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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189040
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/16 20060101AFI20221215BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20221215BHJP
   F16K 31/08 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
H01F7/16 Z
H01F7/06 F
H01F7/16 D
F16K31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097376
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】原 昌之
(72)【発明者】
【氏名】古野 貴広
(72)【発明者】
【氏名】松井 健志
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA26
3H106EE34
5E048AC05
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】磁石が減磁されず、さらにコイルを小型化することができるアクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明にかかるアクチュエータ100は、可動鉄心102と、可動鉄心を初期位置に付勢するリターンスプリング110と、可動鉄心を吸引して移動させる第1コイル116と、1つの固定鉄心120と、可動鉄心に形成され両端の安定位置において固定鉄心と対向する第1吸着部132および第2吸着部134と、固定鉄心を介して第1吸着部を通る磁路Raまたは第2吸着部を通る磁路Reを形成する磁石122と、第1吸着部または第2吸着部を通る磁路と一部重複する磁路Rcを形成する第2コイル118と、を備え、第2コイルに電流を流すことによって、磁石による磁路を、第1吸着部および第2吸着部を通らずに固定鉄心を通って磁石に戻る磁路Rbに切り替えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動鉄心と、
前記可動鉄心を初期位置に付勢するリターンスプリングと、
前記可動鉄心を吸引して移動させる第1コイルと、
1つの固定鉄心と、
前記可動鉄心に形成され両端の安定位置において前記固定鉄心と対向する第1吸着部および第2吸着部と、
前記固定鉄心を介して前記第1吸着部または第2吸着部を通る磁路を形成する磁石と、
前記第1吸着部または第2吸着部を通る磁路と一部重複する磁路を形成する第2コイルと、を備え、
前記第2コイルに電流を流すことによって、前記磁石による磁路を、前記第1吸着部および第2吸着部を通らずに前記固定鉄心を通って前記磁石に戻る磁路に切り替えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
当該アクチュエータはさらに、前記第1吸着部または第2吸着部を通る磁路と前記第2コイルが生成する磁路とが重複する位置に形成され、磁路の断面を縮小する絞り部を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記当該アクチュエータはさらに、前記可動鉄心に第1クリアランスを介して配置され該可動鉄心の移動を案内するとともに、前記可動鉄心を通る磁路を形成するガイドを備え、
前記磁石から出て前記可動鉄心を通らずに前記固定鉄心を通って前記磁石に戻る磁路のうち、前記可動鉄心を通る磁路と重複しない位置には、前記第1クリアランスより広い第2クリアランスが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石(永久磁石)を有するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一例としてコイルと可動鉄心を用いたアクチュエータでは、コイルを励磁すると、可動鉄心が吸引されて一方の安定位置から他方の安定位置に移動可能となっている(例えば特許文献1)。特許文献1には、永久磁石を有する可動鉄心と、2つの固定鉄心と、2つの電気コイルと、磁束容器とを備え、可動鉄心が第1および第2の安定位置間で移動可能であるアクチュエータが記載されている。
【0003】
2つの電気コイルは、2つの固定鉄心の周りに設けられていて、移動方向に沿って可動鉄心の対向する側部に配置されている。磁束容器は、可動鉄心および2つの電気コイルを実質的に取り囲んでいて、そこから発生する磁束を保持し、その内部を外部の磁束から保護している。
【0004】
特許文献1のアクチュエータでは、各安定位置において、永久磁石によって生成された磁束は、磁束容器を含む磁気回路経路(磁路)を回って延在し、可動鉄心をその安定位置に保持し、さらに2つの電気コイルにそれぞれ電流を流すことにより、可動鉄心を一方の安定位置から他方の安定位置に移動させる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012-511823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のアクチュエータは、永久磁石を有する可動鉄心の両側に、電気コイルが設けられた2つの固定鉄心をそれぞれ配置し、非通電で可動鉄心を2つの安定位置に保持している。しかし可動鉄心を一方の安定位置から他方の安定位置に移動させるとき、電気コイルに発生した磁束が永久磁石内を通るため、永久磁石のパーミアンス係数が悪化して、永久磁石が減磁し易くなってしまう。
【0007】
また、このアクチュエータでは、可動鉄心を移動させるとき、永久磁石の磁力をキャンセルする逆磁界を電気コイルによって発生させるため、大型の電気コイルが2つも必要となる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、磁石が減磁されず、さらにコイルを小型化することができるアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるアクチュエータの代表的な構成は、可動鉄心と、可動鉄心を初期位置に付勢するリターンスプリングと、可動鉄心を吸引して移動させる第1コイルと、1つの固定鉄心と、可動鉄心に形成され両端の安定位置において固定鉄心と対向する第1吸着部および第2吸着部と、固定鉄心を介して第1吸着部または第2吸着部を通る磁路を形成する磁石と、第1吸着部または第2吸着部を通る磁路と一部重複する磁路を形成する第2コイルと、を備え、第2コイルに電流を流すことによって、磁石による磁路を、第1吸着部および第2吸着部を通らずに固定鉄心を通って磁石に戻る磁路に切り替えることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、可動鉄心には、その両端の安定位置において固定鉄心と対向する第1吸着部および第2吸着部が形成されている。このため、可動鉄心が両端の安定位置に位置しているとき、磁石からの磁束は、固定鉄心を通ってさらに第1吸着部または第2吸着部を通り磁石に戻るという大回りの磁路を形成する。この磁石による大回りの磁路の磁束によって、可動鉄心は、両端の安定位置に吸着保持される。
【0011】
ここで第2コイルが形成する磁路は、第1吸着部または第2吸着部を通る大回りの磁路と一部重複する。このため、第2コイルが磁路を形成すると、これらの重複(共通)する経路が磁気飽和することにより、磁石による大回りの磁束は、共通する経路を通り難くなる。このため上記構成では、第2コイルに電流を流すと、磁石による大回りの磁路を、第1吸着部および第2吸着部を通らずに固定鉄心を通って磁石に戻る小回りの磁路に切り替える磁路切替を行うことができる。これにより、可動鉄心の安定位置での磁石による吸着保持が解除される。またこのとき、第2コイルが形成する磁路は、磁路切替後の磁石による小回りの磁路とは別の経路をとり、磁石を通らない。このため、磁石に逆磁界がかからないので、磁石は減磁することがない。
【0012】
また上記構成では、第2コイルに電流が流れて磁石による可動鉄心の吸着保持が解除された状態において、可動鉄心は、第1コイルに通電していないとき、リターンスプリングの付勢力によって一方の安定位置(初期位置)に移動し、第1コイルに通電することで生じる吸引力によって他方の安定位置に移動する。つまり、第2コイルは、磁石による可動鉄心の吸着保持を解除する機能を有しているだけでよいため、小型化することができる。さらに固定鉄心は1つだけ配置すればよいため、構造を簡素化することもできる。なお第1コイルは、リターンスプリングの付勢力に抗して可動鉄心を移動させる吸引力を発生させる必要があるため、第2コイルよりは大型となる。
【0013】
上記のアクチュエータはさらに、第1吸着部または第2吸着部を通る磁路と第2コイルが生成する磁路とが重複する位置に形成され、磁路の断面を縮小する絞り部を備えるとよい。
【0014】
これにより、第1吸着部または第2吸着部を通る磁石による大回りの磁路と第2コイルが生成する磁路とが重複する位置では、絞り部によって磁路の断面が縮小されるため、磁気飽和が生じやすくなる。その結果、第1吸着部または第2吸着部を通る磁石による大回りの磁路を、第1吸着部および第2吸着部を通らずに固定鉄心を通って磁石に戻る小回りの磁路に切り替えやすくなる。
【0015】
上記のアクチュエータはさらに、可動鉄心に第1クリアランスを介して配置され可動鉄心の移動を案内するとともに、可動鉄心を通る磁路を形成するガイドを備え、磁石から出て可動鉄心を通らずに固定鉄心を通って磁石に戻る磁路のうち、可動鉄心を通る磁路と重複しない位置には、第1クリアランスより広い第2クリアランスが形成されているとよい。
【0016】
このように、可動鉄心を通らない小回りの磁路のうち、可動鉄心を通る大回りの磁路と重複しない位置に形成された第2クリアランスは、可動鉄心を通る大回りの磁路を形成するガイドと可動鉄心との間に形成された第1クリアランスよりも広くなっている。これにより、第2コイルに電流を流さないときは、可動鉄心を通らない小回りの磁路が形成され難くなり、その一方で可動鉄心を通る大回りの磁路が形成されやすくなる。そして、第2コイルに電流が流れて磁気飽和が生じると、可動鉄心を通る大回りの磁路を、可動鉄心を通らない小回りの磁路に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、磁石が減磁されず、さらにコイルを小型化することができるアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態におけるアクチュエータの全体構成図である。
図2図1のアクチュエータにおいて磁路切替を行った様子を示す図である。
図3図2のアクチュエータにおいて第1コイルを励磁した状態を説明する図である。
図4図3のアクチュエータにおいて磁路切替を行った様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態におけるアクチュエータ100の全体構成図である。図1(a)は、アクチュエータ100の可動鉄心102が一方の安定位置(初期位置:図示左側)に位置している状態を示す全体図である。可動鉄心102は、図1(a)に示す初期位置において、その一端部104が突出している状態となる。図1(b)は、図1(a)のアクチュエータ100の要部を示す図である。
【0021】
アクチュエータ100は、可動鉄心102と、筒状のボディ106と、ボディ106の端部107に取り付けられたスリーブ108と、リターンスプリング110とを備える。可動鉄心102は、ボディ106の内側に摺動可能に支持されている。リターンスプリング110は、図1(a)に示すようにスリーブ108と可動鉄心102の他端部112との間に配置され、可動鉄心102を初期位置に付勢力Faで付勢している。
【0022】
アクチュエータ100はさらに、ガイド114と、第1コイル116と、第2コイル118と、1つの固定鉄心120と、永久磁石(磁石122)とを備える。ガイド114は、可動鉄心102に図1(b)に示す第1クリアランスC1を介して配置され、可動鉄心102の移動を案内する。
【0023】
第1コイル116は、励磁されることで吸引力Fb(図3(a)参照)を生じ、この吸引力Fbによって可動鉄心102を吸引することにより、可動鉄心102を初期位置から他方の安定位置(図示右側)に移動させる。第1コイル116は、図1(a)に示すように、ガイド114の外側に配置されていて、さらに例えば樹脂製のボビン124に巻線が巻回されて形成されている。
【0024】
第2コイル118は、図1(b)に示すように、ガイド114の外側に配置されていて、ボビン126に巻線が巻回されて形成されている。また図1(a)に示すように、ボビン124、126の間には軟磁性の第1プレート128が配置されている。固定鉄心120は、可動鉄心102の一端部104の外側に配置されている。さらに、第2コイル118のボビン126と固定鉄心120の間には、第2プレート130が配置されている。
【0025】
また可動鉄心102の一端部104は、図1(a)に示す第1吸着部132および第2吸着部134を有する。第1吸着部132は、初期位置において図1(b)に示すように固定鉄心120の第1側部136と対向する位置に形成されている。第2吸着部134は、他方の安定位置において(図3(b)参照)、固定鉄心120の第2側部138と対向する位置に形成されている。
【0026】
磁石122は、図1(b)に示すように固定鉄心120の第2側部138に対向するように配置され、さらにマグネットホルダ140によって支持されている。マグネットホルダ140は軟磁性であって、磁石122を保持するとともに、固定鉄心120に第2クリアランスC2を介して配置されて固定鉄心120の近傍を通り、さらに第2プレート130に第3クリアランスC3を介して配置されている。マグネットホルダ140はさらに、第2プレート130の近傍を通って、第2コイル118およびボビン126の外側に位置しボディ106まで延びている。またマグネットホルダ140は、絞り部142を有する。
【0027】
以下、アクチュエータ100の動作を説明する。まず、アクチュエータ100は、図1(a)に示す初期位置において、リターンスプリング110の付勢力Faにより可動鉄心102が付勢され、図1(b)に示すように可動鉄心102の第1吸着部132が固定鉄心120の第1側部136に対向して当接している。
【0028】
これによりアクチュエータ100では、磁石122からの磁束が大回りの磁路Raを形成する。磁路Raは、図1(b)に示すように磁石122からの磁束が固定鉄心120を通って、第1側部136から可動鉄心102の第1吸着部132を通り、さらに第1クリアランスC1を介してガイド114を通って、続いて第1プレート128およびマグネットホルダ140の絞り部142を通って磁石122に戻るという大回りの経路をとる。このため、アクチュエータ100では、この磁石122による第1吸着部132を通る大回りの磁路Raの磁束によって、可動鉄心102が一方の安定位置すなわち初期位置に吸着保持される。
【0029】
つぎに、可動鉄心102を初期位置から他方の安定位置に移動させる場合の動作について説明する。この場合、まずアクチュエータ100では、詳細は後述するが、第2コイル118に電流を流すことにより、磁石112による大回りの磁路Ra(図1参照)を小回りの磁路Rb(図2参照)に切り替える磁路切替を行う。
【0030】
図2は、図1のアクチュエータ100において磁路切替を行った様子を示す図である。図2(a)は、磁路切替を行った状態のアクチュエータ100の全体図である。図2(b)は、図2(a)のアクチュエータ100の要部を示す図である。
【0031】
アクチュエータ100は、第2コイル118に電流を流すことにより、磁路Rcを形成する。磁路Rcは、図2(b)に示すようにガイド114を通って、第1プレート128およびマグネットホルダ140の絞り部142を通り、さらに第3クリアランスC3(図1(b)参照)を介して第2プレート130を通って、ガイド114に戻るという経路をとる。
【0032】
ここで図1(b)の磁石112による大回りの磁路Raと、図2(b)の第2コイル118に電流を流すことで形成される磁路Rcとを比較すると、磁路Ra、Rcは、第1プレート128からマグネットホルダ140の絞り部142に至る経路が重複(共通)している。さらに、この共通する経路では、マグネットホルダ140の絞り部142が形成された位置で、絞り部142によって磁路の断面が縮小されている。このため、共通する経路が磁気飽和を生じやすくなり、磁石112による大回りの磁束Raは、共通する経路を通り難くなる。
【0033】
これによりアクチュエータ100では、第2コイル118に電流を流すと、磁石122による大回りの磁路Raを、可動鉄心102を通らずに固定鉄心120を通り、第2クリアランスC2(図1(b)参照)を介してマグネットホルダ140を通って、磁石122に戻る小回りの磁路Rbに切り替える磁路切替を行うことができる。
【0034】
またアクチュエータ100では、磁石122による小回りの磁路Rbが、可動鉄心102の第1吸着部132を通らず固定鉄心120を通って磁石122に戻るため、可動鉄心102の初期位置での磁石122による吸着保持を解除することができる。さらに、第2コイル118が形成する磁路Rcは、図2(b)に示すように磁路切替後の磁石122による小回りの磁路Rbとは別の経路をとり、磁石122を通らない。したがって磁石122に逆磁界がかからないので、磁石122は減磁することがない。
【0035】
図3は、図2のアクチュエータ100において第1コイル116を励磁した状態を説明する図である。図3(a)は、磁路切替後に第1コイル116を励磁したアクチュエータ100の全体図である。図3(b)は、図3(a)のアクチュエータ100の要部を示す図である。
【0036】
図2に示すアクチュエータ100では、第2コイル118を通電して磁路Rcを形成することで、磁石112による大回りの磁路Ra(図1参照)を小回りの磁路Rbに切り替えて、磁石122による可動鉄心102の吸着保持を解除している。続いて図3示すアクチュエータ100は、可動鉄心102の吸着保持が解除された状態において、第1コイル116を通電して励磁することで、図3(a)に示す磁路Rdを形成する。
【0037】
第1コイル116が励磁されて磁路Rdが形成されると、吸引力Fbが生じる。そしてアクチュエータ100では、可動鉄心102が吸引力Fbによって吸引されて、リターンスプリング110の付勢力Faに抗して移動し、図3(b)に示すように可動鉄心102の第2吸着部134が固定鉄心120の第2側部138に対向して当接する。これにより、可動鉄心102は、初期位置から他方の安定位置まで移動することができる。
【0038】
図4は、図3のアクチュエータ100において磁路切替を行った様子を示す図である。図4(a)は、可動鉄心100が他方の安定位置まで移動した後に磁路切替を行った状態のアクチュエータ100の全体図である。図4(b)は、図4(a)のアクチュエータ100の要部を示す図である。
【0039】
図4(a)に示すアクチュエータ100では、可動鉄心100が他方の安定位置まで移動した後に第2コイル118を非励磁の状態とすることで、第2コイル118の磁束が消失して磁気飽和が解消されて、磁石112の磁束が小回りの磁路Rb(図3参照)から磁路Reに切り替わる。
【0040】
磁路Reは、図4(b)に示すように磁石122からの磁束が固定鉄心120を通って、固定鉄心の第2側部138から可動鉄心102の第2吸着部134を通り、さらに可動鉄心102から第1クリアランスC1を介してガイド114を通って、続いて第1プレート128およびマグネットホルダ140の絞り部142を通って磁石122に戻るという大回りの経路をとる。
【0041】
このため、アクチュエータ100では、この磁石122による第2吸着部134を通る大回りの磁路Reの磁束によって、可動鉄心102が他方の安定位置に吸着保持される。これにより、その後、第1コイル116を非励磁の状態とし、第1コイル116の磁束を消失させて、磁路Rdに伴う吸引力Fb(図3(a)参照)が生じなくても、可動鉄心102は他方の安定位置に維持された状態となる。
【0042】
つまりアクチュエータ100において、可動鉄心102を初期位置から他方の安定位置に移動させる場合、第2コイル118は、磁石122による可動鉄心102の吸着保持を解除する機能を有しているだけでよいため、小型化することができる。さらにアクチュエータ100では、固定鉄心120を1つだけ配置すればよいため、構造を簡素化することもできる。ただし第1コイル116は、リターンスプリング110の付勢力Faに抗して可動鉄心102を移動させる吸引力Fbを発生させる必要があるため、第2コイル118よりは大型となる。
【0043】
なお可動鉄心102を他方の安定位置から初期位置に移動させる場合には、第2コイル118に電流を流すことにより、磁石112による大回りの磁路Reを小回りの磁路Rbに切り替える磁路切替を行えばよい。これにより、可動鉄心102の他方の安定位置での磁石122による吸着保持が解除されて、可動鉄心120は、リターンスプリング110の付勢力Faにより初期位置まで移動することができる。そして図1に示すように、アクチュエータ100では、磁石122による大回りの磁路Raの磁束によって、可動鉄心102が初期位置に吸着保持される。
【0044】
またアクチュエータ100において、図1(b)に示す可動鉄心102とガイド114の間の第1クリアランスC1と、固定鉄心120とマグネットホルダ140の間の第2クリアランスC2と、第2プレート130とマグネットホルダ140の間の第3クリアランスC3とを比べると、第1クリアランスC1が最も狭く、第2クリアランスC2が最も広く形成されている。
【0045】
ここで第2クリアランスC2は、磁石122による可動鉄心102を通らない小回りの磁路Rb(図2および図3参照)のうち、可動鉄心102を通る大回りの磁路Ra(図1参照)および磁路Re(図4参照)と重複しない位置に形成されている。そして第2クリアランスC2は、可動鉄心102を通る大回りの磁路Ra、Reを形成するガイド114と可動鉄心102の間に形成された第1クリアランスC1よりも広くなっている。なお第3クリアランスC3も、第1クリアランスC1より広くなっている。
【0046】
これにより、第2コイル118に電流を流さないときは、可動鉄心102を通らない小回りの磁路Rbが形成され難くなり、その一方で可動鉄心102を通る大回りの磁路Ra、Reが形成されやすくなる。したがってアクチュエータ100では、第2コイル118に電流が流れて磁気飽和が生じると、可動鉄心102を通る大回りの磁路Ra、Reを、可動鉄心102を通らない小回りの磁路Rbに確実に切り替えることができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、磁石(永久磁石)を有するアクチュエータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100…アクチュエータ、102…可動鉄心、104…可動鉄心の一端部、106…ボディ、107…ボディの端部、108…スリーブ、110…リターンスプリング、112…可動鉄心の他端部、114…ガイド、116…第1コイル、118…第2コイル、120…固定鉄心、122…磁石、124、126…ボビン、128…第1プレート、130…第2プレート、132…第1吸着部、134…第2吸着部、136…固定鉄心の第1側部、138…固定鉄心の第2側部、140…マグネットホルダ、142…絞り部、Fa…付勢力、Fb…吸引力、Ra、Rb、Rc、Rd、Re…磁路、C1…第1クリアランス、C2…第2クリアランス、C3…第3クリアランス
図1
図2
図3
図4