(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189007
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置、エレベータ制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20221215BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B66B1/14 Z
B66B1/14 G
B66B3/00 M
B66B3/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097330
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】京極 貴輝
【テーマコード(参考)】
3F303
3F502
【Fターム(参考)】
3F303BA05
3F303CB31
3F303DB27
3F303DC23
3F502HB14
3F502JA23
3F502JA24
3F502JA25
3F502KA10
3F502KA12
3F502KA13
3F502KA19
(57)【要約】
【課題】一定のスペースが必要な乗客が乗りかごへスムーズに搭乗することができるようにする。
【解決手段】エレベータホールの画像から車いす乗客の有無および車いす乗客の領域情報を得て、エレベータの乗りかごの画像から乗りかご内の空きスペース情報を得る。エレベータホールに車いす乗客がいる場合に、車いす乗客の領域情報と、乗りかご内の空きスペース情報とに基づいて、車いす乗客が搭乗できるスペースのある乗りかごを選択し、該乗りかごをエレベータホールに向かうように制御する。また、乗りかご内の乗客や、エレベータホールの車いす乗客以外の乗客に対して、車いす乗客がスムーズに乗りかごに搭乗できるように通知を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗客が呼び出した階に向かうエレベータの乗りかご内の画像を取得する第1の取得手段と、
前記搭乗客の領域情報を取得する第2の取得手段と、
前記第2の取得手段によって取得された前記搭乗客の領域情報に基づき、前記搭乗客が搭乗できる空きスペースが存在するか否かを、前記第1の取得手段によって取得された乗りかご内の画像から判断する判断手段と、
前記判断手段により前記搭乗客が搭乗できる空きスペースがあると判断された場合に、前記乗りかごを前記搭乗客が呼び出した階に到着させるように制御する制御手段と、
を有することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記第2の取得手段は、前記搭乗客が呼び出した階のエレベータホールの画像を取得し、前記取得したエレベータホールの画像から前記搭乗客の領域情報を取得することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記搭乗客を含む領域の閾値に係る情報を記憶する記憶手段をさらに有し、
前記第2の取得手段は、前記記憶手段に記憶された情報から前記搭乗客の領域情報を取得することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記搭乗客が呼び出した階に最も早く向かう乗りかご内の画像を取得し、
前記制御手段は、前記搭乗客が搭乗できる空きスペースがあると判断された場合に、前記最も早く向かう乗りかごを前記搭乗客が呼び出した階に到着させるように制御することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
進む予定がなく停止している乗りかごが存在する場合に、前記制御手段は、当該乗りかごを前記搭乗客が呼び出した階に到着させるように制御することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記搭乗客は、車いす乗客であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記車いす乗客および該車いす乗客の付添人を含む領域に基づいて、前記車いす乗客および前記付添人が搭乗できる空きスペースが存在するか否かを判断することを特徴とする請求項6に記載のエレベータ制御装置。
【請求項8】
前記搭乗客は、ベビーカー、台車または荷籠の付帯物を伴う搭乗客であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項9】
前記搭乗客が呼び出した階のエレベータホールまたは前記制御手段によって前記呼び出した階に到着させるように制御された乗りかご内において、前記搭乗客の搭乗を援助するための通知を行う通知手段をさらに有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項10】
搭乗客が呼び出した階に向かうエレベータの乗りかご内の画像を取得する第1の取得工程と、
前記搭乗客の領域情報を取得する第2の取得工程と、
前記第2の取得工程によって取得された前記搭乗客の領域情報に基づき、前記搭乗客が搭乗できる空きスペースが存在するか否かを、前記第1の取得工程によって取得された乗りかご内の画像から判断する判断工程と、
前記判断工程により前記搭乗客が搭乗できる空きスペースがあると判断された場合に、前記乗りかごを前記搭乗客が呼び出した階に到着させるように制御する制御工程と、
を有することを特徴とするエレベータ制御方法。
【請求項11】
搭乗客が呼び出した階に向かうエレベータの乗りかご内の画像を取得する第1の取得工程と、
前記搭乗客の領域情報を取得する第2の取得工程と、
前記第2の取得工程によって取得された前記搭乗客の領域情報に基づき、前記搭乗客が搭乗できる空きスペースが存在するか否かを、前記第1の取得工程によって取得された乗りかご内の画像から判断する判断工程と、
前記判断工程により前記搭乗客が搭乗できる空きスペースがあると判断された場合に、前記乗りかごを前記搭乗客が呼び出した階に到着させるように制御する制御工程と、
コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ制御装置、エレベータ制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車いすの乗客がエレベータの乗りかごにスムーズに乗り降りできるように支援する技術はいくつか知られている。特許文献1には、エレベータホールに設置されたカメラの画像から車いす乗客の有無を画像判断し、搭乗した乗りかごを車いす乗客特有の制御にする技術が開示されている。また、特許文献2には、エレベータホールに設置されたカメラの画像から車いす乗客の有無を画像判断し、車いす専用制御ボタンが操作された場合の乗りかご制御を実際の乗客に合わせた制御にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/056251号
【特許文献2】特開2019-151453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車いす乗客のように付帯物を伴う乗客が搭乗できるスペースがない乗りかごがエレベータホールに到着する場合があり、このような場合にはその乗客が乗りかごにスムーズに搭乗できないという問題点がある。
【0005】
本発明は前述の問題点に鑑み、一定のスペースが必要な乗客が、スムーズに乗りかごに搭乗できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエレベータ制御装置は、搭乗客が呼び出した階に向かうエレベータの乗りかご内の画像を取得する第1の取得手段と、前記搭乗客の領域情報を取得する第2の取得手段と、前記第2の取得手段によって取得された前記搭乗客の領域情報に基づき、前記搭乗客が搭乗できる空きスペースが存在するか否かを、前記第1の取得手段によって取得された乗りかご内の画像から判断する判断手段と、前記判断手段により前記搭乗客が搭乗できる空きスペースがあると判断された場合に、前記乗りかごを前記搭乗客が呼び出した階に到着させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一定のスペースが必要な乗客が乗りかごへスムーズに搭乗できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態におけるエレベータ関連装置の全体構成例を示す図である。
【
図2】エレベータ制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態におけるエレベータ制御装置のソフトウェア論理構成例を示すブロック図である。
【
図4】エレベータホール取得部が取得する画像例を示す図である。
【
図5】乗りかご取得部が取得する画像例を示す図である。
【
図6】制御部における乗りかご制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態におけるエレベータ関連装置の全体構成例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態におけるエレベータ制御装置のソフトウェア論理構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図面を用いて、本発明の第1の実施形態について説明する。
まず、
図1を用いて、本実施形態におけるエレベータ関連装置100の全体構成例について説明する。
エレベータ制御装置101は、本実施形態における、エレベータを制御するための装置である。エレベータホール102は、搭乗客が乗りかご106の到着を待機する場所であり、エレベータホールカメラ103によって撮影されている。エレベータホールカメラ103は、エレベータホール102における車いす乗客の領域情報を取得するために、エレベータホール102の上方向から撮影できるよう設置されている。乗客は、乗りかご呼出しボタン104または車いす乗客用乗りかご呼出しボタン105を押すことにより、上昇方向または下降方向を指定した乗りかごの到着を指示することができる。乗りかご106は、乗客や荷物などを載せる箱であり、乗りかご106内が乗りかごカメラ107によって撮影されている。
エレベータ制御装置101は、エレベータホールカメラ103および乗りかごカメラ107によって撮影された画像の画像判断を行い、乗りかご106を制御する。
【0010】
なお、
図1に図示したエレベータホール102は1つであるが、乗客が異なる階に移動するために、2つ以上のエレベータホール102でエレベータ関連装置100が構成されているものとする。2つ以上であれば、エレベータホールの数はいくつでもよい。また、
図1に図示した乗りかご106は1つであるが、本実施形態において、対象階に停止することができる乗りかご106が2つ以上存在するものとする。この場合、各々のエレベータホール102におけるエレベータホールカメラ103のすべて、および乗りかご106における乗りかごカメラ107のすべての画像がエレベータ制御装置101に入力される。
【0011】
エレベータ制御装置101が制御する乗りかごは、エレベータ関連装置100を構成するすべての乗りかごでもよいし、2つ以上の乗りかごであればいくつでもよい。例えば、車いす乗客の利用に適した装備のある乗りかごのみを、制御対象としてもよい。エレベータ関連装置100を構成する乗りかごのうち、いくつかがエレベータ制御装置101の制御対象外であってもよい。
【0012】
また、
図1に図示した乗りかご106には明示していないが、乗りかご内に乗客の向かおうとする行先階を指示するボタンが存在するのは通常の乗りかごと同様である。さらに、乗りかご内に車いす乗客用の行先階を指示するボタンが存在していてもよい。
【0013】
次に、
図2を用いて、エレベータ制御装置101のハードウェア構成例について説明する。CPU200はプロセッサ、ROM201はリードオンリメモリ、RAM202はランダムアクセスメモリ、通信I/F203は外部インタフェースを示している。
エレベータ制御装置101は、CPU200と、ROM201と、RAM202と、通信I/F203とを有し、それぞれはバス204で接続されている。
エレベータ制御装置101の動作は、ROM201や、RAM202にロードしたプログラムによって実現する。RAM202はさらに、CPU200にて行う処理の一時的なデータを格納するワークメモリとしても利用される。
通信I/F203は、外部装置との通信を行うインタフェースであり、通信I/F203を介してエレベータホールカメラ103や乗りかごカメラ107の画像が入力され、乗りかご106の制御信号が出力される。
【0014】
図2には、CPU200を1つのみ図示したが、複数のプロセッサでエレベータ制御装置101を実現してもよい。また、一時的なワークメモリを保持する構成としてRAM202のみを示したが、同一あるいは異なる媒体で二次、三次の記憶領域を設けてもよい。その他の媒体としては、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)などがある。
【0015】
次に、
図3を用いて、本実施形態におけるエレベータ制御装置101の機能構成例について説明する。エレベータ制御装置101は、エレベータホール取得部301と、乗りかご取得部302と、客判断部303と、空き判断部304と、制御部305とを有している。
エレベータホール取得部301は、エレベータホールカメラ103から通信I/F203を介してエレベータホール102の画像を取得する。
乗りかご取得部302は、乗りかごカメラ107から通信I/F203を介して乗りかご106内の画像を取得する。
客判断部303は、エレベータホール取得部301が取得したエレベータホール102の画像を解析し、車いす乗客の有無および車いす乗客の領域情報を取得する。
【0016】
ここで、
図4は、エレベータホール取得部301が取得するエレベータホール102の上方向から撮影された画像例を示している。客判断部303が画像から車いす乗客を判断する方法は何でもよく、例えば、画像から乗客の顔領域の位置を取得し、特許文献1に記載されている方法によって判断してもよいし、機械学習によって車いすの画像を学習した結果を用いて判断してもよい。特許文献1に記載の方法を用いる場合は、撮影されたエレベータホール102の画像からまず顔領域の位置を取得し、該領域から例えば車いすを想定する領域を抽出して、車いすの有無(状態)を判断することによって車いす乗客を判断する。
【0017】
また、客判断部303は、車いす乗客がいると判断した場合に、画像における車いす乗客の領域401が占める画素数を車いす乗客の領域情報として取得する。
なお、本実施形態において車いす乗客の領域情報は、画像における車いす乗客が占める画素数としたが、別の値であってもよい。例えば、画像における縦横の長さから算出した車いす乗客の面積値を車いす乗客の領域情報としてもよい。また、車いす乗客の領域情報は、それらの方法により得られた値に何らかの重みを掛け合わせて算出することとしてもよい。特に、車いす乗客の搭乗スペースに余裕を持たせるために重みづけをしてもよい。
また、本実施形態において車いす乗客の領域情報は、車いす乗客単体の画像から算出したが、客判断部303にて、車いす乗客の付添人と判断できる場合に、付添人の領域を含めて車いす乗客の領域情報を取得することもできる。客判断部303は、例えば、一定時間車いす乗客と隣接し続ける人物を付添人として判断してもよく、その判断方法は何でもよい。
【0018】
空き判断部304は、乗りかご取得部302が取得した画像を解析し、乗りかご106の空きスペース情報を取得する。
【0019】
ここで、
図5は、乗りかご取得部302が取得する乗りかご106内の画像例を示している。空きスペース情報を取得する方法としては、空の乗りかご画像を予め登録しておき、該画像と乗りかご内の画像との差分によって、乗りかご内の画像における空きスペースとして床の領域を割り出し、床の領域の画素数を空きスペース情報とする方法がある。例えば
図5に示すように乗りかご106内に乗客501が立っている場合には、乗客501の領域を除いた床の領域の画素数を空きスペース情報とする。
また、空きスペース情報は別の方法にて取得してもよい。例えば事前に床の色を登録しておき、同一色の画素から空きスペース情報を割り出してもよい。また、それらの方法により得られた値に何らかの重みを掛け合わせて算出してもよい。特に、
図4で示した車いす乗客の領域情報と現実における大きさとを合わせるために重みづけをしてもよい。
【0020】
制御部305は、客判断部303の車いす乗客の有無および車いす乗客の領域情報と、空き判断部304の空きスペース情報とに基づいて、乗りかご106を制御する信号を出力する。さらに、制御部305は、乗りかご106の制御結果として乗りかご制御情報を保持する。乗りかご制御情報には、停止、運行、上昇、下降、行先階、現在位置などが含まれる。
【0021】
次に、
図6のフローチャートを用いて、車いす乗客がエレベータホールにいる場合の、制御部305における乗りかご制御処理例について説明する。
このフローチャートの前段の処理として、客判断部303はエレベータホールの画像から車いす乗客の有無を常に判断する。客判断部303は、車いす乗客がいないと判断した場合は車いす無し時の乗りかご制御(以下、通常制御)を継続する。なお、車いす乗客用乗りかご呼出しボタン105が押された場合であっても、車いす乗客がいない場合は、
図6の処理を開始せず、通常制御を継続する。一方、客判断部303は、車いす乗客がいると判断した場合、本フローの処理を開始する。
ここで、本実施形態の通常制御は、本来のエレベータ制御を満足できればどのような制御方法でもよい。本来のエレベータ制御とは、エレベータホールの乗客が乗りかごを呼び、乗りかごに乗り込んだ乗客が行先階のエレベータホールで降りることができる制御をいう。
【0022】
ステップS601において、制御部305は、車いす乗客用乗りかご呼出しボタン105によって乗りかご106が呼び出されたか否かを判断する。制御部305は、乗りかご106が呼び出されたと判断した場合は、処理をステップS602へ進める。以降、乗客により乗りかご106が呼び出された階を呼び階と称する。一方、制御部305は、乗りかご106が呼び出されていないと判断した場合は、処理をステップS609に進める。
【0023】
ステップS609において、客判断部303は、エレベータホールの画像から再び車いす乗客の有無を判断する。客判断部303により車いす乗客がいると判断した場合は、処理をステップS601に進める。一方、客判断部303により車いす乗客がいないと判断した場合は、処理を終了する。例えば他の乗客により乗りかご呼出しボタン104が押され、通常制御によって到着した乗りかごに車いす乗客が乗れた場合などでは、エレベータホールに車いす乗客がいなくなるため、このような場合には処理を終了する。
【0024】
ステップS602において、空き判断部304は、呼び階に停止することができるすべての乗りかご106の空きスペース情報を取得し、制御部305に空きスペース情報を送信する。
ステップS603において、制御部305は、空き判断部304から受信した空きスペース情報に基づいて、空の乗りかごで、かつ、行先階へ進む予定がなく停止している乗りかごが在るか否かを判断する。なお、空の乗りかごで、かつ、行先階へ進む予定がなく停止している乗りかごは、その乗りかごに乗客がいないとみなすことができるため、空きスペース情報を用いずに、該当する乗りかごがあるか否かを判断してもよい。制御部305は、該当する乗りかごが在ると判断した場合は、処理をステップS604へ進める。一方、制御部305は、該当する乗りかごがないと判断した場合は、処理をステップS605へ進める。
【0025】
ステップS604において、制御部305は、ステップS603で該当した乗りかごのうち、最も近い乗りかごを呼び階に向かうように制御し、車いす乗客がエレベータホールにいる場合の処理を終了する。
ステップS605において、客判断部303は、呼び階のエレベータホールにおける車いす乗客の領域情報を取得し、制御部305に車いす乗客の領域情報を送信する。
【0026】
ステップS606において、空き判断部304は、行先階方向に進んでいる、もしくは進む予定の乗りかごのうち、最も早く呼び階を通過する予定の乗りかごの空きスペース情報を取得する。本処理は、呼び階に到着する直前の乗りかご106内の最新の空きスペース情報を取得するために、該当する乗りかご106が呼び階の手前の階を通過した後に開始する。ただし、本処理はステップS606~S608までの処理を完了し、呼び階に乗りかごを停止することができるのであれば、どのようなタイミングに実行してもよい。
【0027】
ステップS607において、制御部305は、空き判断部304から受信した車いす乗客の領域情報と客判断部303から受信した空きスペース情報とに基づいて、ステップS606の対象乗りかごに車いす乗客が搭乗できる領域があるか否かを判断する。
具体的には例えば、制御部305は、車いす乗客の領域内の画素数と、乗りかご内の床の領域内の画素数とを比較する。制御部305は、比較した結果、床の領域内の画素数の方が車いす乗客の領域内の画素数以上であると判断した場合は、乗りかご106内に車いす乗客が搭乗できる領域があると判断する。なお、車いす乗客が搭乗できる領域があるか否かの判断方法は、この方法に限らない。
【0028】
制御部305は、車いす乗客が搭乗できる領域があると判断した場合は、処理をステップS608へ進める。
一方、制御部305は、車いす乗客が搭乗できる領域がないと判断した場合は、乗りかごの制御は変更せずに処理をステップS605に戻す。つまり、制御部305は、車いす乗客が搭乗できる領域のない乗りかごが呼び階を通過するときに、呼び階に停止させないように制御する。これにより、車いす乗客の搭乗できる領域のない乗りかごの無駄な停止を削減することができる。但し、その乗りかごにおいて呼び階が行先階として指定されていた場合、もしくは乗りかご呼出しボタン104も併せて押されていた場合は、通常制御に基づき、乗りかごは呼び階に停止するものとする。
ステップS608において、制御部305は、乗りかごを呼び階に向かうように制御し、車いす乗客がエレベータホールにいる場合の処理を終了する。
【0029】
また、本実施形態において、ステップS601は別の操作を契機としてもよい。例えば、エレベータホールに到着する乗りかごを選択する際に、エレベータホール取得部301において車いす乗客が認識されたことにより、本図のステップS602~S608に示す処理を実行するようにしてもよい。また、車いす乗客が乗りかご呼出しボタン104を用いて呼び出した場合に、本図のステップS602~S608に示す処理を実行するようにしてもよい。この場合、エレベータホールカメラ103からの画像から乗りかご呼出しボタン104を押した乗客を特定し、その乗客が車いす乗客であった場合に、処理をステップS602に進めるようにしてもよい。
【0030】
また、本実施形態において、車いす乗客用乗りかご呼出しボタン105が操作されたにも拘わらず、エレベータホール取得部301において車いす乗客が認識されなくなった場合は
図6の処理を終了するようにしてもよい。具体的には、ステップS605において、客判断部303が、車いす乗客の領域情報を取得できず呼び階のエレベータホールに車いす乗客がいないと判断した場合は、処理を終了してもよい。
【0031】
また、本実施形態において、ステップS602~ステップS604の処理は省略してもよいし、別のタイミングで行うこととしてもよい。つまり、制御部305は、空の乗りかごを最初に制御対象としなくとも本実施形態は実現できる。例えば、呼び階に近い乗りかごのうちいくつかに対して先にステップS605~ステップS608の処理を行い、そのうえでステップS602~S604の処理を行ってもよい。
また、ステップS606において、空き判断部304は、呼び階のエレベータホールを通過する予定の乗りかごに対して画像判断処理を行ったが、別の方法でもよい。例えば、乗りかご106内に車いす乗客用の行先階を指示する装置がある乗りかごを優先してステップS605~S608の処理を行うこととしてもよい。
【0032】
また、本実施形態において、ステップS608の処理を行う前に、乗りかご106内の積載荷重を確認することとしてもよい。具体的には例えば、不図示の荷重検出装置を乗りかご106内に設け、乗りかご106内の積載荷重を計測する。制御部305は、該積載荷重と、予め定めた閾値(例えば、乗りかご106の最大積載荷重の80%)とを比較し、積載荷重が閾値より小さい場合は、処理をステップS608に進める。一方、積載荷重が閾値以上である場合は、乗りかご106について、呼び階を通過するように制御する。
乗りかご106内の空きスペースだけでなく、積載荷重も考慮した制御を行うことにより、車いす乗客が乗りかごへの搭乗をスムーズに行うことができる。
【0033】
また、本実施形態において、客判断部303は、車いす乗客およびその付添人を対象に画像判断を行ったが、検出する乗客の付帯物を画像データとして保持し、それに合致した乗客に対して
図6において前述した乗りかご制御を行うこととしてもよい。この場合、例えば、ベビーカー、台車、荷籠などが付帯物になる。
【0034】
また、本実施形態において、
図1のエレベータホールカメラ103を省略することにしてもよい。この場合、エレベータ制御装置101は
図3のソフトウェア論理構成において、エレベータホール取得部301および客判断部303を省略することができる。また、エレベータホールカメラ103を省略する場合には、車いす乗客用乗りかご呼出しボタン105が押された場合に、車いす乗客がエレベータホールにいるとみなし、
図6のステップS602~S608に遷移するようにする。さらに、車いす乗客がエレベータホールにいる場合の乗りかごの制御処理において、ステップS605の処理を省略し、代わりに制御部305は、車いす乗客の領域情報として車いす乗客領域用閾値を予め保持しておく。そして、該車いす乗客領域用閾値と空き判断部304の空きスペース情報とに基づいて、乗りかごを制御する信号を出力する。具体的には例えば、ステップS607において、制御部305は、車いす乗客領域用閾値以上の空きスペースが在るか否かを判断する。
【0035】
以上のように本実施形態に係るエレベータ制御装置によれば、車いす乗客が搭乗できるスペースを考慮した乗りかごを到着させることにより、車いす乗客の乗りかごへのスムーズな搭乗が可能になる。
【0036】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、車いす乗客が乗りかご内に搭乗できるような領域のある乗りかごを、呼び階に到着させることとしているが、先行した乗客の位置関係によって乗車スペースが開けられていない場合もある。そこで、呼び階に乗りかごが到着する前に乗客に対して通知を行うこととしてもよい。第2の実施形態において、エレベータホールおよび乗りかご内の乗客に対して、車いす乗客の乗りかごへの搭乗を援助する情報を通知することにより、車いす乗客が乗りかごにスムーズに搭乗できる技術について説明する。以下、第1の実施形態と重複する部分の説明は省略し、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施形態におけるエレベータ制御装置のハードウェア構成は、第1の実施形態におけるエレベータ制御装置と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
まず、
図7を用いて、本実施形態におけるエレベータ関連装置700の全体構成例について説明する。本実施形態に係るエレベータ関連装置700は、第1の実施形態の構成に、ホール通知用スピーカ708および乗りかご通知用スピーカ709がさらに加わる。
ホール通知用スピーカ708および乗りかご通知用スピーカ709は、エレベータ制御装置701からの出力を受けて、それぞれエレベータホールおよび乗りかご内の乗客に対して通知する。
【0038】
次に、
図8を用いて、本実施形態におけるエレベータ制御装置701の機能構成例について説明する。本実施形態に係るエレベータ制御装置701は、第1の実施形態の構成に、エレベータホール通知部806および乗りかご通知部807がさらに加わる。
制御部305が、車いす乗客のいるエレベータホールに車いす乗客を搭乗させるための乗りかごを選択するまでの処理は、第1の実施形態において前述したステップS601~S607と同様である。
その後、乗りかご通知部807は、乗りかご106内の乗客に対して、車いす乗客が搭乗予定であることおよびスペースを空けるよう促す通知を行う。例えば、
図7の例では、「車いすのお客様が搭乗されます。スペースを空けてください。」という通知を行う。
また、エレベータホール通知部806は、呼び階のエレベータホールの乗客に対して、車いす乗客を優先して搭乗させるように促す通知を行う。例えば、
図7の例では、「車いすのお客様を優先して搭乗してください。」という通知を行う。
これにより、エレベータホール102の乗客は、乗りかご106内に搭乗する際に車いす乗客を優先することができ、また、車いす乗客の搭乗を援助することができる。また、乗りかご106内の乗客は、車いす乗客が搭乗するスペースを空けるために、乗りかご106内を移動することができる。
【0039】
なお、本実施形態において、エレベータホール通知部806は必ず通知を行うこととしているが、通知を行わない場合を設けてもよい。例えば、客判断部303によってエレベータホール102に車いす乗客しかいないと判断された場合は、エレベータホール通知部806は、通知をしないこととしてもよい。
また、本実施形態において、乗りかご通知部807は必ず通知を行うこととしているが、通知を行わない場合を設けてもよい。例えば、空き判断部304によって乗りかご106内に乗客がいないと判断された場合や、すでに車いす乗客が搭乗できるスペースがまとまって空いていると判断された場合は、乗りかご通知部807は、通知をしないこととしてもよい。
【0040】
以上のように、本実施形態に係るエレベータ制御装置によれば、エレベータホールおよび乗りかご内の乗客に対して、車いす乗客の搭乗の援助に関する情報を通知することにより、車いす乗客の乗りかごへのスムーズな搭乗が可能になる。
【0041】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0042】
302 乗りかご取得部、304 空き判断部、305 制御部