(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189244
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】貝類養殖篭
(51)【国際特許分類】
A01K 61/55 20170101AFI20221215BHJP
【FI】
A01K61/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097728
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】592155522
【氏名又は名称】株式会社東北総合研究社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】工藤 聖也
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104DB01
2B104DB04
2B104DB17
2B104DB24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】V字台を用いないで、貝の払い出しができる養殖篭を提供する。
【解決手段】貝類養殖篭10は、樹脂で被覆された軟鋼線を折り曲げて枠状にした枠体と、この枠体を下から覆う底網と、この底網の縁から立ち上がる側網と、枠体の中心に絡めた後に上下に延ばされる吊りロープと、この吊りロープに側網の上端を縛る結束材とからなる多角錐篭である。図(a)に示すように、側網14Aに開口部18が設けられている。海中投下に備えて、安全を見て開口部18を仮留めする場合は、留め具としてステープラの針、生分解ポリマーの糸又は紐を使用する。数カ月後に引き上げた養殖篭の三角形状の側網14Aの底辺が、平台26に載せられる。図(b)に示すように、貝類養殖篭10を傾けることで、開口部18から貝が払い出される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほたて貝等の稚貝の養殖に用いる養殖篭であって、
この養殖篭は、多角形の底網と、この底網の縁から立ち上がる複数の三角形の側網とを有する多角錐篭であり、
前記複数の側網の少なくとも一つに、縦一文字の開口部が設けられていることを特徴とする貝類養殖篭。
【請求項2】
請求項1記載の貝類養殖篭であって、
前記複数の三角形の側網は、前記開口部が設けられている側網と、前記開口部が設けられていない側網とからなり、
前記開口部が設けられている側網の色は、前記開口部が設けられていない側網の色と異なっていることを特徴とする貝類養殖篭。
【請求項3】
請求項1記載の貝類養殖篭であって、
前記複数の三角形の側網は、前記開口部が設けられている側網と、前記開口部が設けられていない側網とからなり、
前記開口部が設けられている側網に、目印紐が付されていることを特徴とする貝類養殖篭。
【請求項4】
ほたて貝等の稚貝の養殖に用いる養殖篭であって、
この養殖篭は、多角形の底網と、この底網の縁から立ち上がる複数の三角形の側網とを有する多角錐篭であり、
前記複数の側網の少なくとも一つに、横一文字の開口部が設けられていることを特徴とする貝類養殖篭。
【請求項5】
請求項4記載の貝類養殖篭であって、
前記複数の三角形の側網は、前記開口部が設けられている側網と、前記開口部が設けられていない側網とからなり、
前記開口部が設けられている側網の色は、前記開口部が設けられていない側網の色と異なっていることを特徴とする貝類養殖篭。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載の貝類養殖篭であって、
前記開口部は、留め具で仮留めされ、
この留め具は、海中に60日~90日浸漬されると、溶解若しくは半溶解又は脆弱になる物質で構成されていることを特徴とする貝類養殖篭。
【請求項7】
請求項4又は請求項5記載の貝類養殖篭であって、
前記開口部は、仮留め紐で仮留めされていることを特徴とする貝類養殖篭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほたて貝等の稚貝の養殖に用いる養殖篭に関する。
【背景技術】
【0002】
貝類の養殖に供する養殖篭が実用に供されている(例えば、特許文献1(
図4)参照)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10は従来の養殖篭の基本構成を説明する図である。
従来の養殖篭100は、正方形の底網101と、三角形の側網102~105とからなる四角推形状を呈する篭である。
側網102と、隣の側網103とが交わる稜線に、開口部107が設けられている。
【0004】
ほたて貝等の養殖は、2mm程度の大きさの稚貝が80mm程度の大きさになるまで、網目を変えた複数種類の養殖篭100で行われる。
ある大きさの網目の養殖篭100で、稚貝は、数ヶ月養殖される。数ヶ月後に、養殖篭100を、陸又は船上に上げ、開口部107から成長した貝を取り出す。
【0005】
貝の取り出し作業は、機械化が遅れており、かなりの部分は人手によっている。
例えば、
図11に示すV字台108が利用される。V字台108であれば、開口部107を下にした状態に保つことができるからである。
【0006】
図12に示すように、V字台108に養殖篭100を載せ、養殖篭100を傾けることで、開口部107から成長した貝109を落下させる。
【0007】
しかし、V字台108が必須であり、V字台108の調達費用が嵩むと共に、非作業時にはV字台108を、倉庫などに保管する必要があり、保管費用が嵩む。
【0008】
養殖コストの低減が求められる中、V字台108を用いないで、貝の払い出しができる養殖篭が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、V字台を用いないで、貝の払い出しができる養殖篭を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、ほたて貝等の稚貝の養殖に用いる養殖篭であって、
この養殖篭は、多角形の底網と、この底網の縁から立ち上がる複数の三角形の側網とを有する多角錐篭であり、
前記複数の側網の少なくとも一つに、縦一文字の開口部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の貝類養殖篭であって、
前記複数の三角形の側網は、前記開口部が設けられている側網と、前記開口部が設けられていない側網とからなり、
前記開口部が設けられている側網の色は、前記開口部が設けられていない側網の色と異なっていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の貝類養殖篭であって、
前記複数の三角形の側網は、前記開口部が設けられている側網と、前記開口部が設けられていない側網とからなり、
前記開口部が設けられている側網に、目印紐が付されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、ほたて貝等の稚貝の養殖に用いる養殖篭であって、
この養殖篭は、多角形の底網と、この底網の縁から立ち上がる複数の三角形の側網とを有する多角錐篭であり、
前記複数の側網の少なくとも一つに、横一文字の開口部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の貝類養殖篭であって、
前記複数の三角形の側網は、前記開口部が設けられている側網と、前記開口部が設けられていない側網とからなり、
前記開口部が設けられている側網の色は、前記開口部が設けられていない側網の色と異なっていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5記載の貝類養殖篭であって、
前記開口部は、留め具で仮留めされ、
この留め具は、海中に60日~90日浸漬されると、溶解若しくは半溶解又は脆弱になる物質で構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項4又は請求項5記載の貝類養殖篭であって、
前記開口部は、仮留め紐で仮留めされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、養殖篭は、複数の側網の少なくとも一つに、縦一文字の開口部が設けられている。
開口部が設けられている側網の底辺を、平台に載せる。開口部が下になるように養殖篭を傾ける。成長した貝は開口部から落下する。
本発明の養殖篭は平台に載せることで、貝を払い出すことができる。
すなわち、本発明により、V字台を用いないで、貝の払い出しができる養殖篭が提供される。
【0019】
請求項2に係る発明では、開口部が設けられている側網の色は、開口部が設けられていない側網の色と異なっている。
海中から引き上げた養殖篭には、汚れや海洋生物などの付着物が密に付着している。付着物の隙間から側網が見えるときには、色により開口部が設けられている側網を特定する。特定された側網のみを清掃し、開口部を露出させる。
【0020】
付着物の隙間から側網が見えないときには、側網の部分的に清掃し、色が見えるようにする。色により開口部が設けられている側網を特定する。特定された側網のみを清掃し、開口部を露出させる。
側網の全てを全面的に清掃する場合に比べて、本発明によれば清掃作業が軽微となる。
【0021】
請求項3に係る発明では、開口部が設けられている側網に、目印紐が付されている。
目印紐により開口部が設けられている側網を特定する。特定された側網のみを清掃し、開口部を露出させる。
側網の全てを全面的に清掃する場合に比べて、本発明によれば清掃作業が軽微となる。
【0022】
請求項4に係る発明では、養殖篭は、複数の側網の少なくとも一つに、横一文字の開口部が設けられている。
開口部が設けられている側網の底辺を、平台に載せる。開口部が下になるように養殖篭を傾ける。成長した貝は開口部から落下する。
本発明の養殖篭は平台に載せることで、貝を払い出すことができる。
すなわち、本発明により、V字台を用いないで、貝の払い出しができる養殖篭が提供される。
【0023】
請求項5に係る発明では、請求項2と同様に、開口部が設けられている側網の色は、開口部が設けられていない側網の色と異なっている。
海中から引き上げた養殖篭には、汚れや海洋生物などの付着物が密に付着している。付着物の隙間から側網が見えるときには、色により開口部が設けられている側網を特定する。特定された側網のみを清掃し、開口部を露出させる。
【0024】
付着物の隙間から側網が見えないときには、側網の部分的に清掃し、色が見えるようにする。色により開口部が設けられている側網を特定する。特定された側網のみを清掃し、開口部を露出させる。
側網の全てを全面的に清掃する場合に比べて、本発明によれば清掃作業が軽微となる。
【0025】
請求項6に係る発明では、横一文字の開口部は、留め具で仮留めされている。すなわち、養殖篭を海中に投下するときには、開口部は留め具で閉じられている。稚貝は逃げない。
養殖篭を海中から引き上げる頃には、開口部は開いている。
開いているため、開口部が見つけやすくなると共に縫合糸を除去する作業が不要となり、作用能率が向上する。
【0026】
請求項7に係る発明では、横一文字の開口部は、仮留め紐で仮留めされている。
縦一文字に比較して、横一文字の開口部は、口が開きやすい。そこで、横一文字の開口部を仮留め紐で仮留めし、貝が開口部から逃げることを防ぐようにした。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】縦一文字の開口部が設けらている養殖篭の斜視図である。
【
図3】(a)は開いている開口部の拡大図、(b)は閉じている開口部の拡大図、(c)は留め具で留めた開口部の拡大図、(d)は(c)のd部拡大図である。
【
図5】(a)は養殖篭と平台の相関を説明する図、(b)は稚貝の取り出しを説明する図である。
【
図7】横一文字の開口部が設けらている養殖篭の斜視図である。
【
図8】(a)は開いている開口部の拡大図、(b)は留め具で留めた開口部の拡大図である。
【
図9】仮留め紐で仮留めされている養殖篭の斜視図である。
【
図10】従来の養殖篭の基本構成を説明する図である。
【
図12】従来のV字代台の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0029】
請求項1に記載した発明は、
図1及び
図5で説明する。
請求項3に記載した発明の特徴部分は、
図6で説明する。
請求項4に記載した発明は、
図7で説明する。
請求項6に記載した発明の特徴部分は、
図8で説明する。
請求項7に記載した発明の特徴部分は、
図9で説明する。
【0030】
図1に示すように、貝類養殖篭(以下、養殖篭と略記する。)10は、樹脂で被覆された軟鋼線11を折り曲げて枠状にした枠体12と、この枠体12を下から覆う底網13と、この底網13の縁から立ち上がる側網14と、枠体12の中心に絡めた後に上下に延ばされる吊りロープ15と、この吊りロープ15に側網14の上端を縛る結束材16とからなる多角錐篭である。
吊りロープ15は、養殖篭10から上下に延びていて、複数の養殖篭10を繋ぐことができるようになっている。
【0031】
図2に示すように、養殖篭10は、例えば、四角錐篭である。この場合は、底網13は四角形となる。側網14は、三角形を呈する。側網14は、側網14Aと、側網14Bと、側網14Cと、側網14Dとで構成される。すなわち、側網14において、場所を特定するときのために、符号にA~Dを付した。
【0032】
この例では、側網14Aは、幅方向ほぼ中央に、縦一文字の開口部18が設けられている。
なお、縦一文字の開口部18は、4枚の側網14A~14Dの全てに設けることや、4枚の側網14A~14Dのうちの3枚に設けることや、4枚の側網14A~14Dのうちの2枚に設けることは差し支えない。
【0033】
4枚の側網14A~14Dの全てに開口部18を各々設けるときは、側網14は統一色(例えば、濃紺)とする。
一方、4枚の側網14A~14Dの1枚の側網14Aにのみ開口部18を設けるときは、側網14Aの色を統一色とは異なる色(例えば、ピンクや黄色)とし、他の3枚の側網14B~14Dは濃紺とする。
【0034】
また、4枚の側網14A~14Dの2枚の側網14A、14Cに開口部18を設けるときは、側網14A、14Cの色を統一色とは異なる色(例えば、ピンクや黄色)とし、他の2枚の側網14B、14Dは濃紺とする。
以上により、側網14A~14Dのうちの何処に、開口部18があるかを、視覚により識別させることができる。
【0035】
開口部18を、縦一文字(又は横一文字)にする理由は次の通りである。
一文字であれば、開口部18の形成及び補強は容易であって、開口部18の形成で網の製造コストが増加する心配がない。
【0036】
図1に示す側網14において、底網13から直ぐの部分は「立ち」と呼ばれる起立部21であり、この起立部21の上端から斜め部22となっている。
起立部21を、側網14の下部14aと呼び、斜め部22を側網14の上部14bと呼ぶ。
【0037】
図2に示すように、開口部18は、下部14aには設けない。開口部18は、上部14bに設ける。
起立部21(下部14a)は、稚貝が横移動するときに、主として当たる部位である。起立部21(下部14a)に、開口部18を設けないことで、稚貝は養殖篭10から脱出しにくくなる。
【0038】
図3に基づいて、開口部18を詳しく説明する。
吊りロープ(
図1、符号15)を緩めると、
図3(a)に示すように、開口部18が開き、稚貝の出し入れが行える。
吊りロープ(
図1、符号15)を引き上げる(タイトにする)と側網14が引っ張られ、
図3(b)に示すように、開口部18は閉じる。
【0039】
すなわち、開口部18が縦一文字であれば、吊りロープで相対的に引かれる。この引き力により、開口部18は常に閉じて勝手になる。そのため、縦一文字の開口部18に、格別の仮留めは、必要ない。
ただし、安全を見て、開口部18を仮留めすることは差し支えない。以下、仮留めについて詳しく説明する。
【0040】
海中投下に備えて、
図3(c)に示すように、開口部18を、留め具23としてのステープラの針24で留める。ステープラの針24は、開口部18当たり1~3個でよい。
図3(d)に示すように、ステープラの針24は、錆びやすい炭素鋼のコ字針の両足25を側網14の縁同士に貫通させた後に、両足25を折り曲げてなる。炭素鋼は、海中で塩素イオンと酸素イオンにより、激しく腐食され、減肉し脆弱になる。減肉が著しい場合は、針24自体が溶解し消失する。
【0041】
留め具23は、海中で、数時間~数ヶ月で溶解又は脆弱化するものであれば、種類は問わない。留め具23は、例えば、株式会社カネカ製生分解ポリマーPHBH(登録商標)の糸又は紐である。PHBH(登録商標)は、100%植物由来のバイオポリマーであって、30℃の海水中で6か月経過すると90%以上が生分解される。
【0042】
次に、本発明に係る養殖篭10の好ましい使用法を、
図4に基づいて説明する。
図4に示すST01(ステップ番号01、以下同様)で、養殖篭に稚貝を投入する。次に、開口部を留め具で留める(ST02)。次に、養殖篭を海中に投下する(ST03)。
【0043】
投下のときに、底網に載っている稚貝が海水で押し上げられ、養殖篭内を浮遊する。このときには、開口部は留め具で止められているため、稚貝が開口部から逃げることはない。この投下作業は、数分で完了する。
【0044】
留め具は、材質によるが、海中に数時間~数ヶ月で、溶解(又は半溶解)する。
留め具が溶解して消失すると、
図3(b)の形態になる。
図3(b)では、側網14が上下に引っ張られているため、開口部18は閉じた状態となる。
【0045】
図1にて、養殖中は、稚貝は、主に底網13に載っており、ときどき移動して側網14の下部17aに当たる。下部17aには開口部18がないため、稚貝が逃げることはない。
まれに、稚貝が上昇するが、このときでも殆どは上部17bに当たって底網13へ落下する。ごくまれに、上昇した稚貝が、開口部18に当たるが、
図3(b)のように閉じているため、稚貝が開口部18から逃げるリスクは少ない。
【0046】
よって、開口部18から留め具23が無くなった状態で、養殖が続けられる。
図4のST04に示すように、数ヶ月後に養殖篭が引き上げられる。陸上又は船上で、稚貝の取り出し作業が行われる(ST05)。
【0047】
稚貝の取り出し作業について、
図5に基づいて詳しく説明する。
図5(a)に示すように、作業台として平台26を準備する。
そして、汚れや海洋生物などの付着物の隙間からピンク又は黄色が目視できれば、ピンク又は黄色の側網14Aを下にして、養殖篭10を平台26に載せる。
【0048】
仮に、付着物が密に付着して、色の識別ができないときには、養殖篭10を棒で、ごく一部を打つ。汚れが落ちると、色の識別ができるようになる。ピンク又は黄色が現れるまで、側網14Aの一部、側網14Bの一部、側網14Cの一部、側網14Dの一部を打てば済む。一部を打つだけであるから、作業は短時間で済む。
そして、ピンク又は黄色の側網14Aを下にして、養殖篭10を平台26に載せる。
【0049】
側網14Aを、手で叩く若しくは揺する又は棒などで打って、付着物を落とす。
図3(d)に示す留め具23が半溶解状態又は脆弱状態であっても、叩くことにより、留め具23は破壊される。叩くことにより、開口部18が現れる。
図5(b)に示すように、開口部18からある程度成長した貝が落下する。
【0050】
図4のST06にて、空になった養殖篭を次の使用に備えてクリーニング(清掃)する。
また、ST05で取り出した稚貝を、網目が大きな養殖篭に移す場合には、ST01へ戻って、フローを続ければよい。
【0051】
以上に述べたように、本発明によれば、平台26が作業台となる。平台26は、作業場に常備するテーブルで代用が可能である。又は、平台26を別の用途(例えば、物置き台)に供することができる。
よって、本発明により、V字台を用いないで、貝の払い出しができる養殖篭が提供される。
【0052】
次に、本発明の変更例を説明する。
図6に示すように、開口部18がある側網(この例では網面14A)に、統一色(例えば濃紺)とは異なる色(例えば、赤色)の目印紐27を付設する。具体的には、吊りロープ15に目印紐27を縛りつける。目印紐27は、網面14Aの網目に蛇行させつつ通す。目印紐27の下端を網面14Aから下へ延ばす。
目印紐27を付設することで、4つの側網14A~14Dは、統一色(例えば濃紺)にすることができる。多色の網より、一色の網の方が、網の調達コストが低減できる。
【0053】
次に、本発明のさらなる変更例を説明する。
図7に示すように、側網14Aに横一文字の開口部18Bを設ける。横一文字の開口部18Bは、斜め部22の高さ寸法の1/3~1/2の範囲に設けることが好ましい。
【0054】
その他は、
図1と同じであるため、
図1の符号を流用して詳細な説明は省略する。
ただし、横一文字の開口部18Bは、吊りロープ15の相対的な引き力により、口が開きやすい。そこで、横一文字の開口部18Bでは、口を仮留めすることが、望まれる。
【0055】
図8(a)に示す開口部18Bを通して、稚貝を投入する。
図8(b)に示すように、開口部18Bを留め具23としてのステープラの針24で留める。留め具23は水溶性の糸であってもよい。
【0056】
この状態で、養殖篭10は、海中に所定期間置がれる。すると、汚れや海洋生物などの付着物が養殖篭10に付着して、開口部18Bが見えにくくなる。
そこで、
図7において、開口部18Bが設けられている側網14Aの色を、ピンク又は黄色とし、開口部18Bが設けられていない側網14B~14Dの色を、紺色とする。
【0057】
付着物の隙間から側網14A~14Dが見えるときには、色により開口部18Bが設けられている側網14Aを特定する。特定された側網14Aのみを清掃し、開口部18Bを露出させる。
【0058】
付着物の隙間から側網14A~14Dが見えないときには、側網14A~14Dを部分的に清掃し、色が見えるようにする。色により開口部18Bが設けられている側網14Aを特定する。特定された側網14Aのみを清掃し、開口部18Bを露出させる。
【0059】
図7に示す養殖篭10は、
図5(a)、(b)に示す平台26を用いて、容易に成長した貝を払い出すことができる。
【0060】
次に、本発明のさらなる変更例を説明する。
図9に示すように、仮留め紐29で開口部18Bを仮縫いするようにして、開口部18Bを仮留めする。好ましくは、仮留め紐29の両端(又は一端)は、養殖篭10から十分の長さ垂れ下げる。
【0061】
仮留め紐29を設けたときには、次に述べる複数の形態が創出される。
(1)側網14A~14Dの全てが濃紺で、仮留め紐29も濃紺であってもよい。
仮留め紐29が垂れ下がっているため、開口部18Bが設けられている側網14Aが識別できる。
(2)側網14A~14Dの全てが濃紺で、仮留め紐29はピンク又は黄色であってもよい。
色により仮留め紐29が視認され、開口部18Bが設けられている側網14Aが識別できる。
【0062】
(3)側網14Aがピンク又は黄色で、側網14B~14Dの全てが濃紺で、仮留め紐29は濃紺であってもよい。
色により開口部18Bが設けられている側網14Aが識別できる。
(4)側網14Aがピンク又は黄色で、側網14B~14Dの全てが濃紺で、仮留め紐29はピンク又は黄色であってもよい。
色により開口部18Bが設けられている側網14Aが識別できる。
【0063】
尚、養殖篭10は、
図1において、側網14の全てが斜め部22であってもよい。この場合は、斜め部22の一部が下部17a、残部が上部17bとなり、この上部17bに開口部18が設けられる。
10…貝類養殖篭(養殖篭)、13…底網、14、14A~14D…側網、18…縦一文字の開口部、18B…横一文字の開口部、23…留め具、27…目印紐、29…仮留め紐。