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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189020
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20221215BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20221215BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20221215BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221215BHJP
   B60L 50/75 20190101ALN20221215BHJP
   B60L 58/18 20190101ALN20221215BHJP
   B60L 58/12 20190101ALN20221215BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/10 101
B60L50/75
B60L58/18
B60L58/12
B60L9/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097346
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓也
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BB05
5H125BC28
5H125EE27
5H125EE48
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC04
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC89
5H127DC96
5H127FF04
(57)【要約】
【課題】ユーザーに違和感を抱かせることを抑制すること。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池スタックと、第1蓄電装置と、DC/DCコンバータと、第2蓄電装置と、制御装置と、を備える。制御装置は、燃料電池システムの動作終了要求があった場合に、第2蓄電装置の充電率が第2蓄電装置用閾値未満か否かを判定する。制御装置は、第2蓄電装置の充電率が第2蓄電装置用閾値未満と判定された場合に、燃料電池スタックの発電を継続する。制御装置は、燃料電池スタックの発電が終了した後に、DC/DCコンバータによって第2蓄電装置を充電する。制御装置は、第2蓄電装置の充電が終了した後に、燃料電池システムの動作を終了させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックの発電によって充電される第1蓄電装置と、
前記燃料電池スタックに発電を行わせる電装品に電力を供給する第2蓄電装置と、
前記第1蓄電装置の電力を前記第2蓄電装置に供給することで前記第2蓄電装置の充電を行うDC/DCコンバータと、
制御装置と、を備えた燃料電池システムであって、
前記制御装置は、
前記燃料電池システムの動作終了要求があった場合に、前記第2蓄電装置の充電率が第2蓄電装置用閾値未満か否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記第2蓄電装置の充電率が前記第2蓄電装置用閾値未満と判定された場合に、前記燃料電池スタックの発電を継続する発電継続部と、
前記発電継続部による前記燃料電池スタックの発電が終了した後に、前記DC/DCコンバータによって前記第2蓄電装置を充電する充電部と、
前記充電部による前記第2蓄電装置の充電が終了した後に、前記燃料電池システムの動作を終了させる終了部と、を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
前記充電部は、前記第2蓄電装置の充電率が前記第2蓄電装置用閾値以上になると前記DC/DCコンバータを停止させる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記充電部は、前記第2蓄電装置を充電する際の損失が最も小さくなるように前記DC/DCコンバータの制御を行う、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の燃料電池システムは、第1蓄電装置と、第2蓄電装置と、DC/DCコンバータと、制御装置と、を備える。第1蓄電装置は、燃料電池スタックにより発電された電力を負荷に供給したときの余剰電力によって充電される。第1蓄電装置は、負荷の要求電力が燃料電池スタックの発電電力よりも大きい場合、不足分の電力を放電する。第2蓄電装置は、燃料電池スタックに発電を行わせる電装品に電力を供給する。DC/DCコンバータは、第1蓄電装置の電力を用いて第2蓄電装置の充電を行う。燃料電池スタックによる発電が行われないと、第1蓄電装置の充電率及び第2蓄電装置の充電率は時間経過に伴い低下していく。第2蓄電装置の残容量が尽きると、電装品に電力を供給することができなくなる。すると、燃料電池スタックに発電を行わせることができなくなる。このため、制御装置は、燃料電池システムが停止している場合であっても第1蓄電装置の充電率、及び第2蓄電装置の充電率を監視している。そして、制御装置は、第1蓄電装置の充電率、及び第2蓄電装置の充電率に基づき、燃料電池システムを動作させて、燃料電池スタックに発電を行わせている。これにより、第2蓄電装置の残容量が尽きることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-123555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の燃料電池システムでは、燃料電池システムのユーザーによる指示がなくても燃料電池スタックの発電が行われる。このため、ユーザーが意図しないタイミングで燃料電池スタックの発電による騒音が生じたり、水素ガスの消費が行われる。結果として、ユーザーに違和感を抱かせるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池システムは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックの発電によって充電される第1蓄電装置と、前記燃料電池スタックに発電を行わせる電装品に電力を供給する第2蓄電装置と、前記第1蓄電装置の電力を前記第2蓄電装置に供給することで前記第2蓄電装置の充電を行うDC/DCコンバータと、制御装置と、を備えた燃料電池システムであって、前記制御装置は、前記燃料電池システムの動作終了要求があった場合に、前記第2蓄電装置の充電率が第2蓄電装置用閾値未満か否かを判定する判定部と、前記判定部により前記充電率が前記第2蓄電装置用閾値未満と判定された場合に、前記燃料電池スタックの発電を継続する発電継続部と、前記発電継続部による前記燃料電池スタックの発電が終了した後に、前記DC/DCコンバータによって前記第2蓄電装置を充電する充電部と、前記充電部による前記第2蓄電装置の充電が終了した後に、前記燃料電池システムの動作を終了させる終了部と、を備える。
【0006】
燃料電池システムの動作終了要求があった場合であって、第2蓄電装置の充電率が第2蓄電装置用閾値未満の場合、燃料電池スタックの発電が継続される。これにより、第1蓄電装置が充電される。燃料電池スタックの発電が終了した後には、第1蓄電装置の電力を用いて、第2蓄電装置の充電が行われる。従って、燃料電池システムの動作を終了させる前に、第2蓄電装置の充電を行うことができる。第2蓄電装置の充電を行うことなく燃料電池システムの動作を終了させる場合に比べて、燃料電池システムの動作終了時点での第2蓄電装置の充電率を高くすることができる。このため、第2蓄電装置の残容量が尽きることを抑制できる。燃料電池システムの動作終了後に、第2蓄電装置を充電するために燃料電池スタックに発電を行わせることを抑制できる。従って、燃料電池システムのユーザーに違和感を抱かせにくい。
【0007】
上記燃料電池システムについて、前記充電部は、前記第2蓄電装置の充電率が前記第2蓄電装置用閾値以上になると前記DC/DCコンバータを停止させてもよい。
上記燃料電池システムについて、前記充電部は、前記第2蓄電装置を充電する際の損失が最も小さくなるように前記DC/DCコンバータの制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザーに違和感を抱かせることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】燃料電池車両の概略構成図。
図2】終了処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、燃料電池システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、燃料電池車両10は、スタートスイッチ11と、車両負荷12と、通知部13と、燃料電池システム20と、水素タンク21と、を備える。燃料電池車両10は、乗用車であってもよいし、産業車両であってもよい。本実施形態の燃料電池車両10は、産業車両である。産業車両としては、例えば、フォークリフト及びトーイングトラクタを挙げることができる。
【0011】
スタートスイッチ11は、燃料電池車両10の起動状態と停止状態とを切り替えるためのスイッチである。スタートスイッチ11は、例えば、燃料電池車両10の搭乗者により操作される。起動状態とは、燃料電池車両10の走行が可能な状態である。停止状態とは、燃料電池車両10の走行を行えない状態である。スタートスイッチ11は、イグニッションスイッチやシステム起動スイッチ等と呼称されることもある。
【0012】
車両負荷12は、例えば、燃料電池車両10を走行させるためのモータを含む。車両負荷12は、燃料電池システム20から供給される電力によって駆動する。
通知部13は、燃料電池システム20のユーザーに通知を行う。通知部13としては、例えば、ブザー、ランプ、及び表示部を挙げることができる。
【0013】
燃料電池システム20は、バルブ22と、インジェクタ23と、水素循環ポンプ24と、電動圧縮機25と、燃料電池スタック31と、降圧コンバータ32と、第1蓄電装置41と、第1開閉器42と、第1電流センサ43と、第1電圧センサ44と、第1充電率推定部45と、DC/DCコンバータ51と、第2開閉器56と、第2蓄電装置61と、第2電流センサ62と、第2電圧センサ63と、第2充電率推定部64と、制御装置71と、を備える。燃料電池システム20は、複数の正極接続線L1,L3,L5,L7,L9と、複数の負極接続線L2,L4,L6,L8,L10と、を備える。
【0014】
水素タンク21は、水素ガスを貯蔵している。
バルブ22は、開閉されることで水素タンク21からの水素ガスの放出と遮断とを切り替える。
【0015】
インジェクタ23は、開かれることにより水素ガスを噴射し、燃料電池スタック31に水素ガスを供給する。インジェクタ23としては、例えば、電磁的に駆動する電磁駆動式のものが用いられる。
【0016】
水素循環ポンプ24は、燃料電池スタック31から排出されるガスに含まれる未反応の水素ガスを、再度、燃料電池スタック31に供給する。
電動圧縮機25は、電動モータによって駆動する。電動圧縮機25は、燃料電池スタック31に空気を供給する。
【0017】
燃料電池スタック31は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルは、例えば、固体高分子型燃料電池である。燃料電池スタック31は、燃料ガスと、酸化剤ガスとの化学反応によって発電を行う。本実施形態では、水素ガスを燃料ガス、空気中の酸素を酸化剤ガスとして発電が行われる。燃料電池スタック31は、水素タンク21から供給された水素ガスと電動圧縮機25から供給された酸素とで発電を行う。
【0018】
降圧コンバータ32は、入力端33,34と、出力端35,36と、を備える。降圧コンバータ32は、入力端33,34に入力された電圧を降圧して出力端35,36から出力する。降圧コンバータ32は、例えば、スイッチング素子のスイッチング動作により降圧を行う。降圧コンバータ32の入力端33,34には、燃料電池スタック31が接続されている。降圧コンバータ32には、燃料電池スタック31から電力が入力される。
【0019】
第1正極接続線L1及び第1負極接続線L2は、降圧コンバータ32の出力端35,36と車両負荷12とを接続している。第1正極接続線L1及び第1負極接続線L2を介して、車両負荷12には、降圧コンバータ32から出力された電力が入力される。
【0020】
第1蓄電装置41は、充放電可能であれば、どのようなものを用いてもよい。第1蓄電装置41としては、例えば、二次電池及びキャパシタを挙げることができる。本実施形態において、第1蓄電装置41としてはリチウムイオンキャパシタが用いられている。
【0021】
第2正極接続線L3及び第2負極接続線L4は、降圧コンバータ32の出力端35,36と第1蓄電装置41とを接続している。第1蓄電装置41は、車両負荷12に対して並列接続されている。燃料電池スタック31の発電電力が負荷の要求電力を上回っている場合、余剰の電力によって第1蓄電装置41が充電される。第1蓄電装置41は、燃料電池スタック31の発電によって充電されるといえる。燃料電池スタック31の発電電力が負荷の要求電力を下回っている場合、不足分の電力が第1蓄電装置41から放電される。負荷は、車両負荷12に加えて、バルブ22、インジェクタ23、水素循環ポンプ24及び電動圧縮機25等を含む。
【0022】
第1開閉器42は、降圧コンバータ32と第1蓄電装置41との接続と、接続の遮断とを切り替える。第1開閉器42が閉じている場合、降圧コンバータ32と第1蓄電装置41とは接続されている。第1開閉器42が開いている場合、降圧コンバータ32と第1蓄電装置41との接続は遮断されている。第1開閉器42は、第2正極接続線L3及び第2負極接続線L4の少なくともいずれかに設けられる。本実施形態において、第1開閉器42は、第2正極接続線L3に設けられている。
【0023】
第1電流センサ43は、第1蓄電装置41に接続されている。第1電流センサ43は、第1蓄電装置41への充電電流、及び第1蓄電装置41の放電電流を検出する。
第1電圧センサ44は、第1蓄電装置41に接続されている。第1電圧センサ44は、第1蓄電装置41の端子間電圧を検出する。
【0024】
第1充電率推定部45は、第1蓄電装置41の充電率を推定する。第1充電率推定部45は、第1電流センサ43の検出結果を取得可能である。第1充電率推定部45は、第1電圧センサ44の検出結果を取得可能である。第1充電率推定部45は、第1電流センサ43の検出結果を用いて、電流積算法によって第1蓄電装置41の充電率を推定してもよい。第1充電率推定部45は、開回路電圧と充電率との相関から第1蓄電装置41の充電率を推定してもよい。開回路電圧は、第1蓄電装置41の放電電流と内部抵抗から推定してもよいし、第1蓄電装置41が充放電を行っていない際の第1電圧センサ44の検出結果を用いてもよい。第1充電率推定部45としては、例えば、バッテリマネジメントシステムを用いることができる。第1蓄電装置41の充電率は、制御装置71によって推定されてもよい。この場合、制御装置71が第1充電率推定部である。
【0025】
DC/DCコンバータ51は、入力端52,53と、出力端54,55と、を備える。DC/DCコンバータ51は、入力端52,53に入力された電圧を降圧して出力端54,55から出力する。DC/DCコンバータ51は、スイッチング素子を備え、スイッチング素子のスイッチング動作により降圧を行う。
【0026】
第3正極接続線L5及び第3負極接続線L6は、降圧コンバータ32の出力端35,36とDC/DCコンバータ51の入力端52,53とを接続している。詳細にいえば、第3正極接続線L5は、第2正極接続線L3において第1開閉器42と第1蓄電装置41との間に接続されている。第3負極接続線L6は、第1負極接続線L2に接続されている。第3正極接続線L5及び第3負極接続線L6は、DC/DCコンバータ51の入力端52,53と第1蓄電装置41とを接続しているともいえる。DC/DCコンバータ51には、第3正極接続線L5及び第3負極接続線L6を介して、降圧コンバータ32から出力された電力、及び第1蓄電装置41から出力された電力が入力される。
【0027】
第2開閉器56は、降圧コンバータ32及び第1蓄電装置41とDC/DCコンバータ51との接続と、接続の遮断とを切り替える。第1開閉器42及び第2開閉器56が閉じている場合、降圧コンバータ32及び第1蓄電装置41とDC/DCコンバータ51とは接続されている。第1開閉器42及び第2開閉器56が開いている場合、降圧コンバータ32及び第1蓄電装置41とDC/DCコンバータ51との接続は遮断されている。第1開閉器42が開いており、かつ、第2開閉器56が閉じている場合、第1蓄電装置41とDC/DCコンバータ51とは接続されている。第2開閉器56は、第3正極接続線L5及び第3負極接続線L6の少なくともいずれかに設けられる。本実施形態において、第2開閉器56は、第3正極接続線L5に設けられている。
【0028】
第2蓄電装置61は、充放電可能であれば、どのようなものを用いてもよい。第2蓄電装置61としては、例えば、二次電池及びキャパシタを挙げることができる。本実施形態において、第2蓄電装置61としては鉛蓄電池が用いられている。
【0029】
第4正極接続線L7及び第4負極接続線L8は、DC/DCコンバータ51の出力端54,55と第2蓄電装置61とを接続している。
第5正極接続線L9及び第5負極接続線L10は、DC/DCコンバータ51の出力端54,55と電装品とを接続している。この電装品は、燃料電池スタック31に発電を行わせる電装品である。当該電装品には、バルブ22、インジェクタ23、水素循環ポンプ24、電動圧縮機25、及び制御装置71が含まれる。なお、DC/DCコンバータ51が出力する電力は、電源回路を介して電装品に供給されてもよい。電源回路は、DC/DCコンバータ51から出力された電圧を、電装品を駆動するのに適した電圧にして出力する。以下の説明において、電装品とは、燃料電池スタック31に発電を行わせる電装品である。
【0030】
燃料電池車両10が起動状態であって燃料電池スタック31が発電を行っている場合、第1開閉器42及び第2開閉器56は閉じている。この状態でDC/DCコンバータ51が動作することで、DC/DCコンバータ51から出力される電力によって電装品は駆動する。電装品を駆動するために必要となる電力が、DC/DCコンバータ51から出力される電力だけでは不足する場合、第2蓄電装置61から不足分の電力が出力される。燃料電池車両10が停止状態の際など、燃料電池スタック31が発電を行っていない場合、第2蓄電装置61から出力される電力によって電装品は駆動する。従って、燃料電池システム20が停止している状態から燃料電池システム20を動作させる際には、第2蓄電装置61の電力によって電装品が駆動する。また、第2蓄電装置61は、燃料電池スタック31が発電を行っていない場合、燃料電池車両10に搭載される補機に暗電流を供給する。
【0031】
第2電流センサ62は、第2蓄電装置61に接続されている。第2電流センサ62は、第2蓄電装置61への充電電流、及び第2蓄電装置61の放電電流を検出する。
第2電圧センサ63は、第2蓄電装置61に接続されている。第2電圧センサ63は、第2蓄電装置61の端子間電圧を検出する。
【0032】
第2充電率推定部64は、第2蓄電装置61の充電率を推定する。第2充電率推定部64は、第2電流センサ62の検出結果を取得可能である。第2充電率推定部64は、第2電圧センサ63の検出結果を取得可能である。第2充電率推定部64は、第1充電率推定部45と同様の手法によって第2蓄電装置61の充電率を推定する。第2蓄電装置61の充電率は、制御装置71によって推定されてもよい。この場合、制御装置71が第2充電率推定部である。
【0033】
制御装置71は、プロセッサと、記憶部と、を備える。プロセッサとしては、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、及びDSP(Digital Signal Processor)が挙げられる。記憶部は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置71は、ASICやFPGA等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置71は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0034】
制御装置71は、燃料電池システム20の制御を行う。詳細にいえば、制御装置71は、燃料電池スタック31の発電、降圧コンバータ32の動作、及びDC/DCコンバータ51の動作に関する制御を行う。制御装置71は、スタートスイッチ11により、燃料電池車両10が起動状態にされているか、停止状態にされているかを認識可能である。制御装置71は、通知部13を制御することが可能である。
【0035】
制御装置71は、スタートスイッチ11によって燃料電池車両10が起動状態とされている場合、燃料電池システム20を動作させる。制御装置71は、燃料電池車両10が起動状態とされている場合、以下の終了処理を実行している。以下、終了処理について説明を行う。
【0036】
図2に示すように、ステップS1において、制御装置71は、燃料電池システム20の動作終了要求があったか否かを判定する。燃料電池システム20の動作終了要求とは、燃料電池システム20の動作を終了させることを制御装置71に要求する指令である。本実施形態において、スタートスイッチ11の操作による起動状態から停止状態への切り替えにより燃料電池システム20の動作終了要求が制御装置71に送られる。ステップS1の判定結果が肯定の場合、制御装置71は、ステップS2の処理を行う。ステップS1は、ステップS1の判定結果が肯定になるまで繰り返される。
【0037】
ステップS2において、制御装置71は、第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値未満か否かを判定する。第2蓄電装置用閾値は、例えば、所定時間、燃料電池スタック31による発電が行われなかった場合であっても、第2蓄電装置61の残容量が尽きないように設定される。燃料電池スタック31による発電が行われないと、補機への暗電流の供給、及び自然放電によって第2蓄電装置61の充電率は徐々に低下していく。このため、燃料電池スタック31による発電が行われなかった時間が長くなるほど、第2蓄電装置61の残容量は低下していく。所定時間を2週間とした場合、燃料電池スタック31による発電を2週間行わなかった場合であっても、第2蓄電装置61の残容量が尽きないように第2蓄電装置用閾値は設定されている。なお、第2蓄電装置61の残容量が尽きた状態とは、第2蓄電装置61の端子間電圧が、電装品を駆動できない電圧まで低下することをいう。ステップS2の判定結果が肯定の場合、制御装置71は、ステップS3の処理を行う。ステップS2の判定結果が否定の場合、制御装置71は、ステップS11の処理を行う。ステップS2の処理を行う制御装置71は、燃料電池システム20の動作終了要求があった場合に、第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値未満か否かを判定する判定部を備えているといえる。
【0038】
ステップS3において、制御装置71は、燃料電池スタック31の発電を継続する。制御装置71は、バルブ22、インジェクタ23、水素循環ポンプ24の駆動により燃料電池スタック31への水素ガスの供給を継続する。制御装置71は、電動圧縮機25の駆動により燃料電池スタック31への酸素の供給を継続する。制御装置71は、降圧コンバータ32の動作を継続しており、これにより、第1蓄電装置41の充電率は上昇していく。制御装置71は、第1蓄電装置41の充電率が第1蓄電装置用閾値以上になるまで燃料電池スタック31の発電を継続する。第1蓄電装置用閾値としては、例えば、第1蓄電装置41の電力を用いて第2蓄電装置61の充電を行った場合に、第2蓄電装置61の充電率を第2蓄電装置用閾値にすることができるように設定されている。詳細にいえば、第1蓄電装置41の充電率が第1蓄電装置用閾値から第1蓄電装置用下限閾値になるまでに、第2蓄電装置61の充電率を第2蓄電装置用閾値にすることができるように第1蓄電装置用閾値は設定されている。第1蓄電装置用下限閾値は、第1蓄電装置用閾値よりも低い値である。第1蓄電装置用下限閾値は、例えば、燃料電池システム20の次回の動作時に、燃料電池システム20の動作に支障を来さないように設定されている。制御装置71は、第1充電率推定部45によって第1蓄電装置41の充電率を把握しながら、第1蓄電装置41の充電率が第1蓄電装置用閾値以上になるまで燃料電池スタック31の発電を継続してもよい。第1蓄電装置41の充電率が第1蓄電装置用閾値以上になるまでの時間を把握できていれば、制御装置71は、第1蓄電装置41の充電率が第1蓄電装置用閾値以上になるまでの時間、燃料電池スタック31の発電を継続するようにしてもよい。即ち、ステップS3での燃料電池スタック31の発電は、第1蓄電装置41の充電率を第1蓄電装置用閾値以上にできるまで継続できればよく、どのような条件によって終了してもよい。ステップS3の処理を行う制御装置71は、判定部により第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値未満と判定された場合に、燃料電池スタック31の発電を継続する発電継続部を備えているといえる。
【0039】
次に、ステップS4において、制御装置71は、燃料電池スタック31の発電を終了する。制御装置71は、バルブ22、インジェクタ23、水素循環ポンプ24、及び電動圧縮機25を停止させることで、燃料電池スタック31の発電を終了する。ステップS1~ステップS4の処理を行っている間は、第1開閉器42は閉じられている。第2開閉器56は、閉じられていてもよいし、開かれていてもよい。
【0040】
次に、ステップS5において、制御装置71は、第1蓄電装置41を用いて第2蓄電装置61を充電する。制御装置71は、DC/DCコンバータ51を動作させる。DC/DCコンバータ51には、第1蓄電装置41の電力が入力される。DC/DCコンバータ51から出力される電力によって第2蓄電装置61は充電されていく。制御装置71は、第2蓄電装置61を充電する際の損失が最も小さくなるようにDC/DCコンバータ51の制御を行う。第2蓄電装置61の充電のみを考慮すると、第2蓄電装置61への充電電流が大きいほど、発熱量が大きくなり、損失が大きくなる。このため、第2蓄電装置61への充電電流を小さくするほど、第2蓄電装置61での損失は小さくなる。一方で、ステップS5で第2蓄電装置61の充電を行う際には、第1蓄電装置41の電力によってDC/DCコンバータ51や制御装置71を駆動している。このため、第2蓄電装置61の充電時間が長くなるほど、DC/DCコンバータ51や制御装置71で消費される電力が大きくなり、損失が大きくなる。これらの要素を考慮した上で、第2蓄電装置61を充電する際の損失が最も小さくなるような充電電流が設定されている。制御装置71は、この充電電流が第2蓄電装置61に供給されるようにDC/DCコンバータ51の制御を行う。詳細にいえば、制御装置71は、DC/DCコンバータ51が備えるスイッチング素子のデューティを制御することで、上記した充電電流が第2蓄電装置61に供給されるように制御を行う。ステップS5の処理を行う制御装置71は、発電継続部による燃料電池スタック31の発電が終了した後に、DC/DCコンバータ51によって第2蓄電装置61を充電する充電部を備えているといえる。
【0041】
次に、ステップS6において、制御装置71は、終了条件が成立したか否かを判定する。終了条件は、以下の第1条件及び第2条件の少なくともいずれかが成立することである。
【0042】
第1条件…第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値以上。
第2条件…第1蓄電装置41の充電率が第1蓄電装置用下限閾値以下。
制御装置71は、ステップS6の判定結果が否定の場合、ステップS5に戻る。即ち、第2蓄電装置61の充電を継続する。制御装置71は、ステップS6の判定結果が肯定の場合、ステップS7の処理を行う。ステップS5及びステップS6の処理を行っている間は、第1開閉器42は開かれている。第2開閉器56は、閉じられている。
【0043】
ステップS7において、制御装置71は、DC/DCコンバータ51を停止させることで、第2蓄電装置61の充電を終了する。
次に、ステップS8において、制御装置71は、第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値未満か否かを判定する。ステップS8の判定結果が肯定の場合、制御装置71はステップS9の処理を行う。ステップS7の判定結果が否定の場合、制御装置71は、ステップS10の処理を行う。
【0044】
ステップS9において、制御装置71は、通知を行う。この通知は、燃料電池システム20のユーザーに対して、第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値未満であることを認識させるための通知である。通知は、通知部13によって行われる。通知部13がブザーであれば、制御装置71はブザーを駆動させることで音を生じさせる。通知部13がランプであれば、制御装置71はランプを点灯、又は点滅させる。通知部13が表示部であれば、制御装置71は、第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値未満である旨の文字やマークを表示部に表示させる。
【0045】
次に、ステップS10において、制御装置71は、燃料電池システム20の動作を終了する。これにより、燃料電池システム20は停止する。ステップS10の処理を行う制御装置71は、充電部による第2蓄電装置61の充電が終了した後に、燃料電池システム20の動作を終了させる終了部を備えているといえる。制御装置71は、ステップS10の処理を終えると、終了処理を終える。
【0046】
ステップS11において、制御装置71は、第1蓄電装置41の充電率が第1蓄電装置用下限閾値未満か否かを判定する。ステップS11の判定結果が肯定の場合、制御装置71は、ステップS12の処理を行う。ステップS11の判定結果が否定の場合、制御装置71は、ステップS10の処理を行う。
【0047】
ステップS12において、制御装置71は、燃料電池スタック31の発電を継続する。制御装置71は、降圧コンバータ32の動作を継続しており、これにより、第1蓄電装置41の充電率は上昇していく。制御装置71は、第1蓄電装置41の充電率が第1蓄電装置用下限閾値以上になるまで燃料電池スタック31の発電を継続する。ステップS12の処理を終えると、制御装置71は、ステップS10の処理を行う。
【0048】
本実施形態では、燃料電池システム20が停止した後には、ユーザーによる燃料電池システム20の動作開始要求があるまで、燃料電池システム20は動作しない。燃料電池システム20の動作開始要求とは、燃料電池システム20を動作させることを制御装置71に要求する指令である。例えば、スタートスイッチ11の操作による停止状態から起動状態への切り替えがされると、燃料電池システム20の動作開始要求が制御装置71に送られる。従って、ユーザーが意図しないタイミングで燃料電池システム20の動作が行われることが抑制されている。
【0049】
本実施形態の作用について説明する。
燃料電池システム20の動作終了要求があった場合であって、第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値未満の場合、燃料電池スタック31の発電が継続される。これにより、第1蓄電装置41が充電される。燃料電池スタック31の発電が終了した後には、第1蓄電装置41の電力を用いて、第2蓄電装置61の充電が行われる。第2蓄電装置61の充電を行うことなく燃料電池システム20の動作を終了させる場合に比べて、燃料電池システム20の動作終了時点での第2蓄電装置61の充電率を高くすることができる。燃料電池システム20の動作終了時点での第2蓄電装置61の充電率を高くすると、第2蓄電装置61の残容量が尽きるまでの時間を長くすることができる。
【0050】
本実施形態の効果について説明する。
(1)制御装置71は、燃料電池システム20の動作終了要求があった場合に燃料電池スタック31の発電を継続することで第1蓄電装置41を充電し、第1蓄電装置41の電力を用いて第2蓄電装置61を充電している。第2蓄電装置61の残容量が尽きるまでの時間を長くすることができるので、第2蓄電装置61の残容量が尽きることを抑制できる。燃料電池システム20の動作終了後に、第2蓄電装置61を充電するために燃料電池スタック31に発電を行わせなくても、第2蓄電装置61の残容量が尽きることを抑制できる。このため、燃料電池システム20の動作終了後に、第2蓄電装置61を充電するために燃料電池スタック31に発電を行わせることを抑制できる。従って、ユーザーの意図しないタイミングで燃料電池システム20が動作することが抑制され、燃料電池システム20のユーザーに違和感を抱かせにくい。
【0051】
(2)ステップS6において、第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値以上の場合、制御装置71は燃料電池スタック31の発電を終了させる。第2蓄電装置61の充電率を第2蓄電装置用閾値以上にしやすい。このため、第2蓄電装置61の残容量が尽きることを更に抑制できる。
【0052】
(3)制御装置71は、第2蓄電装置61を充電する際の損失が最も小さくなるようにDC/DCコンバータ51の制御を行う。このため、第1蓄電装置41の電力が無駄になることを抑制できる。
【0053】
(4)第1蓄電装置41としてリチウムイオンキャパシタを用い、第2蓄電装置61として鉛蓄電池を用いている。鉛蓄電池は、大電流を流すと損失が大きくなるため、損失を小さくするためになるべく小さい電流で充電を行う必要がある。これに対し、リチウムイオンキャパシタは鉛蓄電池に比べて、大電流を流したときの損失が小さく、短時間で充電を行うことができる。このため、同一の電力を蓄えようとした場合、鉛蓄電池は、リチウムイオンキャパシタに比べて充電に時間を要する。第1蓄電装置41を充電した後に、第1蓄電装置41の電力を用いて第2蓄電装置61を充電することで、燃料電池スタック31の発電によって第2蓄電装置61を充電する場合に比べて、燃料電池スタック31の発電時間を短くできる。従って、燃料電池システム20の動作終了要求から、燃料電池システム20の動作が終了するまでの時間を短くできる。このため、燃料電池システム20の動作を終了させるのに要する時間が長くなることによる違和感をユーザーに抱かせにくい。なお、第1蓄電装置41として、リチウムイオン二次電池を用いた場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0054】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ステップS5において、制御装置71は、第2蓄電装置61の充電を行えればよく、必ずしも、損失が最も小さくならなくてもよい。例えば、制御装置71は、第2蓄電装置61の充電率が最も速く第2蓄電装置用閾値に達するようにDC/DCコンバータ51を制御してもよい。
【0055】
○ステップS6の終了条件として、第1条件及び第2条件の一方を用いてもよい。
○制御装置71は、ステップS8及びステップS9の処理を行わなくてもよい。
○燃料電池システム20は、降圧コンバータ32を備えていなくてもよい。例えば、燃料電池スタック31の発電した電力が、直接、第1蓄電装置41、及びDC/DCコンバータ51に供給されるようにしてもよい。
【0056】
○制御装置71は、燃料電池システム20が停止している間に、第2蓄電装置61の充電率が閾値未満になった場合、燃料電池システム20を動作させて、第2蓄電装置61の充電を行ってもよい。上記した閾値は、第2蓄電装置用閾値よりも低い値である。この場合、燃料電池システム20の動作を終了させる前に第2蓄電装置61の充電を行わない場合に比べて、第2蓄電装置61の充電率が閾値まで低下するまでの時間を長くすることができる。従って、燃料電池システム20の動作を終了させる前に第2蓄電装置61の充電を行わない場合に比べて、第2蓄電装置61の充電を行うために燃料電池システム20を動作させる頻度を少なくすることができる。燃料電池システム20が動作する頻度を少なくすることができるため、ユーザーが違和感を抱くことを抑制できる。
【0057】
○制御装置71は、ステップS2、ステップS6及びステップS8で第2蓄電装置61の充電率が第2蓄電装置用閾値未満か否かを判定する際に、第2蓄電装置61の開回路電圧を用いて判定を行ってもよい。第2蓄電装置61の充電率と第2蓄電装置61の開回路電圧には相関があり、第2蓄電装置61の開回路電圧は第2蓄電装置61の充電率とみなすことができる。同様に、ステップS3、ステップS6及びステップS11において、第1蓄電装置41の充電率として第1蓄電装置41の開回路電圧を用いてもよい。
【0058】
○燃料電池システム20は、定置型の発電機として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
20…燃料電池システム、31…燃料電池スタック、41…第1蓄電装置、51…DC/DCコンバータ、61…第2蓄電装置、71…制御装置。
図1
図2