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  • 特開-線条体の巻取方法 図1
  • 特開-線条体の巻取方法 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189187
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】線条体の巻取方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/28 20060101AFI20221215BHJP
   B65H 54/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B65H54/28 Z
B65H54/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097617
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】申 浩男
【テーマコード(参考)】
3F056
【Fターム(参考)】
3F056AA06
3F056AC06
3F056DA06
3F056DB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】間欠テープ心線をボビンに巻き取る場合にも、簡素な構成のトラバース装置によって、トラバースターンに伴うボビンの鍔の近傍での線条体の巻き状態の乱れを抑制することができる線条体の巻取方法を提供する。
【解決手段】線条体をトラバースさせるトラバース装置を用いて前記線条体をボビン20に巻き取る線条体の巻取方法であって、前記線条体は、複数本の光ファイバ心線の隣接する相互間を連結させた連結領域と、前記光ファイバ心線の隣接する相互間を離隔させた非連結領域とで構成されている間欠テープ心線10を構成し、前記トラバース装置は、トラバース速度指令値を変更することが可能であり、トラバース方向が反転するまでの所定の時間において、前記トラバース速度指令値を所定量だけ減少させる。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体をトラバースさせるトラバース装置を用いて前記線条体をボビンに巻き取る線条体の巻取方法であって、
前記線条体は、複数本の光ファイバ心線の隣接する相互間を連結させた連結領域と、前記光ファイバ心線の隣接する相互間を離隔させた非連結領域とで構成されている間欠テープ心線を構成し、
前記トラバース装置は、トラバース速度指令値を変更することが可能であり、
トラバース方向が反転するまでの所定の時間において、前記トラバース速度指令値を所定量だけ減少させる線条体の巻取方法。
【請求項2】
前記トラバース方向が反転するまでの所定の時間をt[ms]とし、ボビン回転数をN[rpm]としたとき、
40[ms]≦t≦60×1000/N[ms]
0<N≦1500[rpm]
の関係を満たす請求項1に記載の線条体の巻取方法。
【請求項3】
前記間欠テープ心線を構成する各光ファイバ心線の径が200μm以下である請求項1又は請求項2に記載の線条体の巻取方法。
【請求項4】
前記ボビンに巻き取られた線条体と前記ボビンの鍔部との間には所定の間隔があけられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体の巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、間欠テープ心線からなる線条体の巻取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線条体を製造する工程において、製造された線条体はボビンに巻き取られる。ボビンに線条体を巻き取る際には、一般的に線条体を整列させながら巻き取る。巻き乱れが生じると、線条体を繰り出す際に捩れたり、もつれたりすることにより、線条体の損傷の原因となってしまう。従来から線条体を整列させてボビンに巻き取るためにトラバース装置が用いられている。トラバース装置は、線条体をボビンに巻き付ける際に、線条体を走行方向と直交する方向に動かすこと(以下「トラバース」という。)により、ボビン両端の鍔の間で線条体を往復させながら巻取る装置である。
【0003】
線条体をトラバースさせながら巻取る場合に、例えばボビンの鍔まで巻いたところで、トラバース方向を反転(以下「トラバースターン」という。)させる必要がある。トラバース速度を一定として均一な整列巻きを実現することができるが、トラバースターン時にはトラバース速度は減速及び加速が必要となるため、ボビンの鍔の近傍で線条体の巻き状態に乱れが生じやすい。
【0004】
特許文献1では、トラバースターンにかかる時間を短くすることにより、トラバースターン時のボビンの鍔の近傍での線条体の巻き状態の乱れを抑制する方法が提案されている。特許文献1では、図7に示されているように、ボビン52に線条体51を送り出すガイド53側にボールネジ54とサーボモータ55からなるトラバース装置50を設けると共に、ボビン52側にもボールネジ64とサーボモータ65とからなるトラバース装置60を設け、トラバースターン時には両方のトラバース装置50,60を同時に動かすことにより、トラバースターンにかかる時間を短くする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-145626
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、ガイド側とボビン側との両方にトラバース装置が必要となる。また、例えば間欠テープ心線や、通常より細い径の光ファイバ心線が幅を持って連なっている線条体をトラバースする場合、線条体の剛性が小さいため、トラバースターン時の速度変化が大きいとガイド側で間欠テープ心線の各光ファイバ心線の整列状態が崩れ、これに起因してボビンの鍔の近傍での線条体の巻き状態の乱れが生じるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、間欠テープ心線をボビンに巻き取る場合にも、簡素な構成のトラバース装置によって、トラバースターンに伴うボビンの鍔の近傍での線条体の巻き状態の乱れを抑制することができる線条体の巻取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の線条体の巻取方法は、線条体をトラバースさせるトラバース装置を用いて前記線条体をボビンに巻き取る線条体の巻取方法であって、前記線条体は、複数本の光ファイバ心線の隣接する相互間を連結させた連結領域と、前記光ファイバ心線の隣接する相互間を離隔させた非連結領域とで構成されている間欠テープ心線を構成し、前記トラバース装置は、トラバース速度指令値を変更することが可能であり、トラバース方向が反転するまでの所定の時間において、前記トラバース速度指令値を所定量だけ減少させる。
【発明の効果】
【0009】
上記によれば、間欠テープ心線をボビンに巻き取る場合にも、簡素な構成のトラバース装置によって、トラバースターンに伴うボビンの鍔の近傍での線条体の巻き状態の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】間欠テープ心線の模式図である。
図2A】最終ガイドローラからボビンへの間欠テープ心線の巻き取りの説明図である。
図2B図2Aのボビンの正面図である。
図3A図2Bの最終ガイドローラ近傍の拡大図である。
図3B図3Aの最終ガイドローラ近傍の部分拡大図である。
図3C図3Bの最終ガイドローラ近傍の比較例である。
図4】巻取線速、トラバース速度及びボビン回転数のグラフである。
図5】トラバースターン加減速時間の説明図である。
図6図5のトラバースターン加減速時間の拡大図である。
図7】従来のトラバース装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様の内容を列記して説明する。
本開示は、(1)~(4)の構成により、それぞれ次の効果を奏する。
(1)線条体をトラバースさせるトラバース装置を用いて前記線条体をボビンに巻き取る線条体の巻取方法であって、前記線条体は、複数本の光ファイバ心線の隣接する相互間を連結させた連結領域と、前記光ファイバ心線の隣接する相互間を離隔させた非連結領域とで構成されている間欠テープ心線を構成し、前記トラバース装置は、トラバース速度指令値を変更することが可能であり、トラバース方向が反転するまでの所定の時間において、前記トラバース速度指令値を所定量だけ減少させる。
このように構成された線条体の巻取方法によれば、間欠テープ心線をボビンに巻き取る場合にも、簡素な構成のトラバース装置によって、トラバースターンに伴うボビンの鍔の近傍での線条体の巻き状態の乱れを抑制することができる。特に、間欠テープ心線のような線条体の場合、線条体の剛性が小さいため、トラバースターン時に巻き乱れが生じやすい。従来技術では、トラバースターン時の速度変化が大きい場合には、ガイド側でトラバースターン時の速度変化が大きくなる。このため、最終ガイドローラ側で間欠テープ心線がボビンターンに伴う動きに追従できず、ガイドローラ鍔部に押され、ガイドローラ鍔部から受ける側圧が増加し、ボビンの鍔の近傍での線条体の巻き状態の乱れが生じるおそれがあった。上記構成によれば、トラバースターンに対応する所定の時間においてトラバース速度指令値を所定量だけ減少させることにより、間欠テープ心線のトラバースターンに要する時間を長くすることができる。なお、トラバース速度指令値を所定量だけ減少させることにより、トラバース速度を所定量だけ減速させることができる。最終ガイドローラ側で間欠テープ心線がトラバースターンに伴う動きに追従することができるため、ガイドローラ鍔部に押されることが抑制される。その結果、ガイドローラ鍔部から受ける側圧も大幅に緩和されるため、最終ガイドローラ側で各光ファイバ心線の整列状態が崩れることを抑制することができる。
【0012】
(2)上記の線条体の巻取方法において、前記トラバース方向が反転するまでの所定の時間をt[ms]とし、ボビン回転数をN[rpm]としたとき、
40[ms]≦t≦60×1000/N[ms]
0<N≦1500[rpm]
の関係を満たす。
これにより、最終ガイドローラ側で間欠テープ心線の各光ファイバ心線の整列状態に崩れが発生することを抑制し、かつ、ボビンの鍔の近傍での線条体の巻き状態の乱れを抑制する条件が明確となる。一般的に、シーケンサのスキャンタイムは40ms程度なので、
40ms≦t
であれば、実際にターンするまでに、トラバース速度を減速させることができる。これにより、トラバースターン時にガイドローラ鍔部に押されることが抑制され、その結果、ガイドローラ鍔部から受ける側圧も大幅に緩和されるため、各光ファイバ心線の整列状態が崩れることを抑制することができる。また、あまり早く減速させると、線条体が重なって巻かれてしまう時間が長くなるが、
t≦60×1000/N[ms]
0<N≦1500[rpm]
とすることにより、ボビン一回転分の時間しかトラバース速度を減速させないので、線条体が重なって巻かれる影響も少なくて済み、各光ファイバ心線のもつれや捩れを抑制することができる。
【0013】
(3)上記線条体の巻取方法において、前記間欠テープ心線を構成する各光ファイバ心線の径が200μm以下である。
これにより、従来技術では、間欠テープ心線や、光ファイバ心線の径が小さい線条体が連なっている場合、トラバースターンに伴いボビンの鍔の近傍で線条体にもつれや捩れが生じやすくなるところ、上記構成によれば、間欠テープ心線であり、且つ各光ファイバ心線の径が200μm以下である場合でも、トラバースターンに伴うボビンの鍔の近傍における線条体のもつれや捩れを抑制することができる。
【0014】
(4)上記の線条体の巻取方法において、前記ボビンに巻き取られた線条体と前記ボビンの鍔部との間には所定の間隔があけられている。
これにより、線条体がボビンの鍔に干渉することによって乱れることを防止することができ、トラバースターンに伴うボビンの鍔の近傍での線条体のもつれや捩れを抑制することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係る線条体の巻取方法の具体例について説明する。
なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は、同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
また、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内ですべての変更が含まれることを意図する。
【0016】
[間欠テープ心線について]
図1は、間欠テープ心線10の模式図であり、間欠テープ心線10を配列方向に開いた状態を示している。間欠テープ心線10は、例えば、複数本の光ファイバ心線11の隣接する相互間を連結させた連結領域12と、前記光ファイバ心線11の隣接する相互間を離隔させた非連結領域13とで構成されている。各光ファイバ心線11の周囲には、例えば高硬度樹脂で構成されたテープ被覆が設けられており、連結領域12においては、隣り合うテープ被覆が連なり、非連結領域13では、隣り合うテープ被覆が連結されずに分離している。
【0017】
一般には、間欠テープ心線であり、且つ各光ファイバ心線11の径が細くなるほど、ボビン20での巻き取りに際して、もつれや捩れが生じやすくなるが、本実施例では、各光ファイバ心線11の径が200μm以下と細い場合でも、間欠テープ心線10のもつれや捩れを抑制することができる。
【0018】
図2Aは、最終ガイドローラ30からボビン20への間欠テープ心線10の巻き取りの説明図である。図2Bは、図2Aのボビン20の正面図である。ボビン20には、円筒状の胴体21と、胴体21の両端部にそれぞれ鍔22が設けられている。ボビン20はボビン回転駆動装置(図示省略)により、回転数N[rpm]で回転駆動されると共に、トラバース装置(図示省略)によって胴体21の軸線方向に往復動作するようにトラバースさせる。ボビン20はトラバース装置によってトラバースされながら、ボビン回転駆動装置によって回転駆動されているため、胴体21には両端の鍔22の間に、最終ガイドローラ30によりガイドされた間欠テープ心線10が、一定のピッチで巻き取られる。これにより、巻き取られた間欠テープ心線10は、整列巻きとなっている。
【0019】
最終ガイドローラ30は、ガイドローラ固定片26の先端部に回転可能に取り付けられている。ガイドローラ固定片26は連結部材25を介して、支持片24に支持されている。最終ガイドローラ30の前段には前段ガイドローラ23が回転可能に配置されている。間欠テープ心線10は、前段ガイドローラ23及び最終ガイドローラ30を介し、適切な張力が付与された状態で、ボビン20の胴体21に送り出される。
【0020】
最終ガイドローラ30は、前段ガイドローラ23よりもボビン20の胴体21に近接して設けられている。最終ガイドローラ30は、例えば、胴体21の中心軸の鉛直線上に配置されており、巻き取られた間欠テープ心線10との距離が一定に保たれるように、支持片24は長さ方向に位置を調整される。
【0021】
図3Aは、図2Bの最終ガイドローラ30近傍における領域IIIAの拡大図である。最終ガイドローラ30は、ガイドローラ固定片26の先端部に設けられたガイドローラ軸31に回転可能な状態でガイドローラ固定ナット32により固定されている。最終ガイドローラ30は、円筒状の胴部33と、胴部33の両端にそれぞれ設けられたガイドローラ鍔部34とを有している。最終ガイドローラ30の胴部33の幅、すなわち、一対のガイドローラ鍔部34の間隔は、間欠テープ心線10の幅と略一致もしくは僅かに大きく設定されている。これは、間欠テープ心線10の各光ファイバ心線11が配列方向に平行に並んだ状態で、胴部33で間欠テープ心線10の各光ファイバ心線11の整列状態が崩れることなくガイドされるためである。
【0022】
巻き取られた間欠テープ心線10の鍔側端部16は、ボビン20の鍔22から所定の距離だけ離れて巻き取られている。この所定の距離は特に限定されるものではないが、各光ファイバ心線11が配列方向に平行に並んだ間欠テープ心線10の一枚の幅の1/2~数枚分の距離とすることができる。これにより、鍔側端部16と鍔22との間には所定の間隔があけられている。また、巻き取られた間欠テープ心線10のボビン20の鍔22側の端部には、傾斜部17が設けられている。すなわち、巻き取られた間欠テープ心線10は上側の層に近付くほど、鍔22側の端部が鍔22から離れて巻き取られている。
【0023】
巻き取られた間欠テープ心線10の鍔側端部16と鍔22との間には間隔があけられていることにより、間欠テープ心線10がボビンの鍔22に干渉しないようにすると共に、最終ガイドローラ30を固定しているガイドローラ固定片26等がボビン20の鍔22に接触することを防止することができる。
【0024】
また、傾斜部17が設けられていることにより、各層の間欠テープ心線10の鍔22側の端部が、下の層の間欠テープ心線10の鍔22側の端部より外側にずれて、巻き崩れ落ちることが無いため、トラバースターンに伴うボビンの鍔の近傍における線条体のもつれや捩れを抑制することができる。
【0025】
図3Bは、図3Aの最終ガイドローラ30近傍における領域IIIBの部分拡大図である。最終ガイドローラ30の胴部33とガイドローラ鍔部34との間には円周に沿ってガイド隅部35が形成されている。間欠テープ心線10は、このガイド隅部35及びその近傍においても、各光ファイバ心線11の整列状態の崩れが発生することなく胴部33によってガイドされることが望ましい。ボビン20が、図に向かって左直進から右直進に切り替わるトラバースターン時に、トラバース方向が反転するまでの所定の時間において、トラバース速度指令値を所定量だけ減少させることにより、間欠テープ心線10のトラバースターンに要する時間を長くすることができる。最終ガイドローラ30側で間欠テープ心線10がトラバースターンに伴う動きに追従することもできるため、ガイドローラ鍔部34に押されることが抑制される。その結果、ガイドローラ鍔部34から受ける側圧も大幅に緩和されるため、最終ガイドローラ30側で各光ファイバ心線11の整列状態が崩れることなく胴部33によってガイドされる。ここで、図3Aにおいてボビン20のトラバースターン前のトラバース方向を「左直進」(以下同様)という。同じく、トラバースターン後のトラバース方向を「右直進」(以下同様)という。
【0026】
図3Cは、図3Aの最終ガイドローラ30近傍における領域IIICの部分拡大図であり、図3Bの最終ガイドローラ30近傍に対する比較例を説明する図である。ボビン20が左直進から右直進に切り替わるトラバースターン時に、トラバース速度指令値が減少しない場合の最終ガイドローラによりガイドされる間欠テープ心線10の様子が示されている。図3Cの比較例では、トラバースターン時に最終ガイドローラ30にガイドされる間欠テープ心線10に急激な速度変化が生じる。このため、最終ガイドローラ30側で間欠テープ心線10がトラバースターンに伴う動きに追従できず、ガイドローラ鍔部34に押され、ガイドローラ鍔部34から受ける側圧が増加する。これにより、間欠テープ心線10の各光ファイバ心線11の整列状態が特に隅部35の近傍で崩れ、ボビン20の鍔22の近傍での線条体の巻き状態の乱れが生じる。
【0027】
トラバースターン時に、最終ガイドローラ30によってガイドされる間欠テープ心線10に乱れが生じないようにするためには、後述のように、トラバースターン時に、トラバースターンするまでの所定の時間において、トラバース速度指令値を所定量だけ減少させる必要がある。
【0028】
図4は、巻取線速V、トラバース速度V及びボビン回転数Nのグラフである。図4において(A)は巻取線速V[m/min]の時間変化のグラフであり、(B)はトラバース速度V[m/min]の時間変化のグラフであり、(C)はボビン回転数N[rpm]の時間変化のグラフである。(A)~(C)の各グラフの時間軸T(s)は、それぞれ対応している。
【0029】
図4(A)において、巻取線速Vは、時刻0から時刻Tbまでの間は、0からVW1まで直線状に上昇し、時刻Tb以降は一定の巻取線速VW1となっている。
【0030】
図4(B)において、トラバース速度Vは、ボビン20が左直進している時に正の値であり、ボビン20が右直進している時に負の値であるものと定義する。トラバース速度Vは、時刻0から時刻Taまでの間は、0からVT01まで直線状に上昇し、時刻Taにおいて1回目のトラバースターンが行われ、ボビン20が左直進のVT01から右直進のVT02まで変化する。これにより、ボビン20の胴体21に間欠テープ心線10の1層目が巻き取られる。
【0031】
ここで、時刻0から時刻Tbまでの間は、巻取線速を直線状に上昇させているため、それに従い、トラバース速度も上昇する。
一方、時刻Taのトラバースターンによって、間欠テープ心線10は2層目として巻き取られるようになるため、2層目のボビン20の胴体21における巻き取り半径は、胴体21の半径に1層分の間欠テープ心線10の厚み(光ファイバ心線の直径)が加えられた分だけ大きくなる。このため2層目のトラバース速度については、1層目のトラバース速度よりも1層分の間欠テープ心線10の厚みの分だけ、減少するように調整を行う必要がある。
【0032】
トラバース速度Vは、時刻Taから時刻Tbまでの間は、VT02からVT1まで直線状に上昇し、時刻Tbから時刻Tcまでの間は、トラバース速度VT1で一定となる。時刻Tcにおいて2回目のトラバースターンが行われ、ボビン20が右直進のVT1から左直進のVT2に変化する。時刻Taから時刻Tcまでの間では、ボビン20の胴体21に2層目の間欠テープ心線10が巻き取られる。
【0033】
ここで、VT1とVT2との関係は、
|VT1|>|VT2
となる。これは、3層目のトラバース速度VT2については、2層目のトラバース速度VT1に対して、1層分の間欠テープ心線10の厚みが大きくなることを考慮し、トラバース速度|VT2|が|VT1|よりも減少するように調整されるためである。
【0034】
トラバース速度Vは、時刻Tcから時刻Tdまでの間は、トラバース速度VT2で一定となり、ボビン20の胴体21には3層目の間欠テープ心線10が巻き取られる。時刻Tdにおいてトラバース速度Vは、左直進のVT2から、右直進のVT3に変化する。
ここで、VT2とVT3との関係は、
|VT2|>|VT3
となる。これは、4層目のトラバース速度VT3については、3層目のトラバース速度VT2よりも1層分の間欠テープ心線10の厚みが大きくなるため、トラバース速度|VT3|が|VT2|よりも減少するように調整されるためである。
【0035】
トラバース速度Vは、時刻Tdから時刻Teまでの間は、トラバース速度VT3で一定となり、ボビン20の胴体21には4層目の間欠テープ心線10が巻き取られる。時刻Teにおいてトラバース速度Vは、右直進のVT3から、左直進のVT4に変化する。
ここで、VT3とVT4との関係は、上記同様、
|VT3|>|VT4
となる。
【0036】
トラバース速度Vは、時刻Teから5層目の間欠テープ心線10の巻き取りが終わるまでは、トラバース速度VT4で一定となり、その後のトラバースターンが行われると前述の説明と同様に減少する。
【0037】
図4(c)において、ボビン回転数Nは、時刻0から時刻Tbまでの間に、0からNまで直線状に増加し、時刻Tbから時刻Tcまでの間は、一定回転数Nで一定となる。時刻Tcにおいてトラバースターンが行われると、ボビン回転数NからNに減少する。ボビン回転数NとNとの関係は、
>N
となる。これは、3層目のボビン回転数Nについては、2層目のボビン回転数Nに対して、1層分の間欠テープ心線10の厚みが大きくなるため、ボビン回転数NがNよりも減少するように調整されるためである。
【0038】
なお、ボビン回転数Nについては、時刻Taにおける1回目のトラバースターンによって、ボビン20の胴体21には1層目に巻き取られた間欠テープ心線10の上に、2層目の間欠テープ心線10が巻き取られるようになるため、時刻Taにおいてボビン回転数Nが調整されている。ただし、時刻Taにおけるボビン回転数Nの調整量は小さいため、図4(c)では省略されている。
【0039】
ボビン回転数Nは、時刻Tcから時刻Tdまでの間に、一定回転数Nで一定となり、時刻Tdにおいてトラバースターンが行われると、ボビン回転数NからNに減少する。ボビン回転数NとNとの関係は、上記同様、
>N
となる。
【0040】
ボビン回転数Nは、時刻Tdから時刻Teまでの間に、一定回転数Nで一定となり、時刻Teにおいてトラバースターンが行われると、ボビン回転数NからNに減少する。ボビン回転数NとNとの関係は、上記同様、
>N
となる。
【0041】
ボビン回転数Nは、時刻Teから5層目の間欠テープ心線10の巻き取りが終わるまでは、一定回転数Nで一定となり、その後のトラバースターンが行われると前述の説明と同様に減少する。
【0042】
図5はトラバースターン加減速時間の説明図であり、図4の領域Vを説明する図面である。図6図5のトラバースターン加減速時間の拡大図であり、図5の領域VIを拡大した図面である。図4図6において、トラバース速度Vのグラフはトラバース装置に与えられる指令値である。また、図4は模式図であるため、例えば時刻Tdにおけるトラバースターン時のトラバース速度が、急激にVT2からVT3に変更されているように描かれているが、トラバース速度指令値が急激に変化した場合、ガイド隅部35の近傍で胴部33においてガイドされる間欠テープ心線10に乱れ(図3C参照。)が生じるおそれがある。
【0043】
そこで、本実施形態では、図5に示されているように、時刻Tdにおけるトラバースターンするまでの所定の時間において、トラバース速度指令値を所定量だけ減少させている。トラバース速度指令値は、時刻Td1で左直進VT2からの減少が始まり、時刻Tdで速度ゼロとなり、時刻Td2で右直進VT3まで加速する。特に限定されるものではないが、時刻Td1からTd2までの期間、すなわち、トラバースターン時の加減速に必要な時間の設定値tdにおけるトラバース速度指令値VT2からVT3までの速度変化は直線状とすることができる。設定値tdにおける、トラバース速度指令値Vの変化のグラフは、直線状以外であってもよく、例えば、トラバース速度指令値VT2からの加速度及びトラバース速度指令値VT3に至る直前の加速度を緩やかに設定したり、トラバース速度指令値変化を曲線状にしたりすることもできる。
【0044】
なお、実際のトラバース速度は、トラバース速度指令値に対して遅れ時間があるため、トラバース速度指令値のグラフよりも遅れた応答となる。
【0045】
時刻Tdにおけるトラバースターンに対応する所定の時間である設定値tdの値は、トラバースターンするまでの所定の時間をt[ms](ここでは、設定値tdに相当。)とし、ボビン回転数をN[rpm]としたとき、
40[ms]≦t≦60×1000/N[ms]
0<N≦1500[rpm]
の関係を満たすように設定される。
【0046】
一般的に、シーケンサのスキャンタイムは40ms程度なので、
40ms≦t
とすることにより、実際にターンするまでに、トラバース速度を減速させることができる。これにより、トラバースターン時にガイドローラ鍔部34に押されることが抑制され、その結果、ガイドローラ鍔部34から受ける側圧も大幅に緩和されるため、各光ファイバ心線11の整列状態が崩れることを抑制することが可能となる。
【0047】
また、あまりに早く減速させると、線条体が重なって巻かれてしまう時間が長くなるが、
t≦60×1000/N
0<N≦1500
となるように、設定値tdが設定されると、トラバースターンに伴いボビンの鍔の近傍において、間欠テープ心線10が多数層にわたって巻き取られることが防止され、ボビン20の胴体21に巻き取られた間欠テープ心線10のもつれや捩れを抑制することができる。加えて、巻き取られた間欠テープ心線10の鍔側の端部には、傾斜部17が設けられているので、各層の鍔側端部は下の層の鍔側端部よりも、鍔22から離れた部分に巻き取られるため、トラバースターンに伴うボビンの鍔の近傍における線条体のもつれや捩れを抑制することができる。ここで、N=1500rpmのときには、
t=60×1000/1500=40msとなる。
【0048】
図6は本実施例のトラバースターン加減速時間の設定方法の一例である。時刻Td1からTdまでの時間をtd1とし、時刻TdからTd2までの時間をtd2としたとき、設定値tdは、
td=td1+td2
という数式で表される。
ここで、
|VT2|>|VT3|
であるから、図6では、TdはTd1とTd2との間で、Td2に近い時点として表されている。このため、
d1>td2
となるように設定される。
【0049】
図5及び図6では、時刻Tdにおけるトラバースターンを例に挙げて説明したが、本実施形態のトラバースターンに対応する所定の時間において、トラバース速度指令値を所定量だけ減少させることは、時刻Tdだけでなく、全てのトラバースターン、例えば時刻Ta,Tc,Te等のトラバースターンについても適用される。
【0050】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は、上記に限定されるものではない。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能である限り組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも、本発明の特徴を含む限り本開示の範囲に包含される。
【0051】
例えば、上記実施形態では線条体として、複数の光ファイバ心線11からなる間欠テープ心線10を例示して説明したが、本開示の線条体は間欠テープ心線10に限定されるものではなく、例えば単一の光ファイバ心線からなる線条体や、光ファイバケーブル以外の線条体であってもよい。
【0052】
また、実施形態のトラバース装置はボビン側に設けることに限定されるものではなく、例えば、トラバース装置を最終ガイドローラ30側に設け、最終ガイドローラ30をボビン20の鍔22の間を往復するように、トラバース速度Vでトラバースさせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10・・・間欠テープ心線
11・・・光ファイバ心線
12・・・連結領域
13・・・非連結領域
16・・・鍔側端部
17・・・傾斜部
20・・・ボビン
21・・・胴体
22・・・鍔
23・・・前段ガイドローラ
24・・・支持片
25・・・連結部材
26・・・ガイドローラ固定片
30・・・最終ガイドローラ
31・・・ガイドローラ軸
32・・・ガイドローラ固定ナット
33・・・胴部
34・・・ガイドローラ鍔部
35・・・ガイド隅部
50・・・トラバース装置
51・・・線条体
52・・・ボビン
53・・・ガイド
54・・・ボールネジ
55・・・サーボモータ
60・・・トラバース装置
64・・・ボールネジ
65・・・サーボモータ
N・・・・ボビン回転数
・・・トラバース速度
・・・巻取線速
T・・・・時刻
td・・・設定値
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7