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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189080
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】測距装置、および測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/06 20060101AFI20221215BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01S17/06
G01C3/06 110A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097441
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 修二
(72)【発明者】
【氏名】村松 良徳
(72)【発明者】
【氏名】村岡 和彦
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AA02
2F112BA05
2F112BA06
2F112CA12
2F112DA04
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA01
2F112FA19
2F112FA27
2F112FA35
2F112GA01
5J084AA05
5J084AB09
5J084AC07
5J084BA03
5J084BA13
5J084BA40
5J084BA50
5J084BB28
5J084CA65
(57)【要約】
【課題】所望の測距状態で測距を行うことを可能にする。
【解決手段】本開示の測距装置は、スリット状の照射光を出射する照射部と、測距対象物に照射された照射光を検出するセンサ部と、センサ部の検出結果に基づく測距対象物の距離情報を生成する画像処理部と、測距対象物の大きさに応じた測距の対象領域を算出し、照射部による照射光の照射範囲およびセンサ部によるセンシング範囲を、対象領域に応じた範囲に設定する制御部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット状の照射光を出射する照射部と、
測距対象物に照射された前記照射光を検出するセンサ部と、
前記センサ部の検出結果に基づく前記測距対象物の距離情報を生成する画像処理部と、
前記測距対象物の大きさに応じた測距の対象領域を算出し、前記照射部による前記照射光の照射範囲および前記センサ部によるセンシング範囲を、前記対象領域に応じた範囲に設定する制御部と
を備える
測距装置。
【請求項2】
前記測距対象物の移動状態を検出する検出部、をさらに備え、
前記センサ部は、複数の画素を有し、複数のフレームに亘って前記対象領域をセンシングし、前記複数のフレームのうち第1のフレームによる第1の画素ラインの画素信号値と前記第1のフレームよりも後の第2のフレームによる前記第1の画素ラインに対応する第2の画素ラインの画素信号値とのフレーム間差分を取った信号値を算出して出力し、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記フレーム間差分の算出に用いる前記第1の画素ラインと前記第2の画素ラインとのライン位置を前記測距対象物の移動状態に応じたライン位置に設定する
請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記フレーム間差分の算出に用いる前記第1の画素ラインと前記第2の画素ラインとのライン位置を、前記第1のフレームから前記第2のフレームまでの期間に移動する前記測距対象物の移動量に応じたライン位置に設定する
請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記対象領域の位置と前記照射光の照射位置とが固定され、
前記センサ部は、前記対象領域内に移動してきた前記測距対象物に照射された前記照射光を検出する
請求項2に記載の測距装置。
【請求項5】
前記測距対象物の移動状態を検出する検出部、をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記測距対象物の移動に追随するように前記対象領域の設定位置を移動させる
請求項1に記載の測距装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記測距対象物の移動に追随するように前記照射部による前記照射光の照射位置を移動させる
請求項5に記載の測距装置。
【請求項7】
前記照射部は、前記照射光によるスキャンレートを変更可能に構成され、
前記制御部は、スキャンレートを維持しつつ測距精度を向上させる第1の測距モードと、測距精度を維持しつつスキャンレートを向上させる第2の測距モードとのいずれかの測距モードとなるように、前記照射光による前記スキャンレートおよび前記照射範囲と前記センサ部によるセンシング範囲とを設定する
請求項1に記載の測距装置。
【請求項8】
前記照射部は、前記照射光を出射する光源と、前記照射光によるスキャン方向を変化させるスキャンミラーとを有し、
前記制御部は、前記スキャンミラーの変位速度を前記測距モードに応じた速度に設定する
請求項7に記載の測距装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記照射光の最大照射範囲および前記センサ部による最大センシング範囲に対して少なくとも垂直方向が狭くなるような範囲を、前記照射光の照射範囲および前記センサ部によるセンシング範囲として設定し、
前記スキャンミラーは、前記照射光によるスキャン方向を垂直方向に変化させる
請求項8に記載の測距装置。
【請求項10】
スリット状の照射光を出射することと、
測距対象物に照射された前記照射光を検出することと、
前記照射光の検出結果に基づく前記測距対象物の距離情報を生成することと、
前記測距対象物の大きさに応じた測距の対象領域を算出し、前記照射光の照射範囲および前記照射光のセンシング範囲を、前記対象領域に応じた範囲に設定することと
を含む
測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置、および測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スリット状の照射光を測距対象物に照射し、測距対象物による反射光をセンサで検出することで測距対象物の距離情報を取得する測距装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-333493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、測距装置では、あらかじめ決められた大きさの測距領域内に照射光を照射し、センサによるセンシング範囲もあらかじめ決められている。このため、測距状態を所望の状態に制御することが困難である。
【0005】
所望の測距状態で測距を行うことが可能な測距装置、および測距方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る測距装置は、スリット状の照射光を出射する照射部と、測距対象物に照射された照射光を検出するセンサ部と、センサ部の検出結果に基づく測距対象物の距離情報を生成する画像処理部と、測距対象物の大きさに応じた測距の対象領域を算出し、照射部による照射光の照射範囲およびセンサ部によるセンシング範囲を、対象領域に応じた範囲に設定する制御部とを備える。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る測距方法は、スリット状の照射光を出射することと、測距対象物に照射された照射光を検出することと、照射光の検出結果に基づく測距対象物の距離情報を生成することと、測距対象物の大きさに応じた測距の対象領域を算出し、照射光の照射範囲および照射光のセンシング範囲を、対象領域に応じた範囲に設定することとを含む。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る測距装置、または測距方法では、測距対象物の大きさに応じた測距の対象領域を算出し、照射光の照射範囲および照射光のセンシング範囲を、対象領域に応じた範囲に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の比較例に係る測距装置による測距方法の概要を示す説明図である。
図2】三角法を用いた測距方法の原理を示す説明図である。
図3図2に示した測距方法において、センサ部から出力される1フレームごとの画素信号およびフレーム間差分の画素信号の一例を示す説明図である。
図4】本開示の第1の実施の形態に係る測距装置による測距方法の概要を示す説明図である。
図5】第1の実施の形態に係る測距装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。
図6】第1の実施の形態に係る測距装置による制御動作の一例を示すフローチャートである。
図7】第1の実施の形態に係る測距装置において、スキャンレートを上げる場合の制御動作の原理を示す説明図である。
図8】第1の実施の形態に係る測距装置において、測距精度を上げる場合の制御動作の原理を示す説明図である。
図9】測距の対象領域の切り出し範囲およびスキャン方向の第1の例を示す説明図である。
図10】測距の対象領域の切り出し範囲およびスキャン方向の第2の例を示す説明図である。
図11】第2の比較例に係る測距装置による測距方法の概要を示す説明図である。
図12】第2の実施の形態に係る測距装置による測距方法の概要を示す説明図である。
図13】第2の実施の形態に係る測距装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。
図14】第2の実施の形態に係る測距装置による制御動作の一例を示すフローチャートである。
図15】第2の実施の形態の変形例に係る測距装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。
図16】第3の比較例に係る測距装置による測距方法の概要を示す説明図である。
図17】第3の実施の形態に係る測距装置による三角法を用いた測距方法の原理を示す説明図である。
図18】第3の実施の形態に係る測距装置による測距方法の概要を示す説明図である。
図19】第3の実施の形態に係る測距装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。
図20】測距対象物が静止している場合における、フレーム間差分の演算に用いる画素ラインの一例を概略的に示す説明図である。
図21】測距対象物が移動している場合における、フレーム間差分の演算に用いる画素ラインの一例を概略的に示す説明図である。
図22】第3の実施の形態に係る測距装置による制御動作の一例を示すフローチャートである。
図23】第3の実施の形態の変形例に係る測距装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(複数の測距モードを有する測距装置)(図1図10
1.0 比較例
1.1 構成
1.2 動作
1.3 効果
2.第2の実施の形態(移動する測距対象物の追尾を行う測距装置)(図11図15
2.0 比較例
2.1 構成
2.2 動作
2.3 変形例
2.4 効果
3.第3の実施の形態(測距対象物の移動に応じたフレーム間差分演算を行う測距装置)(図16図23
3.0 比較例
3.1 構成
3.2 動作
3.3 変形例
3.4 効果
4.その他の実施の形態
【0011】
<1.第1の実施の形態>
[1.0 比較例]
図1に、第1の比較例に係る測距装置による測距方法の概要を示す。
【0012】
第1の比較例として、光切断法を用いた測距装置の例を示す。第1の比較例に係る測距装置は、レーザ光等のスリット状の照射光L1を出射する照射部5と、測距対象物1に照射された照射光L1を検出するセンサ部2とを備えている。測距対象物1は、基準面10上に配置されている。
【0013】
照射部5は、例えば、レーザ光等の照射光L1を出射するレーザ光源等の光源と、照射光L1によるスキャン方向を変化させるガルバノミラー等のスキャンミラーとを有する。照射部5は、照射光L1を、スキャンミラーによって図1の(A),(B),(C)のようにスキャン範囲Rv(照射範囲)に対して例えば下方向から上方向へと照射することで、スキャン範囲Rvの全面をスキャンする。
【0014】
センサ部2は、複数の画素を有し、複数のフレームに亘ってスキャン範囲Rvをセンシングし、照射光L1を測距対象物1からの反射光として検出する。センサ部2による検出信号を図示しない画像処理部で信号処理することで、距離情報を生成する。
【0015】
第1の比較例に係る測距装置では、あらかじめ決められた大きさのスキャン範囲Rv内に照射光L1を照射する。また、センサ部2によるセンシング範囲もスキャン範囲Rvと同じであり、あらかじめ決められている。このため、測距状態を所望の状態に制御することが困難である。
【0016】
例えば、第1の比較例に係る測距装置では、スキャン範囲Rv内での測距精度は一定である。測距精度を上げる場合は、センサ部2におけるスキャンフレーム数を増やし、照射部5によるスキャンレートを落とす必要がある。スキャンレートを上げるためにはスキャンフレーム数を減らして測距精度を下げる必要がある。
【0017】
[1.1 構成]
本開示の第1の実施の形態に係る測距装置101の構成および測距方法を説明する前に、まず、図2を参照して、三角法を用いた一般的な測距方法の原理を説明する。図3には、図2に示した測距方法において、センサ部2から出力される1フレームごとの画素信号(図3の(A))およびフレーム間差分の画素信号(図3の(B))の一例を示す。
【0018】
図2に示した測距方法では、図1に示した第1の比較例に係る測距装置と同様に、照射部5と、センサ部2とを用いて測距を行う。照射部5は、レーザ光等の照射光L1を出射するレーザ光源等の光源3と、照射光L1を反射し、照射光L1によるスキャン方向を変化させるガルバノミラー等のスキャンミラー4とを有する。センサ部2は、センサ(撮像素子)21と、受光光学系22とを有し、受光光学系22を介してセンサ21によって照射光L1として測距対象物1からの反射光を検出する。センサ21による検出信号を図示しない画像処理部で信号処理することで、距離情報を生成する。
【0019】
三角法では図2に示すように、距離計測を行う測距対象物1に対し、センサ部2と照射部5とを離して配置する。このような配置状態で、スキャンミラー4は、光源3からの照射光L1を所定の方向(図2の例では上方向から下方向)にスキャンするという動作を繰り返す。
【0020】
そして、図3の(A)に示すように、照射光L1が所定の方向に1回スキャンする間に、センサ21内では数千回から数万回のフレーム掃引が行われる。センサ21内の各画素は、照射光L1の測距対象物1による反射光を検出した時点で、検出したことを示す画素信号を出力する。
【0021】
ここで、1つの画素に注目した場合、画素の視線方向において、反射光が検出されるときの測距対象物1のセンサ21からの距離とスキャンミラー4との振り角度は一意に決定される。つまり、スキャンミラー4におけるスキャンの開始とセンサ21のフレーム数のカウント開始を同時にした場合、何フレーム目で照射光L1が検出されたかを知ることにより、スキャンミラー4の振り角度が決定される。よって、センサ21から測距対象物1までの距離値が決まる。
【0022】
ただし、実際のイメージセンサでは、あらかじめ距離校正用物体によって上述したフレームカウント数と距離との校正を行っておき、そのデータをテーブルとしてシステム側で保持しておくことにより、精度の高い距離の絶対計測が可能となる。
【0023】
照射光L1の測距対象物1による反射光の検出では、照射光L1以外の環境光の影響を取り除くためにフレーム間の差分で照射光L1の反射光を検出することが有効となる(図3の(B))。
【0024】
図4に、本開示の第1の実施の形態に係る測距装置101による測距方法の概要を示す。
【0025】
第1の実施の形態に係る測距装置101では、図1に示した第1の比較例に係る測距装置と同様に、センサ部2によって複数のフレームに亘ってスキャン範囲をセンシングし、照射光L1を測距対象物1からの反射光として検出する。センサ部2による検出信号を図示しない画像処理部で信号処理することで、距離情報を生成する。
【0026】
ここで、第1の比較例に係る測距装置では、あらかじめ決められた大きさのスキャン範囲Rv内に照射光L1を照射する。また、センサ部2によるセンシング範囲もスキャン範囲Rvと同じであり、あらかじめ決められている。これに対し、第1の実施の形態に係る測距装置101では、測距対象物1の大きさに応じた測距の対象領域(ROI(Region of Interest))Rbを算出する。そして、照射部5による照射光L1の照射範囲およびセンサ部2によるセンシング範囲を、対象領域Rbに応じた範囲に設定する。対象領域Rbは、少なくとも垂直方向のスキャン範囲Rbvが通常のスキャン範囲Raにおける垂直方向のスキャン範囲Ravよりも狭くなるような範囲に設定する。照射部5は、照射光L1を、図4の(A),(B),(C)のように対象領域Rbに対して例えば下方向から上方向へと照射することで、対象領域Rbをスキャンする。なお、通常のスキャン範囲Raは、照射部5による照射光L1の最大照射範囲およびセンサ部2による最大センシング範囲に相当する。
【0027】
さらに、照射部5における照射光L1によるスキャンレートを変更可能に構成する。そして、スキャンレートを維持しつつ測距精度を向上させる第1の測距モード(測距精度向上モード)と、測距精度を維持しつつスキャンレートを向上させる第2の測距モード(スキャンレート向上モード)とのいずれかの測距モードとなるように、照射光L1によるスキャンレートおよび照射範囲とセンサ部2によるセンシング範囲とを設定する。具体的には、図7および図8を参照して後述する。
【0028】
図5に、第1の実施の形態に係る測距装置101の一構成例を概略的に示す。
【0029】
第1の実施の形態に係る測距装置101は、センサ部2と、照射部5と、画像処理部61と、システム制御部62と、光源制御部63と、ミラー制御部64と、設定受付部65とを備える。
【0030】
システム制御部62は、本開示の技術における「制御部」の一具体例に相当する。
【0031】
センサ部2は、画素アレイ41と、画素垂直スキャナ42と、画素水平スキャナ43と、画像出力処理部44と、メモリアレイ45と、メモリ垂直スキャナ46と、コンパレータ47と、データラッチ部48と、メモリ水平スキャナ49とを有する。さらに、センサ部2は、ROI制御部51と、ピーク位置検出部52と、フレームメモリ53とを有する。
【0032】
照射部5は、例えば、レーザ光等の照射光L1を出射するレーザ光源等の光源3と、照射光L1によるスキャン方向を変化させるガルバノミラー等のスキャンミラー4とを有する。照射部5は、スキャンミラー4の変位速度を変更することにより、照射光L1によるスキャンレートを変更可能となっている。
【0033】
画素アレイ41には、光を検出する複数の画素が2次元マトリクス状に配置されている。画素アレイ41の各画素より出力される信号は、垂直信号線によってメモリアレイ45および画素水平スキャナ43に伝達される。
【0034】
画素垂直スキャナ42および画素水平スキャナ43は、画素アレイ41の内部を垂直方向および水平方向に走査し、1つの画素を選択する。
【0035】
通常の画像出力時には、画素アレイ41の各画素が画素垂直スキャナ42および画素水平スキャナ43によって順次走査され、各画素の信号が水平信号線によって画像出力処理部44に出力されて所定の画像処理がなされる。
【0036】
メモリアレイ45は、画素アレイ41からの出力信号を一時記憶する。距離計測時には、画素アレイ41では、画素垂直スキャナ42によって同一の行方向の複数の画素の全てが同時に選択され、各カラム(列)からの信号が並列に同時出力され、メモリアレイ45内に保持される。メモリ垂直スキャナ46およびメモリ水平スキャナ49は、メモリアレイ45をスキャンし、メモリアレイ45内の信号データを取り出す。コンパレータ47は、フレーム間差分を求める比較演算を行う。データラッチ部48は、コンパレータ47の演算データをラッチし、そのラッチデータを出力する。
【0037】
ピーク位置検出部52は、例えば図3の(B)に示したように、フレーム間差分のピーク位置を検出する。
【0038】
ROI制御部51は、センサ部2におけるセンシング範囲を、システム制御部62によって設定された対象領域Rbに応じた範囲に設定する。
【0039】
画像処理部61は、ピーク位置検出部52からの出力信号とスキャンミラー4のスキャン角度との関係より三角測量の原理に基づいて、距離画像を生成し、距離情報を出力する。
【0040】
システム制御部62は、測距装置101の全体制御を行う。また、システム制御部62は、測距対象物1の検出および測距の対象領域Rbの算出を行う。また、システム制御部62は、測距装置101の各部の各種制御パラメータの設定を行う。
【0041】
システム制御部62は、測距対象物1の大きさに応じた測距の対象領域Rbを算出し、照射部5による照射光L1の照射範囲およびセンサ部2によるセンシング範囲を、対象領域Rbに応じた範囲に設定する。システム制御部62は、スキャンレートを維持しつつ測距精度を向上させる第1の測距モードと、測距精度を維持しつつスキャンレートを向上させる第2の測距モードとのいずれかの測距モードとなるように、照射光L1によるスキャンレートおよび照射範囲とセンサ部2によるセンシング範囲とを設定する。システム制御部62は、スキャンミラー4の変位速度を測距モードに応じた速度に設定する
【0042】
光源制御部63は、システム制御部62からの制御に基づいて、光源3による照射光L1の出力制御を行う。
【0043】
ミラー制御部64は、システム制御部62からの制御に基づいて、スキャンミラー4の制御を行う。
【0044】
設定受付部65は、外部からの各種設定を受け付け、受け付けた設定をシステム制御部62に伝達する。例えば、外部からの測距モードの設定等を受け付ける。
【0045】
[1.2 動作]
図6は、第1の実施の形態に係る測距装置101による制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0046】
まず、センサ部2および照射部5によって、通常のスキャン範囲Raによるスキャンを行い、画像処理部61が距離画像を生成する(ステップS101)。次に、システム制御部62は、スキャン結果(生成された距離画像)から測距対象物1がある領域を検出し、測距の対象領域Rbを算出する(ステップS102)。なお、測距対象物1がある領域の検出は、例えば、あらかじめ測距対象物1がない状態でのスキャン結果から得られた基準画像を用意しておき、その基準画像との比較を行うことで検出することが可能である。また、システム制御部62は、対象領域Rbをスキャン範囲とするスキャンを行うための各種設定を、ROI制御部51、画像処理部61、光源制御部63、およびミラー制御部64に対して行う。例えば、対象領域Rbに応じた照射部5による照射光L1の照射範囲およびセンサ部2によるセンシング範囲を実現するための各種制御パラメータの設定を行う。例えば照射光L1の照射範囲およびセンサ部2によるセンシング範囲の開始位置および終了位置の設定等を行う。
【0047】
次に、システム制御部62は測距モード(スキャンレート向上モード、測距精度向上モード)の設定の確認を行い、測距モードに応じたミラーの変位速度を算出し、ミラー制御部64に変位速度に応じた制御パラメータを設定する。(ステップS103)。
【0048】
次に、システム制御部62は、各部に対象領域Rbのスキャンを実行させる(ステップS104)。画像処理部61は、スキャン結果によって得られた距離情報を出力する(ステップS105)。
【0049】
図7に、第1の実施の形態に係る測距装置101において、スキャンレートを上げる場合(スキャンレート向上モード)の制御動作の原理を示す。スキャンレート向上モードでは、測距精度を維持しつつスキャンレートを向上させる。
【0050】
照射光L1によって垂直方向にスキャンを行う場合について説明する。スキャン範囲を通常のスキャン範囲Raよりも狭い対象領域Rbにした場合、対象領域Rbにおける垂直方向のスキャン範囲Rbvは通常のスキャン範囲Raにおける垂直方向のスキャン範囲Ravよりも狭くなる。対象領域Rbをスキャンする場合に、スキャンミラー4の変位速度を通常のスキャン範囲Raでスキャンした場合と同じ変位速度に維持することで、照射光L1による1回のスキャン時間が通常のスキャン範囲Raでスキャンした場合よりも速くなる。すなわち、通常のスキャン範囲Raでスキャンした場合に比べて、スキャンレートが向上する。
【0051】
図8に、第1の実施の形態に係る測距装置101において、測距精度を上げる場合(測距精度向上モード)の制御動作の原理を示す。測距精度向上モードでは、スキャンレートを維持しつつ測距精度を向上させる。
【0052】
図8において、スキャン範囲を通常のスキャン範囲Raとした場合のスキャンミラー4のミラー移動角度(NフレームからN+1フレーム間のミラー移動角度)をθ1とする。また、スキャン領域を狭くした場合(スキャン範囲を対象領域Rbにした場合)のミラー移動角度をθ2とする。スキャン範囲を対象領域Rbとした場合の照射光L1のフレーム間の移動範囲R2は、通常のスキャン範囲Raでスキャンした場合のフレーム間の照射光L1の移動範囲R1よりも狭くなる。また、対象領域Rbをスキャンする場合に、スキャンレートを維持した場合、スキャンミラー4の変位速度は通常のスキャン範囲Raでスキャンした場合よりも遅くなる。また、センサ部2におけるフレームレートは画素の読み出し領域が通常のスキャン範囲Raとした場合よりも狭くなるので速くなる。以上のことから、フレーム間のミラーの移動角度θ2がフレームレートを上げたときよりも狭くなるので、画素の読み出し精度(分解能)が向上し、測距精度が向上する。
【0053】
(対象領域Rbの切り出し範囲およびスキャン方向について)
図9に、測距の対象領域Rbの切り出し範囲およびスキャン方向の第1の例を示す。図10に、測距の対象領域Rbの切り出し範囲およびスキャン方向の第2の例を示す。
【0054】
図9に示したように、通常のスキャン範囲Raに対し、水平方向に狭くなるような対象領域Rbを切り出し、また、照射光L1のスキャン方向を水平方向にした場合、センサ部2では水平方向の画素の読み出し時間に制約があるため、画素の読み出しの高速化に制限がある。一方、図10に示したように、通常のスキャン範囲Raに対し、垂直方向に狭くなるような対象領域Rbを切り出し、また、照射光L1のスキャン方向を垂直方向にした場合、センサ部2では垂直方向の画素の読み出し時間に制約がないため、画素の読み出しの高速化には制限がない。このため、対象領域Rbは、少なくとも垂直方向のスキャン範囲Rbvが通常のスキャン範囲Raにおける垂直方向のスキャン範囲Ravよりも狭くなるような範囲に設定するとよい。また、スキャンミラー4は、照射光L1によるスキャン方向を垂直方向に変化させるように制御するとよい。
【0055】
[1.3 効果]
以上説明したように、第1の実施の形態に係る測距装置101、および測距方法によれば、測距対象物1の大きさに応じた対象領域Rbを算出し、照射光L1の照射範囲および照射光L1のセンシング範囲を、対象領域Rbに応じた範囲に設定する。これにより、所望の測距状態で測距を行うことが可能となる。
【0056】
例えば、測距モードを測距精度向上モードにすることで、スキャンレートを落とすことなく測距対象物1の測距精度を上げることができる。また、測距モードをスキャンレート向上モードにすることで、通常と同じ測距精度でスキャンレートを上げることができる。
【0057】
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。以降の他の実施の形態の効果についても同様である。
【0058】
<2.第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施の形態に係る測距装置、および測距方法について説明する。なお、以下では、上記第1の実施の形態に係る測距装置の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0059】
[2.0 比較例]
図11に、第2の比較例に係る測距装置による測距方法の概要を示す。
【0060】
第2の比較例に係る測距装置の構成および測距方法は、図1に示した第1の比較例に係る測距装置と同様である。ただし、第2の比較例に係る測距装置では、測距対象物1がベルトコンベア70上に配置され、移動するようになっている。
【0061】
ガルバノミラー等で照射光L1をスキャンさせる光切断法の測距装置では、スリット状の照射光L1によってスキャン範囲Raの全体の照射が終わるまで、測距対象物1が静止していないと、センサ部2による検出結果としての距離画像(図11の上段右側参照)の形状が歪んでしまう。センサ部2における照射光L1の検出において、同一の画素でフレーム間差分を取ることで背景を除去し、照射光L1だけを検出する方法の場合、フレーム間で測距対象物1が静止していないと正確な計測は困難である。このため、例えばベルトコンベア70上の測距対象物1の形状計測には使用が困難である。
【0062】
[2.1 構成]
図12に、第2の実施の形態に係る測距装置102による測距方法の概要を示す。
【0063】
第2の実施の形態に係る測距装置102では、上記第1の実施の形態に係る測距装置101と同様に、測距対象物1の大きさに応じた測距の対象領域Rbを算出する。そして、照射部5による照射光L1の照射範囲およびセンサ部2によるセンシング範囲を、対象領域Rbに応じた範囲に設定する。そして、第2の実施の形態に係る測距装置102では、測距対象物1の移動に追随するように対象領域Rbの設定位置を移動させる。照射部5による照射光L1の照射位置も、測距対象物1の移動に追随するように移動させる。
【0064】
図13に、第2の実施の形態に係る測距装置102の一構成例を概略的に示す。
【0065】
第2の実施の形態に係る測距装置102は、上記第1の実施の形態に係る測距装置101(図5)の構成に対して、ベルトコンベア70の速度を検出する速度センサ71をさらに備えている。測距対象物1は、ベルトコンベア70上で固定されているので、速度センサ71で検出する速度は実質的に測距対象物1の移動速度と同じである。
【0066】
速度センサ71は、本開示の技術における「検出部」の一具体例に相当する。
【0067】
システム制御部62は、速度センサ71によって検出された測距対象物1の移動状態に基づいて、測距対象物1の移動に追随するように対象領域Rbの設定位置を移動させる。
【0068】
システム制御部62は、ミラー制御部64を制御し、測距対象物1の移動に追随するように照射部5による照射光L1の照射位置を移動させる。
【0069】
[2.2 動作]
図14は、第2の実施の形態に係る測距装置102による制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0070】
まず、システム制御部62は、速度センサ71で検出されたベルトコンベア70の速度に応じた制御パラメータをROI制御部51、画像処理部61、光源制御部63、およびミラー制御部64等の各部に設定する(ステップS201)。システム制御部62は、対象領域Rbを初期位置に設定し、スキャンを開始させ、対象領域Rbに測距対象物1が入ったことを検出する(ステップS202)。このとき、システム制御部62は、スキャンミラー4を固定した状態で照射光L1を照射させる。この状態でセンサ部2による撮像を行い、画素アレイ41における現フレームの画素値とメモリアレイ45に保存された1フレーム前の画素値とのフレーム間差分を算出する。メモリアレイ45の制御は、フレーム間差分算出用の設定値に応じてメモリ垂直スキャナ46が行う。システム制御部62は、ピーク位置検出部52による検出結果に基づく位置情報から測距対象物1が対象領域Rbに入ったか否かを判断する。測距対象物1が対象領域Rbに入ってくるまで、初期の状態を維持する。
【0071】
システム制御部62は、初期位置の対象領域Rbに測距対象物1が入ってきたことを検出した場合、各部に対象領域Rbの追尾とスキャンを開始させる(ステップS203)。画像処理部61は、対象領域Rbをスキャン(ステップS204)することによって得られた距離情報を出力する(ステップS205)。
【0072】
[2.3 変形例]
図15に、第2の実施の形態の変形例に係る測距装置102Aの一構成例を概略的に示す。
【0073】
図13の構成では、ベルトコンベア70上に配置された測距対象物1の移動速度を検出するようにしたが、測距対象物1そのものの移動速度を検出するようにしてもよい。変形例に係る測距装置102Aでは、速度センサ71および移動速度検出部72を備え、測距対象物1そのものの移動速度を検出する。
【0074】
速度センサ71および移動速度検出部72は、本開示の技術における「検出部」の一具体例に相当する。
【0075】
[2.4 効果]
以上説明したように、第2の実施の形態に係る測距装置102、および測距方法によれば、測距対象物1の移動に追随するように対象領域Rbの設定位置を移動させる。これにより、センサ部2による検出結果としての距離画像の形状の歪みの発生を抑制することができる。
【0076】
なお、第2の実施の形態に係る測距装置102においても、上記第1の実施の形態に係る測距装置101と同様に、測距モードを測距精度向上モードまたはスキャンレート向上モードに選択可能である。
【0077】
その他の構成、動作および効果は、上記第1の実施の形態に係る測距装置101、および測距方法と略同様であってもよい。
【0078】
<3.第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態に係る測距装置、および測距方法について説明する。なお、以下では、上記第1または第2の実施の形態に係る測距装置の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0079】
[3.0 比較例]
図16に、第3の比較例に係る測距装置による測距方法の概要を示す。
【0080】
第2の実施の形態に係る測距装置102では、ガルバノミラー等で照射光L1をスキャンさせることで、ベルトコンベア70上に配置された移動する測距対象物1をスキャンする。また、測距対象物1の移動に追随するように対象領域Rbの設定位置を移動させる。これに対し、第3の比較例に係る測距装置では、対象領域Rbの位置と照射部5による照射光L1の照射位置とが固定された状態で、例えばベルトコンベア70上に配置された移動する測距対象物1をスキャンする。
【0081】
このような測距環境において、センサ部2による撮像を行い、画素アレイ41における現フレームの画素値とメモリアレイ45に保存された1フレーム前の画素値とのフレーム間差分を算出すると、測距対象物1の異なる箇所のフレーム間差分を算出することになるので、正確な測距が困難となる。
【0082】
[3.1 構成]
図17に、第3の実施の形態に係る測距装置103による三角法を用いた測距方法の原理を示す。
【0083】
第3の実施の形態に係る測距装置103の構成および測距方法を説明する前に、まず、図17を参照して、上記のような測距環境における三角法を用いた測距方法の原理を説明する。
【0084】
三角法では図17に示すように、距離計測を行う測距対象物1に対し、センサ部2と照射部5とを離して配置する。このような配置状態で、測距対象物1に対し、光源3から所定位置に照射光L1を照射する。このような配置状態で、測距対象物1が例えば下から上に移動するものとする。この場合、センサ21は測距対象物1の移動速度とセンサ21のフレームレートに応じた間隔で測距対象物1をスキャンする。
【0085】
ここで、測距対象物1のある位置のスキャンに注目した場合、センサ21の視線方向において、測距対象物1の視野角度(θ)は、照射光L1の測距対象物1による反射光が検出された位置(x=Xn)で一意に決まる。つまり、照射光L1がどの画素位置で検出されたかを知ることにより、測距対象物1の視野角度が決定される。よって、センサ21から測距対象物1までの距離が決まる。
【0086】
ただし、実際のイメージセンサでは、あらかじめ反射光の検出位置と視野角との校正を行っておき、そのデータをテーブルとして測距装置103側で保持しておくことにより、精度の高い距離の絶対計測が可能となる。
【0087】
照射光L1の測距対象物1による反射光の検出では、照射光L1以外の環境光の影響を取り除くためにフレーム間の差分で照射光L1の反射光を検出することが有効となる。フレーム間差分は測距対象物1の速度から1フレームで変化する視野角に応じた位置の画素に対して行う。図17の例では、フレーム間差分としては、x=Xmの位置の画素とx=Xnの位置の画素とに対してフレーム間差分の演算を行う。
【0088】
図18に、第3の実施の形態に係る測距装置103による測距方法の概要を示す。図19に、第3の実施の形態に係る測距装置103の一構成例を概略的に示す。
【0089】
第2の実施の形態に係る測距装置102では、ガルバノミラー等で照射光L1をスキャンさせることで、ベルトコンベア70上に配置された移動する測距対象物1をスキャンする。また、測距対象物1の移動に追随するように対象領域Rbの設定位置を移動させる。これに対し、第3の実施の形態に係る測距装置103では、対象領域Rbの位置と照射部5による照射光L1の照射位置とが固定された状態で、例えばベルトコンベア70上に配置された移動する測距対象物1をスキャンする。照射部5には、スキャンミラー4は設けられていない。また、ミラー制御部64は設けられていない。センサ部2は、対象領域Rb内に移動してきた測距対象物1に照射された照射光L1を検出する。
【0090】
第3の実施の形態に係る測距装置103は、第2の実施の形態に係る測距装置102と同様に、ベルトコンベア70の速度を検出する速度センサ71を備えている。
【0091】
センサ部2は、複数のフレームに亘って対象領域Rbをセンシングし、複数のフレームのうち第1のフレームによる第1の画素ライン(例えばNライン)の画素信号値と第1のフレームよりも後の第2のフレームによる第1の画素ラインに対応する第2の画素ライン(例えばMライン)の画素信号値とのフレーム間差分を取った信号値を算出して出力する。
【0092】
システム制御部62は、速度センサ71によって検出された測距対象物1の移動状態に基づいて、フレーム間差分の算出に用いる第1の画素ラインと第2の画素ラインとのライン位置を測距対象物1の移動状態に応じたライン位置に設定する。
【0093】
システム制御部62は、フレーム間差分の算出に用いる第1の画素ラインと第2の画素ラインとのライン位置を、第1のフレームから第2のフレームまでの期間に移動する測距対象物1の移動量に応じたライン位置に設定する。
【0094】
[3.2 動作]
図20に、測距対象物1が静止している場合における、フレーム間差分の演算に用いる画素ラインの一例を概略的に示す。図21に、測距対象物1が移動している場合における、フレーム間差分の演算に用いる画素ラインの一例を概略的に示す。
【0095】
フレーム間差分は、測距対象物1の同一箇所を撮像している画素同士で差分を算出する。測距対象物1が静止している場合(図20)、フレーム間差分の演算に用いる画素ライン(例えばNライン)は同一でよい。一方、測距対象物1が移動する場合(図21)は、移動に応じた異なる画素ライン同士(例えばNラインとMライン)で差分を算出する必要がある。
【0096】
第3の実施の形態に係る測距装置103では、異なる画素ライン同士で差分を算出できるようにして、あらかじめフレーム間における測距対象物1の移動距離を算出し、算出した距離に応じた画素ライン同士で差分を算出するようにセンサ部2に設定しておく。フレーム間差分の算出動作時には、設定された画素ライン同士で算出した差分値をセンサ部2から出力する。
【0097】
図23は、第3の実施の形態に係る測距装置103による制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0098】
まず、システム制御部62は、スキャン範囲(対象領域Rb)他、各種の制御パラメータとして初期値をROI制御部51、画像処理部61、および光源制御部63等の各部に設定する(ステップS301)。次に、速度センサ71はベルトコンベア70の速度を検出する(ステップS302)。
【0099】
次に、システム制御部62は、検出したベルトコンベア70の速度に応じた制御パラメータとして、上述したフレーム間差分算出用のパラメータを算出してセンサ部2に設定する(ステップS303)。次に、画像処理部61は、対象領域Rbをスキャン(ステップS304)することによって得られた距離情報を出力する(ステップS305)。
【0100】
[3.3 変形例]
図23に、第3の実施の形態の変形例に係る測距装置103Aの一構成例を概略的に示す。
【0101】
図19の構成では、ベルトコンベア70上に配置された測距対象物1の移動速度を検出するようにしたが、測距対象物1そのものの移動速度を検出するようにしてもよい。変形例に係る測距装置103Aでは、速度センサ71および移動速度検出部72を備え、測距対象物1そのものの移動速度を検出する。
【0102】
速度センサ71および移動速度検出部72は、本開示の技術における「検出部」の一具体例に相当する。
【0103】
[3.4 効果]
以上説明したように、第3の実施の形態に係る測距装置102、および測距方法によれば、測距対象物1の移動状態に応じたフレーム間差分算出用のパラメータを算出してセンサ部2に設定する。これにより、移動する測距対象物1に対して精度の良いフレーム間差分を算出することができる。フレーム間差分による測定が困難な測距環境での測距が可能となる。
【0104】
その他の構成、動作および効果は、上記第1の実施の形態に係る測距装置101、および測距方法、または上記第2の実施の形態に係る測距装置102、および測距方法と略同様であってもよい。
【0105】
<4.その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記各実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
【0106】
例えば、本技術は以下のような構成を取ることもできる。
以下の構成の本技術によれば、測距対象物の大きさに応じた対象領域を算出し、照射光の照射範囲および照射光のセンシング範囲を、対象領域に応じた範囲に設定する。これにより、所望の測距状態で測距を行うことが可能となる。
【0107】
(1)
スリット状の照射光を出射する照射部と、
測距対象物に照射された前記照射光を検出するセンサ部と、
前記センサ部の検出結果に基づく前記測距対象物の距離情報を生成する画像処理部と、
前記測距対象物の大きさに応じた測距の対象領域を算出し、前記照射部による前記照射光の照射範囲および前記センサ部によるセンシング範囲を、前記対象領域に応じた範囲に設定する制御部と
を備える
測距装置。
(2)
前記測距対象物の移動状態を検出する検出部、をさらに備え、
前記センサ部は、複数の画素を有し、複数のフレームに亘って前記対象領域をセンシングし、前記複数のフレームのうち第1のフレームによる第1の画素ラインの画素信号値と前記第1のフレームよりも後の第2のフレームによる前記第1の画素ラインに対応する第2の画素ラインの画素信号値とのフレーム間差分を取った信号値を算出して出力し、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記フレーム間差分の算出に用いる前記第1の画素ラインと前記第2の画素ラインとのライン位置を前記測距対象物の移動状態に応じたライン位置に設定する
上記(1)に記載の測距装置。
(3)
前記制御部は、前記フレーム間差分の算出に用いる前記第1の画素ラインと前記第2の画素ラインとのライン位置を、前記第1のフレームから前記第2のフレームまでの期間に移動する前記測距対象物の移動量に応じたライン位置に設定する
上記(2)に記載の測距装置。
(4)
前記対象領域の位置と前記照射光の照射位置とが固定され、
前記センサ部は、前記対象領域内に移動してきた前記測距対象物に照射された前記照射光を検出する
上記(2)または(3)に記載の測距装置。
(5)
前記測距対象物の移動状態を検出する検出部、をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記測距対象物の移動に追随するように前記対象領域の設定位置を移動させる
上記(1)に記載の測距装置。
(6)
前記制御部は、前記測距対象物の移動に追随するように前記照射部による前記照射光の照射位置を移動させる
上記(5)に記載の測距装置。
(7)
前記照射部は、前記照射光によるスキャンレートを変更可能に構成され、
前記制御部は、スキャンレートを維持しつつ測距精度を向上させる第1の測距モードと、測距精度を維持しつつスキャンレートを向上させる第2の測距モードとのいずれかの測距モードとなるように、前記照射光による前記スキャンレートおよび前記照射範囲と前記センサ部によるセンシング範囲とを設定する
上記(1)に記載の測距装置。
(8)
前記照射部は、前記照射光を出射する光源と、前記照射光によるスキャン方向を変化させるスキャンミラーとを有し、
前記制御部は、前記スキャンミラーの変位速度を前記測距モードに応じた速度に設定する
上記(7)に記載の測距装置。
(9)
前記制御部は、前記照射光の最大照射範囲および前記センサ部による最大センシング範囲に対して少なくとも垂直方向が狭くなるような範囲を、前記照射光の照射範囲および前記センサ部によるセンシング範囲として設定し、
前記スキャンミラーは、前記照射光によるスキャン方向を垂直方向に変化させる
上記(8)に記載の測距装置。
(10)
スリット状の照射光を出射することと、
測距対象物に照射された前記照射光を検出することと、
前記照射光の検出結果に基づく前記測距対象物の距離情報を生成することと、
前記測距対象物の大きさに応じた測距の対象領域を算出し、前記照射光の照射範囲および前記照射光のセンシング範囲を、前記対象領域に応じた範囲に設定することと
を含む
測距方法。
【符号の説明】
【0108】
1…測距対象物、2…センサ部、3…光源(レーザ光源)、4…スキャンミラー(ガルバノミラー)、5…照射部、10…基準面、21…センサ(撮像素子)、22…受光光学系、41…画素アレイ、42…画素垂直スキャナ、43…画素水平スキャナ、44…画像出力処理部、45…メモリアレイ、46…メモリ垂直スキャナ、47…コンパレータ、48…データラッチ部、49…メモリ水平スキャナ、51…ROI(Region of Interest)制御部、52…ピーク位置検出部、53…フレームメモリ、61…画像処理部、62…システム制御部(制御部)、63…光源制御部、64…ミラー制御部、65…設定受付部、70…ベルトコンベア、71…速度センサ(検出部)、72…移動速度検出部(検出部)、101,102,102A,103,103A…測距装置、L1…スリット状の照射光(レーザ光)、Rv…スキャン範囲、Ra…通常のスキャン範囲、Rb…測距の対象領域(ROI(Region of Interest))、Rav…通常のスキャン範囲における垂直方向のスキャン範囲、Rbv…対象領域Rbにおける垂直方向のスキャン範囲、R1…通常のスキャン範囲Raでスキャンした場合の照射光L1の移動範囲、R2…スキャン範囲を対象領域Rbとした場合の照射光L1の移動範囲、θ1…通常(スキャン範囲を通常のスキャン範囲Raとした場合)のミラー移動角度、θ2…スキャン領域を狭くした場合(スキャン範囲を対象領域Rbにした場合)のミラー移動角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23