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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189022
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】感圧センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
G01L1/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097349
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】都竹 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】鶴留 大介
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】破田野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】多井中 伴之
(72)【発明者】
【氏名】大沢 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】綿引 裕太
(72)【発明者】
【氏名】進 沙弥香
(57)【要約】
【課題】印加荷重に応じて変化する変形層の厚さと印加荷重との相関関係の線形性を高める。
【解決手段】感圧センサ10は、第1主面21及び第2主面22を有する変形層と、第1主面21に積層される第1電極層31と、第2主面22に積層される第2電極層32とを備えている。変形層は、非圧縮性を有する弾性材料により構成されている。変形層は、複数の孔部23と、隣接する孔部23の間に位置して孔部23を区画する隔壁部24とを備えている。隔壁部の幅(w)に対する高さ(t)の比率(t/w)が0.3以上10以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面の反対側に位置する第2主面を有する変形層と、前記第1主面に積層される第1電極層と、前記第2主面に積層される第2電極層とを備え、外部から印加される荷重により前記第1電極層と前記第2電極層との間の距離が変化することに基づいて前記荷重を検出する感圧センサであって、
前記変形層は、非圧縮性を有する弾性材料により構成され、
前記変形層は、複数の孔部と、隣接する前記孔部の間に位置して前記孔部を区画する隔壁部とを備え、
前記隔壁部の幅(w)に対する高さ(t)の比率(t/w)が0.3以上10以下であることを特徴とする感圧センサ。
【請求項2】
前記隔壁部は、隣接する前記孔部を隔てる壁部であり、
積層方向から見た平面視において、前記隔壁部により隔てられた前記孔部は、互いに独立している請求項1に記載の感圧センサ。
【請求項3】
前記変形層の前記第1主面における前記孔部の占有比率は、30%以上70%以下である請求項1又は請求項2に記載の感圧センサ。
【請求項4】
前記変形層は、複数の前記隔壁部を備え、
複数の前記隔壁部の前記比率は一定である請求項1~3のいずれか一項に記載の感圧センサ。
【請求項5】
前記第1電極層と前記第2電極層との間の距離が変化することによる静電容量の変化に基づいて前記荷重を検出する静電容量型感圧センサであり、
前記変形層は、誘電エラストマーである請求項1~4のいずれか一項に記載の感圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正極側電極層と、負極側電極層と、正極側電極層と負極側電極層との間に介装される変形層とを備える静電容量型感圧センサが開示されている。静電容量型感圧センサは、外部から印加される荷重により正極側電極層と負極側電極層との間の距離が変化することに基づき静電容量が変化することを利用して荷重の変化を検出する。
【0003】
また、特許文献1の静電容量型感圧センサは、エラストマー製又は樹脂製であって非発泡体製の柱部と空間部とを有する構成の誘電層を採用することにより、正極側電極層及び負極側電極層と誘電層とが接合してない部分を設けている。これにより、正極側電極層及び負極側電極層と誘電層とが全面的に接合されている場合と比較して、センサの面方向の変形、即ち、積層方向に垂直な方向の変形が誘電層により阻害されることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-223953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電容量型感圧センサは、誘電層の厚さと反比例の関係にある静電容量を測定し、印加荷重に応じて変化する誘電層の厚さと印加荷重との相関関係に基づいて、静電容量の測定値から印加荷重を導出する。そのため、印加荷重に応じて変化する誘電層の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が高いほど、印加荷重を精確に導出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する感圧センサは、第1主面及び前記第1主面の反対側に位置する第2主面を有する変形層と、前記第1主面に積層される第1電極層と、前記第2主面に積層される第2電極層とを備え、外部から印加される荷重により前記第1電極層と前記第2電極層との間の距離が変化することに基づいて前記荷重を検出する感圧センサであって、前記変形層は、非圧縮性を有する弾性材料により構成され、前記変形層は、複数の孔部と、隣接する前記孔部の間に位置して前記孔部を区画する隔壁部とを備え、前記隔壁部の幅(w)に対する高さ(t)の比率(t/w)が0.3以上10以下である。
【0007】
上記構成によれば、印加荷重に応じて変化する変形層の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が高くなる。上記相関関係の線形性が高くなることにより、外部から印加される荷重により第1電極層と第2電極層との間の距離が変化することに基づいて荷重を導出する際の精度が向上する。
【0008】
上記感圧センサにおいて、前記隔壁部は、隣接する前記孔部を隔てる壁部であり、積層方向から見た平面視において、前記隔壁部により隔てられた前記孔部は、互いに独立していることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、打ち抜き加工やスクリーン印刷により変形層を成形することが容易である。そのため、特許文献1に開示されている、非発泡体製の柱部と空間部とを有する構成の誘電層と比較して簡易に変形層を製造できる。
【0010】
上記感圧センサにおいて、積層方向から見た平面視において、前記変形層の前記第1主面における前記孔部の占有比率は、30%以上70%以下であることが好ましい。
上記構成によれば、印加荷重に応じて変化する変形層の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が高くなる効果がより顕著に得られる。
【0011】
上記感圧センサにおいて、前記変形層は、複数の前記隔壁部を備え、複数の前記隔壁部の前記比率は一定である。
上記構成によれば、印加荷重に応じて変化する変形層の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が高くなる効果がより顕著に得られる。
【0012】
上記感圧センサは、例えば、前記第1電極層と前記第2電極層との間の距離が変化することによる静電容量の変化に基づいて前記荷重を検出する静電容量型感圧センサであり、前記変形層は、誘電エラストマーである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印加荷重に応じて変化する変形層の厚さと印加荷重との相関関係の線形性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】感圧センサの斜視図。
図2】感圧センサの分解斜視図。
図3図1の3-3線断面図。
図4】変形層の平面図。
図5】変形層の変形率と外部から印加された荷重との相関関係を示すグラフ。
図6】(a)~(d)は、変更例の変形層の平面図。
図7】(a)~(e)は、試験例1~5の試験結果を示すグラフ。
図8】(a),(b)は、試験例6,7の試験結果を示すグラフ。
図9】(a),(b)は、試験例8,9の試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を静電容量型感圧センサに具体化した一実施形態を説明する。
図1~3に示すように、静電容量型感圧センサである感圧センサ10は、変形層20と、第1電極層31と、第2電極層32とを備える積層体である。
【0016】
(変形層)
変形層20は、非圧縮性を有する弾性材料、かつ誘電体である材料により構成される部位であり、非圧縮的に変形する性質を有する。非圧縮的に変形するとは、荷重を印加した際に、体積は殆ど変化せずに形状が変化する態様の変形を意味する。
【0017】
変形層20を構成する材料としては、例えば、天然ゴム、合成天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマー、架橋されたポリロタキサン等の非圧縮性の誘電エラストマーが挙げられる。変形層20は、単一の材料により構成されるものであってもよいし、複数の材料を組み合わせて構成されるものであってもよい。
【0018】
変形層20のヤング率は、例えば、0.1Mpa以上20MPa以下であり、好ましくは、0.5Mpa以上5MPa以下である。変形層20のヤング率は、変形層20を構成する材料の選択、及び組み合わせによって調整できる。
【0019】
図2及び図4に示すように、変形層20は、感圧センサ10の積層方向から見た平面視(以下、単に平面視という。)正方形状をなすシート状の部位であり、第1主面21と第1主面21の反対側に位置する第2主面22とを有する。変形層20の第1主面21には、第1電極層31が積層されるとともに、第2主面22には、第2電極層32が積層されている。変形層20の厚さは、例えば、0.1mm以上5mm以下であり、好ましくは0.3mm以上3mm以下である。
【0020】
変形層20は、変形層20を積層方向に貫通する9個の孔部23と、隣接する孔部23の間に位置するとともに孔部23を区画する隔壁部24と、変形層20の側縁部分を構成する枠状の枠壁部25とを備えている。変形層20の第1主面21及び第2主面22は、変形層20の厚さ方向における隔壁部24及び枠壁部25の各端面によって形成されている。
【0021】
各孔部23は、平面視矩形状であり、変形層20の側縁に沿って縦3×横3に並ぶように配置されている。平面視において、隔壁部24により隔てられた隣接する孔部23同士は互いに独立している。各孔部23の形状は、変形層20の厚さ方向において一定である。変形層20の第1主面21における孔部23の占有比率は特に限定されるものではないが、例えば、30%以上70%以下であり、好ましくは40%以上60%以下である。
【0022】
平面視における孔部23の大きさ、及び隣接する孔部23と孔部23との間の距離は特に限定されるものではなく、隔壁部24の寸法が後述する特定値となるように調整される。なお、隣接する隔壁部24と隔壁部24との間の距離として定義される孔部23の大きさは、例えば、後述する隔壁部24の幅(w)と高さ(t)の合計の0.3倍以上であることが好ましい。
【0023】
図3及び図4に示すように、隔壁部24は、変形層20の側縁に沿って縦横に延びる格子状に配置されている。各隔壁部24の幅(w)は、全て一定であるとともに、各隔壁部24の高さ(t)は、全て一定である。隔壁部24の幅(w)は、当該隔壁部24を介して隣接する孔部23と孔部23との間の距離である。
【0024】
隔壁部24は、隔壁部24の幅(w)に対する高さ(t)の比率であるアスペクト比(t/w)が特定の値となるように形成されている。隔壁部24のアスペクト比は、0.3以上10以下であり、好ましくは0.5以上5以下であり、より好ましくは0.6以上3以下である。本実施形態では、各隔壁部24は、幅(w)及び高さ(t)がそれぞれ一定であるため、全ての隔壁部24のアスペクト比が一定の値になっている。隔壁部24の幅(w)は、例えば、0.3mm以上3mm以下であり、好ましくは0.4mm以上2mm以下である。隔壁部24の高さ(t)は、変形層20の厚さに等しい。
【0025】
枠壁部25は、変形層20の側縁部分であり、平面視において、隔壁部24及び孔部23を囲む四角枠状に形成されている。枠壁部25の幅は、全て一定であるとともに、枠壁部25の高さは、全て一定である。
【0026】
隔壁部24と同様に、枠壁部25の上記アスペクト比は、0.3以上10以下であり、好ましくは0.5以上5以下であり、より好ましくは0.6以上3以下である。各枠壁部25は、幅及び高さがそれぞれ一定であるから、全ての枠壁部25のアスペクト比が一定の値になっている。また、隔壁部24のアスペクト比と枠壁部25のアスペクト比は、0.3以上10以下の範囲内において同じであってもよいし、異なっていてもよい。枠壁部25の幅は、例えば、0.3mm以上3mm以下であり、好ましくは0.4mm以上2mm以下である。枠壁部25の高さは、変形層20の厚さに等しい。
【0027】
上記の構成の変形層20を成形する方法としては、例えば、打ち抜き加工、スクリーン印刷、型成形が挙げられる。
(第1電極層及び第2電極層)
第1電極層31は、変形層20の第1主面21の全面を覆うように第1主面21に積層されている層である。同様に、第2電極層32は、変形層20の第2主面22の全面を覆うように第2主面22に積層されている層である。
【0028】
第1電極層31及び第2電極層32の構成は、電極として機能するものであれば特に限定されない。第1電極層31及び第2電極層32としては、例えば、板状又はシート状の金属層、導電性の樹脂フィルム、金属蒸着膜等の金属薄膜を形成した絶縁性の樹脂フィルム、電極部を形成した布等の軟質材料が挙げられる。
【0029】
金属層を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、銅が挙げられる。導電性の樹脂フィルムを構成する材料としては、例えば、絶縁性高分子及び導電性フィラーを含有する導電エラストマーが挙げられる。上記絶縁性高分子としては、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマー、架橋されたポリロタキサンが挙げられる。上記導電性フィラーとしては、例えば、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、銅や銀等の金属粒子が挙げられる。金属薄膜を構成する材料としては、例えば、銀、銅が挙げられる。絶縁性の樹脂フィルムとしては、例えば、PETフィルムが挙げられる。第1電極層31及び第2電極層32は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
第1電極層31及び第2電極層32の厚さは特に限定されるものではないが、例えば、20μm以上200μm以下である。第1電極層31及び第2電極層32の厚さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
第1電極層31及び第2電極層32は、変形層20に対して接合されている。第1電極層31及び第2電極層32と変形層20との接合方法は、感圧センサ10の用途に応じた接合強度が得られるものであれば特に限定されるものではない。上記接合方法としては、例えば、接着剤を用いた接合、両面テープを用いた接合、プラズマ処理による接合が挙げられる。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
感圧センサ10は、第1電極層31に対して感圧センサ10の積層方向に、外部から荷重が印加されると、変形層20が厚さ方向に薄くなるように変形する。このとき、第1電極層31と第2電極層32との間の距離が変化し、当該距離に応じて感圧センサ10の静電容量が変化する。したがって、感圧センサ10を用いることにより、荷重を印加したときの静電容量に基づいて印加荷重を導出できる。
【0033】
変形層20は、貫通孔状の複数の孔部23と、隣接する孔部23の間に位置して孔部23を区画する隔壁部24とを備える。そのため、荷重印加時において、変形層20は、主として、隔壁部24が厚さ方向に薄くなるように変形する。ここで、本実施形態では、隔壁部24を含む変形層20を、非圧縮性を有する弾性材料により構成するとともに、隔壁部24の形状を、幅(w)に対する高さ(t)の比率であるアスペクト比(t/w)が0.3以上10以下となる形状としている。
【0034】
図5に示すように、上記構成とした場合には、感圧センサ10の積層方向に印加される印加荷重に応じて変化する変形層20の厚さと印加された荷重との相関関係の線形性が高くなる。その詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように考えられる。
【0035】
荷重の印加により非圧縮性物質が変形する場合、変形による体積変化はないとみなせることから、荷重の印加方向に薄くなるように変形しつつ、荷重の印加方向と直交する方向に広がるように変形する。また、非圧縮性物質の内部においては、非圧縮性物質を構成する内部物質の一部が荷重の印加方向と直交する方向に流れるように移動する。このとき、非圧縮性物質に、内部物質の移動を妨げる構造的な抵抗が存在すると、印加荷重に基づいて非圧縮性物質を変形させようとする力の一部が上記抵抗を打ち消すために消費されて、その分だけ非圧縮性物質の変形量が減少する。この変形量の減少が印加荷重と非圧縮性物質の変形量との相関関係の線形性を低下させる要因になる。
【0036】
アスペクト比が上記の範囲である形状の隔壁部24とした場合には、隔壁部24の内部において内部物質の孔部23側への移動を妨げる構造的な抵抗が小さくなる。または、荷重を印加した際に変形層20が厚さ方向に変化できる範囲内において、構造的な抵抗の変動が少ない範囲が広くなる。その結果、印加荷重に応じて変化する変形層20の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が高くなる。
【0037】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)感圧センサ10は、第1主面21及び第2主面22を有する変形層20と、第1主面21に積層される第1電極層31と、第2主面22に積層される第2電極層32とを備えている。変形層20は、非圧縮性を有する弾性材料により構成されている。変形層20は、複数の孔部23と、隣接する孔部23の間に位置して孔部23を区画する隔壁部24とを備えている。隔壁部の幅(w)に対する高さ(t)の比率(t/w)が0.3以上10以下である。
【0038】
上記構成によれば、印加荷重に応じて変化する変形層20の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が高くなる。上記相関関係の線形性が高くなることにより、外部から印加される荷重により第1電極層31と第2電極層32との間の距離が変化することに基づいて荷重を導出する際の精度が向上する。
【0039】
(2)隔壁部24は、隣接する孔部23を隔てる壁部であり、平面視において、隔壁部24により隔てられた孔部23は、互いに独立している。
上記構成によれば、打ち抜き加工やスクリーン印刷により変形層を成形することが容易である。そのため、特許文献1に開示されている、非発泡体製の柱部と空間部とを有する構成の誘電層と比較して簡易に変形層を製造できる。
【0040】
(3)変形層20の第1主面21における孔部23の占有比率は、30%以上70%以下である。
上記構成によれば、印加荷重に応じて変化する変形層20の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が高くなる効果がより顕著に得られる。
【0041】
(4)変形層20は、複数の隔壁部24を備えている。複数の隔壁部24のアスペクト比は全て一定である。
上記構成によれば、印加荷重に応じて変化する変形層20の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が高くなる効果がより顕著に得られる。
【0042】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・変形層20の平面視形状は、矩形状に限定されるものではなく、矩形状以外の多角形状、円形状、楕円形状等のその他の形状としてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、複数の隔壁部24のアスペクト比を一定としていたが一部又は全部の隔壁部24のアスペクト比が異なっていてもよい。隔壁部24の幅を異ならせることにより、隔壁部24のアスペクト比を異ならせることができる。また、この場合には、各隔壁部24の幅の平均値を用いて算出されるアスペクト比が0.3以上10以下の範囲となるように隔壁部24を形成する。この場合、上記範囲外となる隔壁部24が部分的に存在してもよい。
【0044】
・変形層20に設けられる孔部23及び隔壁部24の形状を変更してもよい。隔壁部24の平面視形状は、孔部23の形状に応じた形状となる。例えば、図6(a)~(d)に示すように、矩形状以外の多角形状、角を丸めた多角形状、円形状、楕円形状の孔部23としてもよいし、形状及び大きさの異なる孔部23を組み合わせてもよい。
【0045】
図6(a)は、上記実施形態の孔部23を、角部を丸めた矩形状の孔部に変更した例を示している。図6(b)は、上記実施形態の孔部23を、円形状変更した例を示している。図6(c)は、変形層20の外形を変更するとともに、角部を丸めた矩形状の孔部23と三角形状の孔部23とを組み合わせた例を示している。図6(d)は、大きい円形状の孔部23を千鳥状に配置するとともに、大きい円形状の孔部23の列の間に小さい円形状の孔部23を配置した例を示している。
【0046】
なお、図6(b)に示す例のように、隣接する孔部23の一方又は両方が円形状である場合、それらの間に位置する隔壁部24は、部位ごとに幅が変化する形状になる。この場合、隣接する孔部23と孔部23とが最も接近する部分の長さAを隔壁部24の幅と見なしてアスペクト比を算出する。また、図6(d)に示す例のように、隣接する孔部23と孔部23とが最も接近する部分の長さAが異なる隔壁部24が存在する場合には、上記長さAの平均値を用いて算出されるアスペクト比が0.3以上10以下の範囲となるように隔壁部24を形成する。
【0047】
・平面視において、隣接する孔部23同士が繋がる部分が設けられていてもよい。
・枠壁部25のアスペクト比は、0.3以上10以下の範囲外であってもよい。また、変形層20は、枠壁部25が省略された形状であってもよい。
【0048】
・上記実施形態における変形層20の構成は、静電容量型感圧センサへの適用に限定されるものではなく、外部から印加される荷重により第1電極層31と第2電極層32との間の距離が変化することに基づいて荷重を検出する感圧センサの全般に適用できる。例えば、導電エラストマーなどの導電材料によって変形層20が構成されており、第1電極層31と第2電極層32との間の抵抗値に基づいて荷重を導出する感圧センサに適用してもよい。
【実施例0049】
<試験1>
(試験例1~5)
変形層の第1主面及び第2主面の全面に、銀電極を成膜した厚さ125μmのPETフィルムにより構成される電極層を、両面テープを用いて接合することにより試験例1~5の試験サンプルを作製した。変形層には、架橋されたポリロタキサンにより構成されるヤング率3MPaのシート材を用いた。変形層の形状は、図4に示すように、平面視において、縦30mm×横30mmの矩形状であり、縦3×横3に配置された9個の正方形状の孔部と、縦横に格子状の延びる一定幅の隔壁部及び枠壁部を有する形状とした。各試験サンプルは、下記の表1に示すように、変形層における隔壁部の幅(w)及び高さ(t)の寸法がそれぞれ異なっている。各試験サンプルの変形層の第1主面における孔部の占有比率は全て50%とした。なお、枠壁部の厚さ及び幅は、隔壁部と同じ寸法とした。
【0050】
(荷重-変形特性の評価)
試験例1~5の測定サンプルを一軸プレス機にセットし、測定サンプルの積層方向に、0~2773kPaの範囲の荷重を印加し、各荷重の印加時における変形層の厚さを計測した。変形層の厚さの計測値に基づいて、変形層の変形量(=「印加前の変形層の厚さ」-「印加前の変形層の厚さ」)、及び最大荷重である2773kPaの荷重を印加したときの変形層の変形量を1とする変形率を算出した。そして、図7に示すように、印加荷重と算出された変形率との関係を示すグラフを作成するとともに、印加荷重の変化に対する変形層の変化率の変化曲線について、その非直線度を算出した。その結果を表1に示す。
【0051】
また、変形層の厚さが荷重印加前の50%の厚さとなる荷重が印加されたときの非直線度である50%変形時の非直線度を算出した。その結果を50%変形時の荷重と併せて表1に示す。なお、非直線度は、印加荷重の変化に対する変形層の変化率の変化曲線の直線からのずれの大きさを意味する値である。そして、表1に示す測定範囲全体の非直線度は、印加荷重が0~2773kPaの範囲における上記変化曲線の直線からのずれから得られる値である。また、表1に示す50%変形時の非直線度は、変形層の厚さが荷重印加前の50%の厚さとなるまでの印加荷重の範囲における上記変化曲線の直線からのずれから得られる値である。
【0052】
【表1】
表1及び図7(a)~(e)に示すように、変形層の隔壁部のアスペクト比が0.3以上10以下である試験例1~3は、アスペクト比が0.2である試験例4と比較して測定範囲全体の非直線度が小さい。試験例1~3の上記変化曲線は、試験例4の上記変化曲線と比較して、直線からのずれの大きさが半分以下になっている。
【0053】
一方、変形層の隔壁部のアスペクト比が12である試験例5は、計測途中において、300kPa程度の荷重の印加により隔壁部が座屈してしまった。そのため、本試験では、試験例5の非直線度を測定不能と評価した。これらの結果から、変形層の隔壁部のアスペクト比を0.3以上10以下とすることにより、印加荷重に応じて変化する変形層の厚さと印加荷重との相関関係を示す変化曲線の線形性が向上することが分かる。
【0054】
また、50%変形時の非直線度についても、変形層の隔壁部のアスペクト比が0.3以上10以下である試験例1~3は、アスペクト比が0.2である試験例4と比較して、1/3以下に小さくなっている。この結果は、荷重を印加した際に変形層が厚さ方向に変化できる範囲内において、構造的な抵抗の変動が少ない範囲が広くなり、上記相関関係が線形となる範囲が広くなっていることを示唆する。
【0055】
<試験2>
(試験例6~7)
上記試験1と同様にして、試験例6~7の試験サンプルを作製した。試験例6~7の試験サンプルは、表2に示すように、変形層の隔壁部の幅(w)及び高さ(t)の寸法を調整することにより、変形層の隔壁部のアスペクト比を0.5で固定し、変形層の第1主面における孔部の占有比率を変化させている。
【0056】
【表2】
(荷重-変形特性の評価)
試験例6~7の測定サンプルを一軸プレス機にセットし、測定サンプルの積層方向に、0~2773kPaの範囲の荷重を印加し、各荷重の印加時における変形層の厚さを計測した。試験例1と同様にして、図8に示すように、印加荷重と算出された変形率との関係を示すグラフを作成した。
【0057】
図7(b)及び図8(a),(b)に示すように、試験例2,6,7は、印加荷重に応じて変化する変形層の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が同程度であった。この結果から、変形層の隔壁部のアスペクト比を0.3以上10以下とすることによる上記線形性を向上させる効果は、孔部の占有比率に大きく影響されないことが分かる。
【0058】
<試験3>
(試験例8~9)
架橋されたポリロタキサンにより構成されるヤング率3MPaのシート材からなる変形層の第1主面及び第2主面の全面に、銀電極を成膜した厚さ125μmのPETフィルムにより構成される電極層を接合することにより試験例8~9の試験サンプルを作製した。
【0059】
試験例8の変形層の形状は、平面視において、縦30mm×横30mmの矩形状であり、縦4×横4に配置された16個の正方形状の孔部と、縦横に格子状の延びる一定幅の隔壁部を有する形状とした。試験例9の変形層の形状は、平面視において、縦30mm×横30mmの矩形状であり、縦5×横5に配置された25個の正方形状の孔部と、縦横に格子状の延びる一定幅の隔壁部を有する形状とした。試験例8~9の試験サンプルは、表3に示すように、変形層の隔壁部の幅(w)及び高さ(t)の寸法を調整することにより、変形層の隔壁部のアスペクト比を0.5で固定するとともに、変形層の第1主面における孔部の占有比率を50%で固定している。なお、枠壁部の厚さ及び幅は、隔壁部と同じ寸法とした。
【0060】
【表3】
(荷重-変形特性の評価)
試験例8~9の測定サンプルを一軸プレス機にセットし、測定サンプルの積層方向に、0~2773kPaの範囲の荷重を印加し、各荷重の印加時における変形層の厚さを計測した。試験例1と同様にして、図9に示すように、印加荷重と算出された変形率との関係を示すグラフを作成した。
【0061】
図7(b)及び図9(a),(b)に示すように、試験例2,8,9は、印加荷重に応じて変化する変形層の厚さと印加荷重との相関関係の線形性が同程度であった。この結果から、変形層の隔壁部のアスペクト比を0.3以上10以下とすることによる上記線形性を向上させる効果は、孔部の配置及び形状に大きく影響されないことが分かる。
【符号の説明】
【0062】
10…感圧センサ
20…変形層
21…第1主面
22…第2主面
23…孔部
24…隔壁部
25…枠壁部
31…第1電極層
32…第2電極層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
(荷重-変形特性の評価)
試験例1~5の測定サンプルを一軸プレス機にセットし、測定サンプルの積層方向に、0~2773kPaの範囲の荷重を印加し、各荷重の印加時における変形層の厚さを計測した。変形層の厚さの計測値に基づいて、変形層の変形量(=「印加前の変形層の厚さ」-「印加の変形層の厚さ」)、及び最大荷重である2773kPaの荷重を印加したときの変形層の変形量を1とする変形率を算出した。そして、図7に示すように、印加荷重と算出された変形率との関係を示すグラフを作成するとともに、印加荷重の変化に対する変形層の変化率の変化曲線について、その非直線度を算出した。その結果を表1に示す。