(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189174
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】換気システム及び換気システム用ドア
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20221215BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20221215BHJP
F24F 7/013 20060101ALI20221215BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20221215BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20221215BHJP
E06B 7/28 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/06 L
F24F7/013 101G
F24F7/013 101A
F24F7/013 101Z
F24F11/54
F24F11/56
E06B7/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097600
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和也
(72)【発明者】
【氏名】堀江 昭秀
(72)【発明者】
【氏名】小東 弘明
(72)【発明者】
【氏名】小松 和隆
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD07
3L056BF06
3L058BE08
3L058BG04
3L260AB15
3L260BA12
3L260CA03
3L260CA17
3L260CA20
3L260CA38
3L260FC01
3L260JA23
3L260JA24
(57)【要約】
【課題】複数の換気扇を用いて建物の室を適切に換気できるようにする。
【解決手段】換気システム102は、複数の換気扇124と、複数の換気扇124の少なくとも一つによって換気される室の状態を検知する状態センサと、状態センサの検知結果により複数の前記換気扇を連動させる制御装置と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の換気扇と、
複数の前記換気扇の少なくとも一つによって換気される室の状態を検知する状態センサと、
前記状態センサの検知結果により複数の前記換気扇を連動させる制御装置と、
を有する換気システム。
【請求項2】
複数の前記換気扇の少なくとも一つは、建物内を複数の室に仕切る仕切部に設けられる請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
複数の前記状態センサを有し、
前記制御装置は、
複数の前記状態センサの検知結果を受信する受信部と、
前記受信部の受信情報から複数の前記換気扇の運転状態を決定する制御部と、
前記制御部で決定された前記運転状態を複数の前記換気扇に送信する送信部と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
複数の前記換気扇は、前記状態センサ、及び情報を送受信する通信部、
を有しており、
前記通信部は、前記状態センサの検知結果及び前記換気扇の運転状態を前記制御装置との間で、又は相互に送受信する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の換気システム。
【請求項5】
外部換気装置が設置された第一室と、
前記外部換気装置がない第二室と、
少なくとも一つの前記換気扇を有し前記第一室と前記第二室とを換気可能につなぐ換気部と、
を有する請求項1~請求項4の何れか一項に記載の換気システム。
【請求項6】
複数の前記換気扇は、空気の移動を遮断可能なシャッタを有する請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の換気システム。
【請求項7】
複数の前記換気扇は、空気の排出方向を変更可能なルーバを有する請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の換気システム。
【請求項8】
複数の前記換気扇は、空気中の異物を捕捉するフィルタを有する請求項1~請求項7の何れか一項に記載の換気システム。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか一項に記載の換気システムに用いられる換気システム用ドアであって、
ドアパネルを備え、
複数の前記換気扇の少なくとも一つが前記ドアパネルに備えられている、換気システム用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、換気システム及び換気システム用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
建物内の室を自動で換気する換気システムがある。たとえば特許文献1には、屋外に面する側壁に換気扇が設けられた部屋にセンサーボックスが設置され、このセンサーボックスに空気汚染や温・湿度変化のそれぞれに対応して作動する複数のセンサーが集結して組み込まれた自動換気システムが記載されている。この自動換気システムでは、センサーにより空気汚染や温・湿度変化のいずれかが感知されると、換気扇が自動的に運転されて部屋の空気が換気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される従来技術は、屋外に面する側壁に1つの換気扇が設けられている。そして、センサーボックスの各センサーがそれぞれ作動スイッチに接続され、この作動スイッチからの回路は全て一括されて一本のセンサーケーブルにより1つの換気扇に接続されている。
【0005】
建物内の各室を換気するにあたっては、複数の換気扇を運転することが、適切な換気を行う点で効果的である。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、複数の換気扇の設置や運転方法等について考慮されておらず、改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、複数の換気扇を用いて建物の室を適切に換気できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様の換気システムでは、複数の換気扇と、複数の前記換気扇の少なくとも一つによって換気される室の状態を検知する状態センサと、前記状態センサの検知結果により複数の前記換気扇を連動させる制御装置と、を有する。
【0008】
この換気システムでは、複数の換気扇を備え、これら複数の換気扇の少なくとも一つによって換気される室の状態が、状態センサにより検知される。検知結果により、制御装置は、複数の換気扇を連動させる。したがって、1つのみの換気扇を有する換気システムや、複数の換気扇が連動されない換気システムと比較して、室を適切に換気できる。
【0009】
第二態様では、複数の前記換気扇の少なくとも一つは、建物内を複数の室に仕切る仕切部に設けられる。
【0010】
仕切部に設けられた換気扇を運転することで、仕切部で仕切られた複数の室の間で空気を移動させることが可能である。
【0011】
第三態様では、複数の前記状態センサを有し、前記制御装置は、複数の前記状態センサの検知結果を受信する受信部と、前記受信部の受信情報から複数の前記換気扇の運転状態を決定する制御部と、前記制御部で決定された前記運転状態を複数の前記換気扇に送信する送信部と、を有する。
【0012】
複数の状態センサにより、この状態センサが配置された室の状態を検知できる。そして、複数の状態センサで得られた検知情報により、制御装置において、複数の換気扇の運転状態を制御できる。なお、複数の状態センサは、1つの室に集中して配置されていてもよいし、複数の室に分散して配置されていてもよい。
【0013】
第四態様では、複数の前記換気扇は、前記状態センサ、及び情報を送受信する通信部、
を有しており、前記通信部は、前記状態センサの検知結果及び前記換気扇の運転状態を前記制御装置との間で、又は相互に送受信する。
【0014】
複数の換気扇が通信部及び状態センサを有するので、換気扇において、室の状態を検知すると共に、得られた検知結果と換気扇の運転状態を、通信部と制御装置との間で、又は通信部相互で送受信し、複数の換気扇を連動させることが可能となる。
【0015】
第五態様では、外部換気装置が設置された第一室と、前記外部換気装置がない第二室と、少なくとも一つの前記換気扇を有し前記第一室と前記第二室とを換気可能につなぐ換気部と、を有する。
【0016】
これにより、外部換気装置がない第二室であっても、換気部を介して換気できる。
【0017】
第六態様では、複数の前記換気扇は、空気の移動を遮断可能なシャッタを有する。
【0018】
シャッタを閉じることで、換気扇を通る空気の移動を抑制できる。
【0019】
第七態様では、複数の前記換気扇は、空気の排出方向を変更可能なルーバを有する。
【0020】
ルーバにより、空気の排出方向を変更することができる。
【0021】
第八態様では、複数の前記換気扇は、空気中の異物を捕捉するフィルタを有する。
【0022】
フィルタにより、空気中の異物を捕捉することができる。
【0023】
第九態様では、換気システム用ドアであって、ドアパネルを備え、複数の前記換気扇の少なくとも一つが前記ドアパネルに備えられている。
【0024】
この換気システム用ドアを複数用いて換気システムを構成することで、建物の室を適切に換気できるようになる。
【0025】
換気システム用ドアは、工場等での製造時にドアパネルに換気扇を取り付けることで、建物の施工現場での換気扇の取付工事が不要となる。
【発明の効果】
【0026】
本願では、複数の換気扇を用いて建物の室を適切に換気できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は第一実施形態の換気システムを備えた住居を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の換気システムを備えた住居において各換気扇の運転時の空気の流れを示す概略平面図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の換気システムを備えた住居において外部換気装置の無い室を換気する状態を示す概略平面図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の換気システムに用いられる換気システム用ドアを示す斜視図である。
【
図5】
図5は第一実施形態の換気システムのブロック図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の換気システムに用いられる換気扇を示す斜視図である。
【
図7】
図7は第一実施形態の換気システムに用いられる換気扇をドアパネルへの取付状態で示す断面図である。
【
図8】
図8は第一実施形態の換気システムにおける換気扇制御の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は第二実施形態の換気システムを備えた住居を示す概略平面図である。
【
図10】
図10は第二実施形態の換気システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0029】
図1には、第一実施形態の換気システム102を備えた建物104が概略的に示されている。建物104は、戸建住宅であってもよいし、集合住宅の住戸であってもよいが、
図1に示す例では戸建住宅としている。
【0030】
建物104は、建物外壁106を備えており、さらに、建物104の内部は複数の建物内壁108A、108B、108C、108D、108Eによって複数の室110に区画されている。以下において、これらの建物内壁を特に区別しない場合は、建物内壁108として説明する。
【0031】
室110は具体的には、居室110A、居室110B、居室110C、廊下110D、浴室110E、トイレ110Fである。
【0032】
室110はいずれも、冷暖房装置によって温度、湿度等の調整が可能とされている構造を含む。さらには、たとえば居室110A、110B、110C等は、床暖房等の暖房装置を備えていてもよい。
【0033】
居室110Aの建物外壁106には屋外換気口112が設けられている。この屋外換気口112を通じて、居室110Aと建物104の外部とで空気が移動する。
【0034】
さらに、居室110Aの外壁には、屋外換気口112と異なる位置にレンジフード114が設けられている。レンジフード114を通じて、居室110Aの空気を建物104の外部に排出することができる。
【0035】
浴室110Eの建物外壁106には、浴室換気口116が設けられている。浴室換気口116を通じて、浴室110Eの空気を建物104の外部に排出することができる。
【0036】
トイレ110Fには、トイレ換気口118が設けられている。トイレ換気口118を通じて、トイレ110Fの空気を建物104の外部に排出することができる。
【0037】
上記した屋外換気口112、レンジフード114、浴室換気口116及びトイレ換気口118はいずれも外部換気装置の例である。すなわち、居室110A、浴室110E及びトイレ110Fは外部換気装置が設けられた室である。これに対し、居室110B及び居室110Cは、外部換気装置が設けられていない室である。
【0038】
廊下110Dと、その周囲の居室110A、居室110B、居室110C、浴室110E及びトイレ110Fの間にはドア120A、120B、120C、120D、120Eが設けられている。以下において、これらのドアを特に区別しない場合は、ドア120として説明する。ドア120はいずれも仕切部の一例であり、本開示の技術に係る換気システム用ドアの一例でもある。
【0039】
図4に示すように、それぞれのドア120は、ドアパネル122と、このドアパネル122に設けられた上換気扇124U、下換気扇124Lと、を有している。各ドア120を閉じた状態であっても、換気扇124を運転することで、ドアの両側の室110の間で空気を移動させることができる。
【0040】
本実施形態では、それぞれのドア120において、2つの換気扇124が、上下に離れて配置されている。以下では、上換気扇124U及び下換気扇124Lとして適宜区別し、特に区別しない場合は単に換気扇124とする。上換気扇124U及び下換気扇124Lは、それぞれ単独での運転、運転停止、正転及び逆転等の切り替えを行うことが可能である。
【0041】
図5~
図7に示すように、換気扇124のそれぞれは、換気扇本体126、シャッタ128、ルーバ130、フィルタ132(
図5では図示省略)、状態センサ134(第一面センサ134A及び第二面センサ134B)、通信部136を有している。
【0042】
換気扇本体126は、たとえば複数のプロペラを有するプロペラファンであり、図示しないモータによる回転で空気の流れを生じさせることができる。そして、ドアパネル122を閉めた状態で、換気扇本体126の運転により、ドアパネル122の両側に位置する室の間で空気を移動させることが可能である。
【0043】
本実施形態では、換気扇本体126は2方向に回転可能(正転及び逆転可能)とされており、
図2に示す矢印F1方向の空気の流れと、矢印F2方向の空気の流れと、を生じさせることができる。なお、換気扇本体126は、このように2方向の空気の流れを生じらせることができれば、プロペラファンに限定されず、シロッコファンやターボファンであってもよい。
【0044】
第一面センサ134Aは、ドアパネル122の表と裏の2面のうちの一方の面(第一面、
図7では左面)に設けられ、第二面センサ134Bは、他方の面(第二面、
図7では右面)に設けられている。第一面センサ134A及び第二面センサ134Bはいずれも、これらのセンサが位置している室110の状態を検知するセンサである。ドア120の閉状態では、仕切部であるドア120によって仕切られる2つの室110の状態を検知することができる。この「状態」には、気温、湿度、気圧、明るさ、CO
2濃度、汚染度、人の有無等の少なくとも一つを含む。なお、ドア120は仕切部の一例であるが、仕切部の他の例として後述する建物内壁とした場合には、建物内壁で仕切られる2つの室110の状態を検知する。
【0045】
第一面センサ134Aは、ドア120の第一面側の状態を検知する。第二面センサ134Bは、ドア120の第二面側の状態を検知する。なお、第一面センサ134Aで検知する「状態」の種類と、第二面センサ134Bで検知する「状態」の種類とは異なっていてもよいが、本実施形態では同じ「状態」を検知できるようになっている。
【0046】
たとえば、第一面センサ134Aが気温、湿度、CO2濃度及び人の存在を検知できる構成である場合は、第二面センサ134Bにおいても、気温、湿度、CO2濃度及び人の存在を検知できる構成である
【0047】
図4に示すように、ドアパネル122には、上換気扇124Uと下換気扇124Lの2つの換気扇が備えられている。ドアパネル122の寸法高さにもよるが、上換気扇124Uの状態センサ134では、たとえば建物104の天井付近における状態を検知できる。これに対し、下換気扇124Lの状態センサ134では、建物104の床付近における状態を検知できる。
【0048】
シャッタ128は、開状態と閉状態の2つの状態を採り得る。開状態では、換気扇124を通る空気の移動が可能である。たとえば、換気扇本体126の運転時には開状態とされる。また、換気扇本体126が運転停止している状態であっても、シャッタ128が開状態であれば、換気扇124を通る空気の流れは可能である。これに対し、シャッタ128の閉状態では、換気扇124を通る空気の流れを遮断する。換気扇本体126が運転停止している状態でシャッタ128を閉状態とすれば、換気扇124を通る空気の流れが遮断された状態を実現できる。さらに、シャッタ128の閉状態では、室間で音や臭いが伝わることも抑制される。
【0049】
ルーバ130は、たとえば、換気扇124の風の流れ方向に対し傾斜する複数のフィンを有している。これらのフィンの傾斜角度や傾斜方向を変更することで、換気扇124からの空気の排出方向を変更することが可能である。さらには、換気扇124への空気の吸込方向も変更可能である。
【0050】
なお、シャッタ128及びルーバ130はそれぞれ、図示しないアクチュエータにより作動される。
【0051】
フィルタ132は、空気の通過は許容するが、通過時に空気中の埃や微粒子等の異物を捕捉する部材である。
【0052】
通信部136は、状態センサ134の検知結果や、換気扇本体126の運転状況等を外部に送信すると共に、後述する制御装置172からの換気扇本体126の運転状態を受信する。なお、通信部136は、制御装置172との信号の送受信だけでなく、複数の換気扇124において相互に信号を送受信することも可能にできる。そして、換気扇124の内部では、通信部136は、換気扇本体126、シャッタ128のアクチュエータ、ルーバ130のアクチュエータ、状態センサ134と通信可能に接続されている。
【0053】
換気システム102は、制御装置172を有している、
図1~
図3に示すように、制御装置172としては、たとえばコンピュータ172Cやスマートフォン172S等を用いることが可能である。
【0054】
制御装置172は、受信部174、制御部176及び送信部178を有している。すなわち、受信部174、制御部176及び送信部178が、複数の換気扇124のそれぞれとは別体の制御装置172に集中して設けられている。
【0055】
受信部174は、複数の換気扇124の状態センサ134(第一面センサ134A及び第二面センサ134B)から送信された検知結果の情報を受信する。制御部176は、状態センサ134から送信された検知結果により、複数の換気扇の運転状態を決定する。この「運転状態」は、それぞれの換気扇124において状態センサ134と対応する換気扇124だけでなく、換気システム102の全体での換気扇124の運転状態である。また、状況によっては、複数の換気扇124の全てではなく、一部の換気扇124が選択的に運転制御されてもよい。送信部178は、制御部176で決定された各換気扇124の運転状態を、対応する換気扇124に送信する。
【0056】
また、制御装置172に対する入力操作により、換気扇本体126の運転、シャッタ128の開閉、ルーバ130の角度等を遠隔制御することが可能である。
【0057】
なお、制御装置172の間、及び制御装置172と換気扇124の間での情報の送受信は、
図4及び
図5に示す例では無線であるが、たとえば、制御装置172がコンピュータ172Cである場合は、有線でもよい。
【0058】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0059】
換気システム102は、複数の換気扇124を有している。また、換気扇124は状態センサ134を有しているので、換気システム102としても状態センサ134を有している。そして、制御装置172は、たとえば、
図8に示すフローにより、換気扇制御を実行し、各換気扇124を連動させる。
【0060】
まず、制御装置172は、ステップS102で、状態センサ134で検知された検知結果、すなわち、各室110の状態の情報を、換気扇124の通信部136から受信することにより取得する。
【0061】
次に、制御装置172は、ステップS104で、各換気扇124の運転状態を決定する。ここで決定される「運転状態」には、各換気扇124において、換気扇本体126の運転又は運転停止だけでなく、風量の調整も含まれる。また、シャッタ128の開閉や、ルーバ130の羽板の角度調整も含まれる。
【0062】
制御装置172は、ステップS104において各々の換気扇124の運転状態を決定した後、ステップS106に移行する。ステップS106では、ステップS104において決定された各換気扇124の運転状態を、対応する各換気扇124に送信する。換気扇124では、通信部136においてこの信号を受信する。これにより、複数の換気扇124が連動されて、建物104が室110のそれぞれにおいて換気される。なお、この場合、結果的に換気されない室110が存在していてもよい。このように複数の換気扇124が連動されるため、換気扇が連動されない構成の換気システムと比較して、建物104の室110を適切に換気できる。
【0063】
その後、ステップS108において、この換気扇制御の終了条件を満足したか否かを判定する。判定が肯定された場合は、換気扇制御を終了し、否定された場合はステップS102に戻る。ステップS108における「終了条件」とは、たとえば、換気システム102の運転が、使用者によってオフにされた場合等である。
【0064】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様お要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、第二実施形態の換気システム202では、屋外換気口112、レンジフード114、浴室換気口116及びトイレ換気口118に取り付ける換気扇として、本開示の技術に係る換気扇124が適用されている。屋外換気口112、浴室換気口116、レンジフード114及びトイレ換気口118は、第一実施形態と同様にいずれも外部換気装置である。すなわち、屋外換気口112、浴室換気口116、レンジフード114及びトイレ換気口118に取り付けられたこれらの換気扇124は、建物外壁106に設けられ、換気扇本体126の運転によって建物104の外部とで換気を行うことを可能とする。
【0066】
また、第二実施形態では、建物内壁108Aの一部にも、本開示の技術に係る換気扇124が取り付けられている。具体的には、建物内壁108Aにおいて、居室110Aと居室110Bとを仕切る箇所に換気扇124Bが取り付けられ、居室110Aと居室110Cとを仕切る箇所に換気扇124Cが取り付けられている。
【0067】
図10にも示すように、第二実施形態では、建物外壁106に設けられた換気扇124、及び、建物内壁108Aに設けられた換気扇124B、124Cについても、ドアパネル122に設けられた換気扇124と同様に、制御装置172との間で情報の送受信を行う。すなわち、制御装置172の受信部174では、ドアパネル122に設けられた換気扇124だけでなく、建物外壁106に設けられた換気扇124、及び、建物内壁108Aに設けられた換気扇124B、124Cからも、状態センサ134で検知された室110の情報を受信する。そして、制御部176では、取得した検知結果により、ドアパネル122に設けられた換気扇124、建物外壁106に設けられた換気扇124、及び、建物内壁108Aに設けられた換気扇124B、124Cについて、運転状態を決定する。さらに、制御装置172は、送信部178から、ドアパネル122に設けられた換気扇124、建物外壁106に設けられた換気扇124、及び、建物内壁108Aに設けられた換気扇124B、124Cに対し、運転状態を送信する。これにより、第二実施形態では、ドアパネル122に設けられた換気扇124だけでなく、建物外壁106に設けられた換気扇124、及び、建物内壁108Aに設けられた換気扇124B、124Cが連動されて、対応する室110のそれぞれが換気される。
【0068】
たとえば、トイレ110Fの使用時には、トイレ換気口118の換気扇124が、トイレ110Fの内部から建物104の外部に空気が流れるように運転されることがある。そこで、ドア120Eに設けられた換気扇124の状態センサ134によってトイレ110F内に人がいることを検知した場合には、ドア120Eの換気扇124を運転する。これにより、廊下110Dからトイレ110Fを経由して建物104の外部へ向かう空気の流れを生じさせることができる。
【0069】
なお、建物外壁106及び建物内壁108に換気扇124を設ける場合、建物内壁108及び建物外壁106の位置によっては、上下に2つの換気扇124を設けず、1つの換気扇124を設けてもよい。たとえば、レンジフード114に設ける換気扇124であれば、レンジフード114の内部に1つの換気扇124が設けられる。
【0070】
第二実施形態では、換気扇124Bの運転により、居室110Aと居室110Bとの間で空気を直接的に移動させることが可能である。同様に、換気扇124Cの運転により、居室110Aと居室110Cとの間で空気を直接的に移動させることが可能である。
【0071】
上記した第一実施形態及び第二実施形態のいずれにおいても、状態センサ134で検知された室110の状態に応じて換気扇124の運転状態を制御装置172により制御する。これにより、換気扇124を、室110の状態に応じた運転状態とし、所望の風量や風向に調整して換気することが可能となる。
【0072】
ここで、制御装置172によって決定される各換気扇124の「運転状態」の具体例としては、以下の各例が挙げられる。
【0073】
たとえば、居室110Aの温度TAが廊下110Dの温度TCよりも高い場合を想定する。この場合に、ドア120Aの上換気扇124Uによって居室110Aから居室110Cへ空気を流し、下換気扇124Lによって廊下110Dから居室110Aへ空気を流すように、ドア120Aの上換気扇124U及び下換気扇124Lの運転状態を決定する。この場合、上換気扇124Uと下換気扇124Lとは、空気の流れの方向が異なるので、「異なる運転状態」が実現されている一例となっている。ただし、この場合には、上換気扇124Uの風量と下換気扇124Lの風量は等しくすることが好ましい。
【0074】
これにより、居室110Aにおいて上方に存在している相対的に高温の空気を積極的に廊下110Dに移動させると共に、廊下110Dにおいて下方に存在している相対的に低温の空気を積極的に居室110Aに移動させ、居室110Aと廊下110Dとで温度の均一化を図ることができる。
【0075】
また、たとえば浴室110Eの湿度が高く、廊下110Dの湿度が低い場合に、ドア120Dの換気扇124を、浴室110Eから廊下110Dへ空気の流れが生じるように運転すれば、浴室110Eの水蒸気の一部を廊下110Dに移動させ、浴室110Eの湿度と低下させると共に廊下110Dの湿度を上昇させることができる。
【0076】
さらには、たとえば、状態センサ134がCO2センサを有している構成では、CO2濃度が高い室110からの空気の排出を行うことで、この室110におけるCO2濃度を低下させることができる。
【0077】
各実施形態では、外部換気装置がない居室110Aに対し換気を行うことも可能である。たとえば第一実施形態では、
図3に示すように、ドア120Aに設けられている換気扇124を、廊下110Dから居室110Aへの空気の流れが生じるように運転すると共に、ドア120Bに設けられている換気扇124を、居室110Bから廊下110Dへの空気の流れが生じるように運転する。これにより、矢印F3で示すように、居室110Bの空気を、廊下110D及び居室110Aを介して建物104の外部に排気することが可能である。なお、それぞれの換気扇124を上記とは逆転させることで、居室110A及び廊下110Dを介して、外気を居室110Bに取り込むことも可能である。居室110A、浴室110E及びトイレ110Fは、外部換気装置が設けられた第一室であり、居室110B及び居室110Cは、外部換気装置が設けられていない第二室の一例である。そしてこの場合、廊下110Cは、換気扇124を有すると共に、第一室と第二室とを換気可能につないでおり、換気部の一例として機能している。
【0078】
なお、特に第二実施形態では、外部換気装置が設置されていない室110(居室110B、110C)に対する換気を、
図3に示した方法とは異なる方法を用いることによっても可能である。
【0079】
すなわち、一例として屋外換気口112に設けられた換気扇124と、建物内壁108に設けられた換気扇124Bとを連動させる。これにより、
図9に矢印F4で示すように、居室110Bの空気を、居室110Aを経由して建物104の外部に排出することが可能である。あるいは、これらの換気扇124を上記とは逆方向に回転させ、建物104の外気を、居室110Aを経由して居室110Bに取り込むことも可能である。この場合は、建物内壁108に設けられた換気扇124Bが換気部の一例として機能している。
【0080】
加えて、複数の室110の間で、これらの室110の間に位置している換気扇124を運転することで、積極的に空気を移動させることも可能である。この場合、ドアパネル122を開けた状態で生じる空気の自然な流れよりも、ドアパネル122を閉めて、このドア120に設けられた換気扇124を運転することで、単位時間当たりに移動する空気の量を多くすることが可能である。
【0081】
また、状態センサ134が人感センサや明かりセンサを有している構成では、室110の間の人の移動を検知あるいは推定でき、人の移動に伴って空気を移動させることが可能となる。たとえば、人が居室110Aから居室110Bへ移動した場合に、居室110A内の空調済空気を居室110Bへ移動させれば、居室110Bにおける空調コストを削減できる。この場合、第一実施形態では、ドア120A、120Bの閉状態で、ドア120Aの換気扇124及びドア120Bの換気扇124を運転することで、居室110Aの空気を、廊下110Dを経由して居室110Bに移動させることができる。第二実施形態では、建物内壁108Aの換気扇124Bを運転することで、居室110Aの空気を、廊下110Dを経由することなく居室110Bに移動させることができる。
【0082】
また、人が居室110Aからトイレ110Fに移動した場合には、ドア120Aに設けられた換気扇124と、ドア120Eに設けられた換気扇124とを連動させ、居室110Aから廊下110Dを経由してトイレ110Fまで空気を移動させてもよい。
【0083】
また、本願の開示の技術では、複数の室110それぞれに対し流出及び流入する風量を把握することが可能であり、換気扇124を運転することで、風量の総和を所定範囲内に維持することが可能である。これにより、室110からの周囲のドア等の隙間部分を通る風(隙間風)が生じることを抑制でき、隙間風による異音、いわゆる風切音も抑制できる。たとえばレンジフード114に設けられた換気扇124の運転時に、屋外換気口112の換気扇124、あるいはドア120Aに設けられた換気扇124を運転して居室110A内に空気を導入することで、居室110A風が過度に負圧になることを抑制し、切音を低減あるいは解消することが可能である。
【0084】
本願の開示の技術では、いわゆる「24時間換気システム」が採用されている建物への適用が可能である。この場合、「24時間換気システム」における空気の換気を補助し、換気効率を向上させる手段として換気システム102を適用しうる。このように「24時間換気システム」との協調運転を行う場合、換気扇124の運転により、各室110における気圧を所定範囲に維持するようにすることが可能である。
【0085】
上記の例では、
図5及び
図10に示したように、換気扇124とは別体の制御装置172を有する構成である。これに対し、
図11に示す変形例のように、換気扇124のそれぞれが、制御装置172を備えた構成でもよい。すなわち、制御装置172が、換気扇124のそれぞれに分散して配置された構成である。なお、変形例の構成では、換気扇124が制御装置172を有しているので、この制御装置172の受信部174及び送信部178が通信部136(
図4等参照)を兼ねている。
【0086】
本願の開示の技術に係る換気システム用ドアの一例であるドア120は、ドアパネル122に換気扇124が備えられている。すなわち、工場においてドア120を製造すれば、ドアパネル122に換気扇124が備えられた換気システム用ドアが得られる。したがって、たとえば建物の工事現場において、あらたにドアパネルに換気扇を取り付ける工事が不要であり、工事負担が軽減される。
【0087】
また、既存の建物のドアを、開示の技術に係るドア120に交換してもよく、これにより、建物104内の2つの室の間に換気扇124を備えた構造を容易に実現できる。この場合であっても、既設の建物104自体に対する工事は不要であり、内装工事としてのドア交換工事を行えば、換気扇124を後付けした状態が得られるので、現場での工事の負荷が低い。なお、既設のドアに、換気扇124を取り付ける工事を行い、換気システム用ドアの構成が実現されるようにしてもよい。
【0088】
また、建物104が集合住宅の居宅である場合、換気扇124をあらたに設置するスペースが不要なので、換気扇124を設置しやすい。
【符号の説明】
【0089】
102 換気システム
104 建物
106 建物外壁
108 建物内壁
110 室
112 屋外換気口
114 レンジフード
116 浴室換気口
118 トイレ換気口
120 ドア
122 ドアパネル
124 換気扇
124L 下換気扇
124U 上換気扇
126 換気扇本体
128 シャッタ
130 ルーバ
132 フィルタ
134 状態センサ
134A 第一面センサ
134B 第二面センサ
136 通信部
172 制御装置
172C コンピュータ
172S スマートフォン
174 受信部
176 制御部
178 送信部