(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189243
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及びブラックレジスト膜
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20221215BHJP
C09C 1/48 20060101ALI20221215BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/48
C09C3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097726
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】杉江 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓也
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA02
4J037CA12
4J037CC16
4J037CC23
4J037DD23
4J037DD24
4J037EE02
4J037FF15
(57)【要約】
【課題】細線密着性に優れるレジスト組成物が得られるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供すること。
【解決手段】カーボンブラック、塩基性基含有顔料分散剤、酸性基含有顔料分散助剤、エポキシ樹脂、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を含有し、前記カーボンブラックは、無機アルミニウム塩で処理された表面処理カーボンブラックであるブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック、塩基性基含有顔料分散剤、酸性基含有顔料分散助剤、エポキシ樹脂、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を含有し、
前記カーボンブラックは、無機アルミニウム塩で処理された表面処理カーボンブラックであることを特徴とするブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項2】
前記無機アルミニウム塩は、塩化アルミニウム及び硫酸アルミニウムの中からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックは、酸性カーボンブラックであることを特徴とする請求項1または2に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂は、芳香環を有する多官能エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性樹脂は、ビフェニル骨格を有するアルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項6】
前記酸性基含有顔料分散助剤は、フタロシアニン骨格を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含有することを特徴とするブラックマトリックス用レジスト組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のブラックマトリックス用レジスト組成物を用いて得られることを特徴とするブラックレジスト膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及びブラックレジスト膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンブラック、塩基性基含有顔料分散剤、酸性基含有顔料分散助剤、エポキシ樹脂、多官能チオール化合物、及び溶剤を含有するブラックマトリックス用顔料分散組成物を用いたレジスト組成物が知られている(特許文献1)。また、ブラックマトリックス用カーボンブラックとして、その表面が金属塩等を介して染料を被覆(固定)したものを用いることにより、ブラックマトリックスの隠蔽性を向上できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-38289号公報
【特許文献2】国際公開第2013/129554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ブラックマトリックス用顔料分散組成物を用いたレジスト組成物は、細線密着性に優れることが開示されているが、当該組成物は多官能チオール化合物を必須成分とするため、臭気等の問題があった。よって、このような組成物とは異なる手法にて、細線密着性に優れるレジスト組成物が得られるブラックマトリックス用顔料分散組成物が求められていた。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、細線密着性に優れるレジスト組成物が得られるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、カーボンブラック、塩基性基含有顔料分散剤、酸性基含有顔料分散助剤、エポキシ樹脂、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を含有し、前記カーボンブラックは、無機アルミニウム塩で処理された表面処理カーボンブラックであるブラックマトリックス用顔料分散組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含有するブラックマトリックス用レジスト組成物に関する。
【0008】
さらに、本発明は、ブラックマトリックス用レジスト組成物を用いて得られるブラックレジスト膜に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、カーボンブラック、塩基性基含有顔料分散剤、酸性基含有顔料分散助剤、エポキシ樹脂、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を含有し、前記カーボンブラックは、無機アルミニウム塩で処理された表面処理カーボンブラックである。とくに、前記表面処理カーボンブラックは、未処理カーボンブラックと比較して適度に親水性が抑えられ、アルカリ現像および水洗による形成したパターン部の溶出・剥離を抑えることができるため、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、細線密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、カーボンブラック、塩基性基含有顔料分散剤、酸性基含有顔料分散助剤、エポキシ樹脂、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を含有し、前記カーボンブラックは、無機アルミニウム塩で処理された表面処理カーボンブラックである。
【0011】
<表面処理カーボンブラック>
前記表面処理カーボンブラックは、カーボンブラックの表面が、無機アルミニウム塩で処理されたものである。
【0012】
前記カーボンブラックとしては、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に使用される公知のカーボンブラックを使用でき、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。前記カーボンブラックの具体例としては、三菱化学社製のMA7、MA8、MA11、MA14、#1000、#2350等、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のSpecialBlack350、SpecialBlack250、SpecialBlack550、NEROX2500、NEROX3500、NEROX305等、キャボット社製のMOGULL、REGAL400R、TPK1101R、TPK1104R、TPK1227R等、コロンビヤンカーボン社製のRAVEN1200、RAVEN1250、RAVEN1255、RAVEN1190U、RAVEN1170、RAVEN1035、RAVEN1080U、RAVEN1060U、RAVEN1100U等が挙げられる。前記カーボンブラックは、pHが5以下であり、カルボキシル基等の酸性基を有する酸性カーボンブラックが好ましく、また、粒子径が20~60nmであることが好ましい。前記酸性カーボンブラックとしては、例えば、NEROX2500、NEROX3500、TPK1101R、TPK1104R、TPK1227R等が挙げられる。なお、上記粒子径は、顕微鏡観察によって測定または算出した平均一次粒子径を意味するが、市販品の場合、カタログ値を参考とする。前記カーボンブラックは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
前記無機アルミニウム塩は、公知の無機アルミニウム塩であれば使用でき、例えば、硫酸アルミニウム、(ポリ)塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等が挙げられる。
【0014】
前記表面処理カーボンブラックにおいて、前記無機アルミニウムの使用量は、前記カーボンブラック100質量部に対して、細線密着性の観点から、0.5質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましく、そして、黒色度の観点から、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましい。
【0015】
前記表面処理カーボンブラックは、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物中、ブラックマトリックス膜を形成した場合の遮光性が高める観点から、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、そして、顔料分散の観点から、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
前記表面処理カーボンブラックにおける表面処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ミキサーやブレンダー中で、カーボンブラックを攪拌(流動)しながら、1)前記無機アルミニウム塩または前記無機アルミニウム塩を含む水溶液を添加して攪拌処理する方法、2)前記無機アルミニウム塩を含む水溶液を、スプレー等の噴霧機を用いて噴霧処理する方法、また、3)カーボンブラックの造粒工程に使用する水に前記無機アルミニウム塩を添加して処理する方法等が挙げられる。
【0017】
<塩基性基含有顔料分散剤>
前記塩基性基含有顔料分散剤は、前記カーボンブラックを分散できればよく、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に使用される公知の塩基性基含有顔料分散剤を使用でき、例えば、アニオン性界面活性剤、塩基性基含有ポリエステル系顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系顔料分散剤、塩基性基含有ウレタン系顔料分散剤、塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤等が挙げられる。前記塩基性基としては、1級、2級または3級アミノ基が、特に分散性に優れる観点から好ましい。前記塩基性基含有顔料分散剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
前記塩基性基含有顔料分散剤は、良好な顔料分散性が得られる点から、高分子型の塩基性基含有顔料分散剤が好ましい。前記高分子型の塩基性基含有顔料分散剤としては、例えば、塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、塩基性基含有ポリエステル系高分子顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系高分子顔料分散剤等が挙げられる。これらの中でも、塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系高分子顔料分散剤が好ましい。前記塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤は、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、およびポリカーボネート鎖よりなる群から選択される少なくとも1種を有する塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤がより好ましい。
【0019】
前記塩基性基含有顔料分散剤は、前記表面処理カーボンブラック100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましい。
【0020】
<酸性基含有顔料分散助剤>
前記酸性基含有顔料分散助剤は、顔料の分散性をより改善する目的で使用され、例えば、ラクタムブラック、ペリレン系化合物、ジケトピロロピロール系化合物、アゾナフトール系化合物、ジオキサジン系化合物、キナクリドン系化合物、フタロシアニン系化合物及びその金属錯体、アントラキノン、ナフタレン、アクリドン、またはトリアジン等の色素に、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性基が導入された化合物(酸性基を有する色素誘導体)や、それらを有機アミン等で中和した化合物が挙げられる。前記酸性基を有する色素誘導体としては、カーボンブラックの分散性が良好である観点から、スルホン酸基を有するフタロシアニン系(フタロシアニン骨格を有する)色素誘導体が好ましい。前記酸性基含有顔料分散助剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
前記酸性基含有顔料分散助剤は、前記表面処理カーボンブラック100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0022】
<エポキシ樹脂>
前記エポキシ樹脂は、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ樹脂である。前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノール化合物(フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS等)とアルデヒド化合物(ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド等)との縮合物のグリシジルエーテル化物、二官能フェノールのグリシジルエーテル化物、二官能アルコールのグリシジルエーテル化物、三官能以上のポリフェノールのグリシジルエーテル化物、及びこれらの水素添加物又はハロゲン化物等が挙げられる。前記エポキシ樹脂は、脂環又は芳香環を有する多官能エポキシ樹脂であってもよく、また、脂環であるジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ樹脂であってもよく、なかでも、細線密着性を向上させる観点から、芳香環を有する多官能エポキシ樹脂が好ましい。前記エポキシ樹脂の具体例としては、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト80MF、エポライト4000、エポライト3002(以上、共栄社化学社製)、デナコールEX-212L、デナコールEX-214L、デナコールEX-216L、デナコールEX-850L、デナコールEX-321L(以上、ナガセケムテックス社製)、GAN、GOT、NC3000、NC6000、EPPN502H(以上、日本化薬社製)、エピコート828、エピコート1002、エピコート1750、エピコート1007、YX8100-BH30、E1256、E4250、E4275(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロンEXA-9583、エピクロンN695、HP7200、HP4032(以上、大日本インキ化学工業社製)、VG3101(三井化学社製)、テピックS、テピックG、テピックP(以上、日産化学工業社製)、ポトートYH-434L(東都化成社製)等が挙げられる。なお、前記エポキシ樹脂は、インダン構造やビフェニル構造を有しないことが、反応性等の点において好ましい。
【0023】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、下記式1~7で示される芳香環を有する多官能エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
前記エポキシ樹脂は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物または後述するブラックマトリックス用レジスト組成物に含まれるカーボンブラック100質量部に対して、ブラックマトリックスとしての抵抗値の観点から、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、そして、顔料濃度による黒色度の観点から、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。
【0032】
<アルカリ可溶性樹脂>
前記アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液に溶解できるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(-P(=O)(OH2))等のアニオン性基の1種または2種以上を含有する樹脂が好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像性の観点から、10mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0034】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、レジスト膜の形成性の観点から、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、アルカリ現像液への溶解性を高める観点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。
【0035】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μm、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0036】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂、アルカリ可溶性ポリイミド前駆体、アルカリ可溶性ポリベンゾオキサゾール樹脂、アルカリ可溶性ポリベンゾオキサゾール前駆体、アルカリ可溶性カルド樹脂、アルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、アルカリ可溶性ポリシロキサン樹脂、アルカリ可溶性ノボラック樹脂、アルカリ可溶性(メタ)アクリル樹脂、アルカリ可溶性ポリウレタン樹脂、アルカリ可溶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、塗膜の耐熱性の観点から、アルカリ可溶性カルド樹脂、アルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0037】
前記アルカリ可溶性カルド樹脂とは、カルド骨格を有するアルカリ可溶性樹脂のことをいい、カルド骨格とは、環状構造を構成する環炭素原子である4級炭素原子に、2つの芳香族基が単結合で繋がった骨格をいう。アルカリ可溶性カルド樹脂の具体例としては、例えば、ADEKA ARKLS WR-301(ADEKA製)、オグゾールCR-TR1、CR-TR2、CR-TR3、CR-TR4、CR-TR5、CR-TR6(以上、大阪ガスケミカル製)が挙げられる。
【0038】
前記アルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とは、エチレン性不飽和モノカルボン酸が有するカルボキシル基を、エポキシ樹脂が有するエポキシ基に開環付加させることによりエチレン性不飽和基を導入し、さらにエポキシ基の開環により生じた水酸基の少なくとも一部に、多塩基性カルボン酸(またはその無水物)を付加させることによりカルボキシル基を導入して得られる酸変性エポキシ樹脂のうち、上記カルド骨格を有さず、上記アルカリ可溶性樹脂に相当する樹脂のことをいう。前記アルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂において、母体原料となるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。エポキシ樹脂を変性するために用いるエチレン性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく挙げられる。多塩基性カルボン酸(またはその無水物)としては、例えば、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物が好ましく挙げられる。これらの中でも、細線密着性を向上させる観点から、ビフェニル骨格を有するアルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。前記アルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、例えば、ZAR-1494H、ZAR-2001H、ZFR-1491H、ZCR-1797H、ZCR-1569H、ZCR-1798H(以上、日本化薬製)が挙げられる。また、好ましい具体例としては、下記構造式のいずれかで表される部分構造を有するアルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。
【0039】
【0040】
前記アルカリ可溶性樹脂は、前記表面処理カーボンブラック100質量部に対して、1~70質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。
【0041】
<溶剤>
前記溶剤は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に使用される公知の溶剤を使用できる。前記溶剤は、顔料を安定的に分散させ、前記塩基性基含有顔料分散剤や前記アルカリ可溶性樹脂を十分に溶解させることができる観点から、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、含窒素系溶剤等が好ましい。前記溶剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
前記エステル系溶剤としては、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エステル、蟻酸n-アミル等が挙げられる。前記エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。前記エーテルエステル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。前記ケトン系溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等が挙げられる。前記芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルナフタレン等が挙げられる。前記含窒素系溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0043】
前記溶剤の割合は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物中、工程性の観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、そして、分散安定性の観点から、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物には、さらに、必要に応じて、レベリング剤、前記エポキシ樹脂及び前記アルカリ可溶性樹脂以外の樹脂、酸化防止剤、消泡剤等の添加剤を添加してもよい。ただし、臭気性の観点から、チオール化合物(例えば、分子量が1000以下のチオール化合物)は含まないほうが好ましい。
【0045】
前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物中、前記カーボンブラック、前記塩基性基含有顔料分散剤、前記酸性基含有顔料分散助剤、前記エポキシ樹脂、前記アルカリ可溶性樹脂、及び前記溶剤の合計の割合は、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0046】
前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、上記の各成分をロールミル、ニーダー、高速攪拌機、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散装置等を用いて、分散処理して調製すればよい。
【0047】
<ブラックマトリックス用レジスト組成物>
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、および光重合開始剤を含む。なお、前記表面処理カーボンブラックの割合は、前記ブラックマトリックス用レジスト組成物の固形分中、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0048】
<光重合性化合物>
前記光重合性化合物は、ブラックマトリックス用レジスト組成物に使用される公知の光重合性化合物を使用でき、例えば、光重合性不飽和結合を有するモノマー、オリゴマー等が挙げられる。前記光重合性化合物は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
光重合性不飽和結合を1個有するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレートまたはアクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレートまたはアクリレート;N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリールエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;イソボニルメタクリレートまたはアクリレート;グリセロールメタクリレートまたはアクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはアクリレート等が挙げられる。
【0050】
光重合性不飽和結合を2個以上有するモノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0051】
光重合性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、例えば、前記モノマーを適宜重合させて得られたものが挙げられる。
【0052】
前記光重合性化合物は、前記ブラックマトリックス用レジスト組成物の固形分中、2~20質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましい。
【0053】
前記光重合開始剤は、ブラックマトリックス用レジスト組成物に使用される公知の光重合開始剤を使用でき、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、トリアジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等が挙げられる。前記光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
前記光重合開始剤は、前記ブラックマトリックス用レジスト組成物の固形分中、0.1~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0055】
前記ブラックマトリックス用レジスト組成物は、アルカリ現像液による現像性の観点から、上記のアルカリ可溶性樹脂をさらに添加してもよい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の合計は、前記ブラックマトリックス用レジスト組成物の固形分中、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。また、前記ブラックマトリックス用レジスト組成物は、塗装性を向上させる観点から、上記の溶剤をさらに添加してもよい。前記溶剤の合計の割合は、前記ブラックマトリックス用レジスト組成物中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0056】
前記ブラックマトリックス用レジスト組成物には、さらに、必要に応じて、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤等の添加剤を添加してもよい。
【0057】
前記ブラックマトリックス用レジスト組成物は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、および光重合開始剤等の各成分を、攪拌装置等を用いて、攪拌混合して調製すればよい。
【実施例0058】
以下に本発明を実施例等によって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0059】
<調製例A~E>
<表面処理カーボンブラックの準備>
表1に示す各種原料を、表1に示す配合組成(質量部)となるように混合した後、室温で12時間撹拌した。その後、吸引ろ過を行ったのち、精製水で洗浄を繰り返し、乾燥させて表面処理カーボンブラックA~Eを得た。
【0060】
【0061】
表1中、TPK1104Rは、酸性カーボンブラック(吸油量:38ml/100g、pH約3.0、キャボット社製);
SS12000Sは、スルホン酸基を有するフタロシアニン系色素誘導体(ルブリゾール社製);
アルファイン83は、ポリ塩化アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算として23%、大明化学工業社製);
液体硫酸バンドは、硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算として8%、大明化学工業社製);を示す。
【0062】
<実施例1-1~4-1、比較例1-1~2-1>
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物の調製>
表2に示す各種原料を、表2に示す配合組成(質量%)となるように混合した後、ビーズミルで練肉し、各調製例および比較調製例のブラックマトリックス用顔料分散組成物を調製した。
【0063】
【0064】
表2中、DB167は、ポリエステル鎖を有するアミノ基含有ポリウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、固形分52質量%);
SS12000Sは、スルホン酸基を有するフタロシアニン系色素誘導体(ルブリゾール社製);
VG3101Lは、エポキシ樹脂(固形分100%、プリンテック社製);
ZCR-1569Hは、ビフェニル骨格を有するアルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(固形分69%、日本化薬社製);
PGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;を示す。
【0065】
<実施例1-2~4-2、比較例1-2~2-2>
<ブラックマトリックス用レジスト組成物の調製>
表3に示す各種原料を、表3に示す配合組成(質量%)となるように、高速撹拌機を用いて混合した後、孔径0.5μmのフィルターで濾過し、各実施例および比較例のブラックマトリックス用レジスト組成物を調製した。
【0066】
<ブラックレジスト膜の細線密着性の評価>
実施例及び比較例で作製した各ブラックマトリックス用レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(EAGLE XG)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。次いで、1μmから20μmの線幅について1μm間隔のラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量100mJ/cm2で露光した。その後、23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、1kgf/cm2のシャワー現像圧にて現像パターンが現れ始める時間(ブレイクポイント)から現像を開始し、ブレイクポイントの2倍の時間になったところで現像を終了し、1kgf/cm2圧のスプレー水洗を行った。ガラス基板上に残存する最小のラインパターンのサイズ(μm)を評価した。結果を表3に示す。
【0067】
【0068】
表3中、DPHAは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;
OXE02は、オキシムエステル系光重合開始剤(BASFジャパン社製);
WR-301は、アルカリ可溶性カルド樹脂(固形分44%、ADEKA社製);
PGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;を示す。