特開 2022-189093 留め具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022189093

(43)【公開日】2022-12-22

(54)【発明の名称】留め具

(51)【国際特許分類】

   F16B 5/06 20060101AFI20221215BHJP

【ＦＩ】

F16B5/06 Q

【審査請求】未請求

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021097471

(22)【出願日】2021-06-10

(71)【出願人】

【識別番号】000124096

【氏名又は名称】株式会社パイオラックス

(74)【代理人】

【識別番号】100109081

【弁理士】

【氏名又は名称】三木 友由

(72)【発明者】

【氏名】酒井 信吾

【テーマコード（参考）】

3J001

【Ｆターム（参考）】

3J001FA02

3J001HA02

3J001HA07

3J001JC03

3J001JD29

3J001KA19

3J001KA26

3J001KB01

(57)【要約】

【課題】取付部材の寸法のばらつきを吸収して取り付けやすい留め具を提供する。
【解決手段】
取付部材の表側と裏側を連通するように形成された取付孔に取り付けられる留め具１０は、取付部材の表側に配置される本体部３０と、取付部材の表側にそれぞれ配置され、取付部材にそれぞれ係止する第１弾性係止部３２ａ，３２ｂおよび第２弾性係止部３４ａ，３４ｂと、取付孔の内面に弾接する弾接部と、を備える。第１弾性係止部３２ａ，３２ｂは、本体部３０が取付孔から表側に離れる第１方向の本体部３０の動きを規制し、第２弾性係止部３４ａ，３４ｂは、取付孔から裏側へ向かう第２方向の本体部３０の動きを規制する。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

取付部材の表側と裏側を連通するように形成された取付孔に取り付けられる留め具であって、
前記取付部材の表側に配置される本体部と、
前記取付部材の表側にそれぞれ配置され、前記取付部材にそれぞれ係止する第１弾性係止部および第２弾性係止部と、
前記取付孔の内面に弾接する弾接部と、を備え、
前記第１弾性係止部は、前記本体部が前記取付孔から表側に離れる第１方向の前記本体部の動きを規制し、
前記第２弾性係止部は、前記取付孔から裏側へ向かう第２方向の前記本体部の動きを規制することを特徴とする留め具。

【請求項2】

前記第１弾性係止部は、前記弾接部の弾接方向に直交する方向に弾接することを特徴とする請求項１に記載の留め具。

【請求項3】

前記第１弾性係止部は、前記第２弾性係止部よりも撓みやすいことを特徴とする請求項１または２に記載の留め具。

【請求項4】

前記第１弾性係止部は、一対設けられて、それらの撓みやすさが異なることを特徴とする請求項１から３のいずれかに記載の留め具。

【請求項5】

前記第２弾性係止部は、一対設けられて、それらの撓みやすさが異なることを特徴とする請求項１から４のいずれかに記載の留め具。

【請求項6】

前記弾接部は、前記取付孔の裏側に出ないように設けられることを特徴とする請求項１から５のいずれかに記載の留め具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、取付孔に取り付けられる留め具に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、ガス流路を形成するオイルセパレータ本体と、ガス流路に直交して設けられるフラップとを備えるオイルセパレータが開示されている。オイルセパレータ本体の外周に溝状の係合部が形成され、係合部がエンジンヘッドカバーの取付孔に形成されたフランジに嵌まることでオイルセパレータが固定される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１５－１２１１２３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に開示されるオイルセパレータは、溝状の係合部をエンジンヘッドカバーののフランジに嵌まることで固定されるが、エンジンヘッドカバー側の形状のばらつきを吸収しづらく、取付状態にガタが生じるおそれがある。

【0005】

本発明の目的は、取付部材の寸法のばらつきを吸収して取り付けやすい留め具を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記課題を解決するために、本発明のある態様は、取付部材の表側と裏側を連通するように形成された取付孔に取り付けられる留め具であって、取付部材の表側に配置される本体部と、取付部材の表側にそれぞれ配置され、取付部材にそれぞれ係止する第１弾性係止部および第２弾性係止部と、取付孔の内面に弾接する弾接部と、を備える。第１弾性係止部は、本体部が取付孔から表側に離れる第１方向の本体部の動きを規制し、第２弾性係止部は、取付孔から裏側へ向かう第２方向の本体部の動きを規制する。

【発明の効果】

【0007】

本発明によれば、取付部材の寸法のばらつきを吸収して取り付けやすい留め具を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】実施例の留め具の斜視図である。

【図2】図２（ａ）は、留め具の正面図であり、図２（ｂ）は、留め具の上面図である。

【図3】図３（ａ）は、留め具の背面図であり、図３（ｂ）は、留め具の側面図である。

【図4】取付部材に取り付けた留め具を示し、取付部材の上方から見た図である。

【図5】取付部材に取り付けた留め具を示し、取付部材の下方から見た図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

図１は、実施例の留め具１０の斜視図である。留め具１０は、取付部材の取付孔に取り付けられ、例えば取付孔を一方向に閉塞する逆止弁として機能する。取付部材は、例えばトランスミッションであり、トランスミッション内のオイルの移動を制限する。

【0010】

留め具１０は、留め具本体２０、蓋部材２２および不図示の軸部材を備える。蓋部材２２は、留め具本体２０に回転可能に設けられる。留め具本体２０の各構成について新たな図面を参照して説明する。

【0011】

図２（ａ）は、留め具１０の正面図であり、図２（ｂ）は、留め具１０の上面図である。また、図３（ａ）は、留め具１０の背面図であり、図３（ｂ）は、留め具１０の側面図である。

【0012】

留め具本体２０は、本体部３０、一対の第１弾性係止部３２ａ, ３２ｂ、一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂ、第１弾接部３６ａ、第２弾接部３６ｂ、支持部３８、連通孔部４０、突部４２、回転止め部４４および軸支部４６を備える。

【0013】

なお、留め具１０において、下方を第１方向Ｆといい、上方を第２方向Ｓという。第１方向Ｆは、第１弾性係止部３２ａが垂下する方向であり、第２方向Ｓは第１方向Ｆの逆方向である。第１方向Ｆおよび第２方向Ｓは、上下に沿った高さ方向であり、連通孔部４０を貫通する方向に沿う。弾接部３６が弾性力を発揮する弾接方向Ｅは、第１方向Ｆおよび第２方向Ｓに直交する。また、対向方向Ｔは、一対の第１弾性係止部３２ａ, ３２ｂが対向する方向であって、第１方向Ｆおよび第２方向Ｓと、弾接方向Ｅとに直交する。

【0014】

本体部３０は、平板状に形成され、中央に連通孔部４０を有する。連通孔部４０は、略矩形に形成され、取付孔を外部に連通する。図２（ｂ）に示すように軸支部４６は、対向方向Ｔに沿う本体部３０の一辺に設けられ、軸部材２４を軸支する。

【0015】

突部４２は、本体部３０の上面に突出し、対向方向Ｔに対向して一対形成される。突部４２は、取付孔に当接して取付孔に対する留め具１０の位置ずれを制限する。回転止め部４４は、図３（ｂ）に示すように本体部３０の裏面から垂下し、蓋部材２２に当たって蓋部材２２の開き方向の回転を止める。

【0016】

一対の第１弾性係止部３２ａ，３２ｂ（これらを区別しない場合、「第１弾性係止部３２」という）は、撓み可能に設けられ、図２（ａ）に示すように本体部３０の側縁から下方に延出し、対向方向Ｔに対向する。一対の第１弾性係止部３２ａ，３２ｂは、取付部材の被係止部にそれぞれ係止し、取付孔から本体部３０が離れる第１方向Ｆの留め具１０の動きを規制する。一対の第１弾性係止部３２ａ，３２ｂは、先端部に多段爪を有する。

【0017】

一対の第１弾性係止部３２ａ，３２ｂは、撓みやすさが異なる。つまり、第１弾性係止部３２ｂは、第１弾性係止部３２ａよりも全長が長く形成され、撓みやすくなっている。第１弾性係止部３２ｂは、全長が長くなるように屈曲して形成される一方、第１弾性係止部３２ａは、直線的に形成される。これによって、一対の第１弾性係止部３２ａ，３２ｂが係止状態で共振しにくくできる。

【0018】

一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂ（これらを区別しない場合、「第２弾性係止部３４」という）は、撓み可能に設けられ、図２（ａ）に示すように本体部３０の側縁から斜め上方に延出する。一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂは、取付部材に係止して、第２方向Ｓへの本体部３０の動きを規制する。

【0019】

一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂは、それらの撓みやすさが異なる。つまり、第２弾性係止部３４ｂは、第２弾性係止部３４ａよりも全長が長く形成され、撓みやすくなっている。第２弾性係止部３４ｂは、全長が長くなるように屈曲して形成される一方、第２弾性係止部３４ａは、直線的に形成される。これによって、一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂが係止状態で共振しにくくできる。

【0020】

一対の第１弾性係止部３２ａ，３２ｂは、一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂよりも長く形成されており、一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂよりも撓みやすい。これにより、一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂを取付部材に係止させた後、撓みやすい一対の第１弾性係止部３２ａ，３２ｂを容易に係止させて留め具１０を取り付けることができる。

【0021】

第２弾性係止部３４が上方に押し当てられることで反力を受け、逆方向に係止する第１弾性係止部３２が取付部材の被係止部に押し当てられ、第１弾性係止部３２の係止を強固にできる。また、第１弾性係止部３２および第２弾性係止部３４が撓み可能であるため、取付部材の寸法のばらつきを吸収してガタつきを抑えて取り付けることができる。

【0022】

第１弾性係止部３２ａおよび第２弾性係止部３４ａは、本体部３０の同じ側辺に設けられ、第１弾性係止部３２ｂおよび第２弾性係止部３４ｂは、第１弾性係止部３２ａおよび第２弾性係止部３４ａとは逆側で本体部３０の同じ側辺に設けられる。第１弾性係止部３２ｂおよび第２弾性係止部３４ｂは、第１弾性係止部３２ａおよび第２弾性係止部３４よりも撓みやすくなっているため、係止状態で共振しにくくできる。

【0023】

第１弾接部３６ａおよび第２弾接部３６ｂ（これらを区別しない場合、「弾接部３６」という）は、支持部３８によって両端が支持された両持ち弾性片である。支持部３８は、本体部３０の上面に立設し、柱状に形成される。支持部３８は、連通孔部４０の縁に複数形成され、対向方向Ｔに離れて配置される。弾接部３６は、本体部３０から離れており、弾接方向Ｅに撓み可能である。第１弾接部３６ａおよび第２弾接部３６ｂは、連通孔部４０の対向方向Ｔに沿った両辺にそれぞれ設けられ、逆方向に付勢する。これによって、弾接部３６は、弾性方向Ｅにおいて両方向に付勢できる。弾接部３６のそれぞれは、外側に突出する当てリブ３６ｃを有する。

【0024】

図３（ｂ）に示すように、蓋部材２２の軸受部２２ａは、軸部材２４を挿入されており、蓋部材２２は回転可能に支持されている。回転によって、蓋部材２２は、連通孔部４０を開いた状態と、閉じた状態とをとることができる。蓋部材２２は、通常時に開状態または閉状態のいずれであってよく、バネによって開方向または閉方向に付勢されてもよい。

【0025】

図４は、取付部材１２に取り付けた留め具１０を示し、取付部材１２の上方から見た図である。また、図５は、取付部材１２に取り付けた留め具１０を示し、取付部材１２の下方から見た図である。なお、図５に示す留め具１０は、蓋部材２２および軸部材２４を除いて示す。

【0026】

図４および図５に示す例では取付部材１２は、車両のトランスミッションであり、留め具１０はオイルフラップとして機能する。トランスミッションには全方位の振動が発生するため、留め具１０を取付孔１２ａにガタつきなく取り付けることが好ましい。

【0027】

取付部材１２は、取付孔１２ａと、取付孔１２ａを形成する取付面１２ｂと、取付面１２ｂに直交する側壁部１２ｃと、被係止部１２ｄと、被係止部１２ｅとを有する。取付孔１２ａは、上方の内部空間と、下方の外部空間とを連通する。すなわち、取付孔１２ａは、表側の外部空間と裏側の外部空間とを連通するように形成される。図４に示すように、取付孔１２ａは略矩形状に形成される。

【0028】

被係止部１２ｄおよび被係止部１２ｅは、取付孔１２ａおよび取付面１２ｂの下方にて側壁部１２ｃから突出して形成され、弾接方向Ｅに延びる縁を形成する。この被係止部１２ｄおよび被係止部１２ｅの縁に、第１弾性係止部３２ａ，３２ｂが係止する。

【0029】

取付面１２ｂは小さく、他の部品との関係上、留め具１０を取り付けるための配置の制約は大きい。留め具１０は、図５に示す下方の外部空間側、すなわち表側から取り付けられる。

【0030】

留め具１０の取付工程では、連通孔部４０と取付孔１２ａの位置が合わせられ、弾接部３６、支持部３８および突部４２が取付孔１２ａに入り込むように、留め具１０が取付孔１２ａに表側から接近される。これによって位置決めができる。留め具１０が取付孔１２ａに接近すると、第２弾性係止部３４ａおよび第２弾性係止部３４ｂが取付面１２ｂの表面（下面）に当接する。次に、第１弾性係止部３２ａが被係止部１２ｅを乗り越えて係止し、第１弾性係止部３２ｂが被係止部１２ｄを乗り越えて係止し、留め具１０の取付が完了する。

【0031】

このように、一対の第１弾性係止部３２ａ，３２ｂは、被係止部１２ｄ，１２ｅにそれぞれ係止し、取付孔１２ａから表側に本体部３０が離れる第１方向Ｆの本体部３０の動きを規制する。一対の第２弾性係止部３４ａ，３４ｂは、取付部材１２の裏面にそれぞれ係止し、取付孔１２ａから裏側に向かう第２方向Ｓの本体部３０の動きを規制する。

【0032】

本体部３０は、取付部材１２の表側に配置される。第１弾性係止部３２および第２弾性係止部３４は、取付部材１２の表側にそれぞれ配置され、取付部材１２にそれぞれ係止する。これによって、留め具１０を取付部材１２の表側から取付可能になる。

【0033】

弾接部３６は、図４に示すように、取付孔１２ａの内面に弾接する。これにより、留め具１０が弾接方向Ｅにガタつくことを抑えることができる。複数の弾接部３６は、取付孔１２ａにおける対向方向Ｔに沿う両側の内面にそれぞれ弾接し、いっそうガタつきを抑える。また、支持部３８は、弾接方向Ｅの過度な移動を規制できる。

【0034】

弾接部３６は、取付孔１２ａの裏側に出ないように、すなわち取付面１２ｂよりも上方に出ないように設けられる。留め具１０が取付部材１２の内部空間の部品に干渉することを抑えることができる。

【0035】

第２弾性係止部３４の反発力を強くして、逆方向に係止する第１弾性係止部３２を取付部材１２の被係止部１２ｄ，１２ｅに押し当てて係止する。これにより、留め具１０が第１方向Ｆおよび第２方向Ｓにガタつくことを抑えることができる。

【0036】

第１弾性係止部３２は、弾接部３６の弾接方向Ｅに直交する対向方向Ｔに弾接する。これにより、留め具１０が対向方向Ｔにガタつくことを抑えることができる。また、第１弾性係止部３２、第２弾性係止部３４および弾接部３６を組み合わせることで、取付孔１２ａの裏側に出ないようにする配置の制約の中で、留め具１０の３方向のガタつきを抑えることができる。さらに、留め具１０のガタつきを抑えることで、擦れてコンタミが発生することを抑えることができる。

【0037】

本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。

【0038】

例えば、実施例の留め具１０は、オイルフラップの逆止弁として機能したが、この態様に限定されない。留め具１０は、連通孔部４０を有さず、取付孔を閉塞するホールプラグとしても機能してよい。

【符号の説明】

【0039】

１０ 留め具、 １２ 取付部材、 １２ａ 取付孔、 １２ｂ 取付面、 １２ｃ 側壁部、 １２ｄ，１２ｅ 被係止部、 ２０ 留め具本体、 ２２ 蓋部材、 ２４ 軸部材、 ３０ 本体部、 ３２ａ，３２ｂ 第１弾性係止部、 ３４ａ，３４ｂ 第２弾性係止部、 ３６ａ 第１弾接部、 ３６ｂ 第２弾接部、 ３８ 支持部、 ４０ 連通孔部、 ４２ 突部、 ４４ 回転止め部、 ４６ 軸支部。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】