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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189196
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】構造体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20221215BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20221215BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60N2/64
B32B5/00 A
C08J5/04 CES
C08J5/04 CFC
C08J5/04 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097650
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
(72)【発明者】
【氏名】赤池 文敏
【テーマコード(参考)】
3B087
4F072
4F100
【Fターム(参考)】
3B087DB00
3B087DB02
3B087DB05
3B087DE10
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
4F072AD04
4F072AD23
4F072AD37
4F072AD44
4F072AH04
4F072AH21
4F072AK05
4F072AL02
4F072AL11
4F072AL17
4F100AD11A
4F100AK03B
4F100DA11A
4F100DA17
4F100DG01B
4F100DG06B
4F100DG11B
4F100DH02B
4F100GB33
(57)【要約】
【課題】新規な構成による高強度な構造体及びその使用方法の提供。
【解決手段】構造体16は、ビード部30を備えて一体に賦形された構造部17と、ビード部30に沿って設けられた補強帯50と、を有し、ビード部30は、構造部17の一面側17aで凹条となり且つ対面側17bで凸条となるよう賦形され、補強帯は、マトリックス樹脂で結着された連続繊維を含むとともに、ビード部の凹面及び/又は凸面に沿ってビード部と一体に接合されており、連続繊維は、ビード部の延長方向に沿って敷設されている。本使用法方法は、ビード部の凹条内を、長尺物を敷設する敷設スペースとして利用する。更に、流動物の流路として利用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1条又は複数条のビード部を備えて一体に賦形された構造部と、前記ビード部に沿って設けられた補強帯と、を有し、
前記ビード部は、前記構造部の一面側で凹条となり且つ対面側で凸条となるよう賦形されており、
前記補強帯は、マトリックス樹脂で結着された連続繊維を含むとともに、前記ビード部の凹面及び/又は凸面に沿って前記ビード部と一体に接合されており、
前記連続繊維は、前記ビード部の延長方向に沿って敷設されていることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記補強帯を備えた補強部は、前記補強帯を備えない前記補強部の周囲より厚さが大きい請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記構造部は、非連続繊維が分散含有された繊維強化樹脂、及び/又は、連続繊維を用いた製織布が含有された繊維強化樹脂、からなる請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項4】
前記補強帯は、前記連続繊維を束ねた繊維束と、前記繊維束が縫着された基布と、前記繊維束及び前記基布に含浸固定された前記マトリックス樹脂と、を備える請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の構造体。
【請求項5】
前記補強帯は、前記ビード部との接合面側に、前記マトリックス樹脂内に遷移領域を有する請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の構造体。
【請求項6】
前記ビード部は、他の構造体との締結構造を有する請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の構造体。
【請求項7】
車両用シートのバックシェルである請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の構造体の使用方法であって、前記ビード部の前記凹条内を、長尺物を敷設する敷設スペースとして利用することを特徴とする構造体の使用方法。
【請求項9】
請求項7に記載の構造体の使用方法であって、前記ビード部の前記凹条内を、流動物の流路として利用することを特徴とする構造体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体及びその使用方法に関する。更に詳しくは、連続繊維を利用して繊維強化された構造体及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属を用いて形成されてきた構造材料を樹脂へと代替する試みがなされている。そのなかでも、繊維強化樹脂、特に強化繊維として炭素繊維を用いた炭素繊維強化樹脂(CFRP)が注目されている。繊維強化樹脂は、強度及び剛性において優れ、尚且つ、金属と比べて軽量にできるという点から有望視される。例えば、繊維強化樹脂を用いた構造体として、下記特許文献1に開示された乗物用シートが知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-193303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、補強部材50が、シートシェル(バックパン32)の乗員着座面側とその反対面側とに連通した貫通孔36を通って、乗員着座面からその反対面側に突設された構造体(乗物用シート)が開示されている。そのバックパン32として、繊維長1mm程度のカーボン繊維を強化材、ポリプロピレンをマトリクス樹脂とした複合樹脂をインジェクション成形した繊維強化プラスチックが例示され、補強部材50として、カーボンの連続繊維からなる織物を強化材、ポリプロピレンをマトリクス樹脂とした繊維強化プラスチックが例示されている。特許文献1によれば、高強度の乗物用シートが得られるが、より多くのバリエーションによる種々の高強度な構造体が求められている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、新規な構成による高強度な構造体及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は以下に示される。
[1]本発明の構造体は、1条又は複数条のビード部を備えて一体に賦形された構造部と、前記ビード部に沿って設けられた補強帯と、を有し、
前記ビード部は、前記構造部の一面側で凹条となり且つ対面側で凸条となるよう賦形されており、
前記補強帯は、マトリックス樹脂で結着された連続繊維を含むとともに、前記ビード部の凹面及び/又は凸面に沿って前記ビード部と一体に接合されており、
前記連続繊維は、前記ビード部の延長方向に沿って敷設されていることを要旨とする。
[2]本発明の構造体では、前記補強帯を備えた補強部は、前記補強帯を備えない前記補強部の周囲より厚さが大きくすることができる。
[3]本発明の構造体では、前記構造部は、非連続繊維が分散含有された繊維強化樹脂、及び/又は、連続繊維を用いた製織布が含有された繊維強化樹脂、からなるものとすることができる。
[4]本発明の構造体では、前記補強帯は、前記連続繊維を束ねた繊維束と、前記繊維束が縫着された基布と、前記繊維束及び前記基布に含浸固定された前記マトリックス樹脂と、を備えるものとすることができる。
[5]本発明の構造体では、前記補強帯は、前記ビード部との接合面側に、前記マトリックス樹脂内に遷移領域を有するものとすることができる。
[6]本発明の構造体では、前記ビード部は、他の構造体との締結構造を有するものとすることができる。
[7]本発明の構造体では、車両用シートのバックシェルであるものとすることができる。
[8]本発明の構造体の使用方法は、前記ビード部の前記凹条内を、長尺物を敷設する敷設スペースとして利用することを要旨とする。
[9]本発明の構造体の他の使用方法は、前記ビード部の前記凹条内を、流動物の流路として利用することを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の構造体によれば、新規な構成によって高強度な構造体を得ることができる。
本発明の構造体の使用方法によれば、補強構造を、補強だけでなく、その他の効果を得る目的で有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】本構造体の一例を示す説明図である。
図2】本構造体の他例を示す説明図である。
図3】本構造体のバリエーションを示す説明図である。
図4】本構造体の更に他例を示す説明図である。
図5】実施例に係るシートバックフレーム(組付状態)の斜視図である。
図6】シートバックフレーム(分解状態)の斜視図である。
図7図5のIII-III線断面図である。
図8図7の要部拡大図である。
図9】実施例に係る車両用シートの側面図である。
図10】ビード部の延長方向のバリエーションを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで示される事項は、例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
尚、本明細書では特記しない限り、「XX~YY」の記載は「XX以上YY以下」を意味するものとする。
【0009】
[1]構造体
本発明の構造体(16)は、ビード部(30)を備えた構造部(17)と、ビード部(30)に沿って設けられた補強帯(50)と、を備える。ビード部(30)は、構造部(17)の一面側(17a)で凹条となり且つ対面側(17b)で凸条となるよう賦形されている。更に、ビード部(30)は、構造部(17)と一体に賦形され、1条又は複数条を備えている。
一方、補強帯(50)は、マトリックス樹脂(51)と連続繊維(52)とを備え、連続繊維(52)はマトリックス樹脂(51)によって結着された状態で補強帯(50)に含まれる。更に、補強帯(50)は、ビード部(30)の凹面(30a)及び/又は凸面(30b)に沿って、ビード部(30)と一体に接合されており、連続繊維(52)は、ビード部(30)の延長方向に沿って敷設されている(図1図4参照)。
【0010】
構造体16は、ビード部30と補強帯50との両方を備えることによって、高強度な構造体にすることができる。
構造部17の形状及び大きさは限定されない。構造部17の形状は、例えば、凹凸を有する立体形状にすることができる。更に、曲面形状、平板形状等を含むことができる。これらの形状は1種のみを含んでもよく2種以上を同時に含んでもよい。即ち、例えば、凹凸形状、曲面形状、平板形状を複合的に含んだ立体形状とすることができる。その他、円筒形状、多角筒形状等の形状を有することができる。
構造部17は、軽量性及び強度性の両立から、シェル状であることが好ましい。シェル形状は、要すれば、中央部へ向かって広く凹面化された概形を有した形状ということができる。例えば、後述の通り、乗物シートのバックシェルを代表例として挙げることができる。
【0011】
また、構造部17の材質も限定されないが、軽量性及び強度性の両立から、樹脂を用いることができる。樹脂種は限定されず、熱可塑性樹脂であってもよく、硬化性樹脂(硬化方法を問わない様々な硬化性樹脂)であってもよく、更には目的に応じて併用してもよい。即ち、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形された構造体とすることができる。更に、構造部17は、樹脂のみから形成してもよいが、強度向上の観点から、強化繊維を含むことができる。即ち、構造部17は、樹脂(マトリックス樹脂)と、樹脂によって結着された強化繊維と、を含んだ繊維強化樹脂を用いて形成できる。
【0012】
構造部17を構成することができる樹脂(強化繊維を含む場合のマトリックス樹脂)のうち、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂、フッ素含有熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、更には、これらの熱可塑性樹脂の2種以上を含む樹脂アロイ(複合樹脂)等を挙げることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。一方、硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0013】
強化繊維は、連続繊維であってもよく、非連続繊維であってもよく、これらを併用してもよい。通常、連続繊維は、繊維長が15mm以上であり、非連続繊維は、繊維長が15mm未満である。非連続繊維を用いる場合、樹脂と非連続繊維との混合物は、射出成形可能である。射出成形された構造部17は、樹脂内に非連続繊維が分散含有された繊維強化樹脂となる。一方、連続繊維を用いる場合は、連続繊維が樹脂で結着された繊維強化樹脂となる。連続繊維は、繊維強化樹脂内において、単に引き揃えられた状態で含まれてもよいし、製織された織物等として含まれてもよい。
【0014】
強化繊維を構成する材料は限定されず、無機繊維でもよく、有機繊維でもよく、これらを併用してもよい。
無機繊維としては、炭素繊維、活性炭繊維、ガラス繊維、セラミック繊維(ケイ酸塩、チタン酸塩、アルミナ等)、金属繊維、ボロン繊維などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
有機繊維としては、天然繊維、合成繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、合成繊維としては、合成樹脂を繊維形状に賦形した繊維が挙げられる。このような合成樹脂製繊維としては、ポリアミド樹脂繊維(脂肪族ポリアミド(ナイロン繊維など)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維、商品名「ケブラー」など)等)、ポリエステル樹脂繊維(脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維など)等)、ポリオレフィン樹脂繊維(高分子量ポリオレフィン(商品名「ダイニーマ」など)等)、ポリベンズアゾール樹脂繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(商品名「ザイロン」など)等)が挙げられる。
【0015】
また、強化繊維は、高い引張強さを有する繊維であることが好ましく、例えば、JIS L1015による引張強さにおいて7cN/dtex以上(通常50cN/dtex)である繊維が好ましい。
更に、強化繊維の形態は限定されず、スパンヤーンであってもよく、フィラメントヤーンであってもよく、これらを併用してもよい。更に、モノフィラメントを用いてもよく、マルチフィラメントを用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0016】
本構造体16では、上述のなかでも、特に炭素繊維が好ましい。炭素繊維の種類は限定されず、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
炭素繊維は、フィラメントのまま用いることができるが、束(トウ)として用いてもよい。束を構成する炭素繊維の本数は限定されず、例えば、3000本以上とすることができる。束を構成する連続繊維の本数が3000本以上であることにより、柔軟でありながら芯材として優れた強度を発揮させることができる。また、連続繊維の本数は、例えば、3000本以上100000本以下とすることができ、更に5000本以上70000本以下とすることができ、更に7000本以上50000本以下とすることができ、更に10000本以上30000本以下とすることができる。
【0017】
ビード部30は、構造部17の一面側17aで凹条となり且つ対面側17bで凸条となるよう賦形された部分である。このビード部30は、構造部17の一部であり、構造部17と一体に賦形された一体物である。構造体16は、ビード部30を具備することにより、ビード部30を具備しない場合に比べて、強度及び剛性が向上される。更に、上述の通り、ビード部30が、構造部17の一面側17aで凹条となり且つ対面側17bで凸条となるよう賦形されていることで、補強構造であるビード部を薄く形成できる。従って、構造体16の重さの増加は抑えつつ、有意な強度補強を行うことができる。
尚、ビード部30は、構造部17の表裏どちらの側へ向かって凹み、どちらの側へ向かって突出されてもよいが、例えば、構造部17がシェル形状である場合、構造部17の概形が凹んだ側においてビード部30も凹み、構造部17の概形が突出された側においてビード部30も突出されることが好ましい。
【0018】
ビード部30は、上述の通り、構造部17の一面側17aで凹条となり且つ対面側17bで凸条となればよく、その断面形状は限定されないが、例えば、U字形状、コ字形状、カップ形状、円弧形状、V字形状等が挙げられる。
このうち、U字形状は、互いに対向された一対の側壁41と、この一対の側壁41の端縁同士を連結する連結壁42と、を備え、一対の側壁41同士が略並行に配置された略平板形状とされ、連結壁42が内凹となるように湾曲された湾曲形状である態様が含まれる。また、このU字形状が備える一対の側壁41同士が、その開放端へ向けて側壁41同士の距離が大きくなるように配置された態様も含まれ得る。
また、コ字形状は、互いに対向された一対の側壁41と、この一対の側壁41の端縁同士を連結する連結壁42と、を備え、一対の側壁41同士が略並行に配置された略平板形状とされ、連結壁42が側壁と略直角に配置された略平板形状とされた態様が含まれる。
更に、カップ形状(図1図4参照)は、互いに対向された一対の側壁41と、この一対の側壁41の端縁同士を連結する連結壁42と、を備え、一対の側壁41同士が非並行に配置された略平板形状とされ、側壁41が連結壁42に対して90度を超える角度で連結され、一対の側壁41同士が、その開放端へ向けて側壁41同士の距離が大きくなるように配置された態様が含まれる。
また、円弧形状は、一対の側壁と、この一対の側壁の端縁同士を連結する連結壁と、を備え、これらの側壁と連結壁とが一連に内凹となるように湾曲された湾曲形状である態様が含まれる。
更に、V字形状は、略平板形状の一対の側壁同士が、内凹となるように、側壁の端縁同士で連結された態様が含まれる。
【0019】
ビード部30の大きさは限定されないが、通常、その断面形状において、ビード部30の周囲における構造部17の厚さt3と、ビード部30の深さt4(最大深さ)との比(t4/t3)は、0.1~50とすることができ、0.5~25が好ましく、1~10がより好ましい。但し、ビード部30の深さ(高さ)は、ビード部30の長手方向において一定であってもよいが、変化されていてもよい。
【0020】
また、ビード部30は、通常、長尺状である。従って、ビード部30は、構造体16において梁のように作用させることができ、ビード部30が形成された領域以外の領域も含めて広い範囲を補強することができる。このことから、ビード部30は、構造部17の一部のみに設けられていてもよいが、構造部17を横断又は縦断するように設けられることがより好ましい。即ち、例えば、構造部17の横幅方向に延びるビード部30、構造部17の縦幅方向に延びるビード部30、構造部17の外縁に沿って延びるビード部30などが挙げられる。更に、ビード部30は、互いに交差しないように配置(図10(a)参照)することもできるが、ねじり強度等の観点から、複数条のビード部30が交差するように配置(図10(b)参照)することもできる。例えば、一対のビード部30をX字状に交差させて配置することができる。
また、ビード部30は、平面視した場合に、直線状に形成されてもよく、曲線状に形成されてもよく、直線部と曲線部との両方の部分を備えた複合形状に形成されてもよい。その他、ビード部の本数、配置形態等は特に問わず、用途等に応じて適宜選択される。
【0021】
補強帯50は、マトリックス樹脂51と連続繊維52とを備えて、連続繊維52はマトリックス樹脂51によって結着された状態で補強帯50に含まれている。また、この連続繊維52は、実質的に、同じ方向へ引き揃えられた連続繊維52であることが好ましい。
また、補強帯50は、ビード部30の凹面30a及び/又は凸面30bに沿って、ビード部30と一体に接合されており、連続繊維52は、ビード部30の延長方向に沿って敷設される。具体的には、例えば、ビード部30の凹面30aの底部及び/又は凸面30bの頂部を覆う補強帯50を備えることができる。更に、例えば、図3(a)に例示されるように、ビード部30の凸面30bの略全面を覆う補強帯50を備えることができる。また、図3(b)に例示されるように、ビード部30の凸面30bの頂面と一方の側壁41の外面のみを覆う補強帯50を備えることができる。更に、図3(c)に例示されるように、ビード部30の凹面30aの底面を覆う補強帯50を備えることができる。また、図3(d)に例示されるように、ビード部30の凹面30aの略全面を覆う補強帯50を備えることができる。更に、図3(e)に例示されるように、ビード部30の凹面30aの底面と一方の側壁41の内面のみを覆う補強帯50を備えることができる。
また、構造部17は、補強帯50を備えない構造部17の周囲17sと同じ厚さになるように補強帯50を備えることもできるが、構造部17の周囲17sより厚さが大きくなるように補強帯50を備えることが好ましい。この態様では、補強効果をより顕著に得ることができる。同様に、補強帯50を備えるビード部30(即ち、補強部)の厚さt1と、補強帯50を備えないビード部30の厚さt2と、を比較した場合、両者を同じ厚さになるように形成してもよいが、厚さt1が厚くなるように形成することが好ましい。この態様では、補強効果をより顕著に得ることができる。
【0022】
即ち、ビード部30の延長方向に沿って連続繊維52を敷設するために、補強帯50が設けられている。ビード部30の延長方向に沿って連続繊維52が敷設されることにより、ビード部30のみである場合に比べて、より優れた強度補強を得ることができる。
特に前述の通り、構造部17(ビード部30を含む)が繊維強化樹脂から構成され、且つ、その強化繊維が、非連続繊維である場合や、織物として強化繊維が含まれる場合に有用な補強となる。強化繊維が非連続繊維である場合、構造部17を射出成形等のより簡便に成形できる一方、構造部17に負荷される力が、例えば、上端部と下端部とにわたって広く入力される場合や、左端部と右端部とにわたって広く入力される場合、構造部17のみでは、当該入力範囲に沿って延長された強化繊維を有することができない。即ち、非連続繊維は、長さが短く、様々な方向へ向いて構造部17内に含有されるため、特定の方向へ強く寄与する特性を有することができない。また、強化繊維を織物として含む場合も同様であり、含まれる強化繊維の全量を必要な方向へ配向させることができないため、補強に寄与されない強化繊維を含むことになる。このような傾向は、構造部17がシェル形状である場合により顕著となる。即ち、構造体16に対して外部からの入力があった場合に、構造部17がシェル形状であると、ビード部30が形成されていない広い範囲における入力が、ビード部30へと集約され易くなり、ビード部30にはより大きな力が作用する場合があるからである。
【0023】
これに対して、補強を要するビード部30を備えるとともに、そのビード部30の延長方向に沿って連続繊維52が敷設されるように補強帯50を備える場合には、敷設された連続繊維52の全量をビード部30に付加される入力に対抗する補強要素として利用できる。即ち、ビード部30は、設置方向を決めて付設される補強構造であるため、ビード部30が担う補強は、ビード部30の延長方向となる。従って、ビード部30では、補強経路が明確であり、補強帯50による補強効果を極めて顕著に得ることができる。
【0024】
補強帯50は、マトリックス樹脂51と連続繊維52とを備えればよいが、他の構成を備えることができる。具体的には、基布54及び縫着糸等を備えることができる(図1及び図2参照)。即ち、連続繊維52は、ばらばらで用いるより、束ねて用いる方が、前述の通り、引き揃えによる効果を得やすい。このため、連続繊維52は、これを束ねた繊維束53として用いることが好ましい。また、繊維束53を用いる場合、その配向方向を固定するための基材を利用することが好ましいが、この基材としては、基布54を利用できる。
基布54は、複数の繊維束53を一括して扱いやすくするために、集約するための機能を担うことができる。繊維束53は、基布54に対してどのように固定されてもよいが、特に縫着により固定することができる。この場合、縫着糸を用いて、繊維束53を基布54へ縫着して固定することができる。
このように、繊維束53を縫着糸を用いて縫着してなる芯材では、芯材にマトリックス樹脂51を含浸させ易く、繊維強化樹脂として複合するうえで好都合である。
【0025】
即ち、例えば、補強帯50は、連続繊維52を束ねた繊維束53と、繊維束53が配列された基布54と、繊維束53及び基布54に含浸固定されたマトリックス樹脂51と、を備えることができる。
繊維束53は、撚りを有してもよいし、有さなくてもよい。また、繊維束53は、連続繊維52(強化繊維)以外の他繊維(非強化繊維)を含んでもよい。
繊維束53は、どのように束化されていてもよい。この束化は、例えば、複数本の連続繊維52を単に引き揃えられただけの状態として実現することができる。或は、束化は、糸(束化用の糸)を用い、複数本の連続繊維52を結束して実現することができる。他に、束化は、接着剤、粘着剤、熱融着剤等の他剤を用い、連続繊維52同士を結着して実現することができる。
【0026】
補強帯50を構成する連続繊維52の材質は限定されないが、構造部17を繊維強化樹脂により形成する場合に利用される連続繊維52と同様の材質を利用できる。上述のなかでも、特に炭素繊維が好ましいことは同様である。炭素繊維の種類は限定されず、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
炭素繊維は、フィラメントのまま用いることができるが、前述の通り、繊維束53として用いる場合、1本の繊維束53を構成する連続繊維52の本数は、特に限定されない。この本数は、例えば、3000本以上とすることができる。1本の繊維束53を構成する連続繊維52の本数が3000本以上であることにより、柔軟でありながら芯材として優れた強度を発揮させることができる。また、連続繊維52の本数は、例えば、3000本以上100000本以下とすることができ、更に5000本以上70000本以下とすることができ、更に7000本以上50000本以下とすることができ、更に10000本以上30000本以下とすることができる。
尚、連続繊維52は、通常、15mm以上の繊維長を有するものである。
【0027】
繊維束53には、1本を構成する連続繊維52の本数を増やした繊維束53(太束)を用いることもできる。太束を用いる場合、連続繊維52の本数は、例えば、30000本以上とすることができ、更に40000本以上とすることができ、更に60000本以上とすることができる。一方、太束を用いる場合、連続繊維52の本数は、例えば、1500000本以下、更に1000000本以下とすることができる。
【0028】
繊維束53は、例えば、1層で基布54上に配置されていてもよいし、2層以上の複数層で基布54上に配置されていてもよい(図2参照)。
応力集中の抑制等の観点から、補強帯50の幅方向の両側には、それら両側に挟まれる中間側よりも繊維束53の層数が少ない部位や繊維束53の隣り合う間隔が大きな部位を設けることができる。この部位は、補強帯50の幅方向の中間側から両側に向かって、繊維束53の層数が徐々に小さくなる徐変部や繊維束53の隣り合う間隔が徐々に大きく徐変部とすることができる。
【0029】
基布54の材料等は特に問わない。基布54の材料には、繊維集合体(織物、編物、不織布等)、金属シート(箔、板等)、樹脂シート(フィルム、板等)などを用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
基布54による繊維束53の固定方法は、特に限定されない。この固定方法として、例えば、縫着、接着、融着等が挙げられる。これら固定方法のなかでも、縫着が好ましい。縫着による利点として、繊維束53にクリンプを生じさせることなく、基布54に固定することができることが挙げられる。また、縫着による利点として、繊維束53の拘束の程度を、縫糸(図示略)のテンションによって自在に制御できることが挙げられる。例えば、繊維束53が基布54に縫着されている場合、基布54に対して繊維束53を強固に固定しつつ、繊維束53の可動性(基布に対する可動性、及び/又は、繊維束53同士の間の可動性)を確保することができる。そして、繊維束53の可動性の確保は、補強帯50に柔軟性を付与する。
【0030】
基布54に繊維束53を縫着する場合、基布54の材料には、繊維集合体を用いることが好ましい。即ち、基布54に繊維集合体を用いた場合、繊維束53を縫着し易く、尚且つ、補強帯50に柔軟性を付与することができる。繊維集合体は、織物、編物、不織布のいずれであってもよい。これらのなかでも、織物が好ましい。織物の利点として、柔軟性と剛性とのバランスを得やすく、縫着に用いる縫糸の拘束力が高いことが挙げられる。
織物の組織は、特に限定されないが、1×1、2×2、3×3等の平組織が好ましい。平組織は、5×5よりも細かい組織が好ましく、4×4又はそれより細かい組織がより好ましく、3×3又はそれより細かい組織が更に好ましく、2×2又はそれより細かい組織が特に好ましい。
繊維集合体の構成糸は、特に限定されない。構成糸には、繊維束53を構成する連続繊維52と同じ繊維を用いることができ、また異なる繊維を用いることができる。具体的に、構成糸には、各種の樹脂繊維、植物性繊維等を用いることができる。樹脂繊維を構成する樹脂の具体例として、ポリアミド(脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等)、ポリエステル(芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を有するポリエステル等)等が挙げられる。植物繊維の具体例として、綿繊維、麻繊維等が挙げられる。構成糸の繊度は、特に限定されない。この繊度は、繊維束53よりも小さいことが好ましい。
【0031】
補強帯50は、繊維束53が基布54の一面に並列で配列されることにより、形成される。補強帯50の形態は、特に限定されない。この形態は、例えば、基布54の一面全体に繊維束53を配列した構造とすることができ、基布54の一面の必要な部位にのみ繊維束53を配列した構造とすることができる。
補強帯50は、1本の繊維束53のみから構成されてもよいし、複数本の繊維束53から構成されてもよい。補強帯50が1本の繊維束53のみから構成される場合、基布54の一面を埋めるように1本の繊維束53を折りたたんで配置することで実現することができる。この場合、繊維束53の折りたたみ形態は、特に限定されない。この折りたたみ形態として、平面視で、蛇腹状、螺旋状(円螺旋、多角形螺旋等)等が例示される。また、補強帯50が複数本の繊維束53から構成される場合、基布54の一面を埋めるように複数本の繊維束53を引き揃えて配置することで実現することができる。また、1層の補強帯50は、1本の繊維束53を折りたたんで配置しつつ、それ以外の複数本の繊維束53を引き揃えて配置することによって、基布54の一面を埋めるように形成することもできる。
【0032】
補強帯50は、繊維束53を製織や製編することによって形成されたものではないため、クリンプを設けることなく、繊維束53を平面的に配置することができる。即ち、補強帯50は、繊維束53の厚さ方向の配向が抑えられ、該繊維束53の平坦性を高くすることができる。その結果、繊維束53の厚さ方向の配向を介した力の伝搬が抑制されて、優れた衝撃吸収力を発揮できる。
【0033】
補強帯50は、例えば、基布54が構造部17と向かい合うように配置されてもよいし、繊維束53が構造部17と向かい合うように配置されてもよい。また、補強帯50は、1層のみ有していてもよいし、2層以上積層して複数有していてもよい。更に、複数層の補強帯50を有する場合、例えば、複数条のビード部30が交差しない部位では、各補強帯50の繊維束53の配列方向を平行とし、複数条のビード部30が交差する部位では、各補強帯50の繊維束53の配列方向を交差することができる。この交差角は、0度を超えて90度以下(0度<θ≦90度)であることが好ましい。
【0034】
複数層の補強帯50を有する場合、例えば、補強帯50の基布54同士が向かい合うように積層されることが好ましい。これは、補強帯50の厚さ方向への力の伝搬を、より高度に制御できるためである。即ち、繊維束53は、クリンプを有さないことに起因して、厚さ方向への力の伝搬を高度に抑制できる。一方で、基布54同士を向かい合わせて配置した層及び層間では、2層の基布54同士が並んだ構造を有するため、基布54同士の層及び層間においてその層方向へ力の伝搬を大きくする作用を有する。つまり、層方向へクラックを形成し易くすることで、厚さ方向へ向けて加わった衝撃力を効率よく層方向へ分散させ、厚さ方向への衝撃力の大きさを弱めることができる。
尚、補強帯50は、互いの基布54を向かい合わせて積み重ねる構成に限らず、互いの繊維束53を向かい合わせて積み重ねる構成としたり、一方の補強帯50の基布54と他方の補強帯50の繊維束53とを向かい合わせて積み重ねる構成としたりできる。
【0035】
マトリックス樹脂51は、補強帯50の母材となる樹脂である。即ち、マトリックス樹脂51は、繊維束53及び基布54の内部に行きわたるように含浸されて固定(硬化性樹脂である場合には硬化、熱可塑性樹脂である場合には固化)される樹脂である。マトリックス樹脂51の含浸方法及び固定方法は、従来公知の各種方法を利用できる。
補強帯50を構成するマトリックス樹脂51に関しても、構造部17を構成することができる樹脂(強化繊維を含む場合のマトリックス樹脂)と同様である。
構造部17及び補強帯50の両方が繊維強化樹脂から構成される場合、これらに用いられるマトリックス樹脂は、異なっていてもよいが、同質であることが好ましく、更には、同じ樹脂であることが好ましい。同質又は同じ樹脂である場合には、構造部17と補強帯50との界面における接合性を向上させることができ、より強固な補強構造を得ることができる。
尚、同質とは、両方のマトリックス樹脂が、ポリオレフィン同士である場合、ポリアミド同士である場合、ポリエステル同士である場合、エポキシ樹脂同士である場合、などが例示される。即ち、樹脂種が同じである場合が挙げられる。一方、同じ樹脂である場合としては、ポリプロピレン同士である場合、ポリアミド6同士である場合等のように、具体的な樹脂自体が同じである場合が挙げられる。
【0036】
また、構造体16は、補強帯50を備えたビード部30を備えた構造部17と、同様に線強化樹脂から形成された同様の構造部48と、を対向させて配置したうえで、両者の間隙にコア層47を設けた構造として用いることができる。この場合、コア層47としては、発泡樹脂を用いることで、軽量化を図ることができる。
【0037】
更に、補強帯50は、ビード部30との接合面側に、マトリックス樹脂51内に遷移領域を有することができる。遷移領域を有することにより、ビード部30と補強帯50との接合強度を向上させることができる。具体的には、両者の構成材料同士の遷移領域が挙げられる。即ち、例えば、構造部17が非連続繊維を用いた繊維強化樹脂からなる場合には、非連続繊維が補強帯50の界面に含有された領域を遷移領域とすることができる。また、両者のマトリックス樹脂同士が混合された領域を遷移領域とすることができる。
【0038】
また、ビード部30は、他の構造体18との締結構造を有することができる(図3参照)。他の構造体18としては、金属部品が挙げられる。金属部品の機能、形状、大きさ等は特に問わない。金属部品としては、例えば、構造部17を他部材と連結、締結、溶接等するための金具が挙げられる。この金具としては、例えば、他部材に対して回動自在とするヒンジ金具、他部材に対して固定されるブラケット金具やジョイント金具等の連結金具、他部材に対して支持されるステー金具、他部材に対して所定角度で固定等されるアングル金具、他部材に対して締結される締結金具などが挙げられる。
また、金属部品を構成する材料は限定されず、例えば、鉄、鉄鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、ステンレス鋼等が挙げられる。
更に、金属部品の構造部17への接合形態としては、例えば、ネジ、リベット等の締結具64を用いた締結、インサート成形、接着剤による接着、レーザ溶着、振動溶着などが挙げられる。これらのうち、接合強度等の観点から、締結具64を用いる締結であることが好ましい。
【0039】
本構造体の用途は特に問わない。本構造体は、例えば、自動車用部品として利用されることができる。自動車用品としては、自動車用外装材、自動車用内装材、自動車用構造材、自動車用衝撃吸収材、エンジンルーム内部品等が挙げられる。
具体的には、バンパー、スポイラー、カウリング、フロントグリル、ガーニッシュ、ボンネット、トランクリッド、カウルルーバー、フェンダーパネル、ロッカーモール、ドアパネル、ルーフパネル、インストルメントパネル、センタークラスター、ドアトリム、クオータートリム、ルーフライニング、ピラーガーニッシュ、デッキトリム、トノボード、パッケージトレイ、ダッシュボード、コンソールボックス、キッキングプレート、スイッチベース、シートバックボード、シートフレーム、アームレスト、サンバイザ、インテークマニホールド、エンジンヘッドカバー、エンジンアンダーカバー、オイルフィルターハウジング、車載用電子部品(ECU、TVモニター等)のハウジング、エアフィルターボックス、ラッシュボックス等のエネルギー吸収体、フロントエンドモジュール等のボディシェル構成部品などが挙げられる。
【0040】
本構造体は、自動車用部品の他に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材等が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥等)の表装材、構造材、更には、ユニットバス、浄化槽などを挙げることができる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等を挙げることもできる。また、家電製品(薄型TV、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、携帯電話、携帯ゲーム機、ノート型パソコン等)の筐体及び構造体などの成形体を挙げることもできる。
【0041】
[2]構造体の使用方法
前述した本構造体16は、ビード部30の凹条内を、長尺物を敷設する敷設スペースとして利用することができる。このような長尺物としては、例えば、ハーネス(電気配線等)、チューブ(ポンプ用チューブ等)等の機能部品が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更には、前述した本構造体16は、ビード部30の凹条内を、流動物の流路として利用することができる。このような流動物としては、気体、液体が挙げられる。より具体的には、冷気や暖気等の気体が挙げられる。即ち、ベンチレーションとして利用することができる。また、液体としては、冷媒等が挙げられる。
【0042】
<車両用シート>
本実施形態に係る車両用シートは、上記の実施形態に係る構造体で構成されるシートバックフレームを備える。このシートバックフレームは、例えば、上記構造部で構成されるシートバックシェルと、上記金属部品で構成されるアッパアームと、を備えることができる。
【0043】
尚、上記実施形態で記載した各構成の符号は、以下の実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
【実施例0044】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
尚、本実施例では、本発明に係る「構造体」として車両用シートのシートバックフレームを例示する(図5参照)。
【0045】
本実施例に係る車両用シート1は、図9に示すように、着座者の着座部となるシートクッション2と、着座者の背もたれとなるシートバック3と、を備えている。このシートクッション2は、骨格を構成するシートクッションフレーム5を備えている。このシートクッションフレーム5には、クッションパッド6及び表皮カバー7が取り付けられている。また、シートクッションフレーム5は、左右一対のサイドフレーム11と、これらサイドフレーム11の前端部の間を連結するフロントパイプ12と、これらサイドフレームの後端部の間を連結するリヤパイプ13と、を備えている。これら各サイドフレーム11には、クッションフレーム5と後述のシートバックフレーム16との連結に用いられるロアアーム部14が設けられている。このロアアーム部14は、サイドフレーム11の後端部の上縁部分を、半円板状に上側へ突出させて形成されている。
【0046】
シートバック3は、骨格を構成するシートバックフレーム16を備えている。このシートバックフレーム16は、シートバックシェル17(本発明に係る「構造部」として例示する。)と、左右一対のアッパアーム18(本発明に係る「金属部品」として例示する。)と、を備えている(図5参照)。このシートバックシェル17には、バックパッド21及び表皮カバー22が取り付けられる(図7参照)。また、シートバックシェル17は、背もたれ時のホールド感を高めるように、着座者の上半身の後側の外形形状に適合した形状として、全体で凹面の立体形状に形成されている。また、アッパアーム18は、シートバックシェル17の横幅方向の左右両端部において、シートバックシェル17の下端から下方へ突出するように設けられている。更に、アッパアーム18は、シートクッションフレーム5とシートバックフレーム16との連結に用いられる金具(例えば、鉄備品等)であり、シートバックシェル17に締結されている。
【0047】
アッパアーム18とロアアーム部14との間には、シートクッションフレーム5に対してシートバックフレーム16を回動可能に連結するリクライナ機構24(ギヤ機構)が組み付けられている。このリクライナ機構24がリクライニングモータ25により作動されることで、シートクッションフレーム5に対してシートバックフレーム16が回動され、背もたれ角度が任意の角度に調節される。更に、左右のリクライナ機構24は、シャフト15(図6参照)により連結されている。
【0048】
シートバックシェル17は、図5図7に示すように、上記のように表面側に向かって凹面の立体的なシェル形状をなしている。このシートバックシェル17の表面にバックパッド21が配置されている(図7参照)。また、シートバックシェル17には、後述する締結具63、64が挿通する孔部63a、64aが形成されている(図6参照)。また、シートバックシェル17は、非連続繊維(例えば、炭素繊維等)が分散含有された繊維強化樹脂(例えば、エポキシ樹脂等)、及び/又は連続繊維(例えば、炭素繊維等)を用いた製織布が含有された繊維強化樹脂(例えば、エポキシ樹脂等)、からなされている。更に、シートバックシェル17は、車両用シート1を車両に搭載した状態で、通常、その表面側が車両前方を向き、その裏面側が車両後方を向く。
尚、図5中の符号「28」はシートバックシェル17の表裏に貫通した孔部を示す。更に、図7中の符号「29」はアッパアーム18を覆う樹脂製等のカバーを示す。
【0049】
シートバックシェル17は、複数条のビード部30A、30B、30C、30Dを備えている(図6参照)。これらビード部30A~30Dのそれぞれは、互いに対向する一対の側壁41と、一対の側壁41の先端同士を連結する連結壁42と、を備えている。
尚、図6中の破線矢印はビード部30A~30Dの延長方向を示す。
【0050】
ビード部30A(「ワイドビード」とも称される。)は、シートバックシェル17の横幅方向Aに延びて配置されている。より具体的に、ビード部30Aは、シートバックシェル17において着座者の肩部及び背部を支持する部位を連絡するように配置されている。また、ビード部30B(「メインビード」とも称される。)は、シートバックシェル17の縦幅方向B(上下方向)に延びてX字状に交差するように配置されている。より具体的に、ビード部30Bは、シートバックシェル17において着座者の腰部、背部及び頭部を支持する部位を連絡するように配置されている。また、ビード部30C(「サイドビード」とも称される。)は、シートバックシェル17の左右の縁側に沿って延びて配置されている。さらに、ビード部30D(「コネクティングビード」とも称される。)は、シートバックシェル17の下縁側に沿って延びて配置されている。より具体的に、ビード部30Dは、後述する左右の中空断面部70を連絡するように配置されている。
【0051】
ビード部30A、30B、30Dは、シートバックシェル17の表面側17aで凹条となり且つ裏面側17bで凸条となるように設けられている(図1参照)。これら各ビード部30A、30B、30Dの一対の側壁41は、シートバックシェル17のバックパック22を支持する面部の裏面から立ち上げられている。また、ビード部30A、30B、30Dの凹面30aは中空部40を形成している。さらに、ビード部30Dの凸条の高さは、ビード部30Bの凸条の高さよりも高くなっている(図6参照)。すなわち、ビード部30Dは、ビード部30Bよりもシートバックシェル17の裏面側に大きく突出している。そのため、ビード部30Bとビード部30Dの交差部が段差部43となっている。
【0052】
ビード部30Cは、シートバックシェル17の裏面側17bで凹条となり且つ表面側17aで凸条となるように設けられている。このビード部30Cは、他のビード部30A、30B、30Dよりもシートバックシェル17の表面側に位置している。また、ビード部30Cの内側の側壁41は、シートバックシェル17の側縁と連なっている。また、ビード部30Cの外側の側壁41には、シートバックシェル17の下部で裏面側に延びる延設部44が設けられている。
【0053】
ビード部30A~30Dのそれぞれには、マトリックス樹脂51(例えば、エポキシ樹脂等)で結着され且つビード部30A~30Dの延長方向に沿って敷設される連続繊維(例えば、炭素繊維等)52を含む補強帯50が一体に設けられている(図1参照)。この補強帯50は、ビード部30A、30B、30Dの連結壁42に沿って配置されている。更に、補強帯50は、ビード部30Cの外側の側壁41及び連結壁42とともに延設部44に沿って配置されている。
【0054】
補強帯50は、図1に示すように、連続繊維52を束ねた繊維束53と、繊維束53が配列された基布(例えば、織物等)54と、繊維束53及び基布54に含浸固定されたマトリックス樹脂51と、を備えている。この繊維束53は、1層で基布54上に縫着によりビード部30A~30Dの延長方向に沿うように配列されている。また、繊維束53は、シートバックシェル17(補強帯50を含む部分)の孔部63a、64a(図6参照)を形成するように配列されている。さらに、シートバックシェル17において、補強帯50を備えた補強部の厚さt1は、補強帯50を備えない補強部の周囲17sの厚さt3よりも大きくなっている。
【0055】
尚、繊維束53は、2層以上の複数層で基布54上に縫着により配列されていてもよい(図2参照)。この場合、応力集中の抑制等の観点から、補強帯50の幅方向の両側には、それら両側に挟まれる中間側よりも繊維束53の層数が少ない部位56が設けられていることが好ましい。
【0056】
アッパアーム18は、図5図7に示すように、シートバックシェル17の下部において横幅方向Aの左右両側に配置されている。このアッパアーム18は、互いに交差する第1面部61及び第2面部62を備えている。この第1面部61には、締結具63が挿通する孔部63bが形成されており、第2面部62には、締結具64が挿通する孔部64bが形成されている(図6参照)
【0057】
第1面部61は、図8に示すように、ビード部30Cの外側の側壁41から延びる延設部61に締結具(具体的にネジ及びナット)63で締結されている。この第1面部61には、シートバックシェル17の表面を覆う表皮カバー22に設けられた係止部(具体的にフック部)22aが引っ掛けられる被係止部(具体的に孔部)66が設けられている。この被係止部66は、アッパアーム18の外縁側に形成されたヘミング加工による折り曲げ部67に配置されている。この折り曲げ部67は、これに連なる第1面部61の部位よりも肉厚が大きい。
【0058】
また、本実施例では、シートバックシェル17はビード部30B、30Dを備え、アッパアーム18はビード部30B、30Dに締結されている。これにより、ビード部30B、30Dによりシートバックシェル17とアッパアーム18の締結部間が補強され、強度及び剛性が更に向上される。
特に、本実施例では、アッパアーム18は、凸条の高さが異なるビード部30B、30Dの交差部(段差部43)に宛がわれる段差部69を備えるとともに、段差部69を跨ぐ両側でビード部30B、30Dのそれぞれに締結されている。これにより、段差部69によりシートバックシェル17とアッパアーム18の締結部間がより強固に補強される。
【0059】
また、本実施例では、ビード部30B、30Dには、マトリックス樹脂51で結着され且つビード部30B、30Dの延長方向に沿って敷設される連続繊維52を含む補強帯50が一体に設けられている。これにより、補強帯50によりシートバックシェル17とアッパアーム18の締結部間がより強固に補強される。
【0060】
また、本実施例では、アッパアーム18は、シートバックシェル17の幅方向Aの左右両側に配置されているとともに、シートバックシェル17の幅方向Aの左右両側に形成される中空断面部70を連結するビード部30Dに締結されている。これにより、ビード部30Dによりシートバックシェル17とアッパアーム18の締結部間がより強固に補強される。
【0061】
更に、本実施例では、アッパアーム18には、表皮カバー22に設けられた係止部22aが引っ掛けられる被係止部66が設けられている。これにより、アッパアーム18を利用して表皮カバー22の引っ掛け構造を構成することができる。
【0062】
さらに、本実施例では、シートバックシェル18は繊維強化樹脂からなされている。これにより、強度及び剛性を損なわずに更なる軽量化を図ることができる。
【0063】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
図10(b)は、前述した図6に示すビード部30A、30B及び30Dを平面的に簡略化して示した説明図であり、2条のビード部30Bが、2条のビード部30Aの間隙において交差された態様を示している。これに対して、図10(a)は、変更した例を表しており、ビード部30A、30B及び30Dを平面的に簡略化して示した説明図であり、2条のビード部30Bが、交差されることなく、2条のビード部30Aと各々交差された態様を示している。
【0064】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0065】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、構造部に金属部品を接合してなる構造体に関する技術として広く利用される。特に、車両用シートのシートバックフレームとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0067】
16;構造体(シートバックフレーム)、
17;構造部(シートバックシェル)、17a;一面側(表面側)、17b;対面側(裏面側)、17s;周囲、
30;ビード部、30A、30B、30C、30D;ビード部、
30a;凹面、30b;凸面、
41;側壁、42;連結壁、
50;補強帯、51;マトリックス樹脂、52;連続繊維。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10