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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189095
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】誤刺し防止具及び注射器アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61M5/32 510D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097476
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】521254856
【氏名又は名称】幸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】秋田 幸乙
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066FF05
4C066LL28
4C066NN07
(57)【要約】
【課題】針ハブを安全に廃棄するための誤刺し防止具を提供する。
【解決手段】シリンジ205と嵌合した針ハブ203をシリンジから取り外すときに用いられる部材であって、内形狭小部211を除き内形が針ハブの外形217より大きく、内形狭小部を含め内形がシリンジ本体の外形215より大きい中空筒体213を備え、針ハブが装着されていない状態のシリンジの外側に、中空筒体が装着され、中空筒体が装着されたシリンジの前端部219に針ハブが嵌合され、シリンジに嵌合された針ハブがシリンジから取り外されるとき、中空筒体が前側に移動することにより、針を含む針ハブ全体が中空筒体で覆われた状態で、内形狭小部と前記針ハブの外形とが係合し、更に中空筒体が前側に移動することにより、針ハブが、中空筒体で覆われた状態でシリンジから取り外される、誤刺し防止具が提供される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジと嵌合した針ハブを前記シリンジから取り外すときに用いられる部材であって、
内形狭小部を除き内形が前記針ハブの外形より大きく、前記内形狭小部を含め前記内形が前記シリンジの本体の外形より大きい中空筒体を備え、
前記針ハブが装着されていない状態の前記シリンジの外側に、前記中空筒体が装着され、
前記中空筒体が装着された前記シリンジの前端部に前記針ハブが嵌合され、
前記シリンジに嵌合された前記針ハブが前記シリンジから取り外されるとき、
前記中空筒体が前側に移動することにより、針を含む前記針ハブ全体が前記中空筒体で覆われた状態で、前記内形狭小部と前記針ハブの外形とが係合し、
更に前記中空筒体が前側に移動することにより、前記針ハブが、前記中空筒体で覆われた状態で前記シリンジから取り外される、誤刺し防止具。
【請求項2】
前記内形狭小部において、前側から後ろ側にかけてなだらかに狭まる傾斜面を有する、請求項1に記載の誤刺し防止具。
【請求項3】
前記針を含めた前記針ハブの長さより、前記中空筒体の長さが長い、請求項1または2に記載の誤刺し防止具。
【請求項4】
前記中空筒体の後端部に、前記シリンジの後端部に形成されたフランジと係合する係合部を備え、
前記中空筒体の前記係合部が前記シリンジの前記フランジと係合することにより、前記中空筒体の前記シリンジに対する移動が拘束される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の誤刺し防止具。
【請求項5】
前記中空筒体が中空の円筒形状を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の誤刺し防止具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の誤刺し防止具と、前記シリンジと前記針ハブを備える、注射器アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針の誤刺し防止具及びそれを用いた注射器アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
注射器アセンブリにおいて、薬液を注射後に注射針はシリンジ側に残る。この注射針を廃棄する際、医療従事者に誤って針を刺してしまう虞があった。このため医療従事者が注射針に残った患者の体液または血液に触れてしまい、病気に感染してしまう虞があった。また、注射針に残った薬液を意図せず人に触れさせてしまう虞があり、危険な薬液を含む場合には、注射針の廃棄に注意を要した。このように従来、注射器アセンブリにおいて、薬液を注射後、注射針を安全に廃棄することが課題となっていた。
【0003】
そこで、特許文献1は、注射器の針を被覆するための保護カバーを備え、注射器の使用前及び使用後には、注射器の先端を保護カバーの開放端から保護カバー内に挿入することによって針を保護カバーで被覆し、注射器の使用時には保護カバーを注射器内にさらに押し入れて、貫通孔から針を露出させる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-149513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法では、注射器を廃棄する際に、針ハブ及びシリンジを含む注射器が保護カバーと一体に捨てられるため、廃棄物の嵩が大きくなってしまっていた。針ハブとシリンジを分離することができれば、廃棄物を小さくし、安全面も確保されやすくなる。またゴミの分別にもよい。
【0006】
そこで本発明は、針ハブとシリンジを分離して、針を保護して廃棄する誤刺し防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の誤刺し防止具は、
シリンジと嵌合した針ハブを前記シリンジから取り外すときに用いられる部材であって、
内形狭小部を除き内形が前記針ハブの外形より大きく、前記内形狭小部を含め前記内形が前記シリンジの本体の外形より大きい中空筒体を備え、
前記針ハブが装着されていない状態の前記シリンジの外側に、前記中空筒体が装着され、
前記中空筒体が装着された前記シリンジの前端部に前記針ハブが嵌合され、
前記シリンジに嵌合された前記針ハブが前記シリンジから取り外されるとき、
前記中空筒体が前側に移動することにより、針を含む前記針ハブ全体が前記中空筒体で覆われた状態で、前記内形狭小部と前記針ハブの外形とが係合し、
更に前記中空筒体が前側に移動することにより、前記針ハブが、前記中空筒体で覆われた状態で前記シリンジから取り外される、誤刺し防止具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、針ハブとシリンジを分離して、針先を保護して廃棄する誤刺し防止具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施の形態に係る注射器アセンブリの(a)概略図及び(b)図1(a)のA-A概略断面図である。
図2】本発明の1つの実施の形態に係る図1(b)のBの針ハブと、シリンジの先端部の拡大図である。
図3】本発明の1つの実施の形態に係る針ハブとシリンジを嵌合した部位の拡大図であり、針の内径と針の外径と針用孔の径と針用孔の針押さえ部の径と薬液通過孔の径を説明する図である。
図4】本発明の1つの実施の形態に係る(a)誤刺し防止具を付けた注射器アセンブリの概略図と(b)図4(a)のC-C概略断面図である。
図5】本発明の1つの実施の形態に係る(a)誤刺し防止具を針ハブに係合させた注射器アセンブリの概略図と(b)図5(a)のD-D概略断面図である。
図6】本発明の1つの実施の形態に係る(a)誤刺し防止具によりシリンジから針ハブを外した概略図と(b)図6(a)のE-E概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための様々な実施の形態を、図面を参照して説明する。なお以下に説明する注射器アセンブリは、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下のものに限定しない。要点の説明または理解の容易性を考慮して、図1乃至3及び図4乃至6で便宜上符号を同一にして示す。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0011】
(第1の注射器アセンブリ)
図1は、本発明の1つの実施の形態に係る注射器アセンブリの(a)概略図及び(b)図1(a)のA-A概略断面図である。図2は、本発明の1つの実施の形態に係る図1(b)のBの針ハブと、シリンジの先端部の拡大図である。図3は、本発明の1つの実施の形態に係る針ハブとシリンジを嵌合した部位の拡大図であり、針の内径と針の外径と針用孔の径と針用孔の針押さえ部の径と薬液通過孔の径を説明する図である。図1乃至図3を参照して、本発明の注射器アセンブリを説明する。
【0012】
本明細書において、注射器の針側、すなわち薬液が出る側を前側とし、プランジャが挿入され、薬液が補充される側を後ろ側として定義して記載する。図1(a)、(b)に示すように、本発明の第1の注射器アセンブリ101は、針109を備え、シリンジ105の前端部に嵌合される針ハブ103と、薬液貯留空間117を備えるシリンジ105と、薬液をシリンジの後ろ側115から押し出すプランジャ107を備える。
【0013】
図2に示すように、シリンジ105は、前端部に略筒状または略錐台状の嵌合部113を備える。嵌合部113は、後に記載する針ハブ103の凹部111と嵌合する部分である。嵌合部113は、凹部111と一致する形状であれば、円筒状、多角形の筒状でもよい。また、嵌合部113は、円錐台状、多角錐台状であってもよい。嵌合部113が前端部に向けて先細りする錐台状であれば、針ハブ103を嵌合させ、外しやすいため好ましい。特に嵌合部113が円錐台状であれば、嵌合するときに方向性がなく、任意の方向から固定できるため好ましい。
【0014】
嵌合部113は、前後方向に延び略円形の断面形状を有する薬液通過孔123が設けられる。薬液通過孔123は、薬液貯留空間117と流体連通し、プランジャ107が前方向に押し込まれたとき、薬液を通す。後述するように薬液通過孔123の円断面を有し、その径Φ5は、針の内径Φ1と等しいまたはそれより少し大きく、針の外径Φ2より小さい。
【0015】
図2に示すように、針ハブ103は、後端部にシリンジ105の嵌合部113と嵌合する凹部111が形成される。凹部111の形状は、嵌合部113の形状と一致する形状にされることが好ましい。このようにすることで、針ハブ103とシリンジ105の間の摩擦を増やし、針ハブ103とシリンジ105を固定することができる。
【0016】
図3に示すように、針ハブ103は、凹部111より前側に針109が装着される針用孔137が設けられる。針用孔137は、円断面を有する。針用孔137の径Φ3は、針の外径Φ2と等しいまたは針用孔137と針109の間に接着剤を挟むため、針用孔137の径Φ3は針109の外径Φ2より少し大きい。針用孔137の後端に、針用孔137の径Φ3が小さくなっている針用孔の針押さえ部139を備える。針109は、針用孔137に挿入され、針109の後端が針用孔の針押さえ部139の前端に当接して長さ方向に対して位置決めされる。針用孔の針押さえ部139の長さは、針用孔137に挿入される針109の長さに比べて短く、0.3mmから1mmである。針用孔の針押さえ部139の径Φ4は、針の内径Φ1より大きく、針の外径Φ2より小さい。また針用孔の針押さえ部139の径Φ4は、薬液通過孔123の径Φ5より大きい。針109の内径Φ1、針109の外径Φ2、針用孔137の径Φ3、針用孔の針押さえ部139の径Φ4、薬液通過孔の径Φ5の関係は、以下のように表される。
Φ1≦Φ5<Φ4<Φ2≦Φ3
このようにすることで、針ハブ103がシリンジ105に固定され、薬液を通過させるために針109が薬液通過孔123と連通したとき、針109と薬液通過孔123の中心軸が少しずれてもスムーズに薬液が流れるようになる。針109と薬液通過孔123の中心軸のずれが薬液注入に問題がない場合は、針用孔の針押さえ部139がなく、針109と薬液通過孔123が直接連通しても良い。
【0017】
図3に示すように、嵌合部113が凹部111と嵌合したとき、嵌合部の前面121が凹部の底面119と接触する。このようにすることで薬液のデッドスペースがなくなり、薬液損失がなくなる。また、針109の中心軸が薬液通過孔123の中心軸と略一致する。したがって、針109が薬液通過孔123と流体連通し、薬液が、薬液貯留空間117から薬液通過孔123を通って針109に流れる。
【0018】
図2に示すように、嵌合部113の根元部に全周に渡る凹形状127が形成されてもよい。また、凹部111の開口部に全周に渡る凸形状125が形成されてもよい。図3に示すように、この凸形状125が凹形状127と係合して、嵌合部113と凹部111の嵌合状態を維持する。ここでは、嵌合部113の全周に凹形状127が形成され、凹部111の全周に凸形状125が形成されたが、嵌合部113に凹形状、凹部111に凸形状が形成され、凹形状と凸形状が係合して、嵌合部113と凹部111の嵌合状態を維持してもよい。また、嵌合部113の根元部と凹部111の開口部に凹形状と凸形状が設けられたが、嵌合部113の先端部と凹部111の奥部に凹形状と凸形状が設けられても良く、また嵌合部113の先端部と根元部の間の中間部、凹部111の奥部と開口部の間の中間部に凹形状と凸形状が設けられてもよい。いずれにせよ、嵌合部113が凹部111と嵌合したとき、嵌合部113の前面121が凹部111の底面と接触するように互いに係合する凹形状と凸形状の位置を決める。
【0019】
図2に示すように、嵌合部113の前面121の平面視における略中心位置に窪部131が形成されてもよい。また、凹部111の底面119に突起部129が形成されてもよい。図3に示すように、嵌合時に突起部129が窪部131と係合して、針109の中心軸及び薬液通過孔123の中心軸の位置決めが行われる。このようにすることで、針109と薬液通過孔123を流体連通し、薬液が、薬液貯留空間117から薬液通過孔123を通って針109に流れることができる。ここでは、嵌合部113に窪部131が形成され、凹部111に突起部129が形成されたが、嵌合部113に突起部が形成され、凹部111に窪部が形成され、突起部が窪部と係合して、針109の中心軸及び薬液通過孔123の中心軸の位置決めが行われてもよい。
【0020】
図2に示すように、嵌合部113が、5%以上7%以下の傾斜率の側面135を有する円錐台形状を有することが好ましく、嵌合部の側面135は、6%の傾斜率を有することがさらに好ましい。また、対応する凹部111の内面も開口部から底面119にかけて5%以上7%以下の傾斜率で狭まった側面133の形状を有することが好ましく、凹部の側面133は、6%の傾斜率を有することがさらに好ましい。また、図2に示すように嵌合部の長さ及び薬液通過孔の長さLは、6.0mmから8.0mmであり、好ましくは、7.0mmより大きく8.0mm以下であり、嵌合部113の前面121の半径は、4.40mmから4.44mmであり、凹部111の底面119は、嵌合部113の前面121に対応する大きさであることが好ましい。デッドスペースを小さくするために薬液通過孔の長さLを短くすることが好ましいが、嵌合部による十分な嵌合強度を有する長さを必要とする。このような形状と大きさにすることで、針ハブ103をシリンジ105に組み立て易く、注射するときに針ハブ103がシリンジ105から外れることがないように固定できる。
【0021】
針109の内径Φ1は、0.09mmから0.32mmであることが好ましい。針109の外径Φ2は、0.214mmから0.64mmであることが好ましい。前述したように薬液通過孔123の内径Φ5は、針109の内径Φ1と同じかそれより少し大きく、針の外径Φ2より小さい。したがって、薬液通過孔123の内径Φ5は、0.1mmから0.5mm、または0.1mmから0.2mm、または0.3mmから0.5mmであることが好ましい。薬液通過孔123の内径Φ5を針109の内径Φ1と同じかそれより少し大きいものとすることでまた、デッドスペースを小さくし、薬液損失を減らすことができる。また、針109の長さを薬液通過孔123の長さに比べて十分に大きなものとする。針109の長さは例えば、2.5cmから6cmである。薬液通過孔123の内径Φ5を針109の内径Φ1と等しくしても、針109の長さ3cmから6cmに対して薬液通過孔123の長さ6.0mmから6.2mmが増えた分のみ押し込み圧力が増加するだけであるから、プランジャをそれほど圧力増加なく押し込むことができる。
【0022】
針ハブ103は、ポリカーボネートまたはポリプロピレンから形成され、シリンジ105は、ポリプロピレンから形成されることが好ましい。針ハブ103をポリカーボネートまたはポリプロピレンで作製することで、針ハブ103とシリンジ105を嵌合するときに、組み立て易く注射するときに針ハブ103がシリンジ105から外れることがない摩擦力を得ることができる。また、シリンジ105をポリプロピレンから作製することで所望の径の針用孔と薬液通過孔123を作製することができる。
【0023】
本発明の注射器アセンブリは、薬液の残留するデッドスペースが減少し、組み立てが容易である。
【0024】
(誤刺し防止具を備える第2の注射器アセンブリ)
図4は、本発明の1つの実施の形態に係る(a)誤刺し防止具を付けた注射器アセンブリの概略図と(b)図4(a)のC-C概略断面図である。図5は、本発明の1つの実施の形態に係る(a)誤刺し防止具を針ハブに係合させた注射器アセンブリの概略図と(b)図5(a)のD-D概略断面図である。図6は、本発明の1つの実施の形態に係る(a)誤刺し防止具によりシリンジから針ハブを外した概略図と(b)図6(a)のE-E概略断面図である。図4乃至図6を参照して、本発明の1つの実施の形態である誤刺し防止具を備える第2の注射器アセンブリ201を説明する。
【0025】
図4(a)に示すように、誤刺し防止具を備える第2の注射器アセンブリ201は、上記で説明した第1の注射器アセンブリ101と同様の針ハブ203と、シリンジ205とプランジャ207を備え、さらに、誤刺し防止具209を備える。本発明の誤刺し防止具209は、シリンジ205と嵌合した針ハブ203をシリンジ205から取り外すときに用いられる部材である。ただし、第2の注射器アセンブリ201は、上記デッドスペースが減少した注射器以外の注射器でもよい。
【0026】
図4(b)に示すように、誤刺し防止具209は、内形狭小部211を除き内形が針ハブの外形217より大きく、内形狭小部211を含め内形がシリンジ本体の外形215より大きい中空筒体213を備える。すなわち誤刺し防止具209は、図4(b)に示すように、シリンジ205が円筒体であれば、その円筒体の外径より内径狭小部を含め大きな内径を有する中空円筒体であることが好ましい。シリンジ205が三角柱や四角柱、楕円筒体などであれば、中空筒体213はそれと対応する三角柱や四角柱、楕円筒体などの内形を有することができる。シリンジ205が後端から前端にかけて先細りする外形を有する場合も、同様に中空筒体213は、シリンジ本体の外形215より大きい内形でシリンジ205を覆う形状である。
【0027】
針ハブの外形217は、内形狭小部211よりも大きい。図4(b)に示すようにその1つの形態は、円周方向にシリンジ205の外形より大きい部分を備えるシリンジ205の断面円周方向に突き出るフランジである。フランジは、断面形状が、多角形でも楕円形でも円形でもよい。フランジの断面形状は、内形狭小部211の断面形状に一致する断面形状であることが好ましい。1つの実施の形態では、フランジの断面形状は円形であり、内形狭小部211の断面形状は円形である。針ハブの外形217は、これに限らず様々な形態を取ることができる。
【0028】
本発明の誤刺し防止具209は、針ハブ203が装着されていない状態のシリンジ205の外側に、中空筒体213が装着される。中空筒体213が装着されたシリンジの前端部219に針ハブ203が嵌合され第2の注射器アセンブリ201が組み立てられる。注射をした後、針ハブ203を廃棄するために、シリンジ205に嵌合された針ハブ203がシリンジから取り外されるとき、図5(a)に示されるように、誤刺し防止具209が、シリンジの前端部にスライドされる。図5(b)に示すように、中空筒体213が前側に移動することにより、針221を含む針ハブ203全体が中空筒体213で覆われた状態で、内形狭小部211と針ハブの外形217とが係合する。図6(a)、(b)に示されるように、更に中空筒体213が前側に移動することにより、針ハブ203が、中空筒体213で覆われた状態でシリンジ205から取り外される。
【0029】
内形狭小部211は、前側から後ろ側にかけてなだらかに狭まる傾斜面を有する。図4(b)に示すように、内形狭小部211は、誤刺し防止具209の前後いずれの位置でも設けることができるが、誤刺し防止具209の後端にあることが好ましい。このようにすると針ハブ203を含めた針221全体が誤刺し防止具209の中に収まりやすい。
【0030】
図6(b)に示すように、中空筒体213の長さが、針221を含めた針ハブ203の長さより長いことで、中空筒体213に針221全体を収めることができる。針221全体が誤刺し防止具209に覆われるので、針ハブ203を外す際、医療従事者が誤って針に刺される心配がない。また、図6(b)に示すように、針ハブ203が誤刺し防止具209に係合して固定される。したがって、針221及び針ハブ203を誤刺し防止具209ごと廃棄しても、医療従事者が誤って針に刺される心配がなく、医療従事者が針及び針ハブに残った患者の体液または血液に触れる心配もない。
【0031】
また、図4(b)に示すように、中空筒体213の後端部は、シリンジ205の後端部に形成されたフランジ227と係合する係合部223を備えることが好ましい。中空筒体213の係合部223がシリンジ205のフランジ227と係合することにより、中空筒体213のシリンジ205に対する移動が拘束される。このようにすることで、注射の間、中空筒体213がシリンジ205から動かないので、注射の操作が容易になる。
【0032】
図6(b)に示すように、シリンジの前端部219の根元部に全周に渡る凹形状231が形成される。また、凹部225の開口部に全周に渡る凸形状229が形成されることが好ましい。このようにすることで、針ハブ203とシリンジ205の嵌合を強固にし、注射の間外れないようにすることができる。一方で、注射後に、本発明の誤刺し防止具209を用いて、針ハブ203とシリンジ205を容易に外すことができる。
【0033】
本発明により、針ハブとシリンジを分離して、針を保護して廃棄する誤刺し防止具が提供される。
【0034】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により提供された注射器アセンブリを用いて、薬液損失の少ない注射をすることができる。また、本発明により提供された誤刺し防止具を用いて、安全に針ハブを廃棄することができる。
【符号の説明】
【0036】
101 第1の注射器アセンブリ
103 針ハブ
105 シリンジ
107 プランジャ
109 針
111 凹部
113 嵌合部
115 シリンジの後ろ側
117 薬液貯留空間
119 凹部の底面
121 嵌合部の前面
123 薬液通過孔
125 凸形状
127 凹形状
129 突起部
131 窪部
133 凹部の側面
135 嵌合部の側面
137 針用孔
201 第2の注射器アセンブリ
203 針ハブ
205 シリンジ
207 プランジャ
209 誤刺し防止具
211 内形狭小部
213 中空筒体
215 シリンジ本体の外形
217 針ハブの外形
219 シリンジの前端部
221 針
223 係合部
225 凹部
227 フランジ
229 凸形状
231 凹形状
図1
図2
図3
図4
図5
図6