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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188997
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】控え杭と緊張材の接続方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20221215BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E02D17/04 Z
E02D5/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097319
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝道
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GB01
2D041GC01
(57)【要約】
【課題】狭い敷地であっても山留め壁を後面から支持する、控え杭と緊張材の接続方法を提供する。
【解決手段】前面に掘削空間を設ける山留め壁の後面に設ける控え杭と、前記山留め壁と前記控え杭とを連結する緊張材と、を接続する、控え杭と緊張材の接続方法であって、前記控え杭の長さ方向に沿って前記緊張材を配置し、前記控え杭を地盤中に挿入し、前記山留め壁側から前記控え杭に向けて、斜め下方にアンカー用孔を削孔し、前記アンカー用孔に、引き抜きロッドを挿入し、前記引き抜きロッドの先端に、前記緊張材を掛着し、前記引き抜きロッドを引き抜いて、前記控え杭から前記アンカー用孔の出口にかけて前記緊張材を配置し、前記斜め穴にグラウト材を注入して固化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に掘削空間を設ける山留め壁の後面に設ける控え杭と、前記山留め壁と前記控え杭とを連結する緊張材と、を接続する、控え杭と緊張材の接続方法であって、
前記控え杭の長さ方向に沿って前記緊張材を配置し、
前記控え杭を地盤中に挿入し、
前記山留め壁側から前記控え杭に向けて、斜め下方にアンカー用孔を削孔し、
前記アンカー用孔に、引き抜きロッドを挿入し、
前記引き抜きロッドの先端に、前記緊張材を掛着し、
前記引き抜きロッドを引き抜いて、前記控え杭から前記アンカー用孔の出口にかけて前記緊張材を配置し、
前記斜め穴にグラウト材を注入して固化することを特徴とする、
控え杭と緊張材の接続方法。
【請求項2】
前記控え杭は、所定の間隔を設けて並列した2本の杭体と、前記2本の杭体間に形成する内部空間を有し、
前記内部空間には、一端にループを形成し、他端を前記ループに挿通して輪を形成して前記杭体に沿って配置して地表に露出した絞り込みワイヤーを、前記輪を広げた状態で配置し、
前記緊張材は、一端に引掛けリングを設け、前記引掛けリングに前記絞り込みワイヤーを挿通し、
前記引き抜きロッドは、軸部と、軸部より径の大きい先端部と、を有し、
前記斜め穴及び前記引き抜きロッドは、前記内部空間を前後方向に貫通し、
前記引き抜きロッドが前記内部空間を貫通した状態で、前記絞り込みワイヤーの他端を地表から引張し、前記輪を前記引き抜きロッドの前記軸部の外周まで絞り込み、
前記引き抜きロッドを引き抜き、前記先端部に前記緊張材の引掛けリングを掛着することを特徴とする、
請求項1に記載の控え杭と緊張材の接続方法。
【請求項3】
前記控え杭の前記内部空間の前面と後面は、塞ぎ板によって閉止し、
前記アンカー用孔は、前記塞ぎ板を貫通して設けることを特徴とする、
請求項2に記載の控え杭と緊張材の接続方法。
【請求項4】
前記アンカー用孔には、前記内部空間から前記内部空間の前面の地盤に亘って、前記アンカー用孔と外径が略同径の補強パイプを配置することを特徴とする、
請求項2又は3に記載の控え杭と緊張材の接続方法。
【請求項5】
前記引き抜きロッドの前記先端部は柱状体であり、先端と逆側の端部に、前記軸部と略平行な掛止片を前記軸部の外周に沿って複数突設することを特徴とする、
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の控え杭と緊張材の接続方法。
【請求項6】
前記控え杭は、前記内部空間を上下に並べて二つ有し、
それぞれの前記内部空間に前記輪を広げた状態で前記絞り込みワイヤーと前記リングを設けた前記緊張材を配置し、
前記アンカー用孔を上下の内部空間それぞれに削孔し、
それぞれの前記内部空間から前記アンカー用孔の出口にかけて前記緊張材を配置することを特徴とする、
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の控え杭と緊張材の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山留め壁における、控え杭と緊張材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の地下や基礎を構築するために根切りを行う場合、周辺地盤が崩れを防ぐ山留め壁が必要である。
山留め壁を支持する工法としては、対向する山留め壁間に切梁を配置する方法があるが、この方法は切梁の配置工程の他にも、切梁の存在が他の作業を制限してしまうため、工期が長くなり、コストも高くなってしまう。
【0003】
切梁を用いずに山留め壁を支持する工法としては、特に以下の二つの工法が知られている。
(1)タイバックアンカー工法
特許文献1には、図10のように、前面を掘削する山留め壁を、その後面に設けた控え杭と、地表面近くに設置した緊張材によって支持する、タイバックアンカー工法が記載されている。
(2)地盤アンカー工法
特許文献2には、図11のように、山留め壁から斜め下方に向けて設置した地盤アンカーによって支持する、地盤アンカー工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-162266号公報
【特許文献2】特開昭59-173422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイバックアンカー工法は、緊張材を地表面近くに設置するため、控え杭が有効に働くためには掘削底面から上方に伸ばした主働滑り線の外側に控え杭がなければならない。
このため、山留め壁と控え杭との離れ寸法Lは腹起しから掘削底面までの距離H程度以上なければならず、山留め壁の後面に控え杭を打設可能な余地が十分に必要である。
【0006】
地盤アンカー工法は、緊張材の設置方法が山留め壁面からの削孔によるものであるため、斜め下方への削孔が必要となる。また、地盤アンカーの定着が定着体と地盤との摩擦抵抗によるものであるため、摩擦抵抗が大きくなる定着層に一定以上の長さの定着体を設ける必要があり、山留め壁の後面に地盤アンカーの設置が可能な余地が十分に必要である。
しかし、とくに都市部では敷地に余裕がないため、これらの工法が困難な場合が多い。
【0007】
本発明は、狭い敷地であっても山留め壁を後面から支持する、控え杭と緊張材の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明は、前面に掘削空間を設ける山留め壁の後面に設ける控え杭と、前記山留め壁と前記控え杭とを連結する緊張材と、を接続する、控え杭と緊張材の接続方法であって、前記控え杭の長さ方向に沿って前記緊張材を配置し、前記控え杭を地盤中に挿入し、前記山留め壁側から前記控え杭に向けて、斜め下方にアンカー用孔を削孔し、前記アンカー用孔に、引き抜きロッドを挿入し、前記引き抜きロッドの先端に、前記緊張材を掛着し、前記引き抜きロッドを引き抜いて、前記控え杭から前記アンカー用孔の出口にかけて前記緊張材を配置し、前記斜め穴にグラウト材を注入して固化することを特徴とする。
前記控え杭は、所定の間隔を設けて並列した2本の杭体と、前記2本の杭体間に形成する内部空間を有し、前記内部空間には、一端にループを形成し、他端を前記ループに挿通して輪を形成して前記杭体に沿って配置して地表に露出した絞り込みワイヤーを、前記輪を広げた状態で配置し、前記緊張材は、一端に引掛けリングを設け、前記引掛けリングに前記絞り込みワイヤーを挿通し、前記引き抜きロッドは、軸部と、軸部より径の大きい先端部と、を有し、前記斜め穴及び前記引き抜きロッドは、前記内部空間を前後方向に貫通し、前記引き抜きロッドが前記内部空間を貫通した状態で、前記絞り込みワイヤーの他端を地表から引張し、前記輪を前記引き抜きロッドの前記軸部の外周まで絞り込み、前記引き抜きロッドを引き抜き、前記先端部に前記緊張材の引掛けリングを掛着してもよい。
前記控え杭の前記内部空間の前面と後面は、塞ぎ板によって閉止し、前記アンカー用孔は、前記塞ぎ板を貫通して設けてもよい。
前記アンカー用孔には、前記内部空間から前記内部空間の前面の地盤に亘って、前記アンカー用孔と外径が略同径の補強パイプを配置してもよい。
前記引き抜きロッドの前記先端部は柱状体であり、先端と逆側の端部に、前記軸部と略平行な掛止片を前記軸部の外周に沿って複数突設してもよい。
前記控え杭は、前記内部空間を上下に並べて二つ有し、それぞれの前記内部空間に前記輪を広げた状態で前記絞り込みワイヤーと前記リングを設けた前記緊張材を配置し、前記アンカー用孔を上下の内部空間それぞれに削孔し、それぞれの前記内部空間から前記アンカー用孔の出口にかけて前記緊張材を配置してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)緊張材には緊張力が付与されており、下端を地中の深い位置まで打設した控え杭に接続しているため、控え杭が山留め壁に近い位置であっても、山留め壁の変形の影響をうけずに、後面から支持することができる。
(2)後面から山留め壁を支持するため、切梁が不要となり短工期・低コストである。
(3)地上から絞り込みワイヤーと引き抜きロッドを操作することで、容易に緊張材を配置することができる。
(4)補強パイプを用いることで、折れ曲がった部分の緊張力の軸と直交する方向の分力がグラウト材全体に分散されて、強度が高くなる。
(5)グラウト材と一体となった補強パイプにより緊張材を保護することで、緊張材が地盤に食い込んで緊張力が弛むことを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の控え杭と緊張材の接続方法を適用する山留め構造の説明図
図2】控え杭の断面図
図3】内部空間に配置する緊張材と絞り込みワイヤーの説明図
図4】実施例1の控え杭と緊張材の接続方法の説明図(1)
図5】実施例1の控え杭と緊張材の接続方法の説明図(2)
図6】実施例1の控え杭と緊張材の接続方法の説明図(3)
図7】実施例1の控え杭と緊張材の接続方法の説明図(4)
図8】実施例1の控え杭と緊張材の接続方法の説明図(5)
図9】実施例2の控え杭と緊張材の接続方法を適用する山留め構造の説明図
図10】従来の山留め工法の説明図(1)
図11】従来の山留め工法の説明図(2)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の控え杭と緊張材の接続方法を詳細に説明する。なお、本説明における前後、上下等の方向に関する表現は山留め壁Wと控え杭1を基準として定義し、前方とは控え杭1から山留め壁Wに向かう方向、上下方向は山留め壁W及び控え杭1の高さ方向、横方向は前方向及び上下方向に直交する方向をそれぞれ意味する。
【0012】
[実施例1]
(1)山留め構造の構成
本発明の控え杭と緊張材の接続方法を適用する山留め構造は、前面を掘削する山留め壁Wを、その後面に設けた控え杭1に係合した緊張材2によって連結して支持するものである(図1)。
山留め壁Wは、一定間隔でH形鋼杭を一定間隔で地中へ打ち込み、その間に横矢板を挿し込んで作る親杭横矢板壁や、U型断面の鋼矢板を地中に打ち込んで作る鋼矢板壁、地中にソイルセメントからなる柱を連続して作成して壁を作るソイルセメント柱列壁など、従来知られている山留め壁を適用できる。
山留め壁Wからは、控え杭1にかけて斜め下方のアンカー用孔3を形成し、緊張材2はアンカー用孔3内部に配置する。また、アンカー用孔3にはグラウト材4を充填する。
【0013】
(2)控え杭
控え杭1は、所定の間隔を設けて並列したH形鋼からなる2本の杭体11間に、杭体11と同様の間隔で上下に配置する上桁材12、下桁材13を溶接等により固定して構成する(図2)。杭体11は、地中に深い位置まで打設し、固定する。
2本の杭体11と、上桁材12、及び下桁材13によって規定される空間の前面と後面には塞ぎ板14を配置し、これらの部材により内部空間Sを形成する。
アンカー用孔3は、内部空間Sを前後に貫通しており、グラウト材4はアンカー用孔3の他、内部空間Sにも充填される。
【0014】
(3)緊張材
緊張材2はPC鋼線からなり、従来からアンカーテンドンとして用いられているものである。
緊張材2は、一方の端部を控え杭1の地上部に固定して固定部21とし、杭体11に沿って下方に延設し、内部空間Sからアンカー用孔3を通して、山留め壁Wの上部前面に設けた台座5に他方の端部を固定することで、控え杭1と接続されている。
緊張材2には緊張力が付与されており、下端を地中の深い位置まで打設した控え杭1に接続しているため、控え杭1が山留め壁Wに近い位置であっても、山留め壁Wの変形の影響をうけずに、後面から支持することができる。後面から支持するため、切梁が不要となり短工期・低コストである。
【0015】
(4)控え杭と緊張材の接続方法
次に、控え杭1と緊張材2の接続方法を説明する。
【0016】
(4.1)絞り込みワイヤーの配置
貫入前、控え杭1の内部空間Sには、一端にループ61を形成し、他端をループ61に挿通して輪状にした絞り込みワイヤー6を設ける(図3)。絞り込みワイヤー6の他端は、上桁材12の中央に設けた隙間から内部空間Sの外部に取り出し、控え杭1の上部にかけて配置する。
輪状の絞り込みワイヤー6は、輪を広げた状態で粘着テープ(図示せず)等により杭体11や上桁材12、下桁材13に固定する。
【0017】
(4.2)緊張材の配置
絞り込みワイヤー6と合わせて、控え杭1の内部空間Sには、緊張材2の一端に設けたリング22を配置する。リング22には絞り込みワイヤー6を挿通しておく。
緊張材2の他端は、下桁材13の中央に設けた隙間から内部空間S外部に取り出し、下桁材13の下面から一方の杭体11に沿って、杭体11の上部にかけて配置する。
【0018】
(4.3)塞ぎ板の固定
緊張材2や絞り込みワイヤー6を内部空間Sに設けた後、内部空間Sの前面と後面に塞ぎ板14を固定する(図4)。塞ぎ板14により内部空間Sの前面および後面を塞ぐことで、控え杭1の打設時に、土砂や根固めのためのグラウト材が流入することを防ぐ。
塞ぎ板14には、後述するアンカー用孔3の削孔時にアンカー用孔3が貫通するように、合板や樹脂板等を用いる。
また、塞ぎ板14と杭体11との隙間や、内部空間Sを構成する杭体11、上桁材12、下桁材13の隙間には、粘着テープ等で目張りをする。
【0019】
(4.4)控え杭の貫入
地盤に、杭体11を貫入する深さの穴を開け、その間は下桁材13を配置する位置まで掘削する。
そして、地盤中に控え杭1を貫入する。
【0020】
(4.5)アンカー用孔の形成
山留め壁W側から、控え杭1の内部空間Sに向けて斜め下方にアンカー用孔3を設ける(図4)。
アンカー用孔3は、前面の塞ぎ板14を貫通し、内部空間Sで絞り込みワイヤー6の輪の中を通過して後面の塞ぎ板14を貫通し、所定の長さだけ後方に掘削して設ける。
【0021】
(4.6)引き抜きロッドの挿入
山留め壁W側から、アンカー用孔3に引き抜きロッド7を挿入する(図5)。
引き抜きロッド7は、長尺の軸部71と、軸部71より外径の大きな柱状体の先端部72からなる。また、先端部72は、先端側と逆側の端部に、軸部71と略平行な掛止片721を軸部71の外周に沿って複数突設する。
引き抜きロッド7は、掛止片721が絞り込みワイヤー6の輪の中を通過する位置まで挿入する。
【0022】
(4.7)絞り込みワイヤーの絞り込み
控え杭1の上部にかけて配置した絞り込みワイヤー6を地表から引上げて、内部空間S内の絞り込みワイヤー6の輪を絞り込む(図5)。
絞り込みワイヤー6の輪の中には引き抜きロッド7が挿入されているため、輪を絞り込むことで、絞り込みワイヤー6を挿通したリング22は、引き抜きロッド7の軸部71の外周に接する。
【0023】
(4.8)引き抜きロッドの引き抜き
引き抜きロッド7を引き抜くことで、引き抜きロッド7の軸部71の外周に接するリング22が、引き抜きロッド7の先端部72の掛止片721に掛着する。そのまま、引き抜きロッド7を山留め壁W側に引き抜くことで、リング22を設けた緊張材2が内部空間Sからアンカー用孔3を経由し、山留め壁W側に配置される(図6)。なお、リング22に挿通した絞り込みワイヤー6も引き抜きロッド7の引き抜きによって、アンカー用孔3から引き出されるが、そのままアンカー用孔3から引き抜く。
地上から絞り込みワイヤー6と引き抜きロッド7を操作することで、容易に緊張材2を配置することができる。
緊張材2は、控え杭1側の端部を地表において固定部21を設けて固定する(図1)。
【0024】
(4.9)補強パイプの設置
山留め壁W側から、アンカー用孔3にアンカー用孔3と外径が略同径の補強パイプ8を、内部に緊張材2を挿通した状態で押し込む(図7)。
補強パイプ8は、山留め壁Wと逆側の端部が内部空間S内に位置するように押し込み、内部空間Sとその前面の地盤に亘って配置する。
これにより、緊張材2は内部空間S内で折れ曲がって補強パイプ8内に導入される。
【0025】
(4.10)グラウト材の充填
山留め壁W側からアンカー用孔3に、グラウト材4を充填し固化する。グラウト材4はアンカー用孔3から内部空間S内まで充填される(図8)。
【0026】
(4.11)緊張材の緊張
山留め壁W側から緊張材2に緊張力を付与し、山留め壁Wに設けた台座5に固定することで、山留め構造が構築される。
緊張材2は、折れ曲がって補強パイプ8内に導入されており、折れ曲がり部分の緊張力の軸と直交する方向の分力が、補強パイプ8によりグラウト材4全体に分散されて、強度が高くなる。
また、緊張材2の折れ曲がり部分はグラウト材4と一体となった補強パイプ8に当接している。グラウト材4と補強パイプ8を使用しない場合、緊張材2の折れ曲がり部分が直接地盤に当接することとなり、緊張材2が自身の緊張力により折れ曲がり部分から地盤に食い込み、緊張力が弛んでしまうおそれがある。しかし、補強パイプ8はグラウト材4と一体となっており、折れ曲がり部分が地盤に食い込んで緊張材2の緊張力が弛むことがない。
【0027】
[実施例2]
(1)緊張材を二段とする構成
上述の実施例1は緊張材2が一段であったが、緊張材2を二段とする場合には、控え杭1に上下二段に内部空間Sを設ける(図9)。
そして、上下の内部空間Sそれぞれに輪状の絞り込みワイヤー6と、リング22を設けた緊張材2を配置しておき、それぞれの内部空間Sにアンカー用孔3を設けて、上述の実施例1と同様に引き抜きロッド7を用いて緊張材2をそれぞれのアンカー用孔3に配置する。
【符号の説明】
【0028】
1 控え杭、11 杭体、12 上桁材、13 下桁材、14 塞ぎ板
2 緊張材、21 固定部、22 リング
3 アンカー用孔
4 グラウト材
5 台座
6 絞り込みワイヤー、61 ループ
7 引き抜きロッド、71 軸部、72 先端部、721 掛止片
8 補強パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11