(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189052
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/04 20060101AFI20221215BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20221215BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20221215BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20221215BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20221215BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60C15/04 B
B60C15/04 E
B60C3/04 Z
B60C15/00 L
B60C9/20 E
B60C9/00 J
B60C9/00 G
B60C9/00 C
B60C9/00 D
B60C9/22 C
B60C9/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097398
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂塚 大
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雅弥
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA37
3D131AA39
3D131AA44
3D131AA45
3D131BA01
3D131BB01
3D131BC05
3D131BC13
3D131BC25
3D131BC31
3D131CA03
3D131DA01
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA44
3D131DA54
3D131DA56
3D131DA57
3D131EA02U
3D131EA08U
3D131HA01
3D131HA14
3D131HA15
3D131HA28
3D131HA32
3D131HA38
3D131HA45
(57)【要約】
【課題】リム外れ効力の向上を達成できる、タイヤ12の提供。
【解決手段】このタイヤ12は、トレッド14と、一対のサイドウォール16と、一対のビード20と、カーカス22と、ベルト28と、バンド30とを備える。タイヤ12の外径の半分と、JIS D4230に記載のL寸法との差は20mm以下である。ビード20は周方向に延びるコア34を備える。コア34の幅方向の曲げ剛性は、7.80×10
6N・mm
2以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッドと、前記トレッドの端に連なり径方向において前記トレッドの内側に位置する一対のサイドウォールと、径方向において前記サイドウォールの内側に位置する一対のビードと、前記トレッド及び前記一対のサイドウォールの内側に位置し、一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すカーカスと、径方向において前記カーカスの外側に位置するベルトと、径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置するバンドとを備える、タイヤであって、
前記タイヤの外径の半分と、JIS D4230に記載のL寸法との差が20mm以下であり、
前記ビードが周方向に延びるコアを備え、
前記コアの幅方向の曲げ剛性が、7.80×106N・mm2以上である、
タイヤ。
【請求項2】
前記コアがスチール製のワイヤを含み、
前記ワイヤが楕円のワイヤ断面を有し、
前記コアの断面において、複数の前記ワイヤ断面が前記コアの幅方向に並ぶ複数のユニットが構成され、複数の前記ユニットが前記コアの高さ方向に並び、
前記ユニットにおいて、前記ワイヤ断面の長軸が前記コアの幅方向を向き、
前記ワイヤ断面の短軸長さの、前記ワイヤ断面の長軸長さに対する比が、0.60以上0.90以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤのうち、前記タイヤが組まれるリムに接触する部位がビード部であり、
前記ビード部の外面が、前記リムのシートに接触するシート面と、前記リムのフランジに接触するフランジ面と、前記シート面と前記フランジ面との間に位置し、曲面からなるヒール面とを備え、
前記タイヤの子午線断面において、前記ヒール面の輪郭が円弧で表され、
前記円弧の半径が6.0mm以上11.0mm以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ベルトが径方向に積層された2枚の層を備え、
それぞれの層が並列した多数のベルトコードを含み、
それぞれのベルトコードがスチールコードであり、
前記スチールコードが4本以上8本以下の素線からなる撚り線であり、
それぞれの素線が、0.20mm以上0.30mm以下の外径と、3000MPa以上の引張強度を有し、
前記層のコード密度が20エンズ以上50エンズ以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記バンドが前記ベルト全体を覆うフルバンドを備え、
前記フルバンドが螺旋状に巻かれたフルバンドコードを含み、
前記フルバンドコードが、アラミド繊維からなるアラミドコード、又は、ナイロン繊維及びアラミド繊維からなるハイブリッドコードである、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記バンドが、軸方向に離間して配置され、前記フルバンドの端を覆う、一対のエッジバンドを備え、
それぞれのエッジバンドが螺旋状に巻かれたエッジバンドコードを含み、
前記エッジバンドコードが、アラミド繊維からなるアラミドコード、又は、ナイロン繊維及びアラミド繊維からなるハイブリッドコードである、
請求項5に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤはリムに組まれて使用される。タイヤには、リムに組みやすいことが求められる。リムに組んだタイヤにおいては、リムに対してずれにくいこと、そしてリムから外れにくいことが求められる。例えば、下記の特許文献1では、リムへの組みやすさを損ねることなく、リムからの外れにくさ、すなわち、耐リム外れ性能の向上を目指した検討が行われている。
【0003】
リムからの外れにくさを評価する方法として、例えば、ビードアンシーティング試験が知られている。JIS D4230「自動車用タイヤ」の「6.1 ビードアンシーティング試験」によれば、
図8に示された試験装置2が用いられる。この試験装置2は、リムRに組んだタイヤTをセットする支持台4と、タイヤTの側面を押し付ける荷重ブロック6と、この荷重ブロック6を支持する荷重アーム8とを備える。
【0004】
この試験では、タイヤTはリムRに組まれる。タイヤTの内部に空気を充填して、タイヤTの内圧が調整される。タイヤTのビード部の内周面がリムRのシートに接触し、外側面がリムRのフランジと接触する。タイヤTを支持台4にセットし、荷重ブロック6の位置が調整される。荷重ブロック6を所定の速度でタイヤTの側面に押し付け、ビード部がリムRのシートから外れる直前の力がリム外れ抗力として測定される。リム外れ抗力が高いほど、タイヤTはリムRから外れにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビードアンシーティング試験では、荷重ブロック6の位置が、JIS D4230の表4に記載のL寸法に合わされる。リム径の呼びによって、L寸法は決まる。JIS D4230によれば、例えば、リム径の呼びが15インチである場合、L寸法は279mmである。タイヤTの外径の半分とL寸法との差は、タイヤTの赤道から荷重ブロック6がタイヤTに接触する位置までの径方向距離に相当する。
【0007】
タイヤサイズが195/65R15であるタイヤでは、赤道から径方向に約39mm離れた位置に荷重ブロック6は接触する。タイヤサイズが165/65R15であるタイヤでは、赤道から径方向に約19mm離れた位置に荷重ブロック6は接触する。偏平比の呼びと、リム径の呼びとが同じである場合、小さな断面幅の呼びを有するタイヤでは、大きな断面幅を有するタイヤに比べてトレッドに近い位置で、荷重ブロック6はタイヤに接触する。
【0008】
トレッドに近い位置で荷重ブロック6が接触するタイヤにおいては、リム外れ抗力が低い傾向にあり、リム外れ効力の向上が求められている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、リム外れ効力の向上を達成できる、タイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの端に連なり径方向において前記トレッドの内側に位置する一対のサイドウォールと、径方向において前記サイドウォールの内側に位置する一対のビードと、前記トレッド及び前記一対のサイドウォールの内側に位置し、一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すカーカスと、径方向において前記カーカスの外側に位置するベルトと、径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置するバンドとを備える。前記タイヤの外径の半分と、JIS D4230に記載のL寸法との差は20mm以下である。前記ビードは周方向に延びるコアを備える。前記コアの幅方向の曲げ剛性は、7.80×106N・mm2以上である。
【0011】
好ましくは、このタイヤでは、前記コアはスチール製のワイヤを含む。前記ワイヤは楕円のワイヤ断面を有する。前記コアの断面において、複数の前記ワイヤ断面が前記コアの幅方向に並ぶ複数のユニットが構成され、複数の前記ユニットが前記コアの高さ方向に並ぶ。前記ユニットにおいて、前記ワイヤ断面の長軸は前記コアの幅方向を向く。前記ワイヤ断面の短軸長さの、前記ワイヤ断面の長軸長さに対する比は、0.60以上0.90以下である。
【0012】
好ましくは、このタイヤでは、前記タイヤのうち、前記タイヤが組まれるリムに接触する部位が、ビード部である。前記ビード部の外面は、前記リムのシートに接触するシート面と、前記リムのフランジに接触するフランジ面と、前記シート面と前記フランジ面との間に位置し、曲面からなるヒール面とを備える。前記タイヤの子午線断面において、前記ヒール面の輪郭は円弧で表される。前記円弧の半径は、6.0mm以上11.0mm以下である。
【0013】
好ましくは、このタイヤでは、前記ベルトは径方向に積層された2枚の層を備える。それぞれの層は並列した多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードはスチールコードである。前記スチールコードは4本以上8本以下の素線からなる撚り線であり、それぞれの素線は、0.20mm以上0.30mm以下の外径と、3000MPa以上の引張強度を有する。前記層のコード密度は20エンズ以上50エンズ以下である。
【0014】
好ましくは、このタイヤでは、前記バンドは前記ベルト全体を覆うフルバンドを備える。前記フルバンドは螺旋状に巻かれたフルバンドコードを含む。前記フルバンドコードは、アラミド繊維からなるアラミドコード、又は、ナイロン繊維及びアラミド繊維からなるハイブリッドコードである。
【0015】
好ましくは、このタイヤでは、前記バンドは、軸方向に離間して配置され、前記フルバンドの端を覆う、一対のエッジバンドを備える。それぞれのエッジバンドは螺旋状に巻かれたエッジバンドコードを含む。前記エッジバンドコードは、アラミド繊維からなるアラミドコード、又は、ナイロン繊維及びアラミド繊維からなるハイブリッドコードである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リム外れ効力の向上を達成できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、基準接地面の接地幅を説明するイメージ図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたタイヤのビード部の断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示されたタイヤのベルト及びバンドの構成を説明する概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示されたタイヤのバンドの構成を説明する概略図である。
【
図7】
図7は、比較例1のタイヤの一部(ビード部)を示す断面図である。
【
図8】
図8は、リム外れ抗力の測定方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0019】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。
【0020】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0021】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0022】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0023】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0024】
本開示において、「断面幅の呼び」、「偏平比の呼び」及び「リム径の呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「断面幅の呼び」、「偏平比の呼び」及び「リム径の呼び」である。
【0025】
本開示において、タイヤの外径OD(mm)は、断面幅の呼びをNW(mm)、偏平比の呼びをNA(%)、そしてリム径の呼びをNR(inch)としたとき、次式に基づいて算出される。
OD=NW×NA/50+25.4×NR
【0026】
本開示において、ロードインデックス(LI)とは、例えば、JATMA規格において規定され、規定の条件下でタイヤに負荷することが許される最大の質量、すなわち最大負荷能力を表す指数である。
【0027】
本開示において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに接触する、タイヤの部位である。サイド部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。
リムは、シートとフランジとを備える。タイヤがリムに組まれると、ビード部の内周面はシートに接触する。ビード部の外側面はフランジに接触する。
【0028】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータを用いて測定される。タイヤにおいて硬さの測定ができない場合は、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、架橋ゴムからなる試験片が用いられる。
【0029】
本開示において、並列したコードを含む、タイヤの要素の、5cm幅あたりに含まれるコードの本数が要素のコード密度(単位はエンズ)として表される。例えば、タイヤの要素の5cm幅あたりに含まれるコードの本数が30本であれば、この要素のコード密度は30エンズとして表される。コード密度は、特に言及がない限り、コードの長さ方向に対して垂直な面で切断することにより得られる要素の断面において得られる。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ12の一部を示す。このタイヤ12は、乗用車用タイヤである。
図1において、タイヤ12はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。タイヤ12の内部には空気が充填され、タイヤ12の内圧が調整される。
【0031】
リムRに組まれたタイヤ12は、タイヤ-リム組立体とも称される。タイヤ-リム組立体は、リムRと、このリムRに組まれたタイヤ12とを備える。
【0032】
図1には、タイヤ12の回転軸(図示されず)を含む平面に沿った、タイヤ12の断面(以下、子午線断面とも称される。)の一部が示される。
図1において、左右方向はタイヤ12の軸方向であり、上下方向はタイヤ12の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ12の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ12の赤道面を表す。
【0033】
図1において、符号PWで示される位置はタイヤ12の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、タイヤ12の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。外端PWは、このタイヤ12が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。
【0034】
このタイヤ12は、トレッド14、一対のサイドウォール16、一対のクリンチ18、一対のビード20、カーカス22、インナーライナー24、一対のチェーファー26、ベルト28及びバンド30を備える。
【0035】
トレッド14は、その外面において路面と接地する。トレッド14には、溝32が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。
【0036】
図示されないが、トレッド14は、キャップ層と、ベース層とを有する。キャップ層はトレッド14の外面を構成する。キャップ層は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。ベース層は、径方向においてキャップ層の内側に位置する。ベース層は、低発熱性の架橋ゴムからなる。
【0037】
図1において、符号PCで示される位置はタイヤ12の赤道である。赤道PCは、トレッド14の外面と赤道面との交点である。赤道面上に溝32が位置する場合、赤道PCは、この溝32がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
【0038】
図1において、符号PHで示される位置はトレッド14の外面上の位置である。位置PHは、タイヤ12の、路面との接地面の、軸方向外端に対応する。
【0039】
位置PHを特定するための接地面は、例えば、接地面形状測定装置(図示されず)を用いて得られる。この接地面は、この装置において、正規リムに組み、内圧を240kPaに調整したタイヤ12のキャンバー角を0°とした状態で、ロードインデックスで表される荷重の80%の荷重を縦荷重として、このタイヤ12に負荷して、平面からなる路面にこのタイヤ12を接触させて得られる。本開示においては、このようにして得られる接地面が基準接地面であり、基準接地面の軸方向外端に対応する、トレッド14の外面上の位置が、前述の位置PHである。このタイヤ12では、この位置PHが基準接地端である。
【0040】
図2には、基準接地面のイメージが示される。
図2において、上下方向はタイヤ12の周方向に相当し、左右方向はタイヤ12の軸方向に相当する。
図2の紙面に対して垂直な方向はこのタイヤ12の径方向に相当する。
【0041】
図2において、符号CWで示される長さは、基準接地面の接地幅である。接地幅CWは一方の基準接地端PHから他方の基準接地端PHまでの軸方向距離である。接地幅CWは、基準接地面の最大幅で表される。
【0042】
それぞれのサイドウォール16は、トレッド14の端に連なる。サイドウォール16は、径方向においてトレッド14の内側に位置する。サイドウォール16は、トレッド14の端からクリンチ18に向かってカーカス22に沿って延びる。サイドウォール16は耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0043】
それぞれのクリンチ18は、径方向においてサイドウォール16の内側に位置する。クリンチ18はリムRのフランジFに接触する。クリンチ18は耐摩耗性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0044】
それぞれのビード20は、軸方向においてクリンチ18の内側に位置する。ビード20は、径方向においてサイドウォール16の内側に位置する。ビード20は、コア34と、エイペックス36とを備える。
【0045】
コア34は周方向に延びる。コア34はリング状である。
図1に示されるように、コア34の断面は略四角形である。コア34は軸方向に所定の幅を有し、径方向に所定の高さを有する。コア34はスチール製のワイヤを含む。
【0046】
図示されないが、コア34は、ゴムで被覆したワイヤを巻き回して形成される。コア34のワイヤ以外の部分は架橋ゴムで満たされる。このタイヤ12では、コア34の架橋ゴムからなる部分はカバーゴムと称される。このタイヤ12では、カバーゴムの硬さは81以上84以下である。
【0047】
エイペックス36は、径方向においてコア34の外側に位置する。エイペックス36は外向きに先細りである。エイペックス36は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。径方向において、エイペックス36の外端は最大幅位置PWの内側に位置する。エイペックス36の長さは20mmから40mmの範囲で適宜設定される。
【0048】
カーカス22は、トレッド14、一対のサイドウォール16及び一対のクリンチ18の内側に位置する。カーカス22は、一方のビード20と他方のビード20との間を架け渡す。カーカス22はラジアル構造を有する。
【0049】
カーカス22は、少なくとも1枚のカーカスプライ38を含む。このタイヤ12のカーカス22は1枚のカーカスプライ38からなる。
【0050】
カーカスプライ38は、一方のビード20と他方のビード20との間を架け渡すプライ本体38aと、このプライ本体38aに連なりそれぞれのビード20の周りで軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部38bとを含む。径方向において、折り返し部38bの端は最大幅位置PWの外側に位置する。
【0051】
図示されないが、カーカスプライ38は並列した多数のカーカスコードを含む。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。カーカスコードは有機繊維からなるコードである。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0052】
インナーライナー24はカーカス22の内側に位置する。インナーライナー24は、タイヤ12の内面を構成する。インナーライナー24は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー24は、タイヤ12の内圧を保持する。
【0053】
それぞれのチェーファー26は、ビード20の径方向内側に位置する。チェーファー26はリムRのシートSに接触する。このタイヤ12のチェーファー26は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
【0054】
ベルト28は、径方向においてカーカス22の外側に位置する。ベルト28は、径方向外側からカーカス22に積層される。
【0055】
ベルト28は、径方向に積層された少なくとも2つの層40で構成される。このタイヤ12のベルト28は、径方向に積層された2つの層40からなる。2つの層40のうち、内側に位置する層40が内側層40aであり、外側に位置する層40が外側層40bである。
図1に示されるように、内側層40aは外側層40bよりも幅広い。外側層40bの端から内側層40aの端までの長さは3mm以上10mm以下である。
【0056】
バンド30は、径方向において、トレッド14とベルト28との間に位置する。バンド30は、トレッド14の内側においてベルト28に積層される。バンド30はフルバンド42を備える。フルバンド42はベルト28全体を覆う。このバンド30はベルト28全体を覆うフルバンド42で構成される。フルバンド42はベルト28よりも幅広い。ベルト28の端からフルバンド42の端までの長さは3mm以上7mm以下である。
【0057】
図1において、符号ODで示される長さはこのタイヤ12の外径である。このタイヤ12では、その外径ODの半分と、JIS D4230に記載のL寸法との差(OD/2-L)は20mm以下である。このタイヤ12では、JIS D4230に記載のビードアンシーティング試験において、トレッド14とサイドウォール16との境界部分(以下、バットレス部)か、このバットレス部よりも径方向外側に、荷重ブロック6は接触する。このタイヤ12では、トレッド14に近い部分に荷重ブロック6が押し付けられる。これにより、バットレス部付近が軸方向内向きに動かされる。この動きによってカーカス22が引っ張られ、ビード部BをリムRから引き離すようにこのビード部Bに力が作用する。
【0058】
このタイヤ12では、偏平比の呼びNAと、リム径の呼びNRとが同じであり、差(OD/2-L)が20mmを超えるタイヤに比べて、荷重ブロック6が接触する位置からビード部Bまでの距離が短いので、荷重ブロック6がタイヤ12を押し付けることによってタイヤ12に作用する力がビード部Bに伝わりやすい。このため、このタイヤ12は低いリム外れ抗力を示すことが懸念される。
【0059】
本発明者らは、リム外れ抗力の向上を目指し鋭意検討し、ビード部Bに含まれるコア34の幅方向の曲げ剛性が7.80×106N・mm2以上であれば、荷重ブロック6がタイヤ12を押し付けることによって生じるビード部Bの変形を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至っている。
【0060】
本開示において、コア34の幅方向の曲げ剛性Gc(N・mm2)は、ワイヤの弾性係数をEw(kgf/mm2)、そして、コア34の幅方向の断面二次モーメントをMi(mm4)としたとき、次式に基づいて算出される。ワイヤの弾性係数Ewには、鋼の弾性係数(21000kgf/mm2)が用いられる。
Gc=Ew×9.8×Mi
断面二次モーメントMiは、コア34の見かけ幅をWa、そして見かけ高さをHaとしたとき、次式に基づいて算出される。
Mi=Ha×(Wa3)/12
コア34の見かけ幅Wa及び見かけ高さHaは、ワイヤの外径と後述するコア34の構成とを考慮して算出される。例えば、コア34の構成が「4+4+4」で表される場合、円形の断面を有するワイヤの外径をdとしたとき、見かけ幅Waは外径dの4倍で表され、見かけ高さHaは外径dの3倍で表される。
【0061】
このタイヤ12では、コア34の幅方向の曲げ剛性は7.80×106N・mm2以上である。荷重ブロック6がタイヤ12を押し付けることでビード部Bに力が作用するが、このタイヤ12ではコア34の変形が抑制される。荷重ブロック6の接触位置からビード部Bまでの距離が短いにもかかわらず、このタイヤ12のビード部BはリムRに対して動きにくい。ビードアンシーティング試験において、このタイヤ12をリムRから外すには、大きな力をビード部Bに作用させる必要がある。言い換えれば、このタイヤ12は高いリム外れ抗力を有する。このタイヤ12のタイヤサイズが、例えば、165/65R15であるとき、このタイヤ12のリム外れ抗力は9567N以上である。このタイヤ12では、リム外れ抗力の向上が達成される。この観点から、コア34の幅方向の曲げ剛性は13.3×106N・mm2以上が好ましい。リム外れ抗力の向上の観点によれば、コア34の幅方向の曲げ剛性は高いほど好ましいので、この観点において、曲げ剛性の上限は設定されない。
【0062】
図3は、
図1に示されたタイヤ12の断面の一部を示す。この
図3には、ビード部Bの断面が示される。
図3において、左右方向はタイヤ12の軸方向であり、上下方向はタイヤ12の径方向である。
図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ12の周方向である。
【0063】
前述したように、コア34はゴムで被覆したワイヤ44を巻き回して形成される。コア34の断面には、複数のワイヤ44の断面(以下、ワイヤ断面44cs)が含まれる。
図3に示されるように、コア34は、その断面において、コア34の幅方向に複数のワイヤ断面44csが並ぶ複数のユニット46が構成され、複数のユニット46がコア34の高さ方向に並ぶように構成される。
図3に示されたビード部Bでは、コア34の幅方向に5つのワイヤ断面44csが並ぶ3つのユニット46が構成され、これらユニット46がコア34の高さ方向に並ぶように、コア34は構成されている。
【0064】
本開示において、コア34の構成は、各ユニット46に含まれるワイヤ断面44csの数を用いて表される。
図3に示されたコア34の構成は「5+5+5」で表される。この表記において右側が、径方向において外側に位置するユニット46のワイヤ断面44csの数である。図示されないが、例えば、コア34が高さ方向に並ぶ4つのユニット46を含み、これらのうちタイヤ12の径方向において最も外側に位置するユニット46のワイヤ断面44csの数が3であり、残りのユニット46のそれぞれに含まれるワイヤ断面44csの数が4である場合、このコア34の構成は「4+4+4+3」で表される。
【0065】
コア34の断面に含まれるワイヤ断面44csの形状は通常、円である。この
図3に示されるように、ワイヤ断面44csの形状は円ではなく楕円であってもよい。コア34に含まれるワイヤ44が楕円のワイヤ断面44csを有することで、質量への影響を考慮しながらコア34の曲げ剛性を効果的に高めることができる。この場合、このタイヤ12では、コア34に構成されるユニット46において、ワイヤ断面44csの長軸がコア34の幅方向に向くように、ワイヤ断面44csは配置されることが好ましい。このワイヤ断面44csの配置は、コア34の幅方向の曲げ剛性の増大に貢献できる。
【0066】
図3において、両矢印Laで示される長さは、ワイヤ断面44csの長軸の長さである。両矢印Saで示される長さは、このワイヤ断面44csの短軸の長さである。
前述したように、コア34の幅方向の曲げ剛性の算出には、コア34の見かけ幅Wa及び見かけ高さHaが用いられる。本開示においては、ワイヤ断面44csの形状が楕円である場合、見かけ幅Waの算出には長軸長さLaが用いられ、見かけ高さHaの算出には短軸長さSaが用いられる。
【0067】
このタイヤ12では、コア34に構成されるユニット46において、ワイヤ断面44csが、このワイヤ断面44csの長軸がコア34の幅方向に向くように配置される場合、質量への影響を抑えながら、コア34の幅方向の曲げ剛性を効果的に高めることができる観点から、ワイヤ断面44csの短軸長さSaの、このワイヤ断面44csの長軸長さLaに対する比(Sa/La)は0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましい。
【0068】
リムRに組んだタイヤ12においては、リムRから外れにくいだけでなく、リムRに対してずれにくいことが求められる。ビード部BがリムRを十分に締め付けることができる観点から、比(Sa/La)は0.60以上が好ましく、0.70以上がより好ましく、0.75以上がさらに好ましい。
【0069】
このタイヤ12では、比(Sa/La)が0.60以上0.90以下の範囲で設定される場合、質量への影響を抑えながら、コア34の幅方向の曲げ剛性を効果的に高めることができる観点から、長軸長さLaは1.0mm以上1.5mm以下の範囲で設定されることが好ましい。
【0070】
図3において、符号Wで示される長さはコア34の幅である。符号Hで示される長さは、コア34の高さである。コア34の幅W及び高さHは、タイヤ12の断面において得られる。コア34の幅W及び高さHは、ワイヤ44だけでなくコア34に充填されるカバーゴムも考慮された正味の幅及び高さである。
【0071】
このタイヤ12では、コア34がリム外れ抗力の向上に貢献できる観点から、コア34の高さHの、コア34の幅Wに対する比(H/W)は0.55以下が好ましく、0.50以下がより好ましい。ビード部BがリムRを締め付ける力、すなわち締め付け力の向上にコア34が貢献できる観点から、この比(H/W)は0.35以上が好ましく、0.40以上がより好ましい。
【0072】
このタイヤ12では、必要な締め付け力を確保しながら、リム外れ抗力の向上を図れる観点から、コア34の幅Wは4.5mm以上9.0mm以下が好ましい。
【0073】
このタイヤ12のビード部BはリムRと接触する。このビード部Bの外面48は、リムRのシートSに接触するシート面50と、リムRのフランジFに接触するフランジ面52と、シート面50とフランジ面52との間に位置し、曲面からなるヒール面54とを備える。このタイヤ12では、その子午線断面において、ヒール面54の輪郭は円弧で表される。
図3において、符号Rhで示される矢印が、このヒール面54の輪郭を表す円弧の半径である。
【0074】
タイヤ12をリムRに組むとき、ビード部BはリムRのウェル(図示されず)に落とし込まれる。タイヤ12の内部に空気を充填すると、ビード部BはフランジFに向かって移動する。ビード部BはリムRのハンプ(図示されず)を乗り越え、シートSに載せられ、フランジFに接触する。これにより、タイヤ12のリムRへのセットが完了し、タイヤ-リム組立体が得られる。
【0075】
このタイヤ12では、ヒール面54の輪郭を表す円弧の半径Rhは6.0mm以上11.0mm以下が好ましい。
【0076】
半径Rhが6.0mm以上に設定されることにより、ビード部BがリムRのハンプを乗り越えるとき、このビード部Bがハンプに引っ掛かることが抑制される。ビード部Bがハンプに引っ掛かりにくいので、このタイヤ12は嵌合圧の低減を図ることができる。この観点から、半径Rhは8.0mm以上がより好ましく、10.0mm以上がさらに好ましい。
【0077】
半径Rhが11.0mm以下に設定されることにより、ビード部BがリムRと十分に密着する。ビード部BとリムRとの間に隙間が形成されることが防止されるので、このタイヤ12では、良好な耐エアリーク性能が維持される。
【0078】
図4は、このタイヤ12のベルト28及びバンド30の構成を示す。
図4において、左右方向はタイヤ12の軸方向であり、上下方向はタイヤ12の周方向である。
図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ12の径方向である。
図3の紙面の表側が径方向外側である。
図4の紙面の裏側が径方向内側である。
【0079】
前述したように、このタイヤ12のベルト28は内側層40a及び外側層40bを備える。
図4に示されるように、内側層40a及び外側層40bはそれぞれ、並列した多数のベルトコード56を含む。
図4では、説明の便宜のため、ベルトコード56は実線で表されるが、ベルトコード56はトッピングゴム58で覆われる。
【0080】
内側層40a及び外側層40bのそれぞれにおいてベルトコード56は赤道面に対して傾斜する。内側層40aに含まれるベルトコード56の傾斜の向き(以下、第一ベルトコード56Aの傾斜方向)は、外側層40bに含まれるベルトコード56の傾斜の向き(以下、第二ベルトコード56Bの傾斜方向)と逆である。
【0081】
図4において、角度θaは、第一ベルトコード56Aが赤道面に対してなす角度(以下、第一傾斜角度θa)である。角度θbは、第二ベルトコード56Bが赤道面に対してなす角度(以下、第二傾斜角度θb)である。このタイヤ12では、第一傾斜角度θaは15度以上35度以下である。第二傾斜角度θbは15度以上35度以下である。
【0082】
このタイヤ12では、リム外れ抗力の向上の観点から、好ましくは、複数本の素線を撚り合わせて構成されたスチールコードがベルトコード56として用いられる。言い換えれば、ベルトコード56はスチールコードであり、スチールコードは複数本の素線からなる撚り線であるのが好ましい。スチールコードを構成する素線の本数は4本以上8本以下であり、素線の外径は0.20mm以上0.30mm以下であり、素線の引張強度は3000MPa以上であるのが好ましい。
具体的には、このベルトコード56は、0.20mm以上0.30mm以下の外径と、3000MPa以上の引張強度とを有する、複数本の素線を撚り合わせて構成されたスチールコードであるのが好ましい。このようなスチールコードとしては、1×4×0.27で表される構造のスチールコード、及び、1×8×0.23で表される構造のスチールコードが挙げられる。リム外れ抗力の向上に効果的に貢献できる観点から、ベルトコード56は、1×8×0.23で表される構造のスチールコードであるのがより好ましい。
【0083】
前述したように、内側層40a及び外側層40bは並列した多数のベルトコード56を含む。各層に含まれるベルトコード56の本数が多いほど、ベルト28はリム外れ抗力の向上に貢献できる。ベルトコード56の本数が多すぎると、タイヤ12の質量が増加する。質量を増加させることなく、リム外れ抗力の向上に貢献できる観点から、内側層40aのコード密度が20エンズ以上50エンズ以下であり、外側層のコード密度が20エンズ以上50エンズ以下であるのが好ましい。ベルト28がリム外れ抗力の向上に効果的に貢献できる観点から、内側層及び外側層に含まれるベルトコード56がスチールコードであり、スチールコードが複数本の素線からなる撚り線であり、それぞれの素線が0.20mm以上0.30mm以下の外径と、3000MPa以上の引張強度とを有し、内側層及び外側層のコード密度が20エンズ以上50エンズ以下であるのがより好ましい。1×4×0.27で表される構造のスチールコードがベルトコード56として用いられる場合には、内側層及び外側層のコード密度は30エンズ以上50エンズ以下がさらに好ましい。1×8×0.23で表される構造のスチールコードがベルトコード56として用いられる場合には、内側層及び外側層のコード密度は20エンズ以上30エンズ以下がさらに好ましい。
【0084】
前述したように、このタイヤ12のバンド30はベルト28全体を覆うフルバンド42を備える。
図4に示されるように、このフルバンド42は螺旋状に巻かれたフルバンドコード60を含む。この
図4では、説明の便宜のため、フルバンドコード60は実線で表されるが、このフルバンドコード60はトッピングゴム62で覆われる。
【0085】
フルバンド42においてフルバンドコード60は実質的に周方向に延びる。詳細には、フルバンドコード60が周方向に対してなす角度は、5°以下である。このフルバンド42はジョイントレス構造を有する。
【0086】
このタイヤ12では、フルバンド42におけるフルバンドコード60の密度は、40エンズ以上60以下である。このフルバンドコード60の密度は、子午線断面に含まれるフルバンド42の断面において、フルバンド42の5cm幅あたりに含まれるフルバンドコード60の断面数により表される。
【0087】
このタイヤ12では、フルバンドコード60には有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)が用いられる。この有機繊維コードとしては、ナイロン繊維からなるコード、ポリエステル繊維からなるコード、レーヨン繊維からなるコード、及び、アラミド繊維からなるコード、並びに、ナイロン繊維及びアラミド繊維からなるハイブリッドコードが挙げられる。フルバンド42がリム外れ抗力の向上に貢献できる観点から、このフルバンドコード60はアラミド繊維からなるコード、又は、ナイロン繊維及びアラミド繊維からなるハイブリッドコードであるのが好ましい。フルバンド42がリム外れ抗力の向上に効果的に貢献できる観点から、フルバンドコード60はアラミド繊維からなるコードであるのがより好ましい。
【0088】
図1において、符号WBで示される長さはベルト28の幅である。このベルト28の幅は、ベルト28の一方の端から他方の端までの軸方向距離である。符号WFで示される長さは、フルバンド42の幅である。このフルバンド42の幅は、フルバンド42の一方の端から他方の端までの軸方向距離である。このタイヤ12のバンド30はフルバンド42からなるので、このフルバンド42の幅はバンド30の幅でもある。
【0089】
このタイヤ12では、ベルト28がリム外れ抗力の向上に貢献できる観点から、ベルトの幅WBの、接地幅CWに対する比率(WB/CW)は100%以上が好ましく、110%以上がより好ましい。ベルト28による質量への影響が抑制される観点から、この比率(WB/CW)は120%以下が好ましい。
【0090】
このタイヤ12では、フルバンド42がリム外れ抗力の向上に貢献できる観点から、フルバンド42の幅WFの、接地幅CWに対する比率(WF/CW)は110%以上が好ましく、115%以上がより好ましい。フルバンド42による質量への影響が抑制される観点から、この比率(WF/CW)は130%以下が好ましく、125%以下がより好ましい。
【0091】
図5は、本発明の他の実施形態に係るタイヤ72の一部を示す。このタイヤ72は乗用車用タイヤである。
図5にも、
図1と同様、このタイヤ72の子午線断面の一部が示される。
図5において、左右方向はタイヤ72の軸方向であり、上下方向はタイヤ72の径方向である。
図5の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ72の周方向である。
【0092】
このタイヤ72では、バンド74以外は、
図1に示されたタイヤ12の構成と同等の構成を有する。したがって、この
図4において、
図1のタイヤ12の構成要素と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0093】
このタイヤ72のバンド74は、フルバンド76と、一対のエッジバンド78とを備える。フルバンド76はベルト28全体を覆う。一対のエッジバンド78は、赤道面を挟んで軸方向に離間して配置される。エッジバンド78は径方向において外側からフルバンド76の端を覆う。
図5に示されるように、エッジバンド78の外端の位置は、軸方向において、フルバンド76の端の位置と一致する。このエッジバンド78の外端が、軸方向において、フルバンド76の端の外側に位置してもよく、このエッジバンド78の外端が、軸方向において、フルバンド76の端の内側に位置してもよい。
【0094】
図6は、ベルト28の構成とともに、このタイヤ72のバンド74の構成を示す。
図6において、左右方向はタイヤ72の軸方向であり、上下方向はタイヤ72の周方向である。
図6の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ72の径方向である。
図6の紙面の表側が径方向外側である。
図6の紙面の裏側が径方向内側である。
【0095】
図6に示されるように、フルバンド76は螺旋状に巻かれたフルバンドコード80を含む。この
図6では、説明の便宜のため、フルバンドコード80は実線で表されるが、このフルバンドコード80はトッピングゴム82で覆われる。このタイヤ72のフルバンド76は、
図1に示されたタイヤ12のフルバンド42の構成と同等の構成を有する。
【0096】
図6に示されるように、それぞれのエッジバンド78は、螺旋状に巻かれたエッジバンドコード84を含む。この
図6では、説明の便宜のため、エッジバンドコード84は実線で表されるが、このエッジバンドコード84はトッピングゴム86で覆われる。
【0097】
エッジバンド78においてエッジバンドコード84は実質的に周方向に延びる。詳細には、エッジバンドコード84が周方向に対してなす角度は、5°以下である。このエッジバンド78はジョイントレス構造を有する。
【0098】
このタイヤ72では、エッジバンド78におけるエッジバンドコード84の密度は、40エンズ以上60以下である。このエッジバンドコード84の密度は、子午線断面に含まれるエッジバンド78の断面において、エッジバンド78の5cm幅あたりに含まれるエッジバンドコード84の断面数により表される。
【0099】
このタイヤ72では、エッジバンドコード84には有機繊維コードが用いられる。この有機繊維コードとしては、ナイロン繊維からなるコード、ポリエステル繊維からなるコード、レーヨン繊維からなるコード、及び、アラミド繊維からなるコード、並びに、ナイロン繊維及びアラミド繊維からなるハイブリッドコードが挙げられる。エッジバンド78がリム外れ抗力の向上に貢献できる観点から、このエッジバンドコード84は、アラミド繊維からなるコード、又は、ナイロン繊維及びアラミド繊維からなるハイブリッドコードであるのが好ましい。エッジバンド78がリム外れ抗力の向上に効果的に貢献できる観点から、エッジバンドコード84はアラミド繊維からなるコードであるのがより好ましい。
【0100】
図5において、両矢印WEで示される長さはエッジバンド78の幅である。この幅WEは、エッジバンド78の外端から内端までの軸方向距離である。
【0101】
このタイヤ72では、エッジバンド78がリム外れ抗力の向上に貢献できる観点から、エッジバンド78の幅WEの、接地幅CWに対する比率(WE/CW)は10%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。エッジバンド78によるタイヤ72の質量への影響が抑制される観点から、この比率(WE/CW)は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。
【0102】
以上説明したように、本発明によれば、リム外れ効力の向上を達成できる、タイヤが得られる。
【実施例0103】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0104】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用のタイヤ(タイヤサイズ=165/55R15)を得た。
この実施例1では、タイヤの外径ODの半分と、JIS D4230に記載のL寸法との差(OD/2-L)は19mmであった。
図3に示された構成を有するコアをビードのコアとして用いた。このことが、表1の「コアの構成」の欄に、「5+5+5」として示されている。コアの幅方向の曲げ剛性は、13.78×10
6N・mm
2であった。コアに含まれるワイヤの断面形状は楕円であり、短軸長さSaの、長軸長さLaに対する比(Sa/La)は0.75であった。ビード部のヒール面の輪郭を表す円弧の半径Rhは10.0mmであった。長軸長さLaは1.30mmであった。
この実施例1には、
図4に示された構成のベルト及びバンドが採用された。このことが、表1の「ベルト及びバンドの構成」の欄に示されている。実施例1のバンドはフルバンドのみで構成された。
ベルトコードには、1×4×0.27の構造を有するスチールコードが採用された。ベルトコードに含まれる素線の本数は4本、素線の外径は0.27mmであった。内側層及び外側層のコード密度は40エンズであった。
フルバンドコードには、ナイロン繊維からなるコードが採用された。このことが、表1の「フルバンドコードのタイプ」の欄に「N」で表されている。このコードの構成は、1400dtex/2であった。このことが、表1の「フルバンドコードの構成」の欄に「1400/2」で表されている。
【0105】
[比較例1]
ビードのコアに
図7に示された構成(「4+4+4」)のコアを採用するとともに半径Rhを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
この比較例1では、コアの幅方向の曲げ剛性は、6.83×10
6N・mm
2であった。コアに含まれるワイヤの断面形状は円であった。したがって、比(Sa/La)は1.00であった。このワイヤの外径は1.20mmであった。このことが、表1のLaの欄に示されている。
【0106】
[実施例2]
コアの構成を変えてコアの幅方向の曲げ剛性を下記の表1に示される通りとした他は比較例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
【0107】
[実施例3]
半径Rhを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3のタイヤを得た。
【0108】
[参考例]
参考例のタイヤサイズは195/55R15であった。タイヤの外径ODの半分と、JIS D4230に記載のL寸法との差(OD/2-L)は39mmであった。
ビードのコアの構成は比較例1と同じである。
ベルト及びバンドには、実施例1と同じ、
図4に示された構成のベルト及びバンドが採用された。ベルトコードには、1×2×0.295の構造を有するスチールコードが採用され、内側層及び外側層のコード密度は36エンズに設定された。フルバンドコードには、ナイロン繊維からなるコード(構成=1100dtex/2)が用いられた。
【0109】
[実施例4]
ベルトコードに、1×8×0.23の構造を有するスチールコードを採用し、内側層及び外側層のコード密度を24エンズにした他は実施例1と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
【0110】
[実施例5]
フルバンドコードにアラミド繊維からなるコード(構成=1670dtex/2)を用いた他は実施例4と同様にして、実施例5のタイヤを得た。フルバンドコードがアラミド繊維からなるコードであることが、表2のフルバンドコードのタイプの欄に「A」で表されている。
【0111】
[実施例6]
図6に示された構成のバンドを採用した他は実施例1と同様にして、実施例6のタイヤを得た。エッジバンドコードには、ナイロン繊維からなるコード(構成=1400dtex/2)が用いられた。
【0112】
[実施例7]
ベルトコードに、1×8×0.23の構造を有するスチールコードを採用し、内側層及び外側層のコード密度を24エンズにした他は実施例6と同様にして、実施例7のタイヤを得た。
【0113】
[実施例8]
フルバンドコードにアラミド繊維からなるコード(構成=1670dtex/2)を用いた他は実施例7と同様にして、実施例8のタイヤを得た。
【0114】
[実施例9]
エッジバンドコードにアラミド繊維からなるコード(構成=1670dtex/2)を用いた他は実施例8と同様にして、実施例9のタイヤを得た。
【0115】
[実施例10]
比較例1のコアの形成に使用したワイヤを用いて曲げ剛性を変えた他は実施例1と同様にして、実施例10のタイヤを得た。
【0116】
[実施例11-12]
短軸長さSaを変えて比(Sa/La)を下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例11-12のタイヤを得た。
【0117】
[リム外れ抗力]
試作タイヤをリム(サイズ=15×5J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を180kPaに調整した。参考例については、タイヤをリム(サイズ=15×6J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を180kPaに調整した。
図8に示された試験装置を用いて、JIS D4230に記載のビードアンシーティング試験を行い、リム外れ抗力を得た。その結果が、参考例を100とした指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほどリム外れ抗力は高い。この評価では、指数が80以上であれば、リム外れ抗力は規格値を満たすとして許容される。
【0118】
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=15×5J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を250kPaに調整した。ドラム試験機を用いてECE30により規定された荷重/速度性能テストに準拠して、ステップスピード方式により耐久性試験を実施した。タイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。その結果が、実施例2を100とした指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、タイヤは耐久性に優れる。
【0119】
[操縦安定性]
試作タイヤをリム(サイズ=15×5J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を240kPaに調整した。タイヤを試験車両(排気量660ccの乗用車)に装着した。ドライ路面のテストコースで試験車両を走行させて、ドライバーにハンドリング性能を評価(官能評価)させた。その結果が、実施例2を100とした指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、タイヤは操縦安定性に優れる。
【0120】
[リムずれ]
試作タイヤをリム(サイズ=15×5J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を240kPaに調整した。タイヤを試験車両(排気量660ccの乗用車)に装着した。ドライ路面のテストコースで試験車両を走行させた。速度50km/hから急制動をかけて車両を停止させることを20回繰り返し、タイヤのリムに対するずれを計測した。その結果が、実施例2を100とした指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、タイヤのリムに対するずれが小さい。
【0121】
[リム組み]
試作タイヤをリム(サイズ=15×5J)に嵌めた後、このタイヤに空気(供給圧力=600kPa)を充填し、ビード部がリムのハンプを乗り越えるときの圧力(嵌合圧)を計測した。その結果が、実施例2を100とした指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、嵌合圧は低く、タイヤをリムに組みやすい。この評価では、指数が90以上であれば、リムへの組みやすさに関する基準はクリアしているとして許容される。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
表1-3に示されるように、実施例では、リム外れ効力の向上を達成できることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。