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特開2022-189083観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法
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  • 特開-観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法 図1
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  • 特開-観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法 図18
  • 特開-観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法 図19
  • 特開-観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法 図20
  • 特開-観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法 図21
  • 特開-観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法 図22
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189083
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20221215BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20221215BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221215BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B5/10 A
C12M1/34 A
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097451
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 唯史
【テーマコード(参考)】
2H042
2H052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2H042DB08
2H042DD04
2H042DD09
2H042DD10
2H042DE04
2H052AA00
2H052AC09
2H052AC25
2H052AC27
2H052AC33
2H052AE13
2H052AF14
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB11
4B029GA03
4B029GB06
4B029GB09
4B063QA05
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察において、高い観察性能を確保する。
【解決手段】観察装置10aは、照明光学系17とリフレクター70と観察光学系18を備える。リフレクター100は、照明光学系17から出射した光が入射する複数の曲面105を有し、複数の曲面105の各々は、マルチウェルプレートに含まれる1つ以上のウェルに対応し、照明光学系17と観察光学系18が整列する第1方向に正のパワーを有し、且つ、マルチウェルプレートのウェルの中心軸WCから逸れた位置に曲率中心を有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチウェルプレートの設置位置に対して下方に設けられた照明光学系と、
前記設置位置に対して上方に設けられたリフレクターであって、前記照明光学系から出射した光を反射するリフレクターと、
前記設置位置に対して下方に設けられた観察光学系であって、前記リフレクターで反射した光を集光する観察光学系と、を備え、
前記リフレクターは、前記照明光学系から出射した光が入射する複数の曲面を有し、
前記複数の曲面の各々は、
前記マルチウェルプレートに含まれる1つ以上のウェルに対応し、
前記照明光学系と前記観察光学系が整列する第1方向に正のパワーを有し、且つ、
前記マルチウェルプレートのウェルの中心軸から逸れた位置に曲率中心を有する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置において、
前記複数の曲面は、前記第1方向に整列し、
前記複数の曲面の各々は、前記マルチウェルプレートに含まれるウェル列であって、前記第1方向と交差する第2方向に整列した複数のウェルからなるウェル列に対応する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項3】
請求項2に記載の観察装置において、
前記複数の曲面は、各ウェル列に対応する1対の曲面を含み、
前記1対の曲面は、前記ウェル列の中心軸に対して対称な第1曲面と第2曲面を含む
ことを特徴とする観察装置。
【請求項4】
請求項1に記載の観察装置において、
前記複数の曲面は、前記マルチウェルプレートのウェルの中心軸に直交する2次元に整列し、
前記複数の曲面の各々は、前記マルチウェルプレートに含まれるウェルに対応する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項5】
請求項4に記載の観察装置において、
前記複数の曲面は、各ウェルに対応する1対の曲面を含み、
前記1対の曲面は、前記ウェルの中心に対して対称な第1曲面と第2曲面を含む
ことを特徴とする観察装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の観察装置において、
前記複数の曲面の各々は、前記観察光学系に凹面を向けた反射面である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項7】
請求項6に記載の観察装置において、
前記複数の曲面の各々は、裏面鏡の反射面である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項8】
請求項7に記載の観察装置において、
前記リフレクターは、さらに、前記裏面鏡の反射面に対向して配置された保護カバーを含む
ことを特徴とする観察装置。
【請求項9】
請求項6に記載の観察装置において、
前記複数の曲面の各々は、表面鏡の反射面である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の観察装置において、
前記リフレクターは、以下の条件式を満たす
ことを特徴とする観察装置。
0.3<(Rmirror/nmirror)/(10sinh(0.4Rwell)+h)<1 ・・・(1)
mirror(NA+nmirror 1/2/(NA(Rmirror-h))>1
・・・(2)
ここで、Rmirrorは前記反射面の曲率半径である。nmirrorは前記反射面の入射側の媒質の屈折率である。Rwellは前記マルチウェルプレートのウェルの半径である。hは前記ウェルのウェル底面から前記反射面までのウェル中心における高さの空気換算長である。Ymirrorは前記ウェルの中心に対する前記反射面の曲率中心の前記第1方向についてのシフト量である。NAは前記観察光学系の物体側の開口数である。
【請求項11】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の観察装置において、
前記リフレクターは、前記観察光学系側から順に、
正のパワーを有する屈折面と、
反射面と、を含み、
前記複数の曲面の各々は、前記屈折面である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項12】
請求項11に記載の観察装置において、
前記リフレクターは、以下の条件式を満たす
ことを特徴とする観察装置。
0.3<Rlems/(nlems-1)/(10sinh(0.4Rwell)+h)<1.5 ・・・(3)
lems(nlems-1)/(NA(Rlems-h))>1 ・・・(4)
ここで、Rlemsは前記屈折面の曲率半径である。nlemsは前記屈折面を有する光学素子の屈折率である。Rwellは前記マルチウェルプレートの前記ウェルの半径である。hは前記ウェルの底面から前記屈折面までの前記ウェルの中心における高さの空気換算長である。Ylemsは前記ウェルの中心に対する前記屈折面の曲率中心の前記第1方向についてのシフト量である。NAは前記観察光学系の物体側の開口数である。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の観察装置において、
前記リフレクターは、さらに、前記リフレクターを前記マルチウェルプレートに対して所定位置に位置決めする位置決め構造を有する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項14】
マルチウェルプレートに取り付けられるリフレクターであって、
前記マルチウェルプレートの上面を覆うように置かれた前記リフレクターを、前記マルチウェルプレートに対して所定位置に位置決めする位置決め構造と、
前記マルチウェルプレートからの光が入射する複数の曲面と、を含み、
前記複数の曲面の各々は、
前記マルチウェルプレートに含まれる1つ以上のウェルに対応するように構成され、
正パワーを有し、且つ、
対応する1つ以上のウェルの全ての中心から逸れた位置に曲率中心を有する
ことを特徴とするリフレクター。
【請求項15】
マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察方法であって、
マルチウェルプレートの設置位置に対して下方に設けられた照明光学系から光を出射し、
前記設置位置に対して上方に設けられたリフレクターで、前記照明光学系から出射した光を反射し、
前記設置位置に対して下方に設けられた観察光学系で、前記リフレクターで反射した光を集光し、
前記リフレクターは、前記照明光学系から出射した光が入射する複数の曲面を有し、
前記複数の曲面の各々は、
前記マルチウェルプレートに含まれる1つ以上のウェルに対応し、
前記照明光学系と前記観察光学系が整列する第1方向に正のパワーを有し、且つ、
前記マルチウェルプレートのウェルの中心軸から逸れた位置に曲率中心を有する
ことを特徴とする観察方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、観察装置、リフレクター、及び、位相物体の観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞などの生体試料の培養は、培養環境を維持するため、インキュベータ内で行われている。培養中は生体試料の状態が定期的に確認されるが、確認作業の都度、生体試料をインキュベータから取り出すと、生体試料の生育に悪影響を及ぼす虞がある。
【0003】
このような課題に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載される偏射照明が採用された観察装置を用いることで、装置を大型化させることなく細胞等の試料を観察することができる。このため、培養中の生体試料をインキュベータ外に取り出すことなく、インキュベータ内の限られたスペースで培養中の生体試料を継続して観察することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0187450号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、培養容器にマルチウェルプレートが、特に、例えば96ウェルプレートのようにウェル径の小さいマルチウェルプレートが、使用される場合、上述した観察装置のような偏射照明で高い観察性能を発揮することが難しい。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察において、高い観察性能を確保する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る観察装置は、マルチウェルプレートの設置位置に対して下方に設けられた照明光学系と、前記設置位置に対して上方に設けられたリフレクターであって、前記照明光学系から出射した光を反射するリフレクターと、前記設置位置に対して下方に設けられた観察光学系であって、前記リフレクターで反射した光を集光する観察光学系と、を備え、前記リフレクターは、前記照明光学系から出射した光が入射する複数の曲面を有し、前記複数の曲面の各々は、前記マルチウェルプレートに含まれる1つ以上のウェルに対応し、前記照明光学系と前記観察光学系が整列する第1方向に正のパワーを有し、且つ、前記マルチウェルプレートのウェルの中心軸から逸れた位置に曲率中心を有する。
【0008】
本発明の一態様に係るリフレクターは、マルチウェルプレートに取り付けられるリフレクターであって、前記マルチウェルプレートの上面を覆うように置かれた前記リフレクターを、前記マルチウェルプレートに対して所定位置に位置決めする位置決め構造と、前記マルチウェルプレートからの光が入射する複数の曲面と、を含み、前記複数の曲面の各々は、前記マルチウェルプレートに含まれる1つ以上のウェルに対応するように構成され、正パワーを有し、且つ、対応する1つ以上のウェルの全ての中心から逸れた位置に曲率中心を有する。
【0009】
本発明の一態様に係る位相物体の観察方法は、マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察方法であり、マルチウェルプレートの設置位置に対して下方に設けられた照明光学系から光を出射することと、前記設置位置に対して上方に設けられたリフレクターで、前記照明光学系から出射した光を反射することと、前記設置位置に対して下方に設けられた観察光学系で、前記リフレクターで反射した光を集光することと、を含む。前記リフレクターは、前記照明光学系から出射した光が入射する複数の曲面を有し、前記複数の曲面の各々は、前記マルチウェルプレートに含まれる1つ以上のウェルに対応し、前記照明光学系と前記観察光学系が整列する第1方向に正のパワーを有し、且つ、前記マルチウェルプレートのウェルの中心軸から逸れた位置に曲率中心を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察において、高い観察性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】システム1の構成を例示した図である。
図2】観察装置10の斜視図である。
図3】マルチウェルプレートCの平面図である。
図4】観察装置10の構成を示した図である。
図5】光源ユニット14と撮影ユニット15の構成を例示した図である。
図6】制御装置30の構成を例示した図である。
図7】リフレクター70の斜視図である。
図8】マルチウェルプレートCにリフレクター70を取り付けた様子を示した図である。
図9】第1の実施形態に係るリフレクター100の断面図である。
図10】リフレクター100とマルチウェルプレートCの位置関係を説明する図である。
図11】第1の実施形態に係る観察装置10aの断面図である。
図12】第2の実施形態に係るリフレクター200の断面図である。
図13】リフレクター200とマルチウェルプレートCの位置関係を説明する図である。
図14】第2の実施形態に係る観察装置10bの断面図である。
図15】第3の実施形態に係るリフレクター300とマルチウェルプレートCの位置関係を説明する図である。
図16】ウェルの中心とウェルに対応する曲面の曲率中心の位置関係を説明する図である。
図17】第4の実施形態に係るリフレクター400の断面図である。
図18】第4の実施形態に係る観察装置10dの断面図である。
図19】第5の実施形態に係るリフレクター500の断面図である。
図20】第5の実施形態に係る観察装置10eの断面図である。
図21】第6の実施形態に係るリフレクター600の断面図である。
図22】第6の実施形態に係る観察装置10fの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、システム1の構成を例示した図である。図2は、観察装置10の斜視図である。図3は、マルチウェルプレートCの平面図である。図4は、観察装置10の構成を示した図である。図5は、光源ユニット14と撮影ユニット15の構成を例示した図である。図6は、制御装置30の構成を例示した図である。以下、図1から図6を参照しながら、システム1の構成について説明する。
【0013】
図1に示すシステム1は、マルチウェルプレートに収容された試料を培養しながら観察する観察システムである。観察対象の試料は、任意の培養細胞であり、例えば、無色透明な位相物体である。マルチウェルプレートのウェル数は、特に限定しないが、以降では、96ウェルプレートが使用される場合を例に説明する。
【0014】
システム1は、マルチウェルプレート内で培養されている試料の画像を取得する1つ以上の観察装置10と、観察装置10を制御する制御装置30と、を備えている。観察装置10の各々と制御装置30は、互いにデータをやり取りできればよい。従って、観察装置10の各々と制御装置30は、図1に示すように有線で通信可能に接続されてもよく、無線で通信可能に接続されてもよい。
【0015】
観察装置10は、マルチウェルプレートに収容された試料を、マルチウェルプレートの下方から撮影する撮影装置である。試料をインキュベータ20から取り出すことなく撮影するために、観察装置10は、例えば、図1に示すように、インキュベータ20内に配置された状態で使用される。より詳細には、観察装置10は、図2に示すように、マルチウェルプレートCが観察装置10の透過窓11に載置された状態でインキュベータ20内に配置され、制御装置30からの指示に従ってマルチウェルプレートCのウェル内に収容された試料の画像を取得する。
【0016】
観察装置10は、図2に示すように、マルチウェルプレートCが配置される透明な透過窓11を上面とする箱型の筐体12と、透過窓11(載置面)上でマルチウェルプレートCを観察装置10に対して所定の位置へ位置決めする位置決め部材60と、マルチウェルプレートCに取り付けられるリフレクター70を備えている。
【0017】
筐体12に設けられた透過窓11は、観察装置10の筐体12の上面を構成する透明な天板であり、マルチウェルプレートCを載置する載置面を構成する。即ち、観察装置10では、透過窓11上の位置がマルチウェルプレートCの設置位置である。透過窓11は、例えば、ガラスや透明な樹脂などからなる。
【0018】
位置決め部材60は、筐体12に固定されている。ただし、位置決め部材60は、必要に応じて取り外すことが可能である。
【0019】
リフレクター70は、マルチウェルプレートCに取り付けられることで、図2に示すように、マルチウェルプレートCの設置位置に対して上方に設けられる。リフレクター70は、観察装置10が試料をマルチウェルプレートCの下方から撮影する際に、後述する照明光学系17から出射した光、つまり、マルチウェルプレートCからの光を反射する。
【0020】
なお、マルチウェルプレートCは、図3に示すように、例えば、96個(=12×8)のウェルWを有している。マルチウェルプレートCの縦方向と横方向の幅(幅D1、D2)は、例えば、ANSI/SBS規格によって予め決められている。
【0021】
観察装置10は、さらに、図4及び図5に示すように、筐体12内を移動するステージ13と、マルチウェルプレートCに収容された試料を照明する1対の光源ユニット14と、試料の画像を取得する撮影ユニット15と、を備えている。ステージ13と光源ユニット14と撮影ユニット15は、筐体12内部に収容されている。光源ユニット14と撮影ユニット15は、ステージ13上に設置されていて、筐体12内でステージ13が移動することでマルチウェルプレートCに対して移動する。
【0022】
ステージ13は、観察装置10内を移動する移動ユニットの一例であり、マルチウェルプレートCに対する撮影ユニット15の相対位置を変更する。ステージ13は、透過窓11(載置面)と平行で且つ互いに直交しているX方向とY方向に移動可能である。ただし、ステージ13は、さらに、X方向とY方向の両方に直交するZ方向にも移動してもよい。
【0023】
なお、図4及び図5には、光源ユニット14と撮影ユニット15がステージ13上に設置され、その結果、一体となって筐体12内を移動する例が示されているが、光源ユニット14と撮影ユニット15は、それぞれ独立して筐体12内を移動してもよい。また、図4及び図5には、1対の光源ユニット14が撮影ユニット15を挟んで左右に配置されている例を示したが、光源ユニット14の配置と数はこの例に限らない。例えば、光源ユニット14は、ステージ13上に3つ以上設けられてもよく、1つだけ設けられてもよい。
【0024】
光源ユニット14は、図5に示すように、光源16と、照明光学系17を備えている。光源16は、例えば、発光ダイオード(LED)などを含んでいる。光源16は、白色LEDを含んでもよく、R(赤)、G(緑)、B(青)など、複数の異なる波長の光を出射する複数のLEDを含んでもよい。光源16から出射した光は、照明光学系17に入射する。
【0025】
照明光学系17は、図5に示すように、マルチウェルプレートCの設置位置(即ち、透過窓11の上面)に対して下方に設けられていて、光源16から出射した光をマルチウェルプレートCの下方からマルチウェルプレートCに向けて出射する。
【0026】
照明光学系17は、拡散板17aとマスク17bを含んでいる。拡散板17aは、光源16から出射した光を拡散させる。拡散板17aは、特に限定しないが、例えば、表面に凹凸を形成したフロスト型の拡散板である。ただし、拡散板17aは、表面をコーティングしたオパール型の拡散板であってもよく、その他のタイプの拡散板であってもよい。さらに、拡散板17aに付されたマスク17bは拡散光の出射領域を制限する。拡散板17aから出射した光は、様々な方向に進行し、様々な角度でウェル内に入射する。
【0027】
撮影ユニット15は、図5に示すように、観察光学系18と、撮像素子19を備えている。観察光学系18は、マルチウェルプレートCの設置位置に対して下方に設けられていて、透過窓11を透過することによって筐体12内に入射した光を集光する。より具体的には、観察光学系18は、試料が存在するウェルWの底面からの光を撮像素子19上に集光することで、撮像素子19上に試料の光学像を形成する。
【0028】
撮像素子19は、検出した光を電気信号に変換する光センサである。撮像素子19は、イメージセンサであり、特に限定しないが、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサなどである。
【0029】
以上のように構成された観察装置10では、位相物体である試料を可視化するために、偏射照明が採用されている。具体的には、図5に示すように、光源16が発した光は、拡散板17aで拡散し、透過窓11を透過して筐体12外へ出射する。即ち、光源ユニット14の照明光学系17は、筐体12外へ向けて様々な方向へ進行する光を出射する。その後、筐体12外へ出射した光のうちの一部が、例えば、ウェルW内の液体界面、マルチウェルプレートCの容器本体C1に被せた蓋C2、マルチウェルプレートCに取り付けられたリフレクター70などで、反射することで、試料上方で偏向される。さらに、試料上方で偏向された光のうちの一部が、試料に照射され、試料及び透過窓11を透過することによって筐体12内に入射する。そして、筐体12内に入射した光のうちの一部が、観察光学系18によって集光されることにより、撮像素子19上に試料の像が形成される。即ち、観察光学系18は、ウェルW内の液体界面で反射した光を集光し、マルチウェルプレートCの蓋C2で反射した光を集光し、マルチウェルプレートCに取り付けられたリフレクター70で反射した光を集光し、その結果、撮像素子19上に試料の光学像を形成する。最後に、観察装置10は、撮像素子19から出力された電気信号に基づいて試料の画像を生成し、制御装置30へ出力する。
【0030】
制御装置30は、観察装置10を制御する装置である。制御装置30は、具体的には、移動ユニットであるステージ13と、光源ユニット14と、撮影ユニット15を制御する。なお、制御装置30は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上の非一時的なコンピュータ読取可能媒体と、を含んでいればよく、例えば、一般的なコンピュータであってもよい。
【0031】
より具体的には、制御装置30は、例えば、図6に示すように、例えば、1つ以上のプロセッサ31と、1つ以上の記憶装置32と、入力装置33と、表示装置34と、通信装置35を備えていてもよく、それがバス36を通じて接続されていてもよい。
【0032】
1つ以上のプロセッサ31のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などを含むハードウェアであり、1つ以上の記憶装置32に記憶されているプログラム32aを実行することで、プログラムされた処理を行う。また、1つ以上のプロセッサ31は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などを含んでもよい。
【0033】
1つ以上の記憶装置32のそれぞれは、例えば、1つ又は複数の任意の半導体メモリを含み、さらに、1つ又は複数のその他の記憶装置を含んでもよい。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)、プログラマブルROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含んでいる。RAMには、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが含まれてもよい。その他の記憶装置には、例えば、磁気ディスクを含む磁気記憶装置、光ディスクを含む光学記憶装置などが含まれてもよい。なお、1つ以上の記憶装置32は、非一時的なコンピュータ読取可能媒体である。
【0034】
入力装置33は、利用者が直接操作する装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。表示装置34は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどである。ディスプレイには、タッチパネルが内蔵されてもよい。通信装置35は、有線通信モジュールであっても、無線通信モジュールであってもよい。
【0035】
なお、図6に示す構成は、制御装置30のハードウェア構成の一例であり、制御装置30はこの構成に限定されるものではない。制御装置30は、汎用装置に限らず、専用装置であってもよい。
【0036】
以上のように構成された制御装置30は、インキュベータ20内に置かれた観察装置10へ画像取得指示を送信し、観察装置10によって取得された画像を受信する。制御装置30は、制御装置30が備える表示装置34に、観察装置10で取得した画像を表示してもよく、これにより、システム1は、利用者が培養中の試料を観察するための観察システムとして機能してもよい。なお、制御装置30は、図1に示すクライアント端末(クライアント端末40、クライアント端末50)と通信してもよく、クライアント端末が備える表示装置に、観察装置10で取得した画像を表示してもよい。クライアント端末は、表示部を備えていればよく、例えば、デスクトップ型やノート型のコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどであってもよい。
【0037】
位相物体である試料を高いコントラストで可視化し、細胞などを認識可能とするためには、適切な角度で試料に入射した光を集光して試料の像を形成すること、つまり、偏射照明を成立させること、が重要である。具体的には、試料に入射した光は、観察光学系18の開口数に対応する角度を上回る入射角の光と下回る入射角の光とを含んでいることが望ましい。
【0038】
その理由は、以下のように説明することができる。物体面への入射角は観察光学系18によって観察光学系18の瞳面における光軸からの距離に変換される。このため、物体面での入射角が上記のような条件を満たす比較的大きな角度に広く分布している光線束は、瞳面において観察光学系18の瞳の外縁を跨って分布することになる。この光線束のうち瞳の外側に入射する光線(つまり、物体面において開口数に対応する角度を上回る入射角の光)は、観察光学系18内でケラレてしまうため、撮像素子19まで到達しない。従って、撮像素子19に到達する光線束によって、撮像面では、角度方向に不連続な強度分布、つまり、急峻な強度分布の変化が発生することになる。その結果、試料の画像に陰影が生じ、高いコントラストを有する立体的な画像を得ることができる。
【0039】
ところで、観察装置10では、照明光学系17から出射してあるウェルWの底面からマルチウェルプレートCに入射した光を同じウェルWの底面から観察光学系18へ導くことで、ウェルW内の試料を観察する。つまり、マルチウェルプレートCを用いる場合、マルチウェルプレートCへの入射領域とマルチウェルプレートCからの出射領域がウェル径程度の狭い領域に制限されることになる。
【0040】
このため、培養容器がマルチウェルプレートCの場合、物体面に上述した適切な角度で光を入射させ、さらに、その光を観察光学系18へ導くことは容易ではない。ウェル数が増えるほどウェル径は狭くなることから、例えば96ウェルなど多数のウェルを有するマルチウェルプレートを用いた場合には、特に難しい。そして、仮に偏射照明を実現できたとしても、従来の観察装置では、ウェルW内の位置によって観察光学系18へ導くことができる光の入射角範囲は大きく異なってしまう。このため、ウェル内での明るさのばらつきが大きく、高いコントラストを実現できる領域はウェル内の極めて限られた範囲に限定されてしまう。つまり、従来の観察装置では、マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察において、高い観察性能を確保することが難しかった。
【0041】
観察装置10は、このような従来の観察装置の課題を、マルチウェルプレートCに取り付けられるリフレクター70によって解決する。図7は、リフレクター70の斜視図である。図8は、マルチウェルプレートCにリフレクター70を取り付けた様子を示した図である。以下、図7及び図8を参照しながら、リフレクター70とその作用について説明する。
【0042】
リフレクター70は、図7に示すように、ベース71と、ベース71の底面に固定された光学素子72を有している。リフレクター70は、さらに、位置決め部材73と、接触部材74とを有してもよい。
【0043】
光学素子72には、マルチウェルプレートCからの光が入射する複数の曲面が形成されている。つまり、複数の曲面には、照明光学系17から出射した光が入射する。なお、複数の曲面の各々は、マルチウェルプレートCに含まれる1つ以上のウェルW(例えば、ウェル列)に対応し、それぞれ正のパワーを有している。
【0044】
リフレクター70は、曲面が有する正のパワーを用いてマルチウェルプレートCからの光を収斂する又は発散を抑制することで、ウェルW内において偏射照明が成立する領域を拡大する。より具体的には、ウェルW内の液体界面は例えば図5示すように表面張力によって凹面形状を有するが、光学素子72の曲面が有する正のパワーによって液体界面が有する負のパワーによる発散作用を打ち消すことができる。これにより、ウェル内の位置に依存した入射角度範囲の違いを抑制することができるため、従来の観察装置と比較して偏射照明が成立する領域を拡大することが可能である。従って、観察装置10では、従来よりも広い範囲でコントラスト良く位相物体である試料を観察することができる。
【0045】
さらに、複数の曲面の各々は、ウェルの中心軸WCから、より具体的には、その曲面に対応する1つ以上のウェルの全ての中心(ウェル中心軸)から、逸れた位置に曲率中心を有している。曲率中心をウェルの中心軸WCからずらすことで、物体面(ウェル底面)上の各点を通過する光線束が有する平均入射角を大きくすることができる。これにより、従来の観察装置と比較して偏射照明が成立する領域を拡大することができる。従って、観察装置10では、従来よりも広い範囲でコントラスト良く位相物体である試料を観察することができる。
【0046】
位置決め部材73は、リフレクター70をマルチウェルプレートCに対して所定位置に位置決めする位置決め構造の一例である。図8に示すように、マルチウェルプレートCの上面を覆うように置かれたリフレクター70は、位置決め部材73によって、マルチウェルプレートCに対して所定位置に位置決めされる。これにより、ウェルWに対して光学素子72の曲面が精度良く配置されることになるため、リフレクター70は、予め設計された効果を発揮することができる。
【0047】
接触部材74は、マルチウェルプレートCの蓋C2に接触する部材であり、光学素子72の表面に設けられている。光学素子72の表面から突出した接触部材74が容器本体C1に被せた蓋C2と接触することで、光学素子72の表面がマルチウェルプレートCに接触することを回避することができる。これにより、光学素子72の破損などを防止することができる。また、接触部材74は、ウェルWの底面から光学素子72に形成された曲面までの距離を所定距離に保つ役割も担っている。
【0048】
以上のように構成されたリフレクター70をマルチウェルプレートCに取り付けることで、ウェル内での明るさのばらつきを抑えて、高いコントラストを実現できる領域をウェル内において広く確保することもできる。従って、リフレクター70を備える観察装置10によれば、マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察において従来の観察装置よりも高い観察性能を確保することができる。
【0049】
以下、第1の実施形態から第6の実施形態において、リフレクター70の構成の具体例を説明する。
【0050】
[第1の実施形態]
図9は、本実施形態に係るリフレクター100の断面図である。図10は、リフレクター100とマルチウェルプレートCの位置関係を説明する図である。以下、図9及び図10を参照しながら、本実施形態に係るリフレクター100について説明する。
【0051】
リフレクター100は、図7に示すリフレクター70と同様に、マルチウェルプレートCに取り付けられた状態で使用される。マルチウェルプレートCのウェル半径rとウェル間隔WSは、以下のとおりである。なお、ウェル間隔WSは、隣接するウェルWのウェル中心軸WC間の距離である。
r=3.4mm、WS=9mm
【0052】
リフレクター100は、図9に示すように、マルチウェルプレートCの蓋C2に向けられた凹面形状を有する複数の曲面105を有している。複数の曲面105は、図9及び図10に示すように、マルチウェルプレートC(容器本体C1)の底面と平行なX方向に隙間を空けることなく整列している。このため、曲面105のX方向の幅は、ウェル間隔WSに一致し、隣接する曲面105間の距離である曲面間隔CSも、図9に示すように、ウェル間隔WSに一致する。
【0053】
複数の曲面105の各々は、図10に示すように、X方向と直交するY方向に整列した複数のウェルからなるウェル列WRに対応している。リフレクター100は、少なくともウェル列WRの列数だけ曲面105を含んでいて、ウェル列WR毎に少なくとも1つの曲面105を有している。なお、ウェル列とは、マルチウェルプレートCに含まれる複数のウェルWのうち、一定の方向に並んだ複数のウェルWからなる列のことである。
【0054】
複数の曲面105は、図9に示すように、一定の曲率を有する曲面である。さらに、複数の曲面105の各々は、それぞれ対応するウェル列WR(ウェルW)に対して偏心している。即ち、複数の曲面105の各々の曲率中心線は、対応するウェル列WR(ウェルW)の中心軸から逸れている。ウェルWの中心軸は、観察光学系18の光軸と方向が一致する。曲面105の曲率半径Rと、曲面105の曲率中心線のウェル列の中心軸からのシフト量Sは、以下のとおりである。
R=20mm、S=3.2mm
【0055】
なお、リフレクター100は、ウェルWの底面から曲面105までの高さの空気換算長Dが13.9mmとなるようにマルチウェルプレートCに取り付けられている。底面から曲面105までの高さは、ウェル中心軸WC上で定義されている。
【0056】
複数の曲面105は、マルチウェルプレートCからの光を反射する反射面である。より詳細には、複数の曲面105は、リフレクター100を備える観察装置10a内において観察光学系18に凹面を向けた反射面であり、表面鏡の反射面である。複数の曲面105は、例えば、リフレクター100の基材の表面にアルミをコーティングし、その上に適当な誘電体多層膜などからなる保護膜が形成されたものであってもよい。
【0057】
複数の曲面105の各々は、X方向に正のパワーを有している。つまり、X方向と光軸方向であるZ方向で定義されるXZ平面において正のパワーを有している。なお、X方向は、図5に示すように、照明光学系17と観察光学系18が整列する方向であり、偏射照明において光が光軸に対して傾斜する方向である。即ち、複数の曲面105は、偏射照明の進行方向に対して光を収斂するパワーを有している。
【0058】
図11は、本実施形態に係る観察装置10aの断面図である。図11には、照明光学系17から撮像素子19に至る光線を示す光線図が断面図に重ねられている。なお、観察装置10aは、リフレクター70の代わりにリフレクター100を備える点を除き、観察装置10と同様である。
【0059】
観察装置10aでは、図11に示すように、照明光学系17から出射した光のうち、曲面105内の、ウェルの中心軸WCよりも照明光学系17から離れた位置で反射した光L1が、ウェルの中心を含む広い範囲にわたって、観察光学系18の開口数に対応する大きな入射角でウェル底面に入射する。このため、従来よりも広い範囲を高いコントラストで可視化することができる。従って、本実施形態に係るリフレクター100、及び、リフレクター100を備える観察装置10aによれば、マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察において、高い観察性能を確保することができる。
【0060】
なお、照明光学系17から出射した光のうち、曲面105の、ウェルの中心軸WCよりも照明光学系17に近い位置で反射した光L2は、主に視野の周辺又は外側に照射されるため、観察光学系18内でケラレて撮像素子19には達しない。
【0061】
[第2の実施形態]
図12は、本実施形態に係るリフレクター200の断面図である。図13は、リフレクター200とマルチウェルプレートCの位置関係を説明する図である。以下、図12及び図13を参照しながら、本実施形態に係るリフレクター200について説明する。
【0062】
リフレクター200は、図7に示すリフレクター70と同様に、マルチウェルプレートCに取り付けられた状態で使用される。マルチウェルプレートCのウェル半径rとウェル間隔WSは、第1の実施形態で上述したとおりである。
【0063】
リフレクター200は、マルチウェルプレートCの蓋C2に向けられた凹面形状を有する複数の曲面を有する点においては、リフレクター100と同様である。ただし、リフレクター200は、図12及び図13に示すように、複数の曲面205が各ウェル列WRに対応する1対の曲面を含んでいる点が、リフレクター100とは異なっている。
【0064】
具体的には、曲面205に含まれる1対の曲面は、曲率半径Rが20mmでウェル中心軸WCからX(+)方向に3.2mmだけシフトした位置に曲率中心線を有する曲面205aと、曲率半径Rが20mmでウェル中心軸WCからX(-)方向に3.2mmだけシフトした位置に曲率中心線を有する曲面205bを含んでいる。即ち、1対の曲面は、ウェル列WRの中心軸WCに対して対称な第1曲面(曲面205a)と第2曲面(曲面205b)を含んでいる。
【0065】
その他の点については、複数の曲面205は、複数の曲面105と同様である。例えば、複数の曲面205は、図9及び図10に示すように、X方向に隙間を空けることなく整列している点は、複数の曲面105と同様である。このため、曲面205間の距離は、ウェル間隔WSに一致し、さらに、隣接する曲面205aと曲面205bの間の距離である曲面間隔CSは、ウェル間隔WSの半分に一致する。
【0066】
また、複数の曲面205は、マルチウェルプレートCからの光を反射する反射面であり、X方向に正のパワーを有している点も、複数の曲面105と同様である。リフレクター200では、曲面205に含まれる曲面205aと曲面205bは、それぞれ、複数のX方向に正のパワーを有している。
【0067】
また、リフレクター200は、ウェルの底面から曲面205までの高さの空気換算長Dが13.9mmとなるようにマルチウェルプレートCに取り付けられている点も、リフレクター100と同様である。
【0068】
図14は、本実施形態に係る観察装置10bの断面図である。図14には、照明光学系17から撮像素子19に至る光線を示す光線図が断面図に重ねられている。なお、観察装置10bは、リフレクター70の代わりにリフレクター200を備える点を除き、観察装置10と同様である。
【0069】
観察装置10bでは、図14に示すように、照明光学系17から出射した光のうち、曲面205内の、ウェルの中心軸WCよりも照明光学系17から離れた位置(この例では、曲面205a上の位置)で反射した光L1が、ウェルの中心を含む広い範囲にわたって、観察光学系18の開口数に対応する大きな入射角でウェル底面に入射する点は、観察装置10aと同様である。また、照明光学系17から出射した光のうち、曲面205の、ウェルの中心軸WCよりも照明光学系17に近い位置(この例では、曲面205b上の位置)で反射した光L2は、主に視野の周辺又は外側に照射されるため、観察光学系18内でケラレて撮像素子19には達しない点についても、観察装置10aと同様である。
【0070】
このため、本実施形態に係るリフレクター200、及び、リフレクター200を備える観察装置10bによっても、第1の実施形態に係るリフレクター100及び観察装置10aと同様に、従来よりも広い範囲を高いコントラストで可視化することが可能であり、マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察において、高い観察性能を確保することができる。
【0071】
なお、図14では、光軸に対して一方側(この例ではX(+)側)に配置された照明光学系17を用いた場合を示したが、光軸に対して他方側(この例ではX(-)側)に配置された照明光学系17を用いることで、光軸に対して対称な偏射照明を行うことができる。従って、リフレクター200及び観察装置10bによれば、観察装置10bに含まれる複数の照明光学系17を切り替えて使用することで、リフレクター100及び観察装置10aよりもさらに広い範囲を高いコントラストで可視化することができる。
【0072】
[第3の実施形態]
図15は、本実施形態に係るリフレクター300とマルチウェルプレートCの位置関係を説明する図である。図16は、ウェルの中心とウェルに対応する曲面の曲率中心の位置関係を説明する図である。以下、図15及び図16を参照しながら、本実施形態に係るリフレクター300について説明する。
【0073】
リフレクター300は、図7に示すリフレクター70と同様に、マルチウェルプレートCに取り付けられた状態で使用される。この点は、第1の実施形態に係るリフレクター100と第2の実施形態に係るリフレクター200と同様である。また、リフレクター300は、マルチウェルプレートCの蓋C2に向けられた凹面形状を有する複数の曲面を有する点についても、リフレクター100及びリフレクター200と同様である。
【0074】
リフレクター300は、図15に示すように、複数の曲面305が観察光学系18の光軸に直交する2次元(X方向及びY方向)に整列し、複数の曲面305の各々がウェルWに対応する点が、リフレクター100及びリフレクター200とは異なっている。
【0075】
また、リフレクター300は、図15及び図16に示すように、複数の曲面305が各ウェルWに対応する1対の曲面を含み、その1対の曲面がウェルWの中心(ウェル中心軸WC)に対して対称な第1曲面(曲面305a)と第2曲面(曲面305b)とを含んでいる点も、リフレクター100及びリフレクター200とは異なっている。さらに、リフレクター300は、2次元曲面である曲面105及び曲面205とは異なり、曲面305が3次元曲面である点も、リフレクター100及びリフレクター200と異なっている。
【0076】
ただし、リフレクター300は、曲面305の曲率中心がウェル中心軸WCやウェル列中心WRCから逸れている点は、リフレクター100及びリフレクター200と同様である。具体的には、図16に示すように、曲面305aの曲率中心RCaは、ウェル中心軸WCからX(+)方向に逸れていて、曲面305bの曲率中心RCbは、ウェル中心軸WCからX(-)方向に逸れている。
【0077】
また、曲面305に含まれる曲面305aと曲面305bは、それぞれ球面であり、X方向に加えてY方向にもパワーを有している。つまり、X方向と光軸方向であるZ方向で定義されるXZ平面に加えて、YZ平面おいても正のパワーを有している。さらに別の言い方をすると、複数の曲面305は、偏射照明の進行方向に対して光を収斂するパワーに加えて偏射照明の進行方向と直交する方向に対しても光を収斂するパワーを有している。
【0078】
本実施形態に係るリフレクター300、及び、リフレクター300を備える観察装置では、偏射照明と直交する方向についても偏射照明が成立する範囲を広げることができる。従って、第1の実施形態及び第2の実施形態よりもさらに広い範囲を高いコントラストで可視化することが可能であり、マルチウェルプレートに収容された位相物体の観察において、高い観察性能を確保することができる。
【0079】
[第4の実施形態]
図17は、本実施形態に係るリフレクター400の断面図である。以下、図17を参照しながら、本実施形態に係るリフレクター400について説明する。
【0080】
リフレクター400は、図7に示すリフレクター70と同様に、マルチウェルプレートCに取り付けられた状態で使用される。マルチウェルプレートCのウェル半径rとウェル間隔WSは、第1の実施形態で上述したとおりである。
【0081】
リフレクター400は、入射光に対して凹面形状を有する複数の曲面を有する点においては、リフレクター200と同様である。また、リフレクター400が有する複数の曲面405が、各ウェル列WRに対応する1対の曲面(曲面405a、曲面405b)を含んでいる点は、リフレクター200とは同様である。ただし、リフレクター400は、複数の曲面405が、図17に示すように、裏面鏡の反射面である点が、リフレクター200とは異なっている。
【0082】
より具体的には、リフレクター400は、図17に示すように、ベース401と光学素子402を含んでいる。光学素子402は、マルチウェルプレートCの蓋C2に平面を向けた裏面鏡であり、ベース401に向けた凸面に反射面が形成されている。即ち、反射面は、裏面鏡の反射面であり、入射光に対してX方向に正のパワーを有する凹面鏡として作用する。また、ベース401は、裏面鏡の反射面に対向して配置された保護カバーとして機能する。
【0083】
なお、リフレクター400では、曲面405のウェル列の中心軸WCからのシフト量S(=3.2mm)は、リフレクター200におけるシフト量と同じであるが、曲面405の曲率半径R(=33mm)が、リフレクター200における曲率半径とは異なっている。このため、ウェルの底面から曲面405までの高さの空気換算長Dもリフレクター200における高さとは異なっている。
【0084】
図18は、本実施形態に係る観察装置10dの断面図である。図18には、照明光学系17から撮像素子19に至る光線を示す光線図が断面図に重ねられている。なお、観察装置10dは、リフレクター70の代わりにリフレクター400を備える点を除き、観察装置10と同様である。
【0085】
観察装置10dでは、図18に示すように、第2の実施形態に係る観察装置10bとほぼ同様に光線が通過する。つまり、照明光学系17から出射した光のうち、曲面405内の、ウェルの中心軸WCよりも照明光学系17から離れた位置(この例では、曲面405a上の位置)で反射した光L1が、ウェルの中心を含む広い範囲にわたって、観察光学系18の開口数に対応する大きな入射角でウェル底面に入射する。一方で、照明光学系17から出射した光のうち、曲面405の、ウェルの中心軸WCよりも照明光学系17に近い位置(この例では、曲面405b上の位置)で反射した光L2は、主に視野の周辺又は外側に照射されるため、観察光学系18内でケラレて撮像素子19には達しない。さらに、使用する照明光学系17を切り替えることで、光軸に対して対称な偏射照明を行うことができる。
【0086】
従って、リフレクター400及び観察装置10dによっても、リフレクター200及び観察装置10bと同様に、リフレクター100及び観察装置10aよりも広い範囲を高いコントラストで可視化することができる。さらに、リフレクター400では、曲面405がベース401で保護されていて、外部に露出していない。このため、反射面が傷ついて性能が劣化してしまうといった事態を回避することができる。
【0087】
[第5の実施形態]
図19は、本実施形態に係るリフレクター500の断面図である。以下、図19を参照しながら、本実施形態に係るリフレクター500について説明する。
【0088】
リフレクター500は、図7に示すリフレクター70と同様に、マルチウェルプレートCに取り付けられた状態で使用される。マルチウェルプレートCのウェル半径rとウェル間隔WSは、第1の実施形態で上述したとおりである。
【0089】
リフレクター500は、正のパワーを有する複数の曲面を有する点においては、リフレクター200と同様である。また、リフレクター500が有する複数の曲面505が、各ウェル列WRに対応する1対の曲面(曲面505a、曲面505b)を含んでいる点も、リフレクター200とは同様である。ただし、リフレクター500は、図19に示すように、複数の曲面505が入射光に対して凸面として構成されている点、複数の曲面505が反射面ではなく屈折面である点が、リフレクター200とは異なっている。
【0090】
より具体的には、リフレクター500は、図19に示すように、マルチウェルプレートCの蓋C2側に曲面505を有し、裏面に平面形状を有する反射面506を有している。曲面505は、凸面形状を有した屈折面であり、X方向に正のパワーを有している。
【0091】
なお、リフレクター500では、曲面505(曲面505a、曲面505b)の曲率半径Rと、曲面505(曲面505a、曲面505b)のウェル列の中心軸WCからのシフト量Sは、以下のとおりである。
R=40mm、S=17mm
【0092】
さらに、ウェルの底面から曲面505までの高さの空気換算長Dは以下のとおりである。
D=12.0mm
【0093】
図20は、本実施形態に係る観察装置10eの断面図である。図20には、照明光学系17から撮像素子19に至る光線を示す光線図が断面図に重ねられている。なお、観察装置10eは、リフレクター70の代わりにリフレクター500を備える点を除き、観察装置10と同様である。
【0094】
観察装置10eでは、図20に示すように、照明光学系17から出射した光のうち、曲面505内の、ウェルの中心よりも照明光学系17から離れた曲面(この例では、曲面505a)に入射し、同じ曲面から出射した光L1が、ウェルの中心を含む広い範囲にわたって、観察光学系18の開口数に対応する大きな入射角でウェル底面に入射する。一方で、照明光学系17から出射した光のうち、曲面505の、ウェルの中心よりも照明光学系17に近い曲面(この例では、曲面505b)に入射し、同じ曲面から出射した光L2は、主に視野の周辺又は外側に照射されるため、観察光学系18内でケラレて撮像素子19には達しない。さらに、リフレクター500へ入射するときの曲面と出射するときの曲面が異なる光(例えば、光L3)についても、そのほとんどは観察光学系18内でケラレて撮像素子19には達しない。さらに、使用する照明光学系17を切り替えることで、光軸に対して対称な偏射照明を行うことができる。
【0095】
従って、リフレクター500及び観察装置10eによっても、リフレクター200及び観察装置10bと同様に、リフレクター100及び観察装置10aよりも広い範囲を高いコントラストで可視化することができる。
【0096】
[第6の実施形態]
図21は、本実施形態に係るリフレクター600の断面図である。以下、図21を参照しながら、本実施形態に係るリフレクター600について説明する。
【0097】
リフレクター600は、図7に示すリフレクター70と同様に、マルチウェルプレートCに取り付けられた状態で使用される。マルチウェルプレートCのウェル半径rとウェル間隔WSは、第1の実施形態で上述したとおりである。
【0098】
リフレクター600は、正のパワーを有する複数の曲面を有する点においては、リフレクター500と同様である。また、リフレクター600が有する複数の曲面605が、各ウェル列WRに対応する1対の曲面(曲面605a、曲面605b)を含んでいる点は、リフレクター500とは同様である。また、リフレクター600は、図21に示すように、複数の曲面605が屈折面である点も、リフレクター500と同様である。
【0099】
リフレクター600は、ベース601と光学素子602を含み、反射面606をベース601に設け、曲面605を光学素子602に設けている。即ち、反射面606と、X方向に正のパワーを有する屈折面である曲面605を異なる部材に別々に設けている点が、リフレクター500とは異なっている。
【0100】
なお、リフレクター600では、曲面605(曲面605a、曲面605b)の曲率半径Rと、曲面605(曲面605a、曲面605b)のウェル列の中心軸WCからのシフト量Sは、以下のとおりである。
R=19mm、S=7.5mm
【0101】
さらに、ウェルの底面から曲面605までの高さの空気換算長Dは以下のとおりである。
D=15.7mm
【0102】
図22は、本実施形態に係る観察装置10fの断面図である。図20には、照明光学系17から撮像素子19に至る光線を示す光線図が断面図に重ねられている。なお、観察装置10fは、リフレクター70の代わりにリフレクター600を備える点を除き、観察装置10と同様である。
【0103】
観察装置10fでは、図22に示すように、照明光学系17から出射した光のうち、ウェルの中心軸WCよりも照明光学系17から離れた曲面(この例では、曲面605a)から出射し、同じ曲面に入射する光L1が、ウェルの中心を含む広い範囲にわたって、観察光学系18の開口数に対応する大きな入射角でウェル底面に入射する。一方で、照明光学系17から出射した光のうち、ウェルの中心軸WCよりも照明光学系17に近い曲面(この例では、曲面605b)から出射し、同じ曲面に入射する光L2は、主に視野の周辺又は外側に照射されるため、観察光学系18内でケラレて撮像素子19には達しない。なお、リフレクター600では、ベース601と光学素子602を近接させることで、光学素子602から出射するときの曲面と入射するときの曲面が異なる光は、ほとんど生じない。さらに、使用する照明光学系17を切り替えることで、光軸に対して対称な偏射照明を行うことができる。
【0104】
従って、リフレクター600及び観察装置10fによっても、リフレクター500及び観察装置10eと同様に、リフレクター100及び観察装置10aよりも広い範囲を高いコントラストで可視化することができる。
【0105】
最後に、リフレクターが満たすことが望ましい設計上の条件について説明する。上述した実施形態に係るリフレクターは、正のパワーと、曲面のウェル中心(又はウェル列中心)からのシフト量を適切に設計することで、上述した効果を最大限発揮することができる。
【0106】
第1の実施形態から第4の実施形態のように、リフレクター内の反射面が正のパワーを有する場合、リフレクターは以下の条件式(1)及び条件式(2)を満たすことが望ましい。
0.3<(Rmirror/nmirror)/(10sinh(0.4Rwell)+h)<1 ・・・(1)
mirror(NA+nmirror 1/2/(NA(Rmirror-h))>1 ・・・(2)
【0107】
ここで、Rmirrorは反射面の曲率半径である。nmirrorは反射面の入射側の媒質の屈折率である。Rwellはマルチウェルプレートのウェルの半径である。hはサンプル面(ウェル底面)から反射面までのウェル中心における高さの空気換算長である。Ymirrorはウェル中心に対する反射面の曲率中心の横方向(Y方向)についてのシフト量である。NAは観察光学系の物体側の開口数である。
【0108】
また、第5の実施形態と第6の実施形態のように、リフレクター内の屈折面が正のパワーを有する場合、リフレクターは以下の条件式(3)及び条件式(4)を満たすことが望ましい。
0.3<Rlems/(nlems-1)/(10sinh(0.4Rwell)+h)<1.5 ・・・(3)
lems(nlems-1)/(NA(Rlems-h))>1 ・・・(4)
【0109】
ここで、Rlemsは屈折面の曲率半径である。nlemsは屈折面を有する光学素子の屈折率である。Rwellはマルチウェルプレートのウェルの半径である。hはサンプル面(ウェル底面)から屈折面までのウェル中心における高さの空気換算長である。Ylemsはウェル中心に対する屈折面の曲率中心の横方向(Y方向)についてのシフト量である。NAは観察光学系の物体側の開口数である。
【0110】
培地表面(ウェル内の液体表面)は表面張力によって凹面になるため、培地表面で照明光が屈折して広がってしまう。反射面(屈折面)の正パワーにより補正することで照明光が広がりすぎないようにすることが望ましい。条件式(1)及び条件式(3)は、反射面(屈折面)での補正量の適正範囲を規定した式である。なお、培地表面の凹面形状はウェルの径によって変化し、ウェル径が小さいほど照明光を広げる作用が強くなる。また、反射面(屈折面)の正のパワーは、反射面(屈折面)の曲率半径と媒質の屈折率に依存する。
【0111】
条件式(1)(又は条件式(3))を満たすことで、試料に入射して観察光学系18に向かう照明光の入射角をウェル内の各位置において均一にすることができる。条件式(1)(又は条件式(3))が下限値(0.3)以下になる場合、正のパワーによる補正量が大きくなりすぎて、照明光が収束しすぎてしまう。その結果、ウェル内の照明光学系17に近いほう位置では照明光の入射角が小さくなりすぎ、反対に、ウェル内の照明光学系17から遠いほうの位置では照明光の入射角が大きくなりすぎる。このため、入射角の均一性が劣化してしまう。一方、条件式(1)(又は条件式(3))が上限値(1(又は1.5))以上になる場合、正のパワーによる補正量が小さくなりすぎて、照明光が広がりすぎてしまう。その結果、ウェル内の照明光学系17に近いほう位置では照明光の入射角が大きくなりすぎ、ウェル内の照明光学系17から遠いほうの位置では照明光の入射角が小さくなりすぎる。このため、入射角の均一性が劣化してしまう。
【0112】
条件式(2)(又は条件式(4))は、偏射照明が成立する条件を規定した式である。条件式(1)(又は条件式(3))を満たしてウェル内における照明光の入射角の均一性を確保した上で、条件式(2)(又は条件式(4))を満たすことで、ウェル内の広い範囲で偏射照明を成立させることができる。条件式(1)(又は条件式(3))を満たしている場合であっても、シフト量が小さすぎて条件式(2)(又は条件式(4))を満たさない場合には、観察光学系18の開口数に対して入射角が小さくなりすぎる。このため、偏射照明が成立せず、位相物体をコントラスト良く観察することが難しくなる。
【0113】
上述した実施形態に係るリフレクターは、以下の通り、いずれも上述した条件式を満たしている。なお、第3の実施形態については、第2の実施形態と同じである。
<第1の実施形態に係るリフレクター100>
NA=0.25
well=3.4mm
h=13.9mm
mirror=20mm
mirror=3.2mm
mirror=1
(1)(Rmirror/nmirror)/(10sinh(0.4Rwell)+h)=0.62
(2)Ymirror(NA+nmirror 1/2/(NA(Rmirror-h))=2.16
【0114】
<第2の実施形態に係るリフレクター200>
NA=0.25
well=3.4mm
h=13.9mm
mirror=20mm
mirror=3.2mm
mirror=1
(1)(Rmirror/nmirror)/(10sinh(0.4Rwell)+h)=0.62
(2)Ymirror(NA+nmirror 1/2/(NA(Rmirror-h))=2.16
【0115】
<第4の実施形態に係るリフレクター400>
NA=0.25
well=3.4mm
h=14.6mm
mirror=33mm
mirror=3.2mm
mirror=1.491
(1)(Rmirror/nmirror)/(10sinh(0.4Rwell)+h)=0.67
(2)Ymirror(NA+nmirror 1/2/(NA(Rmirror-h))=1.05
【0116】
<第5の実施形態に係るリフレクター500>
NA=0.25
well=3.4mm
h=12.0mm
lens=40mm
lens=17mm
lens=1.491
(3)Rlems/(nlems-1)/(10sinh(0.4Rwell)+h)=1.15
(4)Ylems(nlems-1)/(NA(Rlems-h))=1.19
【0117】
<第6の実施形態に係るリフレクター600>
NA=0.25
well=3.4mm
h=15.7mm
lens=19mm
lens=7.5mm
lens=1.491
(3)Rlems/(nlems-1)/(10sinh(0.4Rwell)+h)=0.45
(4)Ylems(nlems-1)/(NA(Rlems-h))=4.46
【0118】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の観察装置、及び、リフレクターは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0119】
第1の実施形態と第4の実施形態に係るリフレクターの反射面を3次元曲面として構成してもよい。この場合、第3の実施形態に係るリフレクターと同様の効果を得ることができる。また、第5の実施形態と第6の実施形態に係るリフレクターの屈折面を3次元曲面として構成してもよく、例えば、フライアイレンズが用いられてもよい。この場合も、第3の実施形態に係るリフレクターと同様の効果を得ることができる。さらに、各実施形態に係る曲面は、フレネルレンズのフレネル面のように複数に分割して階段状に形成してもよい。これによりリフレクターをさらに薄くすることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 システム
10、10a~10f 観察装置
17 照明光学系
18 観察光学系
19 撮像素子
60、73 位置決め部材
70、100、200、300、400、500、600 リフレクター
71、401、601 ベース
72、402、602 光学素子
74 接触部材
105、205、205a、205b、305、305a、305b、405、405a、405b、505、505a、505b、605、605a、605b 曲面
506、606 反射面
C マルチウェルプレート
図1
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