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特開2022-189011金属樹脂複合体を製造するための金型、装置、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189011
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】金属樹脂複合体を製造するための金型、装置、および方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20221215BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20221215BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C43/18
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097334
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】伊原 涼平
(72)【発明者】
【氏名】山口 善三
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AC03
4F202AD03
4F202AD08
4F202AD16
4F202AD27
4F202AG03
4F202AG24
4F202CA09
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK19
4F202CK83
4F202CK85
4F202CQ05
4F204AA36
4F204AC03
4F204AD03
4F204AD08
4F204AD16
4F204AG03
4F204AG28
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
(57)【要約】
【課題】金属樹脂複合体を製造するための金型、装置、および方法において、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制する。
【解決手段】金型100は、金属板10および樹脂材20をプレス成形して金属樹脂複合体1を製造するためのものである。金型100は、金属板10および樹脂材20を挟み込む上型110および下型120を備える。上型110および下型120によって樹脂材20を配置するためのキャビティCが設けられる。上型110は、キャビティCから漏出した樹脂材20を流入させるための凹部を有している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための金型であって、
前記金属部材および前記樹脂材を挟み込む上型および下型を備え、
前記上型および前記下型によって前記樹脂材を配置するためのキャビティが設けられ、
前記上型は、前記キャビティから漏出した前記樹脂材を流入させるための凹部を有している、金型。
【請求項2】
前記上型は、前記凹部が形成されたパンチとなっている、請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記上型は、
前記凹部が形成され、前記金属部材を押さえるためのホルダーと、
成形するためのパンチと
を有している、請求項1に記載の金型。
【請求項4】
前記凹部は、水平方向よりも鉛直方向に長い形状を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金型。
【請求項5】
前記凹部は、前記樹脂材を下方から支持可能な座部を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金型。
【請求項6】
前記金属樹脂複合体は、長手方向に垂直な断面において、水平方向に延びる底壁部と、前記底壁部の両端から立ち上がる側壁部と、前記側壁部から水平方向外側に延びるフランジ部とを有し、
前記上型は、前記断面において、前記底壁部を成形する第1成形上面と、前記側壁部を成形する第2成形上面と、前記フランジ部を成形する第3成形上面とを有し、
前記第2成形上面には、段差が設けられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金型。
【請求項7】
前記第2成形上面の前記段差より上部の長さは、5mm以上である、請求項6に記載の金型。
【請求項8】
前記上型と前記下型が閉じられた状態において、前記第2成形上面と前記第2成形下面との間の距離は、少なくとも部分的に前記金属部材の厚みと等しく設定される、請求項6または請求項7に記載の金型。
【請求項9】
金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための装置であって、
前記金属部材および前記樹脂材を挟み込む上型および下型を備え、
前記上型および前記下型によって前記樹脂材を配置するためのキャビティが設けられ、
前記上型は、前記キャビティから漏出した前記樹脂材を流入させるための凹部を有し
前記上型および前記下型の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる駆動部と
を備える、装置。
【請求項10】
金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための方法であって、
前記樹脂材を配置するためのキャビティを設ける上型および下型によって前記金属部材および前記樹脂材を挟み込み、
前記キャビティから漏出した前記樹脂材を前記上型に設けられた凹部で捕集するために前記凹部に向けて流動させる
ことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属樹脂複合体を製造するための金型、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材および熱硬化性を有する樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-104411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記金属樹脂複合体を成形する場合、樹脂のみをプレス成形する場合と比べて上型と下型の隙間を閉じることが難しい。その結果、金型の上型と下型との隙間を通じて樹脂材が意図しない箇所に漏出するおそれがある。そのような樹脂材の漏出は、例えば、後の組立工程でのスポット溶接不良、金型のその他の隙間への樹脂材流入による金型固着、または、樹脂材の充填圧不足による未充填などの問題につながる。
【0005】
本発明は、金属樹脂複合体を製造するための金型、装置、および方法において、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための金型であって、前記金属部材および前記樹脂材を挟み込む上型および下型を備え、前記上型および前記下型によって前記樹脂材を配置するためのキャビティが設けられ、前記上型は、前記キャビティから漏出した前記樹脂材を流入させるための凹部を有している、金型を提供する。
【0007】
この構成によれば、樹脂材を配置するためのキャビティから樹脂材が漏出した場合でも、凹部にて樹脂材を捕集できるため、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制できる。即ち、上記構成では、樹脂材のキャビティからの漏出を完全に防止するのではなく、樹脂材の予め意図した箇所(凹部)への流動を許容する。凹部に捕集された樹脂材は、成形後にバリとなって現れるが、バリ取りすることで金属樹脂複合体の製品としての外観を保つことができる。
【0008】
前記上型は、前記凹部が形成されたパンチとなっていてもよい。また、前記上型は、前記凹部が形成され、前記金属部材を押さえるためのホルダーと、成形するためのパンチとを有していてもよい。
【0009】
これらの構成によれば、パンチまたはホルダーに凹部を形成するため、追加部品を要することなく、凹部を簡易に形成できる。
【0010】
前記凹部は、水平方向よりも鉛直方向に長い形状を有してもよい。
【0011】
この構成によれば、凹部が水平方向に長くなることを抑制できる。凹部が水平方向に長くなると、凹部に捕集された樹脂材が成形後に水平方向に長いバリとなって現れる。そのようなバリ、または当該バリを除去したバリ取り痕は、金属樹脂複合体を他部品と接合する場合に邪魔になるおそれがある。また、金属部材がフランジ部を有する場合には、金属部材のフランジ部を抑えることができなくなることから、成形後の寸法精度が低下するおそれがある。
【0012】
前記凹部は、前記樹脂材を下方から支持可能な座部を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、座部によって樹脂材を下方から支持することで、樹脂材が金属樹脂複合体の上面に意図せず付着することを抑制できる。従って、金属樹脂複合体の外観や表面品質を保つことができる。
【0014】
前記金属樹脂複合体は、長手方向に垂直な断面において、水平方向に延びる底壁部と、前記底壁部の両端から立ち上がる側壁部と、前記側壁部から水平方向外側に延びるフランジ部とを有し、前記上型は、前記断面において、前記底壁部を成形する第1成形上面と、前記側壁部を成形する第2成形上面と、前記フランジ部を成形する第3成形上面とを有し、前記第2成形上面には、段差が設けられていてもよい。
【0015】
この構成によれば、樹脂材がキャビティから漏出するためには、上型の段差を越えて流動する必要があるため、樹脂材の漏出を抑制できる。従って、樹脂材のキャビティにおける充填圧を高め、品質を高めることができる。
【0016】
前記第2成形上面の前記段差より上部の長さは、5mm以上であってもよい。
【0017】
この構成によれば、フランジ部への樹脂材の漏出を一定程度抑制できる。金属樹脂複合体のフランジ部は、他部品との接合に利用されることが多く、表面の保護を要する部分である。
【0018】
前記上型と前記下型が閉じられた状態において、前記第2成形上面と前記第2成形下面との間の距離は、少なくとも部分的に前記金属部材の厚みと等しく設定されてもよい。
【0019】
この構成によれば、第2成形上面と第2成形下面との間を樹脂材が流れることを抑制できるため、キャビティからの樹脂材の漏出を抑制できるとともに樹脂材の充填圧を高めることができる。ここで、「等しく」とは設計上の設定であり、キャビティからの樹脂材の漏出が完全に防止されることを意味するものではない。
【0020】
本発明の第2の態様は、金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための装置であって、前記金属部材および前記樹脂材を挟み込む上型および下型と、前記上型および前記下型の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる駆動部とを備え、前記上型および前記下型によって前記樹脂材を配置するためのキャビティが設けられ、前記上型は、前記キャビティから漏出した前記樹脂材を流入させるための凹部を有する、装置を備える金属樹脂複合体を製造するための装置を提供する。
【0021】
この構成によれば、樹脂材を配置するためのキャビティから樹脂材が漏出した場合でも、凹部にて樹脂材を捕集できるため、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制できる。
【0022】
本発明の第3の態様は、金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための方法であって、前記樹脂材を配置するためのキャビティを設ける上型および下型によって前記金属部材および前記樹脂材を挟み込み、前記キャビティから漏出した前記樹脂材を前記上型に設けられた凹部で捕集するために前記凹部に向けて流動させることを含む、方法を備える金属樹脂複合体を製造するための方法を提供する。
【0023】
この構成によれば、樹脂材を配置するためのキャビティから樹脂材が漏出した場合でも、凹部にて樹脂材を捕集できるため、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、金属樹脂複合体を製造するための金型、装置、および方法において、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】金属樹脂複合体の断面図。
図2】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第1工程を示す断面図。
図3】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第2工程を示す断面図。
図4】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第3工程を示す断面図。
図5】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第4工程を示す断面図。
図6】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第5工程を示す断面図。
図7】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第6工程を示す断面図。
図8】第1実施形態の第1変形例における金属樹脂複合体を製造するための方法の第3工程を示す断面図。
図9】第1実施形態の第1変形例における金属樹脂複合体を製造するための方法の第4工程を示す断面図。
図10】第1実施形態の第2変形例における金属樹脂複合体を製造するための方法の第3工程を示す断面図。
図11】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第1工程を示す断面図。
図12】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第2工程を示す断面図。
図13】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第3工程を示す断面図。
図14】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第4工程を示す断面図。
図15】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第5工程を示す断面図。
図16】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第6工程を示す断面図。
図17】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第7工程を示す断面図。
図18】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第8工程を示す断面図。
図19】変形例における金属樹脂複合体の断面図。
図20】変形例における金型の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態として、金属樹脂複合体を製造するための金型、装置、および方法について説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1を参照して、本実施形態で製造される金属樹脂複合体1は、金属板(金属部材)10と、樹脂材20とを含んでいる。金属樹脂複合体1は、長手方向に垂直な断面においてハット形をしている。詳細には、ハット形状を有する金属板10の内面(凹面)に樹脂材20が固着されることによって金属樹脂複合体1が構成されている。ただし、金属樹脂複合体1の形状は、ハット形に限定されず、任意の形状であり得る。
【0028】
金属樹脂複合体1は、水平方向に延びる底壁部2と、底壁部2の両端から立ち上がる側壁部3と、側壁部3から水平方向外側に延びるフランジ部4とを有している。底壁部2は金属板10と樹脂材20とからなり、側壁部3は金属板10と樹脂材20とからなり、フランジ部4は金属板10のみからなる。側壁部3では、底壁部2からフランジ部4に向かって樹脂材20の厚みが減少する段差部3aが設けられている。
【0029】
図2~7を参照して、本実施形態における金属樹脂複合体1を製造するための金型100、装置50、および方法について説明する。図面では、水平方向をX方向として示し、鉛直方向(上下方向)をY方向として示す。また、金属樹脂複合体1(金属板10と樹脂材20)については、断面であることを示すハッチングを付すが、その他の部材については図示を明瞭にするためハッチングを省略する。
【0030】
本実施形態では、図2~7に示す第1~6工程を順に実行する中で2回のプレス成形を実行する。図2~4に示す第1~3工程で1回目のプレスを実行し、図4~6に示す第3~5工程で2回目のプレスを実行する。また、図7に示す第6工程でバリ取りを実行する。なお、本実施形態では、1回目と2回目のプレスを同一の金型100で実行するが、1回目と2回目のプレスを別の金型で実行してもよい。
【0031】
本実施形態における金属樹脂複合体1を製造するための装置50は、金型100と、金型100を駆動する駆動部130と、金型を加熱する加熱部140とを有している。なお、駆動部130および加熱部140は、プレス成形を実行可能な公知のものを使用でき、詳細を図示することなく概念図として図2にのみ示し、図3以降での図示を省略する。
【0032】
金型100は、金属板10および樹脂材20をプレス成形して金属樹脂複合体1を製造するものである。金型100は、金属板10および樹脂材20を挟み込む上型110と下型120とを有している。本実施形態では、上型110がパンチとして構成され、下型120がダイとして構成されている。上型110は駆動部130によって鉛直方向に移動可能であり、即ち下型120に対して接近および離反可能に構成されている。ただし、駆動部130による金型100の駆動態様については特に限定されず、駆動部130は上型110および下型120の少なくとも一方を鉛直方向に移動させるものであり得る。
【0033】
上型110は、底壁部2(図1参照)を成形する第1成形上面111と、側壁部3(図1参照)を成形する第2成形上面112と、フランジ部4(図1参照)を成形する第3成形上面113とを有している。本実施形態では、第1成形上面111および第3成形上面113は水平面として構成されており、第2成形上面112は第1成形上面111および第3成形上面113を接続するとともに鉛直方向から傾斜して構成されている。
【0034】
本実施形態では、第2成形上面112に段差112aが設けられている。段差112aは、第1成形上面111から第3成形上面113に向かって一段上がるように設けられている。
【0035】
本実施形態では、上型(パンチ)110には、樹脂材20を捕集するための凹部113aが形成されている。凹部113aは、第3成形上面113において下方に開口するように形成されている。凹部113aは、図示の断面において矩形である。
【0036】
図2~3に示す第1~2工程においては、凹部113aを埋めるようにスペーサ114が配置されている。スペーサ114は、凹部113aと相補的な形状を有し、凹部113aに対して着脱可能に構成されている。また、図4~7に示す第3~6工程においては、凹部113aからスペーサ114が取り外されている。
【0037】
下型120は、底壁部2(図1参照)を成形する第1成形下面121と、側壁部3(図1参照)を成形する第2成形下面122と、フランジ部4(図1参照)を成形する第3成形下面123とを有している。本実施形態では、第1成形下面121および第3成形下面123は水平面として構成されており、第2成形下面122は第1成形下面121および第3成形下面123を接続するとともに鉛直方向から傾斜して構成されている。第1成形下面121は第1成形上面111と対向して配置され、第2成形下面122は第2成形上面112と対向して配置され、第3成形下面123は第3成形上面113と対向して配置されている。
【0038】
好ましくは、第2成形上面112および第2成形下面122は、鉛直方向から3~10度傾斜している。これにより、樹脂材20をキャビティCから漏出させながら上型110と下型120との間隙を小さくすることができる。従って、キャビティCにおける樹脂材20の充填圧を高めることができるとともに、フランジ部4への樹脂材20の付着を抑制できる。
【0039】
図2に示す第1工程では、加熱部140によって上型110および下型120を加熱し、温間プレス可能に準備する。また、成形前の平板状の金属板10を下型120の上に載置する。
【0040】
図3に示す第2工程では、上型110を下降させ、金属板10を上型110と下型120とによって挟み込んで概ねハット形にプレス成形する。上型110と下型120が閉じられた状態において、第1成形上面111と第1成形下面121との間の距離d1は金属板10の厚みtよりも大きく(d1>t)、第3成形上面113と第3成形下面123との間の距離d3は金属板10の厚みtと概略等しい(d3=t)。また、段差112aの下方における第2成形上面112と第2成形下面122との間の距離d21は金属板10の厚みtよりも大きく(d21>t)、段差112aの上方における第2成形上面112と第2成形下面122との間の距離d22は金属板10の厚みtに対して概略等しいかまたはわずかに大きい(d22=tまたはd22>t)。特に、距離d22を金属板10の厚みtに対して等しく設定することで、後工程における樹脂材20の充填圧を高めることができる。なお、本工程では、樹脂材20(図4~7参照)は未だ充填されておらず、金属板10のみを上型110と下型120とによって挟み込む。第1~2成形上面111~112と第1~2成形下面121~122(詳細には金属板10)との間には、樹脂材20を充填するためのキャビティCが設けられている。
【0041】
図4に示す第3工程では、上型110を上昇させる。このとき、金属板10は最終形状(本実施形態ではハット形)に近い形状に成形されている。スペーサ114(図3参照)は上型110の上昇とともに凹部113aから取り外される。そして、金属板10上には必要な寸法に裁断したシート状の樹脂材20(プリプレグともいう。)を載置する。本実施形態では、SMC(Sheet Molding Compound)法と称される成形法によって、当該樹脂材20を高温高圧下で硬化させる(後述する第4工程参照)。本実施形態では、樹脂材20として、樹脂にガラス繊維や炭素繊維を含侵させた繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastic)を使用する。また、本実施形態では、樹脂材20は、熱硬化性を有している。本工程では、樹脂材20は未だ加熱されておらず、即ち硬化していない。なお、樹脂材20は、シート状である必要はなく、任意の形状をとり得る。
【0042】
図5に示す第4工程では、上型110を下降させ、金属板10と樹脂材20とを上型110と下型120とによって挟み込んでハット形にプレス成形する。このとき、キャビティCには樹脂材20が充填される。即ち、SMC法によって、必要な寸法に裁断した樹脂材20を金型100に投入し、高温高圧下で硬化させる。本実施形態では、キャビティCは、上型110と下型120(詳細には金属板10)とによって挟み込まれて形成される段差112aより下方の空間をいう。一部の樹脂材20はキャビティCから漏出し、第2成形上面112に沿って上方へと流動し、凹部113aに捕集される。凹部113a内では、樹脂材20は塊となって硬化する。
【0043】
図6に示す第5工程では、上型110を上昇させる。金属板10は、最終形状(本実施形態ではハット形)に成形され、金属板10の上面(ハット形の凹面)には樹脂材20が固着され、金属樹脂複合体1が形成されている。ただし、凹部113aに捕集されて塊となって硬化した樹脂材20がバリとして未だ残っている。
【0044】
図7に示す第6工程では、カッターなどのバリ取り具150によって上記バリを除去する。このようにして、製品としてのハット形の金属樹脂複合体1が製造される。
【0045】
本実施形態によれば、キャビティCから樹脂材20が漏出した場合でも、凹部113aにて樹脂材20を捕集できるため、樹脂材20が例えばフランジ部4などの意図しない箇所への漏出することを抑制できる。即ち、本実施形態では、樹脂材20のキャビティCからの漏出を完全に防止するのではなく、樹脂材20の予め意図した箇所(凹部113a)への流動を許容する。ここで、凹部113aに捕集された樹脂材20は、成形後にバリとなって現れるが、バリ取りすることで金属樹脂複合体1の製品としての外観を保つことができる。
【0046】
また、上型(パンチ)110に凹部113aを形成しているため、追加部品を要することなく、凹部113aを簡易に形成できる。
【0047】
また、樹脂材20がキャビティCから漏出するためには、上型110の段差112aを越えて流動する必要があるため、樹脂材20の漏出を抑制できる。従って、樹脂材20のキャビティCにおける充填圧を高め、品質を高めることができる。
【0048】
また、図4を参照して、第2成形上面112の段差112aより上部の長さD1は、5mm以上であってもよい(D1≧5mm)。これにより、キャビティCからフランジ部4までの距離を一定以上長く確保でき、フランジ部4への樹脂材20の漏出を一定程度抑制できる。金属樹脂複合体1のフランジ部4は、他部品との接合に利用されることが多く、表面の保護を要する部分である。
【0049】
また、図4の変形例を示す図8を参照して、凹部113aは、水平方向よりも鉛直方向に長い形状を有してもよい(D2<D3)。これにより、凹部113aが水平方向に長くなることを抑制できる。凹部113aが水平方向に長くなると、凹部113aに捕集された樹脂材20が成形後に水平方向に長いバリとなって現れる。そのようなバリ、または当該バリを除去したバリ取り痕は、金属樹脂複合体1を他部品と接合する場合に邪魔になるおそれがある。
【0050】
また、図4,5の変形例を示す図9,10を参照して、凹部113aは、樹脂材20を下方から支持可能な座部113bを有してもよい。図9の破線円内では、凹部113aおよび座部113bを拡大して示している。図示の例では、座部113bは、凹部113aを部分的に塞ぐように形成されている。その結果、凹部113aは、間口が狭く、内部で拡張した形状を有している。従って、凹部113a内に流入した樹脂材20を座部113bによって下方から支持することができ、樹脂材20が金属樹脂複合体1の上面に意図せず付着することを抑制できる。従って、金属樹脂複合体1の外観や表面品質を保つことができる。
【0051】
(第2実施形態)
図11~18を参照して、第2実施形態における金属樹脂複合体1を製造するための金型100、装置50、および方法について説明する。
【0052】
図11~18に示す本実施形態は、上型110が分離したパンチ110aおよびホルダー110bとを有している。これに関する以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0053】
本実施形態では、上型110は、金属板10を押さえるためのホルダー110bと、成形するためのパンチ110aとを有している。ホルダー110bおよびパンチ110aは、駆動部140(図2参照)によって独立して鉛直方向に移動可能となっている。本実施形態では、ホルダー110bに凹部113aが形成されている。詳細には、凹部113aは、ホルダー110bの水平方向内側であってパンチ110aと隣接する位置に形成されている。凹部113aの側面は、パンチ110aの水平方向外側面と、ホルダー110bの水平方向内側面とによって構成されている。凹部113aの底面(図において上面)は、ホルダー110bによって構成されている。
【0054】
本実施形態では、図11~18に示す第1~8工程を順に実行する中で2回のプレス成形を実行する。図11~14に示す第1~4工程で1回目のプレスを実行し、図14~17に示す第4~7工程で2回目のプレスを実行する。また、図18に示す第8工程でバリ取りを実行する。
【0055】
図11~14に示す第1~4工程の1回目のプレスにおいて、第1実施形態と異なり、ホルダー110bがパンチ110aよりも先に下降して金属板10を押さえる。次いで、パンチ110aが下降して金属板10をプレス成形する。本実施形態の第1~4工程は、このようにパンチ110aとホルダー110bの独立駆動以外については第1実施形態の第1~3工程と実質的に同じである。
【0056】
図14~17に示す第4~7工程の2回目のプレスにおいても第1実施形態と異なり、ホルダー110bがパンチ110aよりも先に下降して金属板10を押さえる。次いで、パンチ110aが下降して金属板10をプレス成形する。本実施形態の第4~7工程は、このようにパンチ110aとホルダー110bの独立駆動以外については第1実施形態の第3~5工程と実質的に同じである。
【0057】
図18に示す第8工程のバリ取りについては、第1実施形態の第6工程と同じである。
【0058】
本実施形態によれば、ホルダー110bに凹部113aを形成するため、追加部品を要することなく、凹部113aを簡易に形成できる。
【0059】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態や変形例の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0060】
また、樹脂材20として熱可塑性樹脂にガラス繊維または炭素繊維を含侵させたものを使用してもよい。この場合、樹脂材20を加熱して軟化させた状態で金型100に投入する。そして、金型100内において金属板10上で冷却して硬化させることで金属樹脂複合体1を製造する。
【0061】
また、図19を参照して、金属樹脂複合体1において、樹脂材20は側壁部3で終端してもよい(端面3a参照)。このような金属樹脂複合体1は、図1に示す状態から端面3aより上方の樹脂材20を除去(バリ取り)することによって製造できる。
【0062】
また、図20を参照して、第2成形上面112と第2成形下面122との隙間d22は、上方へ向かうにつれて広がってもよい(d222>d221)。図示の例では、第2成形下面122の傾斜角度は一定であるが、第2成形上面112の傾斜角度を上方へ向かうにつれて鉛直方向に沿うように変化させている。
【0063】
金属樹脂複合体1において、金属板10と樹脂材20との間に接着層を設けてもよい。この場合、接着層を設けることで、金属部材10と樹脂材20とを強固に一体成形することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 金属樹脂複合体
2 底壁部
3 側壁部
3a 段差部
4 フランジ部
10 金属板(金属部材)
20 樹脂材
50 装置
100 金型
110 上型
110a パンチ
110b ホルダー
111 第1成形上面
112 第2成形上面
112a 段差
113 第3成形上面
113a 凹部
113b 座部
114 スペーサ
120 下型
121 第1成形下面
122 第2成形下面
123 第3成形下面
130 駆動部
140 加熱部
C キャビティ
図1
図2
図3
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