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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189043
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】防波扉
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20221215BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20221215BHJP
   E06B 7/16 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E02B7/20 102
E06B7/22 B
E06B7/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097380
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】宇多 慎治
【テーマコード(参考)】
2D019
2E036
【Fターム(参考)】
2D019AA21
2E036AA01
2E036DA02
2E036FA05
2E036HB02
(57)【要約】
【課題】扉本体の開閉動作に起因する弾性部材の劣化を防止するとともに、より高い止水性を確保できる防波扉を提供すること。
【解決手段】防波扉1は、防波壁80の開口部90の底面91との隙間を空けて開口部90を閉鎖する閉鎖状態と開口部90を開放する開放状態に移行可能な扉本体10と、扉本体10に取り付けられ、閉鎖状態で開口部90の底面91と離間している弾性部材61と、閉鎖状態で開口部90の底面91と弾性部材61との間に位置し、内部に流体が供給されることで開口部90の底面91と弾性部材61に接触するように膨張する膨張部材62と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防波壁の開口部の底面との隙間を空けて前記開口部を閉鎖する閉鎖状態と前記開口部を開放する開放状態に移行可能な扉本体と、
前記扉本体に取り付けられ、前記閉鎖状態で前記開口部の底面と離間している弾性部材と、
前記閉鎖状態で前記開口部の底面と前記弾性部材との間に位置し、内部に流体が供給されることで前記開口部の底面と前記弾性部材に接触するように膨張する膨張部材と、を備える防波扉。
【請求項2】
前記開口部の底面に形成され、前記閉鎖状態で前記弾性部材と対向する位置に膨張していない状態の前記膨張部材を収容可能な溝部を更に備え、
前記膨張部材は前記溝部に配置される請求項1に記載の防波扉。
【請求項3】
前記膨張部材は、前記弾性部材に取り付けられる請求項1に記載の防波扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防波扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性部材を用いて開口部の底面と扉本体の間の隙間を塞ぐ技術が知られている。この種の技術が記載されているものとして例えば特許文献1~3がある。特許文献1、2には、開口部の閉鎖時に弾性部材を開口部の底面に接触させ、扉本体を開閉する場合に弾性部材を開口部の底面から離間させる技術が記載されている。特許文献3には、開口部を閉鎖時に弾性部材を床面から突出させ、扉本体を開放する場合に弾性部材を床面に収容する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-282445号公報
【特許文献2】特開2014-173375号公報
【特許文献3】特開2014-173374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、海に面して設けられ、防波壁を備える発電所等の設備では、通常時は防波壁の開口部が防波扉によって閉鎖され、車や人が海側から施設に出入りする度に開口部が開放される。例えば、扉本体に取り付けられた弾性部材と開口部の底面を密着させることで止水性を高めることができるが、弾性部材を開口部の底面に接触させた状態で扉本体を開閉すると弾性部材が摩耗してしまう。この点、特許文献1~3の技術では、扉本体の開閉時に弾性部材を開口部の底面から離間させることにより弾性部材の劣化を防止できるものの、開口部の底面と扉本体の間の隙間の止水性を向上させるという点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、扉本体の開閉動作に起因する弾性部材の劣化を防止するとともに、より高い止水性を確保できる防波扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、防波壁の開口部の底面との隙間を空けて前記開口部を閉鎖する閉鎖状態と前記開口部を開放する開放状態に移行可能な扉本体と、前記扉本体に取り付けられ、前記閉鎖状態で前記開口部の底面と離間している弾性部材と、前記閉鎖状態で前記開口部の底面と前記弾性部材との間に位置し、内部に流体が供給されることで前記開口部の底面と前記弾性部材に接触するように膨張する膨張部材と、を備える防波扉に関する。
【0007】
前記開口部の底面に形成され、前記閉鎖状態で前記弾性部材と対向する位置に膨張していない状態の前記膨張部材を収容可能な溝部を更に備え、前記膨張部材は前記溝部に配置される。
【0008】
前記膨張部材は、前記弾性部材に取り付けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、扉本体の開閉動作に起因する弾性部材の劣化を防止するとともに、より高い止水性を確保できる防波扉を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る防波扉の扉本体が閉鎖状態である場合の防波扉を海側から見た正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る防波扉の扉体体が開放状態である場合の防波扉を海側から見た正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る防波扉の扉本体が閉鎖状態である防波扉を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る防波扉の扉本体が閉鎖状態である場合の防波扉の縦断面図である。
図5A図3における左側弾性部材及びその近傍を示す拡大平面図である。
図5B図3における右側弾性部材及びその近傍を示す拡大平面図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る防波扉の膨張部材が膨張していない状態の底部止水機構及びその近傍を示す縦断面図である。
図6B】閉鎖状態における本発明の一実施形態に係る防波扉の底部止水機構及びその近傍を示す縦断面図である。
図7A】本発明の変形例に係る底部止水機構の膨張部材が膨張していない状態の底部止水機構及びその近傍を示す縦断面図である。
図7B】閉鎖状態における本発明の変形例に係る底部止水機構及びその近傍を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明の一実施形態に係る防波扉1について説明する。図1は扉本体が閉鎖状態である防波扉1を海側から見た正面図、図2は扉本体10が開放状態である防波扉1を海側から見た正面図、図3は扉本体10が閉鎖状態である防波扉1を示す平面図、図4図3における防波扉1のA-A線縦断面図である。
【0013】
本実施形態に係る防波扉1は、地面から立設する防波壁80の開口部90の開閉機能と止水機能を備える設備である。本実施形態では、海の近傍の発電所(図示省略)において海岸に沿って設けられる防波壁80用の防波扉1を例に説明する。
【0014】
防波壁80に設けられた開口部90は、陸側の発電所内と発電所の海側の外部を人や車が出入りするための通路として利用される。図2に示すように、開口部90は、防波壁80の第1防波壁81と第2防波壁82の間に形成される。
【0015】
次に、防波扉1の構成について説明する。防波扉1は、扉本体10と、扉本体10の下方に設けられる下側ガイド部20と、上側ガイド部30と、駆動装置40と、側部止水機構50と、底部止水機構60を備える。
【0016】
扉本体10は、左右方向Xに長い略直方体形状であり、開口部90を開閉する扉である。扉本体10は、第1防波壁81と第2防波壁82の間を左右方向Xにスライド移動することにより、下側ガイド部20との隙間を空けて開口部90を閉鎖する閉鎖状態と開口部90を開放する開放状態に移行する。
【0017】
図1及び図3に示すように閉鎖状態において扉本体10は、開口部90を閉鎖するとともに、その長手方向の一側(図1図3では右側)の端部が正面視で第2防波壁82に重なる位置に配置される。図2に示すように開放状態において扉本体10は、第1防波壁81の海側の面に形成される戸袋811に収容される。
【0018】
図2に示すように、扉本体10の底面11には複数の車輪71が取り付けられ、扉本体10の上面12には複数のローラ72が取り付けられる。複数のローラ72は、扉本体10の長手方向に互いに間隔を空けて並列に配置される。また、図3に示すように、扉本体10の陸側の面(以下、陸側面13)には、支圧板73が取り付けられる。さらに、扉本体10の海側の面(以下、海側面14)には、底部止水機構60の後述する弾性部材61が取り付けられる。
【0019】
下側ガイド部20は、扉本体10のスライド移動をガイドする。下側ガイド部20は、図1及び図2に示すように、第1防波壁81の戸袋811の下方から第2防波壁82の開口部90側の端部に亘って布設される。即ち、開口部90の底面91は、第1防波壁81の開口部90側の端部の下方から第2防波壁82の開口部90側の端部の下方に位置する下側ガイド部20によって形成される。
【0020】
図4に示すように、下側ガイド部20には、車輪71が配置される2本の下側レール部21が形成される。具体的には、2本の下側レール部21のそれぞれは、下側ガイド部20の左右方向Xの一側の端部から他側の端部に亘って互いに平行に延びる。
【0021】
また、下側ガイド部20には、左右方向Xに延びる溝部22が形成される。具体的には、溝部22は閉鎖状態において扉本体10の長手方向の一側の端部の下方から長手方向の他側(図1図3では左側)の端部の下方に延びる。具体的には、図4に示すように溝部22は、扉本体10が閉鎖状態である場合の後述する弾性部材61と対向する位置に形成される。また、溝部22は、後述する膨張していない状態の膨張部材62が収容可能に形成される。
【0022】
上側ガイド部30は、第1防波壁81の上面に配置され、扉本体10をスライド移動可能に支持する。上側ガイド部30は、1本の上側レール部31と複数のレール支持部32を有する。
【0023】
上側レール部31は、戸袋811の上方に配置され、ローラ72と係合可能に形成される。上側レール部31は、左右方向Xに延び、扉本体10が開放状態の場合にローラ72に対応する位置に形成される。
【0024】
レール支持部32は、上側レール部31を支持する棒状の部材である。複数のレール支持部32は、第1防波壁81の上面に間隔を空けて並列に配置される。具体的には、複数のレール支持部32のそれぞれは、その一端側が第1防波壁81の上面に固定され、その他端側が海側に延びるように配置される。複数のレール支持部32のそれぞれの他端側の底面には、上側レール部31が固定される。
【0025】
駆動装置40は、モータや内燃機関(図示省略)等を備え、扉本体10を自動で開閉する装置である。駆動装置40は、第1防波壁81の開口部90側の上面に取り付けられる。例えば、駆動装置40は、モータを回転させ、回転させたモータの動力を扉本体10に伝えることで扉本体10を左右方向Xにスライド移動させる。
【0026】
側部止水機構50について図3図5A図5Bを参照しながら説明する。図5A図3に示す領域Bにおける拡大平面図である。図5B図3に示す領域Cにおける拡大平面図である。
【0027】
図3に示すように、側部止水機構50は、扉本体10と防波壁80の隙間を塞ぐ機構である。側部止水機構50は、左側弾性部材51と右側弾性部材52を有する。
【0028】
左側弾性部材51は、板状であり、扉本体10の陸側面13の上部から下部に亘って取り付けられる。具体的には、図5Aに示すように左側弾性部材51は、扉本体10が閉鎖状態の場合に陸側面13の第1防波壁81と対向するように取り付けられ、少なくともその先端部が第1防波壁81に接触する。これにより、閉鎖状態における扉本体10と第1防波壁81の間の隙間が左側弾性部材51によって塞がれる。
【0029】
右側弾性部材52は、板状であり、扉本体10の長手方向の一側(図1及び図2では右側)の端面15の上部から下部に亘って取り付けられる。具体的には、図5Bに示すように右側弾性部材52は、扉本体10が閉鎖状態の場合に端面15の第2防波壁82と対向する位置に取り付けられ、少なくともその先端部が第2防波壁82に接触する。これにより、閉鎖状態における扉本体10と第2防波壁82の間の隙間が右側弾性部材52によって塞がれる。
【0030】
次に、底部止水機構60について説明する。図6Aは弾性部材61が膨張していない状態での図4に示す領域Cにおける拡大縦断面図である。図6Bは閉鎖状態での図4に示す領域Cにおける拡大縦断面図である。
【0031】
底部止水機構60は、開口部90の底面91に設けられる下側ガイド部20と扉本体10の間の隙間からの浸水を防ぐための機構である。底部止水機構60は、弾性部材61と、膨張部材62と、膨張部材62に流体を供給する流体供給装置(図示省略)を有する。
【0032】
弾性部材61は、扉本体10の海側面14の下縁部141に取り付けられ、扉本体10が開閉する方向に下縁部141に沿って延びる。弾性部材61は、断面略L字状であり、基部611と、延出部612から形成される。
【0033】
基部611は、平板状であり、下縁部141に固定される。基部611は、その下端部が扉本体10の底面11よりも下方に位置する。即ち、弾性部材61は、扉本体10から下方に突出するように形成される。延出部612は、平板状であり、基部611の下端部から海側に延出する。
【0034】
図6Bに示すように、弾性部材61は、下側ガイド部20と離間している。即ち、弾性部材61は、閉鎖状態で開口部90の底面91と離間している。閉鎖状態において弾性部材61と対向する位置には、下側ガイド部20の溝部22が形成される。
【0035】
膨張部材62は、袋状であり、内部に流体を供給することで膨張し、内部の流体を排出することで収縮する。膨張部材62は、下側ガイド部20の溝部22と弾性部材61の間に配置される。具体的には、膨張部材62は、溝部22の底面に固定され、図1に示すように閉鎖状態における扉本体10の長手方向の一側の端部の下方から長手方向の他側の端部の下方に亘って配置される。また、図6Aに示すように、膨張部材62は膨張していない状態で溝部22内に収容される。
【0036】
膨張部材62は、流体供給装置からの流体が注入される注入口(図示省略)と、内部の流体を排出する排出口(図示省略)と、排出口を開閉するバルブ(図示省略)を有する。
【0037】
図6Bに示すように、閉鎖状態において膨張部材62は開口部90の底面91と弾性部材61に接触するように膨張する。具体的には、図6Bに示すように、膨張部材62は、溝部22の底面と弾性部材61の延出部612の底面に密着するように膨張する。これにより、扉本体10と開口部90の底面91の間の隙間を弾性部材61と膨張部材62を用いて確実に塞ぐことができる。
【0038】
流体供給装置は、液体や気体等の流体を膨張部材62に供給する装置である。本実施形態では、流体供給装置は流体として水を膨張部材62に供給する。
【0039】
本実施形態に係る流体供給装置は、水を貯めるタンク(図示省略)、タンクの水を汲み上げるポンプ(図示省略)、水を流通可能な管である流体移送ライン(図示省略)等を備える。流体移送ラインは、一端部がポンプに取り付けられ、他端部が膨張部材62の注入口に取り付けられる。ポンプを駆動することで、タンク内の水が流体移送ラインを介して膨張部材62の内部に供給され、膨張部材62が膨張する。
【0040】
次に、防波扉1によって開口部90を開閉する手順の一例について説明する。
【0041】
まず、扉本体10を図2に示す開放状態から図1に示す閉鎖状態に移行させる手順の一例について説明する。
【0042】
操作者は、駆動装置40を操作して扉本体10をその長手方向の一側の端部が正面視で第2防波壁82と重なる位置まで移動させる。このとき、膨張部材62は、膨張していない状態で溝部22に収容されている。また、弾性部材61は下側ガイド部20と離間しているので、扉本体10の移動中に下側ガイド部20との接触による弾性部材61の摩耗は生じない。
【0043】
扉本体10の移動が完了すると、操作者は流体供給装置を操作してポンプの駆動によってタンク内の所定の量の水を膨張部材62に流体移送ラインを介して供給する。この結果、弾性部材61と膨張部材62の間の隙間が埋まり、開口部90が止水される。
【0044】
次に、扉本体10を図1に示す閉鎖状態から図2に示す開放状態に移行させる手順の一例について説明する。
【0045】
操作者は膨張部材62の排出口のバルブを開き、膨張部材62内の水を外部に排出する。この結果、弾性部材61と接触した状態の膨張部材62は、収縮して弾性部材61と離間するとともに溝部22内に収容される。
【0046】
膨張部材62の全体が溝部22内に収容されると、作業者は駆動装置40を操作して扉本体10を左方向にスライド移動させて扉本体10全体を戸袋811に収容する。この結果、図2に示すように開口部90が開放される。このとき、扉本体10の下縁部141に取り付けられた弾性部材61は、膨張部材62や下側ガイド部20と離間しているので、扉本体10の移動中に下側ガイド部20等との接触による弾性部材61の摩耗は生じない。
【0047】
上記実施形態においては、下側ガイド部20と底部止水機構60の構成について次のような変形例を採用することができる。上記説明を援用しつつ、図7A及び図7Bを参照しながら変形例の下側ガイド部20A及び底部止水機構60Aの構成について説明する。図7Aは弾性部材61が膨張していない状態での底部止水機構60A及びその近傍の拡大縦断面図である。図7Bは閉鎖状態での底部止水機構60A及びその近傍の拡大縦断面図である。なお、以下の説明において、下側ガイド部20と底部止水機構60に対応する構成については同一の規則性を有して対応する符号を付す。
【0048】
下側ガイド部20Aは、溝部22が形成されていない点が下側ガイド部20と異なる。下側ガイド部20Aは、表面が略平坦になっている。
【0049】
底部止水機構60Aは、弾性部材61と、膨張部材62Aと、流体供給装置を備える。底部止水機構60Aは、膨張部材62Aの配置が底部止水機構60と異なる。
【0050】
膨張部材62Aは、袋状であり、内部に流体を供給することで膨張し、内部の流体を排出することで収縮する。膨張部材62Aは、下側ガイド部20Aと弾性部材61の間に配置される。具体的には、図7Aに示すように膨張部材62Aは、膨張していない状態で下側ガイド部20Aから離間するように弾性部材61の底面に取り付けられる。膨張部材62Aは、弾性部材61の第1防波壁81側の端部から第2防波壁82側の端部まで弾性部材61に沿って延びるように配置される。
【0051】
膨張部材62Aは、流体供給装置からの流体が注入される注入口(図示省略)と、内部の流体を排出する排出口(図示省略)と、排出口を開閉するバルブ(図示省略)を有する。
【0052】
図7Bに示すように、閉鎖状態において膨張部材62Aは開口部90の底面91と弾性部材61に接触するように膨張する。具体的には、図7Bに示すように、膨張部材62Aは下側ガイド部20Aに密着するように膨張する。これにより、扉本体10と下側ガイド部20Aの間の隙間を弾性部材61と膨張部材62Aを用いて確実に塞ぐことができる。
【0053】
以上説明した実施形態に係る防波扉1によれば、以下のような効果を奏する。
【0054】
本実施形態に係る防波扉1は、防波壁80の開口部90の底面91との隙間を空けて開口部90を閉鎖する閉鎖状態と開口部90を開放する開放状態に移行可能な扉本体10と、扉本体10に取り付けられ、閉鎖状態で開口部90の底面91と離間している弾性部材61と、閉鎖状態で開口部90の底面91と弾性部材61との間に位置し、内部に流体が供給されることで開口部90の底面91と弾性部材61に接触するように膨張する膨張部材62と、を備える。
【0055】
これにより、弾性部材61が開口部90の底面91と接しない状態で扉本体10を開閉することができるので、弾性部材61の摩耗を抑制できる。また、閉鎖状態で膨張部材62,62Aの膨張によって開口部90の底面91と弾性部材61の隙間が埋められる。このとき、膨張部材62,62Aの膨張によって弾性部材61と開口部90の底面91に圧力をかけることができるので、開口部90の底面91と弾性部材61と膨張部材62,62Aの密着性を高めることができる。よって、扉本体10の開閉動作に起因する弾性部材61の劣化を防止するとともに、より高い止水性を確保できる。
【0056】
本実施形態に係る防波扉1において、開口部90の底面91に形成され、閉鎖状態で弾性部材61と対向する位置に膨張していない状態の膨張部材62を収容可能な溝部22を更に備え、膨張部材62は溝部22に配置される。
【0057】
これにより、膨張部材62を溝部22に収容することができるので、開放状態において開口部90の底面91を通る人や車との接触を避けることができ、膨張部材62の劣化を防止できる。
【0058】
本実施形態に係る防波扉1において、膨張部材62Aは、弾性部材61に取り付けられる。
【0059】
これにより、膨張部材62Aが弾性部材61を介して扉本体10に取り付けられているので、扉本体10の開閉に伴って膨張部材62Aが移動する。よって、開放状態において開口部90の底面91を通る人や車との接触を避けることができ、膨張部材62Aの劣化を防止できる。
【0060】
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0061】
上記実施形態では、流体供給装置が水を膨張部材62,62Aに供給し、膨張部材62,62Aが供給された水によって膨張する構成であったが、流体供給装置がコンプレッサ等を備え、膨張部材62,62Aに空気を供給し、膨張部材62,62Aが供給された空気によって膨張する構成であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、防波扉1は、扉本体10が左右方向Xにスライド移動することで開口部90を開閉する引き戸式であったが、扉本体10が開口部90の側面に対して弧を描いて開閉する開き戸式であってもよい。
【0063】
上記実施形態では、弾性部材61が断面略L字状であったが、その断面形状は特に限定されない。例えば、断面略円形状であってもよく、断面略多角形状であってもよい。
【0064】
上記実施形態では、弾性部材61が扉本体10の海側面14の下縁部141に取り付けられていたが、扉本体10の底面11に取り付けてもよい。これにより、膨張部材62から弾性部材61により強い圧力をかけることができ、止水性を向上できる。
【0065】
また、例えば、膨張部材62,62Aを、弾性部材61の扉本体10から下方に突出した突出部の周囲を覆うように膨張可能に構成してもよい。これにより、弾性部材61と膨張部材62,62Aの間の密着性をより高めることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 防波扉
10 扉本体
61 弾性部材
62,62A 膨張部材
80 防波壁
90 開口部
91 底面
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B