IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沖電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図1
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図2
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図3
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図4
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図5
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図6
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図7
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図8
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図9
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図10
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図11
  • 特開-硬貨処理装置及び貨幣取扱装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189162
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】硬貨処理装置及び貨幣取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/18 20190101AFI20221215BHJP
【FI】
G07D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097575
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】久下 英七
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141GA01
3E141GB01
3E141HA06
3E141HA09
3E141JA02
3E141LA23
3E141LA31
3E141LA45
(57)【要約】
【課題】硬貨を安定的に搬送する。
【解決手段】硬貨処理装置4は、硬貨CNを収納する収納空間31と、該収納空間31に収納された硬貨CNを放出する放出口35とを有する複数の硬貨収納部30と、放出口35から放出された硬貨CNを搬送する中央搬送部22とを設け、硬貨収納部30は、中央搬送部22を挟んだ両側に配置され、中央搬送部22を挟んで対向する硬貨収納部30同士の間で、放出口35から中央搬送部22への硬貨CNの放出角度Arが異なるようにする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を収納する収納空間と、該収納空間に収納された前記硬貨を放出する放出口とを有する複数の硬貨収納部と、
前記放出口から放出された前記硬貨を搬送する搬送部と
を備え、
前記硬貨収納部は、
前記搬送部を挟んだ両側に配置され、
前記搬送部を挟んで対向する前記硬貨収納部同士の間で、前記放出口から前記搬送部への前記硬貨の放出角度が異なる
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記硬貨収納部は、
前記搬送部を挟んで対向して配置される前記硬貨収納部との間で、前記搬送部における前記硬貨の搬送方向に関し、前記放出口の位置が異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記硬貨収納部は、
前記搬送部を挟んで対向して配置される前記硬貨収納部との間で、前記搬送部に対する前記放出口の高さが異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記硬貨収納部は、
前記収納空間から前記放出口へ向けて硬貨を繰り出す放出機構と、
前記放出機構と前記放出口との間において前記放出角度に沿って形成され、前記放出機構から繰り出された前記硬貨を前記放出角度に沿って前記搬送部まで搬送する放出搬送路と
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記硬貨収納部は、
前記放出機構と前記放出口との間で前記放出搬送路を形成する搬送路ガイド
をさらに備え、
前記搬送路ガイドは、
前記放出機構側から前記放出口側へ向かって少なくとも一部分が前記放出角度に沿う方向に延在して設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記搬送部は、
前記硬貨の搬送方向に直交する方向の幅が、前記硬貨処理装置において取り扱われる前記硬貨のうち最も直径が大きい硬貨の直径の2倍未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記硬貨収納部は、
前記搬送部を挟んだ両側で、該搬送部における前記硬貨の搬送方向に沿って並べて配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記搬送部に対する一方向側に配された複数の前記硬貨収納部におけるそれぞれの前記放出角度が互いに共通であり、前記搬送部に対する他方向側に配された複数の前記硬貨収納部におけるそれぞれの前記放出角度が互いに共通である
ことを特徴とする請求項7に記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
前記搬送部に対する一方向側に配された複数の前記硬貨収納部におけるそれぞれの前記放出口の位置が互いに共通であり、前記搬送部に対する他方向側に配された複数の前記硬貨収納部におけるそれぞれの前記放出口の位置が互いに共通である
ことを特徴とする請求項7に記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
前記放出角度は、前記搬送部における前記硬貨の搬送方向に直交する方向に対し、前記搬送方向へ向かって傾斜した角度である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項11】
硬貨の処理に関する操作を受け付ける操作部と、
前記硬貨が投入される投入口と、
前記硬貨を収納する収納空間と、該収納空間に収納された前記硬貨を放出する放出口とを有する複数の硬貨収納部と、
前記放出口から放出された前記硬貨を搬送する搬送部と
を備え、
前記硬貨収納部は、
前記搬送部を挟んだ両側に配置され、
前記搬送部を挟んで対向する前記硬貨収納部同士の間で、前記放出口から前記搬送部への前記硬貨の放出角度が異なる
ことを特徴とする貨幣取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置及び貨幣取扱装置に関し、例えば貨幣(すなわち硬貨及び紙幣)を取り扱う貨幣取扱装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的大規模の小売店(例えばスーパーマーケット等)では、顧客が精算処理を行う複数の精算所にそれぞれ紙幣及び硬貨を取り扱う貨幣取扱装置としてのレジスターが設置される場合がある。この貨幣取扱装置としては、例えば紙幣を処理する紙幣処理装置と、硬貨を処理する硬貨処理装置とを有するものがある。
【0003】
このうち硬貨処理装置は、投入された硬貨を1枚ずつ繰り出す硬貨投入部、硬貨を搬送する搬送部、硬貨の金種や真偽等を識別する認識部、金種毎に硬貨を収納する収納庫、使用者へ釣銭を出金する硬貨出金部、及び使用者へ硬貨を返却する返却部等を有している。この硬貨処理装置は、認識部において金種毎に選別した硬貨を硬貨処理装置内部に収納する場合は収納庫へ収納する一方、使用者へ返却する場合は返却部に収納する。またこの硬貨処理装置は、使用者へ釣銭として出金する硬貨を収納庫から繰り出して硬貨出金部へ搬送する。
【0004】
このような硬貨処理装置においては、図12に示すように、硬貨を収納する硬貨収納部30(硬貨収納部30A、30B、30C、30D、30E及び30F)を左右に振り分けて配置することにより装置奥行を短くし、左側に配置された硬貨収納部30A、30B及び30Cと右側に配置された硬貨収納部30D、30E及び30Fとの間に、前後方向に沿う例えばベルト搬送機構である中央搬送部22を設け、左右の硬貨収納部30から中央搬送部22へ硬貨を放出し、該中央搬送部22により硬貨を硬貨出金トレイ28へ搬送するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-198008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらそのような硬貨処理装置は、図12に示すように、左右に分けて配置した硬貨収納部30である例えば硬貨収納部30C及び30Dから中央搬送部22へ同時に硬貨CN(硬貨CN100及びCN10)を放出した場合、放出のタイミングによっては、これら硬貨CN100と硬貨CN10とが中央搬送部22上で衝突し弾かれ合い、予期せぬ場所へ飛び出してしまう可能性がある。また、中央搬送部22へ安定的に硬貨CNが放出されないことから硬貨搬送に想定よりも時間が掛かってしまい不具合が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、硬貨を安定的に搬送し得る硬貨処理装置及び貨幣取扱装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、硬貨を収納する収納空間と、該収納空間に収納された硬貨を放出する放出口とを有する複数の硬貨収納部と、放出口から放出された硬貨を搬送する搬送部とを設け、硬貨収納部は、搬送部を挟んだ両側に配置され、搬送部を挟んで対向する硬貨収納部同士の間で、放出口から搬送部への硬貨の放出角度が異なるようにした。
【0009】
また本発明の貨幣取扱装置においては、硬貨の処理に関する操作を受け付ける操作部と、硬貨が投入される投入口と、硬貨を収納する収納空間と、該収納空間に収納された硬貨を放出する放出口とを有する複数の硬貨収納部と、放出口から放出された硬貨を搬送する搬送部とを設け、硬貨収納部は、搬送部を挟んだ両側に配置され、搬送部を挟んで対向する硬貨収納部同士の間で、放出口から搬送部への硬貨の放出角度が異なるようにした。
【0010】
これにより、搬送部を挟んで対向する硬貨収納部同士から搬送部へ移動する硬貨同士の経路が重ならないようにでき、互いの硬貨を衝突させにくくできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬貨を安定的に搬送し得る硬貨処理装置及び貨幣取扱装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】貨幣取扱装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】硬貨処理装置の構成を示し、(A)は正面図、(B)は右側面である。
図3】硬貨収納部の構成を示す平面図である。
図4】放出角度を示す平面図である。
図5】分力を示す平面図である。
図6】出金時繰出動作(1)を示す平面図である。
図7】出金時繰出動作(2)を示す平面図である。
図8】出金時繰出動作(3)を示す平面図である。
図9】出金時繰出動作(4)を示す平面図である。
図10】出金時繰出動作(5)を示す平面図である。
図11】他の実施の形態による硬貨収納部の構成を示す平面図である。
図12】従来の出金時における出金動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
[1.貨幣取扱装置の全体構成]
図1に示すように、貨幣取扱装置1は、全体として概ね直方体状に形成されており、大きく分けて、紙幣を取り扱う紙幣処理装置2と、硬貨を取り扱う硬貨処理装置4と、表示操作部11と、レシートプリンタ12とにより構成されている。この紙幣処理装置2と硬貨処理装置4とは、中空の直方体状に構成された筐体6に収容されている。この貨幣取扱装置1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される。以下では、貨幣取扱装置1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0015】
制御部8は、筐体6内部に設けられており、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有し、該CPUにより該ROM等から読み出した所定のプログラムを実行することにより種々の処理を行い、貨幣取扱装置1全体を統括制御する。
【0016】
紙幣処理装置2は、操作者により紙幣入金口9から投入された紙幣を取り込んで内部の紙幣収納庫(図示せず)に収納すると共に、制御部8から指示された紙幣を紙幣収納庫から繰り出し、これを紙幣出金口10から釣銭として出金する。
【0017】
硬貨処理装置4は、操作者により硬貨投入口14Aから投入された硬貨を取り込んで内部の硬貨収納部30(硬貨収納部30A、30B、30C、30D、30E及び30F)(図3)に収納すると共に、制御部8から指示された硬貨を硬貨収納部30から繰り出し、これを硬貨出金トレイ28から釣銭として出金する。因みに硬貨は、一般的な硬貨と同様、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属又はこれらの合金やその組み合わせでなり、薄い板状に形成されている。
【0018】
表示操作部11は、例えば液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示機能を有する表示パネルの表面にタッチセンサが組み合わされた、いわゆるタッチパネルとして構成されている。この表示操作部11は、制御部8の制御に基づき、認識した商品の名称や金額等、種々の表示画面を表示する他、使用者のタッチ操作を受け付けて該制御部8に通知する。これに応じて制御部8は、商品の数量の増減や金額の修正等を行う。
【0019】
レシートプリンタ12は、例えば一般的なサーマルプリンタと類似した構成となっており、感熱紙がロール状に回巻されたロール紙を保持するホルダや、このロール紙から引き出された感熱紙を搬送する搬送機構、及び熱によりこの感熱紙に文字や図形等を印刷するサーマルヘッド等を有している。このレシートプリンタ12は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これを排出する。
【0020】
[2.硬貨処理装置の構成]
図2に示すように、硬貨処理装置4は、箱状の筐体6を中心に構成されており、使用者との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。なお図2は、作図の都合上、硬貨の移動範囲を規制しながら案内する搬送ガイド等の部材等、筐体6内部の構成を適宜省略して模式的に描くと共に、硬貨の搬送経路を模式的に示している。
【0021】
硬貨入金部14は、筐体6の上面の前端部近傍に設けられており、使用者により投入される硬貨を受ける部分である。この硬貨入金部14は、上側に配置され硬貨が投入される硬貨投入口14Aと、その下側に配置され該硬貨を繰り出す硬貨繰出部14Bとを有している。硬貨投入口14Aは、上側が広く下側が狭いすり鉢状に構成されており、硬貨を一括して投入しやすいように、広く開口している。硬貨投入口14Aに投入された硬貨は、硬貨繰出部14Bに落下する。
【0022】
硬貨繰出部14Bは、硬貨入金部14の下方に位置しており、その内部に回転円盤が設けられている。硬貨繰出部14Bは、回転円盤が回転する際の遠心力により硬貨を外周側へ移動させ、一枚ずつに分離して繰り出し、該硬貨を硬貨送出部15に引き渡す。硬貨送出部15は、上下に対向するローラを有しており、硬貨繰出部14Bから硬貨を受け取ると、所定のタイミングでローラを回転させ、硬貨を硬貨鑑別部16へ順次引き渡す。
【0023】
硬貨鑑別部16は、例えば画像センサや磁気センサ等、硬貨の特徴を認識する種々のセンサ(図示せず)を有している。この硬貨鑑別部16は、硬貨送出部15から繰り出された硬貨の特徴を認識し、この特徴に基づいて該硬貨の真偽、金種及び正損等の鑑別を行い、得られた鑑別結果を制御部8(図1)へ通知すると共に、該硬貨を選別搬送部17に引き渡す。このとき制御部8は、該硬貨の搬送先を決定する。
【0024】
選別搬送部17は、硬貨が搬送される搬送路が概ね水平に形成されると共に、この搬送路に沿ってリジェクト孔18及び6個の受入孔19が設けられている。なお図2においては6個の受入孔19のうち右側に設けられた一部である3個のみを記載している。リジェクト孔18は、例えば入金取引において、硬貨鑑別部16による硬貨鑑別結果に基づいて真正でないと鑑別された硬貨、或いは取扱対象でない他国の硬貨や遊戯施設のメダル等の異物(以下これらをリジェクト硬貨とも呼ぶ)を選別する部分である。各受入孔19は、真正であると鑑別された硬貨(以下これを正貨とも呼ぶ)を金種別に選別する部分であり、500円、100円、50円、10円、5円及び1円といった6種類の金種がそれぞれ割り当てられている。
【0025】
リジェクト孔18には、制御部8の制御に基づいて開閉する選別ゲート(図示せず)が設けられている。この選別ゲートは、リジェクト孔18を閉塞している場合、硬貨を選別搬送部17に沿って進行させる一方、該リジェクト孔18を開放している場合、硬貨を落下させて排出する。各受入孔19は、リジェクト孔18と同様の選別ゲート(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0026】
かかる構成により選別搬送部17は、硬貨鑑別部16から受け取った硬貨を搬送路に沿って搬送しながら、制御部8の制御に基づき、硬貨を選別する。具体的に選別搬送部17は、硬貨のうち、真正で無いと鑑別されたリジェクト硬貨をリジェクト孔18から排出させる一方、真正であると鑑別された正貨をその金種に応じた受入孔19から排出させる。
【0027】
リジェクト孔18の下側には、排出させた硬貨を下方向へ案内しながら進行させるリジェクトシュート20が設けられている。一方、各受入孔19の下方には、排出させた硬貨を下方向へ案内しながら進行させるシュート21がそれぞれ設けられている。各シュート21の下側には、図3に示す6つの硬貨収納部30(硬貨収納部30A、30B、30C、30D、30E及び30F)が設けられている。各硬貨収納部30は、各受入孔19と同様、それぞれ金種が割り当てられている。
【0028】
リジェクトシュート20(図2)の下側であり、硬貨収納部30A、30B及び30Cと硬貨収納部30D、30E及び30Fとの間(図3)には、中央搬送部22が設けられている。中央搬送部22は、前後方向に関し、硬貨収納部30C及び30Dの後端部から、リフト出金搬送部26までに至る範囲に配置されている。中央搬送部22は、前後端部に配されたプーリと、該プーリの周囲にほぼ水平方向に沿って前後方向に延びるように張架された無端ベルトとにより構成されている。この中央搬送部22は、制御部8の制御に基づき、プーリを図2(B)中で反時計回りに回転させる。このため中央搬送部22は、無端ベルトの上面を回収庫24へ向かって前方である搬送方向Dtへ移動させる。以下では、中央搬送部22の搬送ベルトに盤面を当接させた状態の硬貨の厚さに沿う厚さ方向(上下方向)と、搬送方向Dtとに直交する左右方向を、搬送幅方向Dwとも呼ぶ。また中央搬送部22における搬送幅方向Dwの幅は、硬貨処理装置4において取り扱われる硬貨のうち最も直径が大きい硬貨である最大硬貨の直径の2倍未満に設定されている。
【0029】
中央搬送部22(図2)の前端部近傍の下側には、回収庫24が設けられている。回収庫24は、上面が開口する直方体形状であり、リジェクト硬貨を収納する。
【0030】
また中央搬送部22よりも前側には、リフト出金搬送部26が設けられている リフト出金搬送部26は、主に、右側に設けられたリフト出金搬送部26Rと、左側に設けられたリフト出金搬送部26Lとにより構成されている。リフト出金搬送部26R及び12Lは、それぞれ、ベルトと、該ベルトの移動方向の変曲箇所にそれぞれ配置され該ベルトを周囲に張架されるプーリとにより構成されている。プーリは、中心軸を前後方向に沿わせた円柱状に形成されており、該中心軸を中心として回転し得る。ベルトは、前後方向に所定の長さ(すなわち幅)を有する無端ベルトであり、全体として上下方向延びるようにプーリに張架されている。かかる構成においてリフト出金搬送部26は、リフト出金搬送部26Rのベルトとリフト出金搬送部26Lのベルトとの間に硬貨を挟み込み、上方向へ向かって硬貨出金トレイ28まで搬送する。
【0031】
硬貨出金トレイ28は、筐体6の前面に設けられており、上面が開口する形状であり、前面から使用者がアクセス可能に配置されている。硬貨出金トレイ28は、リフト出金搬送部26から搬送された、釣銭となる金額に応じた金種及び枚数の硬貨を収納する。
【0032】
また、リフト出金搬送部26には、ゲート(図示せず)が設けられている。このゲートは、リフト出金搬送部26の硬貨搬送経路上における孔部(図示せず)を閉塞している場合、硬貨をリフト出金搬送部26に沿って進行させる一方、該孔部を開放している場合、硬貨を落下させて回収庫24へ排出する。
【0033】
かかる構成において硬貨処理装置4は、リジェクト孔18から中央搬送部22へ落下してきた硬貨を、中央搬送部22によってリフト出金搬送部26へ向かって前方へ搬送し、回収庫24へ落下させ収納させる。一方、硬貨処理装置4は、硬貨収納部30から中央搬送部22へ繰り出された出金すべき硬貨を、中央搬送部22によってリフト出金搬送部26へ向かって前方へ搬送し、リフト出金搬送部26によって硬貨出金トレイ28まで搬送し出金する。
【0034】
[3.硬貨収納部の構成]
図3に示すように、硬貨処理装置4においては、中央搬送部22よりも搬送幅方向Dwにおける一方向側である左側において、互いにほぼ同一の構成である硬貨収納部30A、30B及び30Cが、前側から後側に向かって、前後方向に沿って整列するように配置されている。また硬貨処理装置4においては、中央搬送部22よりも搬送幅方向Dwにおける他方向側である右側において互いにほぼ同一の構成である硬貨収納部30D、30E及び30Fが、後側から前側に向かって、前後方向に沿って整列するように配置されている。以下では、硬貨収納部30A、30B、30C、30D、30E及び30Fをまとめて、硬貨収納部30とも呼ぶ。
【0035】
硬貨収納部30Aと硬貨収納部30Fとは、搬送方向Dtに関し互いに同一の位置に配置されている。このため硬貨収納部30Aと硬貨収納部30Fとは、中央搬送部22を挟んで左右方向(搬送幅方向Dw)に対向している。硬貨収納部30A及び30Fは、互いに搬送方向Dtに関し互いに同一の位置に配置され、中央搬送部22を挟んで左右方向(搬送幅方向Dw)に対向する、2個で1組の硬貨収納部30となっており、この1組を対向収納部組29aとも呼ぶ。
【0036】
また硬貨収納部30Bと硬貨収納部30Eとは、搬送方向Dtに関し互いに同一の位置に配置されている。このため硬貨収納部30Bと硬貨収納部30Eとは、中央搬送部22を挟んで左右方向(搬送幅方向Dw)に対向している。硬貨収納部30B及び30Eは、1組の対向収納部組29bを形成している。
【0037】
さらに硬貨収納部30Cと硬貨収納部30Dとは、搬送方向Dtに関し互いに同一の位置に配置されている。このため硬貨収納部30Cと硬貨収納部30Dとは、中央搬送部22を挟んで左右方向(搬送幅方向Dw)に対向している。硬貨収納部30C及び30Dは、1組の対向収納部組29cを形成している。このように、対向収納部組29c、29b及び29aは、後側から前側に向かって搬送方向Dtに沿って配置されている。以下では、対向収納部組29a、29b及び29cをまとめて対向収納部組29とも呼ぶ。
【0038】
硬貨収納部30A、30B、30C、30D、30E及び30Fは、それぞれに収納する硬貨の金種が割り当てられており、それぞれ、500円玉(硬貨CN500)、1円玉(硬貨CN1)、100円玉(硬貨CN100)、10円玉(硬貨CN10)、5円玉(硬貨CN5)及び50円玉(硬貨CN50)を内部に収納する。以下では、硬貨CN500、硬貨CN1、硬貨CN100、硬貨CN10、硬貨CN5及び硬貨CN50をまとめて硬貨CNとも呼ぶ。
【0039】
硬貨収納部30は、正面から見た形状が所定の多角形となり、且つ右方向から見た形状が長方形となるような中空の立体形状であり、上面が開放された開口を有している。このため各硬貨収納部30は、シュート21(図2)から落下してくる金種別の硬貨を、金種別に分別された状態を維持したまま、それぞれ開口から内部の収納空間31(収納空間31A、31B、31C、31D、31E及び31F)に収納する。
【0040】
硬貨収納部30A、30B、30C、30D、30E及び30Fは、互いにほぼ同様に構成されているため、以下では、例として硬貨収納部30Aについて説明する。硬貨収納部30Aは、収納空間31の底部を形成するディスク32Aが設けられている。硬貨収納部30Aは、制御部8(図1)の制御に基づきディスク32Aを回転させることにより、ディスク32Aが回転する際の遠心力により硬貨CN500を外周側へ移動させ、一枚ずつに分離して繰り出し、該硬貨CN500を放出機構33Aに引き渡す。放出機構33Aは、前後に対向するローラを有しており、ディスク32Aから硬貨CN500を受け取ると、ローラを回転させ、硬貨CN500を放出搬送路34A及び放出口35Aを介し中央搬送部22へ放出する。放出機構33Aに対する中央搬送部22側には、放出機構33Aにより弾きだされた硬貨CN500を中央搬送部22へ案内する放出搬送路34Aが形成されている。また放出搬送路34Aにおける中央搬送部22側の端部には、収納空間31Aと中央搬送部22とを連通させる開口部である放出口35Aが形成されている。この放出口35Aは、中央搬送部22の搬送ベルトの上面よりも上側に配置されている。
【0041】
放出搬送路34Aの前側及び後側には、収納庫搬送路ガイド40fA及び収納庫搬送路ガイド40bAが配置されている。収納庫搬送路ガイド40fAは、直線状の後端面であるガイド面40fSA(図4)が形成されている。収納庫搬送路ガイド40bAは、直線状の前端面でありガイド面40fSAと放出搬送路34Aを挟んで前後方向に対向する、ガイド面40fSAと平行なガイド面40bSA(図4)が形成されている。ガイド面40fSAとガイド面40bSAとは、硬貨収納部30Aに収納される硬貨CN500の直径よりも僅かに広い間隔を空けていると共に、放出機構33Aから放出口35Aまでに亘って放出角度Ara(後述する)に沿う方向に直線状に延在するように形成されている。以下では、収納庫搬送路ガイド40fA及び40bAをまとめて収納庫搬送路ガイド40Aとも呼び、ガイド面40fSA及び40bSAをまとめてガイド面40SAとも呼ぶ。収納庫搬送路ガイド40Aは、ガイド面40fSAとガイド面40bSAとにより、収納空間31Aから中央搬送部22へ放出される硬貨CN500の移動をガイドする。
【0042】
以上は硬貨収納部30Aについて説明したが、硬貨収納部30B、30C、30D、30E及び30Fにおいても硬貨収納部30Aとほぼ同様に構成されている。すなわち、硬貨収納部30Aは、収納空間31A、ディスク32A、放出機構33A、放出搬送路34A、放出口35A及び収納庫搬送路ガイド40Aが、硬貨収納部30Bは、収納空間31B、ディスク32B、放出機構33B、放出搬送路34B、放出口35B及び収納庫搬送路ガイド40Bが、硬貨収納部30Cは、収納空間31C、ディスク32C、放出機構33C、放出搬送路34C、放出口35C及び収納庫搬送路ガイド40Cが、硬貨収納部30Dは、収納空間31D、ディスク32D、放出機構33D、放出搬送路34D、放出口35D及び収納庫搬送路ガイド40Dが、硬貨収納部30Eは、収納空間31E、ディスク32E、放出機構33E、放出搬送路34E、放出口35E及び収納庫搬送路ガイド40Eが、硬貨収納部30Fは、収納空間31F、ディスク32F、放出機構33F、放出搬送路34F、放出口35F及び収納庫搬送路ガイド40Fがそれぞれ配置されている。
【0043】
以下では、収納空間31A、31B、31C、31D、31E及び31Fをまとめて、収納空間31とも呼び、ディスク32A、32B、32C、32D、32E及び32Fをまとめて、ディスク32とも呼び、放出機構33A、33B、33C、33D、33E及び33Fをまとめて、放出機構33とも呼び、放出搬送路34A、34B、34C、34D、34E及び34Fをまとめて、放出搬送路34とも呼び、放出口35A、35B、35C、35D、35E及び35Fをまとめて、放出口35とも呼び、収納庫搬送路ガイド40A、40B、40C、40D、40E及び40Fをまとめて、収納庫搬送路ガイド40とも呼ぶ。中央搬送部22に対する全ての放出口35A、35B、35C、35D、35E及び35Fの高さは互いに同一に設定されている。
【0044】
[4.放出角度について]
ここで、中央搬送部22よりも搬送幅方向Dw(左右方向)における一方向側の硬貨収納部30として、硬貨収納部30Aを例として説明すると、図4に示すように、ガイド面40SAに沿って放出搬送路34Aを搬送され中央搬送部22(図3)へ放出される硬貨(図示せず)における、搬送幅方向Dwに対する、放出口35Aを通過する際の進行方向の角度を、放出角度Araと呼ぶ。ガイド面40SAは、収納空間31A側(左側)よりも中央搬送部22側(右側)の方が、搬送幅方向Dw(左右方向)に対し搬送方向Dt側(前側)へ向かって傾斜している。このため放出角度Araは、搬送幅方向Dwに対し搬送方向Dtへ向けて傾斜している。
【0045】
一方、中央搬送部22よりも搬送幅方向Dwにおける他方向側の硬貨収納部30として、硬貨収納部30Fを例として説明すると、ガイド面40SFに沿って放出搬送路34Fを搬送され中央搬送部22(図3)へ放出される硬貨(図示せず)における、搬送幅方向Dwに対する、放出口35Fを通過する際の進行方向の角度を、放出角度Arbと呼ぶ。ガイド面40SFは、収納空間31F側(右側)よりも中央搬送部22側(左側)の方が、搬送幅方向Dw(左右方向)に対し搬送方向Dt側(前側)へ向かって傾斜している。このため放出角度Arbは、搬送幅方向Dwに対し搬送方向Dtへ向けて傾斜している。以下では、放出角度Ara及びArbをまとめて、放出角度Arとも呼ぶ。
【0046】
図4に示すように、対向収納部組29aにおいては、硬貨収納部30Aの放出角度Araは、硬貨収納部30Fの放出角度Arbよりも小さい角度に設定されている。このため硬貨収納部30Aの放出角度Araと硬貨収納部30Fの放出角度Arbとは異なっている。本実施の形態においては、放出角度Araは例えば15[°]に、放出角度Arbは例えば30[°]に設定されている。
【0047】
また対向収納部組29aと同様に、対向収納部組29bにおいては、硬貨収納部30Bの放出角度Araは、硬貨収納部30Eの放出角度Arbよりも小さい角度に設定されている。このため硬貨収納部30Bの放出角度Araと硬貨収納部30Eの放出角度Arbとは異なっている。
【0048】
さらに対向収納部組29aと同様に、対向収納部組29cにおいては、硬貨収納部30Cの放出角度Araは、硬貨収納部30Dの放出角度Arbよりも小さい角度に設定されている。このため硬貨収納部30Cの放出角度Araと硬貨収納部30Dの放出角度Arbとは異なっている。
【0049】
このように硬貨処理装置4においては、それぞれの対向収納部組29において、中央搬送部22を挟んで左右方向に対向する硬貨収納部30同士の放出角度Arが互いに異なっている。また、中央搬送部22の左側に位置し前後方向に沿って並ぶ硬貨収納部30A、30B及び30Cの放出角度Arは、互いに同一の角度の放出角度Araとなっている。さらに、中央搬送部22の右側に位置し前後方向に沿って並ぶ硬貨収納部30D、30E及び30Fの放出角度Arは、互いに同一の角度の放出角度Arbとなっている。
【0050】
これら放出角度Ara及びArbは、対向収納部組29内の一方の硬貨収納部30と他方の硬貨収納部30とから同時に中央搬送部22へ向けて硬貨CNが放出された際に、放出された硬貨CN同士が衝突しない角度に設定されている。
【0051】
また放出角度Arbが放出角度Araよりも大きく設定されているため、中央搬送部22の左側の硬貨収納部30における放出機構33と放出口35との搬送幅方向Dwの間隔と、中央搬送部22の右側の硬貨収納部30における放出機構33と放出口35との搬送幅方向Dwの間隔とが同一に設定されている場合、中央搬送部22の右側の硬貨収納部30における放出搬送路34の搬送路長さは、中央搬送部22の左側の硬貨収納部30における放出搬送路34の搬送路長さよりも長くなる。
【0052】
[5.分力について]
ここで、図5に示すように、収納空間31Aから中央搬送部22へ放出された硬貨CN500は、搬送幅方向Dwから放出角度Ara(図4)だけ傾斜した方向へ向かう力である放出力Fが放出機構33Aから加えられている。この放出力Fは、搬送幅方向Dwに対し傾斜しているため、搬送方向Dtに向かう放出力搬送方向分力Ftと、搬送幅方向Dwに向かう放出力搬送幅方向分力Fwとに分解される。このため硬貨CN500には、搬送幅方向Dwに向かう放出力搬送幅方向分力Fwだけでなく、搬送方向Dtに向かう放出力搬送方向分力Ftが加えられている。
【0053】
同様に、図示しないものの、収納空間31Fから中央搬送部22へ放出された硬貨CN50は、搬送幅方向Dwから放出角度Arb(図4)だけ傾斜した方向へ向かう力である放出力Fが放出機構33Fから加えられている。この放出力Fは、搬送幅方向Dwに対し傾斜しているため、搬送方向Dtに向かう放出力搬送方向分力Ftと、搬送幅方向Dwに向かう放出力搬送幅方向分力Fwとに分解される。このため硬貨CN50には、搬送幅方向Dwに向かう放出力搬送幅方向分力Fwだけでなく、搬送方向Dtに向かう放出力搬送方向分力Ftが加えられている。以上は硬貨収納部30A及び30Fについて説明したが、硬貨収納部30B、30C、30D及び30Eについても同様である。
【0054】
[6.放出口の位置について]
図3に示したように、硬貨収納部30Aの放出口35Aは、硬貨収納部30Aにおける搬送方向Dtのほぼ中央部に設けられている。これに対し、硬貨収納部30Fの放出口35Fは、硬貨収納部30Fにおける搬送方向Dtの先端側近傍に設けられている。このため、対向収納部組29aにおいて、硬貨収納部30Aの放出口35Aと硬貨収納部30Fの放出口35Fとは、互いの搬送方向Dtにおける位置が異なっている。
【0055】
対向収納部組29bにおいても同様に、硬貨収納部30Bの放出口35Bと硬貨収納部30Eの放出口35Eとは、互いの搬送方向Dtにおける位置が異なっている。対向収納部組29cにおいても同様に、硬貨収納部30Cの放出口35Cと硬貨収納部30Dの放出口35Dとは、互いの搬送方向Dtにおける位置が異なっている。
【0056】
このように硬貨処理装置4においては、それぞれの対向収納部組29において、中央搬送部22を挟んで左右方向に対向する硬貨収納部30同士の放出口35の、搬送方向Dtに関する位置が互いに異なっている。また、中央搬送部22の左側に位置し前後方向に沿って並ぶ硬貨収納部30A、30B及び30Cの放出口35A、35B及び35Cは、各収納空間31A、31B及び31Cに対し互いに同一の位置関係となっている。さらに、中央搬送部22の右側に位置し前後方向に沿って並ぶ硬貨収納部30D、30E及び30Fの放出口35D、35E及び35Fは、各収納空間31D、31E及び31Fに対し互いに同一の位置関係となっている。
【0057】
[7.出金時繰出動作]
かかる構成において、出金時に硬貨収納部30から中央搬送部22へ硬貨CNを繰り出す出金時繰出動作について説明する。出金時繰出動作を開始する際、各硬貨収納部30のディスク32が、図示しない駆動源及び駆動伝達機構により、図6に矢印で示す方向へ回転し始め、ディスク32に形成された図示しない溝部の案内により、図7に示すように各放出機構33へ硬貨CNを押し出す。各放出機構33へ押し出された硬貨CNは、図8に示すように各放出機構33により各放出搬送路34へさらに押し出され、各放出機構33における硬貨CNを放出する力と、各放出搬送路34の案内とにより、図9に示すように、放出口35を通過して中央搬送部22へと放出される。各硬貨収納部30から中央搬送部22へ放出された各硬貨CNは最終的に、図10に示すように、中央搬送部22により硬貨出金トレイ28へ全てが運ばれて保留され、使用者による取り出し待ちの状態となる。
【0058】
[8.効果等]
以上の構成において硬貨処理装置4は、前後方向に沿う前方である搬送方向Dtへ向けて硬貨CNを搬送する中央搬送部22を挟んで、左右方向に対向するように硬貨収納部30を配置し、左右方向に対向する硬貨収納部30同士の放出角度Arが異なるようにした。このため硬貨処理装置4は、左右方向に対向する硬貨収納部30同士の放出口35から中央搬送部22の搬送ベルトへ落下するように移動する硬貨CN同士の経路が重ならないようにでき、互いの硬貨CNを衝突させにくくできる。これにより硬貨処理装置4は、左右方向に対向する硬貨収納部30同士から同時に硬貨CNを放出した際に、これら硬貨CN同士を衝突させずに中央搬送部22に放出でき、安定した硬貨搬送を行うことができる。
【0059】
ここで仮に、例えば左右方向に対向する硬貨収納部30同士から硬貨CNを互いに異なるタイミングで放出することにより、左右方向に対向する硬貨収納部30から放出された硬貨CNが衝突しないようにすることも考えられる。しかしながらその場合、一方の硬貨収納部30から硬貨CNを繰り出している最中は他方の硬貨収納部30からは硬貨CNを繰り出さないようにするため、両方の硬貨収納部30から単位時間あたりに繰り出し可能な硬貨CNの枚数が少なくなってしまうと共に、制御が複雑になってしまう。これに対し硬貨処理装置4は、左右方向に対向する硬貨収納部30同士から同時に硬貨CNを放出できるため、効率良く短時間で出金時繰出動作を完了できると共に、簡便な制御にできる。
【0060】
さらに硬貨処理装置4は、搬送幅方向Dwに対し搬送方向Dtへ放出角度Arだけ傾斜した方向へ向かって硬貨収納部30から中央搬送部22へ硬貨CNを放出するようにした。このため硬貨処理装置4は、硬貨CNに対し、搬送幅方向Dwに向かう放出力搬送幅方向分力Fwだけでなく、搬送方向Dtに向かう放出力搬送方向分力Ftを加えることができる。よって硬貨処理装置4は、中央搬送部22の搬送ベルトに硬貨CNの盤面が当接しきった以降は、硬貨CNの搬送速度は搬送ベルトの回転速度に依存するものの、搬送ベルトに硬貨CNの盤面が当接しきる前、すなわち、硬貨収納部30から中央搬送部22へ放出された硬貨CNの盤面が搬送ベルトに当接しきって安定した状態になるまでは、放出力搬送方向分力Ftの分の搬送方向Dtへ向かう前進力を硬貨CNに加えることができる。このため硬貨処理装置4は、搬送幅方向Dwに沿った方向へ向かって硬貨収納部30から中央搬送部22へ硬貨CNを放出する場合と比較して、硬貨収納部30から硬貨出金トレイ28へより一層早く硬貨を搬送し、硬貨収納部30から硬貨出金トレイ28への搬送時間を短縮でき、短時間で出金処理を完了できる。
【0061】
さらに硬貨処理装置4は、左右方向に対向する硬貨収納部30同士の放出口35の、搬送方向Dtに関する位置を互いに異なるようにした。このため硬貨処理装置4は、左右方向に対向する硬貨収納部30同士から同時に硬貨CNを放出した際に、互いの硬貨収納部30から放出される硬貨CNの搬送方向Dtに関する位置を異なるようにし、硬貨CN同士をより一層衝突させにくくできる。
【0062】
ここで仮に、中央搬送部22における搬送幅方向Dwの幅を広くすることにより、左右方向に対向する硬貨収納部30から同時に放出された硬貨CNが衝突しないようにすることも考えられる。しかしながらその場合、硬貨処理装置4の左右幅が広くなってしまうと共に、硬貨CNが中央搬送部22上において搬送幅方向Dwに沿って並んでしまうと、硬貨CNが突っ張ってしまい搬送不良が発生してしまう。これに対し硬貨処理装置4は、中央搬送部22における搬送幅方向Dwの幅を最大硬貨の直径の2倍未満に設定した。このため硬貨処理装置4は、中央搬送部22における搬送幅方向Dwの幅を広くすることなく左右方向に対向する硬貨収納部30同士から同時に硬貨CNを放出できる。これにより硬貨処理装置4は、硬貨処理装置4が大型化してしまうことを防止できると共に、硬貨CNが中央搬送部22上において搬送幅方向Dwに沿って並んで硬貨CNが突っ張り、搬送不良が発生してしまうことを防止できる。
【0063】
さらに硬貨処理装置4は、硬貨収納部30A、30B及び30Cを互いに同一の角度の放出角度Araとし、硬貨収納部30D、30E及び30Fを互いに同一の角度の放出角度Arbとした。このため硬貨処理装置4は、硬貨収納部30A、30B及び30Cのうち少なくとも何れか1つの硬貨収納部30の放出角度Araを他の硬貨収納部30と異なるようにしたり、硬貨収納部30D、30E及び30Fのうち少なくとも何れか1つの硬貨収納部30の放出角度Arbを他の硬貨収納部30と異なるようにしたりする場合と比較して、流用可能な部品数を増加でき、コスト低減ができると共に、品質確認を容易にできる。
【0064】
以上の構成によれば硬貨処理装置4は、硬貨CNを収納する収納空間31と、該収納空間31に収納された硬貨CNを放出する放出口35とを有する複数の硬貨収納部30と、放出口35から放出された硬貨CNを搬送する中央搬送部22とを設け、硬貨収納部30は、中央搬送部22を挟んだ両側に配置され、中央搬送部22を挟んで対向する硬貨収納部30同士の間で、放出口35から中央搬送部22への硬貨CNの放出角度Arが異なるようにした。
【0065】
これにより硬貨処理装置4は、中央搬送部22を挟んで対向する硬貨収納部30同士から中央搬送部22へ移動する硬貨CN同士の経路が重ならないようにでき、互いの硬貨CNを衝突させにくくできる。
【0066】
[9.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、硬貨収納部30A、30B及び30Cが互いに同一の角度の放出角度Araであり、硬貨収納部30D、30E及び30Fが互いに同一の角度の放出角度Arbである場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨収納部30A、30B及び30Cのうち少なくとも何れか1つの硬貨収納部30の放出角度Arが他の硬貨収納部30と異なっても良く、硬貨収納部30D、30E及び30Fのうち少なくとも何れか1つの硬貨収納部30の放出角度Arが他の硬貨収納部30と異なっても良い。要は、中央搬送部22に対し左右方向に関し同じ側に配置された複数の硬貨収納部30の放出角度Arは、全てが同一の角度でなくても良い。ただし、中央搬送部22に対し左右方向に関し同じ側に配置された複数の硬貨収納部30の放出角度Arを全て同一の角度とした方が、それら硬貨収納部30同士において共通の収納庫搬送路ガイド40を用いることができ、部材の種類を抑えることができる。
【0067】
また上述した実施の形態においては、複数の硬貨収納部30において、放出角度Araと放出角度Arbとの2通りの放出角度Arのうちのどちらかを設定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、中央搬送部22を挟んで左右方向に対向する硬貨収納部30同士の放出角度Arが異なれば、3通り以上の任意の種類の放出角度Arのうちの何れかを設定すれば良い。
【0068】
さらに上述した実施の形態においては、放出角度Araを15[°]に、放出角度Arbを30[°]に設定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、放出角度Ara<放出角度Arbの関係を保っていれば、放出角度Araと放出角度Arbとを他の種々の値に設定しても良い。例えば、放出角度Araを0[°](すなわち、放出口35を通過する際の硬貨CNの進行方向が図12と同様に搬送方向Dtに対し直交)に、放出角度Arbを30[°]に設定しても良い。その場合であっても、左右方向に対向する硬貨収納部30同士から同時に硬貨CNを放出した際に、互いの硬貨収納部30から放出される硬貨CNの搬送方向Dtに関する位置を異なるようにし、硬貨CN同士を衝突させにくくできる。
【0069】
さらに上述した実施の形態においては、中央搬送部22を挟んで左右方向に対向する硬貨収納部30同士の放出口35における搬送方向Dtに関する位置を異なるように配置する場合について述べた。本発明はこれに限らず、図3における対向収納部組29aと対応する部材に同一符号を付した図11に示す対向収納部組129aの硬貨収納部130Aの放出口135Aと硬貨収納部130Fの放出口135Fとのように、中央搬送部22を挟んで左右方向に対向する硬貨収納部130同士の放出口135における搬送方向Dtに関する位置を同一に配置しても良い。その場合であっても硬貨処理装置4は、放出口135A及び135Fから落下するように移動する硬貨CNの放出角度Arを異ならせているため、経路を可能な限り重ならないようにでき、互いの硬貨CNを衝突させにくくできる。
【0070】
さらに上述した実施の形態においては、中央搬送部22の左側に配された複数の硬貨収納部30の放出口35を、各硬貨収納部30における搬送方向Dtのほぼ中央部に設け、中央搬送部22の右側に配された複数の硬貨収納部30の放出口35を、各硬貨収納部30における搬送方向Dtの先端側近傍に設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、中央搬送部22の左側に配された複数の硬貨収納部30の放出口35を、各硬貨収納部30における搬送方向Dtに関する種々の位置に設け、中央搬送部22の右側に配された複数の硬貨収納部30の放出口35を、各硬貨収納部30における搬送方向Dtに関する種々の位置に設けても良い。
【0071】
さらに上述した実施の形態においては、硬貨収納部30A、30B及び30Cの放出口35A、35B及び35Cが、硬貨収納部30A、30B及び30Cのうち少なくとも何れか1つの硬貨収納部30における収納空間31に対する放出口35の位置が他の硬貨収納部30と異なっても良く、硬貨収納部30D、30E及び30Fのうち少なくとも何れか1つの硬貨収納部30における収納空間31に対する放出口35の位置が他の硬貨収納部30と異なっても良い。要は、中央搬送部22に対し左右方向に関し同じ側に配置された複数の硬貨収納部30における収納空間31に対する放出口35の位置は、全てが同一の位置でなくても良い。ただし、中央搬送部22に対し左右方向に関し同じ側に配置された複数の硬貨収納部30における収納空間31に対する放出口35の位置全てが同一の位置とした方が、それら硬貨収納部30同士において共通の収納庫搬送路ガイド40を用いることができ、部材の種類を抑えることができる。
【0072】
さらに上述した実施の形態において、例えば硬貨収納部30Aの放出口35Aを硬貨収納部30Fの放出口35Fよりも高くする等、中央搬送部22を挟んで左右方向に対向する硬貨収納部30同士で中央搬送部22に対する放出口35の高さを異なるように設定しても良い。その場合、中央搬送部22を挟んで左右方向に対向する硬貨収納部30同士から同時に中央搬送部22へ向けて硬貨CNが放出された際に、放出された硬貨CN同士が衝突する可能性をより一層低減できる。
【0073】
さらに上述した実施の形態においては、収納庫搬送路ガイド40を放出機構33から放出口35までに亘って放出角度Arに沿う方向に直線状に延在させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、収納庫搬送路ガイド40を例えば湾曲させて延在させても良い。要は、収納庫搬送路ガイド40における放出口35の近傍が少なくとも放出角度Arに沿っており、硬貨BLが放出口35を通過する際の進行方向の角度が、放出角度Arに沿っていれば良い。
【0074】
さらに上述した実施の形態においては、硬貨収納部30A、30B、30C、30D、30E及び30Fに、それぞれ硬貨CN500、硬貨CN1、硬貨CN100、硬貨CN10、硬貨CN5及び硬貨CN50が割り当てられた硬貨処理装置4に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、各硬貨収納部30に、硬貨の金種に関し他の種々の割り当て方がされた硬貨処理装置4に本発明を適用して良い。さらに、6金種が6つの硬貨収納部30に割り当てられたが、5金種以下の任意の金種数の硬貨を硬貨収納部30に割り当てても良い。すなわち、複数個の硬貨収納部30に同一の金種が割り当てられても良い。
【0075】
さらに上述した実施の形態においては、3組の対向収納部組29が設けられた硬貨処理装置4に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、少なくとも1組の対向収納部組29が設けられた硬貨処理装置4に本発明を適用しても良い。
【0076】
さらに上述した実施の形態においては、使用者との間で種々の取引を行うレジ釣銭機である硬貨処理装置4に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えばセルフ精算機等、硬貨を取り扱う他の種々の装置に本発明を適用しても良い。また、媒体搬送部へ媒体を放出する他の種々の装置に本発明を適用しても良い。
【0077】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。また、本発明は、上述した各実施の形態及び上述した他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用する場合や、該抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加する場合にも本発明の適用範囲が及ぶものである。
【0078】
さらに上述した実施の形態においては、操作部としての表示操作部11と、投入口としての硬貨入金部14と、硬貨収納部としての硬貨収納部30と、搬送部としての中央搬送部22とによって、貨幣取扱装置としての貨幣取扱装置1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる操作部と、投入口と、硬貨収納部と、搬送部とによって、貨幣取扱装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えば使用者との間で硬貨に関する取引処理を行う硬貨処理装置等で利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1……貨幣取扱装置、2……紙幣処理装置、4……硬貨処理装置、6……筐体、8……制御部、9……紙幣入金口、10……紙幣出金口、11……表示操作部、12……レシートプリンタ、14……硬貨入金部、14A……硬貨投入口、14B……硬貨繰出部、15……硬貨送出部、16……硬貨鑑別部、17……選別搬送部、18……リジェクト孔、19……受入孔、20……リジェクトシュート、21……シュート、22……中央搬送部、24……回収庫、26……リフト出金搬送部、28……硬貨出金トレイ、29……対向収納部組、30……硬貨収納部、31……収納空間、32……ディスク、33……放出機構、34……放出搬送路、35……放出口、40……収納庫搬送路ガイド、40SA、40SF……ガイド面、Ara、Arb……放出角度、Dt……搬送方向、Dw……搬送幅方向、F……放出力、Ft……放出力搬送方向分力、Fw……放出力搬送幅方向分力、CN1、CN5、CN10、CN50、CN100、CN500……硬貨。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12