(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189059
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電子写真画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 5/147 20060101AFI20221215BHJP
G03G 5/05 20060101ALI20221215BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20221215BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221215BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G03G5/147 502
G03G5/147 503
G03G5/05 101
G03G5/05 104A
G03G9/097 372
G03G21/00 510
G03G15/08 220
G03G21/00 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097405
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 一敏
(72)【発明者】
【氏名】石田 健
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊行
(72)【発明者】
【氏名】西村 一国
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】細谷 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】金原 規之
【テーマコード(参考)】
2H068
2H077
2H134
2H270
2H500
【Fターム(参考)】
2H068AA03
2H068AA04
2H068AA13
2H068AA14
2H068AA32
2H068BB26
2H068CA06
2H077AD35
2H077GA04
2H134GA01
2H134GB02
2H134HD01
2H134KB14
2H134KB20
2H134KG03
2H134KG07
2H134KG08
2H134KH16
2H270LA02
2H270LA04
2H270LA05
2H270LA06
2H270MA02
2H270MA15
2H270MA28
2H270MA31
2H270MB01
2H270MB43
2H270RA11
2H270RA12
2H270RC10
2H270RC18
2H500AA09
2H500CA36
2H500CB10
2H500EA52D
(57)【要約】
【課題】感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性とを両立する電子写真画像形成システムを提供すること。
【解決手段】本発明の電子写真画像形成システムは、感光体が、導電性支持体上に感光層が積層されて構成されており、感光層が、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、感光層の最表面層が、特定のポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有し、トナー粒子が、トナー母体粒子及び滑剤を含有し、滑剤の体積基準粒度分布が、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有し、小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であり、大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、トナー母体粒子の体積基準平均粒径より大きく、かつ、トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与することによって、当該トナー粒子を前記クリーニング手段に供給するカブリトナー供給機構を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を用いて画像を形成する電子写真画像形成システムであって、
感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段を備え、
前記感光体が、導電性支持体上に感光層が積層されて構成されており、
前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、
前記感光層の最表面層が、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有し、
前記トナー粒子が、トナー母体粒子及び外添剤を含有し、
前記外添剤が、少なくとも滑剤であり、
当該滑剤の体積基準粒度分布が、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有し、当該小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であり、当該大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、前記トナー母体粒子の体積基準平均粒径より大きく、かつ、
前記トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与することによって、当該トナー粒子を前記クリーニング手段に供給するカブリトナー供給機構を備えた
ことを特徴とする電子写真画像形成システム。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基を表し、R
1又はR
2の少なくとも一方が、アリール基を表す。また、R
3~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記感光層が、前記最表面層として保護層を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真画像形成システム。
【請求項3】
前記感光層の最表面層が、下記一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートを更に含有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真画像形成システム。
【化2】
【請求項4】
前記無機微粒子の数平均一次粒径が、5~100nmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【請求項5】
前記無機微粒子が、疎水性シリカである
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【請求項6】
前記小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、1.0~3.0μmの範囲内であり、前記大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、8.0~15.0μmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【請求項7】
前記滑剤が、ステアリン酸亜鉛粒子、ステアリン酸リチウム粒子又はステアリン酸マグネシウム粒子の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【請求項8】
前記カブリトナー供給機構が、前記感光体上の非画像領域のカブリマージンを、前記感光体上の画像領域のカブリマージンと異ならせることによって、前記トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与する
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【請求項9】
前記転写手段が、前記感光体上の非画像領域には、前記トナー粒子と同極性の転写バイアスを印加する
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【請求項10】
前記クリーニング手段が、先端稜線部のエッジ角度が90~130°の範囲内となるように前記感光体の表面に圧接されるクリーニングブレードを備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【請求項11】
前記帯電手段が、接触方式である
ことを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成システムに関する。
より詳しくは、感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性とを両立する電子写真画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成システムに用いられる感光体において、耐摩耗性を向上させるために、最表面層に無機微粒子を含有させる技術が開示されている(特許文献1及び2参照。)。
【0003】
しかし、これらの技術では、耐摩耗性を向上させられるものの、耐フィルミング性が不十分であるという問題があった。特に低温低湿環境や、接触帯電部材による近接放電を伴う環境において、感光体上に現像剤由来の付着物が発生しやすく、当該付着物が、形成した画像上に白抜け斑点が生じる画像不良の原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-316036号公報
【特許文献2】特開2006-301247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性とを両立する電子写真画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した結果、感光層の最表面層に、比較的剛直な骨格を有するポリカーボネート樹脂、無機微粒子及び電荷輸送材料を含有させ、トナー粒子の外添剤として大粒径側にピークを有する滑剤(以下、「大粒径側の滑剤」ともいう。)と小粒径側にピークを有する滑剤(以下、「小粒径側の滑剤」ともいう。)を併用し、さらにトナー粒子を感光体上の非画像領域に付与することによって、当該トナー粒子をクリーニング手段に供給するカブリトナー供給機構を備えることで、感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性とを両立する電子写真画像形成システムを提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0007】
1.トナー粒子を用いて画像を形成する電子写真画像形成システムであって、
感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段を備え、
前記感光体が、導電性支持体上に感光層が積層されて構成されており、
前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、
前記感光層の最表面層が、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有し、
前記トナー粒子が、トナー母体粒子及び外添剤を含有し、
前記外添剤が、少なくとも滑剤であり、
当該滑剤の体積基準粒度分布が、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有し、当該小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であり、当該大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、前記トナー母体粒子の体積基準平均粒径より大きく、かつ、
前記トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与することによって、当該トナー粒子を前記クリーニング手段に供給するカブリトナー供給機構を備えた
ことを特徴とする電子写真画像形成システム。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基を表し、R
1又はR
2の少なくとも一方が、アリール基を表す。また、R
3~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0008】
2.前記感光層が、前記最表面層として保護層を有することを特徴とする第1項に記載の電子写真画像形成システム。
【0009】
3.前記感光層の最表面層が、下記一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートを更に含有する
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の電子写真画像形成システム。
【化2】
【0010】
4.前記無機微粒子の数平均一次粒径が、5~100nmの範囲内である
ことを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【0011】
5.前記無機微粒子が、疎水性シリカである
ことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【0012】
6.前記小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、1.0~3.0μmの範囲内であり、前記大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、8.0~15.0μmの範囲内である
ことを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【0013】
7.前記滑剤が、ステアリン酸亜鉛粒子、ステアリン酸リチウム粒子又はステアリン酸マグネシウム粒子の少なくともいずれかである
ことを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【0014】
8.前記カブリトナー供給機構が、前記感光体上の非画像領域のカブリマージンを、前記感光体上の画像領域のカブリマージンと異ならせることによって、前記トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与する
ことを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【0015】
9.前記転写手段が、前記感光体上の非画像領域には、前記トナー粒子と同極性の転写バイアスを印加する
ことを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【0016】
10.前記クリーニング手段が、先端稜線部のエッジ角度が90~130°の範囲内となるように前記感光体の表面に圧接されるクリーニングブレードを備えた
ことを特徴とする第1項から第9項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【0017】
11.前記帯電手段が、接触方式である
ことを特徴とする第1項から第10項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性とを両立する電子写真画像形成システムを提供することができる。
【0019】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0020】
前述のとおり、感光体の最表面層に無機微粒子を含有させることにより、耐摩耗性は向上する。
一方、無機微粒子を含有していると、感光体の製造工程における、塗布液の加熱乾燥工程において、バインダー樹脂との相互作用により無機微粒子が凝集し、粗大粒子が感光体表面に析出する現象が発生するおそれがある。一般に、感光体表面に残った現像剤由来のトナー粒子は、クリーニングブレードにより掻き取られて回収されるが、感光体表面に粗大粒子が存在する場合は、トナー粒子が掻き取られず感光体表面に付着したままクリーニングブレードを通過しやすくなる。クリーニングブレード通過後の次の帯電プロセス時の放電エネルギーにより、トナー粒子の結着樹脂等の放電分解生成物が生じ、これらの放電生成分解物を媒体として、感光体表面の粗大粒子とトナー外添剤が接着する現象が発生する。この現象が繰り返されることにより、感光体表面に目視可能なサイズの付着物が生じ、画像上に白抜け斑点が生じる。このような現象をフィルミング現象という。
【0021】
塗布後の加熱乾燥工程において、予め分散された無機微粒子は、軟化したバインダー樹脂媒体中を流動していると考えられる。バインダー樹脂骨格が柔軟な化学構造である場合、加熱乾燥工程における無機微粒子の流動性が高まり、無機微粒子の再凝集の促進につながる。ここで、バインダー樹脂として、本発明に係る比較的剛直な骨格を有するポリカーボネート樹脂を用いると、上記の無機微粒子の再凝集が制限され、結果として感光体表面の粗大粒子の発生を抑制できると推測できる。これにより、耐フィルミング性が向上する。
【0022】
さらに、トナー粒子の外添剤として大粒径側の滑剤と小粒径側の滑剤を使用することで、感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性をより向上させることができる。
【0023】
大粒径側の滑剤は、トナー母体粒子と遊離しやすいことから、感光体上の低カバレッジ画像領域においても付着しやすい。一方で、小粒径側の滑剤は、トナー母体粒子と遊離しにくいため、トナー母体粒子が移動する高カバレッジ画像領域へ付着しやすい。このように、大粒径側の滑剤と小粒径側の滑剤を併用することで、カバレッジに関係なく、感光体表面への滑剤の付着が可能となり、効率よくクリーニング工程に供給される。クリーニング工程に供給された滑剤は、感光体表面とクリーニングブレードとの摩擦力を小さくすることで、感光体の摩耗防止や、トナー粒子のすり抜け防止に寄与する。これにより、感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性が向上する。
【0024】
トナー粒子を感光体上の非画像領域に付与することによって、当該トナー粒子をクリーニング手段に供給するカブリトナー供給機構は、滑剤分布の不均一化をさらに抑制するための機構である。
【0025】
大粒径側の滑剤は、トナー母体粒子と遊離しやすいため、現像剤を感光体の軸方向に搬送する際に搬送方向の上流に多く供給されやすい。これにより、感光体の軸方向で付着する滑剤付着量の傾斜が発生し、滑剤が多い部分は感光体表面が削れにくくなることから、軸方向で感光体表面の減耗量が異なり、結果として減耗傾斜が発生する。また、大粒径側の滑剤と小粒径側の滑剤を併用することにより、全体的な滑剤付着量が増えると、それに伴い滑剤メモリの影響も大きくなり、分布のムラが大きくなりやすい。滑剤メモリとは、感光体の軸方向で画像のカバレッジ差があるときに、そのカバレッジ差に応じて生じる滑剤の分布ムラのことである。このように、大粒径側の滑剤と小粒径側の滑剤を併用すると、滑剤付着量の軸方向の傾斜と、滑剤メモリの影響が大きくなり、滑剤付着量の不均一化が生じやすい。
【0026】
ここで、カブリトナー(非画像領域に付着するトナー)を、あえて強制的に発生させ、クリーニング手段に供給することで、滑剤付着量が多い部分の滑剤をトナー粒子が削り取り、滑剤付着量を均一化することができる。
【0027】
以上の発現機構又は作用機構により、本発明の電子写真画像形成システムは、感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性とを両立することが可能であると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】小粒径側と大粒径側にピークを有する滑剤の粒度分布の一例を説明するための図
【
図2】小粒径側と大粒径側にピークを有する滑剤の粒度分布の積算頻度及び含有割合を説明するための図
【
図5】画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図
【
図6】画像形成装置の要部の構成の一例を示す説明用断面図
【
図8】クリーニングブレードと感光体との関係を側面から見た概念図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の電子写真画像形成システムは、トナー粒子を用いて画像を形成する電子写真画像形成システムであって、感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段を備え、前記感光体が、導電性支持体上に感光層が積層されて構成されており、前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、前記感光層の最表面層が、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有し、前記トナー粒子が、トナー母体粒子及び外添剤を含有し、前記外添剤が、少なくとも滑剤であり、当該滑剤の体積基準粒度分布が、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有し、当該小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であり、当該大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、前記トナー母体粒子の体積基準平均粒径より大きく、かつ、前記トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与することによって、当該トナー粒子を前記クリーニング手段に供給するカブリトナー供給機構を備えたことを特徴とする。
この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0030】
本発明の実施形態としては、感光体の最表面層において、厚さのバラツキを抑制する観点から、感光層が、最表面層として保護層を有することが好ましい。
【0031】
低温環境下での樹脂のミクロな結晶化を抑制する観点から、感光層の最表面層が、上記一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートを更に含有することが好ましい。
【0032】
無機微粒子の凝集体である粗大粒子の形成を抑制する観点から、無機微粒子の数平均一次粒径が、5~100nmの範囲内であることが好ましい。
【0033】
バインダー樹脂中へ分散しやすい観点から、無機微粒子が、疎水性シリカであることが好ましい。
【0034】
滑剤を効率よく、かつ、軸方向に均一的にクリーニング手段に供給できる観点から、小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、1.0~3.0μmの範囲内であり、大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、8.0~15.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0035】
電気極性の観点から、滑剤が、ステアリン酸亜鉛粒子、ステアリン酸リチウム粒子又はステアリン酸マグネシウム粒子の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0036】
トナー粒子を効率よく供給できる観点から、カブリトナー供給機構が、感光体上の非画像領域のカブリマージンを、前記感光体上の画像領域のカブリマージンと異ならせることによって、トナー粒子を感光体上の非画像領域に付与することが好ましい。
【0037】
カブリトナー供給機構によって感光体上の非画像領域に付与されたトナー粒子が、転写体に転移しにくくなり、効率よくクリーニング手段に供給できる観点から、転写手段が、感光体上の非画像領域には、トナー粒子と同極性の転写バイアスを印加することが好ましい。
【0038】
クリーニングブレードのスティックスリップ振動が低減され、トナー粒子のすり抜けが改善して、クリーニング性能が向上する観点から、クリーニング手段が、先端稜線部のエッジ角度が90~130°の範囲内となるように感光体の表面に圧接されるクリーニングブレードを備えたことが好ましい。
【0039】
帯電プロセスに伴う有害なオゾンガス発生量が少ないという観点から、帯電手段が、接触方式であることが好ましい。
【0040】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0041】
<1 電子写真画像形成システムの概要>
本発明の電子写真画像形成システム(以下、単に「画像形成システム」ともいう。)は、トナー粒子を用いて画像を形成する電子写真画像形成システムであって、感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段を備え、前記感光体が、導電性支持体上に感光層が積層されて構成されており、前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、前記感光層の最表面層が、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有し、前記トナー粒子が、トナー母体粒子及び外添剤を含有し、前記外添剤が、少なくとも滑剤であり、当該滑剤の体積基準粒度分布が、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有し、当該小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であり、当該大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、前記トナー母体粒子の体積基準平均粒径より大きく、かつ、前記トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与することによって、当該トナー粒子を前記クリーニング手段に供給するカブリトナー供給機構を備えたことを特徴とする。
【0042】
本発明の画像形成システムにおいて、装置部を特に「画像形成装置」といい、本発明の画像形成システムは、当該画像形成装置及び本発明に係るトナー粒子を用いることによって、画像を形成する。
【0043】
以下、トナー粒子及び画像形成装置の各構成について説明する。
【0044】
<2 トナー粒子>
本発明に係るトナー粒子は、トナー母体粒子及び外添剤を含有し、外添剤が、少なくとも滑剤であり、当該滑剤の体積基準粒度分布が、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有し、当該小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であり、当該大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、トナー母体粒子の体積基準平均粒径より大きいことを特徴とする。
【0045】
本発明において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むものであり、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
【0046】
<2.1 滑剤>
本発明に係るトナー粒子は、外添剤として滑剤を含有する。
【0047】
本発明に係る滑剤は、その体積基準粒度分布が、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有し、当該小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であり、当該大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、当該トナー母体粒子の体積基準平均粒径よりも大きいことを特徴とする。
【0048】
感光体上に供給された滑剤は、クリーニングブレードによって感光体上に延展される。感光体上に延展された滑剤は、クリーニングブレードと感光体表面との摩擦を低減することによって、感光体上の転写残トナー(転写媒体に転写されずに感光体上に残ったトナー)のクリーニング性を向上する働きを持っている。
【0049】
本発明に用いられる滑剤としては、感光体への延展性の観点から脂肪酸金属塩が好ましく、さらにモース硬度が2以下であることが好ましい。このような脂肪酸金属塩としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウムから選ばれる金属の塩が好ましい。この中でも脂肪酸亜鉛、脂肪酸リチウム又は脂肪酸マグネシウムが特に好ましい。また、脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、炭素数12以上22以下の高級脂肪酸が好ましい。炭素数12以上の脂肪酸を用いると遊離脂肪酸の発生を抑えることができ、また、脂肪酸の炭素数が22以下であれば、脂肪酸金属塩の融点が高くなりすぎず、良好な定着性を得ることができる。脂肪酸としては、ステアリン酸が特に好ましく、本発明に用いられる脂肪酸金属塩粒子としては、電気極性の観点から、ステアリン酸亜鉛粒子、ステアリン酸リチウム粒子又はステアリン酸マグネシウム粒子が好ましい。
【0050】
また、本発明では、トナー中に含有される滑剤の粒度分布を小粒径側、大粒径側の二つのピークを有する滑剤とするために、それぞれ平均粒径が異なる滑剤を2種用いることが好ましい。また、ここでは、平均粒径のみが異なる2種でもよいし、材料種が異なる滑剤を2種併用してもよい。
【0051】
滑剤の体積基準粒度分布は、画像領域と非画像領域の塗布量差を低減するため、小粒径側と大粒径側の二つのピークを有し、当該小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であり、大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径がトナー母体粒子の体積基準平均粒径よりも大きい。
【0052】
小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、3.0μm以下であるとトナー粒子に付着して感光体上の高カバレッジ画像領域に付着する機能を発揮する。さらに小粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、1.0~3.0μmの範囲内であることが好ましい。1.0μm以上であることによって、滑剤付着量が少なくなりすぎず、3.0μm以下であることによって、トナー母体粒子と遊離しにくくなり、低カバレッジ画像領域に付着しやすくなる。
【0053】
大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径は、トナー母体粒子の体積基準平均粒径より大きい。トナー母体粒子の体積平均粒径より大きいと、トナー粒子に付着せず、トナー粒子とは独立に非画像領域に現像される機能を発揮する。さらに、大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準平均粒径が、8.0~15.0μmの範囲内であるとことが好ましい。8.0μm以上であることによって、トナー母体粒子と遊離しやすくなり、低カバレッジ画像領域へ付着しやすくなり、15.0μm以下であることによって、軸方向の付着量のバラツキが抑えられる。
【0054】
滑剤の体積基準粒径は、例えば下記手順のとおり、トナーよりトナー母体粒子と外添剤を分離した後、例えばフロー式粒子像分析装置「FPIA-2100」(シスメックス社製)を用いて測定できる。
【0055】
トナー粒子5gと0.7%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液50mlを100mlのビーカーに入れ、マグネチックスターラー「Model MS500D」(ヤマト科学製)にて300rpm、5分撹拌し分散する。
【0056】
上記分散後、超音波ホモジナイザー「US-1200T」(日本精機製作所製)を用いて、周波数20kHz、OUTPUT目盛り3、TUNING目盛り6の出力にて、10分間、トナー分散液に超音波振動を与える。
【0057】
トナー分散液を下記条件で遠心分離機「Model H-900」(コクサン製)にかけ、分離する。
ローター :PC-400(半径18.1cm)
回転数 :1200rpm(292G)
時間 :10分
【0058】
遠心分離後に、上澄み液を40ml採取する。この際、沈降したトナー母体粒子が入らないようにピペットを使用し、上澄み液を丁寧に採取する。
【0059】
採取した上澄み液に含まれる外添剤の体積基準粒径を、フロー式粒子像分析装置「FPIA-2100」(シスメックス社製)を用いて測定することにより、体積基準粒度分布と体積基準平均粒径をそれぞれ求めることができる。
【0060】
なお、測定範囲は0.6~400μmで行う。トナー母体粒子に添加される滑剤以外の外添剤は、0.6μm以下であるので、0.6~400μmで測定することで、滑剤以外の外添剤は測定されず、この測定範囲で測定される粒度分布は滑剤の粒度分布に相当する。
【0061】
図1は、小粒径側と大粒径側にピークを有する滑剤の体積基準粒度分布の一例を説明するための図であり、ここで、aは、従来外添剤としてトナー母体粒子に添加されていた滑剤の粒度分布の一例である。bは本発明に係る小粒径側と大粒径側に二つのピークを有する滑剤の体積基準粒度分布の一例であり、P1が小粒径側のピークであり、P2が大粒径側のピークを示す。Dは粒度分布曲線の極小値の粒径を示す。この極小値の粒径Dより小粒径側と大粒径側に分けて、含有割合を求める。すなわち、それぞれの含有割合は、
図1示した滑剤の体積基準粒度分布において、極小値の粒径Dで小粒径側、大粒径側に二分割したときの値である。
【0062】
図2は、滑剤の体積基準粒度分布の頻度の積算値を表し、小粒径側にピークを有する滑剤と大粒径側にピークを有する滑剤の含有割合を説明するための図である。ここでは、粒度分布の極小値の粒径Dでの積算頻度値(Dとの交点)が小粒径側にピークを有する滑剤の含有割合を表す。
【0063】
本発明に係る滑剤は、滑剤の体積基準粒度分布が、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有し、小粒径側にピークを有する滑剤の含有割合が、全滑剤の50~70質量%であることが好ましい。この範囲内であると、画像領域と非画像領域に供給される滑剤の割合が、ほぼ同じになり、感光体表面全面に滑剤を供給できるので好ましい。
【0064】
それぞれの含有割合は、
図1に示した滑剤の体積基準粒度分布において、極小値の粒径Dで小粒径側、大粒径側に二分割したときの値である。
【0065】
トナー中における滑剤の含有量は、トナー母体粒子100質量部に対して、滑剤の含有量が0.01~0.5質量部であることが好ましい。この範囲内あると、十分な潤滑効果を得ることができる。
【0066】
<2.2 トナー母体粒子>
トナー母体粒子としては、公知のトナー母体粒子を用いることができる。このようなトナー母体粒子は、具体的には少なくとも結着樹脂(以下、「トナー用樹脂」ともいう。)及び着色剤を含有するトナー母体粒子よりなるものである。また、このトナー母体粒子には、必要に応じて、さらに離型剤及び荷電制御剤などの他の成分を含有することもできる。
【0067】
トナー母体粒子の体積基準平均粒径は、5.0~8.0μmの範囲内であることが好ましい。トナー母体粒子の体積基準平均粒径がこの範囲内であると高精細な画像を得ることができる。
【0068】
トナー母体粒子の平均円形度(形状係数)は、流動性向上の観点から、0.930~0.990が好ましく、より好ましくは0.955~0.980である。
【0069】
(トナー母体粒子の平均円形度及び体積基準平均粒径の測定法)
トナー母体粒子の平均円形度及び体積基準平均粒径は、例えばフロー式粒子像分析装置「FPIA-2100」(シスメックス社製)を用いて測定することができる。具体的には、トナーを界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA-2100」(シスメックス社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行い、平均円形度と体積基準平均粒径を測定することができる。
【0070】
円形度については、個々のトナー母体粒子について下記式(1)により、円形度を算出し、平均円形度を算出する。ここで、「円相当径」とは粒子像と同じ面積を有する円の直径をいう。
【0071】
式(1):
円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影像の周囲長
【0072】
(トナー用結着樹脂)
トナーを構成する結着樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0073】
このような結着樹脂としては、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられているものを特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、スチレン系樹脂やアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、スチレンアクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン系樹脂、アミド樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0074】
この中でも、溶融特性が低粘度で高いシャープメルト性を有する点から、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系共重合体樹脂、及びポリエステル樹脂が好適に挙げられる。主要樹脂として、スチレンアクリル系共重合体樹脂を50%以上用いることが好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
また、結着樹脂を得るための重合性単量体としては、例えばスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、などのアクリル酸エステル系単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸エスレル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、及びフマル酸などのカルボン酸系単量体などを使用することができる。
【0076】
これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
トナーを構成する結着樹脂としては、低温定着化の観点からガラス転移温度(Tg)が30~50℃であることが好ましい。ガラス転移温度がこの範囲内であると低温定着性と耐熱保管性が良好となる。
【0078】
結着樹脂のガラス転移温度の測定は、「ダイアモンド DSC(Diamond DSC)」(パーキンエルマー社製)を用いて行うことができる。
【0079】
測定手順としては、結着樹脂3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。測定条件としては、測定温度0~200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、加熱-冷却-加熱(Heat-Cool-Heat)の温度制御で行い、その2回目の加熱(2nd.Heat)におけるデータを基に解析を行う。
【0080】
ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点として示す。
【0081】
トナーのガラス転移温度(Tg)は、測定試料をトナーとして上記と同様の方法によって測定されるものである。
【0082】
さらに、結着樹脂の軟化温度が80~130℃であることが好ましく、より好ましくは90~120℃である。軟化温度は、例えばフローテスター「CFT-500D」(島津製作所製)によって測定することができる。
【0083】
軟化温度は、例えば以下のように測定される。
【0084】
まず、温度20±1℃、相対湿度50±5%RHの環境下において、試料1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP-10A」(島津製作所製)によって3820kg/cm2の力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、温度24±5℃、相対温度50±20%RHの環境下において、フローテスター「CFT-500D」(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度T0ffsetが、試料の軟化温度とされる。
【0085】
トナーの軟化温度は上記と同様に試料をトナーとして測定されるものである。
【0086】
(着色剤)
トナー母体粒子を構成する着色剤としては、公知の無機又は有機着色剤を使用することができる。
【0087】
着色剤の添加量はトナー全体に対して1~30質量%、好ましくは2~20質量%の範囲とされる。
【0088】
(離型剤)
トナー母体粒子には、離型剤が含有されていてもよい。ここに、離型剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステルワックス、サゾールワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油ワックス及び蜜ろうワックスなどを挙げることができる。
【0089】
トナー母体粒子中における離型剤の含有割合としては、トナー母体粒子形成用結着樹脂100質量部に対して通常1~30質量部とされ、より好ましくは、5~20質量部の範囲とされる。
【0090】
(荷電制御剤)
トナー母体粒子には、荷電制御剤が含有されていてもよい。例えば、サリチル酸誘導体の亜鉛やアルミニウムによる金属錯体(サリチル酸金属錯体)、カリックスアレーン系化合物、有機ホウ素化合物、及び含フッ素4級アンモニウム塩化合物などを挙げることができる。
【0091】
トナー母体粒子中における荷電制御剤の含有割合としては、結着樹脂100質量部に対して通常0.1~5.0質量部の範囲とされる。
【0092】
<2.3 トナー母体粒子の製造方法>
本発明に係るトナー粒子は、トナー母体粒子に外添剤が添加されてなるものであるが、当該トナー母体粒子を製造する方法としては、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、及び分散重合法などが挙げられる。
【0093】
これらの中でも、高画質化、高安定性に有利となる粒径の均一性、形状の制御性、コア・シェル構造形成の容易性の観点より、乳化凝集法を採用することが好ましい。
【0094】
乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂微粒子の分散液を、必要に応じて着色剤微粒子などのトナー母体粒子構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー母体粒子を製造する方法である。
【0095】
ここで、樹脂微粒子を、任意に離型剤、荷電制御剤などの内添剤を含有したものとしてもよく、組成の異なる樹脂によりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。
【0096】
また、凝集時に、異種の樹脂微粒子を添加し、コア・シェル構造のトナー母体粒子とすることもトナー構造設計の観点から好ましい。
【0097】
樹脂微粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、又はいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。樹脂微粒子に内添剤を含有させる場合には、中でもミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
【0098】
<2.4 滑剤以外の外添剤>
トナー母体粒子には、滑剤の他にトナーとしての帯電性能や流動性を向上させる観点から、その表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの微粒子を外添剤として添加することが好ましい。無機微粒子としては、シリカ、チタニア、又はアルミナなどの無機酸化物微粒子を使用することが好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されていることが好ましい。
【0099】
有機微粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、及びスチレン-メチルメタクリレート共重合体などの重合体を使用することができる。
【0100】
上記無機微粒子や、有機微粒子の添加量としては、その合計が、トナー母体粒子100質量部に対して0.05~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~3質量部である。
【0101】
(金属酸化物微粒子)
本発明に係るトナー粒子には、さらに感光体表面の研磨効果を高める目的で、研磨効果の高い金属酸化物微粒子を添加することが好ましい。研磨効果の高い金属酸化物微粒子としては、個数平均一次粒径が、100~300nmの範囲内であるシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、チタン酸カルシウム微粒子又はチタン酸ストロンチウム微粒子が好ましい。これらの中でも、チタン酸カルシウム微粒子又はチタン酸ストロンチウム微粒子が特に好ましい。これらの金属酸化物微粒子は、トナー粒子に外添剤として含有されることによって、クリーニングブレード先端部分に堆積して研磨剤として感光体表面のリフレッシュ効果を発揮し、感光体上に延展された過剰の滑剤を研磨することで感光体表面の黒点状の画像不良の発生を抑制する効果や放電生成物を除去する効果があり、また、トナーの流動性や帯電性能を制御する効果も有している。また、これらの研磨効果のある金属酸化物微粒子の含有量は、トナー母体粒子100質量部に対して金属酸化物微粒子0.05~5質量部、好ましくは0.1~3質量部の範囲内であることが好ましい。
【0102】
これら金属酸化物微粒子は、耐熱保管性及び環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
【0103】
<2.5 外添剤添加方法>
外添剤添加工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に外添剤を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。
【0104】
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置が挙げられる。
【0105】
また、本発明においては、滑剤の粒度分布を制御するために滑剤を2段階で添加混合することが好ましい。具体的には、小粒径側にピークを有する滑剤を先に添加して混合した後、大粒径側にピークを有する滑剤を添加し、混合することが好ましい。金属酸化物微粒子などの滑剤以外の外添剤は、上記2段階の任意の工程で添加混合すればよい。
【0106】
<2.6 現像剤>
本発明に係るトナー粒子は、磁性又は非磁性の一成分現像剤として本発明の画像形成システムに使用することもできるが、キャリア粒子と混合して二成分現像剤として使用してもよい。このトナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリア粒子としては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、及びそれらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリア粒子としては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆した樹脂被覆キャリア(コートキャリア)粒子や、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなるバインダー型キャリア粒子など用いてもよい。
【0107】
樹脂被覆キャリア粒子を構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、及びフッ素樹脂などが挙げられる。また、バインダー型キャリア粒子を構成するバインダー樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン-アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、及びフェノール樹脂などを使用することができる。これらの中では、スチレン-アクリル系樹脂やアクリル系樹脂でコートした樹脂被覆キャリア粒子が、帯電性、耐久性の観点から好ましい。
【0108】
キャリア粒子は、高画質の画像が得られること、及びキャリア付着が抑制されることから、その体積平均粒径が20~100μmであることが好ましく、さらに好ましくは25~80μmである。キャリア粒子の体積平均粒径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック社製)により測定することができる。
【0109】
<3 感光体>
本発明に係る感光体は、導電性支持体上に感光層が積層されて構成されており、前記感光層が、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、前記感光層の最表面層が、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有することを特徴とする。
【0110】
感光体には、負帯電性感光体及び正帯電性感光体の二種類があり、負帯電性感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、電荷発生層、電荷輸送層を順に積層した層構成をとる。また、正帯電性感光体である場合には、導電性支持体上に、少なくとも、電荷輸送層、電荷発生層を順に積層した層構成をとる。本発明においては、負帯電性感光体であることが好ましい。
【0111】
図3は、本発明に係る感光体の基本的な層構成の断面模式図である。本発明に係る感光体310は、導電体支持体301上に感光層302を有する。感光層は、少なくとも、電荷発生層304及び電荷輸送層305を有し、導電体支持体301と感光層302の間に中間層303を有していてもよい。また、電荷輸送層305の上に更に保護層306を有していてもよい。
【0112】
本明細書内において、「感光層の最表面層」とは、例えば、保護層を有しない場合(
図3(a))は、電荷輸送層305を指し、保護層を有する場合(
図3(b))は、保護層306を指す。
【0113】
以下に、本発明に係る感光体の好ましい層構成を挙げる。
(1)導電性支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層、及び、保護層を順に積層した層構成
(2)導電性支持体上に、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する層、及び、保護層を順に積層した層構成
(3)導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、及び、保護層を順に積層した層構成
(4)導電性支持体上に、中間層、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する層、及び、保護層を順に積層した層構成
【0114】
本発明において、電荷発生層及び電荷輸送層は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有し単層として形成することもできるが、繰り返しの使用に伴って生じる残留電位の上昇を抑制でき、さらに、各種の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい観点から、それぞれ分離して層形成することが好ましい。
【0115】
また、耐摩耗性の観点から、保護層を有することが好ましい。したがって、これらの観点から、(1)又は(3)の層構成が好ましく、(3)の層構成が特に好ましい。
【0116】
<3.1 感光層>
感光層とは、露光により所期の画像に対応する静電潜像を感光体表面に形成するための層のことである。本発明においては、感光層は、少なくとも、電荷発生層及び電荷輸送層を有する。
【0117】
また、前述のとおり、電荷発生層及び電荷輸送層を単層として形成してもよいが、電荷発生層と電荷輸送層とをそれぞれ機能分離させた層構成とすることが好ましい。さらに、感光層は、保護層を有することが好ましい。
【0118】
<3.1.1 最表面層>
本発明に係る感光体は、感光層の最表面層が、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有することを特徴とする。
通常、感光層の最表面層は、電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散した構成であり、最表面層が電荷輸送材料を含有することにより、静電潜像を感光体表面に形成することができる。また、最表面層が無機微粒子を含有することにより、耐摩耗性が得られる。本発明においては、さらに、最表面層が、バインダー樹脂として下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートを含有することにより、無機微粒子が凝集しづらく、耐フィルミング性が得られる。
【0119】
「最表面層」とは、通常、「表面層」、「最外層」などとも称されるものであり、トナーと接触する側の最外部に配置される層を表す。最表面層は、導電性支持体側から見て、感光層の最上部に配置されるとともに、感光体の表面を構成する層ともいえる。本発明において、感光体が保護層を有する場合には、最表面層は保護層を指し、感光体が保護層を有しない場合には、最表面層は電荷輸送層、又は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する層、を指す。
【0120】
(バインダー樹脂)
「バインダー樹脂」とは、材料を分散させるための媒体又はマトリクス(母体)として用いられる樹脂のことをいい、本発明に係る感光層の最表面層においては、無機微粒子及び電荷輸送材料を分散させるために用いられる樹脂のことをいう。
【0121】
最表面層のバインダー樹脂は、下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートを単独で用いても、他のバインダー樹脂と組み合わせて用いてもよい。他のバインダー樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0122】
これらの中でも、電荷輸送材料との相溶性の観点から、ポリカーボネート樹脂が好ましく、例えば、下記一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートである、ビスフェノールZを原料の一つとして重合して得られるビスフェノールZ型ポリカーボネート等が挙げられる下記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートとビスフェノールZ型ポリカーボネートを併用することにより、低温環境下での樹脂のミクロな結晶化を抑制し、低温低湿環境下において、高い耐フィルミング性が得られる。
【0123】
(ポリカーボネート)
最表面層のバインダー樹脂として用いられるポリカーボネートは、下記一般式(1)で表される部分構造を有する。
【化3】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基を表し、R
1又はR
2の少なくとも一方が、アリール基を表す。また、R
3~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0124】
最表面層が、比較的剛直な骨格である上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートを含有することにより、後述の無機微粒子が、バインダー樹脂中で分散しやすく、凝集しづらくなるため、耐フィルミング性が得られる。
【0125】
R1及びR2で表される炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基等が挙げられる。
【0126】
R1及びR2で表される炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基又はフェニル基で置換されたアルキル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。フェニル基で置換されたアルキル基を構成するアルキル基の炭素数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0127】
R3~R10で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、炭素数1~6のアルキル基としては、上記R1及びR2で表される炭素数1~6のアルキル基の例と同義のものが挙げられる。
【0128】
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)及びそのベンゼン環に置換基を導入した化合物を原料の一つとして重合して得られるポリカーボネート、ビスフェノールBP(ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン)及びそのベンゼン環に置換基を導入した化合物を原料の一つとして重合して得られるポリカーボネート等が挙げられる。特に、ビスフェノールAPを原料の一つとして重合して得られるビスフェノールAP型ポリカーボネートは、他のポリカーボネートと比較して、バインダー骨格が剛直であり、高い耐フィルミング性が得られる。
【0129】
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートは、単重合体であってもよく、共重合体であってもよく、共重合体はランダム、ブロック及び交互共重合体のいずれの構造であってもよい。共重合に用いることのできる単量体の例としては、ビスフェノール化合物群全般、ヒドロキシ化合物群全般が挙げられる。例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0130】
一般式(1)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートにおける、一般式(1)で表される構成単位の割合は、両末端を除く全構成単位中、10~100モル%の範囲内であることが好ましく、40~100モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0131】
一般式(1)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートは、一般式(1)で表される構成単位以外の構成単位を一種のみ含んでいてもよいし、二種以上含んでいてもよい。
【0132】
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、10000~100000の範囲内であることが好ましく、20000~50000の範囲内であることがより好ましい。粘度平均分子量が、10000以上であることにより、塗布製膜時の液垂れを防止でき、100000以下であることにより、塗布製膜時の膜厚均一性が向上する。粘度平均分子量は以下の方法で測定できる。
【0133】
(粘度平均分子量(Mv)の測定)
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位:dL/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出した。
η=1.23×10-4Mv0.83
【0134】
また、感光層の摩擦による耐熱性の観点から、一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、100~300℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は以下の方法で測定できる。
【0135】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
ガラス転移温度はJIS K7122に準拠して、下記のDSCの測定条件のとおりに、昇温、昇降を2サイクル行って測定した。測定装置は、示差走査熱量計(DSC、(株)島津製作所製、「DSC-60」)を使用した。
測定開始温度:25℃
昇温速度:10℃/分
到達温度:300℃
降温速度:5℃/分
【0136】
一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの合成方法は、特に限定されず、公知の合成方法を用いることができ、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等が挙げられる。これらの中でも、界面重合法及び溶融エステル交換法であることが好ましい。
【0137】
最表面層のバインダー樹脂における一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、40~100質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0138】
(ビスフェノールAP型ポリカーボネート)
「ビスフェノールAP型ポリカーボネート」とは、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)を原料の一つとして重合して得られるポリカーボネートのことをいう。ビスフェノールAP型ポリカーボネートは、他のポリカーボネートと比較して、バインダー骨格が剛直であるため、高い耐フィルミング性が得られる。
ビスフェノールAP型ポリカーボネートは、下記一般式(1-1)で表される部分構造を有する。
【0139】
【0140】
一般式(1-1)で表される部分構造は、上記一般式(1)で表される部分構造において、式中のR1が、フェニル基であり、R2が、メチル基であり、R3~R10が、それぞれ、水素原子である。
【0141】
一般式(1-1)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートにおける、一般式(1-1)で表される構成単位の割合は、両末端を除く全構成単位中、10~100モル%の範囲内であることが好ましく、40~100モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0142】
一般式(1-1)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートは、一般式(1-1)で表される構成単位以外の構成単位を一種のみ含んでいてもよいし、二種以上含んでいてもよい。
【0143】
一般式(1-1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、10000~100000の範囲内であることが好ましく、20000~50000の範囲内であることがより好ましい。粘度平均分子量が、10000以上であることにより、製膜時の液垂れを防止でき、100000以下であることにより、製膜時の膜厚均一性が向上する。粘度平均分子量は前述の方法で測定できる。
【0144】
また、感光層の摩擦による耐熱性の観点から、一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、100~300℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は前述の方法で測定できる。
【0145】
一般式(1-1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの合成方法は、特に限定されず、公知の合成方法を用いることができ、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等が挙げられる。これらの中でも、界面重合法及び溶融エステル交換法であることが好ましい。
【0146】
(ビスフェノールZ型ポリカーボネート)
「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」とは、ビスフェノールZ(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)を原料の一つとして重合して得られるポリカーボネートのことをいう。上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートとビスフェノールZ型ポリカーボネートを併用することにより、低温環境下での樹脂のミクロな結晶化を抑制し、低温低湿環境下において、高い耐フィルミング性が得られる。
ビスフェノールZ型ポリカーボネートは、下記一般式(2)で表される部分構造を有する。
【0147】
【0148】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートは、単重合体であってもよく、共重合体であってもよく、共重合体はランダム、ブロック及び交互共重合体のいずれの構造であってもよい。共重合に用いることのできる単量体の例としては、ビスフェノール化合物群全般、ヒドロキシ化合物群全般が挙げられる。例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0149】
一般式(2)で表される部分構造(構成単位)を有するポリカーボネートにおける、一般式(2)で表される構成単位の割合は、両末端を除く全構成単位中、10~100モル%の範囲内であることが好ましく、40~100モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0150】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートは、一般式(2)で表される構成単位以外の構成単位を一種のみ含んでいてもよいし、二種以上含んでいてもよい。
【0151】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、10000~100000の範囲内であることが好ましく、10000~100000の範囲内であることが好ましく、20000~50000の範囲内であることがより好ましい。粘度平均分子量が、10000以上であることにより、製膜時の液垂れを防止でき、100000以下であることにより、製膜時の膜厚均一性が向上する。粘度平均分子量は前述の方法で測定できる。
【0152】
また、感光層の摩擦による耐熱性の観点から、一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、100~300℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は前述の方法で測定できる。
【0153】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートの合成方法は、特に限定されず、公知の合成方法を用いることができ、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等が挙げられる。これらの中でも、界面重合法及び溶融エステル交換法であることが好ましい。
【0154】
一般式(2)で表される部分構造を有するポリカーボネートの含有量は、一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートの総質量に対して、10~90質量%の範囲内であることが好ましく、25~75質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0155】
(無機微粒子)
本発明に係る感光層の最表面層は、無機微粒子を含有することを特徴とする。無機微粒子を含有することにより、耐摩耗性が得られる。
【0156】
本発明に係る無機微粒子は、大気中で安定な化合物であれば特に制限されないが、電荷輸送材料の機能を妨げない観点から絶縁性の酸化物粒子であることが好ましい。例としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0157】
無機微粒子の数一次平均粒径は、5~100nmの範囲内であることが好ましく、20~50nmの範囲内であることがより好ましい。数一次平均粒径が5nm以上であることにより、最表面層を形成する際の塗布液中において、無機微粒子の分散状態が安定する。また、数一次平均粒径が100nm以下であることにより、無機微粒子が凝集し粗大粒子を形成するのを抑制し、耐フィルミング性が得られる。また、無機微粒子に後述の表面改質処理を施す場合、表面改質処理後の数一次平均粒径が、上記範囲内であることが好ましい。
【0158】
本発明における無機微粒子の数一次平均粒径は、以下の方法で測定される数一次平均粒径と定義する。
【0159】
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された試料の10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込む。
次いで、得られた写真画像から、凝集した無機微粒子を除く300個の無機微粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム ルーゼックスAP ソフトウエアVer.1.32(株式会社ニレコ製)を使用して2値化処理して、当該無機微粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出する。そして、当該無機微粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径の平均値を算出して数平均一次粒径とする。ここで、「水平方向フェレ径」とは、上記無機微粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0160】
無機微粒子の形状は、特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であってもよい。
【0161】
無機微粒子の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、5~50質量%の範囲内であることが好ましく、10~30質量%の範囲内であることがより好ましい。5質量%以上であることにより、感光体の耐摩耗性が十分に得られる。また、50質量%以下であることにより、最表面層の強度が十分に得られ、クラック等が発生しづらい。
【0162】
(表面改質処理)
本発明に係る無機微粒子は、表面改質処理を施すことが好ましい。
本発明における「表面改質処理」とは、粒子表面の性状を目的に応じて改質することを目的として、例えば、無機微粒子表面に存在するヒドロキシ基を、封鎖する、反応により変質化する又は除去する等を目的として、無機微粒子表面を金属酸化物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆等することをいう。
表面改質処理を施すことにより、無機微粒子表面に存在するヒドロキシ基にオゾンやNOx等の活性ガスが付着して生じる残留電位の上昇に伴う画像濃度の低下や画像ボケの発生を抑制できる。
【0163】
無機微粒子表面が金属化合物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI-IR等の表面分析手法を複合的に用いることにより高精度に確認される。
【0164】
無機微粒子の表面改質処理は、湿式法で行うことができる。例えば、無機微粒子を水中に分散させて水性スラリーとし、この水性スラリーと、水溶性ケイ酸塩、水溶性のアルミニウム化合物等を混合して行う。水溶性のケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。
【0165】
反応性有機ケイ素化合物による表面改質処理では、有機溶剤や水に対して反応性有機ケイ素化合物を溶解又は懸濁させた液と無機微粒子を混合し、この液を数分から1時間程度撹拌する。そして、場合によっては該液に加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経て乾燥し、表面を有機ケイ素化合物で被覆した無機微粒子を得ることができる。
【0166】
フッ素化合物による表面改質処理では、有機溶剤や水に対してフッ素原子を有する有機ケイ素化合物等を溶解又は懸濁させた液と無機微粒子を混合し、この液を数分から1時間程度撹拌する。そして、場合によっては該液に加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経て乾燥し、表面をフッ素化合物で被覆した無機微粒子を得ることができる。
【0167】
表面改質処理は、複数回行ってもよい。複数回行うことにより、酸化物粒子の疎水化度及び疎水化度分布を改善することができ、画像濃度の低下や画像ボケ或いは転写メモリーの発生を効果的に防止することができる。例えば、ある層では、塗布液中における無機微粒子の分散性を向上させるための表面改質処理を施し、ある層では、無機微粒子の滑り性や表面性を向上させるための表面改質処理を施すことができる。
【0168】
一連の表面改質処理の好ましい例としては、一次処理としてハロゲン化シラン類による表面改質処理を行ない、最終処理としてシラザン化合物類による表面改質処理を行なうことが好ましい。
【0169】
具体的には、ハロゲン化シラン類或いはシリコーンオイル系処理剤によって一次処理し、得られた一次処理粉末を解砕し、さらに解砕粉末をアルキルシラザン系処理剤によって二次処理することにより、疎水化度及び疎水化度分布を改善した無機微粒子を得ることができる。一次処理及び二次処理は、湿式法又は乾式法のどちらでもよい。
【0170】
湿式法とは、前述のとおり、無機微粒子と表面改質剤(「表面修飾剤」ともいう。)を適当な溶剤中で分散することにより当該表面改質剤を無機微粒子表面に付着させる方法である。溶剤中への分散方法としては、例えば、ボールミルやサンドミルなど通常の分散手段を用いることができる。分散処理後は、この分散液を乾燥して溶剤を除去した後、更に加熱処理を行って、当該表面改質剤を無機微粒子表面に反応及び固着させる。
【0171】
乾式法は、溶剤を使用せずに、表面改質剤と無機微粒子とを混合し混練を行うことによって表面改質剤を無機微粒子表面に付着させる方法である。その他の工程に関しては、上記説明した湿式法と同様にして行われる。
【0172】
無機微粒子は、疎水化度が、76%(vol.%)以上であることが好ましい。疎水化度が、76%(vol.%)以上であることにより、無機微粒子の表面に存在するヒドロキシ基が少なくなるため、電位特性(帯電電位や残留電位等)の湿度依存性が小さく、また、画像ボケや転写メモリーの発生による画像ムラが発生しづらい。無機微粒子の疎水化度は、80%(vol.%)以上であることがより好ましい。また、同様の観点から、無機微粒子は、疎水化度分布値が、10%(vol.%)以下であることが好ましい。
【0173】
本発明において、「疎水化度(メタノールウェッタビリティ)」とは、メタノールに対する濡れ性の尺度で示され、以下のように定義される。
【0174】
疎水化度(vol.%)=(a/(a+50))×100
疎水化度及び疎水化度分布値は、以下の方法で測定できる。
【0175】
(疎水化度の測定方法)
内容量200mLのビーカー中に入れた蒸留水50mLに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。次いで、メタノールを、先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。無機微粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(mL)とし、上記式により疎水化度を算出する。
【0176】
(疎水化度分布値の測定方法)
1)測定対象の無機粒子を0.2g秤量し、遠沈管に入れる。試料は、プロットしたい点数分+1本(全沈用)を用意する。
2)駒込ピペットにて、濃度の異なるメタノール溶液各7mlを遠沈管に入れ、しっかりしめる。全沈用は上記疎水化度の測定方法で決定されたメタノール濃度を用いる。
3)ターブラーミキサーで分散させる(90rpm、30秒間)。
4)遠心分離器にかける(3500rpm、10分間)。
5)沈降容積を読みとり、全沈降容積(全部が沈降した容積)を100%としたときの各沈降容積%を求める。
6)上記、各測定値を基に、横軸メタノール濃度(Vol.%)、縦軸沈降容積(Vol.%)のグラフ(疎水化度分布曲線)を作製する。
【0177】
疎水化度分布値は次のように定義される。
【0178】
疎水化度分布曲線を
図4に示す。
図4の分布曲線では、a点のメタノール濃度が疎水化度を表し、a点のメタノール濃度とb点のメタノール濃度の差;Δ(a-b)が本発明における疎水化度分布値を表し、25以下であることが好ましい。
【0179】
一次処理に好ましく用いられるシリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0180】
ハロゲン化シラン類としては、ジメチルジクロロシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等が挙げられる。
【0181】
最終処理に好ましく用いられるシラザン類としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等が挙げられる。
【0182】
上記シリコーンオイル系処理剤及びハロゲン化シラン類以外に、下記に示すアルコキシシラン類、シロキサン類、金属アルコキシド、脂肪酸及びその金属塩等を、シラザン類による最終処理の前に、表面改質剤として用いてもよい。
【0183】
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0184】
シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン等が挙げられる。
【0185】
金属アルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ-i-プロポキシアルミニウム、トリ-n-ブトキシアルミニウム、トリ-s-ブトキシアルミニウム、トリ-t-ブトキシアルミニウム、モノ-s-ブトキシジ-i-プロピルアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ-i-プロポキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラ-s-ブトキシチタン、テトラ-t-ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラ-i-プロポキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム、ジメトキシ錫、ジエトキシ錫、ジ-n-ブトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラ-i-プロポキシ錫、テトラ-n-ブトキシ錫、ジエトキシ亜鉛、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0186】
脂肪酸及びその金属塩としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
【0187】
これらの表面改質剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、アセトン等、場合によっては、水などで希釈して用いることが好ましい。
【0188】
バインダー樹脂中において、均一して分散する観点から、本発明に係る無機微粒子は、表面改質処理により疎水化したシリカであることが好ましい。
【0189】
無機微粒子は、焼成強化を行うことが好ましい。特にシリカを用いる場合、焼成強化していないシリカでは疎水化処理が困難であるため、表面改質処理を施すシリカとしては、焼成強化シリカが好ましい。焼成強化シリカでは、充分な強度を持たせるために、通常500℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で焼成したものを用いる。焼成時間は、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上である。
【0190】
上記焼成条件でシリカを焼成することによって、シリカ粒子の表面に存在しているヒドロキシ基、シラノール基等の官能基が分解され、ケイ素酸化物となる。また、この結果シリカ粒子の比表面積が小さくなり、シラン化合物等により疎水化処理した場合に、効果的に表面改質処理することができる。このようなシリカとしては具体的に、四塩化ケイ素の酸素焔中で高温加水分解により生成されたものが挙げられる。
【0191】
本発明において、好ましく用いられる疎水性シリカを得るための表面改質処理について、手順の一例を挙げる。
シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸等で、温度25℃において、pH4に調整)の中にシリカ粉末を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。その後、シラザン化合物を溶かした溶剤の中に、解砕した処理粉を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。
【0192】
また、次のような方法でも良い。シリカ粉末を反応槽に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながらアルコール水を添加し、オルガノポリシロキサン等のシリコーンオイル系処理液を反応槽に導入して表面改質処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去する。その後、解砕処理を行った後に、窒素雰囲気下、撹拌しながら、アルキルシラザン系処理液を導入して表面改質処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。処理条件を適宜変更することにより、シリカ粉末の疎水化度及び疎水化度分布値を上記範囲内に調整することができる。
【0193】
本発明に係る無機微粒子の生成方法は、特に制限されず、公知の方法により生成できる。また、市販品を用いることができ、疎水性シリカの例としては、日本アエロジル社製の、AEROSIL(登録商標)RX50、R40SX300、NAX50、VP RX40S、SX110等が挙げられる。アルミナの例としては、日本アエロジル社製のAEROSIL(登録商標)RXC65K1等が挙げられる。
【0194】
(電荷輸送材料)
本発明に係る感光層の最表面層は、電荷輸送材料を含有することを特徴とする。電荷輸送材料を含有することにより、静電潜像を感光体表面に形成することができる。
「電荷輸送材料」(「電荷輸送物質」ともいう。)とは、電荷(正孔)を輸送する材料(物質)のことをいう。
【0195】
本発明に係る電荷輸送材料としては、特に制限されず、公知の化合物を使用でき、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン及びポリ-9-ビニルアントラセン等が挙げられる。これらを一種単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0196】
電荷輸送材料の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、30~200質量%の範囲内であることが好ましく、50~150質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0197】
(その他添加剤)
本発明に係る感光層の最表面層は、その他添加剤を含有してもよく、例えば、酸化防止剤、滑剤粒子等を含有することが好ましい。最表面層が酸化防止剤を含有することにより、感光体中ないし感光体表面(感光層の最表面層)に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止又は抑制できる。
【0198】
酸化防止剤としては、特に制限されず、公知のものを使用でき、例えば、特開2006-301247号公報に記載の酸化防止剤を使用することができる。
【0199】
感光層の最表面層用の滑剤粒子としては、特に制限されず、例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を使用できる。
フッ素原子含有樹脂粒子としては、特に制限されず、例えば、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が特に好ましい。
【0200】
(最表面層の形成方法)
本発明に係る感光層の最表面層は、溶媒中に上記バインダー樹脂及び電荷輸送材料を溶解させ、かつ、無機微粒子を分散させた塗布液を調製し、公知の方法により感光層の最表面層となるよう塗布し、その後自然乾燥又は加熱により形成される。
【0201】
バインダー樹脂及び電荷輸送材料を溶解させる溶媒としては、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
【0202】
好ましい塗布方法としては、スライドホッパー型装置による塗布、浸漬コーティング、スプレー塗布等が挙げられる。特に、特開昭58-189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型装置による塗布が好ましい。
【0203】
円形スライドホッパー型装置による塗布方法では、スライド面終端と基材は、ある間隙(約2μm~2mm)をもって配置されているため、基材を傷つけることなく、また、性質の異なる層を多層形成させる場合においても、既に塗布された層を損傷することなく塗布できる。さらに、同一溶媒に溶解する性質が異なる層を多層形成させる場合においても、浸漬コーティング法と比べて、積層体が溶媒中に存在する時間がはるかに短いので、下層成分が上層側へほとんど溶出せず、塗布層にも溶出することなく塗布できるので、無機微粒子の分散性を劣化させずに塗布することができる。
【0204】
<3.1.2 保護層>
本発明に係る感光層は、保護層を有することが好ましく、この場合、保護層は、前述の感光層の最表面層に該当する。保護層は、感光体表面を保護し耐摩耗性や耐傷性を向上させ、トナーのすり抜けの発生を低減し、感光体、ひいては画像形成装置の長寿命化に寄与する。また、保護層を設けることにより、感光層の厚さのバラツキが軽減するため、良品率(生産性)が向上する。
【0205】
保護層の厚さは、1~30μmの範囲内であることが好ましく、5~20μmの範囲内であることがより好ましい。
【0206】
保護層は、更に酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイル等を添加してもよい。酸化防止剤については特開2000-305291号公報、電子導電剤は特開昭50-137543号公報、同58-76483号公報等に開示されているものが好ましい。
【0207】
<3.1.3 電荷輸送層>
「電荷輸送層」とは、電荷輸送材料を含有する層のことをいう。したがって、上記保護層も電荷輸送層に含まれるが、本発明においては、電荷輸送材料を含有する層が一層のみの場合は、当該層を電荷輸送層とし、二層の場合は、最表面側の層を保護層、導電性支持体側の層を電荷輸送層とする。電荷輸送材料を含有する層が、二層で形成されることにより、厚さのバラツキが軽減する。
【0208】
したがって、感光層が保護層を有しない場合、すなわち、電荷輸送材料を含有する層が一層のみの場合は、電荷輸送層は、前述の感光層の最表面層に該当する。
【0209】
以下、感光層が保護層を有する場合における電荷輸送層について説明する。
【0210】
電荷輸送層の一例として、電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散した構成が挙げられる。電荷輸送層の電荷輸送材料としては、電荷(正孔)を輸送する物質として、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物等が挙げられる。
【0211】
また、感光層が保護層を有する場合における電荷輸送層には、移動度が高く、分子量が大きい電荷輸送材料を含有させることが好ましい。このような電荷輸送材料としては、公知の化合物を併用でき、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン及びポリ-9-ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの化合物を一種単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0212】
バインダー樹脂は、特に制限されず、公知の樹脂を使用でき、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。さらに、耐クラック性、耐摩耗性及び帯電特性の観点から、ビスフェノールA型、ビスフェノールZ型、ジメチルビスフェノールA型、ビスフェノールA型-ジメチルビスフェノールA型共重合体型のポリカーボネート樹脂等が好ましい。これらは、一種単独で用いても二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0213】
電荷輸送層における電荷輸送材料の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、10~500質量%の範囲内であることが好ましく、20~250質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0214】
電荷輸送層の厚さは、10~50μmの範囲内であることが好ましく、15~40μmの範囲内であることがより好ましい。
【0215】
電荷輸送層は、更に酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイル等を添加してもよい。酸化防止剤については特開2000-305291号公報、電子導電剤は特開昭50-137543号公報、同58-76483号公報等に開示されているものが好ましい。
【0216】
電荷輸送層は、前述の感光層の最表面層の形成方法と同様の方法で形成できる。膜厚20~50μmの領域での生産性向上の観点から、電荷輸送層は、特に、浸漬コーティング法による塗布が好ましい。
【0217】
また、電荷輸送層は、上記電荷輸送材料を真空蒸着することによっても形成することができる。この形態では、上記バインダー樹脂は特に用いなくてもよい。
【0218】
<3.1.4 電荷発生層>
「電荷発生層」とは、電荷発生材料を含有する層のことをいう。電荷発生層の一例として、電荷発生材料がバインダー樹脂中に分散した構成が挙げられる。
【0219】
電荷発生材料としては、特に制限されず、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルーなどのアゾ原料、ピレンキノン、アントアントロン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴ等のインジゴ顔料、ピランスロン、ジフタロイルピレン等の多環キノン顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。特に、多環キノン顔料及びチタニルフタロシアニン顔料が好ましい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0220】
バインダー樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂を使用でき、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、及びこれらの樹脂の内二つ以上を含む共重合体(例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体)、ポリ-ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられ、特に、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0221】
電荷発生層における電荷発生材料の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、1~600質量%の範囲内であることが好ましく、50~500質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、電荷発生層形成用塗布液に高い分散安定性が得られる。また、比較的電気抵抗の低い感光体が得られるため、繰り返しの使用に伴って生じる残留電位の上昇を抑制することができる。
【0222】
電荷発生層の厚さは、0.01~5μmの範囲内であることが好ましく、0.05~3μmの範囲内であることがより好ましい。
【0223】
電荷発生層は、溶媒中にバインダー樹脂を溶解させ、かつ、電荷発生材料を分散させた塗布液を調製し、公知の方法により塗布し、その後自然乾燥又は加熱により形成される。
【0224】
バインダー樹脂を溶解させる溶媒としては、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等が挙げられる。
【0225】
電荷発生材料の分散手段としては、特に制限されず、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー及びホモミキサー等が挙げられる。
【0226】
塗布前に、塗布液の異物や凝集物を濾過することにより、画像欠陥の発生を防ぐことができ、塗布方法としては、前述の電荷輸送層における塗布方法と同様の方法を使用できる。
【0227】
また、電荷発生層は、上記電荷発生材料を真空蒸着することによっても形成することができる。この形態では、上記バインダー樹脂は特に用いなくてもよい。
【0228】
なお、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有することにより、電荷発生層及び電荷輸送層を単層として形成することもできる。このような単層の一例として、電荷発生材料及び電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散した構成が挙げられる。バインダー樹脂としては、特に制限されず、電荷発生層に用いられるバインダー樹脂と同義のものを使用できる。
【0229】
上記単層構成の場合、単層の厚さは、10~50μmの範囲内であることが好ましく、20~40μmの範囲内であることがより好ましい。
【0230】
<3.2 導電性支持体>
本発明に係る導電性支持体は、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム又はシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独又はバインダー樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙等が挙げられる。
【0231】
<3.3 中間層>
本発明に係る感光体には、導電性支持体と感光層との間にバリアー機能と接着機能を有する中間層を設けることもできる。種々の故障防止などを考慮すると、中間層を設けるのが好ましい。中間層の一例として、バインダー樹脂中に必要に応じて導電性粒子又は金属酸化物粒子が含有された構成が挙げられる。
【0232】
バインダー樹脂としては、特に制限されず、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチン等が挙げられ、特に、アルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0233】
中間層には、電気抵抗調整の目的で各種の導電性粒子又は金属酸化物粒子を含有できる。例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマスなどの各種金属酸化物粒子を用いることができる。また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの導電性粒子(超微粒子)を用いることができる。
【0234】
このような導電性粒子又は金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。
【0235】
これら導電性粒子又は金属酸化物粒子は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上を組み合わせて用いた場合には、固溶体又は融着の形をとってもよい。
【0236】
導電性粒子又は金属酸化物粒子の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、20~400質量%の範囲内であることが好ましく、50~350質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0237】
中間層の厚さは、電気抵抗を調整する観点から、0.1~15μmの範囲内であることが好ましく、0.3~10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0238】
中間層は、溶媒中にバインダー樹脂を溶解させ、かつ、導電性粒子又は金属酸化物粒子を分散させた塗布液を調製し、公知の方法により塗布し、その後自然乾燥又は加熱により形成される。
【0239】
バインダー樹脂を溶解させる溶媒としては、特に制限されず、上記導電性粒子又は金属酸化物粒子を良好に分散させ、ポリアミド樹脂等のバインダー樹脂を溶解することが好ましい。例えば、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール等の炭素数2~4のアルコール類等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0240】
また、塗布液の保存性や、粒子の分散性を向上させる観点から、助溶媒を併用することができ、助溶媒としては、例えば、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0241】
塗布液のバインダー樹脂の濃度は、中間層の厚さや塗布方法に合わせて、適宜選択できる。塗布液における導電性粒子又は金属酸化物粒子含有量は、バインダー樹脂の総質量に対して、20~400質量%の範囲内であることが好ましく、50~200質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0242】
電荷発生材料の分散手段としては、特に制限されず、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー及びホモミキサー等が挙げられる。塗布方法としては、前述の電荷輸送層における塗布方法と同様の方法を使用できる。
【0243】
<3.4 感光体の製造方法>
本発明に係る感光体は、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を含有する溶液を塗布する工程(下記工程(4))を備え、その他、下記工程(1)~(3)を有する製造方法で製造されることが好ましい。
【0244】
本発明に係る感光体は、感光層の最表面層が、比較的剛直な骨格を有する上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネートを含有することにより、当該最表面層を塗布・乾燥により形成しても、無機微粒子が凝集しづらく、感光体表面の凹凸が軽減され、フィルミング現象を抑制できる。
【0245】
工程(1):導電性支持体の外周面に中間層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、中間層を形成する工程
工程(2):導電性支持体の外周面、又は、工程(1)により形成された中間層の外周面に、電荷発生層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷発生層を形成する工程
工程(3):工程(2)により形成された電荷発生層の外周面に、電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷輸送層を形成する工程
工程(4):工程(2)により形成された電荷発生層の外周面、又は、工程(3)により形成された電荷輸送層の外周面に、最表面層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより最表面層を形成する工程
【0246】
各層を形成するための塗布液において、各成分の濃度は、各層の厚さや生産速度に合わせて適宜選択される。
【0247】
各層を形成するための塗布液において、最表面層に含まれる無機微粒子、電荷発生材料、中間層に含まれる導電性粒子又は金属酸化物粒子等の分散手段としては、特に制限されず、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサーなどを使用できる。
【0248】
各層を形成するための塗布液の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法などの公知の方法が挙げられる。
【0249】
塗膜の乾燥方法は、溶媒の種類、層の厚さに応じて適宜選択することができるが、自然乾燥又は加熱が好ましい。
【0250】
以下、各層の形成工程の詳細を説明する。
【0251】
〈工程(1):中間層の形成〉
中間層は、溶媒中に中間層用バインダー樹脂を溶解させて、中間層形成用塗布液を調製し、必要に応じて導電性粒子又は金属酸化物粒子、分散剤、レベリング剤等の他の成分を分散又は溶解させた後、当該塗布液を導電性支持体上に一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、乾燥することにより形成できる。中間層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0252】
〈工程(2):電荷発生層の形成〉
電荷発生層は、溶媒中に電荷発生層用バインダー樹脂を溶解させた溶液中に、電荷発生材料を分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を導電性支持体上又は中間層上に、一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、乾燥することにより形成できる。電荷発生層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0253】
〈工程(3):電荷輸送層の形成〉
工程(3)は、感光体が保護層を有する場合における電荷輸送層を形成する工程である。
電荷輸送層は、溶媒中に電荷輸送層用バインダー樹脂及び電荷輸送材料を溶解させた、電荷輸送層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を電荷発生層上に一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、乾燥することにより形成できる。電荷輸送層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0254】
〈工程(4):最表面層の形成〉
最表面層は、上記一般式(1)で表される部分構造を有するポリカーボネート、無機微粒子、及び、電荷輸送材料を公知の溶媒に添加して、最表面層形成用塗布液を調製し、この最表面層形成用塗布液を、電荷発生層の外周面、又は、電荷輸送層の外周面に、塗布して塗膜を形成し、乾燥することにより形成できる。最表面層形成用塗布液は、円形スライドホッパー塗布装置を用いてスライドホッパー法にて塗布することが好ましく、例えば、特開2015-114454号公報など開示されている方法で塗布できる。
【0255】
<4 画像形成装置>
上述のとおり、本発明の画像形成システムにおいて、装置部を特に「画像形成装置」という。すなわち、本発明に係る画像形成装置は、感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段を備え、更にカブリトナー供給機構を備えたことを特徴とする。
【0256】
図5は、本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。また、
図6は、本発明に係る画像形成装置の要部の構成の一例を示す説明用断面図である。
【0257】
図5に示す画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkと、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。
【0258】
画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0259】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkは、鉛直方向に並んで配置されている。
【0260】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkは、回転されるドラム状の感光体111Y、111M、111C、及び111Bkと、この外周面領域において感光体の回転方向に沿って順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、及び115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、及び117Bkと、一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、及び133Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkとを有する。
【0261】
感光体111Y、111M、111C、及び111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)のトナー画像がそれぞれ形成される構成とされている。
【0262】
以下、画像形成装置の感光体以外の各構成について説明する。なお、図を用いて説明する際は、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
【0263】
<4.1 帯電手段>
帯電手段は、感光体の表面を一様に帯電させる手段である。
【0264】
帯電手段には、帯電ローラー、帯電ブラシ及び帯電ブレードのような接触方式と、コロナ帯電器(コロトロン帯電器、ストロコトン帯電器など)のような非接触方式がある。接触方式には、帯電プロセスに伴う有害なオゾンガス発生量が少ないという利点がある。非接触方式には、接触方式と比べて近接放電でないことから、フィルミングが生じにくいという利点がある。
【0265】
本発明の画像形成システムが備える帯電手段は、接触方式でも非接触方式でもよい。なお、本発明の画像形成システムは、耐フィルミング性を感光体、滑剤及びカブリトナー供給機構の効果により高めているため、オゾンガス発生量の観点から、帯電手段は接触方式であることが好ましい。
【0266】
図5及び
図6に示す帯電手段113Yは、接触方式である。この例の帯電手段113Yは、感光体111Yの表面に接触して配設された帯電ローラーと、帯電ローラーに電圧を印加する電源とからなる。
【0267】
接触方式である帯電手段の例を説明する。
図7に示す帯電ローラー11は、芯金11aの表面上に積層された、帯電音を低減させるとともに弾性を付与して感光体111Yに対する均一な密着性を得るための弾性層11bの表面上に、必要に応じて帯電ローラー11が全体として高い均一性の電気抵抗を得るための抵抗制御層11cが積層され、当該抵抗制御層11c上に表面層11dが積層されたものが、押圧バネ11eによって感光体111Yの方向に付勢されて感光体111Yの表面に対して所定の押圧力で圧接されて帯電ニップ部が形成された状態とされる構成とされており、感光体111Yの回転に従動して回転される。
【0268】
芯金11aは、例えば鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケルなどの金属、又はこれらの金属の表面に、防錆性や耐付傷性を得るために導電性を損なわない範囲においてメッキ処理したものからなり、その外径は例えば3~20mmの範囲内とされる。
【0269】
弾性層11bは、例えばゴムなどの弾性材料中にカーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子やアルカリ金属塩、アンモニウム塩などよりなる導電性微粒子などが添加されたものからなる。
【0270】
弾性材料の具体例としては、例えば天然ゴム、エチレンプロピレンジエンメチレンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)及びクロロプレンゴム(CR)などの合成ゴムや、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂などの樹脂、又は発泡スポンジなどの発泡体などを挙げることができる。弾性の大きさは、プロセス油、可塑剤などを弾性材料中に添加することにより調整することができる。
【0271】
弾性層11bの体積抵抗率は、1×101~1×1010Ω・cmの範囲内であることが好ましい。弾性層11bの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
【0272】
弾性層11bの厚さは、500~5000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは500~3000μmの範囲内である。
【0273】
抵抗制御層11cは、帯電ローラー11を全体として均一な電気抵抗を有する目的などにより設けられるものであるが、なくてもよい。抵抗制御層11cは、適度な導電性を有する材料を塗工すること、又は適度な導電性を有するチューブを被覆させることによって設けることができる。
【0274】
抵抗制御層11cを構成する具体的な材料としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂;エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリル系ゴムなどのゴム類などの基礎材料中に、カーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子;導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどよりなる導電性金属酸化物微粒子;アルカリ金属塩、アンモニウム塩などよりなる導電性微粒子などの導電剤が添加されたものが挙げられる。
【0275】
抵抗制御層11cの体積抵抗率は、1×10-2~1×1014Ω・cmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1×101~1×1010Ω・cmの範囲内である。抵抗制御層11cの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
【0276】
抵抗制御層11cの厚さは、0.5~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1~50μmの範囲内、さらに好ましくは1~20μmの範囲内である。
【0277】
表面層11dは、弾性層11b中の可塑剤などの得られる帯電ローラーの表面へのブリードアウトを防止する目的や帯電ローラーの表面の滑り性や平滑性を得る目的、又は感光体111Y上にピンホールなどの欠陥があった場合にもリークの発生を防止する目的などにより設けられるものであって、適度な導電性を有する材料を塗工すること、又は適度な導電性を有するチューブを被覆させることによって設けられる。
【0278】
表面層11dを材料の塗工により設ける場合は、具体的な材料としては、ポリアミド樹
脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂などの樹脂、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリル系ゴムなどの基礎材料中に、カーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子;導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどよりなる導電性金属酸化物微粒子などの導電剤が添加されたものが挙げられる。
塗工方法としては、浸漬塗工法、ロール塗工法及びスプレー塗工法などが挙げられる。
【0279】
また、表面層11dをチューブの被覆により設ける場合は、具体的なチューブとしては、ナイロン12、4フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP);ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系及びポリアミド系などの熱可塑性エラストマーなどに上記の導電剤が添加されたものがチューブ状に成形されたものが挙げられる。このチューブは熱収縮性のものでもよく、非熱収縮性のものでもよい。
【0280】
表面層11dの体積抵抗率は、1×101~1×108Ω・cmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1×101~1×105Ω・cmである。表面層11dの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
【0281】
表面層11dの厚さは、0.5~100μmの範囲内であることが好ましく、1~50μmの範囲内であることがより好ましく、1~20μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0282】
表面層11dの表面粗さは、1~30μmの範囲内のものが好ましく、2~20μmの範囲内であることがより好ましく、5~10μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0283】
以上のような帯電ローラー11においては、帯電ローラー11の芯金11aに電源S1より帯電バイアス電圧が印加されることにより、感光体111Yの表面が所定の極性の所定の電位に帯電される。
【0284】
ここに、帯電バイアス電圧は、例えば直流電圧のみとしてもよいが、帯電の均一性に優れることから、直流電圧に交流電圧が重畳された振動電圧とすることが好ましい。
【0285】
<4.2 露光手段>
露光手段は、帯電手段により一様な電位を与えられた感光体上に、画像信号に基づいて露光を行い、画像に対応する静電潜像を形成する手段である。
【0286】
露光手段としては、例えば、感光体の軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子からなるもの、レーザー光学系のものが挙げられる。
【0287】
<4.3 現像手段>
現像手段(現像機)は、感光体の表面にトナーを供給して、感光体の表面に形成された静電潜像を現像し、トナー画像を形成する手段である。
【0288】
図5に示す現像手段117Yは、具体的には、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像ローラー118Y、及び感光体111Yと現像ローラー118Yとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置(図示しない)により構成されている。
【0289】
現像ローラー118Yの回転によって、感光体111Yにトナーを搬送する。そして、現像ローラー118Y上のトナー薄層が、感光体111Yに当接して感光体111Y上の静電潜像を現像する。
【0290】
現像ローラー118Yは、電圧印加装置に接続されている。この電圧印加装置により、現像ローラー118Yには直流及び/又は交流バイアス電圧が印加される。現像ローラー118Yに印加する電圧を制御することで、現像バイアスが所望の値に調整できるように構成されている。
【0291】
現像ローラー118Yと感光体111Yにより担持された静電潜像の電位との間の電位差(現像電位差)によって、現像ローラー118Yと感光体111Yが相互に対向している現像部に電界が形成される。
【0292】
現像ローラー118Yの回転により現像部に搬送された現像剤中のトナーは、電界から受ける力の作用によって移動し、感光体111Y上の静電潜像に吸着する。感光体111Yに担持されていた静電潜像が顕像化されることによって、感光体111Yの表面には、静電潜像の形状に対応したトナー像が形成される。
【0293】
<4.4 転写手段>
転写手段とは、感光体上のトナー像を、転写体(中間転写体又は転写材)に転写する手段である。中間転写体を用いる場合は、一次転写ローラーが転写手段となる。本発明における「転写手段」は、「感光体上のトナー像」を転写する手段であるため、中間転写体から転写材に転写する際に用いる二次転写ローラーは「転写手段」に含まない。
【0294】
図5に示す一次転写ローラー133Yは、感光体111Y上に形成されたトナー画像を無端ベルト状の中間転写体131に転写する。一次転写ローラー133Yは、中間転写体131と当接して配置される。
【0295】
図5に示す画像形成装置100においては、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に形成されたトナー画像を一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkによって中間転写体131に転写し、中間転写体131上に転写された各トナー画像を二次転写ローラー(二次転写手段)217によって転写材Pに転写する中間転写方式が採用されているが、感光体上に形成されたトナー画像を転写手段によって直接転写材Pに転写する直接転写方式が採用されてもよい。
【0296】
本発明に係る転写手段は、感光体上の非画像領域には、トナー粒子と同極性の転写バイアスを印加することを特徴とする。また、感光体上の非画像領域に印加する当該転写バイアスは、トナー粒子と同極性であり、かつ、感光体の表面電位よりも絶対値が大きいことが好ましい。
【0297】
これにより、後述のカブリトナー供給機構によって感光体上の非画像領域に付与されたトナー粒子が、転写体に転移しにくくなり、効率よくクリーニング手段に供給されるようになる。
【0298】
<4.5 クリーニング手段>
クリーニング手段は、感光体の表面に残存したトナー粒子を除去する手段である。
【0299】
図8は、クリーニングブレードと感光体の関係を側面から見た概念図である。
図8に示すクリーニング手段119Yは、クリーニングブレードC
Lと支持部材Pgで構成されている。クリーニングブレードC
Lは、その先端が、感光体111Yの表面との当接部Cにおいて、感光体111Yの回転方向と反対方向(カウンター方向)に向く状態で配置されている。
【0300】
本発明に係るクリーニングブレードCLは、先端稜線部のエッジ角度θeが90~130°の範囲内となるように感光体111Yの表面に圧接されることが好ましい。エッジ角度θeとは、感光体111Yの表面との当接部Cにおける先端稜線部分の角度のことをいう。
【0301】
エッジ角度θeが90°以上であることにより、楔角度θ3が小さくなるため、滑剤の層状結晶をへき開・延展するせん断作用が得られ、表面潤滑性を向上させることができる。楔角度θ3とは、クリーニングブレードCLと感光体111Yの回転方向上流側の稜線とのなす角度のことをいう。
【0302】
エッジ角度θeが130°以下であることにより、楔角度θ3が小さくなりすぎず、研磨性が適度になり、効果的に潤滑性を得られる。また、トナー粒子がブレードを鉛直上向きに押し返す力も大きくなりすぎないため、クリーニング不良が発生しにくい。
【0303】
また、エッジ角度θeが90~130°の範囲内であることで、クリーニングブレードのスティックスリップ振動が低減され、トナー粒子のすり抜けが改善して、クリーニング性能が向上する。
【0304】
エッジ角度θeは、表面潤滑性及びクリーニング性を効果的に向上させる観点から、95°以上であることが好ましく、110°以下であることが好ましい。
【0305】
本発明に係るクリーニングブレードCLは、実効当接角度θ1が7~20°の範囲内となるように感光体111Yの表面に圧接されることが好ましい。実効当接角度θ1とは、クリーニングブレードCLと感光体111Yの回転方向下流側の稜線とのなす角度のことをいう。
【0306】
実効当接角度θ1が7°以上であることにより、楔角度θ3が小さくなるため、滑剤の層状結晶をへき開・延展するせん断作用が得られ、表面潤滑性を向上させることができる。
【0307】
実効当接角度θ1が20°以下であることにより、楔角度θ3が小さくなりすぎず、研磨性が適度になり、効果的に潤滑性を得られる。また、トナー粒子がブレードを鉛直上向きに押し返す力も大きくなりすぎないため、クリーニング不良が発生しにくい。
【0308】
実効当接角度θ1は、表面潤滑性を効果的に向上させる観点から、9°以上であることが好ましく、17°以下であることが好ましい。
【0309】
エッジ角度θe及び実効当接角度θ1は、クリーニングブレードCLの断面形状や材料のヤング率等の物性値を用いて、たわみを計算することにより求めることができる。
【0310】
クリーニングブレードCLは、耐摩耗性・成形加工性の観点から、ポリウレタンにより構成されることが好ましい。ポリウレタンとしては、ポリオール、ポリイソシアネート及び必要に応じて架橋剤を反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0311】
クリーニングブレードCLは、単層構成であってもよく、支持層と当接層とが積層されてなる多層構造であってもよい。
【0312】
クリーニングブレードCLの硬度は、JIS-Aに規定される硬度の値で65~85°の範囲内であることが好ましい。硬度が65°以上であれば、クリーニングブレードCLが引き込まれにくくなり、楔角度θ3が小さくなりすぎることはない。また、硬度が85°以下であれば、面圧が大きくなり、研磨力が強くなりすぎるといったことはなく、滑剤が除去されにくくなることにより潤滑効果が十分に得られる。
【0313】
クリーニングブレードCLの反発弾性は、10~40°の範囲内であることが好ましい。反発弾性が上記の範囲内であれば、振動が適度に抑えられ、楔角度θ3が安定となり、脂肪酸金属塩のせん断作用をより効果的に発現することができる。
【0314】
クリーニングブレードCLの自由長Lは、8.5~11.5mmの範囲内であり、厚さは、1.7~2.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0315】
クリーニングブレードCLの当接力は、拭き残し及びめくれ防止の観点から、12~30(N/m)の範囲内であることが好ましい。当接力が、12(N/m)以上であれば、拭き残しのおそれがなくなり、30(N/m)以下であれば、めくれのおそれがなくなる。
【0316】
支持部材Pgは、従来公知のものを使用することができ、例えば剛体である金属、弾性を有する金属、プラスチック、セラミックなどから製造されたものが挙げられる。中でも、剛体である金属が好ましい。
【0317】
<4.6 滑剤供給手段>
滑剤供給手段は、クリーニング手段に滑剤を供給するために感光体の表面に滑剤を付着させる手段である。
【0318】
本発明の画像形成システムにおいては、滑剤供給手段を備えていてもよいが、外添剤として滑剤を含有するトナー粒子を用いるため、別途滑剤供給手段を備えなくても、クリーニング手段に滑剤を供給することができる。
【0319】
<5 カブリトナー供給機構>
本発明において、「カブリトナー供給機構」とは、トナー粒子を感光体上の非画像領域に付与することによって、当該トナー粒子をクリーニング手段に供給する機構のことをいう。本発明の電子写真画像形成システムは、当該カブリトナー供給機構を備えたことを特徴とする。
【0320】
トナー粒子をクリーニング手段に供給することで、感光体上の滑剤付着量が多い部分の滑剤をトナー粒子が削り取り、滑剤付着量を均一化することができる。このカブリトナーは、感光体上の非画像領域に付与することによってクリーニング手段に供給される。これによって、例えば転写手段の後に別途トナー供給部を備えることなく、現像手段から付与されるトナー粒子を、カブリトナーとしてクリーニング手段に供給することができる。
【0321】
クリーニング手段に供給するカブリトナーの量は、例えばA4用紙に連続して画像形成する場合、A4用紙1枚当たりに換算して1.8mg程度であることが好ましい。
【0322】
カブリトナー供給機構として、下記2つの機構を採用することができる。
機構A:感光体上の非画像領域のカブリマージンを、前記感光体上の画像領域のカブリマージンと異ならせることによって、トナー粒子を感光体上の非画像領域に付与する。
機構B:露光手段により非画像領域全域を露光することによって、前記トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与する。
【0323】
以下、機構A及び機構Bについて説明する。なお、トナー粒子を効率よく供給できる点で、本発明に係るカブリトナー供給機構は、機構Aであることが好ましい。
【0324】
(機構A)
機構Aは、感光体上の非画像領域のカブリマージンを、前記感光体上の画像領域のカブリマージンと異ならせることによって、トナー粒子を感光体上の非画像領域に付与する機構である。
【0325】
「カブリマージン」とは、帯電DCバイアスと現像DCバイアスとのバイアス差のことをいい、下記式で表すことができる。
カブリマージン[V]=帯電DCバイアス[V]-現像DCバイアス[V]
【0326】
「帯電DCバイアス」とは、帯電手段にて感光体表面の電位をコントロールするために帯電部材に印可する直流電圧のことをいう。また、「現像DCバイアス」とは、現像手段にてトナーを現像させる際に現像剤担持体に印可する直流電圧のことをいう。
【0327】
トナー粒子を感光体上の非画像領域に付与しない一般的な装置の場合は、画像領域でも、非画像領域でも、カブリマージンの値の正負をトナー粒子の極性の正負と同じにする。これにより、露光をしていない非画像領域にはトナー粒子が付与されず、画像領域のうち露光により静電潜像電位となっている領域にのみトナー粒子が付与される。
【0328】
これに対し、帯電DCバイアスと現像DCバイアスを調整し、非画像領域のカブリマージンの値の正負をトナー粒子の極性の正負と逆にすると、露光していなくても、感光体上の非画像領域にトナー粒子を付与することができる。
【0329】
例えば、トナー粒子の極性がマイナスである場合に、帯電DCバイアスを-500Vで一定にし、現像DCバイアスを、画像領域においては-400V、非画像領域においては-550Vとする。これにより、画像領域におけるカブリマージンは-100Vとなり、カブリマージンの値の正負とトナー粒子の極性の正負は同じになる。これに対し、非画像領域のおけるカブリマージンは+50Vとなり、カブリマージンの値の正負とトナー粒子の極性の正負は逆になる。この結果、画像領域においては、露光により静電潜像電位となっている領域にのみ、トナー粒子が付与されるが、非画像領域においては、露光をしなくともトナー粒子が感光体上に付与される。
【0330】
(機構B)
機構Bは、露光手段により非画像領域を露光することによって、前記トナー粒子を前記感光体上の非画像領域に付与する機構である。
【0331】
トナー粒子を感光体上の非画像領域に付与しない一般的な装置の場合は、画像領域のうちトナー粒子を付与する領域にのみ露光して静電潜像電位とするが、画像領域のうちトナー粒子を付与しない領域や、非画像領域には、露光をしない。これにより、露光をしていない非画像領域にはトナー粒子が付与されず、画像領域のうち露光により静電潜像電位となっている領域にのみトナー粒子が付与される。
【0332】
これに対し、露光手段により非画像領域全域を露光すると、非画像領域にもトナー粒子を付与することができる。
【実施例0333】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0334】
<1 感光体の作製>
下記の材料及び手順で感光体を作製した。
【0335】
<1.1 感光体用のバインダー樹脂>
ポリカーボネート樹脂A(ユピゼータ(登録商標)FPC-0220(ビスフェノールAPの重合体)、粘度平均分子量:20000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂B(ユピゼータ(登録商標)FPC-0220と同一骨格、粘度平均分子量:40000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂C(ユピゼータ(登録商標)FPC-0220と同一骨格、粘度平均分子量:50000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂D(ビスフェノールAPとジヒドロキシ化合物の共重合体、粘度平均分子量:30000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂E(ビスフェノールAPとジヒドロキシ化合物の共重合体、粘度平均分子量:35000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂F(ユピゼータ(登録商標)FPC-6535A(ビスフェノールZとジヒドロキシ化合物の共重合体)、粘度平均分子量:33000、三菱ガス化学社製)
ポリカーボネート樹脂G(ユピゼータ(登録商標)PCZ-300(ビスフェノールZの重合体)、粘度平均分子量:30000、三菱ガス化学社製)
【0336】
なお、樹脂A~Eについては、上記一般式(1-1)で表される部分構造を有し、樹脂F及びGについては、上記一般式(2)で表される部分構造を有する。
【0337】
<1.2 感光体用の無機微粒子>
疎水性シリカA(AEROSIL(登録商標)RX300、数一次平均粒径7nm、日本アエロジル社製)
疎水性シリカB(AEROSIL(登録商標)NAX50、数一次平均粒径30nm、日本アエロジル社製)
疎水性シリカC(AEROSIL(登録商標)RX50、数一次平均粒径40nm、日本アエロジル社製)
疎水性シリカD(AEROSIL(登録商標)VP RX40S、数一次平均粒径90nm、日本アエロジル社製)
疎水性シリカE(AEROSIL(登録商標)SX110、数一次平均粒径110nm、日本アエロジル社製)
アルミナ(AEROSIL(登録商標)RXC65K1、数一次平均粒径17nm、日本アエロジル社製)
【0338】
<1.3 感光体1の作製>
下記の手順で感光体1を作製した。
【0339】
(導電性支持体)
直径30mmの円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0340】
(中間層)
下記材料を混合し、サンドミルを用いてバッチ式で10時間の分散を行った。一夜静置後に濾過(フィルター:日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルターを使用)し、中間層塗布液を調製した。この塗布液を、上記導電性支持体上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
【0341】
ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製) 1質量部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 3質量部
メタノール 20質量部
【0342】
(電荷発生層)
下記材料を混合し、サンドミルを用いて10時間の分散を行い、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を、上記中間層上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。なお、下記チタニルフタロシアニン顔料は、Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で、少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有する。
【0343】
電荷発生材料:チタニルフタロシアニン顔料 20質量部
ポリビニルブチラール樹脂 10質量部
酢酸t-ブチル 700質量部
4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン 300質量部
【0344】
上記ポリビニルブチラール樹脂には、電気化学工業社製#6000-Cを用いた。
【0345】
(電荷輸送層)
下記材料を混合し、電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。なお、下記ポリカーボネート樹脂Fは、ビスフェノールZとジヒドロキシ化合物の共重合体であり、粘度平均分子量は33000である。
【0346】
ポリカーボネート樹脂F 100質量部
電荷輸送材料:下記化学構造式CTM-1 50質量部
酸化防止剤 2質量部
テトラヒドロフラン 540質量部
トルエン 135質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 0.3質量部
【0347】
【0348】
上記酸化防止剤には、BASFジャパン社製Irganox1010を用いた。
【0349】
(保護層)
下記材料を混合し、溶液を調製した。次いで、無機微粒子として、ヘキサメチルジシラザンで表面改質処理したシリカ粒子AEROSIL(登録商標)RX50(日本アエロジル社製、数一次平均粒径40nm)30質量部をテトラヒドロフラン400質量部中で超音波分散した分散液を、この溶液と混合し、保護層塗布液を調製した。そして、この塗布液を、上記電荷輸送層上に円形スライドホッパー型塗布機で塗布し、120℃、70分の乾燥を行い、乾燥膜厚17μmの保護層を形成し、感光体1を得た。なお、下記ポリカーボネート樹脂Aは、ビスフェノールAPの重合体であり、粘度平均分子量は20000である。
【0350】
ポリカーボネート樹脂A 50質量部
ポリカーボネート樹脂F 50質量部
電荷輸送材料:上記化学構造式CTM-1 50質量部
酸化防止剤 2質量部
テトラヒドロフラン 400質量部
トルエン 200質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 0.3質量部
【0351】
上記酸化防止剤には、BASFジャパン社製Irganox1010を用いた。
【0352】
<1.4 感光体2~28の作製>
感光体1の作製において、バインダー樹脂及び無機微粒子の種類及び添加量を下記表に記載のとおりに変更した以外は同様にして、感光体2~28を作製した。
【0353】
<1.5 感光体29の作製>
感光体1の作製において、保護層を形成せず、電荷輸送層の形成を以下のとおりに変更した以外は同様にして、感光体29を作製した。
【0354】
(電荷輸送層)
下記材料を混合し、溶液を調製した。次いで、無機微粒子として、ヘキサメチルジシラザンで表面改質処理したシリカ粒子AEROSIL(登録商標)RX50(日本アエロジル社製、数一次平均粒径40nm)30質量部をテトラヒドロフラン400質量部中で超音波分散した分散液を、この溶液と混合し、電荷輸送層塗布液を調製した。そして、この塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、120℃、70分の乾燥を行い、乾燥膜厚37μmの電荷輸送層を形成し、感光体29を得た。
【0355】
ポリカーボネート樹脂C 50質量部
ポリカーボネート樹脂F 50質量部
電荷輸送材料:上記化学構造式CTM-1 50質量部
酸化防止剤 2質量部
テトラヒドロフラン 80質量部
トルエン 120質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 0.3質量部
【0356】
上記酸化防止剤には、BASFジャパン社製Irganox1010を用いた。
【0357】
<1.6 感光体30~32の作製>
感光体29の作製において、バインダー樹脂及び無機微粒子の種類及び添加量を下記表に記載のとおりに変更した以外は同様にして、感光体30~32を作製した。
【0358】
<2 トナー粒子の作製>
下記の手順により、トナー粒子1~16を作製した。
【0359】
<2.1 トナー粒子1の作製>
トナー粒子1の作製手順は以下のとおりである。
【0360】
(コア部用樹脂微粒子の分散液の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0361】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン532質量部、n-ブチルアクリレート200質量部、メタクリル酸68質量部、n-オクチルメルカプタン16.4質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0362】
この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、樹脂微粒子〔A〕の分散液を調製した。なお、第1段重合で調製した樹脂微粒子〔A〕の重量平均分子量(Mw)は16500であった。
【0363】
重量平均分子量(Mw)の測定は、「HLC-8220」(東ソー社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μlを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×106、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成した。また、検出器には屈折率検出器を用いた。
【0364】
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン101.1質量部、n-ブチルアクリレート62.2質量部、メタクリル酸12.3質量部、n-オクチルメルカプタン1.75質量部からなる単量体混合液に、離型剤として、パラフィンワックス「HNP-57」(日本精蝋社製)93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させた。
【0365】
一方、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、前述の樹脂微粒子〔A〕の分散液32.8質量部(固形分換算)添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記パラフィンワックスを含有する単量体溶液を8時間混合分散させ、分散粒径340nmを有する乳化粒子を含む分散液を調製した。
【0366】
次いで、この乳化粒子分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い、樹脂微粒子〔B〕の分散液を調製した。なお、第2段重合で調製した樹脂微粒子〔B〕の重量平均分子量(Mw)は23000であった。
【0367】
上記樹脂粒子〔B〕に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、スチレン293.8質量部、n-ブチルアクリレート154.1質量部、n-オクチルメルカプタン7.08質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0368】
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却しコア部用樹脂微粒子の分散液を得た。なお、コア部用樹脂微粒子の重量平均分子量(Mw)は26800であった。また、コア部用樹脂微粒子の体積基準平均粒径は125nmであった。さらに、このコア部用樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は30.5℃であった。
【0369】
(シェル層用樹脂微粒子の分散液の調製)
上記コア部用樹脂微粒子の分散液の調製における第1段重合において、スチレンを548質量部、2-エチヘキシルアクリレートを156質量部、メタクリル酸を96質量部、n-オクチルメルカプタンを16.5質量部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、シェル層用樹脂微粒子の分散液を調製した。なお、シェル層用樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は49.8℃であった。
【0370】
(着色剤微粒子分散液の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子が分散されてなる着色剤微粒子分散液を調製した。
【0371】
この着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子杜製)を用いて測定したところ、110nmであった。
【0372】
(コア部の形成)
コア部用樹脂微粒子の分散液420質量部(固形分換算)と、イオン交換水900質量部と、着色剤微粒子分散液100質量部とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。
【0373】
反応容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8~11に調整した。
【0374】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を80分間かけて80℃(コア部形成温度)まで昇温した。
【0375】
その状態でフロー式粒子像分析装置「FPIA2100」(シスメックス社製)にて粒子の粒径を測定し、粒子の体積基準平均粒径が5.8μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、さらに、熟成処理として液温度80℃(コア部熟成温度)にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、コア部を形成した。
【0376】
なお、コア部の円形度をフロー式粒子像分析装置「FPIA2100」(シスメックス社製)にて測定したところ0.930であった。
【0377】
また、電界放出形走査電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子社製)を用いて走査透過電子顕微鏡法にてコア部を10000倍にて観察し、着色剤が結着樹脂に溶解し、着色剤分散微粒子が残っていないことを確認した。
【0378】
(シェル層の形成)
次いで、65℃においてシェル層用樹脂微粒子の分散液46.8質量部(固形分換算)を添加した。さらに塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した。その後、80℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、コア部の表面に、シェル層用樹脂微粒子の粒子を融着させた。
【0379】
その後、80℃(シェル熟成温度)で所定の円形度まで熟成処理を行い、シェル層を形成させた。ここで、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却した。生成した融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した。その後、40℃の温風で乾燥した。
【0380】
以上の手順により、コア部表面にシェル層を有し、極性がマイナスであるトナー母体粒子を得た。このトナー母体粒子は、体積基準平均粒径が5.9μm、ガラス転移温度(Tg)が31℃、平均円形度が0.960であった。
【0381】
(外添剤の添加)
【0382】
上記作製したトナー母体粒子に、下記の手順で外添剤を添加した。なお、滑剤としては2種の脂肪酸金属塩粒子を添加した。以下、各トナーの製造において添加した2種の滑剤のうち、体積基準平均粒径が小さい方の滑剤を「滑剤(1)」と、体積基準平均粒径が大きい方の滑剤を「滑剤(2)」と記載する。
【0383】
乾燥されたトナー母体粒子100質量部に、滑剤(1)として、ステアリン酸亜鉛粒子(「MZ-2」体積基準平均粒径2.0μm;日油社製)を0.12質量部添加し、ヘンシェルミキサー「FM10B」(三井三池化工機社製)を用いて、撹拌羽根周速を15m/秒、処理温度30℃で3分間混合した。
【0384】
次いで、小径シリカ微粒子(「RX-200」ヒュームドシリカ HMDS処理 個数平均粒径12nm;日本アエロジル社製)を0.75質量部、球状シリカ微粒子(「X-24 9600」ゾルゲル製法によるシリカ HMDS処理 個数平均粒径80nm;信越化学社製)を1.50質量部、滑剤(2)として、ステアリン酸亜鉛粒子(「ZnSt-S」;日油社製 体積基準平均粒径10.0μmに調整)を0.08質量部質量部、研磨効果の高い金属酸化物微粒子としてチタン酸カルシウム粒子(「TC110」個数平均一次粒径300nm シリコーンオイル処理 チタン工業社製)を0.5質量部添加し、ヘンシェルミキサー「FM10B」(三井三池化工機社製)を用いて、撹拌羽根周速を40m/秒、処理温度30℃で15分間混合した。
【0385】
その後、目開き90μmのふるいを用いて粗大粒子を除去することにより、トナー粒子1を作製した。
【0386】
<2.2 トナー粒子2~16の作製>
トナー粒子1の作製において、トナー母体粒子、滑剤(1)、滑剤(2)、及び金属酸化物微粒子の体積基準平均粒径等を、表Iに示すとおりに変更して、トナー粒子2~16を作製した。
【0387】
なお、表Iにおいて、「添加量[質量部]」は、トナー母体粒子100質量部に対する添加量である。また、「ZnSt」、「MgSt」及び「LiSt」は、それぞれ「ステアリン酸亜鉛」、「ステアリン酸マグネシウム」及び「ステアリン酸リチウム」のことである。
【0388】
<2.3 滑剤の体積基準粒度分布の測定>
下記の手順で、トナー粒子1~16における滑剤の体積基準粒度分布を測定した。
【0389】
5gのトナー粒子と50mlの0.7%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を100mlのビーカーに入れ、マグネチックスターラー「Model MS500D」(ヤマト科学製)にて300rpm、5分撹拌し分散した。
【0390】
上記分散後、超音波ホモジナイザー「US-1200T」(日本精機製作所製)を用いて、周波数20kHz、OUTPUT目盛り3、TUNING目盛り6の出力にて、10分間、トナー分散液に超音波振動を与えた。
【0391】
トナー分散液を下記条件で遠心分離機「Model H-900」(コクサン製)にかけ、分離した。
ローター :PC-400(半径18.1cm)
回転数 :1200rpm(292G)
時間 :10分
【0392】
遠心分離後に、沈降したトナー母体粒子が入らないようにピペットを使用し、上澄み液を40ml採取した。
【0393】
採取した上澄み液に含まれる粒子の体積基準粒径を、フロー式粒子像分析装置「FPIA-2100」(シスメックス社製)を用いて、測定範囲を0.6~400μmとして測定することにより、滑剤の体積基準粒度分布を求めた。
【0394】
トナー粒子1~13における滑剤の体積基準粒度分布は、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有していた。小粒径側にピークを有する滑剤(小粒径側の滑剤)の体積基準平均粒径、及び大粒径側にピークを有する滑剤(大粒径側の滑剤)の体積基準平均粒径は、表Iに示すとおりである。
【0395】
トナー粒子14~16における滑剤の体積基準粒度分布は、小粒径側と大粒径側に二つのピークを有していなかった。
【0396】
表Iの備考欄において、本発明に係るトナー粒子に該当するものには○を、該当しないものには×を記載している。
【0397】
<3 画像形成システム>
接触方式である帯電手段(帯電ローラー)を備えたフルカラー複合機「bizhub C650i」(コニカミノルタ社製)、又は非接触方式である帯電手段(コロナ放電)を備えたフルカラー複合機「bizhub C754」(コニカミノルタ社製)に、上記の感光体1~32及びトナー粒子1~16を、下記表II~IVに記載の組み合わせで用いて、画像形成システム1~58とした。
【0398】
各画像形成システムにおけるクリーニングブレードの先端稜線部のエッジ角度は、それぞれ下記表のとおりである。
【0399】
カブリトナー供給機構は、感光体上の非画像領域のカブリマージンを、前記感光体上の画像領域のカブリマージンと異ならせることによって、トナー粒子を感光体上の非画像領域に付与する、機構Aを採用し、画像形成システム52及び53を除き適用した。
【0400】
カブリトナー供給機構を適用の有無に関わらず、感光体上の画像領域へのバイアス条件は以下のとおりである。
【0401】
(画像領域へのバイアス条件)
帯電ACバイアス:+1800V
帯電DCバイアス:-500V
感光体表面電位 :-500V
現像バイアス :-400V
カブリマージン :-100V
転写バイアス :+800V
【0402】
非画像領域へのバイアス条件は、カブリトナー供給機構を適用しない場合は、画像領域へのバイアス条件と変更せず、カブリトナー供給機構を適用する場合のみ、下記のように変更した。
【0403】
(カブリトナー供給機構を適用した場合の非画像領域へのバイアス条件)
帯電ACバイアス:+1800V
帯電DCバイアス:-500V
感光体表面電位 :-500V
現像バイアス :-550V
カブリマージン :+50V
転写バイアス :-800V
【0404】
<4 試験>
画像形成システム1~58について、下記の耐久試験を行った。
【0405】
(長期印刷試験)
温度23℃、湿度50%RHの環境下において、画像比率5%の文字画像をA4横送りで、30万枚両面連続プリントを行った。
【0406】
(低温低湿試験)
上記長期印刷試験後の画像形成システムから、画像形成ユニットのうち感光体のみ取り外し、評価用の新しい感光体を付け替えた。新しい感光体を用いて、温度10℃、湿度20%RHの環境下において、画像比率0%の白紙画像をA4横送りで、5000枚片面間欠プリント(7P/J)を行った。なお、長期印刷試験において印刷枚数30万枚に達する前に画像を出力できなくなった場合は、その時点で低温低湿試験に移った。
【0407】
<5 評価>
上記耐久試験後の画像形成システム1~58について、耐フィルミング性及び平均減耗量の評価を行い、画像形成システム29及び37~58については、さらに滑剤付着量、減耗傾斜量、及び帯電不良の発生有無の評価を行った。各評価結果は下記表に示すとおりである。
【0408】
(耐フィルミング性)
長期印刷試験後、及び低温低湿試験後の感光体表面の付着物について、目視及び100倍の光学顕微鏡で観察し、下記の基準で評価した。
【0409】
◎:付着物が、光学顕微鏡(100倍)で観察されなかった。
○:付着物が、目視で観察されず、光学顕微鏡(100倍)で観察された。
×:付着物が、目視で観察された。
なお、付着物の長辺長さが200μm以上であると、目視で観察できると考えられる。
【0410】
◎及び○を合格とし、×を不合格とした。画像形成システム24、26、27、28、32及び36については、感光体の摩耗により、印刷枚数30万枚に達する前に画像を出力できなくなったため、長期印刷試験後の評価が実施できなかった。
【0411】
(平均減耗量)
長期印刷試験後の感光体の最表面層の平均厚さを測定し、平均減耗量[μm/100krot]を算出した。表面層の平均厚さは、均一部分(塗布形成において厚さが変動しやすい先端部及び後端部を除く)を、渦電流方式の膜厚測定器「EDDY560C」(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)によってランダムに10か所測定し、その平均値とした。長期印刷試験後における最表面層の平均厚さの差を平均減耗量とし、100krot(10万回転)当たりの平均減耗量を算出した。平均減耗量の値が小さいほど、耐摩耗性が良好であると評価した。平均減耗量が、2.0μm/100krot以下であることが実用上好ましい。
【0412】
(滑剤付着量)
長期印刷試験後の感光体の滑剤付着量[atm%]を、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により、感光体のR側(現像剤の搬送方向の上流側)の端から5cmの位置と、感光体のF側(現像剤の搬送方向の下流側)の端から5cmの位置とで測定した。
【0413】
(減耗傾斜量)
長期印刷試験後の感光体の最表面層の厚さを、渦電流方式の膜厚測定器「EDDY560C」(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いて、感光体のR側(現像剤の搬送方向の上流側)の端から5cmの位置と、感光体のF側(現像剤の搬送方向の下流側)の端から5cmの位置とで測定し、その差を減耗傾斜量[μm]とした。
【0414】
(帯電不良の発生有無)
長期印刷試験における減耗傾斜による帯電不良の発生有無を評価した。具体的には、減耗傾斜が発生すると膜厚の高い部分において帯電不良によるカブリが発生するため、カブリの発生有無を評価した。
【0415】
【0416】
【0417】
【0418】
【0419】
上記実施例から、本発明の電子写真形成システムは、比較例よりも各評価結果が良好であり、感光体の耐摩耗性と耐フィルミング性とを両立できていることが分かる。