(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189148
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
F25B 17/08 20060101AFI20221215BHJP
F28D 21/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F25B17/08 Z
F28D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097556
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】曽根 和樹
(72)【発明者】
【氏名】内村 允宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅紀
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093NN03
3L093PP01
3L093RR01
(57)【要約】
【課題】小型化が可能であり、エネルギーの消費効率の向上が可能な熱交換装置を提供する。
【解決手段】弾性を有する吸発熱部は、応力の印加と開放とに伴い相変化することによって吸熱又は発熱する吸発熱材料を有する。吸発熱部の熱を伝導する熱伝導部は収容部から延出する延出部を有する。延出部で熱交換を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する吸発熱部と、
前記吸発熱部と直接又は間接的に接触して、前記吸発熱部の熱を伝導する熱伝導部と、
前記吸発熱部及び前記熱伝導部を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記吸発熱部に応力を印加する動作と、前記応力を解放する動作とを行うプレス機構と、を備え、
前記吸発熱部は、
前記応力の印加と開放とに伴い相変化することによって吸熱又は発熱する吸発熱材料を有し、
前記熱伝導部は、
前記収容部から延出する延出部を有し、前記延出部で熱交換を行う熱交換装置。
【請求項2】
前記吸発熱材料は、前記応力を印加すると液相から気相に変化して吸熱し、前記応力を解放すると気相から液相に変化して発熱する流体冷媒である、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記吸発熱部はナノ多孔質体をさらに有し、
前記流体冷媒は、
前記応力を印加すると前記ナノ多孔質体の細孔壁から蒸発し、前記応力を解放すると前記細孔壁に吸着する、請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記吸発熱材料は固体冷媒である、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記熱伝導部は板状であり、
前記板状の熱伝導部に前記吸発熱部が層状に形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記吸発熱部が複数の層に分けて積層されており、
前記複数の層の層間に配置された高熱伝導性箔をさらに備える、請求項5に記載の熱交換装置。
【請求項7】
前記収容部内に前記吸発熱材料が封入されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項8】
前記吸発熱部と前記熱伝導部との接触面は凹凸を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項9】
前記吸発熱部と前記熱伝導部との接触面は曲面を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項10】
前記熱伝導部は前記吸発熱部を一方向の両側から挟んでいる、請求項1から9のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項11】
前記一方向で隣り合う一方の前記延出部と他方の前記延出部との間には隙間が設けられている、請求項10に記載の熱交換装置。
【請求項12】
前記隙間に配置されたスペーサをさらに備える、請求項11に記載の熱交換装置。
【請求項13】
前記スペーサは弾性を有する、請求項12に記載の熱交換装置。
【請求項14】
前記吸発熱部と前記熱伝導部とを含むユニットを複数有し、
前記複数のユニットが積み重ねて配置されている、請求項1から13のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項15】
媒体が流れる媒体流路、をさらに備え、
前記媒体流路内に前記延出部が配置される、請求項1から14のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着式ヒートポンプ(デシカント空調器)が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吸着式ヒートポンプ(デシカント空調器)では、多孔質体中の冷媒分子の移動速度が遅い。このため、冷媒分子が蒸発する(すなわち、吸熱する)際に、冷媒分子の蒸発速度が遅く、単位時間内に十分な吸熱量を得ることが難しい。冷媒分子の蒸発を促すために、多孔質体の温度を上昇させる方法が考えられるが、この方法では入熱用のヒータが必要となるため装置の大型化を招く。また、ヒータを稼働させるためのエネルギーが必要となるため、エネルギーの消費効率が低下する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、小型化が可能であり、エネルギーの消費効率を向上させることが可能な熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る熱交換装置において、弾性を有する吸発熱部は、応力の印加と開放とに伴い相変化することによって吸熱又は発熱する吸発熱材料を有する。吸発熱部の熱を伝導する熱伝導部は収容部から延出する延出部を有する。延出部で熱交換を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、小型化が可能であり、エネルギーの消費効率の向上が可能な熱交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る熱交換ユニットの構成例を立体的に示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係るユニット本体の構成例を立体的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1に係るユニット本体の具体例1を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すユニット本体をX1-X´1線で切断した断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1に係るユニット本体の具体例2を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すユニット本体をX2-X´2線で切断した断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態1に係るユニット本体の変形例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態2に係るユニット本体の構成例1を立体的に示す模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態2に係るユニット本体の構成例2を立体的に示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態2に係るユニット本体の構成例3を立体的に示す模式図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態2に係る熱交換ユニットの構成例を立体的に示す模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態2に係るユニット本体の変形例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態3に係る熱交換装置の構成例を示す立体的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
また、以下の説明では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の文言を用いて、方向を説明する場合がある。例えば、Z軸方向は、本発明の「一方向」の一例であり、熱伝導部12の厚さ方向である。熱伝導部12の厚さ方向(すなわち、Z軸方向)からの平面視で、X軸方向は熱伝導部12の長手方向であり、Y軸方向は熱伝導部12の短手方向である。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。
【0010】
<実施形態1>
(構成例)
図1は、本発明の実施形態1に係る熱交換ユニット100の構成例を立体的に示す模式図である。
図2は、本発明の実施形態1に係るユニット本体1の構成例を立体的に示す模式図である。
図1に示すように、熱交換ユニット100(本発明の「熱交換装置」の一例)は、ユニット本体1(本発明の「ユニット」の一例)と、ユニット本体1を厚さ方向(例えば、Z軸方向)の両側から挟むプレス機構3と、を備える。
【0011】
図2に示すように、ユニット本体1は、弾性を有する吸発熱部11と、吸発熱部11と直接又は間接的に接触して吸発熱部11の熱を伝導する熱伝導部12と、吸発熱部11及び熱伝導部12を収容する収容部13と、を有する。なお、「弾性」とは、外部から応力が印加されて収縮しても、応力が解放されることによって、可逆的に大きく変形してほぼ元の形状に回復する性質を意味する。
【0012】
吸発熱部11は、収縮に伴って吸熱し膨張に伴って発熱する吸発熱材料、又は、収縮に伴って発熱し膨張に伴って吸熱する吸発熱材料を含む。
例えば、収縮に伴って吸熱し膨張に伴って発熱する吸発熱材料として、弾性を有するナノ多孔質体と、ナノ多孔質体の細孔壁に着脱可能に吸着する流体冷媒との組み合わせが挙げられる。
【0013】
「ナノ多孔質」とは、複数のナノレベルの細孔を有することを意味する。ナノレベルの細孔とは、好ましくは直径0.5~100nmであり、より好ましくは直径0.7~50nmであり、さらに好ましくは直径0.7~6nmのミクロ孔またはメソ孔である。なお、IUPAC(国際純正及び応用化学連合)では、直径2nm以下の細孔をミクロ孔(micropore)、直径2~50nmの細孔をメソ孔(mesopore)、直径50nm以上の細孔をマクロ孔(macropore)と定義している。
【0014】
ナノ多孔質体として、グラフェンメソスポンジ(Graphene MesoSponge:GMS)、又は、ゼオライトテンプレートカーボン(Zeorite Template Carbon:ZTC)が挙げられる。GMS及びZTCは、いずれも単層グラフェン骨格からなり、流体冷媒の脱離及び吸着に必要な多孔性及び弾性特性を有している。
【0015】
GMSは、細孔壁の大部分が単層グラフェンから構成され、約6nm程度の微小な細孔を有するスポンジ状のメソ多孔体であり、活性炭に匹敵する極めて高いBET比表面積(約2000m2/g)を有している。その一方で、活性炭やカーボンブラックとは異なり腐食の原因となるグラフェンの端部をほとんど含んでいないことから、優れた耐食性(酸化耐性)も備えている。また、柔軟かつ強靭であるというグラフェンの性質に起因して、GMSは柔軟性及び弾性に優れ、細孔の直径が約5.8nmから約0.7nmになるまで可逆的に弾性変形することができる。GMSの製造方法については、Nishihara, H. et al., Advanced Functional Materials, Vol. 26, 2016, 6418-6427.に記載されている。
【0016】
ZTCは、単層のグラフェンシートにより構成される。また、均一な細孔(直径約1.2nm)が三次元的に規則配列し、相互に連結しており、極めて高いBET比表面積と細孔容積を有する(最大でBET比表面積が4100m2/g、細孔容積が1.8cc/g)ことが知られている。ZTCの製造方法については、Nishihara, H. et al., Chemistry-European Journal 15, 5355 (2009)等に記載されている。
【0017】
なお、本発明において、ナノ多孔質体は、GMS又はZTCに限定されない。ナノ多孔質体は、弾性を有し、収縮して流体冷媒を脱離可能で、かつ、膨張して流体冷媒を吸着可能な材料であれば、他の材料を用いてもよい。このような例として、球状のメソ孔を有する炭素メソスポンジ(CMS;Carbon MesoSponge)が挙げられる。
流体冷媒として、例えば、水又はアルコールが挙げられる。アルコールの一例として、メタノール又はエタノールが挙げられる。流体とは、液体又は気体、もしくは液体と気体とが混合したものを意味する。
【0018】
また、収縮に伴って発熱し膨張に伴って吸熱する吸発熱材料として、固体冷媒(例えば、弾性熱量体又は圧力熱量体)が挙げられる。弾性熱量体として、Tiを含む合金(一例として、TiNi、BaTiO3、PbZr0.95Ti0.05O3)が挙げられる。圧力熱量体として、水素結合を含む有機系樹脂(一例として、ネオペンチルグリコール(NPG)、ペンタエリトリトール(PE)、ペンタグリセリン(PE))が挙げられる。また、固体冷媒は上記以外の材料でもよい。例えば、弾性熱量体として、Gd5Si2Ge2、La(Fe,Co,Si)13、MnCoGeB0.02、PVDF-TrFE、Cu2ZnAl、FeRhが挙げられる。圧力熱量体として、(NH4)SO4、AgI、rubber、AMP、TRIS、MNP、NMPが挙げられる。
【0019】
熱伝導部12は、熱伝導性に優れた金属(例えば、銅(Cu)又はCu合金)で構成された、金属板である。板状の熱伝導部12をプレートと言い換えてもよい。熱伝導部12は、表面12aと、表面12aの反対側に位置する裏面12bとを有し、例えば表面12a側に吸発熱部11が層状に設けられている。これにより、伝熱面積が増え、外部により効果的に伝熱することができる。
【0020】
熱伝導部12は、収容部13に収容されて吸発熱部11と直接又は間接的に接触する接触部121と、接触部121に接続し収容部13から延出された延出部122と、を有する。延出部122をフィン部と言い換えてもよい。接触部121と延出部122は1枚の金属板で一体に形成されている。接触部121は収容部13内に存在する吸発熱部11と熱交換を行い、延出部122は収容部13外に存在する媒体(例えば、空気)と熱交換を行う。
図1では、延出部122によって熱交換される熱を模式的に「熱Q」として示している。
収容部13は、弾性を有し、熱伝導率が低い材料(例えば、樹脂、ゴム等)で構成されている。収容部13内に、吸発熱部11と、熱伝導部12の接触部121とが密封した状態で収容されている。
【0021】
図1に示すように、プレス機構3は、第1挟持体31と、第1挟持体31と向かい合うように配置された第2挟持体32と、第2挟持体32に対して第1挟持体31を相対的に近づけたり遠ざけたりする軸部33と、軸部33をその軸芯周りに回転可能に支持する支持部34と、を有する。軸部33は、図示しないモータの出力軸と連結して、モータの出力軸と一体に回転する。軸部33は、回転することによって、軸方向(例えば、Z軸方向)に移動可能となっている。
プレス機構3は、第1挟持体31と第2挟持体32との間にユニット本体1を挟み込んで固定している。プレス機構3は、ユニット本体1を固定した状態を維持しつつ、軸部33が軸方向に移動することによって、ユニット本体1の吸発熱部に応力を加えたり、加えた応力を解放したりする。
【0022】
(具体例1)
図3は、本発明の実施形態1に係るユニット本体1の具体例1を示す平面図である。
図4は、
図3に示すユニット本体1をX1-X´1線で切断した断面図である。
図3及び
図4は、吸発熱部11が、収縮に伴って吸熱し膨張に伴って発熱する吸発熱材料を含む場合の具体例を示している。この場合の吸発熱材料は、GMS等のナノ多孔質体111と、水又はアルコール等の流体冷媒との組み合わせである。
【0023】
図3及び
図4に示すように、収容部13内には、流体冷媒の蒸気(以下、冷媒蒸気)112を保持するためのスペースSが設けられている。ナノ多孔質体111に応力を加えることによって細孔の細孔壁から脱離、気化した冷媒蒸気112は、このスペースSに確保される。収容部13は密閉されており、冷媒蒸気112が収容部13の外へ漏れないようになっている。収容部13内に冷媒蒸気112が封入されている。
【0024】
収容部13内の圧力は、常温で、かつ吸熱を生じさせるための応力を加えていない状態で、冷媒蒸気112の飽和蒸気圧程度に設定している。ナノ多孔質体111には、常温で飽和蒸気圧の85%程度の環境下で冷媒蒸気を吸着させたものを用いている。例えば、流体溶媒がメタノールの場合、収容部13内の圧力は、常温で、かつ吸熱を生じさせるための応力を加えていない状態で、20kPa(abs)程度に設定している。ナノ多孔質体111には、常温で17kPa(=20kPa×0.85)程度の環境下でメタノール蒸気を吸着させたものが収容部13内に配置されている。
【0025】
具体例1の動作を説明する。収容部13を介して吸発熱部11に応力が加えられると、吸発熱部11を構成しているナノ多孔質体111の細孔は収縮し、ナノ多孔質体111の細孔壁に吸着していた流体冷媒は細孔壁から脱離する。細孔壁から脱離する際に流体冷媒は気化(すなわち、蒸発)して、冷媒蒸気112となる。流体冷媒は、収容部13内で液相から気相へ相変化することによって吸熱し、ナノ多孔質体111の温度を低下させる。ナノ多孔質体111は熱伝導部12と接触しているため、熱伝導部12の温度が低下する。これにより、熱伝導部12の延出部122は、収容部13外に存在する空気等と対流又は放射により熱交換して、空気を冷やすことができる。
【0026】
また、吸発熱部11に加えられた応力が解放されると、吸発熱部11を構成しているナノ多孔質体111の細孔は収縮した状態から膨張する。収容部13内に存在する冷媒蒸気112はナノ多孔質体111の細孔壁に吸着して液化する。冷媒蒸気112は、収容部13内で気相から液相へ相変化することによって発熱し、ナノ多孔質体111の温度を上昇させる。ナノ多孔質体111は熱伝導部12と接触しているため、熱伝導部12の温度が上昇する。これにより、熱伝導部12の延出部122は、収容部13外に存在する空気等と対流又は放射により熱交換して、空気を温めることができる。
【0027】
(具体例2)
図5は、本発明の実施形態1に係るユニット本体1の具体例2を示す平面図である。
図6は、
図5に示すユニット本体1をX2-X´2線で切断した断面図である。
図5及び
図6は、吸発熱部11が、収縮に伴って発熱し膨張に伴って吸熱する吸発熱材料を含む場合の具体例を示している。この場合の吸発熱材料は、弾性熱量体又は圧力熱量体等の固体冷媒115である。
【0028】
図5及び
図6に示す具体例2においても、具体例1と同様に、収容部13は密閉されており、収容部13内に配置された固体冷媒115は外部から遮断されている。これにより固体冷媒115はコンタミネーションの発生を防止することができ、耐久性を向上することができる。また、具体例2は、気化と液化を繰り返す流体冷媒112は必要ないため、具体例1と比べて、収容部13内のスペースSを小さくすることが可能である。これにより、収容部13を含むユニット本体1の小型化が可能である。
【0029】
具体例2の動作を説明する。収容部13を介して吸発熱部11に応力が加えられると、吸発熱部11を構成している固体冷媒115は収縮し、固体冷媒115の分子構造又は分子配列が変化する。固体冷媒115では、その分子構造又は分子配列の変化が相変化に相当する。固体冷媒115は、固体のまま相変化することによって発熱し、熱伝導部12の温度を上昇させる。これにより、熱伝導部12の延出部122は、収容部13外に存在する空気等と対流又は放射により熱交換して、空気を温めることができる。
【0030】
また、吸発熱部11に加えられた応力が解放されると、吸発熱部11を構成している固体冷媒115は収縮した状態から膨張し、固体冷媒115の分子構造又は分子配列は相変化して元の形に戻る。固体冷媒は、相変化して元の形に戻ることによって吸熱し、熱伝導部12の温度を低下させる。これにより、熱伝導部12の延出部122は、収容部13外に存在する空気等と対流又は放射により熱交換して、空気を冷やすことができる。
【0031】
(実施形態1の効果)
本発明の実施形態1に係る熱交換ユニット100は、弾性を有する吸発熱部11と、吸発熱部11と直接又は間接的に接触して、吸発熱部11の熱を伝導する熱伝導部12と、吸発熱部11及び熱伝導部12を収容する収容部13と、収容部13に収容された吸発熱部11に応力を印加する動作と、加えた応力を解放する動作とを行うプレス機構3と、を備える。吸発熱部11は、応力の印加と開放とに伴い相変化することによって吸熱又は発熱する吸発熱材料を有する。熱伝導部は、収容部から延出する延出部を有し、延出部で熱交換を行う。
【0032】
これによれば、熱交換ユニット100は、吸発熱材料の相変化によって吸熱又は発熱する吸発熱部11を熱源として、収容部13外に存在する媒体(例えば、空気)と熱交換することができる。熱交換ユニット100では、ヒータによる入熱ではなく、プレス機構3によるプレス荷重が入力エネルギーとなるため、エネルギーの消費効率(COP:Coefficint Of Performance)を向上させることができる。また、熱交換ユニット100は、入熱用のヒータは不要であるため、小型化が可能である。
【0033】
(変形例)
図7は、本発明の実施形態1に係るユニット本体1の変形例を示す断面図である。
図7に示すように、この変形例では、吸発熱部11と熱伝導部12との接触面SCが凹凸及び曲面の少なくとも一方を含んでいる。接触面SCが含む凹凸は、断面視で直線的な凹凸でもよいし、曲線的な凹凸でもよい。また、接触面SCが含む凹凸又は曲面は、規則的な形状でもよいし、不規則的な形状でもよい。曲面は波状でもよい。凹凸及び曲面のすくなくとも一方を含む接触面SCは、例えば、熱伝導部12の接触部121の表面12aに対して、エッチング、MEMS(Micro Electro Mechanical ystems)、又は切削加工による粗面化処理を施し、その後、粗面化された表面12a上に吸発熱部11の吸発熱材料(例えば、ナノ多孔質体111又は固体冷媒115)を設けることで形成することができる。
【0034】
この変形例によれば、ユニット本体1は、吸発熱部11と熱伝導部12との接触面積を増やすことができる。これにより、ユニット本体1は、吸発熱部11と熱伝導部12との間の熱抵抗を減らすことができ、吸発熱部11と熱伝導部12との間の伝熱量を増やすことができるので、COPをさらに向上させることが可能となる。
【0035】
<実施形態2>
(構成例)
図8は、本発明の実施形態2に係るユニット本体1Aの構成例1を立体的に示す模式図である。
図9は、本発明の実施形態2に係るユニット本体1Aの構成例2を立体的に示す模式図である。
図10は、本発明の実施形態2に係るユニット本体1Aの構成例3を立体的に示す模式図である。ユニット本体1A(本発明の「ユニット」の一例)は、熱伝導部12を複数有する。複数の熱伝導部12が、吸発熱部11を厚さ方向(例えば、Z軸方向)の両側から挟んでいる。
【0036】
例えば、
図8に示すように、2つの熱伝導部12は、1つの吸発熱部11をZ軸方向の両側から挟んでいる。2つの熱伝導部12と1つの吸発熱部11とが1つの収容部13内に収容されている。Z軸方向で隣り合う一方の延出部122と他方の延出部122との間には、隙間Gが設けられている。
また、
図9に示すように、2つの熱伝導部12は、2つの吸発熱部11をZ軸方向の両側から挟んでいてもよい。この場合、2つの吸発熱部11の間には、金属箔14が設けられていてもよい。2つの熱伝導部12と2つの吸発熱部11とが1枚の金属箔14とが1つの収容部13内に収容されていてもよい。金属箔14は、2つの吸発熱部11間の伝熱性を高めることができる。
【0037】
また、
図10に示すように、2つの熱伝導部12に挟まれる吸発熱部11は複数の層に分けて積層されていてもよく、複数の層の層間に熱伝導に優れた薄膜、例えば金属箔14(本発明の「高熱伝導性箔」の一例)が配置されていてもよい。吸発熱部11と金属箔14とが交互に配置された積層体15を構成していてもよい。例えば、吸発熱部11は、1層当たりの厚さが100μmのナノ多孔質体である。金属箔14は、1層当たりの厚さが20μmの銅箔又はアルミニウム箔である。積層体15の厚さは、吸発熱部11と金属箔14とが1層ずつ交互に積層されて、約5mmとなっている。なお、高熱伝導性箔は金属箔に限定されるものでない。高熱伝導性箔は、熱伝導がよい箔状のものであれば、カーボン、エンジニアリングプラスチックシートであってもよい。
【0038】
延出部122間に存在する隙間Gの間隔Gdは、熱交換フィンの間隔である。この間隔Gdを、想定される熱伝達に最適な長さに設定することで、伝熱効率を高めることが可能である。
図10に示す構成例3では、ナノ多孔質体111と金属箔14の積層数を調整することで、上記の間隔Gdを任意の値に設定することができる。ナノ多孔質体111と金属箔14の積層数を増やすことで、上記の間隔Gdを大きくすることができる。ナノ多孔質体111を厚く形成することが難しい場合でも、積層数を増やすことで、間隔Gdを容易に調整することが可能である。
【0039】
図11は、本発明の実施形態2に係る熱交換ユニット100Aの構成例を立体的に示す模式図である。
図11に示すように、熱交換ユニット100A(本発明の「熱交換装置」の一例)は、Z軸方向に積み重ねて配置された複数のユニット本体1Aと、複数のユニット本体1AをZ軸方向の両側から挟むプレス機構3と、を備える。
【0040】
プレス機構3は、第1挟持体31と第2挟持体32との間に複数のユニット本体1Aを挟み込んで固定している。プレス機構3は、複数のユニット本体1Aを固定した状態を維持しつつ、軸部33が軸方向に移動することによって、複数のユニット本体1Aの吸発熱部11(例えば、
図8から
図10を参照)に応力を加えたり、加えた応力を解放したりする。これにより、複数のユニット本体1Aの各々において、延出部122と、収容部13の外側に存在する媒体(例えば、空気)との間の熱交換を行うことができる。
なお、
図11では、3つ以上の熱伝導部12が1つの収容部13内に収容されて、1つのユニット本体1Aを構成していてもよい。例えば、
図10に示す全ての熱伝導部12が1つの収容部13内に配置されて、1つのユニット本体1Aを構成していてもよい。
【0041】
(実施形態2の効果)
本発明の実施形態2に係るユニット本体1Aは、複数の熱伝導部12を含む。ユニット本体1Aでは、吸発熱部11の両面が熱伝導部12と直接又は間接的に接触する。これにより、ユニット本体1Aは、実施形態1に係るユニット本体1と比べて、吸発熱部11と熱伝導部12との接触面積を増やすことができる。ユニット本体1Aは、吸発熱部11と熱伝導部12との間の熱抵抗を減らすことができ、吸発熱部11と熱伝導部12との間の伝熱量を増やすことができるので、COPをさらに向上させることが可能となる。
【0042】
(変形例)
図12は、本発明の実施形態2に係るユニット本体1Aの変形例を示す断面図である。
図12に示すように、この変形例では、Z軸方向で隣り合う一方の延出部122と他方の延出部122との間の隙間Gに、スペーサ16が配置されている。スペーサ16は、例えば、弾性を有する金属製フィンで構成されている。スペーサ16の一方の端部161は、一方の延出部122とロウ付け又は溶接等により固定されている。スペーサ16の他方の端部162は、他方の延出部122と接触しているが、固定はされていない。スペーサ16の端部162は、他方の延出部122の表面を滑りながら移動する(すなわち、摺動)ことが可能となっている。摺動の方向は、延出部の長手方向(例えば、X軸方向)である。
【0043】
この変形例によれば、プレス機構3(
図11参照)によって吸発熱部11(
図8から
図10参照)に応力が加えられる際に、スペーサ16が隙間Gを確保する。隙間Gが確保されるため、延出部122は伝熱性能を高く保持することができる。また、スペーサ16の端部162は、上記の応力を受けて延出部122の表面を摺動することができるため、延出部122にかかる力を緩和することができ、延出部122に歪みが生じることを抑制することができる。また、スペーサ16は、金属で構成されているため、その表面積の分だけ伝熱面積が増える。
なお、この変形例において、スペーサ16は金属フィンに限定されるものではない。スペーサ16は、樹脂で構成されていてもよいし、フィン状でなくてもよい。このような場合でも、スペーサ16は隙間Gの確保に寄与する。
【0044】
<実施形態3>
図13は、本発明の実施形態3に係る熱交換装置200の構成例を示す立体的に示す模式図である。
図13に示すように、熱交換装置200は、実施形態2で説明した熱交換ユニット100A(または、実施形態1で説明した熱交換ユニット100)と、空気が流れる空気導通路150(本発明の「媒体流路」の一例)と、を備える。空気導通路150をダクトと言い換えてもよい。空気導通路150内に延出部122が配置される。
これによれば、熱交換装置200は、延出部122に空気を送ることができ、延出部122と空気との間の熱交換を効率的に行うことができる。熱交換装置200は、冷風又は温風を高効率に得ることができる。
【0045】
<適用例>
図1に示した熱交換ユニット100、
図11に示した熱交換ユニット100A、
図13に示す熱交換装置200は、例えば車両等に搭載される空調装置に適用可能である。また、熱交換ユニット100、100A、熱交換装置200は、車両以外に搭載される空調装置に適用してもよく、空調装置以外の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1、1A…ユニット本体、3…プレス機構、11…吸発熱部、12…熱伝導部、12a…表面、12b…裏面、13…収容部、14…金属箔(高熱伝導性箔の一例)、15…積層体、16…スペーサ、31…第1挟持体、32…第2挟持体、33…軸部、34…支持部、100、100A…熱交換ユニット、111…ナノ多孔質体、112…流体冷媒(冷媒蒸気)、115…固体冷媒、121…接触部、122…延出部、150…空気導通路、161、162…端部、200…熱交換装置、G…隙間、Gd…間隔、S…スペース、SC…接触面