(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189076
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
G01R15/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097432
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】中沢 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太
(72)【発明者】
【氏名】山岸 君彦
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】周波数帯域の広い電流センサを提供する。
【解決手段】電流センサ10は、第二磁気コア35を励磁する励磁信号70が入力されるとともに、第二磁気コア35に流れる磁束を検出して被測定電流16を示す検出信号を出力する励磁検出巻線40を備える。電流センサ10は、第二磁気コア35に流れる磁束を検出して被測定電流16を示す補助信号306を出力する補助巻線54を備える。電流センサ10は、第一磁気コア32及び第二磁気コア35に巻かれ、検出信号(振幅変調信号77)から作られた信号が入力されるとともに、第一磁気コア32及び第二磁気コア35の磁束を打ち消すように巻かれる帰還巻線30を備える。電流センサ10は、被測定電流16に応じて帰還巻線30が出力する信号を、補助信号306から作られた補正信号82に基づいて修正することにより被測定電流16の大きさを示す出力信号96を出力する回路を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流が通流する被測定対象物を囲む第一磁気コアと、
前記第一磁気コアに配置される第二磁気コアと、
前記第二磁気コアに巻かれ、前記第二磁気コアを励磁する励磁信号が入力されるとともに、前記第二磁気コアに流れる磁束を検出して前記被測定電流を示す検出信号を出力する励磁検出巻線と、
前記第二磁気コアに巻かれ、前記第二磁気コアに流れる磁束を検出して前記被測定電流を示す補助信号を出力する補助巻線と、
前記第一磁気コア及び前記第二磁気コアに巻かれ、前記検出信号から作られた信号が入力されるとともに、前記第一磁気コアの磁束を打ち消すように巻かれる帰還巻線と、
前記被測定電流に応じて前記帰還巻線が出力する信号を、前記補助信号から作られた補正信号に基づいて修正することにより前記被測定電流の大きさを示す出力信号を出力する回路と、
を備えた電流センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記第二磁気コアは、並んで配置された第三磁気コア及び第四磁気コアで構成され、
前記励磁検出巻線は、
前記第三磁気コアに巻かれ前記第三磁気コアを励磁する第一励磁信号が入力されるとともに前記第三磁気コアに流れる磁束を検出して前記被測定電流を示す第一検出信号を出力する第一励磁検出巻線と、
前記第四磁気コアに巻かれ前記第四磁気コアを励磁する第二励磁信号が入力されるとともに前記第一励磁検出巻線で生じる磁束を打ち消すように構成され、かつ前記第四磁気コアに流れる磁束を検出して前記被測定電流を示す第二検出信号を出力する第二励磁検出巻線と、
で構成され、
前記補助巻線は、前記第一励磁検出巻線が巻かれた前記第三磁気コア及び前記第二励磁検出巻線が巻かれた前記第四磁気コアを共に巻く巻線で構成され、
前記帰還巻線は、前記第一検出信号及び前記第二検出信号から作られた信号が入力される、
電流センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記励磁検出巻線は、前記励磁信号が入力される励磁巻線と、前記検出信号を出力する検出巻線とを含んで構成される、
電流センサ。
【請求項4】
請求項2に記載の電流センサであって、
前記第一励磁検出巻線は、前記第一励磁信号が入力される第一励磁巻線と、前記第一検出信号を出力する第一検出巻線とを含んで構成され、
前記第二励磁検出巻線は、前記第二励磁信号が入力される第二励磁巻線と、前記第二検出信号を出力する第二検出巻線とを含んで構成される。
電流センサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電流センサであって、
前記回路は、前記補正信号に基づいて前記帰還巻線に入力される信号を調整して前記出力信号を修正する、
電流センサ。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電流センサであって、
前記回路は、前記補正信号に基づいて前記帰還巻線から出力される信号を補正して前記出力信号を修正する、
電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主変流器のコアの内側に補助変流器が設けられた電流センサが開示されている。
【0003】
主変流器のコアには、交流ピックアップ巻線と補償巻線とが巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この電流センサにおいて、交流ピックアップ巻線と補償巻線とを同じコアに巻くと、前記巻線同士が近くにあるため、高周波帯域においては、交流ピックアップ巻線と補償巻線との間に容量結合が生じ、周波数帯域が制限されるという課題がある。
【0006】
本開示は、周波数帯域の広い電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電流センサは、被測定電流が通流する被測定対象物を囲む第一磁気コアと、前記第一磁気コアに配置される第二磁気コアと、前記第二磁気コアに巻かれ、前記第二磁気コアを励磁する励磁信号が入力されるとともに、前記第二磁気コアに流れる磁束を検出して前記被測定電流を示す検出信号を出力する励磁検出巻線と、前記第二磁気コアに巻かれ、前記第二磁気コアに流れる磁束を検出して前記被測定電流を示す補助信号を出力する補助巻線と、前記第一磁気コア及び前記第二磁気コアに巻かれ、前記検出信号から作られた信号が入力されるとともに、前記第一磁気コアの磁束を打ち消すように巻かれる帰還巻線と、前記被測定電流に応じて前記帰還巻線が出力する信号を、前記補助信号から作られた補正信号に基づいて修正することにより前記被測定電流の大きさを示す出力信号を出力する回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電流センサでは、被測定電流に応じた信号を検出する帰還巻線(前記補償巻線に該当する)は、第一磁気コア及び第二磁気コアに巻かれている。また、帰還巻線の出力を修正する際に用いる補助信号を検出する補助巻線(前記交流ピックアップ巻線に該当する)は、第二磁気コアに巻かれている。
【0009】
このため、帰還巻線と補助巻線とが同一のコアに巻かれた場合と比較して、高周波帯域における帰還巻線と補助巻線との間に生じる容量結合を小さくできる。これにより、周波数帯域の制限が抑えられる。
【0010】
したがって、周波数帯域の広い電流センサの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る電流センサを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る電流センサの内部を示す図であり、第一磁気コアが除かれた状態を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態に係る電流センサの回路図である。
【
図5】
図5は、第二実施形態に係る電流センサの回路図である。
【
図6】
図6は、第三実施形態に係る電流センサの回路図である。
【
図7】
図7は、第四実施形態に係る電流センサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態に係る電流センサ10について説明する。
図1は、第一実施形態に係る電流センサ10を示す斜視図である。
図2は、第一実施形態に係る電流センサ10の内部を示す図であり、第一磁気コア32が除かれた状態を示す分解斜視図である。
図3は、
図1のIII-III断面図である。
【0013】
図1に示すように、電流センサ10のセンサ本体12は、円形のリング状に形成されている。センサ本体12の中央部には、円形の挿通部14が形成されている。センサ本体12は、被測定電流16が通流する被測定対象物18を囲むように配置され、センサ本体12は、挿通部14を挿通した被測定対象物18において、挿通部14を貫通する方向に流れる被測定電流16を測定する。
【0014】
被測定対象物18は、被測定電流16が流れる導体を含んで構成される。被測定対象物18は、導体が露出したバスバー又は導線が被覆で覆われた電線が挙げられ、本実施形態では、一例として被測定対象物18が電線で構成されている。
【0015】
電流センサ10は、被測定対象物18の周囲を囲んだ状態で被測定対象物18に流れる被測定電流の大きさを測定する貫通型電流センサである。
【0016】
センサ本体12は、被測定電流16の測定時において被測定対象物18を囲むように配置されればよい。
【0017】
例えば、リング状のセンサ本体12を周方向に分離可能に接続する接続部を設け、センサ本体12を接続部で分離可能とする。そして、センサ本体12を接続部で分離してリング状のセンサ本体12に開口部分を形成し、この開口部分から被測定対象物18を挿通部14へ挿入可能とする。これにより、測定時において、被測定対象物18を囲むようにセンサ本体12を配置してもよい。
【0018】
センサ本体12の外面は、合成樹脂製のカバー20で構成されている。カバー20は、円形のリング状である。カバー20は、センサ本体12の厚み方向に分割された第一カバー22と第二カバー24とを備える。第一カバー22及び第二カバー24は、断面U字状に形成され(
図3参照)、第一カバー22と第二カバー24との間に、空間が形成される。
【0019】
リング状のカバー20の外周部には、帰還巻線30がトロイダル方向に沿うようにポロイダル方向に巻かれている。帰還巻線30は、カバー20の全周にわたって巻かれている。
【0020】
なお、
図1には、電流センサ10の構成の理解を容易にするために、帰還巻線30の一部のみが示されている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、カバー20の第一カバー22と第二カバー24との間には、第一磁気コア32と(
図3参照)、第一磁気コア32の内側に配置されたフラックスゲートセンサ34とが設けられている。
【0022】
これにより、カバー20に巻かれた帰還巻線30は、第一磁気コア32の外側に巻かれている。また、帰還巻線30は、後述する第一磁気コア32及び第二磁気コア35に巻かれている。帰還巻線30は、入力された信号で発生する磁束によって第一磁気コア32の磁束を打ち消すように動作する。第一磁気コア32の磁束を打ち消すための磁束を発生させる為の具体的構成は、帰還巻線30が巻かれる方向と帰還巻線30に入力する信号の位相との関係で定める。
【0023】
なお、
図2には、電流センサ10の内部の構成の理解を容易にするために、第一磁気コア32が除かれた状態が示されている。
【0024】
第一磁気コア32は、円形のリング状に形成されている。第一磁気コア32は、測定時において、被測定対象物18を囲むように配置される。
【0025】
図3に示すように、第一磁気コア32は、内側第一磁気コア36と外側第一磁気コア38とを備える。各第一磁気コア36、38は、断面がU字状の部材で構成されている。各第一磁気コア36、38は、一例としてパーマロイ材(鉄ニッケル軟質磁性材料)で構成される。
【0026】
内側第一磁気コア36は、外側第一磁気コア38より小さい。内側第一磁気コア36は、フラックスゲートセンサ34を挿入可能な開口部36aを有する。内側第一磁気コア36は、フラックスゲートセンサ34を収容する。
【0027】
外側第一磁気コア38は、内側第一磁気コア36を挿入可能な開口部38aを有する。外側第一磁気コア38は、内側第一磁気コア36を収容し、外側第一磁気コア38の底部に近い方向に内側第一磁気コア36の開口部36aが位置する。
【0028】
外側第一磁気コア38は、内側第一磁気コア36を収容した状態で、内側第一磁気コア36の開口部36aを閉塞する。これにより、フラックスゲートセンサ34は、第一磁気コア32に収容される。
【0029】
フラックスゲートセンサ34は、第二磁気コア35と、第二磁気コア35に巻かれた励磁検出巻線40とを含む。これにより、フラックスゲートセンサ34を構成する第二磁気コア35は、第一磁気コア32に配置される。
【0030】
励磁検出巻線40は、第二磁気コア35を励磁する励磁信号が入力される。励磁検出巻線40は、第二磁気コア35に流れる磁束を検出して被測定電流16を示す検出信号を出力する。第二磁気コア35は、円形のリング状に形成されている。第二磁気コア35は、測定時において、被測定対象物18を囲むように配置される。
【0031】
ここで、本実施形態では、第二磁気コア35が円形のリング状に形成された場合について説明するが、第二磁気コア35は、この形状に限定されるものではない。例えば、第一磁気コア32の中途部に第二磁気コア35を設けたり(例えば特開2012-83241号公報参照)、第一磁気コア32の周方向に離間して第二磁気コア35を複数設けたり(例えば特開2014-215103号公報)してもよい。
【0032】
フラックスゲートセンサ34は、隣接して並んで配置された第一フラックスゲートセンサ42と第二フラックスゲートセンサ44とを備える。
【0033】
第一フラックスゲートセンサ42は、第二磁気コア35を構成する円形のリング状の第三磁気コア46と、第三磁気コア46に巻かれた励磁検出巻線40を構成する第一励磁検出巻線50とを含む。第一励磁検出巻線50は、リング状の第三磁気コア46に対してトロイダル方向に沿うようにポロイダル方向に巻かれている。
【0034】
第一励磁検出巻線50には、第三磁気コア46を励磁する第一励磁信号が入力される。第一励磁検出巻線50は、第三磁気コア46に流れる磁束を検出して被測定電流16(
図1参照)を示す第一検出信号を出力する。
【0035】
第二フラックスゲートセンサ44は、第二磁気コア35を構成する円形のリング状の第四磁気コア48と、第四磁気コア48に巻かれた励磁検出巻線40を構成する第二励磁検出巻線52とを含む。第二励磁検出巻線52は、リング状の第四磁気コア48に対してトロイダル方向に沿うようにポロイダル方向に巻かれている。
【0036】
第二励磁検出巻線52には、第四磁気コア48を励磁する第二励磁信号が入力される。第二励磁検出巻線52に入力された第二励磁信号によって発生する磁束は、第一励磁検出巻線50に入力された第一励磁信号によって発生する磁束を打ち消すように作用する。第二励磁検出巻線52は、第四磁気コア48に流れる磁束を検出して被測定電流16を示す第二検出信号を出力する。
【0037】
第三磁気コア46と第四磁気コア48とは、並んで配置されている。第三磁気コア46及び第四磁気コア48のそれぞれは、一例としてパーマロイ材(鉄ニッケル軟質磁性材料)で構成される。
【0038】
なお、第三磁気コア46と第四磁気コア48とをパーマロイ材が内層に挿入された多層基板で構成してもよい。この場合、パターン配線を多層基板の外周面に沿って螺旋状に形成することで、パターン配線で励磁検出巻線を構成することができる。
【0039】
フラックスゲートセンサ34の外側には、補助巻線54が巻かれている。補助巻線54は、第一励磁検出巻線50が巻かれた第三磁気コア46と、第二励磁検出巻線52が巻かれた第四磁気コア48とを共に巻く。補助巻線54は、リング状のフラックスゲートセンサ34に対してトロイダル方向に沿うようにポロイダル方向に巻かれている。
【0040】
補助巻線54は、第三磁気コア46及び第四磁気コア48を有する第二磁気コア35に巻かれる。補助巻線54(
図4参照)は、第二磁気コア35に流れる磁束を検出して被測定電流16(
図1参照)を示す補助信号を出力する。
【0041】
第二磁気コア35に流れる磁束は、第一励磁検出巻線50からの磁束と第二励磁検出巻線52からの磁束とで相殺できなかった磁束を含む。相殺できなかった磁束は、漏磁束となる。補助巻線54は、フラックスゲートセンサ34の第二磁気コア35から漏れる漏磁束を含んだ補助信号を出力する。
【0042】
そして、補助巻線54は、隣接する巻線間に隙間ができないように密に巻かれる。なお、内側第一磁気コア36及び外側第一磁気コア38は一体であってもよい。
【0043】
図4は、第一実施形態に係る電流センサ10の回路図であり、センサ回路60が示されている。
【0044】
センサ回路60は、磁束検出部62と、帰還部64と、補正信号生成部66とを備える。
【0045】
磁束検出部62は、被測定対象物18を流れる被測定電流16のうち比較的周波数が低い被測定電流16を主に検出する。比較的周波数が低い被測定電流16は、一例として、周波数が1kHz以下であって直流(DC)までの被測定電流16が挙げられる。
【0046】
磁束検出部62は、交流信号を発生する発振器68を備える。発振器68は、励磁信号70と検波用信号72とを出力する。検波用信号72の周波数2fは、励磁信号70の周波数fの二倍である。励磁信号70の周波数fは、一例として、10KHzである。
【0047】
発振器68は、励磁信号70を第二励磁検出巻線52の一端に出力する。第二励磁検出巻線52に入力される励磁信号70は、第二励磁信号を示す。第二励磁検出巻線52は、励磁信号70によって第四磁気コア48を励磁する。
【0048】
また、発振器68は、励磁信号70を反転回路74へ出力する。反転回路74は、励磁信号70の位相を反転した反転励磁信号76を第一励磁検出巻線50の一端に出力する。第一励磁検出巻線50に入力される反転励磁信号76は、第一励磁信号を示す。第一励磁検出巻線50は、反転励磁信号76によって第三磁気コア46を励磁する。
【0049】
これにより、第二励磁検出巻線52に入力された第二励磁信号によって発生する磁束は、第一励磁検出巻線50に入力された第一励磁信号によって発生する磁束を打ち消すように作用するため、被測定電流16の検出への影響を抑えることができる。
【0050】
そして、被測定対象物18に被測定電流16が流れると、被測定電流16によって発生した磁界で各励磁検出巻線50、52内の磁束が変化する。これに伴い、各励磁検出巻線50、52から出力される信号の電圧波形が変化する。
【0051】
第一励磁検出巻線50と第二励磁検出巻線52との電圧波形の差分信号は、被測定電流16の大きさ及び波形に対応した周波数成分を有する振幅変調信号77を示す。
【0052】
振幅変調信号77は、第二磁気コア35に流れる磁束から検出されるとともに被測定電流16に対応した検出信号を示す。振幅変調信号77は、第一励磁検出巻線50で検出された第一検出信号302と、第二励磁検出巻線52で検出された第二検出信号304とで構成される。
【0053】
この振幅変調信号77は、検波回路78に入力される。検波回路78では、励磁信号70に同期しかつ励磁信号70に対して二倍の周波数2fの検波用信号72で振幅変調信号77を同期検波する。
【0054】
これにより、検波回路78において、比較的周波数が低い被測定電流16に比例した帰還信号80が得られる。
【0055】
補正信号生成部66は、フラックスゲートセンサ34から漏れるとともに、第一磁気コア32または被測定対象物18に影響を与え得る磁束に応じた補正信号82を生成する。具体的に説明すると、フラックスゲートセンサ34の第一励磁検出巻線50で作られる磁束と第二励磁検出巻線52で作られる磁束とにおいて互いに打ち消すことができず、両磁気コア46、48から漏れる漏磁束を検出して当該磁束を示す補正信号82を生成する。
【0056】
補正信号生成部66は、補助巻線54から出力された補助信号306を取得して増幅する取得回路86を備える。取得回路86は、取得して増幅した補助信号306を積分回路88へ出力する。積分回路88は、補助信号306を積分した信号である補正信号82を生成し出力する。
【0057】
帰還部64は、磁束検出部62において、検出信号である振幅変調信号77から作られた帰還信号80を修正して修正後の修正帰還信号81を帰還巻線30に帰還する。
【0058】
帰還部64は、磁束検出部62の検波回路78からの帰還信号80を修正する修正部90を備える。修正部90は、一例として調整回路で構成され、調整回路は、補正信号82に基づいて帰還信号80を調整する。修正部90で修正された修正帰還信号81は、増幅回路92で増幅され、帰還巻線30の一端に入力される。
【0059】
帰還巻線30は、被測定対象物18に流れる比較的周波数が高い被測定電流16を主に検出する。比較的周波数が高い被測定電流16の一例としては、周波数が1kHz以上の被測定電流16が挙げられる。
【0060】
この帰還巻線30の一端には、上記の比較的周波数が低い被測定電流16に比例した修正帰還信号81が入力される。これにより、第一磁気コア32を流れる比較的周波数が低い磁束は打ち消される(ゼロフラックス動作)。また、この帰還巻線30は、比較的周波数が高い被測定電流16に比例した信号を検出する。
【0061】
このため、帰還巻線30の他端は、低い周波数から高い周波数までの被測定電流16に比例する比例信号94を出力する。また、電流センサ10は、帰還巻線30から電流値として出力された比例信号94をIV変換回路214によって電圧値に変換した出力信号96を出力する。
【0062】
(作用及び効果)
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0063】
本実施形態における電流センサ10は、被測定電流16が通流する被測定対象物18を囲む第一磁気コア32と、第一磁気コア32に配置される第二磁気コア35と、を備える。電流センサ10は、第二磁気コア35に巻かれ、第二磁気コア35を励磁する励磁信号70が入力されるとともに、第二磁気コア35に流れる磁束を検出して被測定電流16を示す検出信号(振幅変調信号77)を出力する励磁検出巻線40を備える。電流センサ10は、第二磁気コア35に巻かれ、第二磁気コア35に流れる磁束を検出して被測定電流16を示す補助信号306を出力する補助巻線54を備える。電流センサ10は、第一磁気コア32及び第二磁気コア35に巻かれ、検出信号(振幅変調信号77)から作られた信号が入力されるとともに、第一磁気コア32及び第二磁気コア35の磁束を打ち消すように巻かれる帰還巻線30を備える。電流センサ10は、被測定電流16に応じて帰還巻線30が出力する信号(比例信号94)を、補助信号306から作られた補正信号82に基づいて修正することにより被測定電流16の大きさを示す出力信号96を出力する回路(センサ回路60)を備える。
【0064】
この構成において、被測定電流16に応じた比例信号94を検出する帰還巻線30は、第一磁気コア32及び第二磁気コア35に巻かれている。具体的には、帰還巻線30は、第二磁気コア35の外側に配置された第一磁気コア32の外側に巻かれている。
【0065】
一方、比例信号94を修正する為の補助信号306を検出する補助巻線54は、第二磁気コア35に巻かれている。具体的には、補助巻線54は、第一磁気コア32の内側に配置された第二磁気コア35に巻かれている。
【0066】
このため、帰還巻線30と補助巻線54とが同一のコアに巻かれた場合と比較して、高周波帯域における帰還巻線30と補助巻線54との間に生じる容量結合を小さくできる。これにより、周波数帯域の制限が抑えられる。
【0067】
したがって、周波数帯域の広い電流センサの提供が可能となる。
【0068】
また、本実施形態における電流センサ10において、第二磁気コア35は、並んで配置された第三磁気コア46及び第四磁気コア48で構成されている。励磁検出巻線40は第一励磁検出巻線50を備える。第一励磁検出巻線50は第三磁気コア46に巻かれ第三磁気コア46を励磁する第一励磁信号(反転励磁信号76)が入力されるとともに第三磁気コア46に流れる励磁磁束を検出して被測定電流16を示す第一検出信号302を出力する。また、励磁検出巻線40は第二励磁検出巻線52を備え、第二励磁検出巻線52は第四磁気コア48に巻かれ第四磁気コア48を励磁する第二励磁信号(励磁信号70)が入力されるとともに第一励磁検出巻線50で生じる磁束を打ち消すように構成される。第二励磁検出巻線52は、第四磁気コア48に流れる磁束を検出して被測定電流16を示す第二検出信号304を出力する。補助巻線54は、第一励磁検出巻線50が巻かれた第三磁気コア46及び第二励磁検出巻線52が巻かれた第四磁気コア48を共に巻く巻線で構成されている。帰還巻線30には、第一検出信号302及び第二検出信号304から作られた信号(修正帰還信号81)が入力される。
【0069】
すなわち、第三磁気コア46と第四磁気コア48との特性差に起因して、各磁気コア46、48に生ずる励磁磁束が異なる場合、両磁気コア46、48に生じた励磁磁束を打ち消せない場合がある。この場合、打ち消せない磁束が第一磁気コア32へ漏れ、第一磁気コア32の外側に巻かれた帰還巻線30または被測定対象物18に影響を与え得る。
【0070】
そこで、この電流センサ10では、補正信号82を生成する為の補助信号306を出力する補助巻線54は、第一励磁検出巻線50が巻かれた第三磁気コア46と第二励磁検出巻線52が巻かれた第四磁気コア48とを共に巻く。
【0071】
このため、補助巻線54の出力で電流センサ10の出力を修正することで、ペアとなる第一励磁検出巻線50と第二励磁検出巻線52で相殺しきれなかった磁束が電流センサ10の出力に与える影響を修正することができる。
【0072】
したがって、高精度な測定が可能となる。
【0073】
また、本実施形態における電流センサ10において、回路(センサ回路60)は、補正信号82に基づいて帰還巻線30に入力される信号(修正帰還信号81)を調整して出力信号96を修正する。
【0074】
このように、補助巻線54の出力を帰還巻線30の前に入力してフィードバックさせることで、電流値を補正できるとともに、周波数領域の平坦性を上げることができる。
【0075】
加えて、補助巻線54は、フラックスゲートセンサ34が主に検出する帯域において透磁率が高い第一磁気コア32の内側に配置されている。このため、フラックスゲートセンサ34が主に検出する比較的周波数が低い帯域では、第一磁気コア32が磁気シールドとなり補助巻線54による被測定電流16の検出が抑制される。
【0076】
さらに、積分回路88によるカットオフ周波数を適切に調整することで、帰還巻線30が変流器として動作する帯域である比較的周波数が高い帯域、例えば数百kHz以上の帯域では、補助巻線54による被測定電流16の検出が抑制される。
【0077】
このため、フラックスゲートセンサ34が主に検出する帯域と帰還巻線30が変流器として動作する帯域の境界の帯域でのみ補助巻線54による負帰還をかけることができる。したがって、その境界の帯域において漏磁束によって発生する励磁ノイズを低減しつつ、周波数領域の平坦性を上げることができる。
【0078】
<第二実施形態>
次に、図面を参照しながら第二実施形態に係る電流センサ210について説明する。
【0079】
図5は、第二実施形態に係る電流センサ210の回路図である。第二実施形態に係る電流センサ210は、第一実施形態と比較して、帰還巻線30で検出した比例信号94を補正信号82に基づいて修正する方法が異なる。本実施形態では、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0080】
第二実施形態に係る電流センサ210のセンサ回路212は、磁束検出部62と、帰還部64と、補正信号生成部66と、修正部213とを備える。
【0081】
帰還部64は、磁束検出部62で取得した帰還信号80を増幅回路92で増幅して帰還巻線30の一端に出力する。
【0082】
修正部213は、IV変換回路214と補正回路216とを備える。IV変換回路214は、帰還巻線30から電流値として出力された比例信号94を電圧値に変換して補正回路216へ出力する。
【0083】
補正回路216は、IV変換回路214からの比例信号94を補正信号生成部66からの補正信号82に基づいて補正する。
【0084】
これにより、センサ回路212は、フラックスゲートセンサ34からの漏磁束に起因する誤差信号を含んだ比例信号94から誤差信号を取り除いた出力信号96を出力する。
【0085】
(作用及び効果)
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0086】
本実施形態においても、第一実施形態と同様又は同一部分に関しては、同様の作用効果を奏する。
【0087】
また、本実施形態における電流センサにおいて、回路(センサ回路212)は、補正信号82に基づいて帰還巻線30から出力される信号(比例信号94)を補正して出力信号96を修正する。
【0088】
この構成においては、補助巻線54の出力を帰還巻線30の後に入力することで、電流値を補正することができる。
【0089】
具体的には、帰還巻線30で検出した比例信号94を補助巻線54から取得した補正信号82に基づいて補正する。このため、帰還巻線30に入力される帰還信号80を調整して出力信号96を修正する場合と比較して、出力信号96を調整する制御の簡素化を図ることが可能となる。
【0090】
なお、両実施形態では、第二磁気コア35を励磁する励磁信号70が入力されるとともに、第二磁気コア35に流れる磁束を検出して被測定電流16を示す検出信号(振幅変調信号77)を出力する励磁検出巻線40を例に挙げて説明した。しかし、本態様は、この構造に限定されるものではない。
【0091】
例えば、励磁検出巻線40を、励磁信号70が入力される励磁巻線と、検出信号(振幅変調信号77)を出力する検出巻線とで構成してもよい。
【0092】
また、両実施形態では、第一励磁検出巻線50が第三磁気コア46を励磁する第一励磁信号(反転励磁信号76)を入力するとともに第三磁気コア46に流れる磁束を検出して第一検出信号302を出力する場合を例に挙げて説明した。また、第二励磁検出巻線52が第四磁気コア48を励磁する第二励磁信号(励磁信号70)を入力するとともに第一励磁検出巻線50で生じる磁束を打ち消すように構成され、第四磁気コア48に流れる磁束を検出して第二検出信号204を出力する場合を説明した。しかし、本態様は、この構成に限定されるものではない。
【0093】
例えば、第一励磁検出巻線50を、第一励磁信号(反転励磁信号76)が入力される第一励磁巻線と、第一検出信号302を出力する第一検出巻線とで構成する。また、第二励磁検出巻線52を、第二励磁信号(励磁信号70)が入力される第二励磁巻線と、第二検出信号204を出力する第二検出巻線とで構成してもよい。
【0094】
<第三実施形態>
図面を参照しながら第三実施形態に係る電流センサ310について説明する。
【0095】
図6は、第三実施形態に係る電流センサ310の回路図である。第三実施形態に係る電流センサ310は、第一実施形態の変形例である。この電流センサ310は、第一実施形態と比較して、フラックスゲートセンサ34と、センサ回路60bにおける磁束検出部62bとが異なる。
【0096】
具体的に説明すると、フラックスゲートセンサ34は、第二フラックスゲートセンサ44のみで構成されている。これに伴って、フラックスゲートセンサ34の第二磁気コア35に巻かれる励磁検出巻線40は、第二励磁検出巻線52のみで構成される。
【0097】
第三実施形態の磁束検出部62bでは、第一実施形態の反転回路74(
図4参照)が廃止され、第一実施形態の反転回路74が接続された第一励磁検出巻線50が廃止されている。
【0098】
(作用及び効果)
本実施形態に係る電流センサ310においても、補助巻線54が、第一磁気コア32の内側に配置された第二磁気コア35に巻かれているので、第一実施形態と同等の作用効果を奏することができる。
【0099】
<第四実施形態>
図面を参照しながら第四実施形態に係る電流センサ310について説明する。
【0100】
図7は、第四実施形態に係る電流センサ410の回路図である。第四実施形態に係る電流センサ410は、第二実施形態の変形例である。この電流センサ410は、第二実施形態と比較して、フラックスゲートセンサ34と、センサ回路212bにおける磁束検出部62bとが異なる。
【0101】
具体的に説明すると、第三実施形態と同様に、フラックスゲートセンサ34は、第二フラックスゲートセンサ44のみで構成されている。これに伴って、フラックスゲートセンサ34の第二磁気コア35に巻かれる励磁検出巻線40は、第二励磁検出巻線52のみで構成される。
【0102】
第四実施形態の磁束検出部62bでは、第二実施形態の反転回路74が廃止され、第二実施形態の反転回路74が接続された第一励磁検出巻線50が廃止されている。
【0103】
(作用及び効果)
本実施形態に係る電流センサ410においても、補助巻線54が、第一磁気コア32の内側に配置された第二磁気コア35に巻かれているので、第二実施形態と同等の作用効果を奏することができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0105】
以上の実施形態においては、第一磁気コア32の内側に第二磁気コア35を配置していたが、シールド効果は落ちるが第一磁気コア32と第二磁気コア35を並んで配置させてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10、210、310、410 電流センサ
16 被測定電流
18 被測定対象物
30 帰還巻線
32 第一磁気コア
34 フラックスゲートセンサ
35 第二磁気コア
40 励磁検出巻線
42 第一フラックスゲートセンサ
44 第二フラックスゲートセンサ
46 第三磁気コア
48 第四磁気コア
50 第一励磁検出巻線
52 第二励磁検出巻線
54 補助巻線
60、60b センサ回路
70 励磁信号(第二励磁信号)
76 反転励磁信号(第一励磁信号)
80 帰還信号
81 修正帰還信号
82 補正信号
94 比例信号
96 出力信号
214 IV変換回路