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特開2022-189240放射線撮影システム及び放射線撮影プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189240
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】放射線撮影システム及び放射線撮影プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 350A
A61B6/00 320R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097723
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸田 裕一
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA03
4C093AA26
4C093CA16
4C093CA33
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093EB28
4C093EE01
4C093FA05
4C093FA13
4C093FA15
4C093FA18
4C093FA43
4C093FA44
4C093FA52
4C093FA53
4C093FA54
4C093FA59
4C093FB09
4C093FD03
4C093FF03
4C093FH03
4C093FH07
(57)【要約】
【課題】複数のフレーム画像を有する放射線画像を撮影したときの放射線量の算出を簡便な形に適正化する。
【解決手段】放射線撮影システム(100)は、複数のフレーム画像を有する放射線画像に基づき当該放射線画像の露光指標代表値を算出する露光指標算出手段(31,S4)と、撮影モードごとに異なる露光指標の目標値を設定可能な露光目標設定手段(31,S1)と、を備える。また、複数のフレーム画像を有する放射線画像を取得するための撮影における放射線量を算出する線量算出手段(31,S6)を備え、線量算出手段は、当該撮影時に適用された放射線発生装置から受け取った撮影条件及び被写体までの距離情報のうちの少なくとも一つから算出した線量指標と、当該撮影時に放射線発生装置がフレーム画像の取得のために放射線をパルス状に発生させた回数であるパルス数とに基づいて、撮影した総フレームの累計量相当の放射線量を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフレーム画像を有する放射線画像に基づき当該放射線画像の露光指標代表値を算出する露光指標算出手段と、
撮影モードごとに異なる露光指標の目標値を設定可能な露光目標設定手段と、を備える放射線撮影システム。
【請求項2】
前記露光指標算出手段は、前記露光指標代表値として、前記複数のフレーム画像に含まれる各フレーム画像の露光指標の集合における最大値、最小値、平均値及び中央値の少なくともいずれか1つを算出する請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記放射線画像を取得するための撮影における放射線量を算出する線量算出手段を備え、
前記露光指標算出手段は、1フレーム相当量の前記露光指標代表値を算出し、
前記線量算出手段は、撮影した総フレームの累計量相当の前記放射線量を算出する請求項1又は請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
被写体の領域を認識する画像認識手段を備え、
前記露光指標算出手段は、前記複数のフレーム画像について1フレーム毎に関心領域を変更しつつ各フレーム画像の露光指標を算出し、当該各フレーム画像の露光指標の集合に基づき前記露光指標代表値を算出する請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記露光指標算出手段は、前記複数のフレーム画像について1フレーム毎に関心領域を全面としつつ各フレーム画像の露光指標を算出し、当該各フレーム画像の露光指標の集合に基づき前記露光指標代表値を算出する請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
被写体の領域を認識する画像認識手段を備え、
前記露光指標算出手段は、前記複数のフレーム画像について1フレーム毎に関心領域を前記画像認識手段により認識した被写体の動きに応じた共通の一部領域としつつ各フレーム画像の露光指標を算出し、当該各フレーム画像の露光指標の集合に基づき前記露光指標代表値を算出する請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記露光指標算出手段は、ラグによる影響を除去後のフレーム画像に基づき前記露光指標代表値を算出する請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記露光目標設定手段は、少なくとも静止画撮影モードと動態撮影モードとで異なる露光指標の目標値を設定可能である請求項1から請求項7のうちいずれか一に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記露光指標代表値を、少なくとも撮影日、患者識別情報と関連付けて保存する保存制御手段を備える請求項1から請求項8のうちいずれか一に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
前記露光指標算出手段は、前記露光指標代表値及び前記複数のフレーム画像に含まれる各フレーム画像の露光指標を算出する請求項1から請求項9のうちいずれか一に記載の放射線撮影システム。
【請求項11】
前記複数のフレーム画像の表示を制御する表示制御手段を備え、
前記露光指標算出手段は、前記露光目標設定手段が設定した露光指標の目標値に対する各フレーム画像の露光指標のずれの程度を表す偏差指標を算出し、
前記表示制御手段は、各フレーム画像に対応した前記偏差指標を数値により表示可能であるとともに、前記偏差指標を異なる色によるレベル分けにより表示可能である請求項10に記載の放射線撮影システム。
【請求項12】
複数のフレーム画像を有する放射線画像を取得するための撮影における放射線量を算出する線量算出手段を備え、
前記線量算出手段は、当該撮影時に適用された放射線発生装置から受け取った撮影条件及び被写体までの距離情報のうちの少なくとも一つから算出した線量指標と、当該撮影時に前記放射線発生装置が前記フレーム画像の取得のために放射線をパルス状に発生させた回数であるパルス数とに基づいて、撮影した総フレームの累計量相当の前記放射線量を算出する放射線撮影システム。
【請求項13】
コンピューターを、
複数のフレーム画像を有する放射線画像に基づき当該放射線画像の露光指標代表値を算出する露光指標算出手段と、
撮影モードごとに異なる露光指標の目標値を設定可能な露光目標設定手段として機能させるための放射線撮影プログラム。
【請求項14】
コンピューターを、
複数のフレーム画像を有する放射線画像を取得するための撮影における放射線量を算出する線量算出手段として機能させるための放射線撮影プログラムであって、
前記線量算出手段は、当該撮影時に適用された放射線発生装置から受け取った撮影条件及び被写体までの距離情報のうちの少なくとも一つから算出した線量指標と、当該撮影時に前記放射線発生装置が前記フレーム画像の取得のために放射線をパルス状に発生させた回数であるパルス数とに基づいて、撮影した総フレームの累計量相当の前記放射線量を算出する機能を有する放射線撮影プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム及び放射線撮影プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル式の放射線検出器は、従来のフィルムと異なり、生成した放射線画像に画像処理(例えば階調処理)を自動的に施し、その輝度やコントラストを一定に保つようになっている。このため、ユーザーは、得られた放射線画像から、ユーザーが意図した線量の放射線が放射線検出器に到達したか否かを判断することが困難となっていた。
従来は、放射線検出器への到達線量を評価するための指標(露光指標)を、放射線検出器等のメーカーがそれぞれ独自に提供していたが、近年は、Exposure Index(以下、EI)と呼ばれる統一指標が判断基準として用いられるようになった。
【0003】
ユーザーが意図した線量の放射線が放射線検出器に到達したか否かは、算出されたEIが、撮影条件毎に予め定められたEIの目標値(Target Exposure Index、以下、EIT
)からどの程度外れているか(偏差、Deviation Index:以下、DI)を見て判断される。このため、従来、EITを適切に設定したり必要に応じて改定したりするための技術が提案されている。
例えば特許文献1には、グリッドの有無によって到達線量(EI)が変化することに着目し、グリッド有無に応じて異なるEITを選択する放射線撮影装置について記載されている。
従来、特許文献2に記載にも記載されるように、一の放射線画像に対して一の露光指標が算出される。
特許文献3では、一の合成画像に対して一の露光指標が算出される。
【0004】
また従来、静止画を得るためのX線単純撮影においては、被曝量の適正化のために、線量管理が行われている。具体的には、撮影を行う度に、1撮影で得られた画像データと、その1撮影での放射線量を対応付けて記憶することが従来行われている。
また、複数のフレーム画像を有する動態画像を得るための動態撮影においても、単純撮影と同様に線量管理が行われている。すなわち、動態撮影の1撮影で得られた画像データと、その1撮影での放射線量を対応付けて記憶することが行われている。
また、単純撮影においては、例えば特許文献5に記載されているように、撮影に失敗し写損となった場合には、写損となった画像データとその1撮影での放射線量を対応付けて記憶、管理する技術がある。
特許文献4では、動態撮影の全フレーム画像から間引きした一部のフレーム画像を有する動態画像を生成するが、間引き前の総線量をNDD(Numerical Dose Determination)方法により算出するか又はパルス数に基づいて算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-192129号公報
【特許文献2】特開2020-130796号公報
【特許文献3】特開2018-000792号公報
【特許文献4】特許第6860113号公報
【特許文献5】特開2017-144075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の従来技術にあっては、複数のフレーム画像を有する放射線画像(動態画像又は連続静止画)の撮影においては、放射線量の算出が必ずしも簡便かつ適正ではなかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数のフレーム画像を有する放射線画像を撮影したときの放射線量の算出を簡便な形に適正化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る放射線撮影システムの一態様は、複数のフレーム画像を有する放射線画像に基づき当該放射線画像の露光指標代表値を算出する露光指標算出手段と、撮影モードごとに異なる露光指標の目標値を設定可能な露光目標設定手段と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る放射線撮影システムの他の一態様は、複数のフレーム画像を有する放射線画像を取得するための撮影における放射線量を算出する線量算出手段を備え、前記線量算出手段は、当該撮影時に適用された放射線発生装置から受け取った撮影条件及び被写体までの距離情報のうちの少なくとも一つから算出した線量指標と、当該撮影時に前記放射線発生装置が前記フレーム画像の取得のために放射線をパルス状に発生させた回数であるパルス数とに基づいて、撮影した総フレームの累計量相当の前記放射線量を算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のフレーム画像を有する放射線画像を撮影したときの放射線量の算出を簡便な形に適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムを表すブロック図である。
図2図1の放射線撮影システムが備えるコンソール(画像処理装置)を表すブロック図である。
図3図2のコンソールが実行する撮影時処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態の放射線撮影システムについて、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0013】
初めに、本実施形態に係る放射線撮影システム100の概略構成について説明する。図1は放射線撮影システム100を表すブロック図である。
【0014】
本実施形態の放射線撮影システム100は、図1に示すように、放射線発生装置1と、放射線検出器2と、コンソール3と、サーバー4と、を備えている。
これらは、通信ネットワークNを介して互いに通信可能となっている。
【0015】
なお、放射線撮影システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)、画像解析装置等と接続することが可能となっていてもよい。
【0016】
放射線発生装置1は、図示を省略するが、照射指示スイッチが操作されたことに基づいて、予め設定された放射線照射条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)等)に応じた電圧を印加するジェネレーターや、ジェネレーターから電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線(例えばX線)を生成する放射線源等を備えている。
そして、放射線発生装置1は、撮影する放射線画像(静止画・動画)に応じた態様で放射線(例えばX線)を発生させるようになっている。
【0017】
なお、放射線発生装置1は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、コンソール3等と共に回診車と呼ばれる移動可能に構成されたものとなっていてもよい。
【0018】
放射線検出器2は、図示を省略するが、放射線を受けることで線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子や電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子を備えた画素が二次元状(マトリクス状)に配列された基板や、各スイッチ素子のオン/オフを切り替える走査回路、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す読み出し回路、読み出し回路が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成する制御部、生成した放射線画像のデータ等を外部へ出力する出力部等を備えている。
そして、放射線検出器2は、放射線発生装置1から放射線が照射されるタイミングと同期して、照射された放射線に応じた放射線画像を生成する。
【0019】
なお、放射線検出器2は、シンチレーター等を内蔵し、照射された放射線をシンチレーターで可視光等の他の波長の光に変換し、変換した光に応じた電荷を発生させるもの(いわゆる間接型)であってもよいし、シンチレーター等を介さずに放射線から直接電荷を発生させるもの(いわゆる直接型)であってもよい。
また、放射線検出器2は、撮影台と一体化された専用機型のものでも、可搬型(カセッテ型)のものであってもよい。
【0020】
コンソール3は、画像処理装置,電子機器をなすもので、PCや専用の装置等で構成されている。
また、コンソール3は、他のシステム(HISやRIS等)から取得した撮影オーダー情報やユーザーによる操作に基づいて、各種撮影条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)、フレームレート、被写体の体格、グリッドの有無等)を撮影装置等に設定することが可能となっている。
【0021】
サーバー4は、PCや専用の装置、クラウド上の仮想サーバー等で構成されている。
また、サーバー4は、データベース41を有している。
なお、本実施形態においては、コンソール3等から独立したサーバー4にデータベース41が設けられていることとしたが、データベース41は、コンソール3内に設けられていてもよいし、放射線撮影システム100が備える他の装置内に設けられていてもよい。
また、放射線撮影システム100にPACS等の他のシステムが接続される場合には、他のシステム内に設けられたものであってもよい。
【0022】
このように構成された本実施形態に係る放射線撮影システム100は、放射線発生装置1の放射線源と放射線検出器2とを間を空けて対向配置し、それらの間に配置された被写体へ放射線源から放射線を照射することにより、被写体の放射線画像を撮影することが可能である。
放射線画像が静止画である場合には、1回の撮影操作(照射指示スイッチの押下)につき放射線の照射及び放射線画像の生成を1回だけ行い、放射線画像が動画である場合には、1回の撮影操作につきパルス状の放射線の照射及びフレーム画像の生成を短時間に複数回(例えば1秒間に15回)繰り返す。
【0023】
次に、上記放射線撮影システム100が備えるコンソール3の具体的構成について説明する。図2はコンソール3を表すブロック図、図3はコンソール3が実行する撮影時処理を表すフローチャートである。
【0024】
本実施形態に係るコンソール3は、図2に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、表示部34と、操作部35と、を備えている。
各部31~35は、電気的に接続されている。
【0025】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成されている。
そして、制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、コンソール3各部の動作を集中制御するようになっている。
【0026】
通信部32は、通信モジュール等で構成されている。
そして、通信部32は、通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して接続された他の装置等との間で各
種信号や各種データを送受信するようになっている。
【0027】
記憶部33は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
また、本実施形態における記憶部33は、露光指標の目標値を、撮影部位、撮影条件(例えば、被写体の体格(普通、太っている、痩せている等)や、グリッドの有無、散乱線補正処理の有無等のうちの少なくともいずれか)毎に複数格納している。
なお、記憶部33は、放射線画像を記憶することが可能となっていてもよい。
【0028】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の画像を表示する表示装置、発光するランプ(LED等)、音声を出力するスピーカー、振動する振動子等により構成されている。
【0029】
操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示装置の表面に積層されたタッチパネル等によって構成されている。
そして、操作部35は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部31へ出力するようになっている。
【0030】
このように構成されたコンソール3の制御部31は、例えば電源が投入されたこと、所
定の開始操作がなされたこと等を契機として、図3に示すような撮影時処理を実行する機能を有している。
【0031】
本実施形態における撮影時処理では、例えば図3に示すように、まず、露光指標の目標値を設定する(ステップS1)。
この「露光指標」は、放射線検出器2への到達線量を示すExposure Index(EI)に相当するが、特許文献2に記載される従来用いられてきたExposure Index(EI)とは異なるノイズ(S/N(SN比)や散乱線含有率)に関連した露光指標であってもよい。
また、「露光指標の目標値」は、撮影後に算出した露光指標が到達していることが望ましいとされる数値である。
制御部31は露光目標設定手段として機能し、撮影モードごとに異なる露光指標の目標値を設定可能である。撮影モードとしては、静止画撮影モードと、動態撮影モードとがある。制御部31は、少なくとも静止画撮影モードと動態撮影モードとで異なる露光指標の目標値を設定可能である。
また、撮影後に実施する画像解析処理の種類により放射線検出器2への必要な到達線量が異なることが有り得る。例えば、画像解析では、関節の状態、呼吸時の横隔膜の動き量、血流の状態等を明晰にする。このとき、同じ胸部の撮影であっても横隔膜の動き量を解析するために必要な到達線量と血流の状態を解析するために必要な到達線量は異なる。具体的には動き量をみるために必要な到達線量は高いS/N比は求められない場合があるが、血流情報のように微小な信号を解析する場合には、高いS/N比が求められる。このように同じ部位の撮影であっても診断目的に応じて放射線検出器2への必要な到達線量の目標値が異なる。これらの診断目的に応じた撮影条件の違いも撮影モードに含めることとする。制御部31はそれらの撮影モードごとに異なる露光指標の目標値を設定可能である。制御部31は撮影モードを設定するとともに、設定した撮影モードごとに望ましい露光指標の目標値を設定する。
【0032】
目標値が設定された後、当該目標値を適用した放射線発生装置1及び放射線検出器2による放射線画像の撮影が行われる。撮影は、静止画撮影モードが設定されている場合は静止画撮影が行われ、動態撮影モードが設定されている場合は動態撮影が行われる。その間、コンソール3は待機することとなる。
なお、このステップS1の処理を撮影時処理とは別の独立した処理として実行し、所定の開始操作がなされたこと、放射線画像の画像データを取得したこと等を契機として後述するステップS2又はステップS3の処理を実行するようにしてもよい。
【0033】
撮影が行われた後は、放射線画像の画像データを取得する(ステップS2)。
この「取得」には、他の装置(放射線検出器2等)から受信する場合や、記憶媒体から読み込む場合等が含まれる。また、コンソール3の記憶部33が画像データを記憶可能に構成されている場合は、他の装置から受信又は取得した後に記憶部33に記憶しておいたものを読み込む場合も含まれる。
【0034】
画像データを取得した後は、制御部31は露光指標算出手段として機能し、取得した画像データに基づいて、露光指標、露光指標代表値を算出する指標算出処理を実行する(ステップS4)
制御部31は指標算出処理(ステップS4)を実行する前に、ラグ除去処理(ステップS3)を実行する。ラグは、動態撮影において前フレーム撮影時の残影に相当する。制御部31はラグ除去処理(ステップS3)では、各フレーム画像の信号値を、ラグによる影響を除去した信号値に変換処理する。
制御部31は、ラグ除去処理(ステップS3)を実行することで、ステップS4においてラグによる影響を除去後のフレーム画像に基づき露光指標、露光指標代表値を算出する。なお、ラグ除去処理は制御部31が自ら行わず、ラグ除去処理後に記録された画像データを制御部31が読み出すことで、ラグによる影響を除去後のフレーム画像に基づき露光指標、露光指標代表値を算出するようにしてもよい。ラグによる影響が露光指標の許容誤差範囲である場合においては、処理時間の短縮のため、ラグ除去処理(ステップS3)を省略してもよい。
【0035】
指標算出処理(ステップS4)では、まず、制御部31は放射線画像に関心領域(Region of Interest:ROI)を設定する。関心領域は、放射線画像の全面又は一部に設定する。
取得した画像データに複数のフレーム画像が含まれている場合、制御部31は、当該複数のフレーム画像に含まれる各フレーム画像の露光指標を算出するとともに、当該複数のフレーム画像を有する放射線画像に基づき当該放射線画像の露光指標代表値を算出する。すなわち、制御部31は、各フレーム画像の露光指標の集合に基づき露光指標代表値を算出する。制御部31は、露光指標代表値として、複数のフレーム画像に含まれる各フレーム画像の露光指標の集合における最大値、最小値、平均値及び中央値の少なくともいずれか1つを算出する。外れ値を除いた最大値、最小値、平均値及び中央値とすることや他の
統計的方法で決定することも考えられる。なお、取得した画像データに単一のフレーム画像のみが含まれている場合、制御部31は、当該単一のフレーム画像に基づき露光指標を算出する。
【0036】
なお、露光指標を算出する対象となるフレームは、特定のフレームに絞っても良い。例えば、放射線の出力始めは不安定なことが考えられることから、途中フレーム以降を計算の対象とすることや、被写体が外れてしまっているフレームを除くことなどが考えられる。
【0037】
また、複数のフレーム画像の中から代表として選出したフレーム画像の露光指標を、露光指標代表値としてもよい。
制御部31は被写体の領域を認識する画像認識手段としても機能する。
例えば、被写体である患者の動態撮影を行う場合、最も注目する患者姿勢における適正な露光量を露光指標の目標値とする場合がある。この場合において、上記目標値を設定した最も注目する患者姿勢に相当するフレーム画像を撮影後に抽出して、当該フレーム画像の露光指標を一連の動態撮影画像の露光指標代表値としてもよい。例えば、腰椎側面の動態撮影において腰を曲げた状態から直立姿勢まで動いた場合、最も直立姿勢に近い状態の画像が最も注目する患者姿勢であれば、その患者姿勢が撮影されたフレーム画像を画像認識により抽出し、当該フレーム画像の露光指標を一連の動態撮影画像の露光指標代表値とする。
【0038】
制御部31は、複数のフレーム画像について1フレーム毎に関心領域を変更しつつ各フレーム画像の露光指標を算出し、当該各フレーム画像の露光指標の集合に基づき露光指標代表値を算出するようにしてもよい。例えば、制御部31が画像認識結果に基づき被写体である患者の動きに追従するように1フレーム毎に関心領域を変更設定してもよい。
【0039】
また、制御部31は、複数のフレーム画像について1フレーム毎に関心領域を全面としつつ各フレーム画像の露光指標を算出し、当該各フレーム画像の露光指標の集合に基づき露光指標代表値を算出するようにしてもよい。この場合、画像認識処理が伴わず演算処理負担を軽減することができる。
【0040】
また、制御部31は、複数のフレーム画像について1フレーム毎に関心領域を画像認識手段により認識した被写体の動きに応じた共通の一部領域としつつ各フレーム画像の露光指標を算出し、当該各フレーム画像の露光指標の集合に基づき露光指標代表値を算出するようにしてもよい。例えば、関節の動きを検査するための動態撮影において、関節が撮影領域の一部から出ない場合は、当該一部を共通の関心領域として設定する。
【0041】
制御部31は、複数のフレーム画像の表示を制御する表示制御手段としても機能する。
制御部31は ステップS1で設定された露光指標の目標値と、ステップS4で算出した各フレーム画像の露光指標とに基づき、露光指標の目標値に対する各フレーム画像の露光指標のずれの程度を表す偏差指標を算出する(ステップS5)。
偏差指標の算出には、例えば従来のDI(Deviation Index)の計算と同様の方法で算出することができる。具体的には、下記式(1)に、算出した露光指標及び設定された目標値を代入して算出する。
偏差指標=10Log10(露光指標/露光指標の目標値)・・(1)
制御部31は表示制御手段として機能し、各フレーム画像に対応した偏差指標を数値により表示部34に表示可能であるとともに、偏差指標を異なる色によるレベル分けにより表示部34に表示可能である。具体的な表示形態としては、複数のフレーム画像を表示部34に順次に又は同時に表示する際に、フレーム画像内の一部又はフレーム画像外の一部に偏差指標を数値により表示する。色による表示形態としては、そのフレーム画像全体を色付けする、そのフレーム画像の枠を色付けする、そのフレーム画像に対応した偏差指標の数値を色付けする、同数値の背景を色付けするなどの表示形態を挙げることができる。レベル分けと色との対応については、例えば、偏差小を緑(又は無色)、偏差中を黄、偏差大を赤とする例を挙げることができるが他の色の組み合わせであってもよい。
制御部31は操作部35からの設定指示に基づき偏差指標の色分け表示を伴った動態撮影時のプレビュー画像表示を実行する。例えば、300フレーム/20秒のフレームレートで動態撮影が行われる。このような動態撮影において、制御部31は偏差指標の色分け表示を伴ったプレビュー画像表示を実行する。ユーザーは、偏差指標が過大であることが色表示により瞬時に認識でき、無駄な撮影にならないように途中で撮影を停止する操作を行うこともできるようになる。
プレビュー画像に色付けをするための露光指標の演算に時間がかかる場合、プレビュー画像表示のためには演算負荷の低い露光指標の算出方法、例えば関心領域を全面又は予め決められた一部に固定して画像認識処理を実行しなくても露光指標の演算が可能な方法を適用してもよい。
【0042】
また、制御部31は、複数のフレーム画像を有する放射線画像を取得するための撮影における放射線量を算出する線量算出手段としても機能する。制御部31は線量算出手段として機能し、撮影した総フレームの累計量相当の放射線量(以下「累計線量」という。)を算出する累計線量算出処理(ステップS6)を実行する。
上述の露光指標代表値は1フレーム相当量である。すなわち、制御部31は露光指標算出手段として機能し、1フレーム相当量の露光指標代表値を算出する。
これに対し、制御部31は線量算出手段として機能するときは、累計線量を算出する。
線量は、当該撮影での合計量を管理することが重要となるが、露光指標は放射線検出器2への合計の到達線量としてしまうと動画撮影の枚数に影響を受けてしまうため、1フレーム相当量に置き換えて管理することがユーザーの使い勝手もよいため、このようにしている。また、静止画との露光指標の比較も容易にできることもメリットとして挙げられる。
露光指標が放射線検出器2への到達線量を示すのに対し、累計線量算出処理(ステップS6)においてベースとなる線量指標は、DAP値、入射線量、入射表面線量などが適用される。DAP値は面積線量積(Dose Area Product)といい、放射線源から出てくる放射線量に相当する。入射線量(Entrance Dose)は患者の体(被写体)が無いときの空気の線量に相当する。入射表面線量(Entrance Surface Dose)は患者の体(被写体)の表面からの散乱線を加味した空気の線量に相当する。
【0043】
累計線量算出処理(ステップS6)における累計線量の算出方法は次の通りである。
制御部31は線量算出手段として機能し、当該撮影時に適用された放射線発生装置1から受け取った撮影条件(管電流・管電圧等)及び被写体までの距離情報のうちの少なくとも一つから算出した線量指標と、当該撮影時に放射線発生装置1がフレーム画像の取得のために放射線をパルス状に発生させた回数であるパルス数とに基づいて、累計線量を算出する。
ここで線量指標としては、上記のDAP値、入射線量又は入射表面線量が採用される。例えば、NDD(Numerical Dose Determination)方法による入射表面線量が採用される。
線量指標の算出は撮影条件又は/及び被写体との距離から算出可能であり、撮影前に計算することが可能である。被写体との距離を用いる場合は、放射線源から被写体までの距離を測定する装置(レーザー測距装置等)を放射線撮影システム100に装備しておくとより精度の高い線量指標の算出ができる。
なお、制御部31は、撮影前に線量指標を計算し、コンソール3の表示部34上に線量指標の予測値を表示することもできる。例えば、DRLsや施設設定の基準値と大きな乖離がある場合、同一患者の場合で過去撮影と大きな乖離がある場合は、コンソール3の表示部34の画面又は音により報知することで撮影前に撮影条件の誤りなどに気付くことができるようになる。
制御部31は、上記線量指標を、撮影実行したパルス数分だけ累計して累計線量を算出する。このとき、線量指標の計算に用いるパルス数は、被写体に実際に当たった場合のみを計算に用いることが望ましいが、撮影時のパルス数に対して、実際に被写体にあたっていない部分が少なく、線量指標の計算に対して許容誤差範囲とできる場合には、簡略化して撮影条件で設定したパルス数をそのまま計算に用いてもよい。設定値のパルス数と実際に被写体に照射されたパルス数(放射線)の差分要因としては、被写体が動いたためにフレームアウトした場合が考えられる。
【0044】
次に、制御部31は保存制御手段として機能し、以上の放射線画像、露光指標、露光指標代表値、累計線量を、少なくとも撮影日、患者識別情報と関連付けてファイリングしデータベース41に保存する(ステップS7)。
なお、制御部31は、動態撮影により取得される動画を動画ファイルとして生成、保存する場合は、当該動画ファイルに動画撮影時の累計線量を関連付けて保存する。動画から静止画を画像処理により生成して静止画ファイルを出力し、元動画のファイルを出力しない場合は、静止画ファイルに動画撮影時の累計線量を関連付けて保存する。これは静止画ファイルであっても被写体に照射した線量は動態撮影で撮影した線量であるためである。元動画と静止画(画像処理により生成したもの)の双方のファイルを出力する場合は、動画ファイルと静止画ファイルのいずれか一方に動画撮影時の累計線量を関連付けて保存する。これは患者に照射した線量情報が重複して出力されてしまい、2倍の線量を照射したようにカウントされることを防ぐためである。
また、制御部31は、撮影したがファイリングされなかったフレーム画像の撮影時の曝射線量も累計線量に合算する。例えば、被写体位置の確認のためのプレ曝射は、動画ファイルに入らないが、プレ曝射分の線量を累計線量に合算する。動態撮影後に削除したフレーム画像分の線量も累計線量に合算する。
【0045】
以上の実施形態によれば、複数のフレーム画像を有する放射線画像に基づき当該放射線画像の露光指標代表値を算出する露光指標算出手段と、撮影モードごとに異なる露光指標の目標値を設定可能な露光目標設定手段と、を備える。したがって、撮影された放射線画像を参照するユーザーは、一連の複数のフレーム画像の露光が適正か否かを露光指標代表値によって短時間に判断することができる。加えて撮影モードごとに異なる露光指標の目標値が設定されるので、撮影モードごとに適正な露光指標の目標値に照らして露光が適正か否かを露光指標代表値によって短時間に判断することができる。
また、以上の実施形態によれば、複数のフレーム画像を有する放射線画像を取得するための撮影における放射線量を算出する線量算出手段を備え、線量算出手段は、当該撮影時に適用された放射線発生装置1から受け取った撮影条件及び被写体までの距離情報のうちの少なくとも一つから算出した線量指標と、当該撮影時に放射線発生装置1がフレーム画像の取得のために放射線をパルス状に発生させた回数であるパルス数とに基づいて、撮影した総フレームの累計量相当の放射線量を算出する。かかる算出方法によると放射線累計量の算出が簡易化する。
したがって以上の実施形態によれば、複数のフレーム画像を有する放射線画像を撮影したときの放射線量の算出を簡便な形に適正化することができる。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、上記撮影時処理を実行する機能をコンソール3が有することとしたが、この撮影時処理を実行する機能又はその一部を実行する機能を、放射線撮影システム100が備える他の装置又は放射線撮影システム100に接続される他のシステムに備えるようにしてもよい。
また、上記露光指標の算出技術は、二次元画像に限らず三次元画像にも適用することが可能である。
【0048】
また、以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体として半導体メモリーやハードディスクを使用した例を開示したが、この例に限定されない。
その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリー、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、通信回線を介して本発明に係るプログラムのデータを提供する媒体として、キャ
リアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0049】
100 放射線撮影システム
1 放射線発生装置
2 放射線検出器
3 コンソール(画像処理装置)
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 操作部
4 サーバー
41 データベース
N 通信ネットワーク
図1
図2
図3