(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189205
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】糸巻取機
(51)【国際特許分類】
B65H 67/08 20060101AFI20221215BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B65H67/08 B
D01H15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097662
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】目片 努
(72)【発明者】
【氏名】澤田 晴稔
【テーマコード(参考)】
3F112
4L056
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112BA03
3F112CA07
3F112EA03
3F112ED02
3F112GB07
3F112JA08
3F112JB01
3F112RA04
4L056AA19
4L056CA06
4L056CB04
4L056DB06
4L056EA17
4L056EB16
4L056EB23
4L056EC82
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で糸を規制可能な糸巻取機を提供する。
【解決手段】紡績機の巻取装置25は、紡績装置22から供給された紡績糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する。糸継装置82は、紡績糸5が分断された場合に、紡績装置22側の紡績糸5とパッケージ7側の紡績糸5との糸継ぎを行う。紡績糸5が分断された場合に、吸引装置24はパッケージ7側の紡績糸5を捕捉可能であり、サクションパイプ83は紡績装置22側の紡績糸5を捕捉可能である。紡績機は、複数の紡績ユニット2を備える。それぞれの紡績ユニット2の巻取装置25は、パッケージ回転装置と、トラバース装置73と、を備える。紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、糸継装置82による糸継ぎの前に、パッケージ回転装置及びトラバース装置73のうち少なくとも一方を動作させることで、パッケージ7側の紡績糸5をパッケージ7の巻幅方向中央領域に寄せる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給可能な給糸装置と、
前記給糸装置から供給された糸をトラバースしながら巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記給糸装置側の糸と前記パッケージ側の糸との糸継ぎを行う糸継装置と、
前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記パッケージ側の糸を捕捉可能な第1捕捉装置と、
前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記給糸装置側の糸を捕捉可能な第2捕捉装置と、
前記巻取装置を制御する制御部と、
を備え、
複数の処理ユニットを備え、
それぞれの処理ユニットが、前記給糸装置及び前記巻取装置を備え、
それぞれの処理ユニットの前記巻取装置は、
処理ユニット毎に独立して駆動され、パッケージを回転させるパッケージ回転装置と、
処理ユニット毎に独立して駆動され、前記パッケージに巻かれる糸をトラバースするトラバース装置と、
を備え、
前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記制御部は、前記糸継装置による糸継ぎの前に、前記パッケージ回転装置及び前記トラバース装置のうち少なくとも一方を動作させることにより前記パッケージ側の糸を前記パッケージの巻幅方向中央領域に寄せる糸寄せ制御を行うことを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記トラバース装置は、往復運動する糸ガイドを備え、
前記糸寄せ制御において、前記トラバース装置は前記糸ガイドを動作させることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項2に記載の糸巻取機であって、
前記糸寄せ制御において、前記糸ガイドは、前記パッケージの巻幅の端部領域から中央領域へ移動することを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記糸寄せ制御において、前記パッケージ回転装置は前記パッケージを巻取方向に回転させた後に停止させ、
前記パッケージの回転が停止した後に前記糸継装置が糸継ぎを行うことを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記パッケージの巻幅方向中央領域にある糸を検出可能な糸検出センサを備え、
前記糸寄せ制御において、前記パッケージ回転装置が前記パッケージを巻取方向とは逆方向に回転し、
前記パッケージからの解舒に伴って往復運動する糸を前記糸検出センサが検出すると、前記パッケージの逆方向の回転が停止されることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
複数の前記処理ユニットに対して走行可能な作業台車を備え、
前記作業台車は、前記第2捕捉装置と、前記糸継装置と、を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
糸を供給可能な給糸装置と、
前記給糸装置から供給された糸をトラバースしながら巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記給糸装置側の糸と前記パッケージ側の糸との糸継ぎを行う糸継装置と、
前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記パッケージ側の糸を捕捉可能な第1捕捉装置と、
前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記給糸装置側の糸を捕捉可能な第2捕捉装置と、
を備え、
前記第2捕捉装置は、
前記給糸装置から供給される糸を捕捉するための捕捉位置と、
前記糸継装置よりも糸走行方向下流側である待機位置と、
の間で移動可能であり、
前記給糸装置が給糸を中断した後、前記第1捕捉装置は前記パッケージ側の糸を前記糸継装置よりも糸走行方向上流側で捕捉しており、前記第2捕捉装置は前記待機位置で待機している状態で、
前記パッケージ側の糸を前記パッケージの巻幅方向中央領域に寄せることにより、前記第2捕捉装置が前記待機位置から前記捕捉位置へ移動する経路から、前記パッケージと前記第1捕捉装置との間の糸を退避させる退避制御が行われることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項7に記載の糸巻取機であって、
複数の処理ユニットと、
複数の前記処理ユニットに対して走行可能な作業台車と、
を備え、
それぞれの処理ユニットが、前記給糸装置及び前記巻取装置を備え、
前記作業台車は、前記第2捕捉装置と、前記糸継装置と、を備えることを特徴とする糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糸の巻取りを開始する前に、分断されていた糸の糸継処理を行うことができる糸巻取機が知られている。
【0003】
特許文献1は、この種の糸巻取機である精紡機を開示する。特許文献1の精紡機は、複数の紡績ユニットと、糸継台車と、を備える。それぞれの紡績ユニットは、紡績糸を生成する紡績装置と、この紡績糸をトラバースしながら巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、を備える。糸継台車は、何れかの紡績ユニットにおいて糸が分断された場合、その紡績ユニットまで走行することができる。
【0004】
糸継台車は、サクションパイプと、サクションマウスと、糸継装置と、を備える。サクションパイプは、分断された糸のうち一方の糸(紡績装置側の糸)の糸端を捕捉して、糸継装置に案内する。サクションマウスは、分断された糸のうち他方の糸(巻取装置のパッケージ側の糸)の糸端を捕捉して、糸継装置に案内する。糸継装置は、これらにより案内された糸端同士を用いて糸継ぎを行う。
【0005】
特許文献1の精紡機は、可動部材としてのヤーンガイドを備える。ヤーンガイドは、糸がトラバースガイドにより綾振りされないように、糸を規制することができる。
【0006】
特許文献2は、糸巻取機である自動ワインダを開示する。特許文献2の自動ワインダは、上糸捕捉案内装置及び下糸捕捉案内装置を備える。上糸捕捉案内装置は、パッケージに巻き取られた糸を捕捉して糸継装置に案内する糸捕捉案内動作を行う。糸捕捉案内動作の期間において、糸をトラバースするトラバースガイドは、トラバースを行わずに待機する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-052638号公報
【特許文献2】特開2015-036324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の精紡機は、可動部材としてのヤーンガイドによって糸の規制を行っているため、構造が複雑になっていた。
【0009】
特許文献2の自動ワインダは、上糸捕捉案内装置がパッケージ側の糸を捕捉して糸継装置に案内する動作に関連して、トラバースガイドは単に待機しているに過ぎない。
【0010】
本発明の目的は、簡素な構成で糸を規制することが可能な糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、給糸装置と、巻取装置と、糸継装置と、第1捕捉装置と、第2捕捉装置と、制御部と、を備える。前記給糸装置は、糸を供給可能である。前記巻取装置は、前記給糸装置から供給された糸をトラバースしながら巻き取ってパッケージを形成する。前記糸継装置は、前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記給糸装置側の糸と前記パッケージ側の糸との糸継ぎを行う。前記第1捕捉装置は、前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記パッケージ側の糸を捕捉可能である。前記第2捕捉装置は、前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記給糸装置側の糸を捕捉可能である。前記制御部は、前記巻取装置を制御する。前記糸巻取機は、複数の処理ユニットを備える。それぞれの処理ユニットが、前記給糸装置及び前記巻取装置を備える。それぞれの処理ユニットの前記巻取装置は、パッケージ回転装置と、トラバース装置と、を備える。前記パッケージ回転装置は、処理ユニット毎に独立して駆動され、パッケージを回転させる。前記トラバース装置は、処理ユニット毎に独立して駆動され、前記パッケージに巻かれる糸をトラバースする。前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記制御部は、前記糸継装置による糸継ぎの前に、前記パッケージ回転装置及び前記トラバース装置のうち少なくとも一方を動作させることにより前記パッケージ側の糸を前記パッケージの巻幅方向中央領域に寄せる糸寄せ制御を行う。
【0012】
これにより、給糸装置と巻取装置との間で糸が分断された場合に、糸継装置による糸継ぎの前に、複雑な構成によらずに、パッケージ側の糸の実質的な規制を実現することができる。従って、糸継ぎを円滑に行うことができる。
【0013】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記トラバース装置は、往復運動する糸ガイドを備える。前記糸寄せ制御において、前記トラバース装置は前記糸ガイドを動作させる。
【0014】
これにより、パッケージ側の糸を、糸ガイドによって物理的に案内することができる。従って、糸継装置による糸継ぎの前に、パッケージ側の糸を確実に規制することができる。
【0015】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸寄せ制御において、前記糸ガイドは、前記パッケージの巻幅の端部領域から中央領域へ移動する。
【0016】
これにより、糸継装置による糸継ぎの前に、パッケージ側の糸を、パッケージの巻幅の中央領域に確実に移動させることができる。
【0017】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸寄せ制御において、前記パッケージ回転装置は前記パッケージを巻取方向に回転させた後に停止させる。前記パッケージの回転が停止した後に前記糸継装置が糸継ぎを行う。
【0018】
これにより、糸継装置による糸継ぎの前に、トラバース装置を利用せずに、パッケージ回転装置によってパッケージ側の糸の実質的な規制を実現することができる。
【0019】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記パッケージの巻幅方向中央領域にある糸を検出可能な糸検出センサを備える。前記糸寄せ制御において、前記パッケージ回転装置が前記パッケージを巻取方向とは逆方向に回転する。前記パッケージからの解舒に伴って往復運動する糸を前記糸検出センサが検出すると、前記パッケージの逆方向の回転が停止される。
【0020】
これにより、糸継装置による糸継ぎの前に、トラバース装置を利用せずに、パッケージ回転装置と糸検出センサとによって、パッケージ側の糸の実質的な規制を実現することができる。
【0021】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、複数の前記処理ユニットに対して走行可能な作業台車を備える。前記作業台車は、前記第2捕捉装置と、前記糸継装置と、を備える。
【0022】
これにより、簡素な構成を実現することができる。
【0023】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、給糸装置と、巻取装置と、糸継装置と、第1捕捉装置と、第2捕捉装置と、を備える。前記給糸装置は、糸を供給可能である。前記巻取装置は、前記給糸装置から供給された糸をトラバースしながら巻き取ってパッケージを形成する。前記糸継装置は、前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記給糸装置側の糸と前記パッケージ側の糸との糸継ぎを行う。前記第1捕捉装置は、前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記パッケージ側の糸を捕捉可能である。前記第2捕捉装置は、前記給糸装置と前記巻取装置との間で糸が分断された場合に、前記給糸装置側の糸を捕捉可能である。前記第2捕捉装置は、捕捉位置と、待機位置と、の間で移動可能である。前記捕捉位置で、前記第2捕捉装置は、前記給糸装置から供給される糸を捕捉する。前記待機位置は、前記糸継装置よりも糸走行方向下流側である。前記給糸装置が給糸を中断した後、前記第1捕捉装置は前記パッケージ側の糸を前記糸継装置よりも糸走行方向上流側で捕捉しており、前記第2捕捉装置は前記待機位置で待機している状態で、前記パッケージ側の糸を前記パッケージの巻幅方向中央領域に寄せることにより、前記第2捕捉装置が前記待機位置から前記捕捉位置へ移動する経路から、前記パッケージと前記第1捕捉装置との間の糸を退避させる退避制御が行われる。
【0024】
これにより、給糸装置と巻取装置との間で糸が分断された場合に、糸継装置による糸継ぎの前の動作において第2捕捉装置がパッケージ側の糸に干渉するのを防止することができる。
【0025】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、複数の処理ユニットと、作業台車と、を備える。前記作業台車は、複数の前記処理ユニットに対して走行可能である。それぞれの処理ユニットが、前記給糸装置及び前記巻取装置を備える。前記作業台車は、前記第2捕捉装置と、前記糸継装置と、を備える。
【0026】
これにより、簡素な構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の全体的な構成を示す正面図。
【
図3】紡績ユニットにおいて紡績糸の分断が発生した状態を示す側面図。
【
図4】固定捕捉糸継ぎの過程で、パッケージ側の紡績糸が吸引装置に捕捉され、糸継台車の糸継装置によって取込可能になった状態を示す側面図。
【
図5】紡績装置が紡績を再開し、紡績糸がサクションパイプによって糸継装置に案内された状態を示す側面図。
【
図6】糸継装置での糸継ぎが行われる様子を示す側面図。
【
図7】固定捕捉糸継ぎの過程で、パッケージ側の紡績糸が吸引装置に捕捉された状態を示す正面図。
【
図8】糸寄せ制御によるトラバース装置の動作を示す正面図。
【
図9】移動捕捉糸継ぎの過程で、パッケージ側の紡績糸がサクションマウスによって捕捉され、紡績装置側の紡績糸がサクションパイプによって捕捉され、何れも糸継装置に案内されて糸継ぎが行われる様子を示す側面図。
【
図10】パッケージ回転装置及びトラバース装置の詳細な構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態に係る紡績機(糸巻取機)1について、図面を参照して説明する。以下の説明において、「上流側」及び「下流側」とは、それぞれ、紡績糸(糸)5の巻取時における当該紡績糸5、スライバ4a又は繊維束4bの走行方向(糸走行方向)における上流側及び下流側を意味する。
【0029】
図1に示すように、紡績機1は、ブロアボックス111と、制御ボックス112と、複数の紡績ユニット(処理ユニット)2と、糸継台車(作業台車)80と、を備える。複数の紡績ユニット2は、所定の方向に並べて配置されている。各紡績ユニット2(紡績機1)は、後述の紡績装置22等を用いて紡績を行う。本実施形態において、紡績機1は、空気紡績機として構成されている。
【0030】
ブロアボックス111内には、負圧源として機能するブロア113等が配置されている。
【0031】
制御ボックス112には、中央制御装置115と、表示部116と、操作部117と、が配置されている。
【0032】
中央制御装置115は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。中央制御装置115は、各紡績ユニット2が
図2のように備えるユニット制御部(制御部)15に、図略の信号線を介して接続されている。本実施形態では、それぞれの紡績ユニット2がユニット制御部15を備えているが、所定数(例えば、2つ又は4つ)の紡績ユニット2が1つのユニット制御部15を共用しても良い。
【0033】
表示部116は、紡績ユニット2に対する設定内容、及び/又は、各紡績ユニット2の状態に関する情報等を表示することができる。操作部117は、オペレータが紡績機1の設定を行うために、及び/又は、表示部116に表示する情報の選択を行うために操作される。表示部116と操作部117は、タッチパネルディスプレイにより構成されていても良い。
【0034】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置21と、紡績装置(給糸装置)22と、糸貯留装置23と、吸引装置(第1捕捉装置)24と、巻取装置25と、を備える。これらの装置は、紡績糸5等の走行方向において上流側から下流側へ向かって順に配置されている。
【0035】
糸継台車80は、各紡績ユニット2に対して移動可能に設けられている。糸継台車80は、複数の紡績ユニット2に対して1つ備えられている。
図1では1台の糸継台車80が図示されているが、紡績機1は、複数台の糸継台車80を備えていても良い。糸継台車80は、後述するように、糸継装置82と、サクションパイプ(第2捕捉装置)83と、サクションマウス84と、を備える。
【0036】
ドラフト装置21は、紡績ユニット2(紡績機1)の上部に設けられている。ドラフト装置21は、複数のドラフトローラ対を備える。それぞれのドラフトローラ対は、2つのドラフトローラによって構成される。
【0037】
具体的には、ドラフト装置21は、4つのドラフトローラ対を備える。4つのドラフトローラ対は、上流側から下流側へ向かって順に配置された、バックローラ対41、サードローラ対42、ミドルローラ対43、及びフロントローラ対44である。ミドルローラ対43の各ドラフトローラには、エプロンベルト45が設けられている。
【0038】
4つのドラフトローラ対のそれぞれは、互いに対向する駆動ローラ及び従動ローラを有している。4つのドラフトローラ対に関して、それぞれの駆動ローラに、図略のモータ等の駆動源が設けられている。それぞれの駆動ローラは、駆動源によって当該駆動ローラの軸線を中心に回転駆動される。各ドラフトローラ対の従動ローラは、図略の軸受等を介して、当該従動ローラの軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0039】
ドラフト装置21は、スライバ供給部20から供給されるスライバ4aを、各ドラフトローラ対のドラフトローラ同士の間(駆動ローラと従動ローラとの間)で挟み込んで搬送することによって、所定の繊維量(又は太さ)となるまで引き伸ばして(ドラフトして)、繊維束4bを生成する。ドラフト装置21で生成された繊維束4bは、紡績装置22に供給される。
【0040】
スライバ供給部20は、ドラフト装置21の上流側に配置されている。スライバ供給部20には、スライバ4aが収容される容器であるケンスが配置される。
【0041】
紡績装置22は、本実施形態では空気紡績装置として構成されている。紡績装置22は、ドラフト装置21で生成された繊維束4b(ドラフトされたスライバ4a)に旋回空気流を作用させることにより、撚りを加えて紡績糸5を生成する。紡績装置22は、ドラフト装置21の下流側に配置されている。
【0042】
紡績ユニット2(紡績機1)において、紡績装置22からなる給糸装置は、紡績糸5を供給する。給糸装置で生成された紡績糸5は、給糸装置から巻取装置25に向かって走行し、巻取装置25によって巻き取られる。給糸装置と巻取装置25との間には、紡績糸5が走行する糸経路が形成される。
【0043】
糸貯留装置23は、紡績装置22で生成された紡績糸5を引き出して一時的に貯留する。糸貯留装置23は、給糸装置と巻取装置25との間に形成される糸経路の途中に配置されている。具体的には、糸貯留装置23は、紡績装置22よりも下流側に配置されている。
【0044】
糸貯留装置23は、糸貯留ローラ51と、電動モータ52と、糸掛け部材53と、ガイド54と、糸貯留量検知センサ56と、を備える。
【0045】
糸貯留ローラ51は、電動モータ52により回転駆動される。糸貯留ローラ51は、その外周面に紡績糸5を巻き付けて一時的に貯留する。糸貯留ローラ51は、外周面に紡績糸5を巻き付けた状態で所定の回転速度で回転することによって、紡績装置22から紡績糸5を所定の速度で引き出すことができる。
【0046】
糸掛け部材53は、紡績糸5を引っ掛けることができる。糸掛け部材53は、紡績糸5を引っ掛けた状態で糸貯留ローラ51と一体的に回転することで、当該糸貯留ローラ51の外周面に紡績糸5を案内する。
【0047】
ガイド54は、糸貯留ローラ51の下流側に配置されている。ガイド54は、回転する糸掛け部材53によって振り回される紡績糸5の軌道を規制し、紡績糸5が走行する糸経路のうち当該ガイド54よりも下流側(巻取装置25側)の糸経路を安定させて紡績糸5を案内する。
【0048】
糸貯留量検知センサ56は、糸貯留ローラ51の糸貯留量を検知することができる。糸貯留量検知センサ56は、糸貯留ローラ51の外周面の適宜の位置に対向するように配置されている。糸貯留量検知センサ56は、この位置における紡績糸5の有無を検出する。糸貯留量検知センサ56は、検出した検出信号をユニット制御部15へ送信する。ユニット制御部15は、この検出信号に基づいて、糸貯留量が所定量以上であるか否かを検知することができる。
【0049】
糸貯留装置23は、糸貯留ローラ51の外周面に紡績糸5を一時的に貯留することができるので、紡績糸5の一種のバッファとして機能する。これにより、紡績装置22における紡績速度と、巻取速度(後述のパッケージ7に巻き取られる紡績糸5の走行速度)と、が何らかの理由により一致しないことによる不具合(例えば、紡績糸5の弛み等)を解消することができる。
【0050】
紡績装置22と糸貯留装置23との間には、糸監視装置47が設けられている。糸監視装置47は、糸貯留装置23よりも上流側(給糸装置側)で紡績糸5の状態を検知する。紡績装置22で生成された紡績糸5は、糸貯留装置23で貯留される前に糸監視装置47を通過する。
【0051】
糸監視装置47は、走行する紡績糸5の品質を光センサによって監視し、紡績糸5に含まれる糸欠陥を検出する。糸欠陥としては、例えば、紡績糸5の太さの異常、及び/又は、紡績糸5に含まれる異物等がある。糸監視装置47は、紡績糸5の糸欠陥を検出した場合、ユニット制御部15へ糸欠陥検出信号を送信する。糸監視装置47は、光センサの代わりに、例えば静電容量式のセンサを用いて紡績糸5の品質を監視しても良い。糸監視装置47は、これらの糸欠陥に代えて、或いは、これらの糸欠陥に加えて、紡績糸5のテンションの異常を検出するように構成されていても良い。
【0052】
糸品質を維持するために、糸欠陥及び異常箇所を除去することが好ましい。ユニット制御部15は、糸監視装置47の検出結果に基づいて、紡績糸5を切断するか否かを判断する。紡績糸5の切断は、ユニット制御部15が、紡績装置22による紡績を停止するように制御することで実現される。紡績糸5の切断は、ドラフト装置21によるドラフト(例えば、バックローラ対41の回転)を停止することによって実現されても良い。紡績装置22が紡績を停止する場合でも、ドラフト装置21から紡績装置22への繊維束の供給が停止される場合でも、紡績装置22による紡績は実質的に中断されることになる。紡績ユニット2にカッタを備え、ユニット制御部15がカッタにより紡績糸5の切断を行っても良い。カッタによって紡績糸5が切断される場合でも、ユニット制御部15は、紡績装置22による紡績が実質的に中断するように制御する。
【0053】
吸引装置24は、紡績装置22と巻取装置25の間で紡績糸5が分断された場合に、パッケージ7側の紡績糸5を吸引することができる。吸引装置24は、糸貯留装置23と巻取装置25との間に設けられている。本実施形態では、吸引装置24は固定的に設けられているが、多少移動可能に設けられていても良い。例えば、吸引装置24は、糸経路に対して少しだけ接近及び退避する方向に移動可能に設けられていても良い。言い換えると、吸引装置24は、サクションマウス84ほどは移動しないように設けられている。糸継台車80が当該紡績ユニット2に対して作業を行うとき、吸引装置24は、糸継台車80が備える糸継装置82よりも上流側に位置する。吸引装置24は、紡績糸5の分断が発生した場合に、巻取装置25側、言い換えればパッケージ7側の紡績糸5を、糸継装置82よりも上流側で捕捉することができる。
【0054】
糸継装置82は、図示しない糸寄せレバーを備える。吸引装置24によって捕捉された紡績糸5は、糸寄せレバーを動作させることで糸継装置82へ取り込まれる。糸継装置82は、糸経路に対して接近及び退避する方向に移動可能に構成されても良い。
【0055】
糸継台車80は更に、サクションマウス84を備える。サクションマウス84は、パッケージ7側の紡績糸5を吸引装置24で捕捉しないときに、吸引装置24に代わって当該紡績糸5を捕捉する。糸継台車80の構成については後述する。
【0056】
紡績糸5の分断が発生した場合、ユニット制御部15は、吸引装置24の使用/不使用を決定し、当該決定に基づいて吸引装置24を適宜制御する。詳細は後述するが、吸引装置24及びサクションマウス84は、パッケージ7側の紡績糸5の捕捉のために択一的に選択されて用いられる。従って、吸引装置24の使用はサクションマウス84の不使用を意味し、吸引装置24の不使用はサクションマウス84の使用を意味する。
【0057】
吸引装置24の使用/不使用の決定は、例えば、紡績糸5が分断された原因(紡績中断要因)を考慮して行われる。この決定については後述する。
【0058】
ユニット制御部15が吸引装置24の使用を決定した場合、吸引装置24は、ユニット制御部15によって、糸貯留装置23(ガイド54)よりも下流側で、パッケージ7側の紡績糸5を吸引して捕捉するように制御される。吸引装置24が吸引空気流を紡績糸5に作用させ始めるタイミングは、紡績糸5の分断が発生した後であって、パッケージ7側の紡績糸5の糸端が吸引装置24を通過するよりも前の所定のタイミングである。
【0059】
吸引装置24は、吸引パイプ61を備える。吸引パイプ61の先端(長手方向一端)に吸引口62が形成されている。吸引口62は、紡績ユニット2に形成される前述の糸経路の途中部に向かって開口している。吸引パイプ61は、配管等を介して、ブロア113等の負圧源に接続されている。これにより、吸引口62(吸引パイプ61内)に吸引空気流を発生させることができる。後述のサクションマウス84とは異なり、吸引パイプ61は紡績ユニット2に固定的に設けられている。従って、吸引口62の位置は一定である。
【0060】
本実施形態において、吸引装置24にはシャッタ63が設けられている。吸引装置24の状態は、シャッタ63により、吸引状態と吸引停止状態との間で変更される。シャッタ63は、例えば、吸引口62と、吸引装置24のうち空気が流れる方向で当該吸引口62よりも下流側の部分と、の間に配置される。シャッタ63は、例えば、板状部材を有する開閉機構により構成することができる。シャッタ63は、ユニット制御部15の制御により開閉することができる。必要な場合にだけシャッタ63を開くことで、紡績機1における省エネルギーを実現することができる。なお、吸引装置24においてシャッタ63を省略することもできる。
【0061】
吸引装置24には、糸捕捉検知センサ64が設けられている。糸捕捉検知センサ64は、本実施形態では吸引装置24の吸引口62のすぐ下流側に配置されている。糸捕捉検知センサ64は、吸引装置24によるパッケージ7側の紡績糸5の捕捉の成否を検出することができる。糸捕捉検知センサ64は、吸引装置24のすぐ下流側における紡績糸5の有無を検出し、検出信号をユニット制御部15に送信する。ユニット制御部15は、糸捕捉検知センサ64からの検出信号に基づいて、吸引装置24による捕捉が成功したか否かを検知することができる。糸捕捉検知センサ64は、吸引パイプ61の内部に設けられていても良い。
【0062】
巻取装置25は、糸貯留装置23を通過した紡績糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する。巻取装置25は、糸貯留装置23よりも下流側に配置されている。
【0063】
巻取装置25は、クレードル装置71と、パッケージ回転装置72と、トラバース装置73と、を備える。
【0064】
クレードル装置71は、1対のクレードルアーム74を備える。クレードル装置71は、紡績糸5を巻き取るためのボビン7a(ひいてはパッケージ7)を、1対のクレードルアーム74の間で回転可能に支持することができる。クレードルアーム74は、支軸75を中心として回転することができる。
【0065】
パッケージ回転装置72は、巻取ドラム76と、ドラム駆動モータ77と、を備える。巻取ドラム76は、ボビン7a又はパッケージ7の外周面に接触することができる。ドラム駆動モータ77の出力軸は、後述する適宜の手段で巻取ドラム76に連結されている。ドラム駆動モータ77によって巻取ドラム76を駆動することで、パッケージ7を巻取方向に回転させることができる。ドラム駆動モータ77は正逆回転可能に構成されている。従って、パッケージ7を巻取方向とは逆方向に回転させることもできる。
【0066】
トラバース装置73は、糸ガイド78と、トラバース駆動モータ79と、を備える。糸ガイド78は、パッケージ7に巻き取られる紡績糸5を引っ掛けることができる。糸ガイド78は、パッケージ7の巻幅方向に往復運動することができる。トラバース駆動モータ79の出力軸は、後述する適宜の手段で糸ガイド78に連結されている。糸ガイド78が紡績糸5を保持した状態で、トラバース駆動モータ79によって糸ガイド78を往復駆動することで、パッケージ7に巻き取られる紡績糸5をトラバースすることができる。
【0067】
巻取装置25は、トラバース装置73の糸ガイド78を往復運動させながら、パッケージ回転装置72の巻取ドラム76を回転させる。これにより、巻取装置25は、紡績糸5を綾振りしつつ、紡績糸5をパッケージ7に巻き取る。
【0068】
本実施形態において、各紡績ユニット2に対して単独のドラム駆動モータ77が設けられている。また、各紡績ユニット2に対して単独のトラバース駆動モータ79が設けられている。従って、巻取ドラム76及び糸ガイド78は、他の紡績ユニット2の巻取ドラム76及び糸ガイド78に対して独立して動作することができる。パッケージ回転装置72及びトラバース装置73の詳細な構成については後述する。
【0069】
図1に示すように、紡績機1には、レール101が設けられている。レール101は、複数の紡績ユニット2が並ぶ方向に沿って延びるように配置されている。糸継台車80は、レール101の上を走行可能に構成されている。これにより、糸継台車80は、複数の紡績ユニット2に対して移動することができる。
【0070】
糸継台車80は、紡績糸5の分断が発生した紡績ユニット2に対応する作業位置まで走行して、当該紡績ユニット2において糸継処理を行う。糸継台車80は、この糸継処理を、紡績ユニット2に備えられた吸引装置24等と連携しながら、又は、当該糸継台車80が備える装置(後述のサクションマウス84等)を用いて行う。
【0071】
糸継台車80は、走行車輪81と、糸継装置82と、サクションパイプ83と、サクションマウス84と、台車制御部85と、を備える。
【0072】
走行車輪81は、図略の駆動手段(例えばモータ)によって回転駆動可能に構成されている。走行車輪81が駆動されることによって、糸継台車80が複数の紡績ユニット2のそれぞれに対して走行することができる。
【0073】
サクションパイプ83は、パイプ状の部分を有する部材である。サクションパイプ83の先端88には開口が形成されている。サクションパイプ83は適宜の負圧源に接続されている。従って、サクションパイプ83の先端88に吸引空気流を発生させることができる。サクションパイプ83は回転可能に支持されている。サクションパイプ83が回転することにより、その先端88を、紡績装置22に対して接近した位置(捕捉位置)又は退避した位置(待機位置)に移動させることができる。紡績糸5に分断が発生した場合に、サクションパイプ83は、紡績装置22に接近した位置で、紡績装置22側の紡績糸5を吸い込んで捕捉することができる。
【0074】
サクションマウス84は、パイプ状の部分を有する部材である。サクションマウス84の先端89には開口が形成されている。サクションマウス84は適宜の負圧源に接続されている。従って、サクションマウス84の先端89の開口に吸引空気流を発生させることができる。サクションマウス84は回転可能に支持されている。サクションマウス84が回転することにより、その先端89の開口を、巻取装置25に対して接近又は退避させることができる。紡績糸5に分断が発生した場合に、サクションマウス84は、巻取装置25に接近した位置で、巻取装置25側(パッケージ7側)の紡績糸5を先端89から吸い込んで捕捉することができる。
【0075】
サクションパイプ83が一側に回転することにより、その先端88が紡績装置22に近づく方向に移動し、紡績装置22に接近した状態で紡績糸5の糸端を捕捉する。サクションパイプ83は、その後、他側に回転する。これにより、サクションパイプ83の先端88が紡績装置22から離れる方向に移動する。
【0076】
サクションマウス84が一側に回転することにより、その先端89が巻取装置25に近づく方向に移動し、巻取装置25に接近した位置で当該紡績糸5を捕捉する。サクションマウス84は、その後、他側に回転する。これにより、サクションマウス84の先端89が巻取装置25から離れる方向に移動する。
【0077】
糸継装置82は、紡績糸5の分断の発生後に、サクションパイプ83によって捕捉された紡績装置22側の紡績糸5と、吸引装置24又はサクションマウス84により捕捉されたパッケージ7側の紡績糸5と、の糸継ぎを行う。本実施形態において、糸継装置82は、旋回空気流により糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。糸継装置82は、前記のスプライサ装置に限定せず、例えば機械式のノッタ等とすることもできる。
【0078】
紡績糸5の分断が発生した紡績ユニット2へ糸継台車80が走行して停止した状態では、
図4に示すように、糸継装置82は吸引装置24よりも下流側に位置する。また、巻取装置25に対してサクションマウス84の先端89を退避させた状態(
図9の実線の状態)では、糸継装置82は、当該サクションマウス84の先端89よりも下流側に位置する。
【0079】
台車制御部85は、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する公知のコンピュータとして構成されている。台車制御部85は、糸継台車80が備える各部の動作を制御することによって、糸継台車80が行う糸継処理を制御する。
【0080】
糸継台車80は、通常、レール101上の適宜の位置で待機している。何れかの紡績ユニット2において紡績糸5の分断が発生すると、糸継台車80は、紡績糸5の分断が発生した紡績ユニット2へ移動する。
【0081】
次に、紡績ユニット2において糸継処理が行われる場合の、吸引装置24とサクションマウス84との使い分けについて説明する。
【0082】
糸継処理は、紡績糸5が給糸装置(紡績装置22)とパッケージ7の間で分断された後、中断されていた紡績を紡績装置22が開始するタイミングの近傍で行われる。本実施形態において、糸継処理の動作は2種類あり、択一的に選択される。
【0083】
第1動作は、
図6に示すように、巻取装置25側の紡績糸5を吸引装置24によって捕捉し、糸継装置82が紡績糸5を取込可能な状態として糸継装置82により糸継ぎを行うものである。以下、この動作を「固定捕捉糸継ぎ」と呼ぶことがある。
【0084】
第2動作は、
図9に示すように、巻取装置25側の紡績糸5をサクションマウス84によって捕捉し、糸継装置82が紡績糸5を取込可能となるようにサクションマウス84が紡績糸5を案内して糸継装置82により糸継ぎを行うものである。以下、この動作を「移動捕捉糸継ぎ」と呼ぶことがある。
【0085】
何れの動作においても、紡績装置22側の紡績糸5は、サクションパイプ83によって捕捉され、糸継装置82が紡績糸5を取込可能となるようにサクションパイプ83により紡績糸5が案内される。
【0086】
ユニット制御部15は、紡績を中断する場合に、固定捕捉糸継ぎ及び移動捕捉糸継ぎのうち何れを行うかを、各種の要因に基づいて決定する。
【0087】
固定捕捉糸継ぎは、移動捕捉糸継ぎと異なり、サクションマウス84の案内動作が不要である。従って、省エネルギーを考慮すれば、固定捕捉糸継ぎを行うことが好ましい。
【0088】
例えば、糸監視装置47が糸欠陥を検出し、この糸欠陥を除去するために紡績糸5が切断された場合を考える。仮に固定捕捉糸継を行う場合、パッケージ7側の紡績糸5の糸端が吸引装置24に捕捉された状態で、パッケージ7の回転が停止する必要がある。しかし、糸監視装置47が糸欠陥を検出した時点でパッケージ7は高速で回転しているため、直ちにパッケージ7の回転停止制御を開始しても、パッケージ7の回転が実際に停止するまでに、ある程度の長さの紡績糸5がパッケージ7に巻かれることは避けられない。
【0089】
糸貯留ローラ51の糸貯留量が所定量以上である場合は、直ちにパッケージ7の回転停止制御を開始してからパッケージ7が実際に停止するまでに糸貯留ローラ51から紡績糸5が引き出されても、吸引装置24による紡績糸5の捕捉が間に合う状態である。吸引装置24による紡績糸5の捕捉が間に合う状態とは、言い換えれば、糸貯留ローラ51に少しでも紡績糸5が貯留されている状態である。この場合、ユニット制御部15は、固定捕捉糸継ぎを行うことを決定する。
【0090】
糸貯留ローラ51の糸貯留量が所定量未満である場合は、吸引装置24による紡績糸5の捕捉が間に合わず、パッケージ7が実際に停止するまでの回転によって糸端が吸引装置24を通過してしまう。この場合、ユニット制御部15は、移動捕捉糸継ぎを行うことを決定する。パッケージ7の巻取中に発生する異常なテンション等が原因で、吸引装置24よりも下流側で紡績糸5が切断された場合も、ユニット制御部15は、移動捕捉糸継ぎを行うことを決定する。
【0091】
固定捕捉糸継ぎ及び移動捕捉糸継ぎのうち何れを行うかの判断について、上記の説明は一例であり、他の基準で判断することもできる。
【0092】
次に、
図2の状態で紡績糸5の分断が発生して紡績を中断し、糸継装置82により糸継ぎが行われるときの各部の動作について説明する。以下では、糸監視装置47の検出結果に基づき紡績糸5が切断された場合を例として、固定捕捉糸継ぎについて説明する。
【0093】
まず、ユニット制御部15が、糸監視装置47から入力される糸欠陥検出信号に基づいて、給糸装置(紡績装置22)による給糸を停止させる。給糸装置による給糸の停止により、紡績糸5が切断される。これにより、
図3に示すように、紡績糸5の分断が発生する。糸監視装置47により検出された糸欠陥は、パッケージ7側の紡績糸5に含まれる。
【0094】
ユニット制御部15は、糸監視装置47が糸欠陥を検出した後の適宜のタイミングで、糸継要求信号を台車制御部85に送信する。糸継要求信号を受信した台車制御部85は、紡績糸5の分断が発生した対象の紡績ユニット2まで糸継台車80を走行させた後、停止させる。
【0095】
糸監視装置47が糸欠陥を検出した直後のタイミングで、ユニット制御部15は、糸継ぎを行うために、吸引装置24とサクションマウス84のうち何れを使用するかを決定する。今回の例では、ユニット制御部15は、固定捕捉糸継ぎを行うこと、言い換えれば、吸引装置24の使用を決定する。
【0096】
固定捕捉糸継ぎを行う場合、ユニット制御部15は、パッケージ7の回転の減速制御を行う。これにより、パッケージ7側の紡績糸5の糸端付近の部分が将来的に吸引装置24を通過するときの速度が低くなるので、吸引装置24による捕捉が容易になる。パッケージ7の回転の減速制御は、糸欠陥を検出後、又は紡績の中断後、直ちに開始されても良いし、紡績糸5の貯留量が所定量以下となったことを糸貯留量検知センサ56が検知した時点で開始されても良い。糸欠陥を検出後、又は紡績の中断後、パッケージ7の回転をいったん完全に停止させ、それから低速での巻取りを再開しても良い。
【0097】
図3の状態から巻取装置25の巻取りが進行すると、糸貯留装置23の糸貯留ローラ51に残る紡績糸5が引き出されて、糸貯留ローラ51における紡績糸5の貯留量が減少していく。ユニット制御部15は、糸貯留量検知センサ56の検出信号を監視する。
【0098】
ユニット制御部15は、紡績糸5が糸貯留装置23から外れる少し前のタイミングで、閉じられていたシャッタ63を開いて、吸引装置24による吸引を開始させる。このタイミングは、例えば、紡績糸5の貯留量が所定量以下となったことを糸貯留量検知センサ56が検知してから所定時間だけ巻取りを継続したタイミングとすることができる。
【0099】
その後、パッケージ7側の紡績糸5がパッケージ7に巻き取られる過程で、当該紡績糸5の糸端が吸引装置24により捕捉可能な領域に位置するタイミングで、ユニット制御部15は、巻取装置25による巻取りを停止させる。巻取装置25による巻取りの停止タイミングは、例えば、糸貯留ローラ51に残っていた紡績糸5の糸端が糸貯留ローラ51から外れてガイド54を抜けるのと殆ど同じタイミングとすることができる。
【0100】
この結果、
図4に示すように、紡績糸5を吸引装置24により吸引口62から吸い込んで捕捉することができる。このとき、紡績糸5の糸端は、吸引パイプ61内に位置している。
図4には、前述の糸継要求信号に応じて、紡績ユニット2に糸継台車80が到着した状態が併せて示されている。
【0101】
ユニット制御部15は、糸捕捉検知センサ64の検出結果に基づいて、吸引装置24による捕捉が成功したか否かを判断する。吸引装置24による捕捉が失敗したと判断した場合については後述する。
【0102】
吸引装置24による捕捉が成功したと判断した場合には、ユニット制御部15は、必要に応じてパッケージ7を逆転させ、再び停止させる。パッケージ7側の紡績糸5に含まれている糸欠陥が長い場合は、糸欠陥を除去するために、パッケージ7から紡績糸5を解舒して吸引装置24に吸引させなければならないためである。その後、ユニット制御部15は、当該紡績ユニット2に糸継台車80が到着したか否かを判定し、未到着の場合は到着するまで待機する。
【0103】
紡績ユニット2に対応する作業位置に糸継台車80が停止した状態で、吸引装置24の吸引口62は、糸継装置82よりも上流側に位置する。従って、糸継台車80が到着すると、吸引装置24によって保持されているパッケージ7側の紡績糸5は、
図4に示すように、糸継台車80の糸継装置82と対面する状態になる。
【0104】
糸継台車80を停止させた後、台車制御部85は糸継台車80を制御して、サクションパイプ83を、
図5の鎖線で示すように、紡績装置22側の紡績糸5を捕捉できる位置へ移動させる。これと殆ど同時に、ユニット制御部15は、給糸装置からの紡績糸5の供給を再開する。また、糸貯留ローラ51及び糸掛け部材53の回転が再開される。
【0105】
台車制御部85は、サクションパイプ83により捕捉された紡績装置22側の紡績糸5を、
図5の実線で示すように、下方の糸継装置82まで案内させる。これに伴って、紡績装置22から引き出された紡績糸5が糸掛け部材53に掛けられ、回転する糸掛け部材53によって紡績糸5が
図5に示すように糸貯留ローラ51に巻かれていく。
【0106】
糸貯留ローラ51における紡績糸5の貯留量がある程度増大した
図6のタイミングで、台車制御部85は糸継装置82を動作させ、吸引装置24により吸引された巻取装置25側の紡績糸5と、紡績装置22側の紡績糸5と、の糸継ぎを行わせる。糸継ぎ中に給糸装置からは連続的に紡績糸5が供給されるが、この紡績糸5は糸貯留装置23によって貯留される。
【0107】
糸継ぎにおいて、余分な紡績糸5は糸継装置82において切断される。この切断により、パッケージ7側の紡績糸5から、糸監視装置47で検出された糸欠陥の部分が切り離される。切断された余分な紡績糸5は、吸引装置24又はサクションパイプ83に吸い込まれて廃棄される。
【0108】
糸継ぎの完了とほぼ同時に、巻取装置25の駆動が開始されて、巻取装置25によるパッケージ7の巻取りが再開される。シャッタ63は、糸継完了後の適宜のタイミングで閉じられる。このようにして、紡績ユニット2は
図2の通常状態に戻る。
【0109】
次に、上記の固定捕捉糸継ぎのために吸引装置24によってパッケージ7側の紡績糸5が捕捉された状態での、巻取装置25でのトラバース位置について説明する。
【0110】
図7には、
図4の状態に対応する正面図が示されている。吸引装置24によってパッケージ7側の紡績糸5が捕捉された状態で、パッケージ7の回転が適宜のタイミングで停止する。トラバース装置73は、パッケージ7の回転が停止するまで紡績糸5のトラバースを行い、パッケージ7の回転停止と同時に停止する。パッケージ7の回転が停止したタイミングにおける、パッケージ7側の紡績糸5のトラバース位置は不定である。
【0111】
糸継台車80が紡績ユニット2に到着した直後では、
図7の実線で示すように、サクションパイプ83は、紡績装置22から離れた待機位置にある。その後、サクションパイプ83は、紡績装置22から供給される紡績糸5を捕捉するために、
図7の鎖線で示す捕捉位置へ移動する。
【0112】
待機位置から捕捉位置へ移動するとき、サクションパイプ83は、糸継装置82の一側の少し脇を通過する。従って、紡績糸5のトラバース位置が
図7の実線で示すようにトラバース幅の端部領域にあると、回転するサクションパイプ83が紡績糸5と干渉してしまう。
【0113】
糸継装置82には図示しない1対の糸継スリットが形成されている。パッケージ7側の紡績糸5と、紡績装置22側の紡績糸5が、それぞれの糸継スリットに取り込まれて糸継ぎが行われる。糸継スリットは、トラバース幅の中央部付近に対応するように配置されている。従って、パッケージ7側の紡績糸5のトラバース位置がトラバース幅の端部付近にあると、当該紡績糸5を糸継装置82によって糸継スリットに取り込むことが困難である。
【0114】
そこで、本実施形態のユニット制御部15は、
図8に示すように、トラバース装置73の糸ガイド78を移動させて、パッケージ7側の紡績糸5をパッケージ7の巻幅方向中央領域に寄せるように制御する。
【0115】
以下、パッケージ7と吸引装置24との間で保持されている紡績糸5のうちパッケージ7近傍に位置する部分を、パッケージ7の巻幅方向中央領域に移動させる動作を、糸寄せ動作と呼ぶことがある。糸寄せ動作を実現する制御により、糸継装置82によって、パッケージ7側の紡績糸5を円滑に取り込んで糸継ぎを行うことができる。従って、糸継ミスを減らすことができる。
【0116】
この糸寄せ制御は、サクションパイプ83が待機位置から捕捉位置へ移動する経路から、パッケージ7と吸引装置24との間の紡績糸5を退避させる制御と言い換えることもできる。この制御により、紡績装置22側の紡績糸5を捕捉して糸継装置82へ案内するために往復動するサクションパイプ83と、パッケージ7側の紡績糸5と、が干渉することを防止できる。
【0117】
紡績糸5の巻幅方向での位置の調整(言い換えれば、糸寄せ制御)は、吸引装置24によってパッケージ7側の紡績糸5が捕捉されてから、サクションパイプ83の往復動が開始されるまでの、任意のタイミングで行うことができる。例えばサクションパイプ83の移動軌跡の変更等によって、紡績糸5とサクションパイプ83との干渉が解決できる場合は、糸寄せ制御を、糸継装置82による糸継動作の直前に行うこともできる。
【0118】
トラバース装置73の糸ガイド78がパッケージ7側の紡績糸5を移動させるとき、パッケージ7の回転は停止している。しかしながら、糸ガイド78の移動に連動して、パッケージ回転装置72がパッケージ7を巻取方向に少し回転させても良い。
【0119】
次に、紡績が中断され、ユニット制御部15が移動捕捉糸継ぎを行うことを決定した場合について説明する。
【0120】
紡績糸5の分断の発生時に、移動捕捉糸継ぎを行うと決定した場合、ユニット制御部15はパッケージ7の回転を継続させる。この結果、パッケージ7側の紡績糸5の糸端がパッケージ7に巻き取られる。移動捕捉糸継ぎを行う場合、ユニット制御部15は、吸引装置24のシャッタ63を閉じた状態を維持するように制御する。或いは、シャッタ63が開いた状態であれば、ユニット制御部15は、シャッタ63を閉じるように制御する。従って、パッケージ7側の紡績糸5の糸端が吸引装置24の吸引口62に吸い込まれることはない。その後、パッケージ7側の紡績糸5の糸端は、パッケージ7の外周面近く又は外周面に移動する。
【0121】
その後、ユニット制御部15は、当該紡績ユニット2に糸継台車80が到着したか否かを判定し、未到着の場合は到着するまで待機する。
【0122】
糸継台車80は、紡績ユニット2に対する作業位置まで到着すると、サクションマウス84を、
図9の鎖線で示すように巻取装置25へ接近させる。この状態で、巻取装置25のパッケージ回転装置72は、パッケージ7を巻取方向とは逆方向に回転する。これにより、サクションマウス84がパッケージ7側の紡績糸5を捕捉することができる。パッケージ7の逆方向の回転は、パッケージ7側の紡績糸5のうち糸欠陥を含む部分がすべてサクションマウス84に吸引されるまで継続される。サクションマウス84は、その後、巻取装置25から退避する。この結果、パッケージ7側の紡績糸5が、糸継装置82まで案内される。それ以外の糸継台車80の動作は、上述の固定捕捉糸継ぎと同様である。
図9には、糸継装置82による糸継ぎが行われる様子が示されている。
【0123】
固定捕捉糸継ぎを試みたが、何らかの理由で、パッケージ7側の紡績糸5を吸引装置24によって捕捉できない場合もある。紡績糸5の捕捉の失敗は、糸捕捉検知センサ64に基づいて検出することができる。吸引装置24による紡績糸5の捕捉に失敗していた場合、ユニット制御部15は、移動捕捉糸継ぎに切り換えることを決定する。サクションマウス84の使用前に、巻取装置25による、パッケージ7側の紡績糸5の更なる巻取りが行われる。これにより、吸引装置24による捕捉に失敗した糸端がパッケージ7の外周面近く又は外周面に移動するので、サクションマウス84でパッケージ7側の紡績糸5を確実に捕捉することができる。
【0124】
次に、
図10を参照して、パッケージ回転装置72及びトラバース装置73の詳細な構成を説明する。以下の構成は例示であり、適宜変更した装置を用いることもできる。
【0125】
本実施形態の紡績ユニット2は、パッケージ回転装置72及びトラバース装置73を1つにまとめた巻取トラバース装置151を備える。この巻取トラバース装置151は、逆U字状のフレーム152を備える。フレーム152の内部に、巻取ドラム76、ドラム駆動モータ77及びトラバース駆動モータ79が配置されている。
【0126】
フレーム152に、ドラム軸153の両端が回転可能に支持されている。ドラム軸153に、前述の巻取ドラム76が固定される。
【0127】
ドラム駆動モータ77の出力軸は、ドラム軸153と平行に配置されている。ドラム駆動モータ77の出力軸には、第1プーリ161が固定されている。巻取ドラム76の軸方向一側において、ドラム軸153には第2プーリ162が固定されている。第1プーリ161及び第2プーリ162にはベルト163が巻き掛けられて、2つのプーリを連結している。第1プーリ161、第2プーリ162、及びベルト163は、フレーム152の内部に配置されている。
【0128】
トラバース駆動モータ79の出力軸は、ドラム軸153と概ね垂直に配置され、フレーム152の上方に突出している。トラバース駆動モータ79の出力軸に、駆動プーリ171が固定されている。フレーム152の上部において、従動プーリ172,173がそれぞれ回転可能に支持されている。従動プーリ172,173の回転軸は、駆動プーリ171の回転軸と平行である。駆動プーリ171及び従動プーリ172,173にはベルト174が巻き掛けられて、3つのプーリを連結している。
【0129】
フレーム152には、直線状に細長いレール155が、巻取ドラム76の軸線に平行な向きで固定されている。前述の糸ガイド78は、レール155に支持されている。糸ガイド78は、レール155の長手方向に移動可能である。3角形状に巻き掛けられたベルト174のうち、2つの従動プーリ172,173の間に張られている部分は、レール155と平行になっている。ベルト174のうち2つの従動プーリ172,173の間の部分に、糸ガイド78が固定されている。
【0130】
トラバース駆動モータ79は、例えばサーボモータとして構成することができる。トラバース駆動モータ79を正逆方向に交互に回転駆動することで、糸ガイド78を、巻取ドラム76の軸線に沿って直線往復駆動することができる。
【0131】
このように、巻取トラバース装置151は、ドラム駆動モータ77の駆動力をベルト163によって巻取ドラム76に伝達し、トラバース駆動モータ79の駆動力をベルト174によって糸ガイド78に伝達する構成となっている。これらのベルト163,174は、例えば歯付きベルトとすることができる。
【0132】
ドラム駆動モータ77のハウジング、及び、トラバース駆動モータ79のハウジングは、何れも巻取ドラム76に対して上下方向のオーバーラップ部分を有する高さで配置されている。ドラム駆動モータ77のハウジング、及び、トラバース駆動モータ79のハウジングは、巻取ドラム76の軸線に沿って並べて配置される。トラバース駆動モータ79の駆動力を糸ガイド78に伝達するベルト174は、2つのモータのハウジングよりも上方、かつ、巻取ドラム76よりも上方に配置される。これにより、コンパクトな構成を実現できる。
【0133】
以上に説明したように、本実施形態の紡績機1は、紡績装置22と、巻取装置25と、糸継装置82と、吸引装置24と、サクションパイプ83と、ユニット制御部15と、を備える。紡績装置22は、紡績糸5を供給可能である。巻取装置25は、紡績装置22から供給された紡績糸5をトラバースしながら巻き取ってパッケージ7を形成する。糸継装置82は、紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、紡績装置22側の紡績糸5とパッケージ7側の紡績糸5との糸継ぎを行う。吸引装置24は、紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、パッケージ7側の紡績糸5を捕捉可能である。サクションパイプ83は、紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、紡績装置22側の紡績糸5を捕捉可能である。ユニット制御部15は、巻取装置25を制御する。紡績機1は、複数の紡績ユニット2を備える。それぞれの紡績ユニット2が、紡績装置22及び巻取装置25を備える。それぞれの紡績ユニット2の巻取装置25は、パッケージ回転装置72と、トラバース装置73と、を備える。パッケージ回転装置72は、紡績ユニット2毎に独立して駆動され、パッケージ7を回転させる。トラバース装置73は、紡績ユニット2毎に独立して駆動され、パッケージ7に巻かれる紡績糸5をトラバースする。紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、ユニット制御部15は、糸継装置82による糸継ぎの前に、トラバース装置73を動作させることにより、パッケージ7側の紡績糸5をパッケージ7の巻幅方向中央領域に寄せる糸寄せ制御を行う。
【0134】
これにより、紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、糸継装置82による糸継ぎの前に、複雑な構成によらずに、パッケージ7側の紡績糸5の実質的な規制を実現することができる。従って、糸継ぎを円滑に行うことができる。
【0135】
本実施形態の紡績機1において、トラバース装置73は、往復運動する糸ガイド78を備える。糸寄せ制御において、トラバース装置73は糸ガイド78を動作させる。
【0136】
これにより、パッケージ7側の紡績糸5を、糸ガイド78によって物理的に案内することができる。従って、糸継装置82による糸継ぎの前に、パッケージ7側の紡績糸5を確実に規制することができる。
【0137】
本実施形態の紡績機1において、糸寄せ制御により、糸ガイド78は、パッケージ7の巻幅の端部領域から中央領域へ移動する。
【0138】
紡績装置22と巻取装置と25の間で紡績糸5が分断された場合、トラバース装置73は糸ガイド78をいったん減速して停止させる。その後で開始される糸寄せ制御において、トラバース装置73は糸ガイド78を移動させる。
【0139】
これにより、糸継装置82による糸継ぎの前に、パッケージ7側の紡績糸5を、パッケージ7の巻幅の中央領域に確実に移動させることができる。
【0140】
本実施形態の紡績機1は、複数の紡績ユニット2に対して走行可能な糸継台車80を備える。糸継台車80は、サクションマウス84と、糸継装置82と、を備える。
【0141】
これにより、パッケージ7側の紡績糸5がサクションマウス84と干渉しにくい構成を実現することができる。また、糸継装置82によって紡績糸5を円滑に取り込んで糸継ぎを行うことができる。
【0142】
本実施形態の紡績機1は、紡績装置22と、巻取装置25と、糸継装置82と、吸引装置24と、サクションパイプ83と、を備える。紡績装置22は、紡績糸5を供給可能である。巻取装置25は、紡績装置22から供給された紡績糸5をトラバースしながら巻き取ってパッケージ7を形成する。糸継装置82は、紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、紡績装置22側の紡績糸5とパッケージ7側の紡績糸5との糸継ぎを行う。吸引装置24は、紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、パッケージ7側の紡績糸5を捕捉可能である。サクションパイプ83は、紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、紡績装置22側の紡績糸5を捕捉可能である。サクションパイプ83は、捕捉位置と、待機位置と、の間で移動可能である。捕捉位置で、サクションパイプ83は、紡績装置22から供給される紡績糸5を捕捉する。待機位置は、糸継装置82よりも糸走行方向下流側である。紡績装置22が給糸を中断した後、吸引装置24はパッケージ7側の紡績糸5を糸継装置82よりも糸走行方向上流側で捕捉しており、サクションパイプ83は待機位置で待機している状態で、パッケージ7側の紡績糸5をパッケージ7の巻幅方向中央領域に寄せる制御(退避制御)が行われる。この退避制御により、サクションパイプ83が待機位置から捕捉位置へ移動する経路から、パッケージ7と吸引装置24との間の紡績糸5が退避する。
【0143】
これにより、紡績装置22と巻取装置25との間で紡績糸5が分断された場合に、糸継装置82による糸継ぎの前に、サクションパイプ83が紡績装置22側の紡績糸5を捕捉するために移動する動作がパッケージ7側の紡績糸5に干渉することを防止できる。
【0144】
本実施形態の紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車80と、を備える。糸継台車80は、複数の紡績ユニット2に対して走行可能である。それぞれの紡績ユニット2が、紡績装置22及び巻取装置25を備える。糸継台車80は、サクションパイプ83と、糸継装置82と、を備える。
【0145】
これにより、簡素な構成を実現することができる。
【0146】
次に、糸寄せ制御の第1変形例について説明する。第1変形例の糸寄せ制御は、糸ガイド78から紡績糸5を外した状態でパッケージ7を巻取方向に回転させることで、パッケージ7側の紡績糸5をパッケージ7の巻幅方向中央領域に寄せるものである。
【0147】
具体的に説明すると、ユニット制御部15は、
図7の状態で糸ガイド78を移動させる代わりに、パッケージ7側の紡績糸5を糸ガイド78から外す。糸ガイド78からの紡績糸5の取外しは、例えば、
図4の支軸75を中心としてクレードルアーム74を回転させ、パッケージ7をトラバース装置73から一時的に離すことにより行うことができる。クレードルアーム74を回転させる手段としては、エアシリンダ等の適宜のアクチュエータを用いることができる。糸ガイド78から紡績糸5が外れた後は、適宜のタイミングで、クレードルアーム74を回転させて、パッケージ7と巻取ドラム76を再び接触状態とする。或いは、糸ガイド78から紡績糸5を外すための取外し部材を設け、当該取外し部材により紡績糸5を糸ガイド78から外しても良い。
【0148】
糸ガイド78から紡績糸5が外れた後、トラバース装置73は、糸ガイド78を、通常のトラバース幅から外れた位置で停止させる。その後、巻取装置25は、糸ガイド78によるトラバースを停止させた状態で、パッケージ7を巻取方向に回転させる。
【0149】
図7に示すように、紡績ユニット2は、紡績糸5を案内するガイド91を備える。ガイド91は、吸引装置24よりも下流側、かつ、パッケージ7よりも上流側の位置に配置されている。ガイド91は、紡績糸5を案内するガイド凹部が形成された公知の構成である。ガイド91は、トラバース装置73の糸ガイド78よりも上流側、かつ、糸継装置82よりも上流側に位置している。
【0150】
ガイド91は、トラバース装置73のトラバース幅の中央部に対応して配置されている。従って、吸引装置24によってパッケージ7側の紡績糸5にテンションが付与された状態でパッケージ7を巻取方向に回転させると、パッケージ7側の紡績糸5の位置は、ガイド91に対応する領域である、巻幅方向中央領域に次第に近づく。こうして、糸寄せ動作を実現することができる。
【0151】
第1変形例では、パッケージ7を巻取方向に回転させても紡績糸5が吸引装置24から抜けないようにする必要がある。また、パッケージ7を巻取方向に回転させても、紡績糸5のうち糸欠陥を含む部分が吸引装置24から引き出されて糸継装置82に到達しないようにする必要がある。従って、糸寄せ動作の前に、十分な長さの紡績糸5が吸引装置24に予め捕捉されていなければならない。パッケージ7を巻取方向に回転させる前に逆方向にある程度回転させ、吸引装置24によって捕捉される紡績糸5の長さを増大させても良い。
【0152】
以上に説明したように、本変形例では、糸寄せ制御において、パッケージ回転装置72はパッケージ7を巻取方向に回転させた後に停止させる。パッケージ7の回転が停止した後に糸継装置82が糸継ぎを行う。
【0153】
これにより、糸継装置82による糸継ぎの前に、トラバース装置73を利用せずに、パッケージ回転装置72によってパッケージ7側の紡績糸5の実質的な規制を実現することができる。
【0154】
次に、糸寄せ制御の第2変形例について説明する。第2変形例の糸寄せ制御は、糸ガイド78から紡績糸5を外した状態でパッケージ7を巻取方向とは逆方向に回転させることで、パッケージ7側の紡績糸5をパッケージ7の幅方向中央領域に寄せるものである。
【0155】
本変形例は、第1変形例においてパッケージ7を巻取方向に回転させる代わりに、逆方向に回転させる。本変形例においても、トラバース装置73は紡績糸5をトラバースしない。
【0156】
パッケージ7は、トラバース装置73によって紡績糸5をトラバースしながら巻かれることで形成される。従って、吸引装置24によってパッケージ7側の紡績糸5にテンションが付与された状態でパッケージ7を逆方向に回転させると、パッケージ7から解舒される紡績糸5の位置は、巻取り時のトラバースを逆に辿るように巻幅方向で往復運動する。
【0157】
本変形例では、紡績糸5がパッケージ7の巻幅方向中央領域に移動したことを検出する糸検出センサが設けられている。この糸検出センサは、図示しないが、例えばガイド91の真下の位置に配置された、紡績糸5を非接触で検出するセンサとすることができる。巻取装置25は、パッケージ7を逆方向に回転させ、上記のように往復する紡績糸5が糸検出センサによって検出されたタイミングで、パッケージ7の回転を直ちに停止させる。こうして、糸寄せ動作を実現することができる。
【0158】
以上に説明したように、本変形例の紡績機1は、パッケージ7の巻幅方向中央領域にある紡績糸5を検出可能な糸検出センサを備える。糸寄せ制御において、パッケージ回転装置72がパッケージ7を巻取方向とは逆方向に回転し、パッケージ7からの解舒に伴って往復運動する紡績糸5を糸検出センサが検出するとパッケージ7の逆方向の回転が停止される。
【0159】
これにより、糸継装置82による糸継ぎの前に、トラバース装置を利用せずに、パッケージ回転装置72と糸検出センサとによって、パッケージ7側の紡績糸5の実質的な規制を実現することができる。
【0160】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0161】
トラバース駆動モータ79は、サーボモータに代えて、例えば、DCブラシレスモータ、エンコーダ付きのステッピングモータとすることができる。
【0162】
図10の構成においてトラバース装置73は2つの従動プーリ172,173を有しているが、従動プーリの数は任意である。例えば、ベルト174が1つの駆動プーリと1つの従動プーリに巻き掛けられ、長円状となる構成であっても良い。
【0163】
トラバース駆動モータ79の出力軸にアーム部材を連結し、回転するアーム部材の先端に糸ガイド78が取り付けられても良い。この場合、糸ガイド78は円弧状の往復運動を行う。
【0164】
ドラム駆動モータ77は、巻取ドラム76に内蔵されても良い。この場合、ドラム駆動モータ77は、例えばアウターロータ型のモータとして構成することができる。
【0165】
紡績機1は、オープンエンド紡績機であっても良い。上記実施形態及び変形例の糸寄せ制御は、紡績機に代えて、自動ワインダにおいて行うこともできる。自動ワインダにおいては、給糸ボビンから糸を解舒する装置が給糸装置に相当する。
【0166】
紡績装置22と糸貯留ローラ51の間に、紡績糸5を挟んで送るデリベリローラが配置されても良い。
【0167】
糸継台車80を省略し、各紡績ユニット2が糸継装置82とサクションパイプ83を備えていても良い。
【0168】
上記実施形態及び変形例の糸寄せ制御は、サクションパイプ83による捕捉動作前に毎回行う必要はない。例えば、適宜の手段によって、サクションパイプ83が紡績糸5に干渉する可能性がないことが検知された場合は、糸寄せ制御を省略しても良い。
【符号の説明】
【0169】
1 紡績機(糸巻取機)
2 紡績ユニット(処理ユニット)
5 紡績糸(糸)
7 パッケージ
15 ユニット制御部(制御部)
22 紡績装置(給糸装置)
24 吸引装置(第1捕捉装置)
25 巻取装置
72 パッケージ回転装置
73 トラバース装置
78 糸ガイド
80 糸継台車(作業台車)
82 糸継装置
83 サクションパイプ(第2捕捉装置)