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特開2022-189234ロボットハンド及びロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189234
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ロボットハンド及びロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20221215BHJP
   A01D 46/30 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
A01D46/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097714
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人北海道国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000222978
【氏名又は名称】東洋農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】楊 亮亮
(72)【発明者】
【氏名】星野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】野村 誠
(72)【発明者】
【氏名】石川 和久
【テーマコード(参考)】
2B075
3C707
【Fターム(参考)】
2B075JF05
2B075JF08
3C707AS01
3C707AS22
3C707BS10
3C707CY40
3C707ES05
3C707EU07
3C707EV18
3C707EV21
3C707EW00
3C707EW01
3C707NS26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業対象物を確実に抱え上げての搬送が可能でかつ作業対象物への圧力印加の低減が可能なロボットハンド及びそのハンドを備えた、つる性作物収穫装置を提供する。
【解決手段】アーム機構に支持された複数のリンク機構と、これら複数のリンク機構にそれぞれ連結され作業対象物を抱え上げる複数の指先部材とを備えるロボットハンドである。各リンク機構は一端がアーム機構の先端部に固定され他端に第1の回動軸が挿設される第1のリンク部材と第2第3第4のリンク部材とを備えている。各指先部材は略中央部が複数のリンク機構の各々の第2の回動軸に軸着され先端に向かって厚さが漸減すように形成され、後端に複数のリンク機構の各々の第4の回動軸が挿設されるように構成されている。第3のリンク部材の基端部が操作されると第4のリンク部材を介して各指先部材を回動させると共に第2のリンク部材が第1の回動軸を中心に回動するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム機構に支持された複数のリンク機構と、該複数のリンク機構にそれぞれ連結され作業対象物を抱え上げる複数の指先部材とを備えるロボットハンドであって、
前記複数のリンク機構の各々は、
一端が前記アーム機構の先端部に固定され、他端に第1の回動軸が挿設される第1のリンク部材と、
一端が前記第1の回動軸に軸着され、他端に第2の回動軸が挿設される第2のリンク部材と、
略中央部が前記第1の回動軸に軸着され、基端部が駆動機構可動部に連結され、先端部に第3の回動軸が挿設される第3のリンク部材と、
一端が前記第3の回動軸に軸着され、他端に第4の回動軸が挿通される挿通穴を有する第4のリンク部材とを備え、
前記複数の指先部材の各々は、略中央部が前記複数のリンク機構の各々の前記第2の回動軸に軸着され、先端に向かって次第に厚さが薄くなるように形成され、後端に前記複数のリンク機構の各々の前記第4の回動軸が挿設されるように構成されており、
前記第3のリンク部材の基端部が前記駆動機構可動部により操作されると、前記第4のリンク部材を介して前記複数の指先部材の各々を回動させると共に、前記第2のリンク部材が前記第1の回動軸を中心に回動するように構成されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記複数の指先部材の各々は、基端部と先端部とから構成され、
前記基端部と前記先端部とは、略「ヘ」の字形を形成するように前記第2の回動軸により所定範囲に回動可能に連結され、かつ前記第2の回動軸に前記先端部を開く方向へ回転するように付勢する第1の弾性体が装着されていることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記第4のリンク部材の他端の挿通穴は、前記第4の回動軸がスライド可能な円弧状長穴であり、
前記第4のリンク部材の他端に、前記第4の回動軸を前記円弧状長穴に沿って該他端部へ付勢する第2の弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記指先部材の前記先端部は先端に向かって次第に厚さが薄くなるように形成され、かつ前記先端部には、水平方向の回転軸を有するローラが設けられ、該ローラは外周面が前記先端部の表面から露出するように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記第2のリンク部材には、前記作業対象物を囲む囲み部材が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のロボットハンド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のロボットハンドと、
前記ロボットハンドを駆動するための駆動機構と、
前記ロボットハンド及び前記駆動機構を3次元空間の所定範囲内で自由に移動させるアーム機構とを備えることを特徴とするつる性作物収穫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カボチャ(南瓜)、スイカ及びメロンのようなつる性作物の収穫作業を行うためのロボットハンド及びこのロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカボチャ等のつる性作物の収穫機械には、つる性作物の果実を粉砕し種子のみを収穫するものがあるが、青果用はない。そのため、青果用として販売されるつる性作物の収穫作業は手作業収穫を行わざるを得ず、機械化が進んでいなかった。
【0003】
このため、重い作物である、例えばカボチャを収穫する際には、圃場の中に点在するカボチャを人間が一つ一つ地面から持ち上げ、拾い集める必要があり、これは、収穫作業者に肉体的負担を強いるものであった。
【0004】
そこで、機械化を進めて作業効率を向上させるべく、青果としての価値を損なうことなしにつる性作物(例えば、カボチャなどの重量作物)の個別収穫を行うことができる収穫ロボットが提案されている(非特許文献1)。この非特許文献1に記載された収穫ロボットは、果実を傷付けずにつかむことができる専用ハンドを装着している。
【0005】
また、スイカ等の重量果菜類の収穫を行うスイカ収穫装置が提案されている(特許文献1)。この特許文献1に記載されたスイカ収穫装置は、3次元空間内をある範囲内で自由に移動できるマニピュレータの先端部に取付けられ、スイカの表面を吸着して保持する複数の吸着パッドを有し、各吸着パッドは、各々弾性体を介してフレームに装着され、また真空源を各々独立して備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-70936号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“おも~いカボチャの収穫作業を効率的に、AI・ドローン・ロボットが連携”、ニュースイッチ、 [online]、2019年5月29日、日刊工業新聞、「2021年4月30日検索」、インターネット <URL:https://newswitch.jp/p/17833>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載の収穫ロボットは、対象の果実と一緒につるを掴んでしまった場合、そのつるを引きちぎれずに動作が停止する可能性があること、及び果実が固く重量がある球形であるため、つるからの引張り力によって果実を取り落としてしまう可能性が高いこと等の問題点を有していた。
【0009】
また、つる性作物の収穫作業を行う際に、圃場に生い茂る植物のつるを完全に除去することは困難であるため、収穫作業を進めるためには、つるに対する対策を行うことが不可欠であった。
【0010】
また、特許文献1に記載のスイカ収穫装置は、各吸着パッド用の真空源が必要であるため、コストが高いという問題点があった。また、カボチャ等のつる性作物の表面に凹凸が存在する場合、吸着パッドと表皮の間から空気漏れが起こり、吸着パッドによる確実な吸着ができないという問題点もあった。
【0011】
従って、本発明の目的は、作業対象物を確実に抱え上げて搬送することができ、かつ作業対象物に印加される圧力負荷を低減することができるロボットハンド及びこのロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、つる性作物におけるつるの掛かりを外すことができ、つるの掛かりによる作業のやり直しを回避することができるロボットハンド及びこのロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、アーム機構に支持された複数のリンク機構と、これら複数のリンク機構にそれぞれ連結され作業対象物を抱え上げる複数の指先部材とを備えるロボットハンドが提供される。複数のリンク機構の各々は、一端がアーム機構の先端部に固定され、他端に第1の回動軸が挿設される第1のリンク部材と、一端が第1の回動軸に軸着され、他端に第2の回動軸が挿設される第2のリンク部材と、略中央部が第1の回動軸に軸着され、基端部が駆動機構に連結され、先端部に第3の回動軸が挿設される第3のリンク部材と、一端が第3の回動軸に軸着され、他端に第4の回動軸が挿通される挿通穴を有する第4のリンク部材とを備えている。複数の指先部材の各々は、略中央部が複数のリンク機構の各々の第2の回動軸に軸着され、先端に向かって次第に厚さが薄くなるように形成され、後端に複数のリンク機構の各々の第4の回動軸が挿設されるように構成されている。第3のリンク部材の基端部が駆動機構により操作されると、第4のリンク部材を介して複数の指先部材の各々を回動させると共に、第2のリンク部材が第1の回動軸を中心に回動するように構成されている。
【0014】
このようにロボットハンドは、複数のリンク機構と、複数のリンク機構にそれぞれ連結され作業対象物を抱え上げる複数の指先部材とを備えている。各リンク機構は、各指先部材に連結された4つのリンク部材から構成された4節リンク機構であり、第3のリンク部材の基端部が駆動機構により操作されると、第4のリンク部材を介して指先部材を回動させると共に、第2のリンク部材が第1の回動軸を中心に回動するように構成されている。これにより、作業対象物(例えば、カボチャ等果実)を地面等から確実に抱え上げて搬送することができ、かつ作業対象物に印加される圧力負荷を低減することができる。
【0015】
複数の指先部材の各々は、基端部と先端部とから構成され、基端部と先端部とは、略「ヘ」の字形を形成するように第2の回動軸により所定範囲に回動可能に連結され、かつ第2の回動軸に先端部を開く方向へ回転するように付勢する第1の弾性体が装着されていることが好ましい。これにより、基端部と先端部とからなる「へ」の字の形状を自由角度として閉じる方向(上部方向)へのみ可動するようになり、そのため、作業対象物の底部へ指先(指先部材の先端部)を送り込む際に地面の凹凸を対応しながら、複数のリンク機構を閉めきったときに作業対象物を取り落とさないようにすることができる。
【0016】
第4のリンク部材の他端の挿通穴は、第4の回動軸がスライド可能な円弧状長穴であり、第4のリンク部材の他端に、第4の回動軸を円弧状長穴に沿ってこの他端部へ付勢する第2の弾性体が設けられていることが好ましい。これにより、指先(指先部材の先端部)がつるに引っ掛かり強い力を受けた際、指先のみを下方向に回動可能となり、つるの掛かりを外すことができる。そのため、ロボットハンドのつる引っ掛かりによる作業のやり直しを回避させることができる。また、引っ掛かったつるを外した後、第2の弾性体により指先(指先部材の先端部)を復位させることができる。
【0017】
指先部材の先端部は先端に向かって次第に厚さが薄くなるように形成され、かつ先端部には、水平方向の回転軸を有するローラが設けられ、このローラは外周面が先端部の表面から露出するように構成されていることが好ましい。これにより、指先(指先部材の先端部)がスムーズに作業対象物の底部へ進入することができる。
【0018】
第2のリンク部材には、作業対象物を囲む囲み部材が設けられていることが好ましい。これにより、作業対象物がリンク機構の間からの落下を防止することができる。
【0019】
本発明によれば、つる性作物収穫装置は、上述した本発明のロボットハンドと、このロボットハンドを駆動するための駆動機構と、ロボットハンド及び駆動機構を3次元空間の所定範囲内で自由に移動させるアーム機構とを備える。これにより、カボチャ、スイカ及びメロンのようなつる性作物の収穫作業を行う際に、作業対象物を地面等から確実に抱え上げて搬送することができ、かつ作業対象物に印加される圧力負荷を低減することができる。また、つる性作物のつるの掛かりを外すことができ、つる引っ掛かりによる作業やり直しを回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置は、カボチャ、スイカ及びメロンのようなつる性作物の収穫作業を行う際に、ロボットハンドの指先が作業対象物(果実)とつるを一緒に引っ掛けてしまっても自動で引っ掛かったつるを外すことができる。作業対象物を地面等から確実に抱え上げて搬送することができ、かつ作業対象物に印加される圧力負荷を低減することができる。また、つる性作物のつるの掛かりを外すことができるため、つる引っ掛かりによる作業やり直しを回避することができる。さらに、ロボットハンドの指先は柔軟性を確保してあり、凹凸のある地面との接触抵抗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置の構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1中のロボットハンドのリンク機構の構成例を概略的に示す斜視図である。
図3図1中のロボットハンドのリンク機構の開放状態と閉鎖状態を示す側面図である。
図4図1中のロボットハンドのリンク機構の指先部材の先端部の回動範囲及び第1の弾性体の構成を示す側面図である。
図5図1中のロボットハンドのリンク機構の第4のリンク部材の他端に設けられた第2の弾性体の動作状態を示している。
図6】本発明のロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置の動作状態を示す図(その1)である。
図7】本発明のロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置の動作状態を示す図(その2)である。
図8】本発明のロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置の動作状態を示す図(その3)である。
図9】第4のリンク部材の他の構成例を概略的に示す局部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るロボットハンド及びこのロボットハンドを備えたつる性作物収穫装置の実施形態を、図を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係るロボットハンド100を備えたつる性作物収穫装置1000を概略的に示しており、図2図1のロボットハンド100のリンク機構100aの構成を示している。図3はロボットハンド100のリンク機構100aの動作状態を示しており、同図(A)はリンク機構100aの開放状態であり、(B)はンク機構100aの閉鎖状態である。図4は指先部材50及び第2の回動軸S2に装着される第1の弾性体60を示しており、図5はリンク機構100aの第4のリンク部材40の他端に設けられた第2の弾性体70の動作状態を示している。なお、図2から図5では第2のリンク部材20に設けられている作業対象物Pを囲む囲み部材80を省略した状態を示している。
【0024】
図1に示すように、つる性作物収穫装置1000は、作業対象物Pを地面等から抱え上げるロボットハンド100と、このロボットハンド100を駆動するための駆動機構200と、ロボットハンド100及び駆動機構200を3次元空間の所定範囲内で自由に移動させるアーム機構300とを備えている。ロボットハンド100は、複数のリンク機構100aと、複数のリンク機構100aにそれぞれ連結され作業対象物Pを地面等から抱え上げる複数の指先部材50とを備えている。本実施形態においては、駆動機構200の中心軸Cから所定距離だけ離れた円周上に90度間隔で複数のリンク機構100a及び複数の指先部材50(図2参照)が配置されている。
【0025】
図1から図5に示すように、リンク機構100a及び指先部材50は、一端がアーム機構300の先端部に固定されている第1のリンク部材10と、第1のリンク部材10の他端に回動可能に連結されている第2のリンク部材20と、基端部が駆動機構200に連結されている第3のリンク部材30と、一端が第3のリンク部材30の先端部に回動可能に連結され、他端に挿通穴41を有する第4のリンク部材40と、基端部50aと先端部50bとから構成される指先部材50と、第2の回動軸S2に装着されている第1の弾性体60と、第4のリンク部材40の他端に設けられている第2の弾性体70と、第2のリンク部材20に設けられている作業対象物Pを囲む囲み部材80と、第1のリンク部材10の他端に挿設される第1の回動軸S1と、第2のリンク部材20の他端に挿設されている第2の回動軸S2と、第3のリンク部材30の先端部に挿設されている第3の回動軸S3と、指先部材50の基端部50aの後端に挿設される第4の回動軸S4とを備えている。
【0026】
第1のリンク部材10は、一端がアーム機構300の先端部に設けられた駆動機構200に固定されており、他端に第1の回動軸S1が挿設されており、この第1の回動軸S1を介して第2のリンク部材20の一端と連結されると共に、第3のリンク部材30の中央部とも連結されている。
【0027】
第2のリンク部材20は、一端が第1の回動軸S1に軸着され、他端に第1の回動軸S1に平行する第2の回動軸S2が挿設されている。この第2のリンク部材20は、一端が第1のリンク部材10に対して回動可能に連結されており、他端が指先部材50に連結されている。なお、第2の回動軸S2が第1の回動軸S1に平行することは、限定されるものではない。
【0028】
第3のリンク部材30は、略中央部が第1の回動軸S1に軸着され、基端部が連結軸S0を介して駆動機構200に連結され、先端部には第1の回動軸S1に平行する第3の回動軸S3が挿設されている。この第3のリンク部材30先端部に、第3の回動軸S3を介して第4のリンク部材40の一端が可動可能に連結されている。なお、第3の回動軸S3が第1の回動軸S1に平行することは、限定されるものではない。
【0029】
第4のリンク部材40は、一端が第3の回動軸S3に軸着され、他端には第1の回動軸S1に平行する第4の回動軸S4が挿通される挿通穴41を有する。この挿通穴41は、第4の回動軸S4がスライド可能な円弧状長穴である。この第4のリンク部材40の他端は第4の回動軸S4を介して指先部材50の基端部50aの後端と連結されている。また、第4のリンク部材40の他端には、第2の弾性体70を格納する弾性体格納部42が設けられている。なお、第4の回動軸S4が第1の回動軸S1に平行することは、限定されるものではない。
【0030】
指先部材50は、基端部50aと先端部50bとから構成されている。基端部50aの前端と先端部50bの後端とは、第2の回動軸S2により回動可能に連結され、基端部50aには、先端部50bの回動を所定範囲に規制する回転規制部52及び53を有する。また、第2の回動軸S2に装着されている第1の弾性体60により先端部50bが開く方向へ回転するように付勢される。これにより、基端部50aと先端部50bとは、略「ヘ」の字形を形成するようにされる。また、基端部50aの後端に第4の回動軸S4が挿設され、先端部50bは、先端に向かって次第に厚さが薄くなるように形成され、かつ先端部50bには、水平方向の回転軸S5を有するローラ51が設けられている。このローラ51は外周面が先端部50bの表面(上面及び下面)から露出するように構成されている。
【0031】
第1の弾性体60は、例えば、ねじりバネである。図4に示すように、この第1の弾性体60は、第2の回動軸S2に装着され、指先部材50の先端部50aを開く方向へ回転するように付勢するように構成されている。この構成により、指先部材50の先端部50bが閉じる方向(上部方向)へ所定角度(図4中の回動範囲)のみ回動することができ、作業対象物Pの底部へ指先部材50の先端部50bを送り込む際に地面の凹凸を対応しながら、複数のリンク機構100aを閉めきったときに作業対象物Pを取り落とさないようにすることができる。
【0032】
第2の弾性体70は、例えば、圧縮コイルバネである。この第2の弾性体70は、第4のリンク部材40の弾性体収納部42に設けられ、第4の回動軸S4を円弧状長穴(挿通穴41)に沿って第4のリンク部材40の他端部へ付勢するように構成されている。この構成により、ロボットハンド100の指先(指先部材50の先端部50b)がつるに引っ掛かり強い力を受けた際、指先のみを下方向に可動させ、つるの掛かりを外すことができる(図5参照)。そのため、ロボットハンド100のつる引っ掛かりによる作業やり直しを減少させることができる。また、引っ掛かったつるを外した後、第2の弾性体70により指先(指先部材50の先端部50b)を復位させることができる。
【0033】
囲み部材80は、リング状に形成され、第2のリンク部材20の内側に設けられている。この囲み部材80を設けることで、作業対象物Pを抱え上げる際に、作業対象物Pが複数のリンク機構100a及び指先部材50の間からの落下を防止することができる。
【0034】
上述した本発明のつる性作物収穫装置1000は、トラクタ等の車両に搭載することで、移動しながら収穫作業を行うことができる。
【0035】
次に、図6から図8を参照しながら、本発明のロボットハンド100を備えたつる性作物収穫装置1000の動作を説明する。
【0036】
図6から図8に示すように、つる性作物収穫装置1000を用いてカボチャ等を収穫する際に、まず、アーム機構300でロボットハンド100を作業対象物Pの上方に移動させる(図6(A)参照)。この場合、ロボットハンド100の複数のリンク機構100a及び指先部材50は拡開状態である。次いで、ロボットハンド100を作業対象物Pの上方から降下させ、指先部材50の先端部50bを地面に接触させ、さらに先端部50bのみを閉じる方向(上部方向)へ地面と略平行となるように回動させる(図6(B)参照)。次いで、駆動機構可動部200aが駆動機構固定部200bに対して上方へ移動することで、ロボットハンド100の複数のリンク機構100a及び指先部材50を中心軸Cの方向(中央部)へ収縮を開始する(図7(A)参照)。次いで、複数のリンク機構100a及び指先部材50を、指先(指先部材50の先端部50b)が作業対象物Pの下部へ移動するように中心軸Cの方向(中央部)へ収縮させる(図7(B)参照)。次いで、複数の指先(指先部材50の先端部50b)を作業対象物Pの下部と地面との間に挿入する(図8(A)参照)。そして、アーム機構300でロボットハンド100を上昇させ、作業対象物Pを持ち上げる(図8(B)参照)。このようにして、つる性作物(例えば、カボチャなどの重量作物)の個別収穫を行う。
【0037】
以下、本発明のロボットハンド100を備えたつる性作物収穫装置1000を用いてカボチャの収穫を行った実験結果を説明する。実験に用いたカボチャの寸法、形状等を表1に示している。
【0038】
【表1】
【0039】
ロボットハンド100に1本のつるが引っ掛った場合、カボチャの収穫実験結果を表2に示している。表2に示すように、1本のつるが引っ掛った場合、抱え上げの成功確率は90%である。
【表2】
【0040】
ロボットハンド100に複数本のつるが引っ掛った場合、カボチャの収穫実験結果を表3に示している。表3に示すように、複数本のつるが引っ掛った場合、抱え上げの成功確率は85%である。
【表3】
【0041】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、つる性作物収穫装置1000は、作業対象物Pを抱え上げるロボットハンド100と、このロボットハンド100を駆動するための駆動機構200と、ロボットハンド100及び駆動機構200を3次元空間の所定範囲内で自由に移動するアーム機構300とを備えている。ロボットハンド100は、作業対象物Pを地面等から抱え上げる複数のリンク機構100a及び複数の指先部材50を備えている。
【0042】
リンク機構100aは、一端がアーム機構300の先端部の駆動機構可動部200aに固定されている第1のリンク部材10と、第1のリンク部材10の他端に回動可能に連結されている第2のリンク部材20と、基端部が駆動機構可動部200aに連結されている第3のリンク部材30と、一端が第3のリンク部材30の先端部に回動可能に連結され、他端に挿通穴41を有する第4のリンク部材40とを備えている。指先部材50は、基端部50aと先端部50bとから構成されている。リンク機構100aは、さらに、第2の回動軸に装着されている第1の弾性体60と、第4のリンク部材40の他端に設けられている第2の弾性体70と、第2のリンク部材20に設けられている作業対象物Pを囲む囲み部材80と、第1のリンク部材10の他端に挿設される第1の回動軸S1と、第2のリンク部材20の他端に挿設されている第2の回動軸S2と、第3のリンク部材30の先端部に挿設されている第3の回動軸S3と、指先部材50の基端部50aの後端に挿設される第4の回動軸S4とを備えている。
【0043】
これにより、カボチャなどの重量作物の収穫作業を機械化、省力化することができると共に、カボチャ、スイカ及びメロンのようなつる性作物の収穫作業を行う際に、作業対象物Pを地面等から確実に抱え上げて搬送することができ、かつ作業対象物Pに印加される圧力負荷を低減することができる。また、つる性作物のつるの掛かりを外すことができるため、つる引っ掛かりによる作業やり直しを回避することができる。さらに、ロボットハンド100の指先が柔軟性を確保してあり、凹凸のある地面との接触抵抗を抑えることができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態において、ロボットハンド100は、4つのリンク機構100a及び指先部材50を有する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、3つ又は5つ以上のリンク機構及び指先部材を設けるようにしても良く、また、4つのリンク機構は中心軸Cに対しらせん方向に傾斜しても良い。
【0045】
また、上述した実施の形態において、指先部材50は、基端部50aと先端部50bとから構成されている例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、指先部材は、1つの部材から構成されるようにしても良い。
【0046】
さらに、上述した実施の形態において、ロボットハンド100は、作業対象物Pとしてつる性作物である例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。つる性作物以外の作業対象物にも本発明を適用することができる。
【0047】
さらにまた、上述した実施の形態において、第2の弾性体70は第4のリンク部材40の下端部に設けた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、第4のリンク部材40の下端より高い位置に設けても良い。この場合、土やゴミ等が弾性体収納部42に入り込むことを防止することができる。
【0048】
以上述べた実施形態は本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のロボットハンド及びつる性作物収穫装置は、カボチャ(南瓜)、スイカ及びメロン等のつる性作物の収穫作業を、機械化して労働負担を軽くする目的に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10 第1のリンク部材
20 第2のリンク部材
30 第3のリンク部材
40、40A 第4のリンク部材
41 挿通穴(円弧状長穴)
42 弾性体格納部
50 指先部材
50a 基端部
50b 先端部
51 ローラ
52、53 回転規制部
60 第1の弾性体
70 第2の弾性体
80 囲み部材
100 ロボットハンド
100a リンク機構
200 駆動機構
200a 駆動機構可動部
200b 駆動機構固定部
300 アーム機構
1000 つる性作物収穫装置
C 中心軸
P 作業対象物
S0 連結軸
S1 第1の回動軸
S2 第2の回動軸
S3 第3の回動軸
S4 第4の回動軸
S5 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9