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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189111
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20221215BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097499
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠登
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC02
(57)【要約】
【課題】車両用シートのシート周辺におけるスペースの圧迫を抑制しつつ、自動運転モード時には、車両用シートに着座している乗員の腕を休ませられる車両を得る。
【解決手段】シートクッション22に着座した乗員Pの背部を支持するシートバック24を有する車両用シート20と、シートバック24のシート幅方向外側端部に埋設され、膨張することでシート前方側へ突出し、収縮することで元の状態に復帰する膨張収縮部材30と、少なくともステアリングホイール18から手を離すことが可能な自動運転モードでの走行を制御する自動運転制御装置と、自動運転モード時に膨張収縮部材30を膨張させるように制御する制御装置と、を備えた車両10であって、膨張収縮部材30は、膨張時に乗員Pの腕Paを支持可能なアームレスト26を構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに着座した乗員の背部を支持するシートバックを有する車両用シートと、
前記シートバックのシート幅方向外側端部に埋設され、膨張することでシート前方側へ突出し、収縮することで元の状態に復帰する膨張収縮部材と、
少なくともステアリングホイールから手を離すことが可能な自動運転モードでの走行を制御する自動運転制御装置と、
前記自動運転モード時に前記膨張収縮部材を膨張させるように制御する制御装置と、
を備え、
前記膨張収縮部材は、膨張時に前記乗員の腕を支持可能なアームレストを構成する車両。
【請求項2】
前記シートバックのシート幅方向外側端部は、少なくともシート前方側へ伸長可能な表皮で覆われている請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記膨張収縮部材は、シート前方側への突出量が調整可能に構成されている請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記膨張収縮部材は、空気の供給により膨張し、空気の排出により収縮する空気袋で構成されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記空気袋は、シート前方側へ行くに従って外形が小さくなる形状に形成されている請求項4に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転モードで走行できる車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転の度合いに応じて、車両用シートの位置及び角度を変更することなく、アームレストの長さを伸縮させたり、前傾させたりして、車両用シートに着座している乗員が腕を休ませられるようにした車両制御システムは、従来に提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-117218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成であると、車両用シートには、常にアームレストが必要となり、アームレストの長さを伸縮及び前傾させる機構が必要となる。つまり、このような構成では、車両用シートのシート周辺のスペースが圧迫され、かつ製造コストも増加してしまう。このように、車両用シートのシート周辺におけるスペースの圧迫を抑制しつつ、自動運転モード時には、車両用シートに着座している乗員の腕を休ませることができる構造には、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、車両用シートのシート周辺におけるスペースの圧迫を抑制しつつ、自動運転モード時には、車両用シートに着座している乗員の腕を休ませられる車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両は、シートクッションに着座した乗員の背部を支持するシートバックを有する車両用シートと、前記シートバックのシート幅方向外側端部に埋設され、膨張することでシート前方側へ突出し、収縮することで元の状態に復帰する膨張収縮部材と、少なくともステアリングホイールから手を離すことが可能な自動運転モードでの走行を制御する自動運転制御装置と、前記自動運転モード時に前記膨張収縮部材を膨張させるように制御する制御装置と、を備え、前記膨張収縮部材は、膨張時に前記乗員の腕を支持可能なアームレストを構成する。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、車両用シートのシートバックのシート幅方向外側端部に、膨張することでシート前方側へ突出し、収縮することで元の状態に復帰する膨張収縮部材が埋設されている。そして、この膨張収縮部材は、少なくともステアリングホイールから手を離すことが可能な自動運転モード時において、制御装置の制御により、シート前方側へ膨張して突出し、乗員の腕を支持可能なアームレストを構成する。したがって、自動運転モード時において、車両用シートに着座している乗員が腕を休ませられる。また、この膨張収縮部材は、手動運転モード時には、制御装置の制御により、収縮して元の状態に復帰しているため、車両用シートのシート周辺におけるスペースの圧迫が抑制される。
【0008】
また、請求項2に記載の車両は、請求項1に記載の車両であって、前記シートバックのシート幅方向外側端部は、少なくともシート前方側へ伸長可能な表皮で覆われている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、シートバックのシート幅方向外側端部が、少なくともシート前方側へ伸長可能な表皮で覆われている。したがって、膨張収縮部材の膨張を表皮が妨げることがない。
【0010】
また、請求項3に記載の車両は、請求項1又は請求項2に記載の車両であって、前記膨張収縮部材は、シート前方側への突出量が調整可能に構成されている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、膨張収縮部材のシート前方側への突出量が調整可能に構成されている。したがって、膨張収縮部材は、その突出量が所定位置以上のときには、乗員の腕を支持可能なアームレストを構成するが、所定位置未満のときには、サイドサポートとして機能させられる。よって、手動運転モード時において、突出量が所定位置未満とされている膨張収縮部材が邪魔になることが抑制される。
【0012】
また、請求項4に記載の車両は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両であって、前記膨張収縮部材は、空気の供給により膨張し、空気の排出により収縮する空気袋で構成されている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、膨張収縮部材が、空気の供給により膨張し、空気の排出により収縮する空気袋で構成されている。したがって、膨張収縮部材は、簡易な構成で、速やかに膨張させることが可能となり、速やかに収縮させることが可能となる。
【0014】
また、請求項5に記載の車両は、請求項4に記載の車両であって、前記空気袋は、シート前方側へ行くに従って外形が小さくなる形状に形成されている。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、空気袋が、シート前方側へ行くに従って外形が小さくなる形状に形成されている。つまり、この空気袋は、収縮時には、外形が小さい側が、外形の大きい側の内側に配置される構成になっている。したがって、この空気袋は、外形が一定のままシート前方側へ突出する空気袋の場合に比べて、収縮時における厚みが低減される。よって、膨張収縮部材は、シートバックのシート幅方向外側端部にコンパクトに収納される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、車両用シートのシート周辺におけるスペースの圧迫を抑制しつつ、自動運転モード時には、車両用シートに着座している乗員の腕を休ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る車両に備えられた車両用シートを示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る車両用シートのシートバックに設けられた空気袋の展開前を示す側断面図である。
図3】本実施形態に係る車両用シートのシートバックに設けられた空気袋の展開前を示す平断面図である。
図4】本実施形態に係る車両用シートのシートバックに設けられた空気袋の展開後を示す側断面図である。
図5】本実施形態に係る車両用シートのシートバックに設けられた空気袋の展開後を示す平断面図である。
図6】本実施形態に係る車両用シートに設けられた空気袋駆動装置を示すブロック図である。
図7】本実施形態に係る車両を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両用シート20の上方向、矢印FRを車両用シート20の前方向、矢印LHを車両用シート20の左方向、矢印RHを車両用シート20の右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両用シート20における上下方向の上下、前後方向の前後、左右方向(シート幅方向)の左右を示すものとする。
【0019】
また、本実施形態に係る車両用シート20において、乗員P(図2図4参照)を支持する(乗員Pが着座する)面を「表面」とし、その表面とは表裏反対側となる面を「裏面」とする。したがって、車両用シート20に設けられる後述する空気袋30などにおいても、乗員Pが着座する面側を「表面」側とし、その表面側とは表裏反対側となる面側を「裏面」側とする。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両10(図7参照)に備えられた車両用シート20は、着座した乗員Pの臀部及び大腿部を支持するシートクッション22と、シートクッション22の後端部から上方向に延在するように設けられて乗員Pの腰部及び背部を支持するシートバック24と、を有している。そして、シートバック24の上端部には、乗員Pの頭部を支持するヘッドレスト28が設けられている。
【0021】
また、図1図2に示されるように、シートバック24のシート幅方向外側両端部には、乗員Pの左方向及び右方向への位置ずれを規制する(乗員Pの両サイドを保持する)サイドサポート25が一体に形成されている。すなわち、図3に示されるように、シートバック24の左右両端部は、平面視で略直角三角形状を成すように前方側へ僅かに張り出しており、その張り出した部分が、サイドサポート25となっている。
【0022】
また、図3に示されるように、シートバック24は、クッション体からなるシートパッド24Aと、そのシートパッド24Aを覆う表皮24Bと、を含んで構成されている。シートパッド24Aは、例えば発泡ウレタンフォームなどの発泡樹脂材料で構成されている。そして、図5に示されるように、少なくともシートバック24のサイドサポート25を覆っている表面側の表皮24Bは、後述する空気袋30の膨張(突出)に伴って前方側へ伸長可能(伸長自在)に構成されている。
【0023】
具体的には、シートバック24のサイドサポート25以外を覆っている表面側の表皮24Bは、例えば革等で構成され、そのサイドサポート25を覆っている表面側の表皮24Bは、例えば伸縮性を有するニット等で構成されている。なお、表皮24Bは、車両用シート20の意匠面を構成するものである。
【0024】
また、図1図5に示されるように、シートバック24の各サイドサポート25の内部における所定高さ位置には、前方側へ向かって膨張(突出)したときに、乗員Pの腕Paを載せられる(休ませられる)アームレスト26(図4図5参照)として機能する膨張収縮部材としての空気袋30が設けられている。
【0025】
換言すれば、空気袋30は、シートバック24の各サイドサポート25の適宜位置、即ち前方側へ突出(膨張)したときに、アームレスト26として使用できる位置に埋設されている。なお、図1図2図3では突出していない状態の空気袋30が示されており、図4図5では突出している状態(アームレスト26として使用可能な状態)の空気袋30が示されている。
【0026】
シートバック24の各サイドサポート25の内部に設けられた各空気袋30は、空気が供給されることで膨張し、空気が排出されることで収縮するようになっている。そして、各空気袋30は、それぞれ前方向から見た正面視で、例えば上下方向が長手方向とされた略楕円形状に形成され、かつ車幅方向から見た側面視で、前方側へ行くに従って外形が小さくなる錐台形状に形成されている(図1図4参照)。
【0027】
具体的に説明すると、各空気袋30は、ポリウレタンなどの樹脂材料やゴム材料等の伸縮可能な材料で蛇腹状に形成されており、図5に示されるように、前方側への突出方向上流側から下流側に向けて外形が段階的に小さくなるように複数(例えば5つ)の袋部で構成されている。すなわち、各空気袋30は、突出方向上流側から順に、第1袋部31と第2袋部33と第3袋部35と第4袋部37と第5袋部39とを有している。
【0028】
そして、第1袋部31と第2袋部33と第3袋部35と第4袋部37と第5袋部39とは、それぞれの内部に空気が流通可能となるように、互いに対向する開口縁部が縫製等によって結合されて構成されている。すなわち、第1袋部31の表面中央部分には開口縁部32が形成されており、その開口縁部32が、第2袋部33の裏面中央部分に形成されている開口縁部33Aに結合されている。
【0029】
同様に、第2袋部33の表面中央部分に形成されている開口縁部34が、第3袋部35の裏面中央部分に形成されている開口縁部35Aに結合され、第3袋部35の表面中央部分に形成されている開口縁部36が、第4袋部37の裏面中央部分に形成されている開口縁部37Aに結合されている。そして、第5袋部39の裏面中央部分には開口縁部39Aが形成されており、その開口縁部39Aが、第4袋部37の表面中央部分に形成されている開口縁部38に結合されている。
【0030】
また、図2図3に示されるように、各空気袋30は、収縮時には、外形が小さい側が、外形の大きい側の内側に配置される構成になっている。具体的に説明すると、収縮時には、第5袋部39が第4袋部37の内側に配置され、第4袋部37が第3袋部35の内側に配置され、第3袋部35が第2袋部33の内側に配置され、第2袋部33が第1袋部31の内側に配置されるようになっている。
【0031】
ここで、各袋部の外形が同一とされている空気袋(図示省略)の場合、収縮時における各袋部の外周部(折り重なっている部分)は、同じ位置で積み重ねられるため、その外周部の厚みが低減されない。しかしながら、本実施形態に係る空気袋30は、収縮時における各袋部の外周部が内側に順にずれて積み重ねられるため、第5袋部39から第2袋部39までの外周部の厚みが、第4袋部37から第1袋部31までの外周部を除く部分によって吸収されて低減される。このように、本実施形態に係る空気袋30は、収縮時の厚みが、各袋部の外形が同一とされている空気袋に比べて低減される構成になっている。
【0032】
また、シートバック24の各サイドサポート25の内部に設けられた各空気袋30は、その裏面が、各サイドサポート25を構成する各シートパッド24Aの表面に両面テープ又は接着剤等によって固定されることで、シートパッド24Aと表皮24Bとの間に設けられている。つまり、各空気袋30は、第1袋部31の裏面がシートパッド24Aの表面に固定され、第5袋部39の表面が表皮24Bの裏面に接触した状態で配置されている。なお、第1袋部31の裏面中央部分には、後述する供給チューブ48の他端部が接続されている。
【0033】
また、図6に示されるように、各空気袋30は、空気袋駆動装置40によって空気が供給及び排出されるように構成されている。なお、本実施形態における空気袋駆動装置40(後述する給排気装置50及び後述する制御装置60)は、シートバック24の内部に設けられている。
【0034】
空気袋駆動装置40は、各空気袋30に接続され、各空気袋30に対して空気の供給及び排出を行い、各空気袋30を膨張及び収縮させる給排気装置50と、給排気装置50を制御する制御装置60と、を含んで構成されている。給排気装置50は、吸気口52、排気口54、空気圧送手段としてのポンプ56及び制御弁としての複数の電磁弁58を含んで構成されている。
【0035】
電磁弁58は、各空気袋30にそれぞれ設けられている。各電磁弁58は、三方弁であり、供給ポート58A、吸気ポート58B及び排気ポート58Cを有している。各供給ポート58Aには供給チューブ48の一端部が接続され、各吸気ポート58Bには吸気チューブ46の一端部が接続されている。そして、各排気ポート58Cには排気チューブ44の一端部が接続されている。
【0036】
各供給チューブ48の他端部は、それぞれ対応する空気袋30(第1袋部31)に接続されており、吸気チューブ46の他端部は、ポンプ56に接続されている。そして、排気チューブ44の他端部は、排気口54に接続されている。また、ポンプ56と吸気口52との間は、吸気配管42によって連通接続されている。なお、吸気チューブ46及び排気チューブ44は、一本のチューブがそれぞれ分岐して各電磁弁58に接続されている。
【0037】
制御装置60は、給排気装置50と電気的に接続されており、ポンプ56の作動や電磁弁58の各ポート(供給ポート58A、吸気ポート58B、排気ポート58C)の開閉を制御するようになっている。
【0038】
また、制御装置60は、車両10に設けられた自動運転制御装置16(図7参照)と電気的に接続されている。自動運転制御装置16は、車両10の自動運転モードでの走行を制御するように構成されており、車両10は、手動運転モードから自動運転モードへ、自動運転モードから手動運転モードへ切り替えられるように構成されている。
【0039】
すなわち、この車両10は、自動運転制御装置16をONにすることにより、手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられ、自動運転制御装置16をOFFにすることにより、自動運転モードから手動運転モードへ切り替えられるようになっている。
【0040】
そして、自動運転制御装置16をONにすることにより、車両10が手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられると、自動運転制御装置16から制御装置60へ信号が送られて、その制御装置60が作動し、各空気袋30に空気を供給して、各空気袋30を膨張させる(前方側へ突出させる)ようになっている。
【0041】
具体的には、制御装置60の制御により、電磁弁58の供給ポート58Aと吸気ポート58Bとが開き、かつ排気ポート58Cが閉じて、供給チューブ48と吸気チューブ46とが連通された供給可能状態となると、ポンプ56から各空気袋30内へ空気が供給されて、図4図5に示されるように、各空気袋30が膨張する(前方側へ突出する)ようになっている。
【0042】
そして、自動運転制御装置16をOFFにすることにより、車両10が自動運転モードから手動運転モードへ切り替えられると、自動運転制御装置16から制御装置60へ信号が送られて、その制御装置60が作動し、各空気袋30から空気が排出されて、各空気袋30が収縮するようになっている。
【0043】
具体的には、制御装置60の制御により、電磁弁58の供給ポート58Aと排気ポート58Cとが開き、かつ吸気ポート58Bが閉じて、供給チューブ48と排気チューブ44とが連通された排出可能状態となると、各空気袋30内から空気が排出されて、図2図3に示されるように、各空気袋30が収縮するようになっている。
【0044】
なお、制御装置60は、各電磁弁58の各ポート(供給ポート58A、吸気ポート58B、排気ポート58C)の開閉を個別に制御可能に構成されていてもよい。その場合は、例えば制御装置60と、車両用シート20に着座した乗員Pが操作可能なように車室に設けられた操作部(図示省略)と、を電気的に接続すればよい。
【0045】
これによれば、膨張及び収縮させる空気袋30が左右両方なのか、左右何れか一方なのかを乗員Pが選択可能になり、例えばシートバック24の左右何れか一方のみにアームレスト26を形成することができる。なお、自動運転モード時に限らず、例えば車両10の駐車時に車内で休憩するときなど、乗員Pが操作部を操作することにより、各空気袋30を手動で膨張させられるように(アームレスト26を形成できるように)構成してもよい。
【0046】
また、図7に示されるように、自動運転制御装置16は、車両10に設けられた周辺情報検出装置14等と電気的に接続されている。周辺情報検出装置14は、例えばフロントウインドシールドガラス12の車幅方向中央部における上端部と対向するように、車室の天井に設けられている。
【0047】
自動運転制御装置16は、周辺情報検出装置14等によって検出された検出結果に基づいて、車両10を自動運転するようになっている(車両10の自動運転モードを制御するようになっている)。つまり、本実施形態における「自動運転モード」とは、周辺情報検出装置14によって検出された周辺情報等に基づいて、自動運転制御装置16が車両10を運転するモードである。
【0048】
なお、自動運転モードには、運転支援モードから完全な自動運転モードまで複数のモードがあるが、本実施形態に係る車両10は、少なくともステアリングホイール18(図2図4参照)から手を離すことが可能な自動運転モードを備えている。また、本実施形態における「手動運転モード」とは、乗員Pが自らステアリングホイール18等を操作して車両10を運転するモードである。
【0049】
以上のような構成とされた本実施形態に係る車両10において、次にその作用について説明する。
【0050】
車両10が手動運転モードのとき(自動運転制御装置16がOFFのとき)には、空気袋30には空気が供給されない。すなわち、シートバック24の左右両側部には、サイドサポート25のみが形成された状態となっている。このサイドサポート25により、車両用シート20に着座した乗員Pの左方向及び右方向への位置ずれが規制される(乗員Pの両サイドが保持される)。
【0051】
自動運転制御装置16がONとされて、車両10が手動運転モードから自動運転モードに切り替わると、自動運転制御装置16から制御装置60へ自動運転モードが開始される信号が送られる。すると、その制御装置60の制御により、ポンプ56が作動するとともに、電磁弁58の排気ポート58Cが閉じ、供給ポート58Aと吸気ポート58Bとが開く。
【0052】
そして、吸気口52から吸気配管42を介して取り込まれた空気が、吸気チューブ46、電磁弁58及び供給チューブ48を介して、各空気袋30に供給され、図4図5に示されるように、各空気袋30が膨張して前方側へ突出するとともに、表皮24Bが前方側へ伸長する。
【0053】
これにより、シートバック24のサイドサポート25部分に、着座した乗員Pの腕Paを支持可能なアームレスト26が形成される(図4参照)。すなわち、車両用シート20に着座している乗員Pは、そのアームレスト26に腕Paを載せることにより、その腕Paを休ませることができる。
【0054】
なお、シートバック24のサイドサポート25を覆う表皮24Bは、前方側へ伸長可能に構成されている。そのため、その表皮24Bが、空気袋30の膨張を妨げることがない。また、膨張収縮部材が、空気の供給により膨張する空気袋30で構成されているため、簡易な構成でありながら、速やかに膨張(突出)させることができる。
【0055】
一方、自動運転制御装置16がOFFとされて、車両10が自動運転モードから手動運転モードに切り替わると、自動運転制御装置16から制御装置60へ手動運転モードが開始される信号が送られる。すると、その制御装置60の制御により、ポンプ56の作動が停止するとともに、電磁弁58の吸気ポート58Bが閉じ、供給ポート58Aと排気ポート58Cとが開く。
【0056】
そして、空気袋30内の空気が、供給チューブ48、電磁弁58及び排気チューブ44を介して、排気口54から排出されて、図2図3に示されるように、各空気袋30が収縮して元の状態に復帰するとともに、表皮24Bが元の状態に復帰する。これにより、シートバック24の左右両側部には、着座した乗員Pの左方向及び右方向への位置ずれを規制するサイドサポート25のみが形成される。
【0057】
したがって、特に手動運転モード時において、従来のようにアームレストが常に存在している構成に比べて、車両用シート20のシート周辺におけるスペースが圧迫されるのを抑制することができる。また、常にアームレストが存在している構成の場合に、そのアームレストの長さや角度を調整する機構等が必要となることがあるが、本実施形態の場合には、そのような機構等が不要となるため、車両用シート20の製造コストが増加するのを抑制することができる。
【0058】
また、膨張収縮部材が、空気の排出により収縮する空気袋30で構成されているため、簡易な構成でありながら、速やかに収縮させることができる。したがって、手動運転モード時において、空気袋30が邪魔になるのを抑制することができる。なお、自動運転モード時から手動運転モード時への切り替え時には、その切り替えと同時又は完全に切り替えられる前に空気袋30から空気が排出されることが好ましい。
【0059】
また、空気袋30は、前方側へ行くに従って外形が小さくなる形状に形成されている。つまり、空気袋30は、収縮時には、外形が小さい側が、外形の大きい側の内側に配置される構成になっている。したがって、例えば各袋部の外形が同一とされて、その外形が一定のまま前方側へ突出する空気袋(図示省略)の場合に比べて、収縮時における空気袋30の厚みを低減させることができる。
【0060】
よって、空気袋30は、シートバック24のサイドサポート25の内部にコンパクトな形状で収納させることができ(前後方向の長さを低減させた省スペースで格納することができ)、手動運転モード時において、車両用シート20のシート周辺におけるスペースが圧迫されるのをより一層抑制することができる。
【0061】
なお、空気袋30は、第1袋部31から第5袋部39へ順に膨らむように構成し、前方側への突出量が調整可能となるように構成してもよい。すなわち、空気袋30を構成する各袋部のうち、膨らませる個数を選択できるように構成してもよい。例えば、自動運転モード時には、第1袋部31から第5袋部39までの全てを膨らませるが、手動運転モード時には、空気袋30へ送る空気量を調整して、第1袋部31及び第2袋部33のみを膨らませるようにしてもよい。
【0062】
このような構成にすると、空気袋30は、その突出量が所定位置(第2袋部33の膨張時の位置)以上のとき(自動運転モード時)には、乗員Pの腕Paを支持可能なアームレスト26として機能させることができ、所定位置(第2袋部33の膨張時の位置)未満のとき(手動運転モード時)には、サイドサポート25として機能させることができる。
【0063】
したがって、特にシートバック24に予めサイドサポート25が形成されていない場合に好適となり、手動運転モード時において、空気袋30が邪魔になるのをより一層抑制することができる。また、空気袋30が、乗員Pの腕Paが当たっても邪魔にならないような柔らかい材料で構成されている場合には、手動運転モード時において、空気袋30が所定位置以上突出していてもよい。
【0064】
以上、本実施形態に係る車両10について図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、膨張収縮部材は、空気袋30に限定されるものではなく、空気以外の気体等で膨張収縮する構成とされていてもよいし、袋体の内部に伸縮機構を有するような構成とされていてもよい。
【0065】
また、空気袋30は、シートバック24の左右何れか一方のサイドサポート25の内部のみに設けられていてもよい。つまり、アームレスト26は、シートバック24の片側のみに形成される構成とされていてもよい。
【0066】
また、電磁弁58は、各空気袋30にそれぞれ設けられる構成としたが、これに限定されるものではなく、1つの電磁弁58に2つの空気袋30が接続される構成とされていてもよい。つまり、アームレスト26は、常に左右一対で形成される構成とされていてもよい。
【0067】
更に、本実施形態では、空気袋駆動装置40をシートバック24の内部に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、車両用シート20の外部(例えばシートバック24の裏面など)に設ける構成としてもよい。また、給排気装置50のポンプ56のみ、或いは制御装置60のみを車両用シート20の外部に設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 車両
16 自動運転制御装置
18 ステアリングホイール
20 車両用シート
22 シートクッション
24 シートバック
24B 表皮
26 アームレスト
30 空気袋(膨張収縮部材)
60 制御装置
P 乗員
Pa 腕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7