加わることで第1操作部材が損傷することを、抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ハンマドリルの概略構成を示す縦断面図である。
図2図1の部分拡大図であり、打撃モードが選択された状態を示す図である。
図3】モード切替操作部を後側から見た図である。
図4図2のIV-IV断面図であり、モード切替操作部が板バネによって位置決めされる様子を説明する図である。
図5図3のV-V断面図であり、モード切替操作部の第1ラックギヤと、第1ピニオンギヤとの関係を示す図である。
図6】打撃モードが選択されたときの接続部材周辺及びロックレバーの上面図である。
図7図5に対応するモード切替操作部の断面図であり、回転打撃モードが選択された状態を示す図である。
図8図2に対応するハンマドリルの部分拡大図であり、回転打撃モードが選択された状態を示す図である。
図9図6に対応する接続部材周辺及びロックレバーの上面図であり、回転打撃モードが選択された状態を示す図である。
図10図5に対応するモード切替操作部の断面図であり、ニュートラルモードが選択された状態を示す図である。
図11図2に対応するハンマドリルの部分拡大図であり、ニュートラルモードが選択された状態を示す図である。
図12図6に対応する接続部材周辺及びロックレバーの上面図であり、ニュートラルモードが選択された状態を示す図である。
図13図2のXIII-XIII断面図であり、ロック機構について説明するための図である。
図14】ロック機構周辺の拡大縦断面図であり、打撃モードが選択されたときのロック機構及びスイッチレバーについて説明するための図である。
図15】ロック機構周辺の拡大縦断面図であり、回転打撃モードが選択されたときのロック機構及びスイッチレバーについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに開示は、更に改善された回転打撃工具、その制御方法及び使用方法を提供するために、他の特徴や開示とは別に、又は共に用いることができる。
【0010】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。更に、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0011】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施形態及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。更に、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0012】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記把持部は、第2操作部材を備えていてもよい。前記第2操作部材は、常時にはオフ位置に維持され、前記ユーザによって押圧されることでオン位置に移動して前記モータを駆動可能に構成されていてもよい。前記第1操作部材は、前記第2操作部材に対向する位置に設けられていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、第1操作部材は、工具本体のうち、モータ駆動用の第2操作部材に対向する位置に設けられているので、第1操作部材の操作と第2操作部材の操作とを、一方の手で行うことができる。そのため、回転打撃工具の操作性を向上させることができる。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第1操作部材は、前記駆動軸に交差する方向における予め定められた範囲内を摺動可能に構成されていてもよい。また、前記第1操作部材は、前記予め定められた範囲内における第1位置に移動されるのに応じて、前記駆動機構の前記動作モードを前記第1モードに切り替えるように構成されていてもよい。また、前記第1操作部材は、前記予め定められた範囲内における、前記第1位置とは異なる第2位置に移動されるのに応じて、前記駆動機構の前記動作モードを前記第2モードに切り替えるように構成されていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、第1操作部材の操作によって、駆動機構の動作モードを第1モードと前記第2モードとの間で切り替えることができる。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記回転打撃工具は、更に、ツールホルダと、クラッチ部材とを備えていてもよい。前記ツールホルダは、前記先端工具を取り外し可能に保持し、前記モータから伝達されたトルクによって前記駆動軸周りに回転駆動されるように構成されていてもよい。前記クラッチ部材は、前記ツールホルダ上に設けられて前記第1操作部材の操作に応じて前記駆動軸に沿って移動可能に構成されていてもよい。前記クラッチ部材は、前記駆動軸に沿った方向における第3位置に配置されることで前記トルクを伝達するように構成されていてもよい。また、前記クラッチ部材は、前記駆動軸に沿った方向における前記第3位置とは異なる第4位置に配置されることで前記トルクの伝達を遮断するように構成されていてもよい。前記駆動機構は、前記クラッチ部材が前記第3位置に配置されることで前記第1モードで動作するように構成されていてもよい。また、前記駆動機構は、前記クラッチ部材が前記第4位置に配置されることで前記第2モードで動作するように構成されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、クラッチ部材を駆動軸に沿った方向における第3位置と第4位置との間で移動させることで、駆動機構の動作モードを第1モードと第2モードとの間で切り替えることができる。
【0018】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記回転打撃工具は、伝達機構を備えていてもよい。前記伝達機構は、前記第1操作部材の前記予め定められた範囲内の摺動を前記クラッチ部材に伝達して、前記クラッチ部材を前記駆動軸に沿って移動させるように構成されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、工具本体のうち、把持部に対向する位置に設けられた第1操作部材の摺動を、駆動軸周りに回転駆動されるツールホルダ上のクラッチ部材にまで伝達することができる。
【0020】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記伝達機構は、変換機構を備えていてもよい。前記変換機構は、前記第1操作部材の前記予め定められた範囲内の直線状の摺動を回転運動に変換するように構成されていてもよい。前記変換機構は、更に、前記回転運動を前記駆動軸に沿った直線運動に変換するように構成されていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、第1操作部材の直線状の摺動を回転運動に変換し、当該回転運動を駆動軸に沿った直線運動に変換することで、クラッチ部材を駆動軸に沿って移動させることができる。また、変換機構を備えない構成と比較して、伝達機構の配置の自由度を向上させることができる。
【0022】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記変換機構は、第1ラックギヤと、第1ピニオンギヤと、第2ピニオンギヤと、第2ラックギヤとを備えていてもよい。前記第1ラックギヤは、前記第1操作部材の前記予め定められた範囲内の前記直線状の摺動に応じて摺動するように構成されていてもよい。前記第1ピニオンギヤは、前記第1ラックギヤに係合するように構成されていてもよい。前記第2ピニオンギヤは、前記第1ピニオンギヤの回転に応じて回転するように構成されていてもよい。前記第2ラックギヤは、前記第2ピニオンギヤに係合し、前記第1ピニオンギヤ及び前記第2ピニオンギヤの前記回転運動を前記駆動軸に沿った前記直線運動に変換するように構成されていてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、第1ラックギヤと第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤと第2ラックギヤとを用いて、第1操作部材の直線状の摺動を直線運動に変換してクラッチ部材に伝達することができる。
【0024】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記回転打撃工具は、前記第1操作部材を付勢する付勢部材を備えていてもよい。前記第1操作部材は、前記付勢部材の付勢力によって前記第1位置に保持され、かつ、前記第2位置に保持されるように構成されていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、第1操作部材を予め定められた範囲内で摺動させつつ、第1位置や第2位置に位置決めすることが容易な回転打撃工具を提供できる。
【0026】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記把持部は、常時にはオフ位置に維持され、前記ユーザによって押圧されることでオン位置に移動して前記モータを駆動可能に構成された第2操作部材を備えていてもよい。前記回転打撃工具は、更に、ロック部材と、ロック制御部材とを備えていてもよい。前記ロック部材は、前記第2操作部材を前記オン位置でロック可能なロック可能位置と、前記第2操作部材を前記オン位置でロック不能なロック不能位置との間で、前記ユーザの操作によって移動可能に構成されていてもよい。前記ロック制御部材は、前記駆動軸に沿って移動可能に構成されていてもよい。前記ロック制御部材は、前記第1操作部材の操作に応じて、前記第1モードのとき前記ロック部材に干渉する位置に配置され、前記ロック部材を前記ロック不能位置に保持するように構成されていてもよい。更に、前記ロック制御部材は、前記第1操作部材の操作に応じて、前記第2モードのとき前記ロック部材に干渉しない位置に配置されて、前記ロック部材の前記ロック可能位置への移動を許容するように構成されていてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、先端工具が打撃動作のみを行う第2モードのとき、ロック制御部材は、ロック部材がロック可能位置に移動することを許容するように構成されているので、ユーザは、打撃動作のみを比較的長時間連続する加工作業において、第2操作部材を押圧し続けなくともよい。そのため、加工作業におけるユーザの負担を軽減することができる。また、先端工具が回転動作を行う第1モードのとき、ロック制御部材はロック部材をロック不能位置に保持するので、例えば、先端工具が加工対象物にロックされても、ユーザは第2操作部材の押圧を解除するだけでモータの駆動を停止することができる。そのため、安全性の高い回転打撃工具を提供することができる。
【0028】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記回転打撃工具は、モード検出部と、回転検出部と、制御部とを備えていてもよい。前記モード検出部は、前記駆動機構の前記動作モードが少なくとも前記第1モードであることを検出するように構成されていてもよい。前記回転検出部は、前記工具本体の前記駆動軸周りの回転状態を検出するように構成されていてもよい。前記制御部は、前記モータの駆動を制御可能に構成されていてもよい。前記制御部は、前記回転検出部と前記モード検出部との検出結果を用いて、前記動作モードが第1モードであり、かつ、前記工具本体の状態が前記駆動軸周りに過度に回転した状態である場合に、前記モータを停止するように構成されていてもよい。
【0029】
上記の構成によれば、先端工具が回転動作を行う第1モードのとき、例えば、先端工具が加工対象物にロックされて、工具本体が駆動軸周りに過度に回転してしまう現象(キックバック現象ともいう)が発生しても、回転検出部の検出値に基づいてコントローラがモータを停止するので、回転打撃工具の安全性をより高めることができる。
【0030】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記回転打撃工具は、弾性部材を備えていてもよい。前記弾性部材は、前記ハンドルを前記工具本体に対して前記駆動軸に沿って相対移動可能に連結してもよい。前記回転検出部は、前記ハンドルに収容されていてもよい。
【0031】
上記の構成によれば、回転検出部は、弾性部材によって工具本体に対して相対移動可能に連結されたハンドルに収納されているので、回転検出部に伝わる工具本体の振動を減少させることができる。そのため、回転検出部を長寿命化することができる。
【0032】
<実施形態>
以下、図1から図15を用いて、一実施形態に係る回転打撃工具について説明する。本実施形態では、回転打撃工具の一例として、ハンマドリル100について説明する。ハンマドリル100は、ツールホルダ30に装着された先端工具101を所定の駆動軸A1周りに回転駆動する動作(以下、回転動作という)と、先端工具101を駆動軸A1に平行に直線状に駆動する動作(以下、打撃動作という)とを実行可能に構成されている。
【0033】
まず、図1を参照して、ハンマドリル100の全体構成について簡単に説明する。図1に示すように、ハンマドリル100は、工具本体10と、工具本体10に連結されたハンドル17とで構成されている。
【0034】
工具本体10は、駆動軸A1に沿って延在するギヤハウジング12と、ギヤハウジング12の長軸方向における一端部に連結され、駆動軸A1に交差する方向に延在するモータハウジング13とを備える。本実施形態では、モータハウジング13は、駆動軸A1に概ね直交する方向に延在する。このような構成により、工具本体10は、全体としては略L字状に形成されている。
【0035】
ギヤハウジング12の長軸方向における他端部内には、先端工具101を着脱可能に構成されたツールホルダ30が配置されている。また、ギヤハウジング12には、駆動機構3が収容されている。詳細は後述するが、駆動機構3は、回転動作と打撃動作とを行うモード(以下、回転打撃モード)と、打撃動作のみを行うモード(以下、打撃モード)とを含む複数の動作モードで選択的に動作可能に構成されている。モータハウジング13には、モータ2が収容されている。モータ2は、モータシャフト25の回転軸A2が駆動軸A1と交差する(より詳細には、直交する)ように配置されている。ギヤハウジング12とモータハウジング13とは、相対移動不能に連結されている。
【0036】
ハンドル17は、駆動軸A1に交差する方向(より詳細には、概ね直交する方向)に延在する把持部170と、把持部170の長軸方向の両端部から把持部170に交差する方向(より詳細には、概ね直交する方向)に突出する連結部173、174とを含む。ハンドル17は、全体としては略C字状に形成されている。ハンドル17は、工具本体10の長軸方向において、ツールホルダ30が配置されている側とは反対側の端部に連結されている。より詳細には、連結部173がギヤハウジング12に連結され、連結部174がモータハウジング13に連結されている。
【0037】
以下、ハンマドリル100の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、ハンマドリル100の駆動軸A1の延在方向(ギヤハウジング12の長軸方向)をハンマドリル100の前後方向と規定し、ツールホルダ30が設けられている一端部側をハンマドリル100の前側、その反対側を後側と規定する。また、把持部170の延在方向をハンマドリル100の上下方向と規定し、連結部173とギヤハウジング12とが連結する側を上側、その反対側を下側と規定する。また、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0038】
まず、ハンドル17について説明する。上述したように、ハンドル17は、上下方向に延在する把持部170と、把持部170の上端から前方に突出する連結部173と、把持部170の下端から前方に突出する連結部174とを備える。図1に示すように、連結部173とギヤハウジング12の後上端部との間、及び連結部174とモータハウジング13の後下端部との間には、夫々、弾性部材175、176が配置されている。本実施形態では、弾性部材175、176として圧縮コイルバネが採用されている。ハンドル17は、弾性部材175、176を介して、工具本体10に対して前後方向に相対移動可能に連結されている。このような構成により、工具本体10から、ハンドル17に伝達される振動(特に、打撃動作に起因する前後方向の振動)が低減される。
【0039】
把持部170には、スイッチレバー171が設けられている。スイッチレバー171は、把持部170の前側であって、把持部170の上下方向における略中間位置から上側にかけて配置されている。スイッチレバー171は、ユーザによる押圧操作が可能に構成されている。図2には、スイッチレバー171のオフ位置が実線で、オン位置が二点鎖線で示されている。スイッチレバー171は、常時には、スイッチレバー171の後に設けられたメインスイッチ172のプランジャによって前方へ付勢されることで、オフ位置に保持されており、ユーザの押圧操作によって把持部170内に引き込まれて後方のオン位置へ移動する。スイッチレバー171がオン位置へ移動すると、ハンドル17内に収容されたメインスイッチ172がオンされ、後述するコントローラ9の制御により、モータ2が駆動される。
【0040】
ハンドル17の連結部173付近には、ロック機構8が設けられている。ロック機構8は、動作モードが打撃モードのとき、スイッチレバー171をオン位置でロック可能とし、動作モードが回転打撃モードのとき、スイッチレバー171をオン位置でロック不能とするように構成された機構である。ロック機構8については後述する。
【0041】
ハンドル17内には、加速度センサ95が収容されている。本実施形態では、加速度センサ95は、把持部170の下端部内に収容されており、駆動軸A1から比較的離れた位置に配置されている。加速度センサ95は、検出した加速度を示す信号を、後述するコントローラ9に出力可能に構成されている。なお、本実施形態では、加速度センサ95によって検出される加速度は、工具本体10の駆動軸A1周りの回転状態を示す指標として使用される。
【0042】
次に、モータハウジング13の内部構造について説明する。モータハウジング13には、主に、モータ2と、コントローラ9とが収容されている。
【0043】
図1に示すように、モータ2は、ステータ21およびロータ23を含むモータ本体部20と、ロータ23から延設されたモータシャフト25とを有する。モータ2(モータシャフト25)の回転軸A2は、上下方向に延在する。本実施形態では、モータ2として、電源コード19を介して外部電源からの電力供給を受けて駆動される交流モータが採用されている。モータシャフト25は、上下端部において、ベアリングによって回転可能に支持されている。モータシャフト25の上端部は、ギヤハウジング12内に突出しており、この部分に駆動ギヤ29が形成されている。
【0044】
コントローラ9は、モータ本体部20の後壁132に取り付けられている。本実施形態では、コントローラ9は、CPUとメモリ等を含むマイクロコンピュータで構成されており、CPUがハンマドリル100の動作を制御するように構成されている。
【0045】
コントローラ9は、電線(図示せず)を介して、メインスイッチ172と、加速度センサ95と、後述するモード検出部90とに電気的に接続されている。本実施形態では、コントローラ9は、メインスイッチ172がオン状態とされると、調整ダイヤル(図示せず)を介して設定された回転数に応じて、モータ2を駆動する。また、詳細は後述するが、コントローラ9は、加速度センサ95とモード検出部90との検出結果を用いて、工具本体10が駆動軸A1周りに過度に回転した状態のとき、モータ2の駆動を停止するように構成されている。
【0046】
次に、ギヤハウジング12の内部構造について説明する。ギヤハウジング12には、主に、ツールホルダ30と、駆動機構3と、伝達機構4とが収容されている。
【0047】
ギヤハウジング12の前側部分は、駆動軸A1に沿って概ね円筒状に形成されており、ツールホルダ30はこの円筒状部分(バレル部ともいう)に収容されている。また、図示は省略するが、バレル部には、ハンマドリル100の把持を補助するための補助ハンドルを取付可能である。
【0048】
駆動機構3は、運動変換機構31と、打撃機構33と、回転伝達機構35とを含む。運動変換機構31と回転伝達機構35の大部分は、ギヤハウジング12の後側部分に収容されている。
【0049】
運動変換機構31は、モータ2の回転運動を直線運動に変換して打撃機構33に伝達するように構成されている。本実施形態では、運動変換機構31として、周知のクランク機構が採用されている。図2に示すように、運動変換機構31は、クランクシャフト311と、連接ロッド313と、ピストン315とを含む。クランクシャフト311は、ギヤハウジング12の後端部に、モータシャフト25と平行に配置されている。クランクシャフト311は、駆動ギヤ29に噛合する被動ギヤ312を有する。連接ロッド313の一端部は偏心ピンに連結され、他端部は連結ピンを介してピストン315に連結されている。ピストン315は、円筒状のシリンダ317内に摺動可能に配置されている。モータ2が駆動されると、ピストン315は、シリンダ317内で駆動軸A1に沿って(前後方向に)往復移動される。
【0050】
打撃機構33は、ストライカ331と、インパクトボルト333(図1参照)とを含む。ストライカ331は、ピストン315の前側に、シリンダ317内で前後方向に摺動可能に配置されている。ストライカ331とピストン315との間には、ピストン315の往復移動によって生じる空気の圧力変動を介して、ストライカ331を直線状に移動させるための空気室335が形成されている。インパクトボルト333は、ストライカ331の運動エネルギを先端工具101に伝達する中間子として構成されている。図1に示すように、インパクトボルト333は、シリンダ317と同軸状に配置されたツールホルダ30内に前後方向に摺動可能に配置されている。
【0051】
モータ2が駆動され、ピストン315が前方に向けて移動されると、空気室335の空気が圧縮されて内圧が上昇する。ストライカ331は、空気バネの作用で高速に前方に押し出されてインパクトボルト333に衝突し、運動エネルギを先端工具101に伝達する。これにより、先端工具101は駆動軸A1に平行に直線状に駆動され、被加工物を打撃する。一方、ピストン315が後方へ移動されると、空気室335の空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ331が後方へ引き込まれる。ハンマドリル100は、運動変換機構31および打撃機構33にこのような動作を繰り返させることで、打撃動作を行う。
【0052】
回転伝達機構35は、モータシャフト25のトルクを、ツールホルダ30に伝達するように構成されている。図2に示すように、本実施形態では、回転伝達機構35は、モータシャフト25に設けられた駆動ギヤ29と、中間シャフト36と、クラッチ機構54とを含む。回転伝達機構35は、減速ギヤ機構として構成されており、モータシャフト25、中間シャフト36、ツールホルダ30の順に、回転速度は順次低下する。
【0053】
中間シャフト36は、モータ2の前側上部にモータシャフト25と平行に配置されている。中間シャフト36の下部には、駆動ギヤ29に噛合する被動ギヤ362が設けられている。また、中間シャフト36の上部には、小ベベルギヤ361が設けられている。
【0054】
クラッチ機構54は、ツールホルダ30に搭載されている。クラッチ機構54は、モータシャフト25からツールホルダ30へトルクを伝達する、または、トルクの伝達を遮断するように構成されている。本実施形態では、クラッチ機構54は、大ベベルギヤ561を有するギヤスリーブ56と、ドライビングスリーブ55とを含む。ギヤスリーブ56は、ツールホルダ30の後端部の周囲に、駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。大ベベルギヤ561は、中間シャフト36の上端部の小ベベルギヤ361に噛合している。
【0055】
ドライビングスリーブ55は、円筒状に形成されており、ギヤスリーブ56の前側で、ツールホルダ30の外周にスプライン結合されている。つまり、ドライビングスリーブ55は、ツールホルダ30に対する周方向の移動が規制され、かつ、前後方向に移動可能な状態で、ツールホルダ30に係合されている。
【0056】
図2図8図11には、ドライビングスリーブ55の移動範囲内の最後方位置(以下、位置Pd)と、最前方位置(以下、位置Ph)とが示されている。ドライビングスリーブ55は、位置Pdに移動されると、ギヤスリーブ56の前端部に係合する(図8参照)。これにより、モータ2のトルクは、回転伝達機構35を介して、ツールホルダ30に伝達可能な状態となる。上述したように、モータ2が駆動されると運動変換機構31も駆動されるため、ドライビングスリーブ55が位置Pdに配置された状態でモータ2が駆動されると、ハンマドリル100では、回転動作と打撃動作とが同時に行われることになる。つまり、ドライビングスリーブ55が位置Pdに移動されると、ハンマドリル100の動作モードは、回転打撃モードに切り替わる。
【0057】
また、ドライビングスリーブ55が位置Pdから前方へ移動されると、ドライビングスリーブ55とギヤスリーブ56との係合が解除される(図11参照)。これにより、モータ2のトルクは、回転伝達機構35を介してツールホルダ30に伝達不能な状態となる。そして、ドライビングスリーブ55は、図2に示すように、位置Phへ移動されると、ギヤハウジング12に固定されたロックリング301に係合し、ツールホルダ30は駆動軸A1周りに回転不能となる。この状態でモータ2が駆動されると、運動変換機構31が駆動されて、ハンマドリル100では打撃動作のみが行われることになる。つまり、ドライビングスリーブ55が位置Phに移動されると、ハンマドリル100の動作モードは、打撃モードに切り替わる。このように、ハンマドリル100では、ドライビングスリーブ55が駆動軸A1に平行に(前後方向に)移動されることで、動作モードが切り替えられる。
【0058】
なお、図11に示すように、ドライビングスリーブ55が位置Phと位置Pdとの間に移動されたとき、上述したようにモータ2のトルクはツールホルダ30に伝達不能である。また、ドライビングスリーブ55はロックリング301に係合していないので、ツールホルダ30はギヤハウジング12に固定されていない。そのため、この状態では、ユーザは、手指で先端工具101を把持して駆動軸A1周りに回転させることで、先端工具101とツールホルダ30とを駆動軸A1周りに回転させることができる。つまり、駆動機構3の動作モードは、先端工具101の位置合わせを行うことが可能なモードに切り替わる。この動作モードを、「ニュートラルモード」とも呼ぶ。
【0059】
以下、ハンマドリル100の動作モードを切り替えるための構成について説明する。ハンマドリル100は、ユーザによって操作されるモード切替操作部6と、モード切替操作部6の操作をドライビングスリーブ55に伝達する伝達機構4とを備えており、これらによって動作モードを切り替えるように構成されている。
【0060】
図1図2図8及び図11に示すように、モード切替操作部6は、工具本体10のうち、把持部170と対向する位置に設けられている。モード切替操作部6は、把持部170の前側に設けられたスイッチレバー171と対向している。本実施形態では、モード切替操作部6は、ギヤハウジング12の後壁121の上部に形成された開口122から一部を露出させた状態で、ギヤハウジング12に左右方向に直線状に移動可能に支持されている。モード切替操作部6は、モードチェンジレバーとも呼ばれる。
【0061】
モード切替操作部6は、ユーザが操作する部位である主操作部61と、主操作部61に接続された基部62とを備える。図3に示すように、主操作部61は、左右方向に長軸を有する矩形状の板部611と、板部611から後方へ突出するレバー612とを備える。レバー612は、板部611の左右方向における中央部に設けられ、上下方向に延在している。モード切替操作部6は、レバー612が開口122の左右方向における中央に配置されるときの位置Pnから左側の位置P1と、位置Pnから右側の位置P2との間を移動可能である。図3では、モード切替操作部6が位置P2に位置づけられた様子が実線で示され、モード切替操作部6が位置Pn、P1に位置づけられた様子が二点鎖線で示されている。詳細は後述するが、ユーザは、レバー612を操作して、モード切替操作部6を位置P2に移動させることで、動作モードを打撃モードに切り替え、モード切替操作部6を位置P1に移動させることで、動作モードを回転打撃モードに切り替えることができる。また、ユーザは、レバー612を操作して、モード切替操作部6を位置Pnに移動させることで、動作モードをニュートラルモードに切り替えることができる。
【0062】
モード切替操作部6の基部62は、左右方向に移動可能に、ギヤハウジング12に保持されている。図4に示すように、基部62の上側及び下側には、ギヤハウジング12に保持された板バネ125が配置されている。板バネ125は、断面視において左右方向に延在している。板バネ125は、開口122の左右方向における中央部に相当する位置において、基部62に向けて突出する凸部126を備える。基部62の上端及び下端には、夫々、下方及び上方に向けて窪んだ、凹部62p2、62pn、62p1が形成されている。凹部62p2、凹部62pn、凹部62p1は、左から右に、この順で形成されており、夫々、板バネ125の凸部126と係合可能である。図4では、凸部126は凹部62phと係合している。凹部62p2、62pn、62p1は、夫々が凸部126と係合したとき、モード切替操作部6を、夫々、位置P2、位置Pn、位置P1に位置決めするように、左右方向に間隔をあけて配置されている。このように、モード切替操作部6は、板バネ125の付勢力によって位置P2、位置Pn、位置P1に保持される。
【0063】
次に、伝達機構4について説明する。伝達機構4は、モード切替操作部6の操作をドライビングスリーブ55に伝達するように構成されている。図2に示すように、本実施形態では、伝達機構4は、第1変換機構40と、第1変換機構40とドライビングスリーブ55とを接続する接続部材70とを備える。第1変換機構40は、モード切替操作部6(主操作部61)の左右方向の直線状の摺動を、駆動軸A1に平行な方向(前後方向)の直線運動に変換するように構成されている。接続部材70は、駆動軸A1に平行に移動可能に配置されており、第1変換機構40とドライビングスリーブ55とを接続するように構成されている。
【0064】
まず、第1変換機構40について説明する。第1変換機構40は、ラックアンドピニオン機構として構成されている。図2図8図11に示すように、第1変換機構40は、第1ラックギヤ621と、第1ピニオンギヤ41と、第1シャフト43と、第2ピニオンギヤ42と、第2ラックギヤ712とを備える。本実施形態では、第1変換機構40を構成するこれらの各部材は、モード切替操作部6が位置P1に移動されたとき接続部材70を移動範囲内の最後方位置へ移動させ、モード切替操作部6が位置P2に移動されたとき接続部材70を移動範囲内の最前方位置へ移動させるように構成されている。以下、各部材について説明する。
【0065】
第1ラックギヤ621は、モード切替操作部6の一部を構成している。図5に示すように、第1ラックギヤ621は、基部62の前部に形成されている。第1ラックギヤ621は、モード切替操作部6(主操作部61)の左右方向の直線状の移動に応じて、左右方向に直線状に移動する。
【0066】
第1ピニオンギヤ41は、第1ラックギヤ621の前側において第1ラックギヤ621に噛合している。図2図8図11に示すように、第1シャフト43は、上下方向に延在してギヤハウジング12に回転可能に支持されており、下部に第1ピニオンギヤ41が固定され、上部に第2ピニオンギヤ42が固定されている。第1シャフト43の中心軸は、第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42の回転軸(以下、回転軸A3)でもある。第1ラックギヤ621が左右方向に移動すると、第1ピニオンギヤ41は回転軸A3周りに回転し、第1シャフト43を回転させる。その結果、第1シャフト43の上部に保持された第2ピニオンギヤ42が、回転軸A3周りに回転する。
【0067】
第2ラックギヤ712は、第1シャフト43の上部の第2ピニオンギヤ42に噛合している。図2及び図6に示すように、第2ラックギヤ712は、第1変換機構40の上部において前後方向に延在する、第1部材71に設けられている。第2ピニオンギヤ42が回転軸A3周りに回転すると、第2ラックギヤ712の設けられた第1部材71は、駆動軸A1に平行に(つまり、前後方向に)移動する。このように、モード切替操作部6の左右方向の移動は、第1変換機構40によって、駆動軸A1に沿った直線動に変換される。
【0068】
次に、接続部材70について説明する。図2及び図6に示すように、接続部材70は、第2ラックギヤ712が形成された第1部材71と、第2部材72と、第3部材73と、ドライビングスリーブ55に係合する係合アーム74とを備える。これら各部材は、後から前に、この順で並んで接続されており、前後方向に一体的に移動可能にギヤハウジング12内に配置されている。接続部材70は、第2ピニオンギヤ42の回転によって第2ラックギヤ712を介して前後方向に移動する。接続部材70は、移動範囲内の最前方位置に移動することでドライビングスリーブ55を位置Phに移動させ、最後方位置に移動することでドライビングスリーブ55を位置Pdに移動させるように構成されている。また、接続部材70は、モード切替操作部6が位置P2に移動されたとき最前方位置へ移動し、モード切替操作部6が位置P1に移動されたとき最後方位置へ移動するように、その前後方向の長さが構成されている。
【0069】
接続部材70の詳細について説明する。第1部材71は、第2ピニオンギヤ42の回転に応じて第2ラックギヤ712が前後方向に移動することで、前後方向に移動する。本実施形態では、第1部材71は、上下方向に直交し前後方向に延在する板状部711と、板状部711の前端部に設けられ板状部711から上に突出する上凸部717(図2参照)とを有する。第2ラックギヤ712は、板状部711に設けられている。第1部材71は、更に、板状部711の前端部から右に突出する右凸部713と、板状部711の前端部から左に突出する左凸部714とを有する。
【0070】
第2部材72は、前後方向に延在する棒状部材である。第2部材72の後端部は、第1部材71の上凸部717内に挿入されて、第1部材71と接続されている。図6では、上凸部717内を示すことで、第1部材71と第2部材72との接続箇所が表されている。第3部材73は、矩形状に形成された部材であり、第3部材73の後端部には、第2部材72の前端部が接続されている。係合アーム74は、前後方向に延在する長尺状の板状部材である。図2に示すように、係合アーム74の後端部は、第3部材73の前端部と接続されている。係合アーム74の二股状の前端部は、鉤状に下方に屈曲されており、ドライビングスリーブ55の外周部に形成された環状溝551に係合している。本実施形態では、係合アーム74の後端部には貫通孔が設けられており、貫通孔には連結ピン76が挿通されている。また、第3部材73の前端部の左端部には、トーションスプリング77が保持されており、連結ピン76の下端部は、トーションスプリング77の付勢力により、トーションスプリング77の2本のアームの間で挟持されている。なお、2本のアームのうち連結ピン76の後側に配置されたアームは、第3部材73に係止されている。
【0071】
以上の構成により、モード切替操作部6が右方向に移動されて位置P2に配置されると(図5参照)、モード切替操作部6の右方向への移動が第1変換機構40によって接続部材70の前方への直線運動に変換される。接続部材70は移動範囲内の最前方位置へ移動して(図1図2及び図6参照)、ドライビングスリーブ55が位置Phに移動される(図2参照)。その結果、ハンマドリル100の動作モードは、打撃モードに切り替わる。
【0072】
また、図7に示すように、モード切替操作部6が左方向に移動されて位置P1に移動されると、モード切替操作部6の左方向への移動が第1変換機構40によって接続部材70の後方への直線運動に変換される。そうすると、図8及び図9に示すように、接続部材70は移動範囲内の最後方位置へ移動して、ドライビングスリーブ55が位置Pdに移動される。その結果、ハンマドリル100の動作モードは、回転打撃モードに切り替わる。
【0073】
なお、図10に示すように、モード切替操作部6が右方向又は左方向へ移動されて位置Pnに移動されると、モード切替操作部6の左方向又は右方向への移動が第1変換機構40によって接続部材70の駆動軸A1に沿った前方又は後方への直線運動に変換される。そうすると、図11及び図12に示すように、接続部材70は、移動範囲内の最前方位置と最後方位置の間に移動して、ドライビングスリーブ55は、位置Phと位置Pdとの間に移動する。その結果、ハンマドリル100の動作モードは、ニュートラルモードに切り替わる。
【0074】
次に、図13から図15を用いて、ロック機構8について説明する。本実施形態では、ロック機構8は、ロックレバー180と、第1部材71とを含んでいる。
【0075】
ロックレバー180は、ハンドル17の上端部(連結部173付近)であって、スイッチレバー171の上側に設けられ、ハンドル17に対して左右方向に移動可能に支持されている。本実施形態では、ロックレバー180は、左右方向に延在する棒状の本体部181と、本体部181の下端部から下方へ突出する2つの係止片182とを備える。図13に示すように、本体部181の左右方向の両端部は、連結部173の左壁及び右壁に設けられた開口177から露出している。ユーザは、本体部181をハンドル17に対して左方又は右方に押し込むことで、ロックレバー180を操作可能である。
【0076】
本実施形態のスイッチレバー171には、上方に突出する2つの係止突起178が設けられている。図13に実線で示すように、ロックレバー180の2つの係止片182は、スイッチレバー171の係止突起178を2つの係止片182の間に配置可能なように、左右方向に離間して配置されている。なお、図13に二点鎖線で示すように、ロックレバー180の2つの係止片182の間隔は、スイッチレバー171の2つの係止突起178の間隔と等しい。
【0077】
ロックレバー180は、スイッチレバー171をオン状態でロック可能なロック可能位置と、スイッチレバー171をオン状態でロック不能なロック不能位置とに移動可能である。ロック可能位置は、図13に二点鎖線で示すように、ロックレバー180の係止片182がスイッチレバー171の係止突起178の移動経路上に存在する、ロックレバー180の位置である。ロック可能位置では、オン位置に移動したスイッチレバー171の係止突起178の前端に、スイッチレバー171の係止片182の後端が当接することで、スイッチレバー171をオン位置で保持可能である。ロック不能位置は、図13に実線で示すように、ロックレバー180の係止片182がスイッチレバー171の係止突起178の移動経路上から外れた位置に存在する、ロックレバー180の位置である。ロック不能位置では、係止突起178は、係止片182の前後方向の移動に干渉しない。そのため、スイッチレバー171はオン位置とオフ位置との間を移動可能である。なお、ロックレバー180は、常時には、スイッチレバー171の操作を可能とするために、ユーザによって、図13に実線で示すロック不能位置に配置されており、スイッチレバー171をオン状態でロックするときにのみ、ユーザによってロック可能位置に移動される。また、図示は省略するが、本実施形態では、ロックレバー180は、付勢部材の付勢力によってロック不能位置、またはロック可能位置で保持される。
【0078】
ロックレバー180の説明に戻る。本体部181の左右方向における略中央部には、前後方向に本体部181を貫通するロック孔184が形成されている。ロック孔184の上下方向の高さ及び左右方向の幅は、第1部材71の板状部711を挿入可能な高さ及び幅に形成されている。第1部材71は、上述したように接続部材70の一部を構成しており、モード切替操作部6の操作に応じて前後方向に移動する。
【0079】
図6図9及び図12には、接続部材70とロック孔184との位置関係が示されている。第1部材71の板状部711は、モード切替操作部6が位置P1に移動されると(つまり、回転打撃モードが選択されると)、第1変換機構40によって移動範囲内の最後方位置に移動されてロック孔184に係合し、モード切替操作部6が位置Pnや位置P2に移動されると(つまり、ニュートラルモードや打撃モードが選択されると)、第1変換機構40によって最後方位置から前方に移動されてロック孔184との係合が解除されるように、前後方向に延在している。
【0080】
以上のような構成により、モード切替操作部6が位置P1に移動されると(つまり、回転打撃モードが選択されると)、接続部材70は移動範囲内の最後方位置に移動し、板状部711はロック孔184に係合する(図9図15参照)。そうすると、ロックレバー180の左右方向の移動は第1部材71によって規制され、ロックレバー180は、ロック不能位置に留まる。一方、モード切替操作部6が位置P2に移動されると(つまり、打撃モードが選択されると)、接続部材70は移動範囲内の最前方位置に移動して、板状部711とロック孔184との係合が解除される(図6図14参照)。そのため、ロックレバー180は、左右方向に移動可能となる。この状態でユーザの操作によってロックレバー180がロック可能位置に移動されると、スイッチレバー171のオン状態が保持される。つまり、打撃モードでは、ユーザは、ロックレバー180を押し込み操作してロック可能位置へ移動させることで、スイッチレバー171の押圧を継続せずに、スイッチレバー171のオン状態を継続することができる。
【0081】
次に、ハンマドリル100のモード検出部90と、コントローラ9による、モード検出部90と加速度センサ95とを用いたモータ2の制御とについて説明する。
【0082】
まず、モード検出部90について説明する。モード検出部90は、ハンマドリル100の動作モード(現在の実際の動作モード、具体的にはドライビングスリーブ55の位置)を検出するように構成されている。本実施形態では、モード検出部90は、ギヤハウジング12の上部に配置された第1スイッチ91と第2スイッチ92とを含む。本実施形態では、第1スイッチ91と第2スイッチ92とは、押し込み式のマイクロスイッチである。第1スイッチ91と第2スイッチ92とは、押圧されると、コントローラ9に信号(オン信号)を出力するように構成されている。
【0083】
第1スイッチ91は、第1部材71の右凸部713の後方に右凸部713と対向して配置され、ギヤハウジング12に固定されている。右凸部713と第1スイッチ91とは、接続部材70が最後方位置に移動したとき(つまり、ドライビングスリーブ55が位置Pdに移動したとき)、右凸部713の後端面が第1スイッチ91に当接して第1スイッチ91を後方へ押し込むように、その位置関係が調整されている。また、第2スイッチ92は、第1部材71の左凸部714の前方に左凸部714と対向して配置され、ギヤハウジング12に固定されている。左凸部714と第2スイッチ92とは、接続部材70が最前方位置に移動したとき(つまり、ドライビングスリーブ55が位置Phに移動したとき)、左凸部714の前端面が第2スイッチ92に当接して第2スイッチ92を前方へ押し込むように、その位置関係が調整されている。
【0084】
このような構成により、コントローラ9は、第1スイッチ91と第2スイッチ92との検出結果(つまり、ドライビングスリーブ55の位置)から、ハンマドリル100の動作モードを判断することができる。具体的には、第1スイッチ91からコントローラ9にオン信号が出力されているとき、ハンマドリル100の動作モードは回転打撃モードであり、第2スイッチ92からコントローラ9にオン信号が出力されているとき、動作モードは打撃モードである。また、第1スイッチ91及び第2スイッチ92からオン信号が出力されていないときは、動作モードはニュートラルモードである。
【0085】
次に、コントローラ9による、加速度センサ95とモード検出部90との検出結果とを用いたモータ2の制御について説明する。回転動作を伴う回転打撃モードでは、先端工具101が加工物にロックされて、ツールホルダ30が回転不能な状態(ロック状態、ブロッキング状態ともいう)に陥ると、工具本体10に過大な反動トルクが作用して、工具本体10が駆動軸A1周りに過度に回転してしまう現象(キックバック現象ともいう)が発生する場合がある。
【0086】
本実施形態では、コントローラ9は、モータ2が駆動されると、加速度センサ95の検出結果を取得して、検出結果が予め定められた閾値以上か否かを逐次判断する。閾値は、工具本体10が過度に回転した状態である場合の加速度の閾値であり、コントローラ9の備えるメモリに予め記憶されている。閾値は、実験やシミュレーションによって求めることができる。
【0087】
また、コントローラ9は、モード検出部90の検出結果を用いて、動作モードが回転打撃モードであるか否かを判断する。本実施形態では、コントローラ9は、第1スイッチ91のオン信号を取得している場合に、動作モードが回転打撃モードであると判断する。
【0088】
コントローラ9は、加速度が閾値以上であり、動作モードが回転打撃モードである場合、モータ2の駆動を停止する。こうすることで、ハンマドリル100の過度な回転状態が解消される。なお、コントローラ9は、加速度センサ95の検出結果が閾値以上であっても、モード検出部90の検出結果が回転打撃モードを示さない場合(第1スイッチ91のオン信号を取得していない場合)には、モータ2の駆動を継続する。こうすることで、例えば、打撃モードで加工作業中に、加工物付近の壁等にハンマドリル100が接触した衝撃により、加速度センサ95の検出結果が一時的に閾値以上になった場合であっても、ユーザは、打撃モードで加工作業を継続することができる。
【0089】
以上で説明した本実施形態のハンマドリル100によれば、以下の効果を奏する。
【0090】
本実施形態のハンマドリル100は、動作モードを切り替えるモード切替操作部6が、工具本体10のうち把持部170に対向する位置に設けられている。そのため、ハンマドリル100が意図せず落下する等、ハンマドリル100が地面や壁等と衝突した場合であっても、モード切替操作部6は地面や壁等と衝突し難い。そのため、ハンマドリル100に外部から衝撃が加わることでモード切替操作部6が損傷することを抑制することができる。
【0091】
また、ハンマドリル100では、動作モードを切り替えるための操作部を、ハンマドリル100の上面や側面等の駆動軸A1周りの面に配置する構成と比較して、駆動軸A1からハンマドリル100における駆動軸A1周りの外表面までの距離(センターハイト)を、短くすることができる。そのため、ハンマドリル100の操作性を向上させることができる。
【0092】
また、ハンマドリル100では、動作モードを切り替えるための操作部をハンマドリル100の上面や側面等の駆動軸A1周りの面に配置する構成と比較して、駆動軸A1周りの外表面を平滑に構成することができる。そのため、本実施形態によれば、意匠性の向上したハンマドリル100を提供することができる。
【0093】
モード切替操作部6は、工具本体10のうち、スイッチレバー171に対向する位置に設けられている。そのため、ユーザは、モード切替操作部6の操作と、スイッチレバー171の操作とを一方の手で(同じ手で)行うことができる。例えば、腕を動かすことなく、動作モードの切替と、モータ2の駆動とを行うことも可能である。したがって、本実施形態によれば、操作性の向上したハンマドリル100を提供することができる。
【0094】
また、ハンマドリル100は、モード切替操作部6の移動をドライビングスリーブ55に伝達してドライビングスリーブ55を駆動軸A1に平行に移動させるように構成された、伝達機構4を備える。そのため、伝達機構4によって、把持部170に対向する位置に設けられたモード切替操作部6の左右方向の移動を、駆動軸A1周りに回転駆動されるツールホルダ30上のドライビングスリーブ55にまで伝達することができる。
【0095】
また、伝達機構4は、モード切替操作部6が位置P1に移動されるとドライビングスリーブ55を位置Pdに移動させてツールホルダ30にモータ2のトルクを伝達し、モード切替操作部6が位置P2に移動されるとドライビングスリーブ55を位置Phに移動させてトルクの伝達を遮断するように構成されている。そのため、ハンマドリル100では、モード切替操作部6の操作によって、ドライビングスリーブ55を移動させることで、動作モードを回転打撃モードと打撃モードとの間で切り替えることができる。
【0096】
伝達機構4は、モード切替操作部6の左右方向の直線状の摺動を回転運動に変換し、更に、回転運動を駆動軸A1に沿った直線動に変換するように構成された第1変換機構40を備える。そのため、第1変換機構40を備えない構成と比較して、ハンマドリル100におけるドライビングスリーブ55とモード切替操作部6の配置の自由度や、伝達機構4の構成の自由動を向上させることができる。
【0097】
モード切替操作部6の基部62の上側及び下側には、ギヤハウジング12に保持された板バネ125が配置されており、モード切替操作部6は、板バネ125の付勢力によって、回転打撃モードに対応する位置P1、打撃モードに対応する位置P2に保持されるように構成されている。そのため、本実施形態によれば、モード切替操作部6を左右方向に移動させつつ、位置P1や位置P2に位置決めしやすいハンマドリル100を提供できる。
【0098】
本実施形態のハンマドリル100は、ロック機構8を備えている、ロック機構8は、先端工具101が打撃動作のみを行う打撃モードのとき、第1部材71がロックレバー180に係合せず、ロックレバー180がロック可能位置に移動することを許容するように構成されている。そのため、ユーザは、打撃動作のみを比較的長時間連続する加工作業において、スイッチレバー171を押圧し続けなくともよい。したがって、加工作業におけるユーザの負担を軽減することができる。また、先端工具101が回転動作を行う回転打撃モードのとき、第1部材71はロックレバー180に係合してロックレバー180をロック不能位置に保持するように構成されている。そのため、例えば、先端工具101が加工物にロックされても、ユーザはスイッチレバー171に対する押圧を解除するだけでモータ2の駆動を停止することができる。したがって、安全性の高いハンマドリルを提供することができる。
【0099】
さらに、ハンマドリル100は、モード検出部90と加速度センサ95とを備えており、コントローラ9は、加速度センサ95の検出結果から工具本体10が過度に回転した状態であり、かつ、モード検出部90の検出結果から動作モードが回転打撃モードであることを判断した場合に、モータ2の駆動を停止するように構成されている。そのため、ハンマドリル100の安全性を高めることができる。また、コントローラ9は、加速度センサ95の検出結果が、工具本体10が過度に回転した状態を示す場合であっても、動作モードが打撃モードである場合には、モータ2の駆動を継続するように構成されている。そのため、例えば、打撃モードで加工作業中に、加工物付近の壁等にハンマドリル100が接触した衝撃により、加速度センサ95の検出結果が一時的に、過度に回転した状態を示す値になった場合であっても、ユーザは、打撃モードで加工作業を継続することができる。したがって、打撃モード時に、ユーザの意図によらずモータ2が停止することを抑制できる。つまり、本実施形態によれば、安全性と操作性とが向上したハンマドリル100を提供できる。
【0100】
また、ハンマドリル100では、加速度センサ95はハンドル17に収容されており、工具本体10とハンドル17とは、弾性部材175、176を介して連結されている。そのため、加速度センサ95に伝わる工具本体10の振動を減少させることができるので、加速度センサ95を長寿命化することができる。
【0101】
さらに、本実施形態では、加速度センサ95は、ハンドル17の下部に収容されている。そのため、加速度センサ95をハンドル17の上部等、駆動軸A1に近い位置に収容する場合と比較して、工具本体10の駆動軸A1周りの回転の検出精度を向上させることができる。
【0102】
<対応関係>
上記実施形態の各構成要素と本開示の技術の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本開示の技術の各構成要素を限定するものではない。
【0103】
ハンマドリル100は、本開示の「回転打撃工具」の一例である。
モータ2は、本開示の「モータ」の一例である。
先端工具101は、本開示の「先端工具」の一例である。
駆動軸A1は、本開示の「駆動軸」の一例である。
回転打撃モードは、本開示の「第1モード」の一例である。
打撃モードは、本開示の「第2モード」の一例である。
駆動機構3は、本開示の「駆動機構」の一例である。
工具本体10は、本開示の「工具本体」の一例である。
把持部170は、本開示の「把持部」の一例である。
ハンドル17は、本開示の「ハンドル」の一例である。
モード切替操作部6は、本開示の「第1操作部材」の一例である。
スイッチレバー171は、本開示の「第2操作部材」の一例である。
位置P1、位置P2は、夫々、本開示の「第1位置」、「第2位置」の一例である。
ツールホルダ30は、本開示の「ツールホルダ」の一例である。
ドライビングスリーブ55は、本開示の「クラッチ部材」の一例である。
位置Pd、位置Phは、夫々、本開示の「第3位置」、「第4位置」の一例である。
伝達機構4は、本開示の「伝達機構」の一例である。
第1変換機構40は、本開示の「変換機構」の一例である。
第1ピニオンギヤ41、第2ピニオンギヤ42は、本開示の「少なくとも1つのピニオンギヤ」の一例である。
第1ラックギヤ621、第2ラックギヤ712は、夫々、本開示の「第1ラックギヤ」、「第2ラックギヤ」の一例である。
板バネ125は、本開示の「付勢部材」の一例である。
ロックレバー180は、本開示の「ロック部材」の一例である。
第1部材71は、本開示の「ロック制御部材」の一例である。
第1スイッチ91、モード検出部90は、本開示の「モード検出部」の一例である。
加速度センサ95は、本開示の「回転検出部」の一例である。
コントローラ9は、本開示の「制御部」の一例である。
弾性部材175、176は、本開示の「弾性部材」の一例である。
【0104】
<他の実施形態>
上記形態において、ハンマドリル100は、外部の交流電源ではなく、充電式のバッテリから供給される電力で動作するように構成されていてもよい。この場合、電源コード19に代えて、例えば、ハンドル17の下端部に、バッテリを着脱可能なバッテリ装着部が設けられていてもよい。
【0105】
モード切替操作部6は、工具本体10のうち把持部170と対向する位置に設けられていればよく、例えば、モータハウジング13の後壁に設けられていてもよい。このような構成によっても、ハンマドリル100の落下等によってモード切替操作部6が損傷することを抑制できる。
【0106】
モード切替操作部6は、左右方向に限らず、例えば、上下方向に直線動するように構成されていてもよい。また、モード切替操作部6の移動範囲は、直線に限らず、例えば、円弧状であってもよい。
【0107】
モード検出部90は、少なくとも回転打撃モードであることを検出可能に構成されていればよく、例えば、モード検出部90は、第2スイッチ92を備えていなくともよい。この場合、コントローラ9は、加速度センサ95の検出結果が閾値以上であるとき、第1スイッチ91が押圧された信号を取得していればモータ2を停止し、第1スイッチ91が押圧された信号を取得していなければ、モータ2の駆動を継続してもよい。また、モード検出部90は、押し込み式のマイクロスイッチに限らず、ドライビングスリーブ55の位置(移動)を検出する他の検出器(例えば、他の方式のスイッチを含む接触式の検出器、磁気センサ、光学センサを含む非接触式の検出器)でスイッチで構成されていてもよい。
【0108】
ハンマドリル100は、加速度センサ95に代えて、工具本体10の駆動軸A1周りの回転状態を検出可能な他の検出装置を備えていてもよい。他の検出装置として、速度センサ、角速度センサ、または角加速度センサが設けられてもよい。
【0109】
上述の実施形態では、ハンマドリル100は、回転打撃モードと、打撃モードとを含む複数の動作モードで動作可能であった。これに対し、上記実施形態は、例えば、回転打撃モード、打撃モード、及び回転モードを行うように構成された回転打撃工具に適用されてもよい。この場合、回転モードのときのモータ2の駆動制御は、回転打撃モードのときと同様である。
【0110】
第1変換機構40は、第1ラックギヤ621と、第1ピニオンギヤ41と、第1シャフト43と、第2ピニオンギヤ42と、第2ラックギヤ712とを有していた。これに対し、第1ラックギヤ621に係合するピニオンギヤと、第2ラックギヤ721に係合するピニオンギヤとは、共通であってもよい。つまり、第1変換機構40の備えるピニオンギヤは、1つであってもよい。例えば、第1変換機構40は、第1ラックギヤ621と、第1ラックギヤ621と噛合するピニオンギヤと、当該ピニオンギヤと噛合する第2ラックギヤ712とで構成されていてもよい。この場合には、ピニオンギヤが、第1ラックギヤ621の左右方向の摺動を回転運動に変換して第2ラックギヤ712の駆動軸A1に平行な直線運動に変換することができる。
【0111】
伝達機構4の構成は、モード切替操作部6の予め定められた範囲内の摺動に応じてドライビングスリーブ55を駆動軸A1に沿って移動させるように構成されていればよく、上記実施形態の構成に限らない。また、伝達機構4が接続部材70を備える場合には、接続部材70は第1変換機構40とドライビングスリーブ55とを接続していればよく、接続部材70を構成する部品の数や構成、各部品の接続態様は、上記実施形態に限らない。
【0112】
上記実施形態における、モータ2の駆動制御は、CPUによって実行される例が挙げられているが、CPUに代えて、他の種類の制御回路、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスが採用されてもよい。また、モータ2の駆動制御処理は、複数の制御回路で分散処理されてもよい。
【0113】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0114】
2...モータ
3...駆動機構
4...伝達機構
6...モード切替操作部
8...ロック機構
9...コントローラ
10...工具本体
12...ギヤハウジング
13...モータハウジング
17...ハンドル
19...電源コード
20...モータ本体部
21...ステータ
23...ロータ
25...モータシャフト
29...駆動ギヤ
30...ツールホルダ
31...運動変換機構
33...打撃機構
35...回転伝達機構
36...中間シャフト
40...第1変換機構
41...第1ピニオンギヤ
42...第2ピニオンギヤ
43...第1シャフト
54...クラッチ機構
55...ドライビングスリーブ
56...ギヤスリーブ
61...主操作部
62...基部
62p1...凹部
62p2...凹部
62pn...凹部
70...接続部材
71...第1部材
72...第2部材
73...第3部材
74...係合アーム
76...連結ピン
77...トーションスプリング
90...モード検出部
91...第1スイッチ
92...第2スイッチ
95...加速度センサ
100...ハンマドリル
101...先端工具
121...後壁
122...開口
125...板バネ
126...凸部
132...後壁
170...把持部
171...スイッチレバー
172...メインスイッチ
173...連結部
174...連結部
175...弾性部材
177...開口
178...係止突起
180...ロックレバー
181...本体部
182...係止片
184...ロック孔
301...ロックリング
311...クランクシャフト
312...被動ギヤ
313...連接ロッド
315...ピストン
317...シリンダ
331...ストライカ
333...インパクトボルト
335...空気室
361...小ベベルギヤ
362...被動ギヤ
551...環状溝
561...大ベベルギヤ
611...板部
612...レバー
621...第1ラックギヤ
711...板状部
712...第2ラックギヤ
713...右凸部
714...左凸部
717...上凸部
A1...駆動軸
A2...回転軸
A3...回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15