(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189199
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20221215BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20221215BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20221215BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20221215BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L29/78 652M
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653C
H01L29/78 657C
H01L27/088 E
H01L27/06 102A
H01L27/04 A
H01L27/04 H
H01L27/06 311B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097656
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】劉 会涛
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
【Fターム(参考)】
5F038BH04
5F038BH05
5F038BH13
5F038CA02
5F038CA05
5F038CA12
5F038EZ20
5F048AA02
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA01
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC12
5F048BD07
5F048BF15
5F048BF16
5F048CB07
5F048CC06
5F048CC08
5F048CC11
5F048CC18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ESDサージ電流による焼損を低減する半導体装置を提供する。
【解決手段】第1半導体領域1~第4半導体領域4及び第6半導体領域を備える半導体基板の活性領域に設けられた溝と、溝内に設けられたゲート電極9と、活性領域106の半導体基板上に設けられた上部電極101と、上部電極よりも半導体基板の端側に設けられ、溝内からゲート電極を溝の開口部上へと引き揚げる引き上げ部107と、上部電極よりも半導体基板の端側に設けられ、一端がゲート配線102と電気的に接続し、ダイオードを構成するダイオード部10と、ダイオード部の他端と電気的に接続する終端電極104と、を備える。引き上げ部から半導体基板の端側へと延びる上部電極の延伸部101Aは、半導体基板と接続している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の活性領域に設けられた溝と、
前記溝内に設けられたゲート電極と、
前記活性領域の前記半導体基板上に設けられた上部電極と、
前記上部電極よりも前記半導体基板の端側に設けられ、前記溝内から前記ゲート電極を前記溝の開口部上へと引き揚げる引き上げ部と、
前記上部電極よりも前記半導体基板の端側に設けられ、一端が前記ゲート電極と電気的に接続し、ダイオードを構成するダイオード部と、
前記ダイオード部の他端と電気的に接続する終端電極と、
を備え、
前記引き上げ部よりも前記半導体基板の端側へと延びる上部電極の延伸部が前記半導体基板と接続していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記引き上げ部から前記ダイオード部へと延伸するゲート電極の延伸部を複数設けていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記上部電極の延伸部はゲート電極の延伸部に挟まれるように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
平面的に見て、前記溝の延伸方向と垂直の方向において、前記ゲート電極の延伸部と前記上部電極の延伸部が交互に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板は
第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域上に設けられた第1導電型の第3半導体領域と、
を備え、
前記ゲート電極は絶縁膜を介して前記第2半導体領域と対向するように配置され、
前記上部電極は前記第3半導体領域と電気的に接続し、前記ゲート部よりも前記半導体基板の端側へと延びる前記上部電極の延伸部が前記第2半導体領域と電気的に接続していることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、外周部及びその近辺の耐圧を上昇させることができる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の耐圧向上のために、種々の技術が採用されている。例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)では、半導体素子が配置された活性領域を囲む外周領域にポリシリコンダイオードを設け、このポリシリコンダイオードをコレクタ-ゲート間に配置することで耐圧を向上させる例が開示されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
ところで、IGBTはプレーナゲート型よりもオン抵抗を低減することができるトレンチゲート型が多く開発されているが、ゲート電極は半導体基板上のバスラインと接続するため、半導体基板上(溝の開口部よりも上)に引き上げる必要がある。例えば特許文献4の
図2のように、活性領域の外側に設けられるポリシリコンダイオードとゲート電極とを電気的に接続するため、トレンチゲート型のゲート電極の引き上げ部は、エミッタ電極と接続する半導体基板の接続部よりも半導体基板の端側に設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-41994号公報
【特許文献2】特開2015-065217号公報
【特許文献3】特開2001-217420号公報
【特許文献4】特開2014-165364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体装置にサージ電流が流れた時、IGBTのコレクタ領域と電気的に接続している下部電極から上部電極へとESDサージ電流が流れる。
また、前述のポリシリコンダイオードを活性領域の外側に配置するため、半導体基板上面側の半導体基板の端近傍に高圧電位となる終端電極が設けられている。そのため、半導体基板の上面側でも半導体基板の端側から活性領域側へとサージ電流が流れる。特許文献4のようにゲート電極の引き上げ部などのトレンチ端が半導体基板と上部電極との接続箇所よりも半導体基板の端側に設けられていると、トレンチ端近傍のトレンチ間で挟まれた半導体領域内で電流集中が生じ、その近傍の絶縁膜などが焼損したりすることがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ESDサージ電流による焼損を低減することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、1または複数の実施形態に係る半導体装置は、半導体基板の活性領域に設けられた溝と、溝内に設けられたゲート電極と、活性領域の半導体基板上に設けられた上部電極と、上部電極よりも半導体基板の端側に設けられ、溝内からゲート電極を溝の開口部上へと引き揚げる引き上げ部と、上部電極よりも半導体基板の端側に設けられ、一端が前記ゲート電極と電気的に接続し、ダイオードを構成するダイオード部と、ダイオード部の他端と電気的に接続する終端電極と、を備え、引き上げ部よりも半導体基板の端側へと延びる上部電極の延伸部が半導体基板と接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、ESDサージ電流による焼損を低減することができる半導体装置を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、1または複数の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【
図2】
図2は、1または複数の実施形態に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、1または複数の実施形態に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら、1または複数の実施形態について詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付す場合がある。図面の記載は模式的なものであり、厚みと寸法の関係、各層の厚みの比率等は一例であり、発明の技術思想を限定するものではない。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる場合がある。以下の実施形態では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明するが、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型がp型、第2導電型がn型の場合としてもよい場合がある。以下の説明で、部材の位置関係を説明する際に、「上部」、「下部」、「右側」、「左側」等は参照する図面の向きに基づいて必要に応じて使用されるが、発明の技術思想を限定するものではない。また、「上部」、「下部」、「右側」、「左側」等の説明は部材が接していなくて用いられる場合がある。
【0010】
図1は、1または複数の実施形態に係る半導体装置100の平面図である。この半導体装置100は、上部電極101と、上部電極101の外側に設けられたゲート配線102と、ゲート配線102の外側に設けられたダイオード領域103と、ダイオード領域103の外側に設けられた終端電極104とを備えている。平面的に見て、ゲート配線102は上部電極101の少なくとも一部または全部を囲むように配置されていることが望ましく、ダイオード領域103はゲート配線102の少なくとも一部または全部を囲むように配置されていることが望ましい。
図1において図示されていないが、溝7が紙面の上下方向に設けられている。
上部電極101は溝7の延伸方向と同じく紙面の上下方向に複数の延伸部101Aを備える。半導体装置100を平面的に見て、上部電極101における紙面の上下の端の両側に、延伸部101Aによる複数の凹凸を備える。また、ゲート配線102は、上部電極101の延伸部101Aに対応するように、溝7の延伸方向と同じく紙面の上下方向に複数の延伸部102Aを備える。半導体装置100を平面的に見て、ゲート配線102における紙面の上下の端の両側に、延伸部102Aによる複数の凹凸を備える。
図1の平面図において、延伸部102A を含むA-A’で切断した断面図を
図2で示し、延伸部101Aを含むB-B’で切断した断面図を
図3で示している。
図2の活性領域106には、第1導電型(例えば、N型)の第1半導体領域1と、第1半導体領域1上に設けられた第1導電型と反対導電型である第2導電型(例えば、P型)の第2半導体領域2と、第2半導体領域2上に設けられた第1導電型の第3半導体領域3と、第2半導体領域2とは反対側の第1半導体領域1上に設けられた第2導電型の第4半導体領域4とを半導体基板は備える。また、第3半導体領域3は上部電極101と電気的に接続し、第4半導体領域4は下部電極105と電気的に接続している。さらに、第3半導体領域3と第2半導体領域2を貫通する溝(トレンチ)7が形成されており、溝7の中には絶縁膜8を介して第2半導体領域2と対向するゲート電極9が設けられている。これらにより、活性領域106は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとして機能する。
ここで、第1半導体領域1と第2半導体領域2との間に第1半導体領域1よりも不純物濃度が高い第1導電型の第5半導体領域5を設けても良い。また、
図1で示すように、第1半導体領域1と第4半導体領域4との間に第1半導体領域1よりも不純物濃度が高い第1導電型の第6半導体領域6を設けても良い。第2半導体領域2は上部電極101と電気的に接続してもよい。また、
図1において延伸部101Aが18本、延伸部102Aが16本、
図2並びに
図3において溝7は2本配置されているが、便宜的に示すものであり、それぞれは
図1、
図2並びに
図3で示すものに限定されるものではない。
【0011】
活性領域106内の溝7の箇所から半導体基板の端側(外側)へと溝7に沿って延びる引き上げ部107を備える。引き上げ部107は溝7の延伸方向の両端側に設けられていることが望ましい。活性領域106から延びる溝7内のゲート電極9は、引き上げ部107において、溝7の開口部7Aを介して溝7の開口部7Aよりも上方へと引き揚げられ、延伸部102Aを介してゲート配線102と接続される。
【0012】
引き上げ部107よりも半導体基板の端側(外側)のダイオード領域103には、ポリシリコンからなるダイオード部10を半導体基板上に備える。ダイオード部10はP型のポリシリコンとN型のポリシリコンがP/N/P/NとPとNが交互に複数配置されている。ダイオード部10の一方の端側はゲート配線102と電気的に接続されており、ダイオード部10の他方の端側は終端電極104と電気的に接続されている。ダイオード部10の下には、絶縁膜等を介して離間した第2導電型の第7半導体領域11を備える。第7半導体領域11は耐圧改善領域として機能し、第2半導体領域2側から広がる空乏層の広がりを制御させることができる。
図2においてゲート電極9の引き上げ部107側の溝7の端から第7半導体領域11までの領域であって第1半導体領域1上には、第2半導体領域2が設けられている。つまり、活性領域106から第7半導体領域11までの溝7の無い第1半導体領域1上の領域において、第2半導体領域2が設けられている。
【0013】
図3で示すように、ゲート電極9の引き上げ部107で挟まれた領域の端からダイオード領域103までの半導体領域内において、上部電極101は延伸部101Aを介して第2半導体領域2と電気的に接続している。なお、延伸部101Aは第2半導体領域2ではなく第7半導体領域11と接続していてもよい。
図1で示すように、活性領域側とは反対方向に向かって延伸する上部電極101の延伸部101Aが、引き上げ部107よりも半導体基板の端側まで延伸し、第2半導体領域2又は/かつ、第7半導体領域11と延伸部101Aとが接続する。これにより、半導体装置にESDサージ電流が加わった時、ダイオード領域103側から溝7を迂回して溝7(ゲート電極9の引き上げ部107)で挟まれた第2半導体領域2を通り、更に第2半導体領域2と接続した上部電極101を通じて外部へと電流が流れることを抑制することができる。
【0014】
また、従来の半導体装置は、ゲート電極9の引き上げ部107はゲート電極9とゲート配線102との接続を良好にするため、引き上げ部107の溝7の幅を活性領域の溝7の幅より広げられている。すると、溝7で挟まれたゲート電極9の引き上げ部107の半導体領域の幅は活性領域内における溝7で挟まれた半導体領域の幅よりも狭くなり、その領域の電流密度はより高くなってしまう。ところが、半導体装置100においては、半導体基板と上部電極101の延伸部101Aとの接続箇所がゲート電極9の引き上げ部107の溝7の端よりも半導体基板の端側(外側)に設けられている。ゲート電極9とゲート配線との接続を良好にするため引き上げ部107の溝7の幅を活性領域106内の溝7の幅より広げたとしても、引き上げ部107の近傍の溝7で挟まれた半導体領域内の電流集中を抑制し、溝7内の絶縁膜などが焼損したりすることを抑制することができる。なお、
図3の点線は透視的に
図2の引き上げ部107を示すものであり、
図2の引き上げ部107の位置と
図3の半導体基板と延伸部101Aとの接続箇所の位置の関係を比較するために示している。
【0015】
図1で示すように、溝7の一方の端及び他方の端の外側(半導体基板の端側)において、第2半導体領域2又は/かつ、第7半導体領域11と上部電極101から延びた延伸部101Aが電気的に接続していることが望ましい。
また、ゲート電極9とダイオード部10との面内(
図1の平面内)の抵抗値のばらつきを抑制するため、複数のゲート電極9の引き上げ部107を設けて、ゲート電極9とゲート配線102とを複数の延伸部102Aを通じて電気的に接続している。ここで、隣接するゲート配線102の延伸部102Aに挟まれた領域に、上部電極101の延伸部101Aが設けられている。これにより、半導体装置のサイズを比較的大きくすることなく、溝7を通って第2半導体領域2と接続した上部電極101へと流れる電流密度を面内で抑制することができる。例えば、
図1において、上部電極101の複数の延伸部101Aとゲート配線102の複数の延伸部102Aとが、かぎ爪のようにかみ合うように設けられている。これにより、チップ面積の増大を抑制し、本発明の効果を得ることができる。
【0016】
上述の1または複数の実施例はIGBT(InsulateGateBipolarTransistor)やMOSFET(MetalOxideSemiconductorFieldEffectTransistor)を含む半導体装置に適用可能である。
【0017】
上記のように実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものではなく、当業者は様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本発明はここでは記載されていない様々な実施形態等を含む。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によって定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、特にパワー半導体装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 第1半導体領域
2 第2半導体領域
3 第3半導体領域
4 第4半導体領域
5 第5半導体領域
6 第6半導体領域
7 溝
8 絶縁膜
9 ゲート電極
10 ダイオード部
11 第7半導体領域
100 半導体装置
101 上部電極
101A 上部電極の延伸部
102 ゲート配線
102A ゲート配線の延伸部
103 ダイオード領域
104 終端電極
106 活性領域
107 引き上げ部