(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189001
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】紡糸引取装置
(51)【国際特許分類】
D01D 7/00 20060101AFI20221215BHJP
D01D 5/08 20060101ALI20221215BHJP
D02J 1/22 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
D01D7/00 Z
D01D5/08 A
D02J1/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097323
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】寺野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】小島 匠吾
(72)【発明者】
【氏名】川本 和弘
【テーマコード(参考)】
4L036
4L045
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA01
4L036PA03
4L036PA49
4L045AA05
4L045BA03
4L045DA41
4L045DB01
4L045DC01
4L045DC50
(57)【要約】
【課題】従来よりも低床化された紡糸引取装置を提供する。
【解決手段】紡糸機から紡出された複数の糸100を引き取り、延伸させる紡糸引取部6と、紡糸引取部6から送られた複数の糸100を巻き取り、巻取パッケージを形成する巻取部8とを備える。紡糸引取部6は、複数の糸100を糸走行方向下流側に案内する第1案内部10と、第1案内部10から案内された複数の糸100を延伸するためのローラを少なくとも1つ含む複数のローラを備えた延伸部28と、延伸部28から複数の糸100を巻取部8に案内する第2案内部62,70とを備える。巻取部8及び延伸部28は水平配置される。第2案内部は、第2緩和ローラ62と、分配部70とを有し、延伸部28からの複数の糸100は、分配部70と第2緩和ローラ62とを経由して巻取部8に送られる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸機から紡出された複数の糸を引き取り、少なくとも延伸させる紡糸引取部と、前記紡糸引取部から送られた前記複数の糸を巻き取り、巻取パッケージを形成する巻取部と、を備えた紡糸引取装置であって、
前記紡糸引取部は、
前記紡糸機から紡出された前記複数の糸を糸走行方向下流側に案内する第1案内部と、
前記第1案内部から案内された前記複数の糸を延伸するためのローラを少なくとも1つ含む複数のローラを備えた延伸部と、
前記延伸部から前記複数の糸を前記巻取部に案内する第2案内部と、を備え、
前記巻取部及び前記延伸部は水平配置され、
前記第2案内部は、前記延伸部の糸走行方向下流側に設けられた案内ローラと、前記案内ローラより糸走行方向下流側に配置され、前記巻取部の上方に設けられた駆動部を有する複数の分配ローラとを有し、前記延伸部からの複数の糸は、前記案内ローラと前記複数の分配ローラとを経由して前記巻取部に送られることを特徴とする紡糸引取装置。
【請求項2】
前記複数の分配ローラは、前記案内ローラから送られる糸の糸走行方向と水平面からなる鋭角の角度が0度以上且つ20度以内となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の紡糸引取装置。
【請求項3】
前記複数の分配ローラは、平面視において前記案内ローラから前記複数の分配ローラそれぞれへの糸経路に沿って直列に配置されており、
前記案内ローラから前記複数の分配ローラそれぞれへの糸経路は、前記複数の分配ローラに対応して、平面視で前記糸経路に対して直交する方向に離れた複数の糸経路が形成されており、
前記複数の分配ローラのそれぞれは、他の分配ローラに対応する糸経路を回避するように配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の紡糸引取装置。
【請求項4】
前記複数の分配ローラのそれぞれは、前記案内ローラから前記分配ローラへの糸経路及び鉛直方向の双方に対して直交する方向の位置に応じてローラ面の高さが異なっている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紡糸引取装置。
【請求項5】
前記複数の分配ローラのうちの少なくとも1つは、軸方向が水平方向に対して傾斜している
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の紡糸引取装置。
【請求項6】
前記複数の分配ローラのうちの少なくとも1つは、前記案内ローラから前記分配ローラへの糸経路及び鉛直方向の双方に対して直交する方向の位置に応じて径の大きさが異なる円錐状または段付状のローラである
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の紡糸引取装置。
【請求項7】
前記複数の分配ローラは、前記案内ローラから最も近い分配ローラのローラ面の高さ位置が最も低く、前記案内ローラから遠くなるにつれて前記分配ローラのローラ面の高さ位置が高くなるように配置されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紡糸引取装置。
【請求項8】
前記複数の分配ローラのそれぞれに対応する複数の駆動部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の紡糸引取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸機から紡出された糸を引き取って巻取パッケージを形成する紡糸引取装置に関し、特に、繊度が大きく、多くの加熱長を必要とする産業資材用糸の紡糸引取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紡糸機から紡出される糸を引き取って巻取パッケージを形成する紡糸引取装置では、生産開始時に、紡糸機から紡出された糸を糸経路に沿って巻取部まで掛ける糸掛け作業が必要である。
【0003】
一般的な紡糸引取装置は、例えば特許文献1(特にFig.1参照)に開示されているように、複数のローラ等を含む処理アセンブリが紡糸機の下方に配置されており、巻取部が処理アセンブリの下方に配置されている。このような紡糸引取装置において糸掛け作業を行う場合、1階のオペレータとして、各ローラ等への糸掛けを行う糸掛け要員(中2階要員)と、各ローラ等の下方に配置された巻取部への糸掛けを行う糸掛け要員とが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0049669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、設備の省人化が求められている。しかし、特許文献1に記載された一般的な紡糸引取装置において糸掛け作業を行う際には、少なくとも、各ローラ等への糸掛けを行う中2階要員と、巻取部への糸掛けを行う糸掛け要員との2名のオペレータが必要である。また、各ローラ等への糸掛けを行う中2階要員と、巻取部への糸掛けを行う糸掛け要員との2名のオペレータで糸掛けを行うと、各ローラ等や巻取部への糸掛けの際に糸を吸引中のサクションガンの受け渡しが必要になるため、糸掛け作業時間が増えてしまう。仮に、各ローラ等や巻取部への糸掛けを1名のオペレータで行ったとしても、各ローラが配置される中2階での糸掛け作業が高所作業となるため、作業台車への乗り降りが必要となり、糸掛けに要する時間が長くなるだけでなく、オペレータへの負担も増えてしまう。そこで、紡糸引取装置の高さを抑制して低床化し、糸掛け時間の短縮及び省人化を図ることは、喫緊の課題である。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも紡糸引取装置を低床化し、糸掛け時間の短縮及び省人化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の紡糸引取装置は、
紡糸機から紡出された複数の糸を引き取り、少なくとも延伸させる紡糸引取部と、前記紡糸引取部から送られた前記複数の糸を巻き取り、巻取パッケージを形成する巻取部と、を備えた紡糸引取装置であって、
前記紡糸引取部は、
前記紡糸機から紡出された前記複数の糸を糸走行方向下流側に案内する第1案内部と、
前記第1案内部から案内された前記複数の糸を延伸するためのローラを少なくとも1つ含む複数のローラを備えた延伸部と、
前記延伸部から前記複数の糸を前記巻取部に案内する第2案内部と、を備え、
前記巻取部及び前記延伸部は水平配置され、
前記第2案内部は、前記延伸部の糸走行方向下流側に設けられた案内ローラと、前記案内ローラより糸走行方向下流側に配置され、前記巻取部の上方に設けられた駆動部を有する複数の分配ローラとを有し、前記延伸部からの複数の糸は、前記案内ローラと前記複数の分配ローラとを経由して前記巻取部に送られることを特徴とする。
【0008】
上記(1)に記載の紡糸引取装置によれば、延伸部からの複数の糸は、案内ローラと分配ローラとを経由して巻取部に送られるため、巻取部と延伸部とを水平配置することで、紡糸引取装置の高さを抑制して低床化することができる。その結果、従来のように1階の作業エリアを上下に分け、各作業エリアそれぞれにオペレータを配置する必要がなくなり、オペレータ1人による糸掛け作業が可能となるため糸掛け作業時間の短縮を達成でき、省人化を図ることが可能となる。
【0009】
(2)上記(1)に記載の紡糸引取装置において、
前記複数の分配ローラは、前記案内ローラから送られる糸の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度が0度以上且つ20度以内となるように配置されている
ことを特徴とする。
【0010】
上記(2)に記載の紡糸引取装置によれば、案内ローラの高さを抑制することができ、紡糸引取装置を低床化することが可能となる。すなわち、分配ローラの高さ方向の下限は、巻取部等の他の構成により決まる。よって、案内ローラ及び前記分配ローラを、案内ローラから各分配ローラに送られる糸の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度が0度以上且つ20度以内となるように配置することにより、案内ローラ及び分配ローラを低くすることができ、ひいては紡糸引取装置を低床化することが可能となる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)に記載の紡糸引取装置において、
前記複数の分配ローラは、平面視において前記案内ローラから前記複数の分配ローラそれぞれへの糸経路に沿って直列に配置されており、
前記案内ローラから前記複数の分配ローラそれぞれへの糸経路は、前記複数の分配ローラに対応して、平面視で前記糸経路に対して直交する方向に離れた複数の糸経路が形成されており、
前記複数の分配ローラのそれぞれは、他の分配ローラに対応する糸経路を回避するように配置されている
ことを特徴とする。
【0012】
上記(3)に記載の紡糸引取装置によれば、複数の分配ローラのそれぞれが、他の分配ローラに対応する糸経路を回避するように配置されている。したがって、案内ローラから送られた糸が他の分配ローラのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0013】
(4)上記(3)に記載の紡糸引取装置において、
前記複数の分配ローラのそれぞれは、前記案内ローラから前記分配ローラへの糸経路及び鉛直方向の双方に対して直交する方向の位置に応じてローラ面の高さが異なっている
ことを特徴とする。
【0014】
上記(4)に記載の紡糸引取装置によれば、案内ローラから分配ローラへの糸経路及び鉛直方向の双方に対して直交する方向の位置に応じてローラ面の高さが異なるため、複数の分配ローラに送られる各糸が走行する糸経路を確保することが可能となる。したがって、案内ローラから送られた糸が他の分配ローラのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0015】
(5)上記(3)又は(4)に記載の紡糸引取装置において、
前記複数の分配ローラのうちの少なくとも1つは、軸方向が水平方向に対して傾斜している
ことを特徴とする。
【0016】
上記(5)に記載の紡糸引取装置によれば、分配ローラの軸方向を水平方向に対して傾斜させるだけの簡単な構成で、案内ローラから送られた糸が他の分配ローラのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0017】
(6)上記(3)~(5)のいずれかに記載の紡糸引取装置において、
前記複数の分配ローラのうちの少なくとも1つは、前記案内ローラから前記分配ローラへの糸経路及び鉛直方向の双方に対して直交する方向の位置に応じて径の大きさが異なる円錐状または段付状のローラである
ことを特徴とする。
【0018】
上記(6)に記載の紡糸引取装置によれば、分配ローラを、糸経路及び鉛直方向の双方に対して直交する方向の位置に応じて径の大きさが異なる円錐状または段付状のローラに変更するだけといった簡単な構成で、案内ローラから送られた糸が他の分配ローラのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0019】
(7)上記(3)に記載の紡糸引取装置において、
前記複数の分配ローラは、前記案内ローラから最も近い分配ローラのローラ面の高さ位置が最も低く、前記案内ローラから遠くなるにつれて前記分配ローラのローラ面の高さ位置が高くなるように配置されている
ことを特徴とする。
【0020】
上記(7)に記載の紡糸引取装置によれば、案内ローラから最も近い分配ローラのローラ面の高さ位置が最も低く、案内ローラから遠くなるにつれて分配ローラのローラ面の高さ位置が高くなる。そのため、複数の分配ローラの取り付け高さ位置を順次ずらすといった簡単な構成で、案内ローラから送られた糸が他の分配ローラのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0021】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の紡糸引取装置において、
前記複数の分配ローラのそれぞれに対応する複数の駆動部をさらに備える
ことを特徴とする。
【0022】
上記(8)に記載の紡糸引取装置によれば、複数の分配ローラのそれぞれを個別に駆動できるため、複数の分配ローラよりも下流側における複数の糸の張力差を小さくすることが可能となる。その結果、巻取パッケージの品質を安定させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来よりも紡糸引取装置の高さを抑制して低床化し、糸掛け時間の短縮及び省人化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】紡糸引取装置の概略を示す斜視図の一例である。
【
図2】紡糸引取装置の概略を示す側面図の一例である。
【
図3】第1案内部の周辺を示す側面図の一例である。
【
図4】複数の給油部、複数の糸吸引部、及び、第1糸送りローラを示す平面図の一例である。
【
図6】緩和部、分配部及び巻取部の周辺を示す側面図の一例である。
【
図8】第2緩和ローラ及び各分配ローラの側面図の一例である。
【
図9】第2緩和ローラから各分配ローラに送られる糸の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度を示す模式図の一例である。
【
図10】(A)
図8に示されるA-A線断面図の一例、(B)
図8に示されるB-B線断面図の一例、(C)
図8に示されるC-C線断面図の一例、(D)
図8に示されるD-D線断面図の一例、(E)
図8に示されるE-E線断面図の一例、(F)
図8に示されるF-F線断面図の一例である。
【
図11】第1変形例に係る紡糸引取装置の概略を示す側面図の一例である。
【
図12】分配ローラの形状及び分配ローラの取付態様に変形を加えた第2変形例を示す図である。
【
図13】分配ローラの形状及び分配ローラの取付態様に変形を加えた第3変形例を示す図である。
【
図14】分配ローラの配置に変更を加えた第4変形例を示す図である。
【
図15】分配ローラそれぞれの高さ位置を変えて配置した場合において、第1緩和ローラ、第2緩和ローラ及び分配ローラの位置関係の一例を示しており、(A)第1配置パターン、(B)第2配置パターン、(C)第3配置パターン、を示す模式図である。
【
図16】分配ローラそれぞれの高さ位置を変えて配置した場合において、第1緩和ローラ、第2緩和ローラ及び分配ローラの位置関係の他の例を示しており、(A)第4配置パターン、(B)第5配置パターン、を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る紡糸引取装置1について説明する。本発明に係る紡糸引取装置1は、例えば300デニール以上の産業資材用糸を引き取る装置である。
図1は、紡糸引取装置1の概略を示す斜視図の一例である。
図2は、紡糸引取装置1の概略を示す側面図の一例である。
【0026】
なお、本実施形態において、X方向及びY方向を、
図1及び
図2に示すように定義する。X方向及びY方向は、いずれも水平方向であり、互いに直交する方向である。X方向は、
図1及び
図2において矢印で示される1つの方向である。よって、この明細書で「X方向と反対方向」と称する場合は、
図1及び
図2において示される矢印の反対方向を意味する。一方、Y方向は、
図1及び
図2において矢印で示される2つの方向である。
【0027】
[1.紡糸引取装置の全体構成]
紡糸引取装置1の全体構成の概略について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1及び
図2に示されるように、紡糸引取装置1は、糸走行方向の上流側から順に、主に、給油部2と、糸吸引部4と、紡糸引取部6と、巻取部8とを備える。
【0028】
給油部2は、複数の給油部2を有する。これら複数の給油部2は、
図2の紙面において左右方向に一列に並んで配置されている。ここで、「X方向に一列に並んで」と記載せずに「
図2の紙面において左右方向に一列に並んで」と記載した理由については、
図4を参照して後述する。
【0029】
なお、
図1及び
図2には図示されていないが、複数の給油部2の上方には、紡糸機が配置されている。複数の給油部2は、紡糸機から紡出されたフィラメントの束となった糸100に油剤を塗布する。本実施形態では、紡糸引取装置1が給油部2を備えるが、これに限られず、紡糸機が給油部2を備えるようにしてもよい。
【0030】
糸吸引部4は、複数の糸吸引部4を有しており、一般的にアスピレータと呼ばれるものである。紡糸引取装置1が給油部2を備える場合、これら複数の糸吸引部4は、それぞれ、対応する給油部2の直下に設けられており、糸100を各ローラに巻き掛ける際や断糸した際等に、一時的に糸100を吸引して保持する。給油部2により油剤が塗布された糸100は、真下に向かって糸吸引部4の前面を通り、後述する第1案内部10に向かって走行する。複数の糸吸引部4は、いずれも、主に、圧縮流体の流れによって吸引口に吸引力を発生させるように構成されている。
【0031】
紡糸引取部6は、糸走行方向の上流側から順に、主に、第1案内部10と、第1糸送りローラ20と、延伸部28と、緩和部60と、分配部70とを備える。第1案内部10、第1糸送りローラ20、延伸部28、緩和部60及び分配部70の詳細については後述する。
【0032】
巻取部8は、主に、主フレーム80と、第1巻取装置81と、第2巻取装置91とを備える。第1巻取装置81及び第2巻取装置91は、Y方向に並んで配置されている。第1巻取装置81と第2巻取装置91とは同じ構造であるため、以下では、第1巻取装置81について説明し、第2巻取装置91についての説明を省略する。本実施形態では、巻取部8には、第1巻取装置81と、第2巻取装置91の2台を備えるが、これに限らず、巻取装置1台を備えるようにしてもよい。
【0033】
第1巻取装置81は、主に、主フレーム80に回転可能に設けられた円板状のターレット82と、ターレット82に片持ち支持されてX方向を軸方向とする2つの巻取軸84と、糸100の綾振りを行う複数の綾振り装置85とを備える。
【0034】
巻取軸84には、複数のボビン86が直列に装着される。巻取軸84は、図示しないモータの駆動により回転することで、巻取軸84に装着された複数のボビン86を回転させ、回転する複数のボビン86に糸100を巻き取る。ボビン86に巻き取られた糸100は、巻取パッケージを形成する。
【0035】
ここで、紡糸引取部6が有する延伸部28と、巻取部8との位置関係について、引き続き
図1及び
図2を参照して説明する。延伸部28は、巻取部8よりも糸走行方向の上流側であって、巻取部8よりもX方向と反対方向側に配置されている。具体的には、延伸部28及び巻取部8は、同一フロアにおいて、巻取軸84の軸方向と、平面視における延伸部28での糸100の走行方向と、が平行となるように、水平配置されている。すなわち、本実施形態では、1階の作業エリアを上下に分け、1階の下側の作業エリアに巻取部を配置し、上側の作業エリアに延伸部を配置するといった従来の紡糸引取装置とは異なり、巻取部8とほぼ変わらない高さ位置に延伸部28を配置するようにしている。このようにすることで、1人のオペレータが作業台車等も使用することなく延伸部および巻取部の糸掛け作業を行える程度に延伸部28配置することができる。その結果、糸掛け作業時間の短縮を達成でき、省人化を図ることが可能となる。
【0036】
なお、延伸部28の上部近傍には、第1案内部10が配置されている。また、第1案内部10の直上には糸吸引部4が配置され、糸吸引部4の直上には給油部2が配置されている。このように各部材を近傍に配置することによって奏される作用効果については、第1糸送りローラ20との位置関係を含めて後述する。
【0037】
[2.紡糸引取部]
以下、紡糸引取部6が備える第1案内部10、第1糸送りローラ20、延伸部28、緩和部60及び分配部70について説明する。
【0038】
[2-1.第1案内部、第1糸送りローラ]
図3は、第1案内部10の周辺を示す側面図の一例である。
図3に示されるように、第1案内部10は、主に、複数(例えば12個)の方向変更ローラ10A~10Lで構成されている。複数の方向変更ローラ10A~10Lは、
図3の紙面において左右方向に一列に並んで配置されている。詳しくは、方向変更ローラ10A~10Fは
図3の紙面において左から右に向かって配置されており、方向変更ローラ10G~10Lは
図3の紙面において右から左に向かって配置されている。ここで、「X方向に一列に並んで」と記載せずに「
図3の紙面において左右方向に一列に並んで」と記載した理由については、「
図2の紙面において左右方向に一列に並んで」と記載した複数の給油部2とあわせて、
図4を参照して後述する。
【0039】
なお、本実施形態では、複数の方向変更ローラ10A~10Lが
図3の紙面において左右方向に一列に並んで配置されている旨を説明したが、複数の方向変更ローラ10A~10Lは、水平に配置されていてもよいし、上下方向にずれて配置されていてもよい。
【0040】
複数の方向変更ローラ10A~10Lは、紡糸機から下方に向けて紡出され、油剤が塗布された複数(例えば12本)の糸100を、複数の糸100ごとに、水平方向より下方に位置する第1糸送りローラ20に送るためのローラである。なお、「水平方向より下方」は、水平方向よりも僅かに下方であることが好ましい。例えば、方向変更ローラ10A~10Lから第1糸送りローラ20に送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度が、5度より大きく且つ30度以下であることが好ましい。「方向変更ローラ10A~10Lから第1糸送りローラ20に送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度」は、
図3に示される角度αが相当する。
【0041】
方向変更ローラ10A~10Fによって走行方向が変えられた糸100は、第1巻取装置81(
図1参照)に送られて巻き取られる。また、方向変更ローラ10G~10Lによって走行方向が変えられた糸100は、第2巻取装置91(
図1参照)に送られて巻き取られる。
【0042】
第1糸送りローラ20は、第1案内部10から延伸部28への糸経路上に設けられるローラであり、糸走行方向及び鉛直方向の双方に対して略直交する方向(すなわちY方向)を軸方向とするローラである。第1糸送りローラ20は、上下方向については第1案内部10(すなわち複数の方向変更ローラ10A~10L)と延伸部28との間であって、水平方向については第1案内部10(より詳しくは方向変更ローラ10G)及び延伸部28のいずれよりもX方向と反対方向側に配置されている。すなわち、第1案内部10と延伸部28とは、平面視で重なる位置において上下に配置された位置関係であるのに対し、第1糸送りローラ20は、平面視で第1案内部10及び延伸部28のいずれとも重ならず、水平方向の外れた位置に配置されている。ただし、省スペース化の観点から、第1糸送りローラ20は、水平方向について、第1案内部10及び延伸部28の近傍であることが好ましい。
【0043】
このように、延伸部28の上部近傍に第1案内部10を配置し、第1案内部10及び延伸部28のいずれよりもX方向と反対方向側の外れた位置に第1糸送りローラ20を配置することで、第1案内部10と延伸部28との上下間距離を小さくすることができる。また、第1案内部10と延伸部28との上下間距離を小さくすることで、第1案内部10、第1案内部10の直上に配置されている糸吸引部4、及び、糸吸引部4の直上に配置されている給油部2についても高さを抑制し、紡糸引取装置1全体を低床化することができる。その結果、従来のように1階の作業エリアを上下に分け、各作業エリアそれぞれにオペレータを配置する必要がなくなり、オペレータ1人による糸掛け作業が可能となるため糸掛け作業時間の短縮を達成でき、省人化を図ることが可能となる。
【0044】
第1糸送りローラ20から送り出された糸100は、延伸部28に向けて進行する。第1糸送りローラ20への糸100の巻き掛け角度は360度未満である。
【0045】
紡糸機から下方に紡出された複数の糸100は、複数の方向変更ローラ10A~10Lのそれぞれのローラ面に対して接するだけでなく、例えば45度以上且つ90度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられる。特に、第1糸送りローラ20を方向変更ローラ10GよりもX方向と反対方向側に設置し、角度αを極力小さくすることにより、各方向変更ローラ10A~10Lへの糸の巻き掛け角度を大きくすることが可能となり、糸100と各方向変更ローラ10A~10Lのグリップ力が大きくなる。そのため、複数の方向変更ローラ10A~10Lと第1糸送りローラ20との間の糸100に対して張力を付与することができ、複数の方向変更ローラ10A~10Lよりも下流側の糸100の走行を安定化させることができる。さらには、従来設けられていたような、糸に対して張力を微調整するガイドが不要となり、その分、給油部2及び糸吸引部4を、ガイドを備える紡糸引取装置よりも低い位置に配置することができる。しかも、糸100の走行方向がローラによって変えられるため、糸100に与える負担を極力低減することができる。なお、複数の方向変更ローラ10A~10L周面上の糸離隔位置が、第1糸送りローラ20周面上の糸進入位置より鉛直方向に低い位置にある場合は、複数の方向変更ローラ10A~10Lのそれぞれのローラ面に接する巻き掛け角度は90度を超える。
【0046】
複数の方向変更ローラ10A~10Lには、それぞれのローラに対応する複数のモータ(後述の
図10に示されるモータ76)が備えられている。第1糸送りローラ20が第1案内部10及び延伸部28のいずれよりもX方向と反対方向側の外れた位置に配置されている場合、各方向変更ローラ10A~10Lから第1糸送りローラ20までの距離(すなわち糸長)が異なり、複数の糸100ごとに張力が異なるおそれがある。そこで、複数の方向変更ローラ10A~10Lのそれぞれが個別に駆動できるようにすることで、糸送り速度が安定し、糸長が異なる場合でも、糸張力のバラツキを抑制することが可能となる。
【0047】
次に、
図4を参照して、複数の給油部2、複数の糸吸引部4及び複数の方向変更ローラ10A~10Lの位置関係について説明する。
図4は、複数の給油部2、複数の糸吸引部4、及び、第1糸送りローラ20を示す平面図の一例である。
【0048】
図4に示されるように、給油部2は、複数の給油部2A~2Lが、
図4の紙面において左右方向、且つ、Y方向(すなわち巻取軸84(
図1参照)及び鉛直方向の双方に対して直交する方向)に等間隔に一列にずれて配置されている。また、
図4にはあらわれていないが、各給油部2A~2Lそれぞれの直下に各糸吸引部4A~4L(
図3参照)が配置されている。なお、方向変更ローラ10A~10Lと同様に、給油部2A~2Fは
図4の紙面において左から右に向かって配置されており、給油部2G~2Lは
図4の紙面において右から左に向かって配置されている。
【0049】
また、
図4には第1案内部10(複数の方向変更ローラ10A~10L)があらわれていないが、各糸吸引部4A~4Lそれぞれの直下に各方向変更ローラ10A~10Lが配置されている。そのため、複数の方向変更ローラ10A~10Lも、それぞれY方向に等間隔に一列にずれて配置されている。このようにすることで、紡糸機から紡出された複数の糸100は、それぞれ、平面視で平行となるように互いにY方向にずれて進行することとなり、糸どうしが互いに干渉したり絡まったりすることを防止できる。特に、本実施形態では、第1案内部10と延伸部28との上下間距離を小さくしているが、このような場合であっても、複数の糸100を平行に走行させることができ、複数の糸が互いに干渉したり絡まったりすることを防止できる。また、複数の方向変更ローラ10A~10Lから分配ローラ70A~70L間の糸経路中に配置された糸間隔を保持するガイド(図示せず)や交絡装置(図示せず)への糸掛け作業を容易に行うことができる。しかしながら、これには限られない。複数の方向変更ローラ10A~10Lから分配ローラ70A~70L間に糸間隔を保持するガイドや交絡装置を備えていなくてもよい。
【0050】
なお、複数の給油部2A~2L及び複数の糸吸引部4A~4Lの配置について「X方向、且つ、Y方向にずれて配置」と記載せずに「
図4の紙面において左右方向、且つ、Y方向にずれて配置」と記載した理由は、X方向が1つの方向を意味するためである。すなわち、「X方向に配置」が、X方向といった1つの方向に直列に配置されていることに限定解釈された場合に、「Y方向にずれて」の記載との間で不整合となるおそれがあることを回避するためである。
図2及び
図3を参照した説明において、「X方向に一列に並んで」と記載せずに、「
図2の紙面において左右方向に一列に並んで」又は「
図3の紙面において左右方向に一列に並んで」と記載した理由も同様の趣旨である。すなわち、「X方向に一列に並んで」と記載した場合に、Y方向にずれていないと解釈されることを回避するためである。
【0051】
なお、複数の給油部2、複数の糸吸引部4、複数の方向変更ローラ10A~10L、複数の綾振り装置85、及び、複数のボビン86の数は、とくに限定されるものでない。
【0052】
[2-2.延伸部]
図5は、延伸部28の周辺を示す側面図の一例である。
図5に示されるように、延伸部28は、主に、延伸前の糸100を加熱する複数の予備加熱ローラ31と、複数の予備加熱ローラ31よりも下流側に配置される複数の延伸ローラ41と、複数の延伸ローラ41よりも下流側に配置され、延伸された糸100を調質するための複数の熱セットローラ51とを備える。
【0053】
なお、複数の予備加熱ローラ31、複数の延伸ローラ41及び複数の熱セットローラ51は、それぞれ保温箱(参照符号なし)に収容されるため、本来であれば図面にあらわれないが、本明細書において参照する各図においては、便宜上、図示している。
【0054】
ところで、従来はローラ幅が相対的に大きい長尺のローラに糸を複数周巻き掛けることで加熱長さを確保していたところ、本実施形態の紡糸引取装置1では、ローラ幅が従来よりも小さい短尺ローラを用いてローラへの巻き掛けを1周未満としている。しかし、ローラへの巻き掛けを1周未満にしつつ加熱長さを確保するためには、従来よりも多くのローラの個数が必要となる。特に、例えば300デニール以上の産業資材用糸を生産する紡糸引取装置では、衣料用糸の紡糸引取装置と比べてより多くの加熱長さが必要である。そこで、本実施形態の紡糸引取装置1では、複数の予備加熱ローラ31と、複数の延伸ローラ41と、複数の熱セットローラ51とを、同一フロアにおいてX方向に直列に水平配置することで、ローラへの巻き掛けを1周未満(ローラへの巻き掛け角度を360度未満)にして加熱長さを確保しつつ、延伸部28を低床化することが可能となる。なお、複数の予備加熱ローラ31、複数の延伸ローラ41及び複数の熱セットローラ51は、本発明の「複数のローラ」に相当する。
【0055】
複数の延伸ローラ41のうち少なくとも最上流側の延伸ローラ41の糸送り速度は、複数の予備加熱ローラ31のうち最下流側の予備加熱ローラ31の糸送り速度よりも大きい。そのため、糸100は、複数の予備加熱ローラ31のうち最下流側の予備加熱ローラ31と、複数の延伸ローラ41のうち最上流側の延伸ローラ41との間で延伸される。
【0056】
複数の予備加熱ローラ31の表面温度は、糸100のガラス転移点以上の温度(例えば90℃)に設定される。複数の第1延伸ローラ41の表面温度は、予備加熱ローラ31の表面温度よりも高い温度(例えば110℃)に設定される。複数の熱セットローラ51の表面温度は、延伸ローラ41の表面温度よりも高い温度(例えば130℃)に設定される。
【0057】
なお、本実施形態では、複数の予備加熱ローラ31の全てのローラの表面温度が昇温されているが、これに限られず、少なくとも1本のローラの表面温度が昇温され、残りの他のローラの表面温度は昇温されなくともよい。同様に、本実施例では、複数の延伸ローラ41及び複数の熱セットローラ51は、いずれも全てのローラの表面温度が昇温されているが、これに限られず、それぞれ、少なくとも1本のローラの表面温度が昇温され、残りの他のローラの表面温度は昇温されなくともよい。また、複数の予備加熱ローラ31が同じ表面温度に設定されることは必須ではない。複数の予備加熱ローラ31はそれぞれ異なる表面温度に設定してもよい。なお、複数の延伸ローラ41及び複数の熱セットローラ51に対しても同様であり、それぞれ同じ表面温度に設定してもよいし、それぞれ異なる表面温度に設定してもよい。
【0058】
[2-3.緩和部]
図6は、緩和部60、分配部70及び巻取部8の周辺を示す側面図の一例である。
図6に示されるように、緩和部60は、熱セットローラ51の直上に配置されている。
【0059】
緩和部60は、第1緩和ローラ61と、第1緩和ローラ61よりも糸走行方向の下流側に配置される第2緩和ローラ62とを有する。第1緩和ローラ61及び第2緩和ローラ62は、いずれも、平面視で糸経路の糸走行方向に対して略直交する方向(すなわちY方向)を軸方向とするローラである。
【0060】
複数の熱セットローラ51のうち最下流側の熱セットローラ51から送り出された糸100は、第1緩和ローラ61、第2緩和ローラ62の順で走行する。なお、第2緩和ローラ62は、本発明の「案内ローラ」に相当する。
【0061】
第1緩和ローラ61と第2緩和ローラ62とは、上下方向に互いにずれて配置されている。また、第1緩和ローラ61及び第2緩和ローラ62は、X方向において、第1緩和ローラ61がX方向側に、第2緩和ローラ62がX方向と反対方向側に、互いにずれて配置されている。第1緩和ローラ61及び第2緩和ローラ62をこのように配置することにより、第2緩和ローラ62の高さを抑制することができ、第2緩和ローラ62への糸掛け作業を容易化できる。
【0062】
第1緩和ローラ61及び第2緩和ローラ62への糸100の巻き掛け角度は、いずれも360度未満である。緩和ローラ61,62の表面温度は、糸100の内部歪みの緩和が進むように熱セットローラ51よりも低い温度(例えば100℃)に設定される。ただし、第1緩和ローラ61と第2緩和ローラ62とが同じ表面温度に設定されることは必須ではなく、緩和ローラ61,62ごとに異なる表面温度に設定されるようにしてもよい。
【0063】
なお、本実施例では、第1緩和ローラ61及び第2緩和ローラ62のいずれもローラの表面温度が昇温されているが、これに限られない。例えば、第1緩和ローラ61及び第2緩和ローラ62のうち、少なくとも1本のローラの表面温度が昇温され、他のローラの表面温度は昇温されなくともよい。
【0064】
緩和部60のうち糸走行方向の下流側に配置された第2緩和ローラ62から送り出された糸100は、分配部70に案内される。緩和部60及び分配部70は、本発明の「第2案内部」に相当する。
【0065】
[2-4.分配部]
図6に示されるように、分配部70は、複数の分配ローラ70A~70Fを備える。複数の分配ローラ70A~70Fは、分配ローラ70A、分配ローラ70B、分配ローラ70C、分配ローラ70D、分配ローラ70E、分配ローラ70Fの順で、X方向に向けて直列に水平配置されている。
【0066】
また、第1巻取装置81の1本の巻取軸84には、複数のボビン86A~86Fを装着することができる。本実施例において、複数のボビン86A~86Fは、ボビン86A、ボビン86B、ボビン86C、ボビン86D、ボビン86E、ボビン86Fの順で、X方向に向けて、第1巻取装置81の巻取軸84に装着されている。
【0067】
複数の分配ローラ70A~70Fは、それぞれ、複数のボビン86A~86Fに対応している。各分配ローラ70A~70Fは、それぞれ、第2緩和ローラ62から送られる糸100の走行方向を下方に変える。このようにして、複数の糸100は、糸100ごとに、各分配ローラ70A~70Fから対応するボビン86A~86Fに送られることとなる。
【0068】
複数のボビン86A~86Fは、それぞれ、対応する分配ローラ70A~70Fによって走行方向が変えられた糸100を巻き取って、巻取パッケージを形成する。なお、複数のボビン86A~86Fのそれぞれの直上には、それぞれのボビン86A~86Fに対応する複数の綾振り装置85A~85Fが配置されている。ただし、
図6では、便宜上、綾振り装置85A及び綾振り装置85Fのみに参照符号を付し、綾振り装置85B~85Eについての参照符号を省略している。また、複数の綾振り装置85A~85Fの直上には、それぞれ、複数の綾振り装置85A~85Fすなわち複数のボビン86A~86Fに対応する複数の分配ローラ70A~70Fが配置されている。
【0069】
図7は、分配部70の周辺を示す平面図の一例である。
図7に示されるように、分配部70は、上述した複数の分配ローラ70A~70Fの他、複数の分配ローラ70G~70Lを備える。第2緩和ローラ62から送り出された複数の糸100は、分配ローラ70A~70Fに向かう方向と、分配ローラ70G~70Lに向かう方向とに送られる。
【0070】
上述したとおり、複数の分配ローラ70A~70Fは、第1巻取装置81の巻取軸84に装着された複数のボビン86A~86Fに対応している。これに対し、複数の分配ローラ70G~70Lは、第2巻取装置91(
図1参照)の巻取軸84に装着された複数のボビン(図示せず)に対応している。よって、各分配ローラ70G~70Lは、それぞれ、各分配ローラ70A~70Fと同様に、第2緩和ローラ62から送られる糸100の走行方向を下方に変える。
【0071】
このように、延伸部28(
図6参照)の最下流側の熱セットローラ51(
図6参照)から送られた糸100は、緩和部60と分配部70とを経由して巻取部8に送られる。すなわち、最下流側の熱セットローラ51から送られた糸100は、一旦、延伸部28よりも上方に向けて走行し、緩和部60と分配部70とを経由して巻取部8に巻き取られる。そのため、巻取部8と延伸部28とを同一フロアにおいて水平配置した場合であっても、延伸部28すなわち最下流側の熱セットローラ51から送られた糸100を、巻取部8に巻き取ることができる。すなわち、最下流側の熱セットローラ51から送られた糸100を、巻取部8よりも高い位置に配置された緩和部60と分配部70とを経由して巻取部8に巻き取られるようにすることで、延伸部28を、巻取部8と同一フロアにおいて水平配置することに寄与できる。その結果、延伸部28の高さを抑制して低床化することができ、ひいては紡糸引取装置1の高さを抑制して低床化することが可能となる。
【0072】
[2-5.緩和部から分配部までの糸経路]
次に、緩和部60から分配部70までの糸経路について、
図7を参照して説明する。
図7に示されるように、第2緩和ローラ62から送り出される複数(例えば12本)の糸100は、平面視で糸経路に対して直交する方向に離れた複数の糸経路96A~96Lのうちいずれかを走行する。
【0073】
糸経路96Aは、分配ローラ70Aに向けて走行する糸100の経路である。糸経路96Aを走行する糸100は、方向変更ローラ10Aから送られた糸100である。同様に、糸経路96B~96Lは、それぞれ、分配ローラ70B~70Lに向けて走行する糸100の経路である。糸経路96B~96Lを走行する糸100は、それぞれ、方向変更ローラ10B~10Lから送られた糸100である。
【0074】
糸経路96A~96Fは、互いにY方向に離れている。同様に、糸経路96G~96Lは、互いにY方向に離れている。また、
図4を参照して上述したように、複数の方向変更ローラ10A~10L(
図3参照)がそれぞれY方向にずれて配置されている。また、複数の糸100は、第1案内部10(
図2参照)から第2緩和ローラ62までの間、平行を保ちながら、平面視での走行方向がX方向のみとなるように走行する。そのため、第1案内部10(
図2参照)から延伸部28(
図2参照)までの間、糸経路が各ローラ(方向変更ローラ10A~10L、第1糸送りローラ20、複数の予備加熱ローラ31、複数の第1延伸ローラ41、複数の熱セットローラ51、複数の緩和ローラ61,62の軸方向にずれないように、糸100を走行させることができる。
【0075】
[2-6.緩和部と分配部との位置関係]
次に、複数の分配ローラ70A~70FがX方向に向けて直列に水平配置されている場合において、緩和部60と分配部70との位置関係、より詳しくは、緩和部60の最下流側の第2緩和ローラ62と、各分配ローラ70A~70Fとの高さ位置関係について、説明する。
【0076】
図8は、第2緩和ローラ62及び各分配ローラ70A~70Fの側面図の一例である。本実施形態の紡糸引取装置1のように、延伸部28(
図6参照)から送られる複数(本実施例では例えば12本)の糸100が緩和部60と分配部70とを経由して巻取部8に巻き取られる場合、以下の要件を満たす必要がある。すなわち、例えば第2緩和ローラ62から最も遠い分配ローラ70F,70L(
図7参照)の接触点までの糸100が、他の分配ローラ70A~70E,70G~70K(
図7参照)や、第2緩和ローラ62よりも上流側の他のローラ(例えば第1緩和ローラ61(例えば、
図6参照))のローラ表面と接触しないことが必要である。そこで、この要件を満たす範囲で、緩和部60(第1緩和ローラ61、第2緩和ローラ62)及び分配ローラ70A~70Lを配置する必要がある。
【0077】
ところで、分配ローラ70A~70Fを配置できる高さ方向の下限は、例えば綾振り装置85A~85Fやボビン86A~86F(いずれも
図8参照)等との相対的な位置関係によって決まる。よって、第2緩和ローラ62の高さを抑制するためには、分配ローラ70A~70Fを高さ方向の下限又は下限に近い位置に配置した上で、上記の要件を満たす範囲で、第2緩和ローラ62の高さ位置を決めることが好ましい。第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70L(
図7参照)の接触点までの距離によっても異なるが、本実施形態では、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度が例えば0度より大きく且つ20度以下となるように、第2緩和ローラ62が配置されている。このように、第2緩和ローラ62を極力低い位置に配置することで、第2緩和ローラ62への糸掛け作業が高所作業とならないようにすることが可能となる。「第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度」は、
図9に示される角度βが相当する。なお、
図9は、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Aに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βを示す模式図の一例である。
図9では、複数の分配ローラ70A~70Fのうち分配ローラ70Aが一例として図示されている。本実施形態では、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と平平面とからなる鋭角の角度βが例えば0度より大きく且つ20度以下となるように、第2緩和ローラ62が配置されている。
【0078】
ただし、分配ローラ70A~70Fは、上述したとおり、X方向に向けて直列に水平配置されている。そのため、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βは、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fまでの距離に応じて異なる。詳述すると、第2緩和ローラ62からの距離が近いほど、上記の角度βが大きくなる。すなわち、上記の角度βは、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Aに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βが最も大きく、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βが最も小さい。よって、上記の角度βを0度より大きく且つ20度以下とする場合、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる角度βを0度より大きく、且つ、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Aに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βを20度以下となるように、第2緩和ローラ62を配置するとよい。
【0079】
なお、各分配ローラ70A~70Fと各分配ローラ70G~70L(
図7参照)とは対の関係にある。そのため、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70G~70Lに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる角度βは、それぞれ、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる角度βとほぼ同じである。
【0080】
[2-7.分配ローラの取付態様]
次に、各分配ローラ70A~70Lの取付態様について、
図10を参照して説明する。
図10は、各分配ローラ70A~70LよりもX方向側において、X方向に対して直交する方向に切った断面図の一例である。より詳しくは、
図10(A)は、
図8に示されるA-A線断面図である。
図10(B)は、
図8に示されるB-B線断面図である。
図10(C)は、
図8に示されるC-C線断面図である。
図10(D)は、
図8に示されるD-D線断面図である。
図10(E)は、
図8に示されるE-E線断面図である。
図10(F)は、
図8に示されるF-F線断面図である。
【0081】
図10(A)~(F)に示されるように、分配ローラ70A~70Lは、いずれも、軸方向が水平方向に対して傾斜している。分配ローラ70A~70Lの軸方向を水平方向に対して傾斜させているのは、複数の分配ローラ70A~70Lのそれぞれが、他の分配ローラ70A~70Lに対応する糸経路96A~96Lを走行する糸100を回避できるようにするためである。しかも、分配ローラ70A~70Lの軸方向を水平方向に対して傾斜させるだけの簡単な構成で、糸とローラ表面との接触を避けることが可能となる。
【0082】
なお、「第2緩和ローラ62から最も遠い分配ローラ70F,70Lの接触点までの糸100が、他の分配ローラ70A~70E,70G~70Kのローラ表面と接触しないようにする」といった目的に鑑みれば、分配ローラ70F及び分配ローラ70Lについては、軸方向を水平方向に対して傾斜させることは必須でない。
【0083】
分配ローラ70A~70Lの取付態様について詳述すると、分配ローラ70A~70Fは、取付フレーム72の一側(
図10の紙面右側)の取付面72aに取り付けられており、分配ローラ70G~70Lは、取付フレーム72の他側(
図10の紙面左側)の取付面72bに取り付けられている。取付フレーム72は、
図10の紙面において、一側の取付面72aが上方から下方にむけて右下がりとなるように配置されており、他側の取付面72bが上方から下方にむけて左下がりとなるように配置されている。分配ローラ70A~70Fは、軸方向が一側の取付面72aに対して直交するように取り付けられるため、分配ローラ70A~70Fの軸方向は、一側の取付面72aに取り付けられる側の基端部から、基端部とは反対側の先端部にかけて上向き方向となる。同様に、分配ローラ70G~70Lは、軸方向が他側の取付面72bに対して直交するように取り付けられているため、分配ローラ70G~70Lの軸方向は、基端部から先端部にかけて上向き方向となる。本実施形態において、分配ローラ70A~70Fは、軸方向と水平方向とによってなす鋭角側の角度が概ね30度となるように、一側の取付面72aに取り付けられている。一方、分配ローラ70G~70Lは、軸方向と水平方向とによってなす鋭角側の角度が概ね30度となるように、他側の取付面72bに取り付けられている。
【0084】
このように、分配ローラ70A~70Lを、基端部から先端部にかけて上方を向くように傾斜させることにより、対応する分配ローラに糸100が到達するまでの間に、他の分配ローラの表面と接触することを防止可能となる。その結果、複数の糸100を、並行して分配ローラ70A~70F及び分配ローラ70G~70Lに進入させることが可能となり、第1緩和ローラ61及び各分配ローラ70A~70Lの高さを抑制することが可能となる。
【0085】
なお、分配ローラ70A~70Lが、複数の糸100の糸経路に沿って(すなわちX方向に)水平配置されている場合、第2緩和ローラ62からの距離が同じ地点においては、第2緩和ローラ62からの距離が大きい分配ローラへの糸経路を走行する糸100ほど高い位置を走行する。そのため、机上の理論では、分配ローラ70A~70Lを傾斜させなくとも、糸100が他の分配ローラの表面と接触しないかのように見えうる。しかし、実際には糸100の撓みや振動等があるため、分配ローラ70A~70Lを傾斜させない場合には、糸100が他の分配ローラの表面や他の部位と接触するおそれがある。そこで、本実施形態では、分配ローラ70A~70Lを、基端部から先端部にかけて軸方向が上向き方向となるように取り付けるようにしている。このようにすることで、対応する分配ローラに糸100が到達するまでの糸経路上に、各糸の糸経路96B~96F,96H~Lを確保でき、ひいては糸100が撓みや振動等が発生したとしても走行できるスペースを確保することが可能となる。特に、第2緩和ローラ62からの距離が最も大きい分配ローラ70F,70Lの接触点までの糸100を、他の分配ローラ70A~70E,70G~70Kのローラ表面と接触しないように走行させることが可能となる。
【0086】
また、分配ローラ70A~70Lには、それぞれのローラに対応するモータ76が備えられている。本実施例の紡糸引取装置1では、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Lまでの距離が異なるため、各分配ローラ70A~70Lよりも下流側において、複数の糸100ごとに張力が異なるおそれがある。複数の糸100ごとに張力が異なると、巻き取られるボビンに応じて巻取パッケージの品質を一定に保つことは困難となる。そこで、複数の分配ローラ70A~70Lのそれぞれが個別に駆動できるようにすることで、各分配ローラ70A~70Lよりも下流側における複数の糸100の張力差を小さくすることで、巻取パッケージの品質を安定させることが可能となる。
【0087】
[3.作用効果]
以上説明した本実施形態の紡糸引取装置1によれば、延伸部28からの複数の糸100は、第2緩和ローラ62と分配部70とを経由して巻取部に送られる。そのため、延伸部28及び巻取部8を、同一フロアにおいて、巻取軸84の軸方向と、平面視における延伸部28での糸100の走行方向と、が平行となるように、水平配置することが可能となる。その結果、従来のように1階の作業エリアを上下に分け、各作業エリアそれぞれにオペレータを配置する必要がなくなり、オペレータ1人による糸掛け作業が可能となるため糸掛け作業時間の短縮が達成でき、省人化を図ることが可能となる。
【0088】
また、第2緩和ローラ62及び分配ローラ70A~70Lは、第2緩和ローラ62から送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる角度βが、0度以上且つ20度以内となるように配置されている。ところで、分配ローラ70A~70Lの高さ方向の下限は、例えば、複数の綾振り装置85A~85Fやボビン86A~86F等との相対的な位置関係によって決まる。よって、第2緩和ローラ62及び分配ローラ70A~70Lを、第2緩和ローラ62から送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる角度βが0度以上且つ20度以内となるように配置することにより、第2緩和ローラ62及び分配ローラ70A~70Lの高さを抑制することが可能となる。
【0089】
また、分配ローラは、第2緩和ローラ62から分配ローラへの糸経路に沿って複数の分配ローラ70A~70Lが一列に配置されている。また、第2緩和ローラ62から分配ローラ70A~70Lへの糸経路は、複数の分配ローラ70A~70Lに対応して、平面視で糸経路に対して直交する方向に離れた複数の糸経路96A~96Lが形成されている。そして、複数の分配ローラ70A~70Lのそれぞれは、他の分配ローラ70A~70Lに対応する糸経路96A~96Lを回避するように配置されている。具体的には、分配ローラ70A~70Lの軸方向が水平方向に対して傾斜している。そのため、第2緩和ローラ62から送られた糸100が他の分配ローラ70A~70Lのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0090】
また、複数の分配ローラ70A~70Lのそれぞれに対応する複数のモータ76が備えられている。そのため、複数の分配ローラ70A~70Lのそれぞれを個別に駆動することができ、複数の分配ローラ70A~70Lよりも下流側における複数の糸100の張力差を小さくすることが可能となる。その結果、巻取パッケージの品質を安定させることが可能となる。とくに、複数の分配ローラ70A~70Lは、それぞれ、第2緩和ローラ62からの距離が異なるため張力差が生じやすい。しかし、複数の分配ローラ70A~70Lのそれぞれに対応する複数のモータ76を備えることにより、複数の分配ローラ70A~70Lよりも下流側における複数の糸100の張力差を小さくして安定化させることが可能となる。
【0091】
[4.変形例]
次に、本実施形態の紡糸引取装置1に種々の変更を加えた変形例について説明する。但し、変形例を説明するにあたり、上述の実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0092】
[4-1.第1変形例]
上述の実施形態では、例えば
図2に示されるように、延伸部28が巻取部8と同一フロアにおいて水平配置されており、延伸部28から送られた糸100は、延伸部28の上方に配置された緩和部60と、分配部70とを経由して巻取部8に送られるが、これに限られない。すなわち、緩和部60が、延伸部28よりも上方に配置されることは必須でない。
【0093】
図11は、第1変形例に係る紡糸引取装置1Aの概略を示す側面図の一例である。
図11に示される紡糸引取装置1Aでは、延伸部28の下流側に緩和部60が配置されている。また、緩和部60よりも上方に、第2糸送りローラ94,95が配置されている。そして、緩和部60から送られた糸100は、第2糸送りローラ94,95と、分配部70とを経由して巻取部8に送られる。このようにした場合であっても、緩和部60から送られた糸100を、一旦、延伸部28や緩和部60よりも上方に向けて走行させて、第2糸送りローラ94,95と、分配部70とを経由して巻取部8に送ることが可能となる。そのため、巻取部8と延伸部28とを同一フロアにおいて水平配置したとしても、延伸部28から送られた糸100を、巻取部8に巻き取ることが可能となる。なお、第2糸送りローラの数は2つに限定されない。1つでも良いし、3つ以上でも良い。緩和部60から送られた糸100が第2糸送りローラの周面に巻かれる糸の接触角度及び接触面積に応じて、第2糸送りローラの数は適宜選択できる。第1変形例に係る紡糸引取装置1Aでは、第2糸送りローラが、本発明の「案内ローラ」に相当する。
【0094】
[4-2.第2変形例]
上述の実施形態において、例えば
図10に示されるように、分配ローラ70A~70Lは、基端部から先端部にかけて軸方向が上向き方向となるように取り付けられている。分配ローラ70A~70Lをこのように取り付けることで、例えば第2緩和ローラ62から最も遠い分配ローラ70F,70Lの接触点までの糸100が、他の分配ローラ70A~70E,70G~70Kのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。ただし、分配ローラ70A~70Lの形状や、分配ローラ70A~70Lの取付態様は、
図10に示される形状や取付態様であることは必須ではなく、例えば
図12に示されるものであってもよい。
【0095】
図12は、分配ローラの形状及び分配ローラの取付態様に変形を加えた第2変形例を示す図である。
図12では、分配ローラの形状を変更することによって、例えば第2緩和ローラ62から最も遠い分配ローラ77F,77Lの接触点までの糸100が、他の分配ローラ77A~77E,77G~77Kのローラ表面と接触しないようにしている。
【0096】
具体的には、
図12に示される分配ローラ77A~77Lは、基端部から先端部にかけてローラ径が大きくなる断面が円錐状の分配ローラであり、軸方向がY方向となるように、取付フレーム72の一側(
図12の紙面右側)の取付面72a又は他側(
図12の紙面左側)の取付面72bに取り付けられている。このような場合であっても、Y方向位置に応じてローラ面の高さを変えることができ、対応する分配ローラに糸100が到達するまでの糸経路上に、糸100が走行できるスペースを確保することが可能となる。その結果、第2緩和ローラ62から最も遠い分配ローラ77F,77Lの接触点までの糸100が、他の分配ローラ77A~77E,77G~77Kのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0097】
なお、分配ローラ77F及び分配ローラ77Lについては、軸方向を傾斜させて取り付けた分配ローラと同様に、断面が円錐状の分配ローラとすることは必須でない。
【0098】
[4-3.第3変形例]
図13は、第2変形例と同様の趣旨で、分配ローラの形状及び分配ローラの取付態様に変形を加えた第3変形例を示す図である。
図13においても、例えば第2緩和ローラ62から最も遠い分配ローラ78F,78Lの接触点までの糸100が、他の分配ローラ78A~78E,78G~78Kのローラ表面と接触しないようにしている。
【0099】
具体的には、
図13に示される分配ローラ78A~78Lは、基端部から先端部にかけてローラ径が段付きで大きくなる段付きの分配ローラであり、軸方向がY方向となるように、取付フレーム72の一側(
図13の紙面右側)の取付面72a又は他側(
図13の紙面左側)の取付面72bに取り付けられている。このような場合であっても、Y方向位置に応じてローラ面の高さを変えることができ、対応する分配ローラに糸100が到達するまでの糸経路上に、糸100が走行できるスペースを確保することが可能となる。その結果、例えば第2緩和ローラ62から最も遠い分配ローラ78F,78Lの接触点までの糸100が、他の分配ローラ78A~78E,78G~78Kのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0100】
なお、分配ローラ78F及び分配ローラ78Lについては、軸方向を傾斜させて取り付けた分配ローラと同様に、段付きの分配ローラとすることは必須でない。
【0101】
また、分配ローラの形状及び分配ローラの取付態様は、複数の分配ローラの全部が同じであることは必須でない。例えば、本実施例に記載したように軸方向を傾斜させて取り付けた分配ローラと、変形例2に記載した断面が円錐状の分配ローラと、変形例3に記載した段付きの分配ローラとを含む複数の分配ローラとしてもよい。
【0102】
[4-4.第4変形例]
上述の実施形態において、例えば
図8に示されるように、分配ローラ70A~70Fは、X方向に向けて直列に水平配置されているが、これに限られず、
図14に示される態様であってもよい。
図14は、分配ローラ70A~70Fの配置に変更を加えた第4変形例を示す図である。例えば、
図14に示されるように、分配ローラ70A~70Fを、それぞれの高さ位置を変えて、X方向に沿って配置してもよい。すなわち、例えば第2緩和ローラ62から最も遠い分配ローラ70Fの接触点までの糸経路96Fを走行する糸100が、他の分配ローラ70A~70Eのローラ表面と接触しないようにすることができれば、分配ローラ70A~70Fの高さ位置は、水平でなくともよい。なお、
図14には示されないが、分配ローラ70G~70Lについても同様である。このように、
図14に示される構成によれば、複数の分配ローラ70A~70Fを、それぞれの高さ位置を変えて配置するだけといった簡単な構成で、第2緩和ローラ62から送られた各糸100が他の分配ローラのローラ表面と接触しないようにすることが可能となる。
【0103】
分配ローラ70A~70Fを、
図14に示されるようにそれぞれの高さ位置を変えてX方向に沿って配置した場合、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βを、0度又は0よりも小さい角度とすることが可能となる。
【0104】
図15は、分配ローラ70A~70Fそれぞれの高さ位置を変えて配置した場合において、第1緩和ローラ61、第2緩和ローラ62及び分配ローラ70A~70Fの位置関係の一例を示す模式図である。
図15(A)は第1配置パターン、
図15(B)は第2配置パターン、
図15(C)は第3配置パターンを示す模式図である。
【0105】
図15(A)~(C)に示される第1配置パターン~第3配置パターンは、いずれも、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Fの接触点までの糸100が、他の分配ローラ70A~70E及び第1緩和ローラ61のローラ表面と接触していない。
図15(A)~(C)に示される第1配置パターン~第3配置パターンのいずれであっても、対応する分配ローラに糸100が到達するまでの糸経路上に、糸100が走行できるスペースを確保することが可能となる。よって、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Fの接触点までの糸100が、他の分配ローラ70A~70Eや、第1緩和ローラ61のローラ表面と接触しないようにすることができる。なお、
図15(A)に示される第1配置パターン及び図(C)に示される第3配置パターンでは、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βを0度よりも小さい角度とすることが可能となる。
【0106】
図16は、分配ローラ70A~70Fそれぞれの高さ位置を変えて配置した場合において、第1緩和ローラ61、第2緩和ローラ62及び分配ローラ70A~70Fの位置関係の他の例を示す模式図である。
図16(A)は第4配置パターン、
図16(B)は第5配置パターンを示す模式図である。
【0107】
図16(A)に示される第4配置パターンは、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Fの接触点までの糸100が、他の分配ローラ70A~70Eのローラ表面と接触している。また、
図16(B)に示される第5配置パターンは、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Fの接触点までの糸100が、第1緩和ローラ61のローラ表面と接触している。よって、このような第4配置パターン及び第5配置パターンについては、第1緩和ローラ61、第2緩和ローラ62及び分配ローラ70A~70Fの位置関係として採用することができない。
【符号の説明】
【0108】
1 紡糸引取装置
6 紡糸引取部
8 巻取部
10 第1案内部
20 第1糸送りローラ
28 延伸部
62 第2緩和ローラ(第2案内部)
70A~70L 分配ローラ(第2案内部)
【手続補正書】
【提出日】2022-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
ところで、分配ローラ70A~70Fを配置できる高さ方向の下限は、例えば綾振り装置85A~85Fやボビン86A~86F(いずれも
図8参照)等との相対的な位置関係によって決まる。よって、第2緩和ローラ62の高さを抑制するためには、分配ローラ70A~70Fを高さ方向の下限又は下限に近い位置に配置した上で、上記の要件を満たす範囲で、第2緩和ローラ62の高さ位置を決めることが好ましい。第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70L(
図7参照)の接触点までの距離によっても異なるが、本実施形態では、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度が例えば0度より大きく且つ20度以下となるように、第2緩和ローラ62が配置されている。このように、第2緩和ローラ62を極力低い位置に配置することで、第2緩和ローラ62への糸掛け作業が高所作業とならないようにすることが可能となる。「第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度」は、
図9に示される角度βが相当する。なお、
図9は、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Aに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βを示す模式図の一例である。
図9では、複数の分配ローラ70A~70Fのうち分配ローラ70Aが一例として図示されている。本実施形態では、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と
水平面とからなる鋭角の角度βが例えば0度より大きく且つ20度以下となるように、第2緩和ローラ62が配置されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
図15(A)~(C)に示される第1配置パターン~第3配置パターンは、いずれも、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Fの接触点までの糸100が、他の分配ローラ70A~70E及び第1緩和ローラ61のローラ表面と接触していない。
図15(A)~(C)に示される第1配置パターン~第3配置パターンのいずれであっても、対応する分配ローラに糸100が到達するまでの糸経路上に、糸100が走行できるスペースを確保することが可能となる。よって、第2緩和ローラ62から分配ローラ70Fの接触点までの糸100が、他の分配ローラ70A~70Eや、第1緩和ローラ61のローラ表面と接触しないようにすることができる。なお、
図15(A)に示される第1配置パターン及び図
15(C)に示される第3配置パターンでは、第2緩和ローラ62から各分配ローラ70A~70Fに送られる糸100の糸走行方向と水平面とからなる鋭角の角度βを0度よりも小さい角度とすることが可能となる。