(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189057
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電子写真感光体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 5/147 20060101AFI20221215BHJP
G03G 5/05 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G03G5/147 502
G03G5/05 101
G03G5/147 503
G03G5/05 104A
G03G5/05 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097403
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 一国
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】前田 誠亮
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA03
2H068AA04
2H068AA13
2H068AA14
2H068AA32
2H068BB26
2H068CA06
2H068EA18
2H068FA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長期使用における耐摩耗性及び耐フィルミング性が両立する電子写真感光体及びその製造方法の提供。
【解決手段】本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、感光層を積層した電子写真感光体であって、前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、前記感光層の最表面層が、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有することを特徴とする。
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基を表し、R
1又はR
2の少なくとも一方が、アリール基を表す。また、R
3~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、感光層を積層した電子写真感光体であって、
前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、
前記感光層の最表面層が、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有する
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基を表し、R
1又はR
2の少なくとも一方が、アリール基を表す。また、R
3~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記感光層が、前記最表面層として保護層を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記一般式(1)において、
式中のR1が、フェニル基を表し、
R2が、メチル基を表し、
R3~R10が、それぞれ、水素原子を表す
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記感光層の最表面層が、下記一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートを更に含有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化2】
【請求項5】
前記無機微粒子の数平均一次粒径が、5~100nmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記無機微粒子が、疎水性シリカである
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有する溶液を塗布する工程を有する
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及びその製造方法に関する。より詳しくは、長期使用における、耐摩耗性及び耐フィルミング性が両立する電子写真感光体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体には、有機光導電性物質を含有する有機感光体が広く用いられている。有機感光体は可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料を開発しやすいこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いことなどが無機系の感光体に対して有利な点である。
【0003】
一方、電子写真感光体(以下、「感光体」ともいう。)は帯電、露光、現像、転写、クリーニング等により、電気的あるいは機械的な外力を直接受けているため、画像形成を繰り返し行っても機能が劣化しない、すなわち耐久性が求められている。
【0004】
特に、近年のデジタル化の流れの中で、高精細かつ高画質の画像への要求が高まり、溶解懸濁トナーや乳化重合凝集トナーなどの重合法による小粒径のトナーが主流になっている。これらの小粒径のトナーは、感光体表面への付着力が大きいため、感光体表面に付着した転写残トナーなどの残留トナーの除去が不十分になりやすい。
【0005】
例えば、ゴムブレードを用いたクリーニング方式では、トナーがブレードを通過する「トナーすり抜け」やブレードが反転する「ブレード捲れ」、あるいは感光体とブレードの擦過音の発生、いわゆる「ブレード鳴き」と言った現象が発生しやすい。上記の「トナーすり抜け」を解決するためには、ブレードの感光体への当接圧力を高くする必要があるが、繰り返しクリーニングを行うことにより、有機感光体の表面が摩耗しやすくなるため、更なる耐久性が求められる。また、帯電時に発生するオゾンや窒素酸化物による劣化に対しても、更なる耐久性が求められている。
【0006】
このような耐摩耗性を向上させる技術として、特許文献1及び2では、感光体の最表面層に、バインダー樹脂、無機微粒子、電荷輸送材料を含有させる技術が開示されている。当該技術により、高精細かつ高画質の画像が得られると共に、感光体の耐摩耗性は向上した。しかし、近年の更なる高画質化の要求に対し、検討を進めたところ、耐フィルミング性において、更に改善の余地があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-316036号公報
【特許文献2】特開2006-301247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、長期使用における、耐摩耗性及び耐フィルミング性が両立する電子写真感光体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、電子写真感光体の最表面層が、比較的剛直な骨格を有するポリカーボネート樹脂、無機微粒子及び電荷輸送材料を含有することにより、耐摩耗性及び耐フィルミング性が両立する電子写真感光体が得られることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
1.導電性支持体上に、感光層を積層した電子写真感光体であって、前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、前記感光層の最表面層が、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基を表し、R
1又はR
2の少なくとも一方が、アリール基を表す。また、R
3~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0011】
2.前記感光層が、前記最表面層として保護層を有することを特徴とする第1項に記載の電子写真感光体。
【0012】
3.前記一般式(1)において、式中のR1が、フェニル基を表し、R2が、メチル基を表し、R3~R10が、それぞれ、水素原子を表すことを特徴とする第1項又は第2項に記載の電子写真感光体。
【0013】
4.前記感光層の最表面層が、下記一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートを更に含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化2】
【0014】
5.前記無機微粒子の数平均一次粒径が、5~100nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0015】
6.前記無機微粒子が、疎水性シリカであることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0016】
7.第1項から第6項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有する溶液を塗布する工程を有する
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記手段により、長期使用における、耐摩耗性及び耐フィルミング性が両立する電子写真感光体及びその製造方法を提供することができる。
【0018】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0019】
前述のとおり、感光体の最表面層に、バインダー樹脂、無機微粒子、電荷輸送材料を含有させることにより、高精細かつ高画質の画像が得られると共に、感光体の耐摩耗性は向上した。しかし、高精細かつ高画質の画像への要求は高まる一方であり、発明者が検討を進めたところ、感光体の耐フィルミング性において、改善の余地があることがわかった。フィルミング現象については、明確にはなっていないが、以下のメカニズムが考えられる。
【0020】
フィルミング現象とは、画像形成の繰り返しにより、感光体の表面にフィルム状の汚れが発生する現象をいう。このフィルム状の汚れが、目視で観察できるほどの大きさになると、画像上に白抜け斑点が生じ、画質不良が起こる。
【0021】
フィルム状の汚れの原因の一つとしては、感光体表面に残留した現像剤由来の付着物が考えられる。通常、感光体表面に残った現像剤由来のトナー粒子は、クリーニングブレードによりかき取られて回収される。しかし、感光体の最表面層に含まれる無機微粒子は、凝集して粗大粒子を形成しやすく、粗大粒子が感光体の表面に存在する場合には、感光体表面に凹凸が生じやすい。そのため、凹部にトナー粒子が入り込んでしまうと、トナー粒子は、ブレードによりかき取られず、そのままクリーニングブレードを通過し、感光体表面に残留する。
【0022】
感光体表面に残留したトナー粒子は、次の帯電プロセスにおいて、放電エネルギーを吸収する。これにより、トナー粒子に含まれる樹脂等の放電分解生成物が生成する。感光体表面の無機微粒子による粗大粒子と、トナー粒子に含まれる外添剤は、この放電分解生成物を介して接着する。これが繰り返されることにより、感光体表面に目視可能な大きさの汚れが形成される。
【0023】
したがって、感光体表面の凹凸を軽減させる、すなわち、感光体の最表面層において、無機微粒子を凝集させず、分散させることにより、フィルミング現象を抑制できると考えられる。
【0024】
感光体の最表面層である電荷輸送層又は保護層は、一般的に、材料を混合して溶液を調製し、塗布・加熱乾燥により形成される。最表面層に無機微粒子を含有させる場合、無機微粒子が分散した状態で溶液を調製し塗布する。
【0025】
無機微粒子は、塗布直後は分散した状態であるが、加熱乾燥により、バインダー樹脂中を流動しやすくなり、凝集しようとする。そのため、バインダー樹脂の骨格が、比較的柔軟であると、無機微粒子は自由に流動できてしまい、凝集しやすい。一方、比較的剛直な骨格を有するポリカーボネート樹脂を用いると、無機微粒子は自由に流動できず、凝集しづらい。そのため、感光体表面の凹凸が軽減され、フィルミング現象を抑制できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の電子写真感光体の基本的な層構成の断面模式図
【
図3】本発明の電子写真感光体を備えるタンデム型の電子写真画像形成装置の基本的な構造を示す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、感光層を積層した電子写真感光体であって、前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、前記感光層の最表面層が、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有することを特徴とする。
この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0028】
本発明の実施形態としては、感光体の最表面層において、厚さのバラツキを抑制する観点から、感光層が、最表面に保護層を有することが好ましい。
【0029】
バインダー樹脂の骨格の剛直性が更に高まる観点から、上記一般式(1)において、式中のR1が、フェニル基を表し、R2が、メチル基を表し、R3~R10が、それぞれ、水素原子を表すことが好ましい。
【0030】
低温環境下での樹脂のミクロな結晶化を抑制する観点から、感光体の最表面層が、上記一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートを更に含有することが好ましい。
【0031】
無機微粒子の凝集体である粗大粒子の形成を抑制する観点から、無機微粒子の数平均一次粒径が、5~100nmの範囲内であることが好ましい。
【0032】
バインダー樹脂中へ分散しやすい観点から、無機微粒子が、疎水性シリカであることが好ましい。
【0033】
本発明の電子写真感光体の製造方法は、本発明の電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有する溶液を塗布する工程を有することを特徴とする。
【0034】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0035】
≪電子写真感光体の概要≫
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、感光層を積層した電子写真感光体であって、前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、前記感光層の最表面層が、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有することを特徴とする。
【0036】
感光体には、負帯電性感光体及び正帯電性感光体の二種類があり、負帯電性感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、電荷発生層、電荷輸送層を順に積層した層構成をとる。また、正帯電性感光体である場合には、導電性支持体上に、少なくとも、電荷輸送層、電荷発生層を順に積層した層構成をとる。本発明においては、負帯電性感光体であることが好ましい。
【0037】
図1は、本発明の電子写真感光体(以下、単に、「感光体」ともいう。)の基本的な層構成の断面模式図である。
本発明の感光体310は、導電体支持体301上に感光層302を有する。感光層は、少なくとも、電荷発生層304及び電荷輸送層305を有し、導電体支持体301と感光層302の間に中間層303を有していてもよい。また、電荷輸送層305の上に更に保護層306を有していてもよい。
【0038】
本明細書内において、「感光層の最表面層」とは、例えば、保護層を有しない場合(
図1(a))は、電荷輸送層305を指し、保護層を有する場合(
図1(b))は、保護層306を指す。
【0039】
以下に、本発明の感光体の好ましい層構成を挙げる。
(1)導電性支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層、及び、保護層を順に積層した層構成
(2)導電性支持体上に、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する層、及び、保護層を順に積層した層構成
(3)導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、及び、保護層を順に積層した層構成
(4)導電性支持体上に、中間層、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する層、及び、保護層を順に積層した層構成
【0040】
本発明において、電荷発生層及び電荷輸送層は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有し単層として形成することもできるが、繰り返しの使用に伴って生じる残留電位の上昇を抑制でき、さらに、各種の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい観点から、それぞれ分離して層形成することが好ましい。
【0041】
また、耐摩耗性の観点から、保護層を有することが好ましい。したがって、これらの観点から、(1)又は(3)の層構成が好ましく、(3)の層構成が特に好ましい。
【0042】
[1 感光層]
感光層とは、露光により所期の画像に対応する静電潜像を感光体表面に形成するための層のことである。本発明においては、感光層は、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有する。
【0043】
また、前述のとおり、電荷発生層及び電荷輸送層を単層として形成してもよいが、電荷発生層と電荷輸送層とをそれぞれ機能分離させた層構成とすることが好ましい。さらに、感光層は、保護層を有することが好ましい。
【0044】
[1.1 最表面層]
本発明の感光体は、感光層の最表面層が、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有することを特徴とする。
通常、感光層の最表面層は、電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散した構成であり、最表面層が電荷輸送材料を含有することにより、静電潜像を感光体表面に形成することができる。また、最表面層が無機微粒子を含有することにより、耐摩耗性が得られる。本発明においては、さらに、最表面層が、バインダー樹脂として上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートを含有することにより、無機微粒子が凝集しづらく、耐フィルミング性が得られる。
【0045】
「最表面層」とは、通常、「表面層」、「最外層」などとも称されるものであり、トナーと接触する側の最外部に配置される層を表す。最表面層は、導電性支持体側から見て、感光層の最上部に配置されるとともに、感光体の表面を構成する層ともいえる。本発明において、感光体が保護層を有する場合には、最表面層は保護層を指し、感光体が保護層を有しない場合には、最表面層は電荷輸送層、又は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する層、を指す。
【0046】
[1.1.1 バインダー樹脂]
「バインダー樹脂」とは、材料を分散させるための媒体又はマトリクス(母体)として用いられる樹脂のことをいい、本発明に係る感光層の最表面層においては、無機微粒子及び電荷輸送材料を分散させるために用いられる樹脂のことをいう。
【0047】
最表面層のバインダー樹脂は、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートを単独で用いても、他のバインダー樹脂と組み合わせて用いてもよい。他のバインダー樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、電荷輸送材料との相溶性の観点から、ポリカーボネート樹脂が好ましく、例えば、下記一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートである、ビスフェノールZを原料の一つとして重合して得られるビスフェノールZ型ポリカーボネート等が挙げられる。下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートとビスフェノールZ型ポリカーボネートを併用することにより、低温環境下での樹脂のミクロな結晶化を抑制し、低温低湿環境下において、高い耐フィルミング性が得られる。
【0049】
<ポリカーボネート>
最表面層のバインダー樹脂として用いられるポリカーボネートは、下記一般式(1)で表される部分構造を有する。
【化3】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基を表し、R
1又はR
2の少なくとも一方が、アリール基を表す。また、R
3~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0050】
最表面層が、比較的剛直な骨格である上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートを含有することにより、後述の無機微粒子が、バインダー樹脂中で分散しやすく、凝集しづらくなるため、耐フィルミング性が得られる。
【0051】
R1及びR2で表される炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基等が挙げられる。
【0052】
R1及びR2で表される炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基又はフェニル基で置換されたアルキル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。フェニル基で置換されたアルキル基を構成するアルキル基の炭素数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0053】
R3~R10で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、炭素数1~6のアルキル基としては、上記R1及びR2で表される炭素数1~6のアルキル基の例と同義のものが挙げられる。
【0054】
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)及びそのベンゼン環に置換基を導入した化合物を原料の一つとして重合して得られるポリカーボネート、ビスフェノールBP(ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン)及びそのベンゼン環に置換基を導入した化合物を原料の一つとして重合して得られるポリカーボネート等が挙げられる。特に、ビスフェノールAPを原料の一つとして重合して得られるビスフェノールAP型ポリカーボネートは、他のポリカーボネートと比較して、バインダー骨格が剛直であり、高い耐フィルミング性が得られる。
【0055】
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートは、単重合体であってもよく、共重合体であってもよく、共重合体はランダム、ブロック及び交互共重合体のいずれの構造であってもよい。共重合に用いることのできる単量体の例としては、ビスフェノール化合物群全般、ヒドロキシ化合物群全般が挙げられる。例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0056】
一般式(1)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートにおける、一般式(1)で表される構成単位の割合は、両末端を除く全構成単位中、10~100モル%の範囲内であることが好ましく、40~100モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0057】
一般式(1)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートは、一般式(1)で表される構成単位以外の構成単位を一種のみ含んでいてもよいし、二種以上含んでいてもよい。
【0058】
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、10000~100000の範囲内であることが好ましく、20000~50000の範囲内であることがより好ましい。粘度平均分子量が、10000以上であることにより、塗布製膜時の液垂れを防止でき、100000以下であることにより、塗布製膜時の膜厚均一性が向上する。粘度平均分子量は以下の方法で測定できる。
【0059】
<粘度平均分子量(Mv)の測定>
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位:dL/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出した。
η=1.23×10-4Mv0.83
【0060】
また、感光層の摩擦による耐熱性の観点から、一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、100~300℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は以下の方法で測定できる。
【0061】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度はJIS K7122に準拠して、下記のDSCの測定条件のとおりに、昇温、昇降を2サイクル行って測定した。測定装置は、示差走査熱量計(DSC、(株)島津製作所製、「DSC-60」)を使用した。
測定開始温度:25℃
昇温速度:10℃/分
到達温度:300℃
降温速度:5℃/分
【0062】
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの合成方法は、特に限定されず、公知の合成方法を用いることができ、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等が挙げられる。これらの中でも、界面重合法及び溶融エステル交換法であることが好ましい。
【0063】
最表面層のバインダー樹脂における一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、40~100質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0064】
<ビスフェノールAP型ポリカーボネート>
「ビスフェノールAP型ポリカーボネート」とは、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)を原料の一つとして重合して得られるポリカーボネートのことをいう。ビスフェノールAP型ポリカーボネートは、他のポリカーボネートと比較して、バインダー骨格が剛直であるため、高い耐フィルミング性が得られる。
ビスフェノールAP型ポリカーボネートは、下記一般式(1-1)で表される部分構造を有する。
【0065】
【0066】
一般式(1-1)で表される部分構造は、上記一般式(1)で表される部分構造において、式中のR1が、フェニル基であり、R2が、メチル基であり、R3~R10が、それぞれ、水素原子である。
【0067】
一般式(1-1)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートにおける、一般式(1-1)で表される構成単位の割合は、両末端を除く全構成単位中、10~100モル%の範囲内であることが好ましく、40~100モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0068】
一般式(1-1)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートは、一般式(1-1)で表される構成単位以外の構成単位を一種のみ含んでいてもよいし、二種以上含んでいてもよい。
【0069】
一般式(1-1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、10000~100000の範囲内であることが好ましく、20000~50000の範囲内であることがより好ましい。粘度平均分子量が、10000以上であることにより、製膜時の液垂れを防止でき、100000以下であることにより、製膜時の膜厚均一性が向上する。粘度平均分子量は前述の方法で測定できる。
【0070】
また、感光層の摩擦による耐熱性の観点から、一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、100~300℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は前述の方法で測定できる。
【0071】
一般式(1-1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの合成方法は、特に限定されず、公知の合成方法を用いることができ、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等が挙げられる。これらの中でも、界面重合法及び溶融エステル交換法であることが好ましい。
【0072】
<ビスフェノールZ型ポリカーボネート>
「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」とは、ビスフェノールZ(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)を原料の一つとして重合して得られるポリカーボネートのことをいう。上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートとビスフェノールZ型ポリカーボネートを併用することにより、低温環境下での樹脂のミクロな結晶化を抑制し、低温低湿環境下において、高い耐フィルミング性が得られる。
ビスフェノールZ型ポリカーボネートは、下記一般式(2)で表される部分構造を有する。
【0073】
【0074】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートは、単重合体であってもよく、共重合体であってもよく、共重合体はランダム、ブロック及び交互共重合体のいずれの構造であってもよい。共重合に用いることのできる単量体の例としては、ビスフェノール化合物群全般、ヒドロキシ化合物群全般が挙げられる。例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0075】
一般式(2)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートにおける、一般式(2)で表される構成単位の割合は、両末端を除く全構成単位中、10~100モル%の範囲内であることが好ましく、40~100モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0076】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートは、一般式(2)で表される構成単位以外の構成単位を一種のみ含んでいてもよいし、二種以上含んでいてもよい。
【0077】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、10000~100000の範囲内であることが好ましく、10000~100000の範囲内であることが好ましく、20000~50000の範囲内であることがより好ましい。粘度平均分子量が、10000以上であることにより、製膜時の液垂れを防止でき、100000以下であることにより、製膜時の膜厚均一性が向上する。粘度平均分子量は前述の方法で測定できる。
【0078】
また、感光層の摩擦による耐熱性の観点から、一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、100~300℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は前述の方法で測定できる。
【0079】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートの合成方法は、特に限定されず、公知の合成方法を用いることができ、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等が挙げられる。これらの中でも、界面重合法及び溶融エステル交換法であることが好ましい。
【0080】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートの含有量は、一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの総質量に対して、10~90質量%の範囲内であることが好ましく、25~75質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0081】
[1.1.2 無機微粒子]
本発明に係る感光層の最表面層は、無機微粒子を含有することを特徴とする。無機微粒子を含有することにより、耐摩耗性が得られる。
【0082】
本発明に係る無機微粒子は、大気中で安定な化合物であれば特に制限されないが、電荷輸送材料の機能を妨げない観点から絶縁性の酸化物粒子であることが好ましい。例としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
無機微粒子の数一次平均粒径は、5~100nmの範囲内であることが好ましく、20~50nmの範囲内であることがより好ましい。数一次平均粒径が5nm以上であることにより、最表面層を形成する際の塗布液中において、無機微粒子の分散状態が安定する。また、数一次平均粒径が100nm以下であることにより、無機微粒子が凝集し粗大粒子を形成するのを抑制し、耐フィルミング性が得られる。また、無機微粒子に後述の表面改質処理を施す場合、表面改質処理後の数一次平均粒径が、上記範囲内であることが好ましい。
【0084】
本発明における無機微粒子の数一次平均粒径は、以下の方法で測定される数一次平均粒径と定義する。
【0085】
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された試料の10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込む。
次いで、得られた写真画像から、凝集した無機微粒子を除く300個の無機微粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム ルーゼックスAP ソフトウエアVer.1.32(株式会社ニレコ製)を使用して2値化処理して、当該無機微粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出する。そして、当該無機微粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径の平均値を算出して数平均一次粒径とする。ここで、「水平方向フェレ径」とは、上記無機微粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0086】
無機微粒子の形状は、特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であってもよい。
【0087】
無機微粒子の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、5~50質量%の範囲内であることが好ましく、10~30質量%の範囲内であることがより好ましい。5質量%以上であることにより、感光体の耐摩耗性が十分に得られる。また、50質量%以下であることにより、最表面層の強度が十分に得られ、クラック等が発生しづらい。
【0088】
<表面改質処理>
本発明に係る無機微粒子は、表面改質処理を施すことが好ましい。
本発明における「表面改質処理」とは、粒子表面の性状を目的に応じて改質することを目的として、例えば、無機微粒子表面に存在するヒドロキシ基を、封鎖する、反応により変質化する又は除去する等を目的として、無機微粒子表面を金属酸化物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆等することをいう。
表面改質処理を施すことにより、無機微粒子表面に存在するヒドロキシ基にオゾンやNOx等の活性ガスが付着して生じる残留電位の上昇に伴う画像濃度の低下や画像ボケの発生を抑制できる。
【0089】
無機微粒子表面が金属化合物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI-IR等の表面分析手法を複合的に用いることにより高精度に確認される。
【0090】
無機微粒子の表面改質処理は、湿式法で行うことができる。例えば、無機微粒子を水中に分散させて水性スラリーとし、この水性スラリーと、水溶性ケイ酸塩、水溶性のアルミニウム化合物等を混合して行う。水溶性のケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。
【0091】
反応性有機ケイ素化合物による表面改質処理では、有機溶剤や水に対して反応性有機ケイ素化合物を溶解又は懸濁させた液と無機微粒子を混合し、この液を数分から1時間程度撹拌する。そして、場合によっては該液に加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経て乾燥し、表面を有機ケイ素化合物で被覆した無機微粒子を得ることができる。
【0092】
フッ素化合物による表面改質処理では、有機溶剤や水に対してフッ素原子を有する有機ケイ素化合物等を溶解又は懸濁させた液と無機微粒子を混合し、この液を数分から1時間程度撹拌する。そして、場合によっては該液に加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経て乾燥し、表面をフッ素化合物で被覆した無機微粒子を得ることができる。
【0093】
表面改質処理は、複数回行ってもよい。複数回行うことにより、酸化物粒子の疎水化度及び疎水化度分布を改善することができ、画像濃度の低下や画像ボケ或いは転写メモリーの発生を効果的に防止することができる。例えば、ある層では、塗布液中における無機微粒子の分散性を向上させるための表面改質処理を施し、ある層では、無機微粒子の滑り性や表面性を向上させるための表面改質処理を施すことができる。
【0094】
一連の表面改質処理の好ましい例としては、一次処理としてハロゲン化シラン類による表面改質処理を行ない、最終処理としてシラザン化合物類による表面改質処理を行なうことが好ましい。
【0095】
具体的には、ハロゲン化シラン類或いはシリコーンオイル系処理剤によって一次処理し、得られた一次処理粉末を解砕し、さらに解砕粉末をアルキルシラザン系処理剤によって二次処理することにより、疎水化度及び疎水化度分布を改善した無機微粒子を得ることができる。一次処理及び二次処理は、湿式法又は乾式法のどちらでもよい。
【0096】
湿式法とは、前述のとおり、無機微粒子と表面改質剤(「表面修飾剤」ともいう。)を適当な溶剤中で分散することにより当該表面改質剤を無機微粒子表面に付着させる方法である。溶剤中への分散方法としては、例えば、ボールミルやサンドミルなど通常の分散手段を用いることができる。分散処理後は、この分散液を乾燥して溶剤を除去した後、更に加熱処理を行って、当該表面改質剤を無機微粒子表面に反応及び固着させる。
【0097】
乾式法は、溶剤を使用せずに、表面改質剤と無機微粒子とを混合し混練を行うことによって表面改質剤を無機微粒子表面に付着させる方法である。その他の工程に関しては、上記説明した湿式法と同様にして行われる。
【0098】
無機微粒子は、疎水化度が、76%(vol.%)以上であることが好ましい。疎水化度が、76%(vol.%)以上であることにより、無機微粒子の表面に存在するヒドロキシ基が少なくなるため、電位特性(帯電電位や残留電位等)の湿度依存性が小さく、また、画像ボケや転写メモリーの発生による画像ムラが発生しづらい。無機微粒子の疎水化度は、80%(vol.%)以上であることがより好ましい。また、同様の観点から、無機微粒子は、疎水化度分布値が、10%(vol.%)以下であることが好ましい。
【0099】
本発明において、「疎水化度(メタノールウェッタビリティ)」とは、メタノールに対する濡れ性の尺度で示され、以下のように定義される。
【0100】
疎水化度(vol.%)=(a/(a+50))×100
疎水化度及び疎水化度分布値は、以下の方法で測定できる。
【0101】
(疎水化度の測定方法)
内容量200mLのビーカー中に入れた蒸留水50mLに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。次いで、メタノールを、先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。無機微粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(mL)とし、上記式により疎水化度を算出する。
【0102】
(疎水化度分布値の測定方法)
1)測定対象の無機粒子を0.2g秤量し、遠沈管に入れる。試料は、プロットしたい点数分+1本(全沈用)を用意する。
2)駒込ピペットにて、濃度の異なるメタノール溶液各7mlを遠沈管に入れ、しっかりしめる。全沈用は上記疎水化度の測定方法で決定されたメタノール濃度を用いる。
3)ターブラーミキサーで分散させる(90rpm、30秒間)。
4)遠心分離器にかける(3500rpm、10分間)。
5)沈降容積を読みとり、全沈降容積(全部が沈降した容積)を100%としたときの各沈降容積%を求める。
6)上記、各測定値を基に、横軸メタノール濃度(Vol.%)、縦軸沈降容積(Vol.%)のグラフ(疎水化度分布曲線)を作製する。
【0103】
疎水化度分布値は次のように定義される。
【0104】
疎水化度分布曲線を
図2に示す。
図2の分布曲線では、a点のメタノール濃度が疎水化度を表し、a点のメタノール濃度とb点のメタノール濃度の差;Δ(a-b)が本発明における疎水化度分布値を表し、25以下であることが好ましい。
【0105】
一次処理に好ましく用いられるシリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
ハロゲン化シラン類としては、ジメチルジクロロシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等が挙げられる。
【0107】
最終処理に好ましく用いられるシラザン類としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等が挙げられる。
【0108】
上記シリコーンオイル系処理剤及びハロゲン化シラン類以外に、下記に示すアルコキシシラン類、シロキサン類、金属アルコキシド、脂肪酸及びその金属塩等を、シラザン類による最終処理の前に、表面改質剤として用いてもよい。
【0109】
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0110】
シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン等が挙げられる。
【0111】
金属アルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ-i-プロポキシアルミニウム、トリ-n-ブトキシアルミニウム、トリ-s-ブトキシアルミニウム、トリ-t-ブトキシアルミニウム、モノ-s-ブトキシジ-i-プロピルアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ-i-プロポキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラ-s-ブトキシチタン、テトラ-t-ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラ-i-プロポキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム、ジメトキシ錫、ジエトキシ錫、ジ-n-ブトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラ-i-プロポキシ錫、テトラ-n-ブトキシ錫、ジエトキシ亜鉛、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0112】
脂肪酸及びその金属塩としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
【0113】
これらの表面改質剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、アセトン等、場合によっては、水などで希釈して用いることが好ましい。
【0114】
バインダー樹脂中において、均一して分散する観点から、本発明に係る無機微粒子は、表面改質処理により疎水化したシリカであることが好ましい。
【0115】
無機微粒子は、焼成強化を行うことが好ましい。特にシリカを用いる場合、焼成強化していないシリカでは疎水化処理が困難であるため、表面改質処理を施すシリカとしては、焼成強化シリカが好ましい。焼成強化シリカでは、充分な強度を持たせるために、通常500℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で焼成したものを用いる。焼成時間は、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上である。
【0116】
上記焼成条件でシリカを焼成することによって、シリカ粒子の表面に存在しているヒドロキシ基、シラノール基等の官能基が分解され、ケイ素酸化物となる。また、この結果シリカ粒子の比表面積が小さくなり、シラン化合物等により疎水化処理した場合に、効果的に表面改質処理することができる。このようなシリカとしては具体的に、四塩化ケイ素の酸素焔中で高温加水分解により生成されたものが挙げられる。
【0117】
本発明において、好ましく用いられる疎水性シリカを得るための表面改質処理について、手順の一例を挙げる。
シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸等で、温度25℃において、pH4に調整)の中にシリカ粉末を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。その後、シラザン化合物を溶かした溶剤の中に、解砕した処理粉を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。
【0118】
また、次のような方法でも良い。シリカ粉末を反応槽に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながらアルコール水を添加し、オルガノポリシロキサン等のシリコーンオイル系処理液を反応槽に導入して表面改質処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去する。その後、解砕処理を行った後に、窒素雰囲気下、撹拌しながら、アルキルシラザン系処理液を導入して表面改質処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。処理条件を適宜変更することにより、シリカ粉末の疎水化度及び疎水化度分布値を上記範囲内に調整することができる。
【0119】
本発明に係る無機微粒子の生成方法は、特に制限されず、公知の方法により生成できる。また、市販品を用いることができ、疎水性シリカの例としては、日本アエロジル社製の、AEROSIL(登録商標)RX50、R40SX300、NAX50、VP RX40S、SX110等が挙げられる。アルミナの例としては、日本アエロジル社製のAEROSIL(登録商標)RXC65K1等が挙げられる。
【0120】
[1.1.3 電荷輸送材料]
本発明に係る感光層の最表面層は、電荷輸送材料を含有することを特徴とする。電荷輸送材料を含有することにより、静電潜像を感光体表面に形成することができる。
「電荷輸送材料」(「電荷輸送物質」ともいう。)とは、電荷(正孔)を輸送する材料(物質)のことをいう。
【0121】
本発明に係る電荷輸送材料としては、特に制限されず、公知の化合物を使用でき、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン及びポリ-9-ビニルアントラセン等が挙げられる。これらを一種単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0122】
電荷輸送材料の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、30~200質量%の範囲内であることが好ましく、50~150質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0123】
[1.1.4 その他添加剤]
本発明に係る感光層の最表面層は、その他添加剤を含有してもよく、例えば、酸化防止剤、滑剤粒子等を含有することが好ましい。最表面層が酸化防止剤を含有することにより、感光体中ないし感光体表面(感光層の最表面層)に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止又は抑制できる。
【0124】
酸化防止剤としては、特に制限されず、公知のものを使用でき、例えば、特開2006-301247号公報に記載の酸化防止剤を使用することができる。
【0125】
滑剤粒子としては、特に制限されず、例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を使用できる。
フッ素原子含有樹脂粒子としては、特に制限されず、例えば、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が特に好ましい。
【0126】
[1.1.5 最表面層の形成方法]
本発明に係る感光層の最表面層は、溶媒中に上記バインダー樹脂及び電荷輸送材料を溶解させ、かつ、無機微粒子を分散させた塗布液を調製し、公知の方法により感光層の最表面層となるよう塗布し、その後自然乾燥又は加熱により形成される。
【0127】
バインダー樹脂及び電荷輸送材料を溶解させる溶媒としては、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
【0128】
好ましい塗布方法としては、スライドホッパー型装置による塗布、浸漬コーティング、スプレー塗布等が挙げられる。特に、特開昭58-189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型装置による塗布が好ましい。
【0129】
円形スライドホッパー型装置による塗布方法では、スライド面終端と基材は、ある間隙(約2μm~2mm)をもって配置されているため、基材を傷つけることなく、また、性質の異なる層を多層形成させる場合においても、既に塗布された層を損傷することなく塗布できる。さらに、同一溶媒に溶解する性質が異なる層を多層形成させる場合においても、浸漬コーティング法と比べて、積層体が溶媒中に存在する時間がはるかに短いので、下層成分が上層側へほとんど溶出せず、塗布層にも溶出することなく塗布できるので、無機微粒子の分散性を劣化させずに塗布することができる。
【0130】
[1.2 保護層]
本発明に係る感光層は、保護層を有することが好ましく、この場合、保護層は、前述の感光層の最表面層に該当する。保護層は、感光体表面を保護し耐摩耗性や耐傷性を向上させ、トナーのすり抜けの発生を低減し、感光体、ひいては電子写真画像形成装置の長寿命化に寄与する。また、保護層を設けることにより、感光層の厚さのバラツキが軽減するため、良品率(生産性)が向上する。
【0131】
保護層の厚さは、1~30μmの範囲内であることが好ましく、5~20μmの範囲内であることがより好ましい。
【0132】
保護層は、更に酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイル等を添加してもよい。酸化防止剤については特開2000-305291号公報、電子導電剤は特開昭50-137543号公報、同58-76483号公報等に開示されているものが好ましい。
【0133】
[1.3 電荷輸送層]
「電荷輸送層」とは、電荷輸送材料を含有する層のことをいう。したがって、上記保護層も電荷輸送層に含まれるが、本発明においては、電荷輸送材料を含有する層が一層のみの場合は、当該層を電荷輸送層とし、二層の場合は、最表面側の層を保護層、導電性支持体側の層を電荷輸送層とする。電荷輸送材料を含有する層が、二層で形成されることにより、厚さのバラツキが軽減する。
【0134】
したがって、感光層が保護層を有しない場合、すなわち、電荷輸送材料を含有する層が一層のみの場合は、電荷輸送層は、前述の感光層の最表面層に該当する。
【0135】
以下、感光層が保護層を有する場合における電荷輸送層について説明する。
【0136】
電荷輸送層の一例として、電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散した構成が挙げられる。電荷輸送層の電荷輸送材料としては、電荷(正孔)を輸送する物質として、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物等が挙げられる。
【0137】
また、感光層が保護層を有する場合における電荷輸送層には、移動度が高く、分子量が大きい電荷輸送材料を含有させることが好ましい。このような電荷輸送材料としては、公知の化合物を併用でき、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン及びポリ-9-ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの化合物を一種単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0138】
バインダー樹脂は、特に制限されず、公知の樹脂を使用でき、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。さらに、耐クラック性、耐摩耗性及び帯電特性の観点から、ビスフェノールA型、ビスフェノールZ型、ジメチルビスフェノールA型、ビスフェノールA型-ジメチルビスフェノールA型共重合体型のポリカーボネート樹脂等が好ましい。これらは、一種単独で用いても二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0139】
電荷輸送層における電荷輸送材料の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、10~500質量%の範囲内であることが好ましく、20~250質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0140】
電荷輸送層の厚さは、10~50μmの範囲内であることが好ましく、15~40μmの範囲内であることがより好ましい。
【0141】
電荷輸送層は、更に酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイル等を添加してもよい。酸化防止剤については特開2000-305291号公報、電子導電剤は特開昭50-137543号公報、同58-76483号公報等に開示されているものが好ましい。
【0142】
電荷輸送層は、前述の感光層の最表面層の形成方法と同様の方法で形成できる。膜厚20~50μmの領域での生産性向上の観点から、電荷輸送層は、特に、浸漬コーティング法による塗布が好ましい。
【0143】
また、電荷輸送層は、上記電荷輸送材料を真空蒸着することによっても形成することができる。この形態では、上記バインダー樹脂は特に用いなくてもよい。
【0144】
[1.4 電荷発生層]
「電荷発生層」とは、電荷発生材料を含有する層のことをいう。電荷発生層の一例として、電荷発生材料がバインダー樹脂中に分散した構成が挙げられる。
【0145】
電荷発生材料としては、特に制限されず、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルーなどのアゾ原料、ピレンキノン、アントアントロン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴ等のインジゴ顔料、ピランスロン、ジフタロイルピレン等の多環キノン顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。特に、多環キノン顔料及びチタニルフタロシアニン顔料が好ましい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
バインダー樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂を使用でき、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、及びこれらの樹脂の内二つ以上を含む共重合体(例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体)、ポリ-ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられ、特に、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
電荷発生層における電荷発生材料の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、1~600質量%の範囲内であることが好ましく、50~500質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、電荷発生層形成用塗布液に高い分散安定性が得られる。また、比較的電気抵抗の低い感光体が得られるため、繰り返しの使用に伴って生じる残留電位の上昇を抑制することができる。
【0148】
電荷発生層の厚さは、0.01~5μmの範囲内であることが好ましく、0.05~3μmの範囲内であることがより好ましい。
【0149】
電荷発生層は、溶媒中にバインダー樹脂を溶解させ、かつ、電荷発生材料を分散させた塗布液を調製し、公知の方法により塗布し、その後自然乾燥又は加熱により形成される。
【0150】
バインダー樹脂を溶解させる溶媒としては、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等が挙げられる。
【0151】
電荷発生材料の分散手段としては、特に制限されず、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー及びホモミキサー等が挙げられる。
【0152】
塗布前に、塗布液の異物や凝集物を濾過することにより、画像欠陥の発生を防ぐことができ、塗布方法としては、前述の電荷輸送層における塗布方法と同様の方法を使用できる。
【0153】
また、電荷発生層は、上記電荷発生材料を真空蒸着することによっても形成することができる。この形態では、上記バインダー樹脂は特に用いなくてもよい。
【0154】
なお、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有することにより、電荷発生層及び電荷輸送層を単層として形成することもできる。このような単層の一例として、電荷発生材料及び電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散した構成が挙げられる。バインダー樹脂としては、特に制限されず、電荷発生層に用いられるバインダー樹脂と同義のものを使用できる。
【0155】
上記単層構成の場合、単層の厚さは、10~50μmの範囲内であることが好ましく、20~40μmの範囲内であることがより好ましい。
【0156】
[2 導電性支持体]
本発明に係る導電性支持体は、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム又はシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独又はバインダー樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙等が挙げられる。
【0157】
[3 中間層]
本発明の感光体には、導電性支持体と感光層との間にバリアー機能と接着機能を有する中間層を設けることもできる。種々の故障防止などを考慮すると、中間層を設けるのが好ましい。中間層の一例として、バインダー樹脂中に必要に応じて導電性粒子又は金属酸化物粒子が含有された構成が挙げられる。
【0158】
バインダー樹脂としては、特に制限されず、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチン等が挙げられ、特に、アルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0159】
中間層には、電気抵抗調整の目的で各種の導電性粒子又は金属酸化物粒子を含有できる。例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマスなどの各種金属酸化物粒子を用いることができる。また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの導電性粒子(超微粒子)を用いることができる。
【0160】
このような導電性粒子又は金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。
【0161】
これら導電性粒子又は金属酸化物粒子は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上を組み合わせて用いた場合には、固溶体又は融着の形をとってもよい。
【0162】
導電性粒子又は金属酸化物粒子の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、20~400質量%の範囲内であることが好ましく、50~350質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0163】
中間層の厚さは、電気抵抗を調整する観点から、0.1~15μmの範囲内であることが好ましく、0.3~10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0164】
中間層は、溶媒中にバインダー樹脂を溶解させ、かつ、導電性粒子又は金属酸化物粒子を分散させた塗布液を調製し、公知の方法により塗布し、その後自然乾燥又は加熱により形成される。
【0165】
バインダー樹脂を溶解させる溶媒としては、特に制限されず、上記導電性粒子又は金属酸化物粒子を良好に分散させ、ポリアミド樹脂等のバインダー樹脂を溶解することが好ましい。例えば、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール等の炭素数2~4のアルコール類等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0166】
また、塗布液の保存性や、粒子の分散性を向上させる観点から、助溶媒を併用することができ、助溶媒としては、例えば、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0167】
塗布液のバインダー樹脂の濃度は、中間層の厚さや塗布方法に合わせて、適宜選択できる。塗布液における導電性粒子又は金属酸化物粒子含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、20~400質量%の範囲内であることが好ましく、50~200質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0168】
電荷発生材料の分散手段としては、特に制限されず、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー及びホモミキサー等が挙げられる。塗布方法としては、前述の電荷輸送層における塗布方法と同様の方法を使用できる。
【0169】
≪電子写真感光体の製造方法≫
本発明の感光体は、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有する溶液を塗布する工程(下記工程(4))を備え、その他、下記工程(1)~(3)を有する製造方法で製造されることが好ましい。
【0170】
本発明の感光体は、感光層の最表面層が、比較的剛直な骨格を有する上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートを含有することにより、当該最表面層を塗布・乾燥により形成しても、無機微粒子が凝集しづらく、感光体表面の凹凸が軽減され、フィルミング現象を抑制できる。
【0171】
工程(1):導電性支持体の外周面に中間層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、中間層を形成する工程
工程(2):導電性支持体の外周面、又は、工程(1)により形成された中間層の外周面に、電荷発生層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷発生層を形成する工程
工程(3):工程(2)により形成された電荷発生層の外周面に、電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷輸送層を形成する工程
工程(4):工程(2)により形成された電荷発生層の外周面、又は、工程(3)により形成された電荷輸送層の外周面に、最表面層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより最表面層を形成する工程
【0172】
各層を形成するための塗布液において、各成分の濃度は、各層の厚さや生産速度に合わせて適宜選択される。
【0173】
各層を形成するための塗布液において、最表面層に含まれる無機微粒子、電荷発生材料、中間層に含まれる導電性粒子又は金属酸化物粒子等の分散手段としては、特に制限されず、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサーなどを使用できる。
【0174】
各層を形成するための塗布液の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法などの公知の方法が挙げられる。
【0175】
塗膜の乾燥方法は、溶媒の種類、層の厚さに応じて適宜選択することができるが、自然乾燥又は加熱が好ましい。
【0176】
以下、各層の形成工程の詳細を説明する。
【0177】
〈工程(1):中間層の形成〉
中間層は、溶媒中に中間層用バインダー樹脂を溶解させて、中間層形成用塗布液を調製し、必要に応じて導電性粒子又は金属酸化物粒子、分散剤、レベリング剤等の他の成分を分散又は溶解させた後、当該塗布液を導電性支持体上に一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、乾燥することにより形成できる。中間層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0178】
〈工程(2):電荷発生層の形成〉
電荷発生層は、溶媒中に電荷発生層用バインダー樹脂を溶解させた溶液中に、電荷発生材料を分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を導電性支持体上又は中間層上に、一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、乾燥することにより形成できる。電荷発生層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0179】
〈工程(3):電荷輸送層の形成〉
工程(3)は、感光体が保護層を有する場合における電荷輸送層を形成する工程である。
電荷輸送層は、溶媒中に電荷輸送層用バインダー樹脂及び電荷輸送材料を溶解させた、電荷輸送層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を電荷発生層上に一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、乾燥することにより形成できる。電荷輸送層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0180】
〈工程(4):最表面層の形成〉
最表面層は、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を公知の溶媒に添加して、最表面層形成用塗布液を調製し、この最表面層形成用塗布液を、電荷発生層の外周面、又は、電荷輸送層の外周面に、塗布して塗膜を形成し、乾燥することにより形成できる。最表面層形成用塗布液は、円形スライドホッパー塗布装置を用いてスライドホッパー法にて塗布することが好ましく、例えば、特開2015-114454号公報など開示されている方法で塗布できる。
【0181】
≪電子写真画像形成方法≫
本発明の電子写真感光体を用いる電子写真画像形成方法は、少なくとも、
1)電子写真感光体の表面を帯電する工程と、
2)当該電子写真感光体の表面を露光することにより、静電潜像を形成する工程と、
3)当該静電潜像をトナーにより顕像化しトナー画像を形成する現像工程と、
4)当該トナー画像を転写媒体に転写する工程と、
を有し、1)~4)で使用する電子写真感光体が本発明の電子写真感光体であることが好ましい。
【0182】
また、必要に応じて
5)残留トナーを除去するクリーニング工程と、
6)残留電荷を除去する除電工程と、
を有していてもよい。
【0183】
本発明の感光体は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
【0184】
本発明に係る電子写真画像形成方法としては、具体的には、本発明の感光体を使用して、感光体上に帯電装置にて帯電(帯電工程)し、像露光(露光工程)することにより形成された静電潜像を、現像装置を用いて現像(現像工程)することにより顕像化させてトナー画像を得る。このトナー画像をコピー用紙又は転写ベルト等の転写媒体上に転写(転写工程)し、その後、除電工程を経て、次の画像形成のサイクルが行われる。転写ベルト等の転写媒体上に転写されたトナー画像は、コピー用紙上に転写され、コピー用紙上に転写されたトナー画像を接触加熱方式等の定着処理によってコピー用紙に定着(定着工程)させることにより、可視画像を得る。転写工程の後、感光体上に残留したトナー(転写残トナー)は、ゴムブレード等により除去(クリーニング工程)される。このクリーニング工程は、除電工程の前でも後であってもよいが、除電工程が光照射による除電の場合は、クリーニング工程の後の方が、感光体上に残留するトナーが除電光の吸収を妨げることがなく、効果的に除電できるため、好ましい。
【0185】
除電工程においては、交流除電(AC除電)又は光除電のどちらでもよいが、交流除電では、交流電源の設置が必要になり、スペースの問題、又は装置が大がかりになるなどの問題があり、光除電の方が好ましい。
【0186】
≪電子写真画像形成装置≫
本発明の電子写真感光体を用いる電子写真画像形成装置は、少なくとも、
1)本発明の感光体と、
2)感光体上に帯電装置にて帯電する手段と、
3)像露光することにより形成された静電潜像を形成する手段と、
4)現像装置を用いて現像することにより顕像化させてトナー画像を得る現像手段と、
5)このトナー画像を用紙又は転写ベルト等の転写媒体上に転写する手段と、
6)除電手段と、
を有することが好ましい。
【0187】
コピー用紙上に直接転写されたトナー画像及び転写ベルト等の転写媒体を経て用紙上に転写されたトナー画像は接触加熱方式等の定着処理によってコピー用紙に定着する定着手段により可視画像を得る。転写の後、感光体上に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニングブレード等のクリーニング手段によりにより除去される。
【0188】
帯電装置としては、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を電子写真感光体に接触させて帯電させる接触帯電装置、及び、コロナ帯電装置、コロトロン帯電装置、スコロトロン帯電装置などの非接触帯電装置を挙げることができる。使用時のオゾン発生量を低減する観点から、帯電ローラーを電子写真感光体に接触させる接触帯電装置を用いることが好ましい。
【0189】
図3は、本発明の電子写真感光体を備えるタンデム型の電子写真画像形成装置の基本的な構造を示す断面模式図である。
【0190】
図3に示す画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、中間転写体ユニット7と、給紙手段21及び定着手段24とからなる。電子写真画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0191】
4つの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkを中心に、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bk、及び感光体1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0192】
なお、当該電子写真画像形成装置は、感光体1Y、1M、1C、1Bkとして、各々上記説明した本発明の感光体を用いる。
【0193】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、備えるトナーの色がそれぞれイエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(Bk)色というように異なることを除き同じ構成である。よって、以下では、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0194】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを有し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。
【0195】
帯電手段2Yは、感光体1Yの表面を一様に負極性に帯電させる手段である。帯電手段2Yとしては、例えば、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を電子写真感光体に接触させて帯電させる接触帯電装置、及び、コロナ帯電装置、コロトロン帯電装置、スコロトロン帯電装置などの非接触帯電装置が挙げられる。
【0196】
露光手段3Yは、帯電手段2Yにより一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。露光手段3Yとしては、例えば、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子からなるもの、レーザー光学系のものが挙げられる。
【0197】
現像手段4Yは、例えば、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ(図示せず)及び感光体と、この現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置からなるものが挙げられる。
【0198】
定着手段24は、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーからなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。
【0199】
クリーニング手段6Yは、クリーニングブレードより構成されている。なお、このクリーニングブレードより上流側にブラシローラーを設けてもよい。
【0200】
また、感光体1Yの表面に滑剤を供給する(塗布する)滑剤供給手段(図示せず)を設けてもよい。滑剤供給手段は、例えば、一次転写ローラー5Yの下流側かつクリーニング手段6Yの上流側に設けることができる。ただし、クリーニング手段6Yの下流側であってもよい。
【0201】
画像形成装置100としては、感光体と、現像手段、クリーニング手段などの構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段の少なくとも一つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
【0202】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0203】
画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C及び5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する画像支持体:例えば普通紙、透明シートなど)Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、及びレジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材などの感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体という。
【0204】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラー5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0205】
画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラー5Y、5M及び5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M及び1Cに当接する。二次転写ローラー5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。また、装置本体から筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C及び10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とからなる。
【0206】
画像形成部10Y、10M、10C及び10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C及び1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラー71、72、73及び74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラー5Y、5M、5C及び5Bk、並びにクリーニング手段6bとからなる。
【0207】
なお、
図3では、帯電方式として、帯電ローラー方式を一例として示したが、本発明の電子写真感光体を用いる電子写真画像形成装置においては、スコロトロン帯電方式も適用することができる。
【0208】
(トナー及び現像剤)
本発明において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むものであり、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
【0209】
本発明において、画像形成装置に適用するトナーとしては、特に制限されず、公知の各種トナーを用いることができる。トナーとしては、粉砕トナー及び重合トナーのいずれを用いることもできるが、高い画質の画像が得られる観点から、重合トナーを用いることが好ましい。
【0210】
トナーの平均粒径は、特に制限されず、体積基準のメジアン径で2~8μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、解像度をより高くすることができる。
【0211】
また、トナー母体粒子には、平均粒径が、10~300nmの範囲内であるシリカ及びチタニアなどの無機粒子や、0.2~3μmの範囲内である研磨剤等を、適宜量、外部添加することができる。
【0212】
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウム及び鉛などの合金、フェライト及びマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。これらの中でも、特にフェライトが好ましい。
【0213】
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、又は、樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂としては、特に制限されず、例えば、シクロヘキシルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0214】
キャリアの体積基準のメジアン径は、15~100μmの範囲内であることが好ましく、25~60μmの範囲内であることがより好ましい。
【0215】
二成分現像剤に含まれるトナーの濃度は、4.0~8.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【実施例0216】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0217】
≪感光体の作製≫
〔感光体1の作製〕
下記の手順で感光体1を作製した。
【0218】
<導電性支持体>
直径30mmの円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0219】
<中間層>
下記材料を混合し、サンドミルを用いてバッチ式で10時間の分散を行った。一夜静置後に濾過(フィルター:日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルターを使用)し、中間層塗布液を調製した。この塗布液を、上記導電性支持体上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
【0220】
ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製) 1質量部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 3質量部
メタノール 20質量部
【0221】
<電荷発生層>
下記材料を混合し、サンドミルを用いて10時間の分散を行い、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を、上記中間層上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。なお、下記チタニルフタロシアニン顔料は、Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で、少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有する。
【0222】
電荷発生材料:チタニルフタロシアニン顔料 20質量部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000-C:電気化学工業社製)
10質量部
酢酸t-ブチル 700質量部
4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン 300質量部
【0223】
<電荷輸送層>
下記材料を混合し、電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。なお、下記ポリカーボネート樹脂Fは、ビスフェノールZとジヒドロキシ化合物の共重合体であり、粘度平均分子量は33000である。
【0224】
ポリカーボネート樹脂F(ユピゼータ(登録商標)FPC-6535A:三菱ガス化学社製) 100質量部
電荷輸送材料:下記化学構造式CTM-1 50質量部
酸化防止剤(Irganox1010:BASFジャパン社製)
2質量部
テトラヒドロフラン 540質量部
トルエン 135質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 0.3質量部
【0225】
【0226】
<保護層>
下記材料を混合し、溶液を調製した。次いで、無機微粒子として、ヘキサメチルジシラザンで表面改質処理したシリカ粒子AEROSIL(登録商標)RX50(日本アエロジル社製、数一次平均粒径40nm)30質量部をテトラヒドロフラン400質量部中で超音波分散した分散液を、この溶液と混合し、保護層塗布液を調製した。そして、この塗布液を、上記電荷輸送層上に円形スライドホッパー型塗布機で塗布し、120℃、70分の乾燥を行い、乾燥膜厚17μmの保護層を形成し、感光体1を得た。なお、下記ポリカーボネート樹脂Aは、ビスフェノールAPの重合体であり、粘度平均分子量は20000である。
【0227】
ポリカーボネート樹脂A(ユピゼータ(登録商標)FPC-0220:三菱ガス化学社製) 50質量部
ポリカーボネート樹脂F(ユピゼータ(登録商標)FPC-6535A:三菱ガス化学社製) 50質量部
電荷輸送材料:上記化学構造式CTM-1 50質量部
酸化防止剤(Irganox1010:BASFジャパン社製)
2質量部
テトラヒドロフラン 400質量部
トルエン 200質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 0.3質量部
【0228】
〔感光体2~28の作製〕
感光体1の作製において、バインダー樹脂及び無機微粒子の種類及び添加量を表I及び表IIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、感光体2~28を作製した。
【0229】
使用したバインダー樹脂及び無機微粒子を以下に示す。
(バインダー樹脂)
ポリカーボネート樹脂A(ユピゼータ(登録商標)FPC-0220(ビスフェノールAPの重合体)、粘度平均分子量:20000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂B(ユピゼータ(登録商標)FPC-0220と同一骨格、粘度平均分子量:40000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂C(ユピゼータ(登録商標)FPC-0220と同一骨格、粘度平均分子量:50000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂D(ビスフェノールAPとジヒドロキシ化合物の共重合体、粘度平均分子量:30000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂E(ビスフェノールAPとジヒドロキシ化合物の共重合体、粘度平均分子量:35000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂F(ユピゼータ(登録商標)FPC-6535A(ビスフェノールZとジヒドロキシ化合物の共重合体)、粘度平均分子量:33000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂G(ユピゼータ(登録商標)PCZ-300(ビスフェノールZの重合体)、粘度平均分子量:30000、三菱ガス化学社製)
なお、樹脂A~Eについては、上記一般式(1-1)で表される部分構造を有し、樹脂F及びGについては、上記一般式(2)で表される部分構造を有する。
【0230】
(無機微粒子)
疎水性シリカA(AEROSIL(登録商標)RX300、数一次平均粒径7nm、日本アエロジル社製)
疎水性シリカB(AEROSIL(登録商標)NAX50、数一次平均粒径30nm、日本アエロジル社製)
疎水性シリカC(AEROSIL(登録商標)RX50、数一次平均粒径40nm、日本アエロジル社製)
疎水性シリカD(AEROSIL(登録商標)VP RX40S、数一次平均粒径90nm、日本アエロジル社製)
疎水性シリカE(AEROSIL(登録商標)SX110、数一次平均粒径110nm、日本アエロジル社製)
アルミナ(AEROSIL(登録商標)RXC65K1、数一次平均粒径17nm、日本アエロジル社製)
【0231】
〔感光体29~32の作製〕
感光体1の作製において、保護層を形成せず、電荷輸送層の形成を以下のとおりに変更した以外は同様にして、感光体29を作製した。
【0232】
<電荷輸送層>
下記材料を混合し、溶液を調製した。次いで、無機微粒子として、ヘキサメチルジシラザンで表面改質処理したシリカ粒子AEROSIL(登録商標)RX50(日本アエロジル社製、数一次平均粒径40nm)30質量部をテトラヒドロフラン400質量部中で超音波分散した分散液を、この溶液と混合し、電荷輸送層塗布液を調製した。そして、この塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、120℃、70分の乾燥を行い、乾燥膜厚37μmの電荷輸送層を形成し、感光体29を得た。
【0233】
ポリカーボネート樹脂C(ユピゼータ(登録商標)FPC-0220と同一骨格:三菱ガス化学社製) 50質量部
ポリカーボネート樹脂F(ユピゼータ(登録商標)FPC-6535A:三菱ガス化学社製) 50質量部
電荷輸送材料:上記化学構造式CTM-1 50質量部
酸化防止剤(Irganox1010:BASFジャパン社製)
2質量部
テトラヒドロフラン 80質量部
トルエン 120質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 0.3質量部
【0234】
感光体29の作製において、バインダー樹脂及び無機微粒子の種類及び添加量を表IIIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、感光体30~32を作製した。
【0235】
≪評価≫
接触帯電方式を採用しているフルカラー複合機「bizhub C650i」(コニカミノルタ社製)に、作製した感光体1~32をそれぞれ搭載し、電子写真画像形成装置1~32とし、以下の評価を行った。
また、非接触のコロナ帯電方式を採用しているフルカラー複合機「bizhub C754」(コニカミノルタ社製)に、作製した感光体3、18、25及び27をそれぞれ搭載し、電子写真画像形成装置33~36とし、以下の評価を行った。
【0236】
(1)耐摩耗性
電子写真画像形成装置1~36について、温度23℃、湿度50%RHの環境下において、画像比率5%の文字画像をA4横送りで、5万枚両面連続プリントを行う耐久試験を行い、耐久試験前後における最表面層の厚さを測定し、膜厚減耗量を算出し評価した。表面層の厚さは、均一部分(塗布形成において厚さが変動しやすい先端部及び後端部を除く)を、渦電流方式の膜厚測定器「EDDY560C」(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)によってランダムに10か所測定し、その平均値とした。また、耐久試験前後における最表面層の厚さの差を膜厚減耗量とし、100krot(10万回転)当たりの減耗量を算出した。膜厚減耗量の値が小さいほど、耐摩耗性が良好であると評価した。なお、100krot(10万回転)当たりの減耗量が、2.0μm以下であることが実用上好ましい。
【0237】
(2)耐フィルミング性
電子写真画像形成装置1~36について、温度23℃、湿度50%RHの環境下において、画像比率5%の文字画像をA4横送りで、30万枚両面連続プリントを行う耐久試験(以下、「長期試験」ともいう。)、及び、温度10℃湿度20%RHの環境下において、画像比率5%の文字画像をA4横送りで、2万枚両面連続プリントを行う耐久試験(以下、「低温低湿試験」ともいう。)の二種類の耐久試験を行い、耐久試験後の感光体表面における付着物について、目視及び100倍の光学顕微鏡で観察して評価した。
【0238】
◎:付着物が、光学顕微鏡(100倍)で観察されなかった。
〇:付着物が、目視で観察されず、光学顕微鏡(100倍)で観察された。
×:付着物が、目視で観察された。
なお、付着物の長辺長さが200μm以上であると、目視で観察できると考えられる。
◎及び〇を合格とし、×を不合格とした。
【0239】
電子写真画像形成装置24、26、27、28、32及び36については、感光体の摩耗により、印刷枚数30万枚に達する前に画像を出力できなくなったため、長期試験後の評価が実施できなかった。
【0240】
以下、表I~表IVに評価結果を示す。
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
上記評価結果から、本発明の感光体は、感光層の最表面層が、バインダー樹脂としての上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有することにより、長期使用における、耐摩耗性及び耐フィルミング性を両立できることがわかる。また、バインダー樹脂としてのポリカーボネートの種類や組合せ、及び、無機微粒子の種類や粒径を選択することにより、耐フィルミング性の効果が優れることがわかる。