(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189189
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】変臭定量化方法、変臭定量化装置、及び変臭定量化プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/00 20060101AFI20221215BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20221215BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N33/00 C
G06Q50/04
G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097620
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】幸島 柚里
(72)【発明者】
【氏名】東 栄美
(72)【発明者】
【氏名】庄司 健
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】本発明では、再現性及び結果の取り扱い性に優れた変臭定量化方法、変臭定量化装置、及び変臭定量化プログラムを提供する。
【解決手段】下記を含む、評価対象試料の変臭を定量化する変臭定量化方法を提供する:
評価対象試料の耐久前の変臭を官能評価し、官能評価の結果に対応する1又は複数の変臭名を所定の変臭名リストから選択し、かつ選択された1又は複数の変臭名の変臭の強度を決定すること、及び
評価対象試料の耐久後の変臭を官能評価し、官能評価の結果に対応する1又は複数の変臭名を所定の変臭名リストから選択し、かつ選択された1又は複数の変臭名の変臭の強度を決定すること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む、評価対象試料の変臭を定量化する変臭定量化方法:
評価対象試料の耐久前の変臭を官能評価し、前記官能評価の結果に対応する1又は複数の変臭名を所定の変臭名リストから選択し、かつ選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度を決定すること、及び
評価対象試料の耐久後の変臭を官能評価し、前記官能評価の結果に対応する1又は複数の変臭名を所定の変臭名リストから選択し、かつ選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度を決定すること。
【請求項2】
耐久前の選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度と、耐久後の選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度との差を算出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変臭名リストが、少なくとも下記から選択される少なくとも1つの変臭名を含む、請求項1又は2に記載の方法:
基剤臭、刺激臭、甘い変臭、油臭、酸臭、不潔臭、及び香料臭。
【請求項4】
下記を有する、評価対象試料の変臭を定量化する変臭定量化装置:
評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭の官能評価の結果が入力される入力部、ここで、前記結果は、所定の変臭名リストから選択される1又は複数の変臭名、及び選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度である、
取得された前記変臭名、並びに耐久前及び耐久後の前記変臭の強度を表示する表示部。
【請求項5】
取得された耐久前の前記変臭名の変臭の強度と、取得された耐久後の前記変臭名の変臭の強度との差を算出する制御部を更に有し、かつ
前記表示部が、前記差を更に表示する、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
プロセッサに下記の工程を行わせて、評価対象試料の変臭を定量化する、変臭定量化プログラム:
評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭の官能評価の結果を入力部から取得させること、ここで、前記結果は、所定の変臭名リストから選択される1又は複数の変臭名、及び選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度である、
取得された前記変臭名、並びに耐久前及び耐久後の前記変臭の強度を表示部に表示させること。
【請求項7】
プロセッサに下記の工程を更に行わせる、請求項6に記載のプログラム:
取得された耐久前の前記変臭名の変臭の強度と、取得された耐久後の前記変臭名の変臭の強度との差を算出させること、及び
前記表示部に前記差を更に表示させること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変臭定量化方法、変臭定量化装置、及び変臭定量化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、洗剤、医薬品、医薬部外品等のパーソナルケア製品は、経時劣化によって好ましくない匂いを生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような経時劣化によって好ましくない匂いの問題を防ぐために、例えば化粧品の開発段階等において、予め、経時劣化を模擬した耐久の後の化粧品の匂いを官能評価することが考えられる。このような官能評価としては、専門パネルによる分析である分析型官能評価、及び一般消費者による嗜好性チェックである嗜好型官能評価が考えられる。
【0004】
しかしながら、上記のような官能評価では、評価者による個人差があり、評価の再現性が低いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明では、再現性及び結果の取り扱い性に優れた変臭定量化方法、変臭定量化装置、及び変臭定量化プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様としては下記の態様を挙げることができる。
【0007】
〈態様1〉
下記を含む、評価対象試料の変臭を定量化する変臭定量化方法:
評価対象試料の耐久前の変臭を官能評価し、前記官能評価の結果に対応する1又は複数の変臭名を所定の変臭名リストから選択し、かつ選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度を決定すること、及び
評価対象試料の耐久後の変臭を官能評価し、前記官能評価の結果に対応する1又は複数の変臭名を所定の変臭名リストから選択し、かつ選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度を決定すること。
〈態様2〉
耐久前の選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度と、耐久後の選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度との差を算出することを更に含む、態様1に記載の方法。
〈態様3〉
前記変臭名リストが、少なくとも下記から選択される少なくとも1つの変臭名を含む、態様1又は2に記載の方法:
基剤臭、刺激臭、甘い変臭、油臭、酸臭、不潔臭、及び香料臭。
〈態様4〉
下記を有する、評価対象試料の変臭を定量化する変臭定量化装置:
評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭の官能評価の結果が入力される入力部、ここで、前記結果は、所定の変臭名リストから選択される1又は複数の変臭名、及び選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度である、
取得された前記変臭名、並びに耐久前及び耐久後の前記変臭の強度を表示する表示部。
〈態様5〉
取得された耐久前の前記変臭名の変臭の強度と、取得された耐久後の前記変臭名の変臭の強度との差を算出する制御部を更に有し、かつ
前記表示部が、前記差を更に表示する、
態様4に記載の装置。
〈態様6〉
プロセッサに下記の工程を行わせて、評価対象試料の変臭を定量化する、変臭定量化プログラム:
評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭の官能評価の結果を入力部から取得させること、ここで、前記結果は、所定の変臭名リストから選択される1又は複数の変臭名、及び選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度である、
取得された前記変臭名、並びに耐久前及び耐久後の前記変臭の強度を表示部に表示させること。
〈態様7〉
プロセッサに下記の工程を更に行わせる、態様6に記載のプログラム:
取得された耐久前の前記変臭名の変臭の強度と、取得された耐久後の前記変臭名の変臭の強度との差を算出させること、及び
前記表示部に前記差を更に表示させること。
【発明の効果】
【0008】
本発明の変臭定量化方法、変臭定量化装置、及び変臭定量化プログラムによれば、評価対象試料の変臭を所定の変臭名リストから選択することによって、評価者による評価のバラツキを抑制することができ、また評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭を評価することによって、変臭の発生状況を詳細に記録することができる。
【0009】
また、本発明の変臭定量化方法、変臭定量化装置、及び変臭定量化プログラムによれば、結果の集積によって、変臭名、評価者、結果、結果の差等に基づく検索が可能になり、化粧料のような評価対象試料の開発に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の変臭定量化方法で用いる評価シートの1つの例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の変臭定量化方法で用いる評価シートの他の例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の変臭定量化装置の構成を説明するための概略構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の変臭定量化プログラムの1つの例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の変臭定量化プログラムの他の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈変臭定量化方法〉
評価対象試料の変臭を定量化する本発明の変臭定量化方法は、下記を含む:
評価対象試料の耐久前の変臭を官能評価し、官能評価の結果に対応する1又は複数の変臭名を所定の変臭名リストから選択し、かつ選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度を決定すること、及び
評価対象試料の耐久後の変臭を官能評価し、官能評価の結果に対応する1又は複数の変臭名を所定の変臭名リストから選択し、かつ選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度を決定すること。
【0012】
また、本発明の変臭定量化方法の1つの態様では、耐久前の選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度と、耐久後の選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度との差を算出することを更に含む。
【0013】
ここで、本発明に関して「変臭」は、評価対象試料の匂いのうちの好ましくない臭いを意味している。また、本発明に関して「評価対象試料」は、化粧品、洗剤、医薬品、医薬部外品等のパーソナルケア製品であってよい。
【0014】
上記のように、本発明の変臭定量化方法によれば、評価者による評価のバラツキを抑制することができ、また変臭の発生状況を詳細に記録することができ、特に耐久前後の変臭の強度差を算出することによって変臭の発生状況についての理解を深めることができる。
【0015】
本発明の方法において評価される変臭のリストは、少なくとも下記から選択される少なくとも1つの変臭名を含むことができるが、並びにこれらの変臭並びに
図1及び2に記載の変臭に限定されるものではない:
基剤臭、刺激臭、甘い変臭、油臭、酸臭、不潔臭、及び香料臭。
【0016】
評価対象試料の耐久は任意の期間で行うことができ、例えば1日以上、1週間以上、1ヶ月間以上、2ヶ月以上、3ヶ月以上、6ヶ月以上、又は1年以上にわたって行うことができる。また、耐久の条件は、加熱条件、光暴露条件、振盪条件、静置条件、冷却条件、又はそれらの組み合わせで行うことができる。
【0017】
本発明の変臭定量化方法は、例えば
図1に示すようなシートを用いて行うことができる。ここで、この
図1のシートは、単一の評価者(評価者X)が複数の評価対象試料(化粧料A、B及びC)について、耐久前及び耐久後の変臭についての評価を記入し、記入された値に基づいて、それぞれの耐久後の変臭の強度と耐久間の変臭の強度の差を記入するようになっている。なお、この
図1のシートでは、耐久条件として、1週間にわたる熱耐久、光耐久、及び熱+光耐久を行うことを前提としている。
【0018】
また、本発明の変臭定量化方法は、例えば
図2に示すようなシートを用いて行うことができる。ここで、この
図2のシートは、複数の評価者(評価者X、Y及びZ)が単一の評価対象試料(化粧料A)について、耐久前及び耐久後の変臭についての評価を記入し、記入された値に基づいて、それぞれの耐久後の変臭の強度と耐久間の変臭の強度の差を記入するようになっている。なお、この
図2のシートでは、
図1のシート同様に、耐久条件として、1週間にわたる熱耐久、光耐久、及び熱+光耐久を行うことを前提としている。
【0019】
〈変臭定量化装置及びプログラム〉
評価対象試料の変臭を定量化する本発明の変臭定量化装置は、下記を有する:
評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭の官能評価の結果が入力される入力部、ここで、前記結果は、所定の変臭名リストから選択される1又は複数の変臭名、及び選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度である、
取得された前記変臭名、並びに耐久前及び耐久後の前記変臭の強度を表示する表示部。
【0020】
この装置の1つの態様では、
取得された耐久前の前記変臭名の変臭の強度と、取得された耐久後の前記変臭名の変臭の強度との差を算出する制御部を更に有し、かつ
前記表示部が、前記差を更に表示する。
【0021】
具体的には例えば、
図3に示されるように、本発明の変臭定量化装置10においては、入力部(12)、表示部(13)、及び制御部(14)が信号線を介して互いに接続されており、評価者(12a)が入力部(12)を介して評価結果を入力可能なようにされている。ここで、この制御部(14)は、ストレージ、メモリ、及びプロセッサ等を有していてよい。
【0022】
本発明の変臭定量化プログラムは、プロセッサに下記の工程を行わせて、評価対象試料の変臭を定量化する:
評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭の官能評価の結果を入力部から取得させること、ここで、前記結果は、所定の変臭名リストから選択される1又は複数の変臭名、及び選択された1又は複数の前記変臭名の変臭の強度である、
取得された前記変臭名、並びに耐久前及び耐久後の前記変臭の強度を表示部に表示させること。
【0023】
このプログラムの1つの態様では、プロセッサに下記の工程を更に行わせる:
取得された耐久前の前記変臭名の変臭の強度と、取得された耐久後の前記変臭名の変臭の強度との差を算出させること、及び
前記表示部に前記差を更に表示させること。
【0024】
具体的には例えば、本発明の変臭定量化プログラムは、
図4のフローチャートで示されるようにして実施することができる。すなわち、処理を開始し(S41)、評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭の官能評価の結果をプロセッサに入力部から取得させ(S42)、そして取得された変臭名、並びに耐久前及び耐久後の変臭の強度を表示装置に表示させ(S43)、その後で処理を終了する(S49)ことができる。
【0025】
また例えば、本発明の変臭定量化プログラムは、
図5のフローチャートで示されるようにして実施することができる。すなわち、処理を開始し(S51)、評価対象試料の耐久前及び耐久後の変臭の官能評価の結果をプロセッサに入力部から取得させ(S52)、取得された耐久前の変臭の強度と、取得された耐久後の変臭の強度との差をプロセッサに算出させ(S53)、そして取得された変臭名、耐久前及び耐久後の変臭の強度、並びに耐久前及び耐久後の変臭の強度差を表示装置に表示させ(S54)、その後で処理を終了する(S59)ことができる。
【0026】
本発明の装置及びプログラムにおいて、入力部は、タッチパネル、キーボード等であってよく、表示部は、ディスプレイ等であってよい。プロセッサは、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有し、各種処理を実行ことができる。メモリは、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROM)であってよく、ストレージ装置は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)又は光記録媒体であってよい。メモリ及び/又はストレージ装置は、プロセッサにおいて実行されるプログラム、プロセッサによって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶することができる。
【0027】
本発明の装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等であってよく、また本発明のプログラムは、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等に適用されるものであってよい。
【0028】
本発明の装置及びプログラムの詳細については、本発明の方法に関する記載を参照することができる。