(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189161
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1334 20060101AFI20221215BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G02F1/1334
G02F1/13357
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097570
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】花岡 一孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 公昭
(72)【発明者】
【氏名】金島 充子
(72)【発明者】
【氏名】本多 真理子
(72)【発明者】
【氏名】島田 伸二
【テーマコード(参考)】
2H189
2H391
【Fターム(参考)】
2H189AA04
2H189AA07
2H189BA03
2H189BA05
2H189CA08
2H189FA22
2H189HA11
2H189KA01
2H189KA02
2H189KA17
2H189LA05
2H189LA20
2H391AA03
2H391AB05
2H391AB24
2H391AB43
2H391CB03
(57)【要約】
【課題】 薄型であり、表示画面を大面積化しても高いコントラスト及び輝度が得られるシースルーディスプレイを提供する。
【解決手段】 高分子分散液晶層を有する液晶パネルと、上記液晶パネルの背面側に配置された光源とを備え、上記高分子分散液晶層は、ポリマーネットワークと、上記ポリマーネットワーク中に分散された液晶成分とを含み、上記光源は、空気層を介して上記液晶パネルと間隔を空けて、かつ上記液晶パネルの少なくとも一つの外縁に沿って配置され、上記液晶パネルに向かって斜め方向から光を照射し、上記高分子分散液晶層の端部と中央部とは、それぞれ、散乱状態において、背面側から入射される光の角度に応じて、前面側の正面から出射される光の透過率が変化する角度依存性を有し、かつ上記端部の上記角度依存性と上記中央部の上記角度依存性とは異なり、上記光源は、上記端部と上記中央部に対して、異なる角度から光を照射する表示装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板及び前記一対の基板に挟持された高分子分散液晶層を有する液晶パネルと、前記液晶パネルの背面側に配置された光源とを備え、
前記一対の基板は、前記高分子分散液晶層に電圧を印加する電極を有し、
前記高分子分散液晶層は、ポリマーネットワークと、前記ポリマーネットワーク中に分散された液晶成分とを含み、
前記光源は、空気層を介して前記液晶パネルと間隔を空けて、かつ前記液晶パネルの少なくとも一つの外縁に沿って配置され、前記液晶パネルに向かって斜め方向から光を照射し、
前記高分子分散液晶層は、電圧無印加時に背景が透けて見える透明状態となり、電圧印加時に前記光源から入射された光を散乱する散乱状態となるように制御され、
平面視において、前記高分子分散液晶層の前記光源から近い領域を端部とし、前記端部よりも前記光源から遠い領域を中央部とすると、前記端部と前記中央部とは、それぞれ、前記散乱状態において、背面側から入射される光の角度に応じて、前面側の正面から出射される光の透過率が変化する角度依存性を有し、かつ前記端部の前記角度依存性と前記中央部の前記角度依存性とは異なり、
前記光源は、前記端部と前記中央部に対して、異なる角度から光を照射することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記中央部に含まれる前記液晶成分の屈折率異方性は、前記端部に含まれる前記液晶成分の屈折率異方性よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記端部において、前記高分子分散液晶層はカイラル剤を含有し、前記中央部において、前記高分子分散液晶層はカイラル剤を含有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記電圧無印加時において、前記端部に含まれる前記液晶成分の捩れ角は、前記中央部に含まれる液晶成分の捩れ角よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記中央部の前記高分子分散液晶層、及び、前記端部の前記高分子分散液晶層は、ともにカイラル剤を含有し、前記端部における前記高分子分散液晶層の厚みは、前記中央部における前記高分子分散液晶層の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記中央部の前記高分子分散液晶層は、前記端部の前記高分子分散液晶層よりも前記ポリマーネットワークの密度が高いことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記電極は、前記一対の基板の前記高分子分散液晶層と対向する側にそれぞれ配置された一対の電極であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記光源は、複数色の発光素子を含み、前記複数色の発光素子は、時分割で点灯されるフィールドシーケンシャル方式で駆動されることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、表示装置に関する。より詳しくは、高分子分散型の液晶パネルと、光源とを備えたシースルーディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、表示のために液晶組成物を利用する表示装置であり、その代表的な表示方式は、一対の基板間に封入された液晶組成物に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶組成物中の液晶成分の配向状態を変化させることにより、光の透過量を制御するものである。このような液晶表示装置は、薄型、軽量及び低消費電力といった特長を活かし、幅広い分野で用いられている。
【0003】
近年、液晶表示装置の背面が透けて見える表示を行うことができるシースルーディスプレイが注目されている。シースルーディスプレイとして用いる液晶表示装置としては、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いた液晶表示装置が開発されている。PDLCは、ポリマーネットワーク中に液晶成分が分散されており、電圧の印加によって液晶成分の配向状態を変化させることにより液晶成分とポリマーネットワークとの屈折率差を利用して、透明状態と散乱状態とを切り替えることができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、離間して対向配置された一対の透明基板と、上記一対の透明基板の間に配置され、所定の屈折率異方性を有するとともに、上記透明基板に設けられた電極によって生じる電場に対する応答性が異なる複数の光変調素子を備える光変調層と、上記光変調層の側面から上記光変調層に所定の色の光を入射する光源と、を有し、上記光変調層は、上記電場が生じていないときは上記光源から入射した入射光を透過し、上記電場が生じているときは上記入射光を散乱して上記透明基板に射出する、表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シースルーディスプレイの光源としては、エッジライト方式のバックライトが挙げられる。エッジライト方式のバックライトを用いることで、液晶表示装置を薄型化することができる。エッジライト方式のバックライトとしては、例えば、導光板を用いた導光方式のバックライトが挙げられる。上記導光板を用いた導光方式のバックライトは、導光板の側面に光源が配置され、上記光源から導光板の側面に入射された光が、導光板の中で反射を繰り返して、前面に出射される。
【0007】
一方で、導光板で反射された光の一部は、液晶パネルが有する薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等の構成部材で回折して損失するため、光源から遠ざかるほど光の損失が起こり、表示画面の中央部でのコントラスト及び輝度等の正面特性が低下することがあった。本発明者らの検討によると、PDLCを有する液晶パネルに対し、導光方式のバックライトを用いて表示を行うと、19型の大型の表示装置では、散乱状態における表示画面の中央のコントラストが2以下、輝度が60cd/m2以下であった。また、表示画面の中央部の輝度は、表示画面の端部の輝度の1/4程度であり、表示画面の端部と中央部との間で、輝度傾斜が大きく、均一な輝度表示が困難であった。
【0008】
このような、表示画面の中央部での正面特性の低下は、表示画面を大面積化するほど顕著であった。更に、PDLCを透過する際にも散乱により透過光の一部が損失する。そのため、薄型のシースルーディスプレイおいて、表示画面の大面積化と、良好な正面特性(高コントラスト及び高輝度)とを両立することは困難であった。
【0009】
特許文献1に記載の表示装置は、光変調層の側面から光が入射されるため、導光方式のバックライトを用いた場合と同様に、表示画面の中央に向かうほど光のロスが大きくなるため、大画面化した場合に、充分な正面特性が得られない。
【0010】
本発明は、薄型であり、表示画面を大面積化しても高いコントラスト及び輝度が得られるシースルーディスプレイを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一実施形態は、一対の基板及び上記一対の基板に挟持された高分子分散液晶層を有する液晶パネルと、上記液晶パネルの背面側に配置された光源とを備え、上記一対の基板は、上記高分子分散液晶層に電圧を印加する電極を有し、上記高分子分散液晶層は、ポリマーネットワークと、上記ポリマーネットワーク中に分散された液晶成分とを含み、上記光源は、空気層を介して上記液晶パネルと間隔を空けて、かつ上記液晶パネルの少なくとも一つの外縁に沿って配置され、上記液晶パネルに向かって斜め方向から光を照射し、上記高分子分散液晶層は、電圧無印加時に背景が透けて見える透明状態となり、電圧印加時に上記光源から入射された光を散乱する散乱状態となるように制御され、平面視において、上記高分子分散液晶層の上記光源から近い領域を端部とし、上記端部よりも上記光源から遠い領域を中央部とすると、上記端部と上記中央部とは、それぞれ、上記散乱状態において、背面側から入射される光の角度に応じて、前面側の正面から出射される光の透過率が変化する角度依存性を有し、かつ上記端部の上記角度依存性と上記中央部の上記角度依存性とは異なり、上記光源は、上記端部と上記中央部に対して、異なる角度から光を照射する表示装置である。
【0012】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記中央部に含まれる上記液晶成分の屈折率異方性は、上記端部に含まれる上記液晶成分の屈折率異方性よりも高い表示装置である。
【0013】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、上記端部において、上記高分子分散液晶層はカイラル剤を含有し、上記中央部において、上記高分子分散液晶層はカイラル剤を含有しない表示装置である。
【0014】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、上記電圧無印加時において、上記端部に含まれる上記液晶成分の捩れ角は、上記中央部に含まれる液晶成分の捩れ角よりも大きい表示装置である。
【0015】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記中央部の上記高分子分散液晶層、及び、上記端部の上記高分子分散液晶層は、ともにカイラル剤を含有し、上記端部における上記高分子分散液晶層の厚みは、上記中央部における上記高分子分散液晶層の厚みよりも厚い表示装置である。
【0016】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(5)のいずれかの構成に加え、上記中央部の上記高分子分散液晶層は、上記端部の上記高分子分散液晶層よりも上記ポリマーネットワークの密度が高い表示装置である。
【0017】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(6)のいずれかの構成に加え、上記電極は、上記一対の基板の上記高分子分散液晶層と対向する側にそれぞれ配置された一対の電極である表示装置である。
【0018】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加え、上記光源は、複数色の発光素子を含み、上記複数色の発光素子は、時分割で点灯されるフィールドシーケンシャル方式で駆動される表示装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、薄型であり、表示画面を大面積化しても高いコントラスト及び輝度が得られるシースルーディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
【
図2A】
図1に示した液晶パネルの透明状態を説明した断面模式図である。
【
図2B】
図1に示した液晶パネルの散乱状態を説明した断面模式図である。
【
図4】高分子分散液晶層の正面透過率の測定方法を説明した斜視図である。
【
図5】高分子分散液晶層の角度依存性を示したグラフである。
【
図6】実施例1に係る表示装置の透明状態を示した断面模式図である。
【
図7】
図6に示した液晶パネルの散乱状態を示した断面模式図である。
【
図8】実施例2に係る表示装置の透明状態を示した断面模式図である。
【
図9】
図8に示した液晶パネルの散乱状態を示した断面模式図である。
【
図10】実施例3に係る表示装置の透明状態を示した断面模式図である。
【
図11】
図10に示した液晶パネルの散乱状態を示した断面模式図である。
【
図12A】実施例3に用いた一方の基板に対する配向処理方法を説明した平面模式図である。
【
図12B】実施例3に用いた他方の基板に対する配向処理方法を説明した平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0022】
図1は、実施形態に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
図1に示したように、表示装置100は、液晶パネル1と、液晶パネル1の背面側に配置された光源2とを備える。光源2は、例えば、筐体(図示せず)に固定されてもよい。本明細書中、本明細書中、「前面側」とは、観察者に近い側であり、表示装置の表示画面に対してより近い側を意味する。「背面側」とは、表示装置の表示画面に対してより遠い側であり、上記前面側と反対側を意味する。
【0023】
液晶パネル1は、一対の基板10及び20と、高分子分散液晶層30を有し、一対の基板10及び20は、高分子分散液晶層30を挟持する。基板10は、透明基材11と、電極12と、配向膜13とを有してもよい。基板20は、透明基材21と、電極22と、配向膜23とを有してもよい。
【0024】
透明基材11、21としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。透明基材11、21は、例えば、全光線透過率が90%以上のものをいう。全光線透過率は、JIS K 7361-1に準拠した方法で測定される。上記全光線透過率は、例えば、日本電色工業社製の濁度計「HazeMeter NDH2000」等を用いて測定できる。
【0025】
基板10及び20は、高分子分散液晶層30に電圧を印加する電極を有する。
図1では、上記電極が、基板10及び20の高分子分散液晶層30と対向する側にそれぞれ配置された一対の電極12、22である場合を例示した。電極12、22は、それぞれ異なる電源と接続され、異なる電位が供給されることが好ましい。
図1の場合、高分子分散液晶層30に電圧を印加すると、電極12と22との間で、高分子分散液晶層30の厚み方向に沿って縦電界が形成される。電極12と22の材料としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電材料が挙げられる。
【0026】
表示装置100は平面視において、マトリクス状に配置された複数の画素を有してもよい。この場合、表示装置100は、アクティブマトリクス駆動の表示装置とすることができる。電極12と22のいずれか一方の電極は、画素毎に配置された複数の画素電極を含み、画素毎に配置されたTFT等のスイッチング素子により、画素電極毎にオン・オフの制御が行われてもよい。他方の電極は、例えば、平面状に掲載されたベタ電極であり、共通電位が供給される共通電極であってもよい。一方で、電極12と22がともに、平面状に掲載されたベタ電極であり、画素に区分せずに、表示装置100の全面の透過率が一様に制御されてもよい。この場合、表示装置100は調光パネル、照明器具等として用いることができる。
【0027】
配向膜13は、基板10の高分子分散液晶層30と対向する側に配置され、高分子分散液晶層30と接することが好ましい。配向膜23は、基板20の高分子分散液晶層30と対向する側に配置され、高分子分散液晶層30と接することが好ましい。配向膜13、23は、高分子分散液晶層30への電圧無印加時における、ポリマーネットワーク中に分散された液晶成分の配向方位を制御する。配向膜13、23は、電圧無印加時において、液晶成分の長軸方向が、基板10面及び基板20面に対して平行に配向するホモジニアス配向となるように、平行に配向処理されることが好ましい。配向膜13、23の材料は特に限定されず、ラビング用の配向膜材料、光配向膜材料等、液晶表示装置の分野において通常使用されるものを用いることができる。配向膜13、23は、ラビング又は光照射により、配向処理されることが好ましい。
【0028】
高分子分散液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)層30は、ポリマーネットワークと、ポリマーネットワーク中に分散された液晶成分とを含む。高分子分散液晶層30は、電圧無印加時に背景が透けて見える透明状態となり、電圧印加時に上記光源から入射された光を散乱する散乱状態となるように制御される。上記のような、電圧無印加時に透明状態となり、電圧印加時に散乱状態となる表示方法をリバースモードともいう。なお、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時に透明状態となる表示方法をノーマルモードともいう。上記電圧無印加時とは、高分子分散液晶層30への印加電圧が液晶成分の閾値電圧未満(電圧無印加を含む)である時を意味し、電圧印加時とは、高分子分散液晶層30への印加電圧が液晶成分の閾値電圧以上である時を意味する。
【0029】
以下に、
図2A及び
図2Bを用いて、透明状態及び散乱状態における液晶分子の配向状態を説明する。
図2Aは、
図1に示した液晶パネルの透明状態を説明した断面模式図である。
図2Bは、
図1に示した液晶パネルの散乱状態を説明した断面模式図である。
図2A及び
図2Bは、液晶パネルの中央部を示したものである。
【0030】
図2Aに示したように、電圧無印加時では、ポリマーネットワーク31と液晶成分32の配向方位が略等しいことが好ましい。
図2Aでは、ポリマーネットワーク31と液晶成分32がともに基板10面及び基板20面に対してホモジニアス配向している場合を例示した。電圧無印加時には、高分子分散液晶層30の厚み方向を含むあらゆる方向において、液晶成分32とポリマーネットワーク31の異常光屈折率neの屈折率差、及び、液晶成分32とポリマーネットワーク31の常光屈折率noの屈折率差がほとんどない。そのため、光源から照射された光は高分子分散液晶層30を透過し、透明状態となる。
【0031】
上記透明状態とは、光に対して透明性を有する状態である。透明状態にある高分子分散液晶層30の透過率は80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。透明状態にある高分子分散液晶層30の透過率の上限は、例えば100%である。本明細書中、透明状態及び散乱状態における高分子分散液晶層の透過率は、平行光線透過率をいう。上記平行光線透過率は、大塚電子製の「LCD5200(photal)」により測定できる。
【0032】
図2Bに示したように、電圧印加時には、ポリマーネットワーク31は、基板10面及び基板20面に対して水平配向したままであるが、液晶成分32は、垂直方向に配向している。電圧印加時は、高分子分散液晶層30中に形成された電界により、液晶成分32の配向方位が変化する一方で、ポリマーネットワーク31は電界の影響を受けない。そのため、高分子分散液晶層30の厚み方向を含むあらゆる方向において、液晶成分32とポリマーネットワーク31の異常光屈折率neの屈折率差、及び、液晶成分32とポリマーネットワーク31の常光屈折率noの屈折率差が大きくなる。高分子分散液晶層30に無偏光の光が入射すると、偏光に依存せず散乱するため、高分子分散液晶層30は散乱状態となる。
【0033】
上記散乱状態とは、光を散乱する状態であり、曇りガラス様の外観を呈する。散乱状態にある高分子分散液晶層30の透過率は10%以下であってもよく、8%以下であってもよい。散乱状態にある高分子分散液晶層30の透過率の下限は、例えば0%である。散乱状態にある高分子分散液晶層30の光散乱率を示すヘイズは、印加された電圧に応じて変化するが、例えば、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。散乱状態にある高分子分散液晶層30の光散乱率を示すヘイズの上限は、例えば100%である。本明細書中、ヘイズは、JIS K 7136に準拠した方法で測定される。上記ヘイズは、例えば、日本電色工業社製の濁度計「HazeMeter NDH2000」等を用いて測定される。上記光は、可視光であってもよい。
【0034】
表示装置100は、高分子分散液晶層30中の液晶成分32とポリマーネットワーク31のneの屈折率差、及び、noの屈折率差を変えることで、液晶パネル1を透過する光の量を調整するため、一般的な液晶パネルで必要とされる偏光板を必要としない。
【0035】
高分子分散液晶層30の厚さは、3μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0036】
液晶成分32は、下記式で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよいが、正の誘電率異方性を有するものが好ましい。液晶成分32の誘電率異方性は、0より大きく、20以下であることがより好ましい。なお、液晶成分の長軸方向が遅相軸の方向となる。
Δε=(長軸方向の誘電率)-(短軸方向の誘電率)
【0037】
液晶成分32の屈折率異方性Δnは、0.14以上であることが好ましい。上記Δnの上限は、例えば、0.28である。液晶のΔnは大きければ大きいほど好ましく、液晶成分32とポリマーネットワーク31の異常光屈折率neの屈折率差、及び、液晶成分32とポリマーネットワーク31の常光屈折率noの屈折率差を大きくすることができる。
【0038】
液晶成分32の回転粘性γは、100mPa・s以上、400mPa・s以下であることが好ましい。上記γの範囲とすることで、液晶成分32の応答速度を早くすることができ、光源2を後述するフィールドシーケンシャル方式で駆動した場合に、混色を抑制することができる。上記γは、200mPa・s以下であることがより好ましい。
【0039】
液晶成分32としては、例えば、トラン系の液晶材料(-C≡C-(炭素炭素三重結合)を連結基として有する液晶材料)を用いることができる。トラン系の液晶材料の具体例としては、下記一般式(L1)で表される構造を有する液晶材料が挙げられる。
【0040】
【化1】
(上記式中、Q
1及びQ
2は、それぞれ独立に芳香環基を表し、Xは、フッ素基又はシアノ基を表し、n
1及びn
2は、それぞれ独立に0又は1を表す。)
【0041】
上記一般式(L1)におけるn1及びn2は、同時に0となることはない。すなわち、n1及びn2の和は1又は2である。
【0042】
上記一般式(L1)における芳香環基は置換基を有していてもよい。
【0043】
上記一般式(L1)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、下記一般式(L2-1)~(L2-7)のいずれかの構造であることが好ましい。
【0044】
【0045】
上記一般式(L1)で表わされる構造を有する液晶材料の具体的構造としては、例えば以下の構造が挙げられる。
【0046】
【0047】
ポリマーネットワーク31は、重合性液晶化合物の硬化物であることが好ましい。ポリマーネットワーク31は、例えば、繊維状の上記硬化物が三次元的に連続してマトリクスを形成していてもよい。液晶成分32は、ポリマーネットワーク31中に相分離して分散した状態で存在する。
【0048】
透明状態における高分子分散液晶層30の透明性を向上させる観点からは、ポリマーネットワークを構成する重合性液晶化合物と、上記液晶成分とは、電圧無印加時において、同程度の異常光屈折率ne及び常光屈折率noを有することが好ましい。例えば、重合性液晶化合物と上記液晶成分との異常光屈折率neの差、常光屈折率noの差は、いずれも、Δno, Δne ≦ 0.02であることが好ましい。より好ましくは、Δno, Δne ≦ 0.01以下である。
【0049】
上記重合性液晶化合物は、室温で液晶相を示して上記液晶成分と相溶し、硬化してポリマーネットワークを形成した後は、上記液晶成分と相分離するものが好ましい。上記重合性液晶化合物は、紫外線照射により硬化する光重合性液晶化合物であってもよい。
【0050】
上記光重合性液晶化合物としては、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基、及び、これらの誘導体等の置換基(以下、メソゲン基ともいう);シンナモイル基、カルコン基、シンナミリデン基、β-(2-フェニル)アクリロイル基、及び、これらの誘導体等の光反応性基;並びに、アクリレート、メタクリレート、マレイミド、N-フェニルマレイミド、シロキサン等の重合性基を有するモノマーを挙げることができる。上記重合性基はアクリレートが好ましい。また、上記光重合性液晶化合物が有する1分子あたりの重合性基の数は特に限定されないが、1つ又は2つであることが好ましい。なお、上記液晶成分は、アクリレート、メタクリレート、マレイミド、N-フェニルマレイミド、シロキサン等の重合性基を有していなくてよい。
【0051】
高分子分散液晶層30中の上記重合性液晶化合物の含有量は、上記液晶成分の重量に対して、5重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
【0052】
高分子分散液晶層30は、重合開始剤を含んでもよい。高分子分散液晶層30中の上記重合開始剤の含有量は、上記重合性液晶化合物の重量に対して、5重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
【0053】
上記重合開始剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、下記化学式(IN1)で表されるOmnirad184(登録商標)(IGM Resins.B.V社製)、下記化学式(IN2)で表されるOXE03(BASF社製)等を用いることができる。
【0054】
【0055】
【0056】
高分子分散液晶層30は、カイラル剤を含んでもよい。高分子分散液晶層30がカイラル剤を含む場合、液晶パネル1の全面ではなく、一部の領域に含まれることが好ましい。
【0057】
高分子分散液晶層30中の上記カイラル剤の含有量は、上記液晶成分と上記重合性液晶化合物と上記重合開始剤とを足し合わせた重量に対して、0.5重量%以上、4重量%以下であることが好ましい。
【0058】
カイラル剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。カイラル剤としては、例えば、CM-51L(JNC社製)、下記化学式(C1)で表されるS-811(メルク社製)等を用いることができる。
【0059】
【0060】
図3は、
図1に示した表示装置の平面模式図である。平面視において、上記高分子分散液晶層の上記光源から近い領域を端部5とし、上記端部よりも上記光源から遠い領域を中央部6とする。
図3では、第一の光源2Aから近い領域を第一の端部5Aとし、第二の光源2Bから近い領域を第二の端部5Bとする。すなわち、
図3では、二つの端部(第一の端部5Aと第二の端部5B)の間に中央部6が配置されている。本明細書の説明において、第一の端部5Aと第二の端部5Bとを特に区別しない場合、単に端部5と表示する。
【0061】
端部5と中央部6とは、それぞれ、上記散乱状態において、背面側から入射される光の角度に応じて、前面側の正面から出射される光の透過率が変化する角度依存性を有し、かつ端部5の上記角度依存性と中央部6の上記角度依存性とは異なる。上記「前面側の正面から出射される光の透過率」は、液晶パネルを受光角約3°で測定した平行光線透過率をいい、以下、「正面透過率」ともいう。正面透過率が高いほど、液晶パネル1を前面側(観察者側)から見た場合に、散乱が強いことを意味し、散乱状態における液晶パネル1の輝度が高いことを表す。
【0062】
上記角度依存性とは、上記散乱状態において、高分子分散液晶層の背面側から入射される光の角度に応じて、高分子分散液晶層の前面側の正面から出射される光の透過率が変化する性質をいう。端部5の角度依存性と中央部6の角度依存性とが異なることで、液晶パネル1の面内でより均一な正面特性(高コントラスト及び高輝度)が得られる。なお、透明状態の正面散乱特性は、高分子分散液晶層の種類に依存せず、光が入射される角度によらず、ほぼ変化がないことから、高分子分散液晶層が複数種類の構成を含むことで、輝度を向上させつつ、コントラストを向上させることができる。
【0063】
(高分子分散液晶層の角度依存性の検討)
以下に
図4及び
図5を用いて、高分子分散液晶層の角度依存性について説明する。
図4は、高分子分散液晶層の正面透過率の測定方法を説明した斜視図である。
図5は、高分子分散液晶層の角度依存性を示したグラフである。
図5中、横軸を投光角(°)、縦軸を正面透過率とする。
【0064】
本発明者らは、特定の角度依存性を有する1種類の高分子分散液晶層のみで構成された液晶セルを作製し、高分子分散液晶層の角度依存性を検討した。検討に用いた液晶セルは、
図4に示したように、ポリマーネットワーク31と液晶成分32を含む高分子分散液晶層30と、高分子分散液晶層30を挟持する一対の基板10、20を有する液晶セルであり、図示は省略するが、一対の基板10、20は、それぞれ、高分子分散液晶層30側に平面電極と配向膜とを有する構成とした。
【0065】
図4に示したように、当該検討では、液晶セルの法線方向から、180°方位に特定の角度θxをとり、液晶セルの背面から上記θxで光L1を照射し、液晶セルの全面側から出射される光L2を測定して、正面透過率を得た。上記θxを投光角ともいう。液晶成分32が散乱状態において、高分子分散液晶層30の厚み方向、すなわち基板10、20の表面に対し垂直に配向する場合、上記投光角θxは、液晶成分の配向方向と光の照射方向との成す角でもある。
【0066】
以下の参考例1~3の液晶セルを作製し、上記の方法でそれぞれ投光角と正面透過率との関係を検討した。参考例1の高分子分散液晶層は、ポリマーネットワークと、屈折率異方性Δnが0.14の液晶成分と、カイラル剤を含む。参考例2の高分子分散液晶層は、ポリマーネットワークと、屈折率異方性Δnが0.14の液晶成分を含み、カイラル剤を含まない。参考例3の高分子分散液晶層は、ポリマーネットワークと、屈折率異方性Δnが0.18の液晶成分を含み、カイラル剤を含まない。
【0067】
図5に示したように、参考例1は、投光角が約4°~12°の範囲で、正面への散乱が最も強くなった。参考例2は、投光角が約12°~40°の範囲で、正面への散乱が最も強くなった。参考例3は、投光角が約40°以上の範囲で、正面への散乱が最も強くなった。これらの結果から、高分子分散液晶層が1種類の構成で作製されるのではなく、複数種類の構成を含んだ方が、散乱状態にいて、液晶パネル全面の輝度(明るさ)を高くすることができ、正面から観察した場合の散乱特性(正面散乱特性)を改善できることが分かった。
【0068】
端部5は光源から近いため輝度が高く、端部5に入射される光の投光角は小さい。一方で、中央部6は光源から遠いため、端部よりは輝度が低くなる。また、中央部6に入射される光の投光角は、端部5よりも大きくなる。そのため、端部5には、小さい投光角で高い正面透過率が得られるPDLC材料を用い、中央部6には、大きい投光角で高い正面透過率がPDLC材料を用いることが好ましい。なお、
図5に示したように、角度依存性とが異なる材料は、投光角を大きくしていくと、正面透過率が逆転する角度が存在するともいえる。
【0069】
端部5と中央部6の角度依存性を異ならせる方法としては、上記検討を踏まえると、以下の(i)又は(ii)の方法が挙げられ、上記検討以外の方法としては、以下(iii)~(v)の方法が挙げられる。なお、下記(ii)は、下記(i)又は(iii)と組み合わせてもよく、下記(v)は、下記(i)~(iv)のいずれかと組み合わせてもよい。
【0070】
(i)端部5において、高分子分散液晶層30はカイラル剤を含有し、中央部6において、高分子分散液晶層30はカイラル剤を含有しないことが好ましい。例えば、上記検討で用いた参考例1の構成を端部5に配置し、参考例2の構成を中央部6に配置してもよい。
【0071】
(ii)中央部6に含まれる上記液晶成分の屈折率異方性は、端部5に含まれる上記液晶成分の屈折率異方性よりも高いことが好ましい。例えば、上記検討で用いた参考例2の構成を端部5に配置し、参考例3の構成を中央部6に配置してもよい。
【0072】
(iii)上記電圧無印加時において、端部5に含まれる上記液晶成分の捩れ角は、中央部6に含まれる液晶成分の捩れ角よりも大きいことが好ましい。上記捩れ角とは、液晶パネル1を法線方向から観察した場合に、一方の基板の近傍に位置する液晶成分の配向方位と、他方の基板の近傍に位置する液晶成分の配向方位とが成す角をいう。配向膜13と配向膜23との配向処理方向を変えることで、液晶成分の配向方位を異ならせることができる。
【0073】
上記捩れ角は、70°以上、90°以下であることが好ましい。より好ましい下限は、80°である。
【0074】
(iv)中央部6の上記高分子分散液晶層、及び、端部5の高分子分散液晶層30は、ともにカイラル剤を含有し、端部5における高分子分散液晶層30の厚みは、中央部6における高分子分散液晶層30の厚みよりも厚いことが好ましい。
【0075】
端部5、中央部6ともにカイラル剤を含むため、端部5、中央部6のそれぞれにおいて、ポリマーネットワークと液晶成分とは特定のピッチで捩れているが、厚みが厚い端部5では、厚みが薄い中央部6よりも、ポリマーネットワーク及び液晶成分の捩れが大きい。そのため、散乱状態にすると、中央部6では拡散する散乱光によって正面側にも光が出射されるが、端部5では中央部よりも光が正面以外にも強く散乱・拡散され、正面に光があまり出てこない。そのため、中央部6は、端部5よりも散乱が強くなる。
【0076】
基板10が有する電極12及び/又は基板20有する電極22上の中央部6に対応する部分に、樹脂等でオーバーコート層を形成すること等により、端部5における高分子分散液晶層30の厚みを、中央部6における高分子分散液晶層30の厚みよりも厚くすることができる。なお、高分子分散液晶層30を支持するスペーサは、端部5に配置されるスペーサの方が、中央部6に配置されるスペーサよりも高いことが好ましい。また、中央部6と端部5の2領域において異なる2種類の高さのスペーサを用いてもよいが、高さが異なる3種類以上のスペーサを用いて、3つ以上の領域を形成し、中央部から端部に向かって、段階的に高分子分散液晶層30の厚さを厚くしていくことがより好ましい。
【0077】
端部5における高分子分散液晶層30の厚みと、中央部6における高分子分散液晶層30の厚みの差は、2μm以上であることが好ましい。上記差の上限は、特に限定されないが、例えば、8μmである。具体的には、中央部6における高分子分散液晶層30の厚みを3μmとし、端部5における高分子分散液晶層30の厚みを10μmとしてもよい。
【0078】
(v)中央部6の高分子分散液晶層30は、端部5の上記高分子分散液晶層よりも上記ポリマーネットワークの密度が高いことが好ましい。上記ネットワークの密度は、上記液晶成分の重量に対する重合性化合物の濃度によって調整することができる。紫外線照射により重合性化合物が全て反応すると仮定すると、上記ネットワークの密度は上記重合性化合物の濃度と近似される。
【0079】
中央部6の高分子分散液晶層30におけるポリマーネットワークの密度を高くする方法としては、例えば、端部5よりも、中央部6の高分子分散液晶層30に含まれる重合性化合物及び/又は重合開始剤の含有量を多くする方法が挙げられる。例えば、中央部6における重合開始剤の含有量:端部5における重合開始剤の含有量=重合性化合物に対して2~5重量%:重合性化合物に対して5~10重量%であることが好ましい。
【0080】
他の方法としては、例えば、ポリマーネットワークを形成する際に、中央部6に照射する紫外線の照射量又は照度を、端部5に照射する紫外線の照射量又は照度よりも高くしてもよい。上記紫外線の照射方法としては、例えば、端部5及び中央部6に1回目の紫外線照射を行った後、端部5をマスクし、中央部6に対してのみ2回目の紫外線照射を行ってもよい。また、端部5にハーフトーンマスクを配置することで、1回の紫外線照射で、端部5よりも中央部6への紫外線の照射量又は照度を高くすることができる。
【0081】
上記(i)、(ii)及び(v)の端部5と中央部6とで重合性化合物及び/又は重合開始剤の含有量を変える方法は、端部5と中央部6との間に隔壁を設けて区画する方法が挙げられる。上記隔壁は、例えば、線状のリブ突起を設けたり、上記リブ突起の代替となるようにスペーサを高密度に一列配置することで形成できる。なお、上記リブ突起は、アクリル、ポリイミド、ポリイミドアミド、エポキシ等の有機樹脂、又は、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素等の無機絶縁材料を用いて形成することができる。他の方法としては、例えば、一方の基板上に、端部5と中央部6とで異なる材料を液晶滴下した後、他方の基板と貼り合わせる方法(以下、ODF工法ともいう)等が挙げられる。
【0082】
光源2が配置された辺と直交する方向における端部5の幅W1とし、中央部6の幅をW2とすると、一つのW1とW2とは、1:3~1:10であることが好ましい。上記W1は、例えば、3cm以上、10cm以下であってもよい。上記W2は、例えば、20cm以上、30cm以下であってもよい。
【0083】
なお、上記隔壁を設ける場合、端部5、中央部6は、それぞれシール材や隔壁で区画され、上記端部5の幅W1は、光源2が配置された辺から隔壁までの距離であり、中央部6の幅W2は、中央部6を区画する隔壁間の距離である。上記(iii)の場合、配向膜に対する配向処理方向を異ならせることで、端部5及び中央部6を区画することができ、上記端部5の幅W1、中央部6の幅W2は、電圧無印加状態での液晶分子の配向方位を確認することで設定できる。上記(iv)の場合、上記端部5の幅W1、中央部6の幅W2は、高分子分散液晶層30の厚みを図ることで確認できる。
【0084】
中央部と端部の2領域に分ける場合を例示したが、更に他の領域を含んでもよい。例えば端部、中間領域、中央部、中間領域、端部のような構成であってもよい。
【0085】
上記光源は、空気層4を介して上記液晶パネルと間隔を空けて配置される。従来の表示装置では、導光板を有するエッジ型のバックライトを用いたり、液晶パネルと導光板の貼り合わせに、透明光学シート(OCA)が用いられることがあった。導光板の側面に対して水平方向から照射された光は、導光板の内部で反射し、液晶パネルに向かって出射されるが、導光板の内部での反射や、OCAを通過する際に、光がロスし、表示装置の輝度が低くなることがあった。本実施形態に係る表示装置は、上記光源が、空気層4を介して上記液晶パネルと間隔を空けて配置されるため、従来の導光板の内部での反射や、OCAを通過する際の光のロスがなく、輝度を高くすることができる。そのため、表示画面の面積を大きくしても、高いコントラストと輝度が得られる。
【0086】
光源から液晶パネルの背面側の表面までの距離(空気層の厚さ)Hは、表示装置のサイズによって、適宜選択されるが、例えば、1cm以上、15cm以下である。
【0087】
上記光源は、上記液晶パネルに向かって斜め方向から光を照射する。このような態様とすることにより、上記光源から、従来の導光板の側面から光を入射したり、特許文献1のように光変調層の側面から光を入射する場合と比べて、光の減衰を抑えることができ、液晶パネルの中央付近での輝度(より具体的には正面輝度)を高めることができる。そのため、表示装置の表示画面を大面積化しても、高いコントラスト及び輝度が得られる。
【0088】
上記液晶パネルに向かって斜め方向から光を照射するとは、上記光源から照射される光が、液晶パネルのパネル面に対して平行でなければよい。表示パネルのサイズや、用いる液晶材料の種類によって適宜選択されるが、液晶パネルの法線方向を0°とした場合に、光源の主面が30°以上、80°以下である。
【0089】
光源2は、液晶パネルの少なくとも一つの外縁に沿って配置される。
図3に示したように、液晶パネルの対向する二つの短辺に沿って、第一の光源2Aと第二の光源2Bとが配置されてもよい。本明細書中、第一の光源2Aと第二の光源2Bとを特に区別しない場合、単に光源2と表示する。光源2は、平面視において、光源2が配置された外縁とは異なる外縁の二等分線に向かって光を照射することが好ましい。液晶パネルの対向する二つの短辺に沿って、第一の光源2Aと第二の光源2Bとが配置される場合、第一の光源2A、第二の光源2Bはそれぞれ、平面視において、
図1~
図3に一点鎖線で示した液晶パネルの長辺の二等分線に向かって光を照射することが好ましい。
【0090】
上記光源は、上記端部と上記中央部に対して、異なる角度から光を照射する。
図1に示したように、液晶パネル1の法線方向を0°とし、光源2が配置された外縁が液晶パネルの短辺である場合、中央部に入射される光の角度(以下、中央部への投光角ともいう)θ1は、液晶パネルの長辺の二等線に向かって照射される光と、上記0°との成す角度である。また、端部に入射される光の角度(以下、端部への投光角ともいう)θ2は、光源から最も離れた端部5の端に向かって照射される光と、上記0°との成す角度である。端部と中央部とが隣接する場合、端部と中央部との境界に向かって照射される光と、上記0°との成す角度が端部への投光角θ2となる。
【0091】
中央部への投光角θ1は、端部への投光角θ2よりも大きいことが好ましい。中央部への投光角θ1は、例えば、5°以上、20°以下であってもよい。端部への投光角θ2は、例えば、30°以上、80 °以下であってもよい。
【0092】
上記光源は、単色であってもよいし、複数色の発光素子を含んでもよい。上記発光素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)等が挙げられる。上記発光素子は等方向に発光するものが好ましい。上記複数色の発光素子は、例えば、赤色、緑色、青色の発光素子を含んでもよい。
【0093】
上記光源は、複数色の発光素子を含み、上記複数色の発光素子は、時分割で点灯されるフィールドシーケンシャル方式で駆動(以下、FSC駆動ともいう)されもよい。FSC駆動は、複数色の発光素子を、色毎に時間をずらして順次点灯させることで、カラー表示をすることができる。FSC駆動によりカラー表示を行うことで、カラーフィルタを必要としないため、表示装置を薄型化することができる。また、偏光板が不要であることに加え、カラーフィルタや、カラーフィルタを区分するブラックマトリクスを必要としないため、一般的な平面型のバックライトを有する液晶表示装置と比べて、表示装置の輝度を高くすることができる。
【0094】
表示装置100は、例えば、テレビ、電子広告、ショーウィンドウ、証明器具、調光パネル、アミューズメント、案内板、モバイル端末等として用いることができる。
【0095】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例1~4に係る表示装置はいずれも、フィールドシーケンシャル方式で駆動される、リバースモードの表示装置である。
【0096】
<実施例1>
実施例1は、上記(i)と(v)とを組み合わせて作製した表示装置の具体例である。すなわち、実施例1に係る表示装置は、端部において、高分子分散液晶層はカイラル剤を含有し、中央部において、高分子分散液晶層はカイラル剤を含有せず、かつ、中央部の高分子分散液晶層は、端部の上記高分子分散液晶層よりも上記ポリマーネットワークの密度が高い表示装置である。
図6は、実施例1に係る表示装置の透明状態を示した断面模式図である。
図7は、
図6に示した液晶パネルの散乱状態を示した断面模式図である。
【0097】
実施例1では、投光角が小さくなる高分子分散液晶層130の端部(第一の端部105A及び第二の端部105B)に、投光角が約4°~12°の範囲で正面への散乱が最も強くなるカイラル剤を含むPDLC材料を用い、投光角が大きくなる高分子分散液晶層130の中央部106に、投光角が約12°~40°の範囲で正面への散乱が最も強くなるカイラル剤を含まないPDLC材料を用いた。
【0098】
第一の端部105A及び第二の端部105Bに用いた高分子分散液晶(PDLC)材料は、液晶成分と、重合性化合物と、重合開始剤と、カイラル剤とを含む。上記液晶成分は、屈折率異方性Δnが0.14であり、誘電率異方性Δεが正かつ20以下であり、回転粘性γが120mPa・sのものを用いた。上記重合性化合物としては、紫外線照射により硬化する光重合化合物を用い、上記液晶成分の重量に対して、5重量%となるように添加した。上記重合開始剤は、上記重合性化合物の重量に対して、5重量%となるように添加した。上記カイラル剤は、上記液晶成分と上記重合性液晶化合物と上記重合開始剤とを足し合わせた重量に対して、4重量%となるように添加した。
【0099】
中央部106に用いたPDLC材料は、カイラル剤を含有せず、液晶成分と、重合性化合物と、重合開始剤とを含む。上記液晶成分は、屈折率異方性Δnが0.14であり、誘電率異方性Δεが正かつ20以下であり、回転粘性γが170mPa・sのものを用いた。上記重合性化合物としては、上記端部に用いたものと同じものを用い、上記液晶成分の重量に対して、9重量%となるように添加した。上記重合開始剤は、上記重合性化合物の重量に対して、10重量%となるように添加した。
【0100】
図6を参照すると、透明基材111、121として、縦約30cm、横約40cmの一対のガラス基材を準備し、両ガラス基板の表面に電極112、122として、ITOを用いて透明な平面電極(ベタ電極)を形成した。電極112、122の表面に配向膜113、123を形成して、一対の基板110、120を作製した。配向膜113、123は、光配向膜を用い、液晶成分がホモジニアス配向するように、光配向処理を行った。その後、基板110の配向膜123上に、上述の有機樹脂又は無機絶縁材料を用いて、第一の端部105Aと中央部106との境界、及び、第二の端部105Bと中央部106との境界に、それぞれ隔壁107を作製した。ODF工法により、上記PDLC材料を第一の端部105A、第二の端部105B、中央部106に対して滴下した後、シール材108を用いて基板110と120とを貼り合わせることで、液晶セルを作製した。
【0101】
得られた液晶セルの中央部106に対して、紫外線(波長:365nm)を50mW/cm
2、2J/cm
2照射し、第一の端部105A及び第二の端部105Bに対して、紫外線(波長:365nm)を5.5mW/cm
2、2J/cm
2照射した。上記紫外線照射により、光重合性化合物を硬化させて、ポリマーネットワーク131中に液晶成分132A及び132Bが分散した高分子分散液晶層130を形成した。高分子分散液晶層130の厚さは、3μmとした。以上により19型の液晶パネル101が完成した。
図6に示した、第一の端部105A及び第二の端部105Bの幅W1は約2cm、中央部206の幅は約36cmであった。
【0102】
得られた液晶パネル101の背面に間隔を空けて光源を配置して、実施例1に係る表示装置が完成した。上記光源としては、
図2に示したように、液晶パネルの対向する二つの短辺に沿って、第一の光源102Aと第二の光源102Bとを配置した。第一の光源102Aと第二の光源102Bはともに、赤色R、緑色G、青色BのLEDを含む。第一の光源102A及び第二の光源102Bと、液晶パネルとの距離(空気層の厚さ)Hは、約5cmとした。
図6に示した、θ1は約12°、θ2は約63°とした。すなわち、第一の光源102A、第二の光源102Bのそれぞれから第一の端部105A及び第二の端部105Bに照射される光の角度は、0以上、12°以下であり、第一の光源102A、第二の光源102Bのそれぞれから中央部106に照射される光の角度は、12°より大きく63°以下であった。
【0103】
図6に示したように、電圧無印加時である透明状態では、第一の端部105A及び第二の端部105Bに含まれる液晶成分132Bとポリマーネットワーク131とは、一対の基板110、120の表面に対して水平に配向し、かつ、同じピッチで捩れていた。中央部106に含まれる液晶成分132Aとポリマーネットワーク131とは、一対の基板110、120の表面に対して水平に、かつ一対の基板110、120の長手方向に沿って配向していた。透明状態では、液晶成分132Bとポリマーネットワーク131の異常光屈折率ne及び常光屈折率noの屈折率差がほとんどないため、光源から照射された光は、高分子分散液晶層130を透過し透明状態となった。
【0104】
図7に示したように、電極112と122との間に電圧が印加されると、高分子分散液晶層130の厚さ方向に沿って縦電界が形成され、液晶成分132A及び132Bは立ち上がる。一方で、ポリマーネットワーク131の配向方位は変化しないため、液晶成分132A及び132Bとポリマーネットワーク131の異常光屈折率ne及び常光屈折率noの屈折率差が大きくなり、光源から照射された光は、高分子分散液晶層130で散乱される。
【0105】
実施例1に係る表示装置は、散乱状態において、液晶パネル101の中央部106で5以上の正面コントラスト、100cd/m2以上の輝度が得られ、液晶パネル101の第一の端部105A及び第二の端部105Bで5以上の正面コントラスト、200cd/m2以上の輝度が得られた。
【0106】
<実施例2>
実施例2は、上記(ii)で作製した表示装置の具体例である。すなわち、実施例2に係る表示装置は、中央部に含まれる液晶成分の屈折率異方性が、端部に含まれる液晶成分の屈折率異方性よりも高い表示装置である。
図8は、実施例2に係る表示装置の透明状態を示した断面模式図である。
図9は、
図8に示した液晶パネルの散乱状態を示した断面模式図である。
【0107】
実施例2では、投光角が小さくなる高分子分散液晶層130の端部(第一の端部205A及び第二の端部205B)に、投光角が約12°~40°の範囲で正面への散乱が最も強くなる屈折率異方性Δnが低い液晶成分を含むPDLC材料を用い、投光角が大きくなる高分子分散液晶層130の中央部206に、投光角が約40°以上の範囲で正面への散乱が最も強くなる屈折率異方性Δnが高い液晶成分を含むPDLC材料を用いた。
【0108】
第一の端部205A及び第二の端部205Bに用いた高分子分散液晶(PDLC)材料は、カイラル剤を含有せず、液晶成分と、重合性化合物と、重合開始剤とを含む。上記液晶成分、上記重合性化合物及び上記重合開始剤は、実施例1の端部で用いたものと同じものと用いた。上記重合性化合物は、上記液晶成分の重量に対して、9重量%となるように添加した。上記重合開始剤は、上記重合性化合物の重量に対して、5重量%となるように添加した。
【0109】
中央部206に用いた高分子分散液晶(PDLC)材料は、カイラル剤を含有せず、液晶成分と、重合性化合物と、重合開始剤とを含む。上記液晶成分は、屈折率異方性Δnが0.18であり、誘電率異方性Δεが正かつ20以下であり、回転粘性γが170mPa・sのものを用いた。上記重合性化合物及び上記重合開始剤は、実施例1の端部で用いたものと同じものと用いた。上記重合性化合物は、上記液晶成分の重量に対して、9重量%となるように添加した。上記重合開始剤は、上記重合性化合物の重量に対して、10重量%となるように添加した。
【0110】
実施例1と同様にして、一対の基板110、120を作製し、配向膜113、123に配向処理を行った後、実施例1と同様にして、配向膜123上の第一の端部205Aと中央部206との境界、及び、第二の端部205Bと中央部206との境界に、それぞれ隔壁107を作製した。ODF工法により、上記PDLC材料を第一の端部205A、第二の端部205B、中央部206に対して滴下した後、シール材108を用いて基板110と120とを貼り合わせることで、液晶セルを作製した。
【0111】
得られた液晶セルの中央部206、第一の端部205A及び第二の端部205Bに対して、紫外線(波長:365nm)を50mW/cm
2、2J/cm
2照射した。上記紫外線照射により、光重合性化合物を硬化させて、ポリマーネットワーク131中に液晶成分232A及び232Bが分散した高分子分散液晶層130を形成した。高分子分散液晶層130の厚さは、3μmとした。以上により19型の液晶パネル201が完成した。
図8に示した、第一の端部205A及び第二の端部205Bの幅W1は約2cm、中央部206の幅は約36cmであった。
【0112】
得られた液晶パネル201の背面に間隔を空けて実施例1と同様の光源を配置して、実施例2に係る表示装置が完成した。第一の光源102A及び第二の光源102Bと、液晶パネル202との距離(空気層の厚さ)Hは、約5cmとした。
図8に示した、θ1は約40°、θ2は約63°とした。すなわち、第一の光源102A、第二の光源102Bのそれぞれから第一の端部205A及び第二の端部205Bに照射される光の角度は、0以上、40°以下であり、第一の光源102A、第二の光源102Bのそれぞれから中央部206に照射される光の角度は、40°より大きく63°以下であった。
【0113】
図8に示したように、電圧無印加時である透明状態では、第一の端部205A、第二の端部205B及び中央部206に含まれる液晶成分232A及び232Bとポリマーネットワーク131とは、一対の基板110.120の表面に対して水平に、かつ一対の基板110.120の長手方向に沿って配向していた。透明状態では、液晶成分232A及び232Bとポリマーネットワーク131の異常光屈折率ne及び常光屈折率noの屈折率差がほとんどないため、光源から照射された光は、高分子分散液晶層130を透過し透明状態となった。
【0114】
図9に示したように、電極112と122との間に電圧が印加されると、高分子分散液晶層130の厚さ方向に沿って縦電界が形成され、液晶成分232A及び232Bは立ち上がる。一方で、ポリマーネットワーク131の配向方位は変化しないため、液晶成分232A及び232Bとポリマーネットワーク131の異常光屈折率ne及び常光屈折率noの屈折率差が大きくなり、光源から照射された光は、高分子分散液晶層130で散乱される。
【0115】
実施例2に係る表示装置は、散乱状態において、液晶パネル201の中央部206で7以上の正面コントラスト、150cd/m2以上の輝度が得られ、液晶パネル201の第一の端部205A及び第二の端部205Bで7以上の正面コントラスト、300cd/m2以上の輝度が得られた。実施例2は実施例1よりも特に端部において高い正面コントラストと輝度が得られた。
【0116】
なお、実施例1と2とを組み合わせて、カイラル剤を含まず、端部に含まれる液晶成分よりも屈折率異方性が高い液晶成分を含むPDLC材料を高分子分散液晶層の中央部に用い、カイラル剤を含み、中央部に含まれる液晶成分よりも屈折率異方性が低い液晶成分を含むPDLC材料を高分子分散液晶層の端部に用いてもよい。
【0117】
<実施例3>
実施例3は、上記(iii)で作製した表示装置の具体例である。すなわち、実施例3に係る表示装置は、電圧無印加時において、端部に含まれる液晶成分の捩れ角が、中央部に含まれる液晶成分の捩れ角よりも大きい表示装置である。
図10は、実施例3に係る表示装置の透明状態を示した断面模式図である。
図11は、
図10に示した液晶パネルの散乱状態を示した断面模式図である。
【0118】
実施例3では、投光角が小さくなる高分子分散液晶層130の端部(第一の端部205A及び第二の端部205B)に、投光角が約12°~40°の範囲で正面への散乱が最も強くなる屈折率異方性Δnが低い液晶成分を含むPDLC材料を用い、投光角が大きくなる高分子分散液晶層130の中央部206に、投光角が約40°以上の範囲で正面への散乱が最も強くなる屈折率異方性Δnが高い液晶成分を含むPDLC材料を用いた。
【0119】
第一の端部305A、第二の端部305B及び中央部206に用いた高分子分散液晶(PDLC)材料は、カイラル剤を含有せず、液晶成分と、重合性化合物と、重合開始剤とを含む。ずなわち、中央部206に含まれる323Aと、第一の端部305A及び第二の端部305Bに含まれる323Bは同じ液晶材料である。上記液晶成分、上記重合性化合物及び上記重合開始剤は、実施例1の端部で用いたものと同じものと用いた。また、上記重合性化合物及び上記重合開始剤は、実施例1の端部と同量とした。
【0120】
実施例1と同様にして、一対のガラス基材の表面に電極112、122を形成し、電極112、122の表面に配向膜313、323を形成して、一対の基板310、320を作製した。配向膜313、323は光配向膜である。
【0121】
以下に
図12A及び12Bを用いて、実施例3における配向膜の配向処理方向について説明する。
図12Aは、実施例3に用いた一方の基板に対する配向処理方法を説明した平面模式図である。
図12Bは、実施例3に用いた他方の基板に対する配向処理方法を説明した平面模式図である。
図12Aは、基板310を配向膜313側からみた場合の基板310の平面模式図である。
図12Bは、基板320を配向膜323側からみた場合の基板320の平面模式図である。
図12A及び
図12B中、矢印は、配向処理方向を表す。
【0122】
図12Aに示したように、基板310に形成された配向膜313は、第一の端部305A、第二の端部305B及び中央部306に対応する領域に対して、同方向に光配向処理(紫外線照射)を行った。具体的には、基板310の長手方向と平行に光配向処理を行った。
【0123】
図12Bに示したように、基板320に形成された配向膜323は、中央部306に対応する領域に対して、上記配向膜313の中央部306に対応する領域に対して行った配向処理方向と平行かつ逆方向となるように光配向処理を行った。配向膜323の第一の端部305A及び第二の端部305Bに対応する領域に対して、上記配向膜313の第一の端部305A及び第二の端部305Bに対応する領域に対して行った配向処理方向と89°を成す方位に光配向処理を行った。
【0124】
上記PDLC材料を基板310の配向膜313上に滴下した後、配向膜313と323が対向するように、基板310と320とをシール材108を用いて貼り合わせることで、液晶セルを作製した。得られた液晶セルの中央部306、第一の端部305A及び第二の端部305Bに対して、紫外線(波長:365nm)を50mW/cm
2、2J/cm
2照射した。上記紫外線照射により、光重合性化合物を硬化させて、ポリマーネットワーク131中に液晶成分332A及び332Bが分散した高分子分散液晶層130を形成した。高分子分散液晶層130の厚さは、3μmとした。以上により19型の液晶パネル301が完成した。
図10に示した、第一の端部305A及び第二の端部305Bの幅W1は約2cm、中央部306の幅は約36cmであった。
【0125】
得られた液晶パネル301の背面に間隔を空けて実施例1と同様の光源を配置して、実施例3に係る表示装置が完成した。第一の光源102A及び第二の光源102Bと、液晶パネル302との距離(空気層の厚さ)Hは、約5cmとした。
図10に示した、θ1は約12°、θ2は約63°とした。すなわち、第一の光源102A、第二の光源102Bのそれぞれから第一の端部305A及び第二の端部305Bに照射される光の角度は、0以上、12°以下であり、第一の光源102A、第二の光源102Bのそれぞれから中央部306に照射される光の角度は、12°より大きく63°以下であった。
【0126】
図10に示したように、電圧無印加時である透明状態では、中央部306に含まれる液晶成分332Aとポリマーネットワーク131とは、一対の基板310、330の表面に対して水平に、かつ一対の基板310、330の長手方向に沿って配向していた。すなわち、中央部306における液晶成分のねじれ角は0°であった。
【0127】
一方で、第一の端部305A及び第二の端部305Bに含まれる液晶成分332Aとポリマーネットワーク131はともに、基板310側から基板320に向かって捩じれている。液晶パネル301を法線方向から観察した場合に、一方の基板310の近傍に位置する液晶成分332Bの配向方位と、他方の基板320の近傍に位置する液晶成分332Bの配向方位とは、89°の角度を成していた。すなわち、第一の端部305A及び第二の端部305Bにおける液晶成分332Bのねじれ角は89°であった。
【0128】
透明状態では、液晶成分332A及び332Bとポリマーネットワーク131の異常光屈折率ne及び常光屈折率noの屈折率差がほとんどないため、光源から照射された光は、高分子分散液晶層130を透過し透明状態となった。
【0129】
図11に示したように、電極112と122との間に電圧が印加されると、高分子分散液晶層130の厚さ方向に沿って縦電界が形成され、液晶成分332A及び332Bは立ち上がる。一方で、ポリマーネットワーク131の配向方位は変化しないため、液晶成分332A及び332Bとポリマーネットワーク131の異常光屈折率ne及び常光屈折率noの屈折率差が大きくなり、光源から照射された光は、高分子分散液晶層130で散乱される。
【0130】
実施例3に係る表示装置は、散乱状態において、液晶パネル301の中央部306で5以上の正面コントラスト、100cd/m2以上の輝度が得られ、液晶パネル301の第一の端部305A及び第二の端部305Bで5以上の正面コントラスト、150cd/m2以上の輝度が得られた。実施例3は、実施例1よりも端部における散乱が弱くなるものの、面内にわたり強い散乱が得られる。
【符号の説明】
【0131】
1、101、201:液晶パネル
2A、102A:第一の光源
2B、102B:第二の光源
4:空気層
5A、105A、205A、305A:第一の端部
5B、105B、205B、305B:第二の端部
6、106、206、306:中央部
8、108:シール材
10、20、110、120、310、320:透明基板
11、21、111、121:透明基材
12、22、112、122:電極
13、23、113、123、313、323:配向膜
30、130:高分子分散液晶層
31、131:ポリマーネットワーク
32、132A、132B、232A、232B、332A、332B:液晶分子
100:表示装置
107:隔壁