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特開2022-189013金属樹脂複合体を製造するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189013
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】金属樹脂複合体を製造するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/32 20060101AFI20221215BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B29C43/32
B29C43/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097336
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】伊原 涼平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】山口 善三
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AC03
4F204AD03
4F204AD08
4F204AD16
4F204AG03
4F204AG28
4F204AJ05
4F204AM32
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FB11
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ38
(57)【要約】
【課題】金属樹脂複合体を製造するための装置および方法において、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制する。
【解決手段】装置50は、金属部材10および樹脂材20をプレス成形して金属樹脂複合体1を製造するためのものである。装置50は、金属部材10および樹脂材20を挟み込む上型110および下型120を備える金型を備える。また、装置50は、金属部材10および樹脂材20を覆うように上型110および下型120の間に配置されるシート状の封止部材150を備える。また、装置50は、上型110および下型120の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる駆動部130を備える。上型110および下型120によって樹脂材20を配置するためのキャビティCが設けられる。封止部材150を上型110および下型120で挟持することによってキャビティCを封止する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための装置であって、
前記金属部材および前記樹脂材を挟み込む上型および下型を備える金型と、
前記金属部材および前記樹脂材を覆うように前記上型および前記下型の間に配置されるシート状の封止部材と、
前記上型および前記下型の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる駆動部と
を備え、
前記上型および前記下型によって前記樹脂材を配置するためのキャビティが設けられ、
前記封止部材を前記上型および前記下型で挟持することによって前記キャビティを封止する、装置。
【請求項2】
前記上型は、
前記金属部材を押さえるためのホルダーと、
成形するためのパンチと
を有しており、
前記封止部材を前記ホルダーおよび前記下型で挟持することによって前記キャビティを封止する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記金属樹脂複合体は、長手方向に垂直な断面において、水平方向に延びる底壁部と、前記底壁部の両端から立ち上がる側壁部と、前記側壁部から水平方向外側に延びるフランジ部とを有し、
前記上型は、前記断面において、前記底壁部を成形する第1成形上面と、前記側壁部を成形する第2成形上面と、前記フランジ部を成形する第3成形上面とを有し、
前記第2成形上面には、段差が設けられている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記金属部材の長手方向に垂直な断面において、前記封止部材の両端を把持し、前記封止部材の撓み具合を調整可能な把持装置と、
前記断面において、前記上型および前記下型が閉じられた状態で、前記封止部材の前記樹脂材に接する第1部分の長さが、前記上型の前記キャビティを形成する第2部分の長さと等しくなるように前記把持装置を制御して前記封止部材の撓み具合を調整する制御装置と
をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記金型を既定の温度まで昇温させる加熱部をさらに備え、
前記封止部材は、前記既定の温度に対する耐熱性と、前記樹脂材に対する剥離性とを有する、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記封止部材は、弾力性を有する、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための方法であって、
前記樹脂材を配置するためのキャビティを設ける上型および下型によって封止部材と共に前記金属部材および前記樹脂材を挟み込み、
前記封止部材を前記上型および前記下型で挟持することによって前記キャビティを封止する
ことを含む、方法。
【請求項8】
前記金属部材の長手方向に垂直な断面において、前記上型および前記下型が閉じられた状態で、前記封止部材の前記樹脂材に接する第1部分の長さが、前記上型の前記キャビティを形成する第2部分の長さと等しくなるように前記封止部材が配置されることを含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属樹脂複合体を製造するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材および熱硬化性を有する樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-104411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記金属樹脂複合体を成形する場合、樹脂のみをプレス成形する場合と比べて上型と下型の隙間を閉じることが難しい。その結果、金型の上型と下型との隙間を通じて樹脂材が意図しない箇所に漏出するおそれがある。そのような樹脂材の漏出は、例えば、後の組立工程でのスポット溶接不良、金型のその他の隙間への樹脂材流入による金型固着、または、樹脂材の充填圧不足による未充填などの問題につながる。
【0005】
本発明は、金属樹脂複合体を製造するための装置および方法において、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための装置であって、前記金属部材および前記樹脂材を挟み込む上型および下型を備える金型と、前記金属部材および前記樹脂材を覆うように前記上型および前記下型の間に配置されるシート状の封止部材と、前記上型および前記下型の少なくとも一方を鉛直方向に移動させる駆動部とを備え、前記上型および前記下型によって前記樹脂材を配置するためのキャビティが設けられ、前記封止部材を前記上型および前記下型で挟持することによって前記キャビティを封止する、装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、樹脂材を配置するためのキャビティが、シート状の封止部材に覆われるように封止されている。そのため、上型および下型が閉じられ、樹脂材のキャビティにおける充填圧が高められても、樹脂材はキャビティの内部に留まり、キャビティから漏出することを抑制できる。従って、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制できる。
【0008】
前記上型は、前記金属部材を押さえるためのホルダーと、成形するためのパンチとを有しており、前記封止部材を前記ホルダーおよび前記下型で挟持することによって前記キャビティを封止してもよい。
【0009】
この構成によれば、封止部材をホルダーおよび下型で先に挟持するため、キャビティは成形前に封止された状態となる。そのため、上型および下型が閉じられても、樹脂材がキャビティから漏出することを抑制できる。また、パンチおよびホルダーの間に生じている隙間を封止部材で保護できる。
【0010】
前記金属樹脂複合体は、長手方向に垂直な断面において、水平方向に延びる底壁部と、前記底壁部の両端から立ち上がる側壁部と、前記側壁部から水平方向外側に延びるフランジ部とを有し、前記上型は、前記断面において、前記底壁部を成形する第1成形上面と、前記側壁部を成形する第2成形上面と、前記フランジ部を成形する第3成形上面とを有し、前記第2成形上面には、段差が設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、樹脂材がキャビティから漏出するためには、上型の段差を越えて流動する必要があるため、樹脂材の漏出を抑制できる。従って、樹脂材のキャビティにおける充填圧を高め、品質を高めることができる。
【0012】
前記装置は、前記金属部材の長手方向に垂直な断面において、前記封止部材の両端を把持し、前記封止部材の撓み具合を調整可能な把持装置と、前記断面において、前記上型および前記下型が閉じられた状態で、前記封止部材の前記樹脂材に接する第1部分の長さが、前記上型の前記キャビティを形成する第2部分の長さと等しくなるように前記把持装置を制御して前記封止部材の撓み具合を調整する制御装置とをさらに備えてもよい。
【0013】
この構成によれば、上型および下型が閉じられた状態では、樹脂材に接している封止部材には皺が無い状態である。そのため、樹脂材に皺が転写されることがなく、品質が向上され得る。
【0014】
前記装置は、前記金型を既定の温度まで昇温させる加熱部をさらに備え、前記封止部材は、前記既定の温度に対する耐熱性と、前記樹脂材に対する剥離性とを有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、樹脂材の硬化時、すなわち、金型の昇温時に封止部材が熱で溶けて破れることが抑制され得る。また、プレス成形が終了し封止部材を取り除く際に、封止部材が樹脂材に付着することが抑制され、品質が向上され得る。
【0016】
前記封止部材は、弾力性を有していてもよい。
【0017】
この構成によれば、封止部材が弾力性を有することにより、上型と金属部材との間に生じている隙間を塞ぐため、プレス成形時にキャビティが容易に密閉され得る。また、樹脂材をキャビティに封止した状態で、さらに上型および下型の距離を縮めることができるため、樹脂材のキャビティにおける充填圧を高め、品質を高めることができる。
【0018】
本発明の第2の態様は、金属部材および樹脂材をプレス成形して金属樹脂複合体を製造するための方法であって、前記樹脂材を配置するためのキャビティを設ける上型および下型によって封止部材と共に前記金属部材および前記樹脂材を挟み込み、前記封止部材を前記上型および前記下型で挟持することによって前記キャビティを封止することを含む、方法を提供する。
【0019】
この構成によれば、樹脂材を配置するためのキャビティが、シート状の封止部材に覆われるように封止されている。そのため、上型および下型が閉じられ、樹脂材のキャビティにおける充填圧が高められても、樹脂材はキャビティの内部に留まり、キャビティから漏出することを抑制できる。従って、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制できる。
【0020】
前記方法は、前記金属部材の長手方向に垂直な断面において、前記上型および前記下型が閉じられた状態で、前記封止部材の前記樹脂材に接する第1部分の長さが、前記上型の前記キャビティを形成する第2部分の長さと等しくなるように前記封止部材が配置されることを含んでいてもよい。
【0021】
この構成によれば、上型および下型が閉じられた状態では、樹脂材に接している封止部材には皺が無い状態である。そのため、樹脂材に皺が転写されることがなく、品質が向上され得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金属樹脂複合体を製造するための装置および方法において、樹脂材の意図しない箇所への漏出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】金属樹脂複合体の断面図。
図2】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第1工程を示す断面図。
図3】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第2工程を示す断面図。
図4】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第3工程を示す断面図。
図5】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第4工程を示す断面図。
図6】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第5工程を示す断面図。
図7】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第6工程を示す断面図。
図8】第1実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第7工程を示す断面図。
図9】第1実施形態の第1変形例における金属樹脂複合体を製造するための方法の第6工程を示す断面図。
図10】第1実施形態の第2変形例における金属樹脂複合体を製造するための方法の第6工程を示す断面図。
図11】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第1工程を示す断面図。
図12】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第2工程を示す断面図。
図13】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第3工程を示す断面図。
図14】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第4工程を示す断面図。
図15】第2実施形態における金属樹脂複合体を製造するための方法の第5工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態として、金属樹脂複合体を製造するための装置および方法について説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1を参照して、本実施形態で製造される金属樹脂複合体1は、金属板(金属部材)10と、樹脂材20とを含んでいる。金属樹脂複合体1は、長手方向に垂直な断面においてハット形をしている。詳細には、ハット形状を有する金属板10の内面(凹面)に樹脂材20が固着されることによって金属樹脂複合体1が構成されている。ただし、金属樹脂複合体1の形状は、ハット形に限定されず、任意の形状であり得る。
【0026】
金属樹脂複合体1は、水平方向に延びる底壁部2と、底壁部2の両端から立ち上がる側壁部3と、側壁部3から水平方向外側に延びるフランジ部4とを有している。底壁部2は金属板10と樹脂材20とからなり、側壁部3は金属板10と樹脂材20とからなり、フランジ部4は金属板10のみからなる。本実施形態では、側壁部3における樹脂材20は、底壁部2からフランジ部4に向かって側壁部3の途中で、樹脂材20が端面20aにて終端している。
【0027】
図2~8を参照して、本実施形態における金属樹脂複合体1を製造するための装置50および方法について説明する。図面では、水平方向をX方向として示し、鉛直方向(上下方向)をY方向として示す。また、金属樹脂複合体1(金属板10と樹脂材20)および封止部材150については、断面であることを示すハッチングを付すが、その他の部材については図示を明瞭にするためハッチングを省略する。
【0028】
本実施形態では、図2~8に示す第1~7工程を順に実行する中で2回のプレス成形を実行する。図2~5に示す第1~4工程で1回目のプレスを実行し、図5~8に示す第4~7工程で2回目のプレスを実行する。なお、本実施形態では、1回目と2回目のプレスを同一の金型100で実行するが、1回目と2回目のプレスを別の金型で実行してもよい。
【0029】
本実施形態における金属樹脂複合体1を製造するための装置50は、金型100と、金型100を駆動する駆動部130と、金型を加熱する加熱部140とを有している。なお、駆動部130および加熱部140は、プレス成形を実行可能な公知のものを使用でき、詳細を図示することなく概念図として図2にのみ示し、図3以降での図示を省略する。
【0030】
金型100は、金属板10および樹脂材20をプレス成形して金属樹脂複合体1を製造するものである。金型100は、金属板10および樹脂材20を挟み込む上型110と下型120とを有している。上型110は駆動部130によって鉛直方向に移動可能であり、即ち下型120に対して接近および離反可能に構成されている。ただし、駆動部130による金型100の駆動態様については特に限定されず、駆動部130は上型110および下型120の少なくとも一方を鉛直方向に移動させるものであり得る。
【0031】
本実施形態では、上型110は、金属板10を押さえるためのホルダー110bと、成形するためのパンチ110aとを有している。パンチ110aおよびホルダー110bは、駆動部130によって独立して鉛直方向に移動可能となっている。また、パンチ110aとホルダー110bとの間には隙間114が生じている。
【0032】
上型110は、底壁部2(図1参照)を成形する第1成形上面111と、側壁部3(図1参照)を成形する第2成形上面112と、フランジ部4(図1参照)を成形する第3成形上面113とを有している。詳細には、パンチ110aが第1成形上面111と第2成形上面112とを有し、ホルダー110bが第3成形上面113を有する。本実施形態では、第1成形上面111および第3成形上面113は水平面として構成されており、第2成形上面112は第1成形上面111および第3成形上面113を接続するとともに鉛直方向から傾斜して構成されている。
【0033】
本実施形態では、第2成形上面112に段差112aが設けられている。段差112aは、第1成形上面111から第3成形上面113に向かって一段上がるように設けられている。
【0034】
下型120は、底壁部2(図1参照)を成形する第1成形下面121と、側壁部3(図1参照)を成形する第2成形下面122と、フランジ部4(図1参照)を成形する第3成形下面123とを有している。本実施形態では、第1成形下面121および第3成形下面123は水平面として構成されており、第2成形下面122は第1成形下面121および第3成形下面123を接続するとともに鉛直方向から傾斜して構成されている。第1成形下面121は第1成形上面111と対向して配置され、第2成形下面122は第2成形上面112と対向して配置され、第3成形下面123は第3成形上面113と対向して配置されている。
【0035】
図2に示す第1工程では、加熱部140によって上型110および下型120を加熱し既定の温度(例えば、140~180℃)まで昇温させ、プレス成形可能に準備する。また、成形前の平板状の金属板10を下型120の上に載置する。
【0036】
図3に示す第2工程では、ホルダー110bを下降させ、金属板10の両端を下型120に押さえる。
【0037】
図4に示す第3工程では、パンチ110aを下降させ、金属板10を上型110と下型120とによって挟み込んで概ねハット形にプレス成形する。上型110と下型120とが閉じられた状態において、第1成形上面111と第1成形下面121との間の距離d1は金属板10の厚みtよりも大きく(d1>t)、第3成形上面113と第3成形下面123との間の距離d3は金属板10の厚みtと概略等しい(d3=t)。また、段差112aの下方における第2成形上面112と第2成形下面122との間の距離d21は金属板10の厚みtよりも大きく(d21>t)、段差112aの上方における第2成形上面112と第2成形下面122との間の距離d22は金属板10の厚みtに対して概略等しいかまたはわずかに大きい(d22=tまたはd22>t)。本工程では、樹脂材20(図5~8参照)は未だ充填されておらず、金属板10のみを上型110と下型120とによって挟み込む。第1~2成形上面111~112と第1~2成形下面121~122(詳細には金属板10)との間には、樹脂材20を充填するためのキャビティCが設けられている。
【0038】
図5に示す第4工程では、上型110を上昇させる。このとき、金属板10は最終形状(本実施形態ではハット形)に近い形状に成形されている。次に、金属板10上には必要な寸法に裁断したシート状の樹脂材20(プリプレグともいう。)を載置する。本実施形態では、SMC(Sheet Molding Compound)法と称される成形法によって、当該樹脂材20を高温高圧下で硬化させる(後述する第6工程参照)。本実施形態では、樹脂材20として、樹脂にガラス繊維や炭素繊維を含侵させた繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastic)を使用する。また、本実施形態では、樹脂材20は、熱硬化性を有している。本工程では、樹脂材20は未だ加熱されておらず、即ち硬化していない。なお、樹脂材20は、シート状である必要はなく、任意の形状をとり得る。
【0039】
次に、封止部材150を金属板10と樹脂材20とを上方から覆うように上型110および下型120の間に配置する。本実施形態では、封止部材150は、金属板10の上面10a全体を覆うように配置されている。封止部材150は、シート状の部材である。好ましくは、封止部材150は、耐熱性、剥離性、および弾力性を有する。ここで、耐熱性とは、プレス成形時の上型110および下型120の既定の温度(例えば、140~180℃)に対する耐熱性を指す。また、剥離性とは、樹脂材20に対する剥離性を指し、封止部材150に樹脂材20が付着することなく封止部材150を取り除けることを指す。また、弾力性とは、上型110および下型120のプレスに耐える伸縮性を指す。例えば、封止部材150は、耐熱性および剥離性の観点からテフロン(登録商標)のシートであってもよい。例えば、封止部材150は、弾力性の観点からシリコンゴムのシートであってもよい。
【0040】
本実施形態では、封止部材150は、把持装置160によって搬送および配置される。把持装置160は、図5の断面において、封止部材150の両端を把持している。把持装置160は、封止部材150を把持した状態で、封止部材150の撓み具合を調整可能に水平方向に移動可能となっている。把持装置160の動作は制御装置170によって制御されている。制御装置170によって、把持装置160を水平方向外側または内側に移動させることで、封止部材150の撓み具合を調整できる。この調整により、封止部材150は、上型110と下型120が閉じられた状態において、すなわち、後述の図7に示す第6工程で、封止部材150の樹脂材20に接する第1部分151の長さが、パンチ110aのキャビティCを形成する領域の第2部分115の長さと等しくなるように配置される。具体的には、弾力性を有する封止部材150を使用する場合、上型110と下型120が開かれた状態(図5に示す第4工程)において、第1部分151(図5の太線部参照)の長さが第2部分115(図5の太線部参照)の長さよりもわずかに短くなるように封止部材150を撓ませて把持する。弾力性を有していない封止部材150を使用する場合、第1部分151の長さが第2部分115の長さと等しくなるように封止部材150を撓ませて把持する(図示せず)。このようにして、後述の図7に示す第6工程で、上型110と下型120が閉じられると、封止部材150が伸び、第1部分151の長さが第2部分115の長さと等しくなる。
【0041】
把持装置160は、上型110と一体構造であってもよい。例えば、把持装置160は、ホルダー110bと一体構造であってもよい(図示せず)。また、把持装置160を設けず、上型110に封止部材150を予め貼付する構成であってもよい。例えば、ホルダー110bに封止部材150を予め貼付してもよい(図示せず)。これらの場合、第4工程で封止部材150を配置するのではなく、後述の第5工程でホルダー110bが下降するのと同時に封止部材150が配置される。
【0042】
また、本実施形態に示すように、1回目と2回目のプレスを同一の金型100で実行する場合、封止部材150を配置したままで1回目のプレスを実行してもよい。また、封止部材150を配置せずに1回目のプレスを実行し、2回目のプレスを実行する際に封止部材150を配置してもよい。
【0043】
図6に示す第5工程では、ホルダー110bがパンチ110aよりも先に下降して、金属板10および封止部材150の両端を下型120に押さえる。すなわち、キャビティCは、封止部材150をホルダー110bおよび下型120で挟持することによって封止されている。
【0044】
図7に示す第6工程では、パンチ110aを下降させ、金属板10、樹脂材20、および封止部材150を上型110と下型120とによって挟み込んでハット形にプレス成形する。このとき、キャビティCには樹脂材20が充填される。すなわち、SMC法によって、必要な寸法に裁断した樹脂材20を金型100に投入し、高温高圧下で硬化させる。本実施形態では、キャビティCは、上型110(詳細には封止部材150)と下型120(詳細には金属板10)とによって挟み込まれて形成される段差112aより下方の空間をいう。
【0045】
図8に示す第7工程では、上型110を上昇させ、封止部材150を取り除く。金属板10は、最終形状(本実施形態ではハット形)に成形され、金属板10の上面10a(ハット形の凹面)には樹脂材20が固着され、金属樹脂複合体1が形成されている。
【0046】
本実施形態では、1つの装置50を使用して、第1~4工程で1回目のプレスを実行し、金属板10を最終形状に近い形状に成形し、第4~7工程で2回目のプレスを実行し、樹脂材20を金属板10に固着させ金属樹脂複合体1を形成する。しかし、例えば、別の装置で金属板10を最終形状に成形し、その金属板10に対して本実施形態の装置50および方法(第4~7工程)で樹脂材20を固着させ金属樹脂複合体1を形成してもよい。
【0047】
本実施形態によれば、樹脂材20を配置するためのキャビティCが、シート状の封止部材150に覆われるように封止されている。そのため、上型110および下型120が閉じられ、樹脂材20のキャビティCにおける充填圧が高められても、樹脂材20はキャビティCの内部に留まり、キャビティCから漏出することを抑制できる。従って、樹脂材20の意図しない箇所(例えばフランジ部4や隙間114など)への漏出を抑制できる。
【0048】
また、封止部材150をホルダー110bおよび下型120で先に挟持するため、キャビティCは成形前に封止された状態となる。そのため、上型110および下型120が閉じられても、樹脂材20がキャビティCから漏出することを抑制できる。また、パンチ110aおよびホルダー110bの間に生じている隙間114を封止部材150で保護できる。
【0049】
また、樹脂材20がキャビティCから漏出するためには、上型110の段差112aを越えて流動する必要があるため、樹脂材20の漏出を抑制できる。従って、樹脂材20のキャビティCにおける充填圧を高め、品質を高めることができる。
【0050】
また、制御装置170によって封止部材150の撓み具合が好適に調整されているため、上型110および下型120が閉じられた状態で、樹脂材20に接している封止部材150には皺が無い状態である。そのため、樹脂材20に皺が転写されることがなく、品質が向上され得る。
【0051】
また、封止部材150は耐熱性を有することにより、樹脂材20の硬化時、すなわち、金型100の昇温時に封止部材150が熱で溶けて破れることが抑制され得る。また、封止部材150は剥離性を有することにより、プレス成形が終了し封止部材150を取り除く際、封止部材150が樹脂材20に付着することが抑制され、品質が向上され得る。
【0052】
また、封止部材150が弾力性を有することにより、上型110と金属板10との間に生じている隙間を塞ぐため、プレス成形時にキャビティCが容易に密閉され得る。また、樹脂材20をキャビティCに封止した状態で、さらに上型110および下型120の距離を縮めることができるため、樹脂材20のキャビティCにおける充填圧を高め、品質を高めることができる。
【0053】
図7の変形例を示す図9を参照すると、パンチ110aの第2成形上面112に段差112aが設けられておらず、キャビティCは第2成形上面112および第2成形下面122の間全体に亘って形成されている。そのため、樹脂材20は側壁部3全体に固着される。すなわち、樹脂材20によって強固に補強された金属樹脂複合体1が製造され得る。
【0054】
図7の他の変形例を示す図10を参照すると、パンチ110aの第2成形上面112に段差112aが設けられておらず、キャビティCは第1成形上面111および第1成形下面121の間にのみ形成されている。そのため、樹脂材20は底壁部2のみに固着される。すなわち、樹脂材20の固着範囲が絞られた、重量面および経済面において優れた金属樹脂複合体1が製造され得る。
【0055】
(第2実施形態)
図11~15を参照して、第2実施形態における金属樹脂複合体1を製造するための装置50および方法について説明する。
【0056】
図11~15に示す本実施形態は、パンチ110aおよびホルダー110bは一体で上型110を構成している。これに関する以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0057】
本実施形態では、上型110が一体として第1実施形態におけるパンチ110aおよびホルダー110bを構成している。すなわち、第1成形上面111、第2成形上面112、および第3成形上面113が一体で駆動部(図示せず)によって鉛直方向に移動される。
【0058】
本実施形態では、図11~15に示す第1~5工程を順に実行する中で2回のプレス成形を実行する。図11~13に示す第1~3工程で1回目のプレス成形を実行し、図13~15に示す第3~5工程で2回目のプレス成形を実行する。
【0059】
図11~13に示す第1~3工程の1回目のプレス成形において、第1実施形態と異なり、上型110は一体で下降して金属板10をプレス成形する。本実施形態の第1~3工程は、このように上型110が一体駆動すること以外については第1実施形態の第1~4工程と実質的に同じである。
【0060】
図13~15に示す第3~5工程の2回目のプレス成形においても第1実施形態と異なり、上型110は一体で下降して金属板10と樹脂材20とをプレス成形する。本実施形態の第3~5工程は、このように上型110が一体駆動すること以外については第1実施形態の第4~7工程と実質的に同じである。
【0061】
本実施形態では、封止部材150によって上型110と下型120との隙間が塞がれるため、樹脂材20がキャビティCから漏出することが抑制され得る。
【0062】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態や変形例の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0063】
また、樹脂材20として熱可塑性樹脂にガラス繊維または炭素繊維を含侵させたものを使用してもよい。この場合、樹脂材20を加熱して軟化させた状態で金型100に投入する。そして、金型100内において金属板10上で冷却して硬化させることで金属樹脂複合体1を製造する。
【0064】
金属樹脂複合体1において、金属板10と樹脂材20との間に接着層を設けてもよい。この場合、接着層を設けることで、金属部材10と樹脂材20とを強固に一体成形することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 金属樹脂複合体
2 底壁部
3 側壁部
3a 段差部
4 フランジ部
10 金属板(金属部材)
10a 上面
20 樹脂材
20a 端面
50 装置
100 金型
110 上型
110a パンチ
110b ホルダー
111 第1成形上面
112 第2成形上面
112a 段差
113 第3成形上面
114 隙間
115 第2部分
120 下型
121 第1成形下面
122 第2成形下面
123 第3成形下面
130 駆動部
140 加熱部
150 封止部材
151 第1部分
160 把持装置
170 制御装置
C キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15