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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189078
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】付加製造装置及び付加製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/218 20170101AFI20221215BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20221215BHJP
   B29C 64/241 20170101ALI20221215BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20221215BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20221215BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221215BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221215BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20221215BHJP
   B22F 10/12 20210101ALI20221215BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20221215BHJP
【FI】
B29C64/218
B29C64/165
B29C64/241
B29C64/268
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F3/16
B22F10/12
B22F12/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097437
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】梶田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝弥
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL24
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL74
4F213WL76
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】付加製造の製造速度を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】付加製造装置1は、複数の薄膜を積層して造形物を形成する付加製造装置である。付加製造装置1は、ステージ40と、ロールコータ10と、駆動部30とを含む。ロールコータ10は、薄膜Fを形成する。駆動部30は、ロールコータ10をステージ40上で移動させる。第1ロール11は、第1軸を中心として第1周速度で第1方向に回転する。第2ロール12は、第1ロール11から離間して配置され、第1軸と平行な第2軸を中心として第1周速度より速い第2周速度で逆方向に回転する。ロールコータ10は、第1ロール面11aと第2ロール面12aとの間に造形材Sを通過させて第2ロール面12aに薄膜Fを形成する。駆動部30は、ロールコータ10を第2軸と直交する方向に沿ってステージ40上を移動させて、薄膜Fをステージ40上に塗布する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薄膜を積層して造形物を形成する付加製造装置であって、
ステージと、
第1ロール及び第2ロールを有し、前記造形物の原料である造形材の薄膜を形成するロールコータと、
前記ロールコータを前記ステージ上で移動させる駆動部と、
を備え、
前記第1ロールは、第1軸を中心として第1周速度で第1方向に回転し、
前記第2ロールは、前記第1ロールから離間して配置され、前記第1軸と平行な第2軸を中心として前記第1周速度より速い第2周速度で前記第1方向の逆方向に回転し、
前記ロールコータは、前記第2ロールが前記ステージ上に位置するように配置され、前記第1ロールの第1ロール面と前記第2ロールの第2ロール面との間に前記造形材を通過させて前記第2ロール面に前記薄膜を形成し、
前記駆動部は、前記ロールコータを前記第2軸と直交する方向に沿って前記ステージ上を移動させて、前記第2ロール面に形成された前記薄膜を前記ステージ上に積層する、
付加製造装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記ロールコータを前記第2周速度より速い送り速度で前記ステージ上を移動させる、
請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項3】
前記造形材は、光硬化樹脂及び焼結材を含む請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項4】
前記第1ロール面及び前記第2ロール面の少なくとも一方のロール面はセラミックによって形成される、請求項3に記載の付加製造装置。
【請求項5】
前記ロールコータは、
前記第1ロールから離間して配置され、前記第1軸と平行な第3軸を中心として前記第1周速度より遅い第3周速度で前記逆方向に回転する第3ロールを有し、
前記第3ロールの第3ロール面と前記第1ロール面との間に前記造形材を通過させて前記第1ロール面に前記薄膜よりも厚い前記造形材の厚膜を形成し、
前記第1ロール面と前記第2ロール面との間に前記厚膜を通過させて前記第2ロール面に前記造形材の前記薄膜を形成する、
請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項6】
前記ロールコータに前記造形材を供給する供給部と、
前記ステージ上に積層された前記薄膜を硬化させるレーザ光を照射する照射部と、
を備える、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項7】
ステージ上に複数の薄膜を積層して造形物を形成する付加製造方法であって、
第1ロール及び第2ロールを含むロールコータにおいて、前記第1ロールを第1軸を中心として第1周速度で第1方向に回転させると共に、前記第1ロールから離間して配置される前記第2ロールを、前記第1軸と平行な第2軸を中心として前記第1周速度より速い第2周速度で前記第1方向の逆方向に回転させる回転ステップと、
前記第1ロールの第1ロール面と前記第2ロールの第2ロール面との間に造形材を通過させて前記第2ロール面に前記造形材の薄膜を形成する形成ステップと、
前記第2ロールが前記ステージ上に位置するように前記ロールコータを配置し、前記ロールコータを前記第2軸と直交する方向に沿って移動させて、前記第2ロール面に形成された前記薄膜を前記ステージ上に積層する積層ステップと、
を備える、付加製造方法。
【請求項8】
前記積層ステップでは、前記ロールコータを前記第2周速度より速い送り速度で前記ステージ上を移動させる、
請求項7に記載の付加製造方法。
【請求項9】
前記造形材は、光硬化樹脂及び焼結材を含み、
熱処理によって前記造形物から前記光硬化樹脂を分離する分離ステップと、
熱処理によって前記焼結材を焼結する焼結ステップと、
を備える、請求項7に記載の付加製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、付加製造装置及び付加製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、積層造形物を製造する付加製造装置を開示する。この付加製造装置は、下部先端が尖った刃状のブレードを有し、ステージに供給された流動性を有するペースト状の材料に対してブレードを水平方向に動かすことによって、材料を平坦化すると共に層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2016-203425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された付加製造装置においては、ブレードを高速で移動させた場合には、材料により形成された層に引掻きダメージを与えるおそれがある。このため、層の表面全体を均一に平坦にするためにはブレードを低速で動かす必要がある。よって、積層造形物の製造に時間がかかるおそれがある。本開示は、積層造形物の製造速度を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る付加製造装置は、複数の薄膜を積層して造形物を形成する付加製造装置である。付加製造装置は、ステージと、ロールコータと、駆動部とを含む。ロールコータは、第1ロール及び第2ロールを有し、造形物の原料である造形材の薄膜を形成する。駆動部は、ロールコータをステージ上で移動させる。第1ロールは、第1軸を中心として第1周速度で第1方向に回転する。第2ロールは、第1ロールから離間して配置され、第1軸と平行な第2軸を中心として第1周速度より速い第2周速度で第1方向の逆方向に回転する。ロールコータは、第2ロールがステージ上に位置するように配置される。ロールコータは、第1ロールの第1ロール面と第2ロールの第2ロール面との間に造形材を通過させて第2ロール面に薄膜を形成する。駆動部は、ロールコータを第2軸と直交する方向に沿ってステージ上を移動させて、第2ロール面に形成された薄膜をステージ上に積層する。
【0006】
この付加製造装置では、造形材は、第1ロール面と第2ロール面との間で薄膜に形成される。造形材の薄膜は、第1ロールより周速度が速い第2ロールの第2ロール面に形成される。駆動部は、ロールコータを第2軸と直交する方向に沿ってステージ上を移動させる。第2ロール面の薄膜は、ステージ上に積層される。よって、この付加製造装置は、造形材の薄膜への引掻きダメージを考慮することなくロールコータの移動速度を上げることができるので、ブレードによって層を形成する付加製造装置と比べて、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0007】
一実施形態においては、駆動部は、ロールコータを第2周速度より速い送り速度でステージ上を移動させてもよい。造形材の薄膜は速度が速いステージ側に移動するため、この付加製造装置は、確実に造形材の薄膜を積層することができる。
【0008】
一実施形態においては、造形材は、光硬化樹脂及び焼結材を含んでもよい。光硬化樹脂及び焼結材を含む造形材は、第1ロール面と第2ロール面との間で薄膜に形成される。このように光硬化樹脂及び焼結材の薄膜を形成することで、ブレードによって層を形成する付加製造装置と比べて、光硬化樹脂及び焼結材を含む造形材が薄く形成され、光の透過が容易になるため、造形材の硬化不良が抑制される。
【0009】
一実施形態においては、第1ロール面及び第2ロール面の少なくとも一方はセラミックによって形成されてもよい。このように表面をセラミックで形成することで、第1ロール面及び第2ロール面の少なくとも一方が金属などによって形成される場合と比べて、第1ロール面及び第2ロール面の少なくとも一方が焼結材によって摩耗することが抑制される。
【0010】
ロールコータは、第3ロールを有してもよい。第3ロールは、第1ロールから離間して配置され、第1軸と平行な第3軸を中心として第1周速度より遅い第3周速度で逆方向に回転する。ロールコータは、第3ロールの第3ロール面と第1ロール面との間に造形材を通過させて第1ロール面に薄膜よりも厚い造形材の厚膜を形成し、第1ロール面と第2ロール面との間に厚膜を通過させて第2ロール面に造形材の薄膜を形成してもよい。造形材は、第3ロール面と第1ロール面との間で厚膜に形成される。造形材の厚膜は、第3ロールより周速度が速い第1ロールの第1ロール面に形成される。第1ロール面の厚膜は、第1ロール面と第2ロール面との間で薄膜に形成される。このように第3ロールを有する構成とすることで、第2ロール面の薄膜は、第3ロール面と第1ロール面との間で形成された造形材の厚膜から形成されるため、第3ロールを有さない場合と比べて、均一な薄膜が形成できる。
【0011】
一実施形態においては、付加製造装置は、ロールコータに造形材を供給する供給部と、ステージ上に積層された薄膜を硬化させるレーザ光を照射する照射部とを備えてもよい。
【0012】
本開示の他の側面に係る付加製造方法は、ステージ上に複数の薄膜を積層して造形物を形成する付加製造方法である。付加製造方法は、回転ステップと、形成ステップと、積層ステップとを備える。回転ステップは、第1ロール及び第2ロールを含むロールコータにおいて、第1ロールを第1軸を中心として第1周速度で第1方向に回転させると共に、第1ロールから離間して配置される第2ロールを、第1軸と平行な第2軸を中心として第1周速度より速い第2周速度で第1方向の逆方向に回転させる。形成ステップは、第1ロールの第1ロールの第1ロール面と第2ロールの第2ロール面との間に造形材を通過させて第2ロール面に造形材の薄膜を形成する。積層ステップは、第2ロールがステージ上に位置するようにロールコータを配置し、ロールコータを第2軸と直交する方向に沿って移動させて、第2ロール面に形成された薄膜をステージ上に積層する。
【0013】
この付加製造方法では、造形材は、第1ロール面と第2ロール面との間で薄膜に形成される。造形材の薄膜は、第1ロールより周速度が速い第2ロール面に形成される。駆動部は、ロールコータを第2軸と直交する方向に沿ってステージ上を移動させる。第2ロール面の薄膜は、ステージ上に積層される。よって、この付加製造方法は、造形材の薄膜への引掻きダメージを考慮することなくロールコータの移動速度を上げることができるので、ブレードによって層を形成する付加製造方法と比べて、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0014】
一実施形態においては、駆動部は、ロールコータを第2周速度より速い送り速度でステージ上を移動させてもよい。造形材の薄膜は速度が速いステージ側に移動するため、この付加製造方法は、確実に造形材の薄膜を積層することができる。
【0015】
一実施形態においては、造形材は、光硬化樹脂及び焼結材を含み、熱処理によって造形物から光硬化樹脂を分離する分離ステップと、熱処理によって焼結材を焼結する焼結ステップとを備えていてもよい。第1ロール面と第2ロール面との間で薄膜に形成される。このように光硬化樹脂及び焼結材の薄膜を形成することで、ブレードによって層を形成する場合と比べて、光硬化樹脂及び焼結材を含む造形材が薄く形成されるため、光硬化樹脂の硬化不良が抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る技術によれば、付加製造の製造速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る付加製造装置の構成を示す概要図である。
図2】実施形態に係る付加製造装置の構成を示す概要図である。
図3】実施形態に係る付加製造装置の構成を示す概要図である。
図4】実施形態に係る付加製造装置の構成を示す概要図である。
図5】実施形態に係る付加製造方法を示すフローチャートである。
図6】変形例に係る付加製造装置の構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。図中のX軸方向及びY軸方向は水平方向であり、Z軸方向が鉛直方向である。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、3次元空間の直交座標系における互いに直交する軸方向である。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
(付加製造装置の構成)
図1図4を参照して、本実施形態に係る付加製造装置1の構成を説明する。図1図4は、実施形態に係る付加製造装置1の構成を示す概要図である。図1に示されるように、付加製造装置1は、ロールコータ10、供給部20、駆動部30、ステージ40、照射部50及び制御部60を備える。付加製造装置1は、造形材Sの薄膜Fを一層ごとに積層することにより、三次元の造形物Mを製造する。造形材Sは、造形物Mの原料である。造形材Sの薄膜Fは、ロールコータ10によって、ステージ40上に一層ごとに積層される。
【0020】
本実施形態では、造形材Sは、光硬化樹脂及び焼結材を含む。造形材Sは、一例としてスラリーである。光硬化樹脂は、例えば、紫外線硬化樹脂である。光硬化樹脂は、具体的には、エポキシ系樹脂又はアクリル系樹脂である。焼結材は、例えば、セラミック粉末又は金属粉末である。焼結材は、具体的には、SiC(炭化ケイ素)、Si(窒化ケイ素)、サーメットである。本実施形態では、造形材Sにおける焼結材の含有量は、40質量%以上、かつ、70質量%以下である。造形材Sにおける焼結材の含有量が増えると、造形材Sの粘性が増加する。
【0021】
ロールコータ10は、第1ロール11及び第2ロール12を有する。第1ロール11は、Y軸と平行な第1軸を中心とする円柱状を呈する。第2ロール12は、第1軸と平行な(すなわち、Y軸と平行な)第2軸を中心とする円柱状を呈する。第1ロール11は、径方向において円柱の曲面を構成する第1ロール面11aを含んでいる。第2ロール12は、径方向において円柱の曲面を構成する第2ロール面12aを含んでいる。第1ロール11は第1軸を回転中心にして回転可能に設けられる。第2ロール12は第2軸を回転中心にして回転可能に設けられる。第1ロール11及び第2ロール12には、例えば、それぞれ回転駆動部(不図示)が設けられており、回転方向及び回転速度が制御される。本実施形態では、第1ロール面11a及び第2ロール面12aは、セラミックによって形成される。セラミックは、例えば、ジルコニア又はアルミナジルコニアである。
【0022】
第1ロール11と第2ロール12とは、互いに異なる方向に回転する。すなわち、第1ロール11が一方向(第1方向の一例)に回転する場合、第2ロール12は、一方向の逆方向に回転する。本実施形態では、第1ロール11は、第1軸を中心に第1周速度で時計回りに回転する。第2ロール12は、第2軸を中心に第2周速度で反時計回りに回転する。第1周速度は、例えば、30mm/sである。第2周速度は、例えば、60mm/sである。第1周速度に対する第2周速度の比(第2周速度/第1周速度)は、例えば、2である。
【0023】
第2ロール12は、第1ロール11から離間して配置される。第1ロール11と第2ロール12との間の隙間は、例えば、20μm以上、かつ、1mm以下の範囲で調整可能である。ロールコータ10は、第1ロール面11aと第2ロール面12aとの間に造形材Sを通過させる。すなわち、ロールコータ10は、当該隙間に造形材Sを通過させる。造形材Sは、第1ロール面11aと第2ロール面12aとの間で延ばされると共に、第2ロール面12aに巻き取られる。第1ロール面11aと第2ロール面12aとの間を通過した造形材Sは、第2ロール面12aに造形材Sの薄膜Fを形成する。薄膜Fの厚さは、例えば、約10μmである。なお、第1ロール11及び第2ロール12は、第1ロール11と第2ロール12との間の隙間が調整されることで、ロールミルとして機能してもよい。第1ロール11及び第2ロール12がロールミルとして機能する場合、造形材Sが含有する焼結材(一次粒子)の凝集物(二次粒子)は、第1ロール11と第2ロール12との間で粉砕される。
【0024】
ロールコータ10は、さらに、ブレード13を有する。ブレード13は、例えば、Z軸方向における、第1ロール11の下部と対向するように配置される。ブレード13は、第1ロール面11aに残存する第1ロール面11aと第2ロール面12aとの間を通過した造形材Sを除去する。ブレード13によって除去された造形材Sは、回収され、再利用される。
【0025】
供給部20は、ロールコータ10に造形材Sを供給する。本実施形態では、供給部20は、Z軸方向において、ロールコータ10の上方に配置されている。ロールコータ10は、回転している第1ロール11に造形材Sを注ぐ。造形材Sは、第1ロール11と第2ロール12との間の隙間の上方に液溜まりPを形成する。液溜まりPに溜まった造形材Sは、第1ロール面11aと第2ロール面12aとの間を順次通過する。
【0026】
駆動部30は、ロールコータ10とステージ40との相対位置を変化させる。ロールコータ10は、第2ロール12がステージ40上に位置するように配置されている。本実施形態では、駆動部30は、ロールコータ10に連結される。駆動部30は、ロールコータ10を第2軸と直交する方向(X軸方向)に沿って、第二周速度よりも速い送り速度でステージ40上を移動させる。ロールコータ10が移動する方向は、第2軸方向(Y軸方向)から見た、第2ロール12とステージ40との間の接点における接線方向である。また、ロールコータ10が移動する方向は、第2ロール12の回転と干渉しない方向、つまり、第2ロール12とステージ40(又はステージ40上の既に積層された薄膜)との接点における角速度の向きと逆方向となる。例えば、第2ロール12が反時計回りに回転する場合には、ロールコータ10が移動する方向はX軸負方向であり、第2ロール12が時計回りに回転する場合には、ロールコータ10が移動する方向はX軸正方向である。なお、駆動部30は、ステージ40に連結されてもよい。駆動部30がステージ40に連結されている場合、駆動部30は、ステージ40から見てロールコータ10が移動するように、ステージ40を移動させる。
【0027】
ステージ40上には、第2ロール面12aに形成された薄膜Fが積層される。第2ロール面12aの薄膜Fは、ステージ40上に押し付けられるように積層される。第2ロール面12aとステージ40との間の間隔は、薄膜Fの厚さ以下の所定の間隔に調整されている。ロールコータ10は、ステージ40に対して第二周速度よりも速い送り速度で移動する。よって、ロールコータ10のロール面に形成された薄膜Fは、ステージ40に押し付けられると共に、第2ロール面12aから引き剥がされるように積層される。なお、「ステージ40上に積層」とは、ステージ40の上面に積層される場合だけでなく、ステージ40の上面において、積層され、かつ、硬化した薄膜F上に積層される場合も含む。
【0028】
ステージ40は、調整機構41を有する。図2に示されるように、調整機構41は、第2ロール12とステージ40との間隔を調整する。調整機構41は、次の積層ステップが実施できるように、第2ロール12とステージ40との間隔を調整する。本実施形態では、薄膜Fが積層されるステージ40の上面は、X方向及びY軸方向に延在する平面である。調整機構41は、例えば、ステージ40をZ軸方向(高さ方向)において、薄膜Fの厚さ程度離間するように調整する。なお、ステージ40は、調整機構41を有しなくてもよく、この場合、ロールコータ10が調整機構41を有する構成とすればよい。
【0029】
照射部50は、ステージ40上に積層された薄膜Fを硬化させるレーザを照射する。図3に示されるように、本実施形態では、照射部50は、紫外線レーザを照射する。照射部50は、レーザ発振器(不図示)及びガルバノミラー(不図示)を有する。照射部50は、Z軸方向から見て、所定の形状に沿ってレーザの焦点が移動するように薄膜Fを走査する。薄膜Fのレーザを走査された領域は、硬化する。具体的には、薄膜Fに含まれる光硬化樹脂が硬化する。
【0030】
制御部60は、上述した付加製造装置1の各要素の動作を制御する。制御部60は、例えば、第1ロール11及び第2ロール12のそれぞれの周速度と、供給部20が供給する造形材Sの供給量と、駆動部30の送り速度及び送り方向と、調整機構41の調整量と、照射部50が照射するレーザの焦点の位置とを制御する。
【0031】
付加製造装置1は、以上のように、造形材Sの薄膜Fを一層ごとに積層する。図4に示されるように、付加製造装置1は、Z軸方向に沿って所定の数の薄膜Fを積層することで、造形物Mを形成する。後の工程で、造形物Mに熱処理が行われる。熱処理は、造形物Mの光硬化樹脂を脱脂すると共に、造形物Mの焼結材を焼結する。
【0032】
(付加製造方法の工程)
次に、図1図5を参照して、本実施形態に係る付加製造方法の工程を説明する。図5は、本実施形態に係る付加製造を示すフローチャートである。本実施形態に係る付加製造方法は、複数の薄膜を積層して造形物Mを形成する。本実施形態では、作業者等が、付加製造装置1を用いて付加製造方法を実施する。
【0033】
最初に、回転ステップ(ステップS10)が実施される。回転ステップでは、第1ロール11が第1方向に第1周速度で回転する。第2ロール12は、第1周速度より速い第2周速度で第1方向の逆方向に回転する。
【0034】
次に、供給ステップ(ステップS20)が実施される。供給ステップでは、第1ロール11及び第2ロール12を有するロールコータ10に、造形材Sが供給される。本実施形態では、造形材Sは、光硬化樹脂及び焼結材を含んでいる。造形材Sは、供給部20によって供給される。ロールコータ10に供給された造形材Sは、第1ロール11と第2ロール12との間の上方に液溜まりPを形成する。
【0035】
次に、形成ステップ(ステップS30)が実施される。形成ステップでは、液溜まりPの造形材Sが、第1ロール11と第2ロール12との間を順次通過して、第2ロール面12aに薄膜Fとして形成される。
【0036】
次に、積層ステップ(ステップS40)が実施される。積層ステップでは、第2ロール12がステージ40上に位置するようにロールコータ10が配置される。ロールコータ10は、第2軸と直交する方向に沿って、第二周速度よりも速い送り速度で移動する。第2ロール面12aに形成された薄膜Fは、ステージ40上に積層される。回転ステップ、供給ステップ、形成ステップ及び積層ステップは、連続して実施される。薄膜Fは、ステージ40上の所定の範囲に積層される。
【0037】
次に、照射ステップ(ステップS50)が実施される。照射ステップでは、ステージ40上に積層された薄膜Fに、薄膜Fを硬化させるレーザが照射される。本実施形態では、照射部50が、所定の形状に沿ってレーザの焦点が移動するように薄膜Fを走査する。レーザが照射された領域の薄膜Fは、硬化する。
【0038】
次に、判定ステップ(ステップS60)が実施される。判定ステップでは、積層する回数分、ステップS10からステップS50までの処理が繰り返し実行されたか否かが判定される。繰り返し実行されていないと判定された場合(ステップS60:NO)、次の積層ステップが実施できるようにステージ40と第2ロール12との間の間隔が調整される。本実施形態では、調整機構41が、ステージ40の位置をZ軸方向に沿って調整する。調整機構41は、例えば、Z軸方向における、薄膜Fの上面が常に一定の位置になるようにステージ40の位置を調整する。なお、ステージ40と第2ロール12との間の間隔は、照射ステップの前に調整されてもよい。その後、ステップS10からステップS50までの処理が繰り返し実行される。繰り返し実行されたと判定された場合(ステップS60:YES)、造形物Mの積層成形が完了する。造形物Mは、所定の形状に沿って硬化した薄膜Fの積層物である。本実施形態では、造形物Mは、作業者等によって付加製造装置1から取り出される。
【0039】
次に、分離ステップ(ステップS70)が実施される。分離ステップでは、熱処理によって造形物Mから光硬化樹脂が分離される。本実施形態では、作業者等が、電気炉などを用いて分離ステップを実施する。
【0040】
最後に、焼結ステップ(ステップS80)が実施される。焼結ステップでは、熱処理によって造形物Mの焼結材は焼結する。本実施形態では、作業者等が、電気炉などを用いて分離ステップを実施する。分離ステップ及び焼結ステップは、一つの工程で実施されてもよい。図5に示されるフローチャートが実行されることにより、造形物Mの形状の焼結物が製造される。
【0041】
(実施形態のまとめ)
【0042】
本実施形態では、造形材Sは、第1ロール面11aと第2ロール面12aとの間で薄膜Fに形成される。薄膜Fは、第1ロール11より周速度が速い第2ロール12の第2ロール面12aに形成される。駆動部30は、ロールコータ10を第2軸と直交する方向に沿ってステージ40上を移動させる。第2ロール面12aの薄膜Fは、ステージ40上に積層される。ステージ40上に造形材を供給し、水平方向に直進するブレードによって余分な造形材を掻き取ることで薄膜を形成する場合、引っ掻いたような溝ができるおそれがある。このような溝が薄膜に存在する場合、その上に形成される層が溝の深さ分だけ厚くなり、所定のレーザ出力によるレーザ光が十分に届かないおそれがある。レーザ光が十分に届かない箇所は、硬化が不十分となるため、造形物の強度に影響を与えることになる。これに対して、付加製造装置1及び付加製造方法は、造形材Sの薄膜Fへの引掻きダメージを考慮することなくロールコータ10の移動速度を上げることができるので、ブレードによって層を形成する付加製造装置と比べて、造形物Mの製造速度を向上させることができる。
【0043】
本実施形態においては、駆動部30は、ロールコータ10を第2周速度より速い送り速度でステージ40上を移動させる。造形材Sの薄膜Fは速度が速いステージ側に移動するため、この付加製造装置1は、確実に造形材Sの薄膜Fを積層することができる。
【0044】
本実施形態においては、造形材Sは、光硬化樹脂及び焼結材を含んでいる。光硬化樹脂及び焼結材を含む造形材Sは、第1ロール11と第2ロール12との間で薄膜Fに形成される。この場合、ブレードによって層を形成する場合と比べて、光硬化樹脂及び焼結材を含む造形材Sが薄く形成され、光の透過が容易になるため、光硬化樹脂の硬化不良が抑制される。このため、付加製造装置1及び付加製造方法は、焼結材が光を吸収しやすい材料であっても、造形材Sを硬化できる。
【0045】
本実施形態においては、第1ロール面11a及び第2ロール面12aの少なくとも一方はセラミックによって形成される。このようにロール面をセラミックで形成することで、第1ロール11及び第2ロール12の少なくとも一方の表面が金属などによって形成される場合と比べて、第1ロール面11a及び第2ロール面12aの少なくとも一方が焼結材によって摩耗することが抑制される。
【0046】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0047】
図6を参照して、本実施形態の変形例に係る付加製造装置2の構成を説明する。図6は、本実施形態の変形例に係る付加製造装置2の構成を示す概要図である。本変形例は、ロールコータ10の構成に関して、上述した本実施形態と相違する。以下、上述した本実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0048】
ロールコータ10は、第3ロール14を有する。第3ロール14は、第1ロール11から離間して配置される。変形例では、第3ロール14と第1ロール11との間の隙間は、第1ロール11と第2ロール12との間の隙間より大きい。すなわち、第1ロール11と第2ロール12との間の隙間は、第3ロール14と第1ロール11との間の隙間より小さい。第3ロール14は、径方向において曲面を構成する第3ロール面14aを含む。第3ロール14は、第1軸と平行(すなわち、Y軸に平行)な第3軸を中心に、第1周速度より遅い第3周速度で時計回り(第1方向の逆方向)に回転する。すなわち、第1周速度は、第3周速度より速い。変形例では、第1ロール11は、第1軸を中心に第1周速度で反時計回りに回転する。第2ロール12は、第2軸を中心に第2周速度で時計回りに回転する。供給部20は、回転している第3ロール14に造形材Sを注ぐ。造形材Sは、第3ロール14と第1ロール11との間の隙間の上方に液溜まりPを形成する。液溜まりPに溜まった造形材Sは、第3ロール面14aと第1ロール面11aとの間を順次通過する。
【0049】
造形材Sは、第3ロール面14aと第1ロール面11aとの間を通過すると共に、第1ロール面11aに造形材Sの厚膜を形成する。第1ロール面11aに形成された厚膜は、第2ロール面12aに形成された薄膜Fより厚い。第1ロール面11aに形成された厚膜は、第1ロール11と第2ロール12との間を通過する。第1ロール11と第2ロール12との間を通過した造形材Sの厚膜は、第2ロール面12aに造形材Sの薄膜を形成する。
【0050】
変形例においては、造形材Sは、第3ロール面14aと第1ロール面11aとの間で厚膜に形成される。造形材Sの厚膜は、第3ロールより周速度が速い第1ロール面11aに形成される。第1ロール面11aの厚膜は、第1ロール11と第2ロール12との間で薄膜Fに形成される。この場合、第2ロール面12aの薄膜Fは、第3ロールと第1ロール11との間で形成された造形材Sの厚膜から形成されるため、第3ロールを有さない場合と比べて、均一な薄膜Fが形成できる。
【0051】
以上、付加製造装置2によれば、付加製造装置1と同様に、造形物Mの製造速度を向上させることができるとともに、付加製造装置1の薄膜Fより均一で薄い薄膜Fを形成できる。
【0052】
また、造形材Sは、上述した光硬化性樹脂に替えて熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。この場合、照射部50は、例えば、ファイバーレーザを照射する。ステージ40に積層された薄膜Fのレーザを照射された領域は、発熱によって硬化する。
【符号の説明】
【0053】
1,2…付加製造装置、10…ロールコータ、11…第1ロール、11a…第1ロール面、12…第2ロール、12a…第2ロール面、13…ブレード、14…第3ロール、14a…第3ロール面、20…供給部、30…駆動部、40…ステージ、41…調整機構、50…照射部、60…制御部、S…造形材、M…造形物、F…薄膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6