IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-真空排気装置 図1
  • 特開-真空排気装置 図2
  • 特開-真空排気装置 図3
  • 特開-真空排気装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189143
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】真空排気装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/08 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
F17C3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097543
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】下垣 貴志
(72)【発明者】
【氏名】柏 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 まり子
(72)【発明者】
【氏名】後神 一藤
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB15
3E172BA06
3E172BB02
3E172BB12
3E172BB17
3E172CA10
3E172DA04
3E172DA12
3E172DA15
3E172KA03
3E172KA11
(57)【要約】
【課題】二重構造の真空断熱管の真空排気に適した、小型で可搬性の高い真空排気装置を提供する。
【解決手段】液化ガスを収容する二重構造の収容器(C)の真空層(7)から真空排気を行う真空排気装置(1)において、前記真空層(7)に接続された真空排気管(15)と、前記真空排気管(15)を介して前記真空層(7)に連通するエジェクタ(17)とを設ける。真空排気装置(1)は、前記真空排気管(15)に接続された不活性ガス供給源(51)を備えていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを収容する二重構造の収容器の真空層から真空排気を行う装置であって、
前記真空層に接続された真空排気管と、
前記真空排気管を介して前記真空層に連通するエジェクタと、
を備える真空排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空排気装置において、さらに、
前記真空排気管に、当該真空排気管と前記エジェクタとの接続部分から分岐して接続された不活性ガス供給源を備える、
真空排気装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空排気装置において、
前記エジェクタと前記真空排気管との間に設けられた逆流防止弁と、
前記エジェクタに駆動流体を供給する流体供給管と、
をさらに備え、
前記真空排気管の少なくとも一部と、前記エジェクタと、前記逆流防止弁と、前記流体供給管とが一体的に形成されている、
真空排気装置。
【請求項4】
液化ガスを収容する二重構造の収容器と、
前記収容器に接続された、請求項1から3のいずれか一項に記載の真空排気装置と、
を備える液化ガス貯留設備。
【請求項5】
請求項4に記載の液化ガス貯留設備において、
前記真空排気装置が危険場所に設置されている、
液化ガス貯留設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガスや液化水素といった液化ガスを、二重構造の真空断熱容器に収容することが提案されている。その一例として、液化ガス運搬船と陸上のタンクとの間で移送するための配管として、二重構造の真空断熱管が用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この断熱管は、内管を、真空層を介して外管が覆う構造を有しているので、高い断熱性が得られ、内管内を流れる低温の液化ガスの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-004382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空断熱管では、構成部品の劣化などの原因により、真空層の真空度が低下するおそれがある。真空度の低下は断熱性の低下につながり、真空断熱管によって移送される液化ガスの気化を引き起こす。真空層の真空度を維持するためには、適時に真空ポンプを使用して排気を行うことが考えられる。しかし、通常、液化ガスの貯留や移送が行われる船舶やプラントにおいては、真空ポンプのような大型の装置を設置する場所を確保することが困難な場合が多い。また、真空排気を行うべき頻度は必ずしも高いわけではない。したがって、従来の一般的な真空ポンプに比べて小型で可搬性の高い真空排気装置が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、二重構造を有する液化ガスの収容器の真空排気に適した、小型で可搬性の高い真空排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る真空排気装置は、
液化ガスを収容する二重構造の収容器の真空層から真空排気を行う装置であって、
前記真空層に接続された真空排気管と、
前記真空排気管を介して前記真空層に連通する吸込口を有するエジェクタと、
を備える。
【0007】
この構成によれば、一般的に小型でかつ構造が簡易なエジェクタによって真空排気を行う。したがって、真空排気装置を、小型でかつ可搬性の高い構成とすることができる。
【0008】
本発明に係る液化ガス貯留設備は、
液化ガスを収容する二重構造の収容器と、
前記収容器に接続された、前記真空排気装置と、
を備える。
【0009】
この構成によれば、上述の小型でかつ可搬性の高い真空排気装置を備えていることにより、断熱性の高い二重構造の真空断熱管の真空層を適時に真空排気できるので、貯留される液化ガスの気化を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、二重構造を有する液化ガスの収容器用の真空排気装置を小型化し、可搬性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る真空排気装置を示す概略構成図である。
図2図1の真空排気装置が適用される液化ガス貯留設備の一例を示す模式図である。
図3図1の真空排気装置に使用されるエジェクタを示す概略構成図である。
図4図1の真空排気装置が適用される二重構造管の構成例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に本発明の一実施形態に係る真空排気装置1を示す。この真空排気装置1は、図2に示す液化ガス貯留設備3に適用される。液化ガス貯留設備3は、液化ガスを収容する収容器Cである、液化ガスを移送するための二重構造管(以下、「配管」という。)5と、図1に示す配管5の真空層7を真空排気する上記真空排気装置1とを備える。
【0013】
本実施形態では、図2に示すように、液化ガス貯留設備3として、主に液化ガス運搬船のような船舶を例として説明する。液化ガス運搬船は、液化ガスを収容する収容器Cである、液化ガス貯留タンク(以下、単に「タンク」と呼ぶ。)9を備えている。もっとも、液化ガス貯留設備3は、液化ガスを貯留する構造、機能を有する設備であれば船舶に限定されず、例えば地上の液化ガス貯蔵設備や、液化ガスを利用するプラントであってよい。
【0014】
なお、本明細書において、「液化ガスを収容する収容器」とは、その内部に液化ガスを存在させることができる空間を有する容器一般を指す。「液化ガスを収容する収容器」は、典型的な例としては上述した液化ガス移送用の配管や、液化ガス貯留用のタンクであるが、その内部に液化ガスを存在させることができる空間を有する容器であればこれらに限定されない。以下の説明では、真空排気装置1を配管5に適用した例について説明するが、真空排気装置1は、配管5以外の真空断熱のための二重構造を有する「液化ガスを収容する収容器」にも適用することができる。
【0015】
配管5は、二重構造を有する真空断熱管として構成されている。すなわち、配管5は、図1に示すように、液化ガスを通過させる内管11と、内管11を覆う外管13とから構成されている。内管11と外管13との間の径方向の隙間に真空層7が形成される。なお、本明細書において、「真空層」とは、二重構造を有する配管5において、通常運用時に真空状態に維持されることが想定されている、内管11と外管13との間の筒状空間のことを指し、運用状況等により真空ではない状態であっても、「真空層7」と呼ぶ。
【0016】
図2に示すタンク9に貯留され、配管5によって移送される液化ガスは、例えば、液化石油ガス(LPG、約-45℃)、液化エチレンガス(LEG、約-100℃)、液化天然ガス(LNG、約-160℃)、液化水素(LH2、約-250℃)、液化ヘリウム(LHe、約-270℃)である。本実施形態では、タンク9に液化水素が貯留され、この液化水素が配管5を介して移送される。
【0017】
本実施形態では、タンク9は、内槽および外槽を有する二重構造のタンクとして構成されている。例えば、内槽と外槽との間に真空断熱のための真空層が形成されている。もっとも、タンク9の構成はこの例に限定されない。例えば、タンク9は、真空断熱層に粒状の断熱材であるパーライトなどの粉末断熱材が充填されたものであってもよい。また、タンク9は、断熱材で覆われた一重殻タンク9であってもよい。この場合の断熱材は、例えば、複数の真空断熱パネルで構成されてもよいし、複数の発泡パネルで構成されてもよい。
【0018】
図1に示す本実施形態に係る真空排気装置1は、上述の構造を有する配管5に接続されて、真空層7から真空排気を行う。真空排気装置1は、配管5の真空層7に接続された真空排気管15と、真空排気管15に接続されたエジェクタ17とを備えている。エジェクタ17は、その吸込口19が、真空排気管15を介して真空層7に連通している。
【0019】
図3に示すように、エジェクタ17は、ノズル部21と、ノズル部21の下流側に、ノズル部21と同心に配置されたディフューザ部23と、ノズル部21とディフューザ部23とを接続する本体部25とを備えている。本体部25には、ノズル部21およびディフューザ部23の軸心にほぼ直交する方向に開口する吸込口19が設けられている。ノズル部21の流体入口27から駆動流体Fが供給され、ノズル部21の先端から高速で流出する駆動流体Fによって生じる負圧によって、吸込口19から気体Gが吸い込まれる。吸い込まれた気体Gは、駆動流体Fと共にディフューザ部23の吐出口29から外部へ吐出される。
【0020】
この例では、図1に示すように、真空排気管15の途中から分岐して設けられたエジェクタ接続管31にエジェクタ17の吸込口19が接続されている。エジェクタ接続管31には、エジェクタ17側から真空排気管15側への流体の流れを防止する逆流防止弁33が設けられている。エジェクタ17の流体入口27には、エジェクタ17に駆動流体Fを供給する流体供給管35が接続されている。エジェクタ17の吐出口29には、上述の駆動流体Fと気体とを排出する排出管37が接続されている。
【0021】
本実施形態では、真空排気管15は、外管13の外周面に設けられたシールオフ弁39を介して真空層7に接続されている。シールオフ弁39は、外管13内の圧力上昇が生じたときに圧力を外部へ逃す装置として設けられている。この例では、図4に示すように、配管5は、複数の分割管体5aを長さ方向に接続することにより形成されている。各分割管体5aは、その両端に、真空層7を閉塞する隔壁41がそれぞれ設けられている。また、各分割管体5aの内管11の両端部近傍にそれぞれ仕切弁43が設けられている。配管5をこのような構造を有する分割管体5aの組合せによって構成することにより、配管5の設置作業が容易になるとともに、真空層7の真空度の維持および管理が容易となる。
【0022】
図1に示す例では、エジェクタ17として、水を駆動流体Fとする水エジェクタ17を使用している。流体供給管35は、船舶である液化ガス貯留設備3の周辺から海水を取り入れる取水系統45に流体供給弁47を介して接続されている。流体供給弁47を開けることにより、海水が流体供給管35に流入し、この海水を駆動流体Fとしてエジェクタ17が駆動される。もっとも、エジェクタ17の駆動流体Fは海水に限定されず、例えば清水や圧縮空気を駆動流体Fとして利用することができる。流体供給管35におけるエジェクタ17の上流側近傍部分には、圧力計49が設けられている。
【0023】
本実施形態では、真空排気管15の、配管5の反対側の端部に、不活性ガス供給源51が接続されている。不活性ガス供給源51は、真空排気管15に、当該真空排気管15とエジェクタ17との接続部分から分岐して接続されている。以下の説明では、真空排気管15とエジェクタ17との接続部分から不活性ガス供給源51までのガス通路部分を「不活性ガス接続路53」と呼ぶ。不活性ガス接続路53には、第1開閉弁55が設けられている。不活性ガス接続路53における第1開閉弁55と不活性ガス供給源51との間には、圧力計57が設けられている。
【0024】
このように、真空排気管15に不活性ガス供給源51を接続することにより、エジェクタ17による真空排気を行う前に、真空層7に不活性ガスを充填して、クライオ効果を利用した減圧を行うことができる。具体的には、真空層7に、配管5による移送対象の液化ガスの温度以上の融点および沸点を有する不活性ガスを充填すると、液化ガスの低温の影響で不活性ガスが液化または固化して内管11の外周面に凝着する。これにより、真空層7内が減圧され、エジェクタ17による排気によって所望の真空度を得ることが容易になる。
【0025】
上記の不活性ガスとして利用するガスの種類は、移送対象の液化ガスとの関係で上述のクライオ効果を得ることができるものであれば特に限定されない。例えば、コストや入手の容易さも考慮して、移送対象ガスが水素である場合には、二酸化炭素(CO)や窒素(N)を利用することができ、移送対象ガスが天然ガスの場合には、水蒸気等を利用することができる。
【0026】
真空排気装置1には、上記で説明した以外にも、必要に応じて各種の弁や圧力測定装置を設けることができる。例えば、図示の例では、真空排気管15の途中には第2開閉弁59が設けられ、第2開閉弁59よりもエジェクタ17側に連成計61が設けられている。
【0027】
また、本実施形態において、真空排気管15の少なくとも一部(この例では、第1開閉弁55からエジェクタ17側の部分)と、エジェクタ17と、逆流防止弁33と、流体供給管35とが一体的に形成されている。以下、この一体形成品を「真空排気ユニットU」と呼ぶ。ここでの「一体的に形成」とは、この真空排気ユニットUの通常状態の運用時および運搬時において、当該ユニットUの構成部品が互いに外れないように接続されていることをいう。
【0028】
真空排気ユニットUとして一体的に形成される構成部品には、上述した以外の部品が含まれていてもよい。具体的には、この例では、上記の構成部品に加えて、流体供給管35の圧力計49、真空排気管15の第2開閉弁59、不活性ガス接続路53の第1開閉弁55までの部分が真空排気ユニットUとして一体的に形成されている。
【0029】
このように、真空排気装置1の主要構成部品をユニット化することにより、真空排気装置1の可搬性が高まり、真空排気装置1を液化ガス貯留設備3における必要な場所において適時に使用することが容易になる。
【0030】
また、上記のように真空排気ユニットUを構成する場合、真空排気ユニットUを構成する管部材の全部または一部(例えば他の管部材との接続部分)をフレキシブルなホースで形成してもよい。これにより、真空排気ユニットUの可搬性がさらに高まる。
【0031】
液化ガス貯留設備3における真空排気装置1の設置場所は特に限定されない。例えば、真空排気装置1は、配管5の周囲に常設されている必要はなく、配管5に対して着脱自在に構成されていてもよい。配管5の真空層7を真空排気する必要が生じる頻度が高いわけではない場合、真空排気が必要になった場合のみ、必要な箇所(例えば上述のように配管5が複数の分割管体5aで構成されている場合は真空度が低下した分割管体5aのみ)に真空排気装置1を接続して使用することができる。
【0032】
液化ガス貯留設備3において、真空排気装置1を上述のように適時に設置する場合および常設する場合のいずれにおいても、真空排気装置1を危険場所に設置することができる。ここでの「危険場所」とは、引火性ないし爆発性を有する物質が存在、漏洩等するおそれがあることから各種規格によって防爆性能や設置可能な装置の種類につき規制を受ける場所をいう。具体的には、本実施形態に係る真空排気装置1は、例えばタンク9(図2)周辺の2種危険場所にも設置することができる。
【0033】
すなわち、本実施形態に係る真空排気装置1は、水や空気などの駆動流体Fによって駆動されるエジェクタ17を利用して真空排気する装置であり、電気設備を必要としないので、危険場所による規制を受けない。したがって、船舶のような、大部分が危険場所に該当する液化ガス貯留設備3においても、真空排気装置1を、真空排気を行うために適した場所に自由に設置することができる。
【0034】
以上説明した本実施形態に係る真空排気装置1によれば、一般的に小型でかつ構造が簡易なエジェクタ17によって真空排気を行うので、真空排気装置1を、小型でかつ可搬性の高い構成とすることができる。
【0035】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 真空排気装置
3 液化ガス貯留設備
5 二重構造管
7 真空層
11 内管
13 外管
15 真空排気管
17 エジェクタ
51 不活性ガス供給源
C 収容器
図1
図2
図3
図4