(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189236
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20221215BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20221215BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20221215BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20221215BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0566
H01M10/04 Z
H01M4/13
H01M4/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097717
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小椋 学
(72)【発明者】
【氏名】若松 直樹
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA06
5H028BB04
5H028CC11
5H028CC12
5H028HH05
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029BJ21
5H029CJ03
5H029CJ22
5H029HJ04
5H029HJ06
5H050AA15
5H050BA08
5H050CA07
5H050CA08
5H050CB07
5H050CB08
5H050GA03
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA06
(57)【要約】
【課題】金属異物の析出による短絡を抑制可能な二次電池及び二次電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る電解液を有する二次電池1は、正極シート100と、負極シート200と、正極シート100及び負極シート200を絶縁するセパレータ300とが積層される。二次電池1は、二次電池1内において電解液が貯留する貯留部11を含む。負極シート200は、負極シート200の両面に合材220を備える。貯留部11と対向する負極シート200の合材220には、1以上の穴221が形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートと、前記正極シート及び前記負極シートを絶縁するセパレータとが積層された、電解液を有する二次電池であって、
前記二次電池内において前記電解液が貯留する貯留部を含み、
前記負極シートは、前記負極シートの両面に合材を備えており、
前記貯留部と対向する前記負極シートの前記合材に1以上の穴が形成された、二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの積層方向から前記二次電池を加圧する加圧部材が隣接して配置され、
前記加圧部材は、前記積層方向に突出する少なくとも1つの突出部を備えており、
前記貯留部は、前記加圧部材の前記突出部と対向しない位置に形成される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
少なくとも前記合材の表面における前記穴の直径は、前記二次電池内で析出し得る金属異物の大きさ以上である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記穴の深さは、前記負極シートの片面の前記合材の厚み以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
正極シートと、負極シートと、前記正極シート及び前記負極シートを絶縁するセパレータとが積層される、電解液を有する二次電池の製造方法であって、
前記負極シートの集電箔の両面に合材を塗布する第1の工程と、
前記二次電池内において前記電解液が貯留する貯留部と対向する前記負極シートの前記合材に、1以上の穴を形成する第2の工程と
を含む、二次電池の製造方法。
【請求項6】
少なくとも前記合材の表面における前記穴の直径は、前記二次電池内で析出し得る金属異物の大きさ以上である、請求項5に記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記穴の深さは、前記負極シートの片面の前記合材の厚み以下である、請求項5又は6に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液を有する二次電池及び当該二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等では、リチウムイオン電池等の電解液を有する二次電池が採用されている。例えば、特許文献1は、帯状の金属多孔体と活物質とが捲回された電池用電極を開示する。この電池用電極は、その両面に複数の筋溝が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、二次電池の内部に金属異物が混入した場合、電解液添加剤が金属異物を溶解するため、負極板から金属異物が析出する。そして、析出した金属異物が伸長し、当該金属異物が正極板に到達することによって短絡が生じる。しかしながら、特許文献1が開示する電池用電極は、このような短絡の抑制を目的として開発されたものではないため、金属異物の析出による短絡を抑制できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、金属異物の析出による短絡を抑制可能な二次電池及び二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る正極シートと、負極シートと、正極シート及び負極シートを絶縁するセパレータとが積層され、電解液を有する二次電池は、
二次電池内において電解液が貯留する貯留部を含み、
負極シートは、負極シートの両面に合材を備えており、
貯留部と対向する負極シートの合材に1以上の穴が形成される。
【0007】
二次電池は、正極シート、負極シート及びセパレータの積層方向から二次電池を加圧する加圧部材が隣接して配置され、
加圧部材は、積層方向に突出する少なくとも1つの突出部を備えており、
貯留部は、加圧部材の突出部と対向しない位置に形成される。
【0008】
少なくとも合材の表面における穴の直径は、二次電池内で析出し得る金属異物の大きさ以上である。
【0009】
穴の深さは、負極シートの片面の合材の厚み以下である。
【0010】
本発明の一態様に係る正極シートと、負極シートと、正極シート及び負極シートを絶縁するセパレータとが積層される、電解液を有する二次電池の製造方法は、
負極シートの集電箔の両面に合材を塗布する第1の工程と、
二次電池内において電解液が貯留する貯留部と対向する負極シートの合材に、1以上の穴を形成する第2の工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、金属異物の析出による短絡を抑制可能な二次電池及び二次電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るスペーサの一例を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電極体の一例を示す図である。
【
図4】
図3のI-I断面線に沿った水平断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る第2の工程の一例を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る第2の工程の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池1を示す図である。二次電池1は、正極シートと、負極シートと、正極シート及び負極シートを絶縁するセパレータとが積層された電極体(図示せず)を備える。二次電池1は、
図1に示すように積層方向に配列される。隣り合う二次電池1の間には、スペーサ2が隣接して配置される。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係るスペーサ2の一例を示す正面図である。
図2に示すように、スペーサ2は、複数の突出部20を備える。複数の突出部20は、スペーサ2が二次電池1に隣接して配置された状態で、二次電池1の積層方向から二次電池1を加圧する。スペーサ2は、加圧部材に相当する。複数の突出部20は、スペーサ2の両面に設けられる。
【0015】
複数の突出部20は、二次電池1の外側面に沿って冷却媒体を通す役目を有する。
図2に示すスペーサ2では、スペーサ2の下方から冷却媒体が流入し、当該冷却媒体が複数の突出部20に沿ってスペーサ2の幅方向外側に流出する。これにより、二次電池1が冷却される。
【0016】
図3は、本発明の一実施形態に係る電極体10の一例を示す図である。本実施形態では、電極体10は、正極シート、負極シート及びのセパレータを積層して捲回することによって形成される。なお、他の実施形態では、複数の正極シート、複数の負極シート及び複数のセパレータを積層して、非捲回型の電極体10を形成してもよい。
【0017】
二次電池1は、電解液を有する。スペーサ2の突出部20が二次電池1の側面を加圧することにより、二次電池1内には、電解液が貯留する貯留部11が形成される。この貯留部11は、スペーサ2の突出部20と対向しない位置に形成される。貯留部11が形成される位置は、
図2に示すスペーサ2の突出部20が設けられていない領域21の位置に対応する。
図2に示すスペーサ2では、複数の突出部20が、二次電池1の幅方向の端部、中心部及び上部に対応する位置に多く設けられる。一方、二次電池1の中央下部の近傍に対応する位置、すなわち領域21には、突出部20が存在せず又は少ない。そのため、複数の突出部20によって二次電池1の幅方向の端部、中心部及び上部が加圧されることにより、二次電池1の幅方向の端部と中心部の間、特に、二次電池1の中央下部の近傍に貯留部11が形成される。
【0018】
図4は、
図3のI-I断面線に沿った断面図であり、貯留部11が存在する電極体10の水平断面を示す。
図4には、正極シート100、負極シート200及びセパレータ300の一部が示されている。
図4に示す例では、正極シート100とセパレータ300との間、及び負極シート200とセパレータ300との間に貯留部11が存在する。
【0019】
正極シート100は、集電箔(アルミニウム等)110と、合材120とを含む。合材120は、活物質(コバルト酸リチウム等)や導電剤、バインダを含むスラリーで構成される。
【0020】
負極シート200は、集電箔(銅等)210と、合材220とを備える。負極シート200は、集電箔210の両面に合材220を塗布することによって形成される。合材220は、活物質(グラファイト等)や導電剤、バインダを含むスラリーで構成される。
【0021】
負極シート200は、貯留部11と対向する合材220に1以上の穴221が形成される。
図4に示す例では、合材220の両面に穴221が形成される。なお、合材220の片面のみに穴221を形成してもよい。
【0022】
合材220の表面における穴221の直径D
iは、二次電池1内で析出し得る金属異物の大きさ以上である。例えば、金属異物として銅が析出する場合、穴221の直径D
iは、250~300μmとすることができる。なお、
図4に示す例では、穴221は先細形状であるが、他の例では、穴221は円筒形であってもよい。この場合、穴221の底部の直径は、直径D
iと同じとし得る。
【0023】
穴221の深さDeは、負極シート200の片面の合材220の厚み以下である。従って、穴221の深さDeは、負極シート200の片面の合材220の厚みに応じて任意の大きさを採用することができる。
【0024】
次に、二次電池1の製造方法について説明する。二次電池1の製造方法は、負極シート200の集電箔210の両面に合材220を塗布する第1の工程と、貯留部11と対向する負極シート200の合材220に1以上の穴221を形成する第2の工程とを含む。
【0025】
図5は、本発明の一実施形態に係る第2の工程を説明するための図である。
図5には、第1の工程によって両面に合材220が塗布された負極シート200の一部が示されている。
図5に示すように、負極シート200には、貯留部11と対向する複数の対向部230が存在する。第2の工程では、これらの対向部230に1以上の穴221を形成する。
【0026】
図6は、他の実施形態に係る第2の工程を説明するための図である。他の実施形態では、負極シート200の製造性を考慮して、対向部230のみならず、貯留部11と対向しない非対向部にも1以上の穴221を形成してもよい。この場合、非対向部に形成される穴の深さは、対向部230に形成される穴の深さよりも小さくすることができる。
【0027】
上述した実施形態では、二次電池1は、電解液が貯留する貯留部11を含む。負極シート200は、その両面に合材220を備える。貯留部11と対向する負極シート200の合材220には、1以上の穴221が形成される。この構成を採用することにより、
図4に示すように、正極シート100の合材120の表面と負極シート200の穴221の底部との距離L1が、正極シート100の合材120の表面と負極シート200の合材220の表面との距離L2よりも大きくなる。そのため、穴221に金属異物が析出した場合でも、合材220の表面に金属異物が析出した場合と比べて、金属異物の析出による短絡を抑制することができる。
【0028】
また、二次電池1は、積層方向から二次電池1を加圧する加圧部材が隣接して配置される。加圧部材は、積層方向に突出する少なくとも1つの突出部20を備える。貯留部11は、加圧部材の突出部20と対向しない位置に形成される。貯留部11には、リチウムイオン等のインカレータが多く存在するため、ハイレート特性が良化する。一方、貯留部11には、溶解した金属イオンも多く存在するため、金属異物が析出するリスクが高くなる。上述した実施形態では、このような貯留部11と対向する負極シート200の合材220に1以上の穴221を形成することにより、ハイレート特性の良化を実現すると共に、金属異物の析出による短絡を抑制することができる。
【0029】
さらに、少なくとも負極シート200の合材220の表面における穴221の直径Diは、二次電池1内で析出し得る金属異物の大きさ以上である。これにより、金属異物が穴221の内部で析出する可能性を高めることができ、金属異物の析出に起因する短絡をさらに抑制することができる。
【0030】
さらに、穴221の深さDeは、負極シート200の片面の合材220の厚み以下である。特に、穴221の深さDeは、負極シート200の片面の合材220の厚みと同じであることが好ましい。これにより、穴221に金属異物が析出した場合でも、析出した金属異物が正極シート100への到達が抑制可能となる。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 二次電池
2 スペーサ
20 突出部
21 領域
10 電極体
11 貯留部
100 正極シート
110 集電箔
120 合材
200 負極シート
210 集電箔
220 合材
221 穴
230 対向部
300 セパレータ