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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189245
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A45D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097731
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 桃子
(57)【要約】
【課題】対象周辺の光の状況に左右されずに対象の輪郭形状を認識することのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器である印刷装置100が、装置内に配置された対象である爪Tを撮影する撮影部5と、装置内に外光SLを取り込むことが可能である外光取込部15と、外光SLのうち第1波長域の光を遮断する遮光部材16と、を備え、遮光部材16は、少なくとも撮影部5による撮影の際に、外光取込部15に対応する位置に配置されることで第1波長域の光以外の第2波長域の光を装置内に透過させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内に配置された対象を撮影する撮影部と、
装置内に外光を取り込むことが可能である外光取込部と、
前記外光のうち第1波長域の光を遮断する遮光部材と、
を備え、
前記遮光部材は、少なくとも前記撮影部による撮影の際に、前記外光取込部に対応する位置に配置されることで前記第1波長域の光以外の第2波長域の光を装置内に透過させる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記対象は印刷対象となる爪であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記外光取込部は、装置の前面又は側面であって前記対象が見える位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記遮光部材は、前記第2波長域の光として前記対象の色に対する反対色又は補色の波長域の光を透過させるものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
予め記憶されている照度の値と照度センサによって取得した値とを比較する比較部を備え、前記撮影部は、前記比較部の比較結果が許容範囲内である場合に撮影を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記照度センサは、前記第2波長域の光に対して高い感度を有することを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記比較部の比較結果が許容範囲内でない場合に、前記撮影部の撮影感度を調整する撮影制御部を備えていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記遮光部材と交換可能であって、透過させる光の波長域を制限しない透明部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記撮影部は、前記対象である爪への印刷中にも撮影を行い、
前記印刷中に前記撮影部によって撮影された爪の画像を出力する画像出力部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
印刷動作を行う印刷ヘッドを備え、
前記印刷ヘッドは、非印刷時において前記外光取込部からの外光を遮らない第1の位置に配置され、印刷時において前記外光取込部から取り込まれた外光を遮断できる第2の位置に配置されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記撮影部によって撮影された画像に基づいて前記対象である爪の輪郭形状を含む爪に関する情報を取得する情報取得部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項12】
前記爪に関する情報に基づいて設定された印刷範囲に印刷を施すように印刷動作を制御する印刷制御部を備えていることを特徴とする請求項11に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、爪に印刷を施してネイルアートを楽しむことができる電子機器としての印刷装置(特許文献1において「描画システム」)が知られている(特許文献1等参照)。
このような電子機器(印刷装置)では、印刷対象となる爪の輪郭形状を正確に認識し、この輪郭形状に合った印刷用のデータを生成することが必要となる。
【0003】
この点特許文献1には、カメラ機能を有する携帯機器を用いて爪を含む指を撮影し、撮影された画像から印刷領域(描画領域)となる爪の形状を認識させて、爪形状に適合する印刷用のデータ(描画データ)を生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-101195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、爪等の対象の撮影は、対象である爪や指周辺の光の状況に左右される。
すなわち、対象周辺が暗過ぎる場合には、撮影装置の感度を上げなければ対象の輪郭形状を認識するのに十分な画像を得ることができない。
また、対象周辺に入射する光の強度が強すぎる場合には、全体が白っぽくなってしまう。この場合には、例えば対象が爪である場合、指の範囲まで広く爪と認識してしまう等、爪輪郭(対象の輪郭形状)の誤認識を生じやすくなる。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、対象周辺の光の状況に左右されずに対象の輪郭形状を認識することのできる電子機器を提供することを利点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の電子機器は、
装置内に配置された対象を撮影する撮影部と、
装置内に外光を取り込むことが可能である外光取込部と、
前記外光のうち第1波長域の光を遮断する遮光部材と、
を備え、
前記遮光部材は、少なくとも前記撮影部による撮影の際に、前記外光取込部に対応する位置に配置されることで前記第1波長域の光以外の第2波長域の光を装置内に透過させる、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、対象周辺の光の状況に左右されずに対象の輪郭形状を認識することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態における印刷装置の外観を示す斜視図である。
図2図1に示す印刷装置のカバー部を開披した状態を示す斜視図である。
図3】本実施形態における印刷装置の内部構成を示す模式的な平面図であり、(a)は、印刷ヘッドが第1の位置にある状態を示し、(b)は、印刷ヘッドが第2の位置にある状態を示している。
図4】本実施形態における印刷装置の内部構成を示す模式的な断面図であり、(a)は、入射光が遮断されない状態を示し、(b)は、入射光が印刷ヘッドによって遮断される状態を示している。
図5】本実施形態における機能的構成を示す要部ブロック図である。
図6】本実施形態の処理を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態における印刷装置の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
図1から図6を参照しつつ、本発明に係る電子機器の第1の実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、電子機器が手の指の爪を対象(印刷対象)としてこれに印刷する印刷装置である場合を例に説明するが、本発明における電子機器はこれに限定されない。例えば電子機器は、装置内に配置された対象の輪郭形状を認識する装置であればよく、印刷のための機構を有しないものでもよい。また電子機器としての印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面、試刷用の用紙等、爪以外のものを印刷対象としてもよい。
【0011】
図1は、本実施形態における印刷装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示す印刷装置のカバー部を開披した状態を示す斜視図である。図3(a)及び図3(b)は、本実施形態における印刷装置の内部構成を示す模式的な平面図であり、図4(a)及び図4(b)は、本実施形態における印刷装置の内部構成を示す模式的な断面図である。また図5は、本実施形態における機能的構成を示す要部ブロック図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、図1図2に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向、Z方向は、各図に示した方向をいうものとする。
【0012】
図1に示すように、印刷装置100は、ほぼ箱形に形成された筐体1を有している。
筐体1は、高さ方向におけるほぼ上半分である上部筐体11とほぼ下半分である下部筐体12とを備えている。
下部筐体12の前面側(印刷装置100の正面側、図1等において前側)には、開口部121が形成されている。
【0013】
上部筐体11の前面側は、前壁部14(図2参照)となっている。
前壁部14の一部は切り欠かれて開口部141となっている。開口部141は、後述する印刷ヘッド41(カートリッジ)を装置に対して着脱する際の取出し口として機能するものであり、印刷ヘッド41を着脱する際に引っ掛からない程度の大きさに形成されている。
上部筐体11には、前壁部14の上端部等に設けられたヒンジ機構131を介して、カバー部13が回動可能に連結されている。
カバー部13は、上部筐体11の前面側(すなわち、前壁部14)を覆う閉状態(図1に示す状態)から上部筐体11の前面側が開披された(すなわち、前壁部14が露出した)開状態(図2に示す状態)まで回動可能となっている。なお、ヒンジ機構131の具体的な構成等は、特に限定されない。
【0014】
上部筐体11の側面であって装置手前側寄りには、装置内に外光SLを取り込むことが可能である外光取込部15が設けられている。外光取込部15は、例えば上部筐体11の側面に設けられた小窓である。外光取込部15の具体的な位置や大きさは、装置の大きさや各部の具体的な配置、後述する撮影装置51の性能等によって適宜調整される。
本実施形態では、図1図2、及び図3(a)図3(b)、図4(a)図4(b)に示すように、上部筐体11の右側面であって、後述する指配置部3を斜め上方向から見下ろせる程度の位置に外光取込部15が設けられている。
【0015】
また、この外光取込部15に対応して遮光部材16が設けられている。
遮光部材16は、外光SLのうち所定の波長域の光(これを「第1波長域の光」という)を遮断するものであり、例えば特定の波長域の光を通す偏光板である。
遮光部材16は、少なくとも撮影部5による撮影の際に、外光取込部15に対応する位置に配置されることで、外光SLのうち「第1波長域の光」を遮光して、それ以外の光(これを「第2波長域の光」という)を透過させる。
本実施形態では、「第2波長域の光」として主として青色の波長域の光を透過させる遮光部材16が適用される。
【0016】
本実施形態のように爪Tを印刷対象とする場合、赤色光等、赤色成分を含む光によって爪Tやその周辺の皮膚(指部分)が照らされると、爪Tの輪郭形状の認識に影響を及ぼしてしまい、正しい認識が難しくなる。
この点、青色は人の爪Tや肌の色等とは反対色(又は補色)であるため、赤色光等、赤色成分を含む光と比べて青色光は比較的爪Tの輪郭形状の認識に影響を及ぼさない。
このため、遮光部材16は、外光SLのうち赤色成分を含む赤色光(「第1波長域の光」)を遮断し、それ以外の、主として青色成分からなる青色光(「第2波長域の光」)を透過させる。ここで、「第1波長域の光」である赤色光とは、例えば一般的に赤色と認識される625~780nmの光をいい、「第2波長域の光」である青色光とは、例えば一般的に青色と認識される450~485nmの光をいう。
なお、外光取込部15及び遮光部材16の詳細については、後述する。
【0017】
また、筐体1の上面や側面には、操作部73(図5参照)が設けられている。操作部73は、例えば印刷装置100の電源をON/OFFする操作ボタン(電源スイッチボタン)等である。操作部73が操作されると、操作信号が制御装置7に出力され、制御装置7が操作信号に従った制御を行い、印刷装置100の各部を動作させる。例えば操作部73が電源スイッチボタンである場合、ボタン操作に応じて印刷装置100の電源がON/OFFされる。
なお、操作部73に代えて、後述する端末装置8の操作部83から入力された操作信号に従って印刷装置100の各部が動作するようにしてもよい。
また、筐体1各部の形状や配置等は、図示例に限定されず、表示部やランプ、インジケータ等が設けられていてもよい。
【0018】
また筐体1内には、撮影部5が設けられている(図5等参照)。
撮影部5は、例えば筐体1の天面内側に取り付けられた図示しない基板等に実装されている。撮影部5の具体的な位置は特に限定されないが、例えば図4(a)及び図4(b)に示すように、後述の指配置部3の上方位置等である。
本実施形態の撮影部5は、装置内に配置された印刷対象である爪Tを撮影して、爪画像を取得するものであり、撮影装置51を備えている。
【0019】
撮影装置51は、例えば、200万画素程度以上の画素を有する固体撮像素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。
なお、撮影装置51による撮影は、静止画撮影、動画撮影のいずれであってもよい。撮影部5は、後述する制御装置7の制御部71によって動作を制御されるようになっており、撮影装置51による撮影が動画撮影である場合には、例えば撮影された動画像の中から制御部71が適宜フレームを抜き出し静止画像(爪画像)として取得する。
また、撮影装置51が動画撮影を行うことができる場合には、例えば爪Tへの印刷中にも撮影部5による撮影を行い、撮影部5によって撮影された爪Tの画像(爪Tにデザインが印刷されていく様子)を外部の端末装置8の表示部85等においてライブビュー表示させてもよい。
さらに本実施形態では、後述するように装置内に入射する光の強度等の状況、各種撮影環境等に応じて、撮影装置51の感度(ISO感度)を調整することができるようになっており、制御部71によってこうした感度調整の制御が行われる。
撮影部5によって取得された画像データは後述する記憶部72等に記憶される。なお、画像データは、適宜後述する端末装置8に送信されてもよい。
【0020】
また筐体1内には、装置内に入射する光の照度を図る照度センサ6(図5参照)が設けられている。
照度センサ6としては、遮光部材16が透過させる波長域の光(すなわち、「第2波長域の光」、本実施形態では青色の波長域の光)に対して高い感度を有するものが適用される。
本実施形態において撮影部5は、照度センサ6が撮影に適した照度を検出したときに撮影を行うように制御される。
なお、照度センサ6の具体的な構成は特に限定されない。
【0021】
また筐体1内には、装置本体2が収容されている。装置本体2は、各種構造物が組み付けられたほぼ平板状の基台上板21を備えている。
基台上板21のうち、前側(手前側)部分であって左右方向のほぼ中央部には、指配置部3が設けられている。
指配置部3は装置前面側に開口する開口部31(図2参照)を有する箱状の部材であり、開口部31から指U(図3(a)及び図3(b)等参照)を挿入できるようになっている。
また、指配置部3内部には挿入された指Uを下側から保持する指保持部材32が配置されている。本実施形態の指保持部材32は、幅方向(左右方向)のほぼ中央部が窪んだ形状となっている。これにより、指Uを指保持部材32上に載置した際に、指Uの腹部分を指保持部材32が受けて、左右方向に指Uがガタつくのを防止することができる。
【0022】
指配置部3の天面奥側(Y方向後側)は上側に開口した開口部33となっている。開口部33からは指配置部3内に挿入された指Uの爪T(本実施形態における印刷の「対象」)が露出する。
本実施形態では、開口部33の設けられている領域が印刷動作領域Ar3となっており、この印刷動作領域Ar3の範囲内において、後述の印刷部4により印刷が行われる。
また、指配置部3の天面手前側(Y方向前側)は指Uの浮き上がりを防止して指Uの上方向の位置を規制する指押え34となっている。
指Uが下側から指保持部材32によって支持され、指Uの上側が指押え34によって押さえられることで、指Uの爪Tの表面(印刷対象面)の高さ方向の位置が印刷部4による印刷を行うのに適した所定の位置(例えば後述する印刷ヘッド41のインク吐出面411よりも2~3mm程度下方の高さ位置)に位置決めされる。
【0023】
基台上板21の下方には、下板22が設けられている。
基台上板21と下板22との間の空間は、印刷対象以外の爪に対応する指が退避する退避空間を構成する。
【0024】
基台上板21のうち印刷ヘッド41の移動可能領域Ar1内であって、指配置部3よりも装置後方側には、一方側の側部に、待機領域(ホームポジション)Ar2が設けられており、他方側の側部に、メンテナンス領域Ar4が設けられている。
本実施形態では、右側部に待機領域Ar2が配置され、左側部にメンテナンス領域Ar4が配置されている。なお、待機領域Ar2とメンテナンス領域Ar4に配置は特に限定されず、例えば左右が逆でもよい。
待機領域Ar2には、非印刷時に後述する印刷ヘッド41のインク吐出面411(図4(a)及び図4(b)参照)を覆って乾燥等から保護するための図示しないキャップ機構等が設けられている。
【0025】
メンテナンス領域Ar4には、非印刷時に印刷ヘッド41のインク吐出面411のクリーニング等のメンテナンスを行う図示しないメンテナンス機構が設けられている。メンテナンス機構としては、例えばパージ部やワイプ部等が設けられる(いずれも詳細について図示せず)。
パージ部は、印刷ヘッド41のインク吐出面411に形成されているノズルの吐出口(図示せず)からインクを強制的に吐出させて、ノズル内等のインク流路内のエアや不純物、粘度の上がったインク等をインクとともに外部に排出させる、いわゆるパージ処理の際に、インク吐出面411から強制的に吐出されるインクを受けるものである。
ワイプ部は、例えばインク吐出面411に付着したインク等を拭き取るクリーニングブレードを含み、印刷ヘッド41下面のインク吐出面411をワイプすることでクリーニングするものである。
【0026】
また、基台上板21には、印刷対象である爪Tに印刷を施す印刷部4が設けられている。
印刷部4は、印刷動作を行う印刷ヘッド(カートリッジ)41を備えている。印刷ヘッド41の下面は、インクを吐出させるインク吐出面411(図4(a)及び図4(b)参照)となっている。
本実施形態において印刷ヘッド41は、図示しないインク貯留部を内蔵するとともに、インクを微細な液滴としてインク吐出面711から吐出させ印刷対象に印刷を施すインクジェット方式の吐出機構を備えるヘッド一体型のインクカートリッジである。
【0027】
印刷ヘッド41は、後述する制御部71(図5参照)の制御にしたがって適宜所定のインクをインク吐出面411(インク吐出面411に形成されている吐出口)から吐出させ、印刷を行うようになっている。
インク貯留部は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)のインクに対応して設けられている。なお、印刷ヘッド41が吐出可能なインクはここに示した例に限定されず、他の色のインクを貯留するインク貯留部が設けられていてもよい。また、下地用の液剤やオーバーコート用の液剤等を吐出できるように構成してもよい。
【0028】
印刷ヘッド41は、ホルダ42(図2参照)に保持された状態でキャリッジ451(図3(a)及び図3(b)参照)に搭載されている。キャリッジ451は基台上板21の左右方向(X方向)のほぼ全体に亘って設けられており、キャリッジ451内には装置の左右方向(X方向)に延在するX方向ガイドシャフト455が設けられている。X方向移動モータ45(図5参照)が動作することにより、ホルダ42に保持された印刷ヘッド41は、X方向ガイドシャフト455に沿ってX方向に移動する。
本実施形態では、キャリッジ451、X方向ガイドシャフト455、X方向移動モータ45等を備えて、印刷ヘッド41をX方向に移動させるX方向移動機構が構成されている。
【0029】
また基台上板21の両側部には、装置の前後方向(Y方向)に延在するY方向ガイドシャフト475が設けられている。キャリッジ451の長手方向の両端部は、この一対のY方向ガイドシャフト475にそれぞれ取り付けられている。Y方向移動モータ47(図5参照)が動作すると、印刷ヘッド41がキャリッジ451ごとY方向ガイドシャフト475に沿ってY方向に移動する。
本実施形態では、Y方向ガイドシャフト475、Y方向移動モータ47等を備えて、印刷ヘッド41をY方向に移動させるY方向移動機構が構成されている。
【0030】
本実施形態において印刷ヘッド41は、非印刷時において外光取込部15からの外光SLを遮らない「第1の位置」に配置され、印刷時において外光取込部15から取り込まれた外光SLを遮断できる「第2の位置」に配置される。
図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施形態の外光取込部15は筐体1の側部であって指配置部3に対応する装置の手前側(図3(a)及び図3(b)において下側寄り)に設けられている。
このため、図3(a)に示すように印刷ヘッド41がキャリッジ451ごとY方向の奥側に下がっている場合(すなわち、待機領域Ar2やメンテナンス領域Ar4に配置されている場合)には、外光取込部15から入射した外光SLは印刷ヘッド41等によって遮られず、指Uや爪Tが外光SLによって照らされた状態となる。このように、印刷ヘッド41がY方向の奥側に下がっている位置(待機領域Ar2やメンテナンス領域Ar4に対応する位置)が、外光取込部15からの外光SLを遮らない「第1の位置」である。
装置内に自分の指Uを挿入したユーザとしては、指Uや爪Tの位置等を目視にて確認したい場合がある。このような場合に、印刷ヘッド41を装置奥側(図3(a)に示す位置)の「第1の位置」に配置させることによって、ユーザは、外光取込部15から装置内部を覗き込むことにより、指配置部3に配置された自分の指Uや爪Tを見ることができる。
【0031】
これに対して、図3(b)に示すように印刷ヘッド41がキャリッジ451ごとY方向の手前側に配置された場合(すなわち、印刷動作領域Ar3や印刷動作領域Ar3よりも右寄りの領域に配置されている場合)には、外光取込部15から入射した外光SLは印刷ヘッド41等によって遮られ、指Uや爪Tが外光SLに照らされない状態となる。このように、印刷ヘッド41がY方向の手前側の位置(印刷動作領域Ar3内や印刷動作領域Ar3と外光取込部15との間の位置)が、外光取込部15からの外光SLを遮る「第2の位置」である。
【0032】
指Uや爪Tが外光SLによって照らされると、撮影部5によって撮影を行った際に、画角内の全体が白く光ってしまい、爪Tの輪郭形状の認識を行うのに十分な爪画像を得ることが難しい。
また、また光が赤色成分を含んでいる場合(例えば赤色光や白色光等)には、爪画像を取得したとしても、その画像からどこまでが爪Tの領域であるかを正しく識別することが難しく、指Uの方まで爪Tと認識してしまう等、輪郭形状の誤認識が生じるおそれがある。
このため、撮影部5によって撮影を行う場合には、できるだけ光、特に赤色成分を含む外光SLが爪Tや指Uに当たらない状態であることが好ましい。
そこで、撮影を行う際は、印刷ヘッド41を装置手前側(図3(b)に示す位置)まで移動させ、印刷ヘッド41を「第2の位置」に配置させることによって、爪輪郭の誤認識を起こしにくい撮影を行うことができる。
【0033】
なお、前述のように本実施形態の外光取込部15には「第2波長域の光」として青色の波長域の光を透過させる遮光部材16が配置されている。
前述のように、青色は人の爪Tや肌の色等とは反対色(又は補色)であるため、爪Tを印刷対象とする場合、赤色光等、赤色成分を含む光と比べて青色光は比較的爪Tの輪郭形状の認識に影響を及ぼさない。しかし、青色光でも強度が強いと入射した際に爪T等に反射して全体に白っぽくなってしまい、誤認識が生じやすくなる。
このため、遮光部材16を通した青色光であっても、撮影装置51による撮影の際はできるだけ光を遮断することが好ましい。
【0034】
ここで、外光取込部15及び遮光部材16の位置や大きさについて、撮影装置51等との関係において詳説する。
図4(a)及び図4(b)では、撮影装置51の画角及び外光取込部15から入射する入射光の広がりイメージを破線で示している。また撮影装置51は、一点鎖線で示す画角の中心が爪Tの中心を通るように配置されている場合を例示している。
【0035】
本実施形態の外光取込部15は、例えば直径が撮影装置51のレンズの直径とほぼ同じ(例えば5.2mm程度)となっており、指配置部3における爪T(爪Tに対応する指U)が配置される面に対する入射光(なお、入射光の中心を図中一点鎖線で示す)の角度θが、例えば23.6度程度となる孔である。
遮光部材16は、この孔である外光取込部15に嵌装されている。なお、遮光部材16は外光取込部15に対応して設けられていればよく、図示例のように外光取込部15に嵌装されている場合に限定されない。
【0036】
日中の白色等の外光SLや夕方の赤みを帯びた外光SL等は、いずれも外光取込部15に嵌装された遮光部材16を通ることで青色の波長域成分の光となり、装置内に入射する。
なお、前述したように、外光取込部15及び遮光部材16の位置や大きさは、各種の条件に応じて適宜調整されるものであり、ここに例示したものに限定されない。例えばここでは一般的なスマートフォン等に用いられている程度の性能を有する撮影装置51を適用した場合を想定しているが、撮影装置51の感度等の性能が高い場合には、装置構成の他の条件が同じであっても、外光取込部15の大きさをここに示した例よりも小さくすることも可能である。
【0037】
図4(a)に示すように、印刷ヘッド41が指配置部3よりも左側に配置されている場合には、印刷ヘッド41がY方向の奥側に下がっている場合もY方向の手前側に出てきている場合にも、外光取込部15から入射した外光SLは印刷ヘッド41等によって遮られず、指Uや爪Tが外光SLによって照らされた状態となる。
これに対して図4(b)に示すように、印刷ヘッド41がY方向の手前側に出てきている場合であって、かつ印刷動作領域Ar3や指配置部3よりも右側に配置されている場合には、外光取込部15と爪Tとの間に印刷ヘッド41が配置される。このため、外光取込部15から入射した外光SLは印刷ヘッド41等によって遮られ、指Uや爪Tに外光SLが当たらない状態となる。
【0038】
また印刷装置100は、通信部74を備えている(図5参照)。
通信部74は、例えば印刷装置100が端末装置8等の各種外部装置との間で通信するためのものである。
通信部74を介する通信は、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。ネットワークを介して通信を行う場合、通信に用いるネットワークはどのような回線を利用するものでもよい。また、印刷装置100と端末装置8等との間の通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。
通信部74は、通信相手となる端末装置8の通信部84等との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えており、制御部71によって動作が制御される。通信部74は端末装置8等との間で通信を行うことのできるものであればよく、端末装置8等の通信部の通信規格と合致するものが適用される。
【0039】
さらに印刷装置100は、制御装置7を備えている。
制御装置7は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される制御部71と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部72とを備えるコンピュータである。
なお、記憶部72の一部又は全部は別構成とし、制御装置7の外部に設けるようにしてもよい。
【0040】
記憶部72には、印刷装置100を動作させるための各種プログラム(例えば撮影装置調整処理、印刷処理等を行うためのプログラム等)や各種データ等が格納されており、制御部71がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部71において実行されることによって、印刷装置100の各部が統括制御されるようになっている。
また本実施形態では、装置の工場出荷時において撮影装置51で画像を撮影した際の環境(撮影時において照度センサ6によって取得された入射光(外光SL)の強度や波長域等)等の設定値(すなわち出荷時において適正に撮影や爪認識等を行うことができると確認された値)を記憶部72に記憶させておいてもよい。
【0041】
特に本実施形態では、制御部71は、撮影部5によって撮影された画像(撮影装置51によって取得された爪画像)から爪Tの輪郭形状を含む爪Tに関する情報を取得する情報取得部として機能する。
爪Tの輪郭形状を含む情報とは、例えば、爪Tの領域を画する輪郭線をX,Y座標等で表したデータ等である。
制御部71が爪Tに関する情報を取得する手法は特に限定されない。例えば各種の画像解析処理を行うことで画像から爪Tを認識する。なお、爪認識について機械学習を行い、認識精度を高めるようにしてもよい。
【0042】
また制御部71は、取得した爪Tの輪郭形状にデザインのデータを合わせ込み、印刷データを生成する。なお、制御部71は爪Tの湾曲度合い等の情報を爪Tに関する情報として取得してもよい。この場合には、爪Tの湾曲度合い等に応じて、適宜曲率補正等を行ってもよい。これにより、より爪Tに合った印刷データとすることができる。
そして制御部71は、爪Tに関する情報に基づいて設定された印刷範囲に、生成された印刷データに基づいて印刷を施すように印刷部4の印刷動作を制御する印刷制御部としても機能する。
【0043】
また、制御部71は、爪Tへの印刷中にも撮影部5(撮影部5の撮影装置51)を動作させ、爪Tの画像を撮影させてもよい。印刷中に爪Tの画像を取得したときは、制御部71は撮影装置51によって撮影された爪Tの画像(画像データ)を端末装置8等に出力する画像出力部として機能してもよい。
なお、画像出力部としての制御部71が画像を出力する先は端末装置8等の外部装置に限定されない。例えば印刷装置100自体が表示部を備えているような場合には、表示部を画像の出力先としてもよい。
画像が出力されると表示部85等では、当該画像に基づいて、爪Tに印刷が施されていく様子をライブビュー表示等させる。
【0044】
さらに本実施形態では、照度センサ6によって検出された入射光の強度等が、制御部71に送られ、制御部71は、この検出結果から爪T等に入射する光が撮影部5の撮影に適した照度であるか否かを判断する。例えば制御部71は、撮影装置51が撮影した爪画像から爪Tの輪郭形状等の爪情報を適切に検出することが可能か否か(すなわち、白飛びが生じていない適切な画像が取得できたか否か)を判断する。
具体的には、例えば記憶部72等に予め照度の値を記憶させておき、制御部71は、この予め記憶された照度の値と照度センサ6によって取得した値とを比較する比較部として機能する。そして、比較結果が許容範囲内である場合に撮影を行うように撮影装置51を制御する。
【0045】
また制御部71は、比較部として判断した比較結果が許容範囲内でない場合に、撮影部5の撮影装置51の撮影感度(すなわちカメラのISO感度)を調整する撮影制御部としても機能する。すなわち、爪情報を適切に検出することができない状況である場合には、制御部71は、撮影装置51の感度等を適宜調整し、照度センサ6が検出した照射強度が撮影に適した照度となったときに撮影を行うように撮影装置51を制御する。
具体的には、検出された照度が高すぎる場合には撮影装置51の感度を落とすように調整を行い、検出された照度が低すぎる場合には撮影装置51によってとらえられる光を電子的に増幅させて感度を上げる調整を行う。
【0046】
また本実施形態の印刷装置100は、端末装置8等の外部装置と連携し、端末装置8等から入力された指示に従って動作する。
端末装置8としては、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末装置が想定されるが、これに限定されない。端末装置8は、印刷装置100と通信可能なものであれば特に限定されず、例えばノート型又は定置型のパソコンや、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
具体的に、端末装置8は、操作部83、通信部84、表示部85、制御装置80等を備えている。
【0047】
操作部83は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、操作部83が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御装置80に送信される。例えば本実施形態では、ユーザが操作部83を操作することで、爪Tに印刷するネイルデザインを選択すること等ができるようになっている。なお、本実施形態では表示部85の表面にタッチパネルが一体的に設けられており、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によっても各種の入力・設定等の操作を行うことができるようになっている。
なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部83はタッチパネルである場合に限定されない。例えば各種の操作ボタンやキーボード、ポインティングデバイス等が操作部83として設けられていてもよい。
操作部83を操作することで、印刷装置100において各種の入力・設定等が行われてもよい。
【0048】
通信部84は、印刷装置100の通信部74との間で通信を行う。例えば、印刷装置100から爪画像等のデータが送信されたときには、これを受信する。通信部84は、印刷装置100の通信部74との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えている。
なお、通信部84は、印刷装置100との間で通信を行うことのできるものであればよく、印刷装置100の通信部74の通信規格と合致するものが適用される。
【0049】
表示部85は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、前述のように、表示部85の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合にはタッチパネルが操作部12等としても機能する。
本実施形態では、表示部85には、ユーザが操作部83から入力・選択したネイルデザインや、印刷装置100から送信された画像等が表示可能となっている。
【0050】
また表示部85は、制御部81の制御にしたがって各種の案内画面、警告表示画面等を表示可能となっている。
さらに、撮影装置51がライブビュー表示可能な動画像を撮影可能なものである場合には、表示部85は、随時動画像をライブビュー表示してもよい。
【0051】
制御装置80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等により構成される制御部81と、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0052】
記憶部82には、端末装置8の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、本実施形態のROM等には、端末装置8の各部を統括制御するための動作プログラムの他、印刷装置100を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム等の各種プログラム(いずれも図示せず)が格納されており、制御装置80がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して実行することによって、端末装置8が制御されるようになっている。
また、本実施形態の記憶部82には、ネイルデザインのデータや、爪Tの画像データ等が格納されるようになっている。
【0053】
制御部81は、端末装置8の各部の動作を統合的に制御する。制御部81は、記憶部82に記憶されたプログラムとの協働により、爪への印刷を行うための各種機能を実現する。
【0054】
以下、図6を参照しつつ、本実施形態における印刷装置100の作用について説明する。
【0055】
印刷装置100を用いて印刷を行う場合には、操作部12を操作して電源をONとし、印刷装置100を起動させる。また本実施形態では端末装置8についても印刷装置100と連動するモードを起動させる。
印刷装置100を起動した段階では、印刷ヘッド41は待機領域Ar2に待機している状態(すなわち「第1の位置」に配置された状態)にある。
【0056】
端末装置8が起動すると、端末装置8の表示部85に、指Uを印刷装置100の指配置部3に配置するように促すメッセージが表示される(ステップS1)。
そして指配置部3に指Uが配置されると、その指U(爪Tを含む指U)を撮影部5の撮影装置51で撮影し、爪画像を取得する(ステップS2)。爪画像が取得されると制御部71は、画像解析等を行うことで爪画像から爪Tの輪郭形状等を認識する(ステップS3)。
【0057】
制御部71は、爪画像から爪Tの輪郭形状等を適切に認識することができたか否かを判断し(ステップS4)、認識できなかった場合(ステップS4;NO)には、まず外光取込部15から入射した入射光(本実施形態では遮光部材16を通った青色光)の強度を照度センサ6で測定する。測定結果は制御部71に送られ、制御部71は、印刷ヘッド41が「第1の位置」にある状態での照度(これを「第1の照度」という。)を取得する(ステップS5)。
【0058】
次に、制御部71はY方向移動モータ47を動作させて、印刷ヘッド41を「第1の位置」から「第2の位置」に移動させ、外光取込部15からの入射光を遮断した状態とする(ステップS6)。
そしてこの状態において、再度入射光(青色光)の強度を照度センサ6で測定する。測定結果は制御部71に送られ、制御部71は、印刷ヘッド41が「第2の位置」にある状態での照度(これを「第2の照度」という。)を取得する(ステップS7)。
【0059】
さらに制御部71は、このようにして得られた第1の照度及び第2の照度を、第2の照度/第1の照度として青色光(青色の波長域の入射光)の強度の相対値を算出し、これを記憶部72等に記憶されている、出荷時における第1の照度及び第2の照度の相対値(第2の照度/第1の照度)と比較する(ステップS8)。これにより、輪郭認識(爪Tの輪郭形状の認識)への影響度を判断する(ステップS9)。
すなわち、出荷時には、爪Tの輪郭認識を高精度に行うことのできる画像を取得できるように撮影装置51の感度等、装置各部の状態が調整されている。このため、この出荷時の照度の状況と現在の状況とを比較することで、現状の使用環境(装置内の照度、明暗の程度等)が爪Tの輪郭形状の認識にどの程度影響を及ぼすかを判断することができる。
【0060】
そして、影響度を判断すると、制御部71は、当該影響度に応じて撮影装置51の感度を調整する(ステップS10)。
具体的には、照度が低すぎて爪輪郭の認識を行うのに十分な爪画像を撮影できないような場合(画像が暗すぎてはっきりしない場合等)には、撮影装置51の感度を上げる調整を行う。本実施形態のように遮光部材16によって透過する光が外光SLのうち青色光に制限された状態で撮影を行う場合には、特に青色の感度を上げるように感度を調整する。なお、遮光部材16がほかの色の光を透過させるものである場合には、それぞれの色の光について撮影装置51の感度を上げるように調整する。
【0061】
また例えば照度が高すぎて爪Tやその周辺が光りすぎてしまい、正しく輪郭認識を行うことのできるような爪画像を得ることができない場合(画像全体が白飛びしてはっきりしない場合等)には、撮影装置51の感度を下げる調整を行う。
そして、ステップS2に戻って以降の処理を繰り返す。
このように出荷時の青色光の照度と現状の照度の程度とを比較することで、出荷時の設定値(理想値)となるように撮影装置51の感度を補正することができ、どのような明暗環境下で印刷装置100を使用する場合でも、安定した性能を維持することができる。
【0062】
他方、適切な爪画像を取得することができ、この爪画像から爪Tの輪郭形状等を適切に認識することができた場合(ステップS4;YES)には、制御部71は端末装置8の制御部81を介して、指Uを取り出して爪Tに下地を塗布したのち、再度指Uを指配置部3に配置するように促すメッセージを、表示部85等に表示させる(ステップS11)。
そして、制御部71は認識された輪郭形状に合わせて印刷データを生成し、指配置部3に配置された指Uの爪Tに、印刷データに基づいてネイルデザインの印刷を行う(ステップS12)。なお、この印刷中も撮影部5により爪Tを印刷させ、印刷中の爪Tの様子を表示部8等に随時ライブビュー表示させてもよい。
これにより、印刷装置100を使用する場所によって爪Tやその周辺の明るさ等の条件・環境が様々である場合にも、撮影装置51の感度を状況に応じた最適なものとすることができ、どのような環境下でも、精度のよい爪認識を行うことができる。
【0063】
なお、下地は例えば白色等の下地用の液剤をユーザが手塗りすることで塗布される。なお、下地の塗布は手塗りに限定されず、印刷装置100で行われてもよいし、下地用の専用プリンタ等において行われてもよい。
下地が塗布されたのち、印刷前に再度撮影装置51によって爪Tを撮影し、下地が塗布された領域を認識する領域認識(白認識)が行われてもよい。この場合、認識された白い領域にデザインを合わせ込んで表示用のデータを生成し、印刷後の仕上がりイメージを表示部85等にプレビュー表示させてもよい。
白い領域内にデザインを合わせ込んだものを表示させることで、ユーザはより適切に仕上がりをイメージすることができる。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、装置内に配置された対象を撮影する撮影部5(撮影部5の撮影装置51)と、装置内に外光SLを取り込むことが可能である外光取込部15と、外光のうち「第1波長域の光」を遮断する遮光部材16と、を備え、遮光部材16は、少なくとも撮影部5による撮影の際に、外光取込部15に対応する位置に配置されることで「第1波長域の光」以外の「第2波長域の光」を装置内に透過させる。
これにより、外光SLの入射する場所を外光取込部15に絞ることができ、装置内に入射する光量を抑えることができる。
また遮光部材16によって外光SLのうち特定の波長域の光(すなわち「第2波長域の光」)を装置内に入射させることができる。
このため、入射する光を撮影に影響を及ぼすことが少ない波長域の光に限定することができ、外光SLを取り入れて撮影時の照明として利用しつつも対象の輪郭を誤認識するおそれを回避して高精度の輪郭認識を実現することができる。
【0065】
また本実施形態における対象は、印刷対象である爪Tである。
爪Tは肌に近い色(赤色成分を多く含む色)の光によって照明されると肌と爪Tとの輪郭を誤認識しやすくなってしまう。
この点、外光のうち「第1波長域の光」を遮断して「第2波長域の光」を装置内に透過させる遮光部材16を設けることで、外光SLを取り入れて撮影時の照明として利用しつつも爪輪郭を誤認識するおそれを回避して高精度の爪輪郭の認識を実現することができる。
【0066】
また、外光取込部15は、装置の前面又は側面(本実施形態では図1に示すように、装置の右側面)であって対象(本実施形態では爪T)が見える位置に設けられている。
これにより、外光SLを装置内に取り込むことができるとともに、ユーザが外光取込部15から装置内の様子を覗いて、確認することができる。
【0067】
また、本実施形態では、遮光部材16は、「第1波長域の光」以外の波長域の光である「第2波長域の光」として、対象の色に対する反対色又は補色の波長域の光を透過させるものである。
印刷装置100は、例えば自宅の室内や店舗の中等の蛍光灯の下や、屋外の自然光の下等、様々な環境で使用されることが想定され、外部から装置内に入ろうとする外光SLには、赤色成分を含む白色光や赤色光等、様々な波長域の光がある。
例えば、対象が爪Tである場合、爪Tや肌の色は赤色成分を多く含んでいる。このため遮光部材16がその反対色(又は補色)である青色光を透過させるものである場合、青色の光は赤色の成分を含む赤色光等に比べて爪Tの輪郭形状を周りの皮膚と区別して認識する際に影響を及ぼしにくい。
このように、外光SLのうち対象の色に対する反対色又は補色の波長域の光のみが装置内に入射できるようにすることで、様々な環境下でも、精度よく対象の輪郭を認識することができる。
【0068】
また本実施形態では、制御部71が、予め記憶されている照度の値と照度センサによって取得した値とを比較する比較部として機能し、撮影部5は、比較部としての制御部71の比較結果が許容範囲内である場合に撮影を行う。
これにより、高精度の輪郭認識を行うことのできない環境下で撮影が行われるのを回避することができる。
【0069】
また本実施形態の照度センサ6は、遮光部材16が装置内に透過させる「第2波長域の光」に対して高い感度を有する。
本実施形態では、遮光部材16によって外光SLのうち特定の波長域の光(すなわち「第2波長域の光」)のみが装置内に入射する。このため、例えば赤色成分の多い夕日の照り付ける下で撮影を行う場合には、外光SL自体の照度は高いが、遮光部材16を介して装置内に取り込まれる光量は少ない場合もある。
この点、遮光部材16が透過させる波長域の光に対して高い感度を有する照度センサ6で入射光の照度を測定することで、遮光部材16を介して実際に装置内に取り込まれた光の照度を適切に測定することができる
これにより、装置内が暗すぎたり、逆に明るすぎて白飛びを生じるような環境下で撮影が行われたりして、適切に爪画像を取得できない事態を防ぐことができる。対象認識(本実施形態では爪認識)に適した画像(爪画像)を取得できるようにすることで、対象の輪郭が誤認識されてしまうことも防止される。
【0070】
また本実施形態では、制御部71は、比較部として判断した比較結果が許容範囲内でない場合に、撮影部5の撮影感度を調整する撮影制御部としても機能する。
これにより、高精度の輪郭認識を行うのに適さない画像しか撮影できない状況である場合に、撮影感度を上げ下げすることで簡易に状況を改善させ、高精度の輪郭認識を行うのに適した画像を撮影させることができる。
【0071】
また、本実施形態の撮影部5は、爪Tに対して印刷部4が印刷を行っている最中も撮影を行い、撮影された爪Tの画像を画像出力部としての制御部71が端末装置8の表示部85等に出力する。
これにより、爪Tにデザインが印刷されていく様子をとらえた画像が表示部85等に表示され、ユーザは印刷の様子をリアルタイムで確認することができる。このため、装置内で印刷部4が動作する音等がしていてもユーザが不安を感じずに済み、安心して印刷の完了を待つことができる。
【0072】
また、本実施形態では、印刷部4が印刷動作を行う印刷ヘッド41を備えており、印刷ヘッド41は、非印刷時において外光取込部15からの外光SLを遮らない「第1の位置」に配置され、印刷時において外光取込部15から取り込まれた外光SLを遮断できる「第2の位置」に配置される。
これにより、印刷動作が開始されるまでは、ユーザが外光取込部15から装置内を覗いたときに外光SLに照らされた爪T等を目視しやすく、印刷動作開始後、撮影部5の撮影装置51が印刷中の爪Tを撮影しているときには、装置内に入射する光を抑えて適切に撮影を行うことができる。
【0073】
また、本実施形態では、情報取得部としての制御部71が、撮影部5の撮影装置51によって撮影された画像(爪画像)に基づいて爪Tの輪郭形状を含む爪Tに関する情報を取得する。
これにより、爪画像から爪輪郭等の情報を取得することができる。そして、この爪画像を撮影する際の光源は外光取込部15によって光量を制限され、遮光部材16によって透過する光の波長域が絞られた外光SLである。このため、別途光源を装置内に設けなくても、爪輪郭等を正確に認識できる爪画像を撮影することができる。
【0074】
また、本実施形態では、印刷部4による印刷動作が印刷制御部としての制御部71により、爪Tに関する情報に基づいて設定された印刷範囲(すなわち爪輪郭の内側領域)に印刷を施すように制御される。
これにより、精度よく認識された爪Tの輪郭形状に合わせた仕上がりのよいネイルプリントを実現することができる。
【0075】
[第2の実施形態]
次に、図7を参照しつつ、本発明に係る印刷装置の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、外光取込部の構成のみが第1の実施形態と異なるものであるため、以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0076】
図7は、本実施形態に係る印刷装置の外観を示す斜視図である。
図7に示すように、本実施形態の印刷装置200は、上部筐体11の側部ではなく、装置前面に配置されたカバー部17に外光取込部18が設けられている。
具体的には、カバー部17における、筐体1の幅方向(印刷装置200の左右方向、図7におけるX方向)のほぼ中央部に、外光取込部18が形成されている。
外光取込部18には、遮光部材19が嵌装されている。
遮光部材19は、第1の実施形態と同様、少なくとも撮影部5による撮影の際に、外光取込部18に対応する位置に配置されることで外光SLのうち「第1波長域の光」である赤色光以外の「第2波長域の光」を装置内に透過させるものであり、本実施形態では「第2波長域の光」として主として青色の波長域の光を透過させるものが適用される。
【0077】
外光取込部18からは、遮光部材19を介して装置内部、特に印刷対象である爪Tが配置される指配置部3を装置外部から目視可能となっている。
特に本実施形態の外光取込部18は、第1の実施形態における外光取込部よりも大きく設けられているため、装置内部を目視しやすくなっている。
その反面、外光SLも多く入射するが、外光取込部18に対応して設けられている遮光部材19は、比較的爪Tの輪郭形状の認識に影響を及ぼさない青色光を透過させるため、入射する外光SLが多くても、撮影装置51の感度を下げる調整等を行うことで対応すれば、それほど精度を落とすことなく爪輪郭の認識を行うことができる。
【0078】
なお、その他の構成は、第1の実施形態と同様であることから、同一部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0079】
次に、本実施形態における印刷装置200の作用について説明する。
第1の実施形態では、印刷ヘッド41を「第2の位置」に移動させることで側面の外光取込部から入射する外光SLを遮断することが可能である。これに対して本実施形態では印刷ヘッド41を移動させても外光SLを遮断することができない。
このため、撮影部5により取得された爪画像から爪Tの輪郭形状等を適切に認識することができなかった場合には、ユーザを装置の前を覆うように位置させて外光SLを遮り、この状態で撮影部5による撮影を行うことが好ましい。
【0080】
そこで具体的には、制御部71は、外光取込部18から入射した入射光(本実施形態では遮光部材19を通った青色光)の強度を照度センサ6で測定させ、測定結果が撮影に適した照度となるように、例えばユーザの立ち位置等を指示するメッセージ(例えば「もっと装置正面に近づいてください」)等を表示部85に表示させる。
そして、撮影に適した照度で爪Tの撮影が行われ、爪画像から爪輪郭を認識することができたら、これにしたがって印刷データを生成し、印刷部4を動作させて、爪輪郭の内側領域を印刷範囲とする印刷を行わせる。
【0081】
なお、その他の点については、第1の実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0082】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、以下の効果を得ることができる。
すなわち本実施形態では、図7に示すように、外光取込部18が指配置部3を見下ろすことのできる装置の正面位置に設けられている。このため、装置内部、特に爪Tや指Uの様子を目視しやすい。
このように装置正面に外光取込部18を設けた場合でも、遮光部材19によって装置内に入射する光を青色光等、爪Tの輪郭形状の認識に影響を及ぼさない波長域の光に絞ることができる。このため、爪輪郭の認識も適切に行うことができる。
【0083】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0084】
例えば、上記各実施形態では、外光取込部15,18を介して取り込まれた外光SLのみによって撮影部5による撮影を行う場合を示したが、装置内に照明装置を設けてもよい。
例えば撮影部5が、撮影装置51の他に照明装置を備えていてもよく、この場合には、例えば複数のLEDを、撮影装置51を囲むように配置する。この場合LEDは、爪輪郭の認識に影響を及ぼしにくい青色光を発するものを用いることが好ましい。
なお照明装置の光源は、撮影装置51の撮影対象を照明可能であればよく、LEDに限定されない。
装置内に照明装置を設けた場合には、外光SLに頼ることのできない暗い室内で印刷装置100を使用する場合等であっても、撮影等を行うのに必要な光を得ることができる。そしてこの照明装置を青色に発光するLED等で構成した場合には、爪輪郭の認識にも影響を与えない。
【0085】
また、上記各実施形態では、遮光部材16,19が「第2波長域の光」として主として青色の波長域の光を透過させるものである場合を例示したが、「第2波長域の光」は青色の波長域の光に限定されない。例えば緑色の波長の光等であってもよい。
この場合には、照度センサ6も遮光部材が透過させる波長域の光(例えば緑色の光)に対して高い感度を有するものを設ける。また、撮影装置51の感度調整も、遮光部材が透過させる波長域の光に対する感度を調整する。
【0086】
また、例えば透過させる光の波長域を制限しない透明部材をさらに備え、遮光部材と透明部材とを交換することが可能であってもよい。
例えば、遮光部材16,19は着脱可能となっていてもよく、必要に応じて遮光部材、透明部材のいずれかをユーザが外光取込部に選択的に嵌装してもよい。
なお、「遮光部材と透明部材とを交換する」とは、外光取込部に選択的に嵌装する場合に限定されない。例えば遮光部材を外光取込部にかかる位置からかからない位置に移動させる、跳ね上げ機構や、上下左右等にスライド移動させる機構等を設けて、遮光部材を外光取込部に対応する位置に配置すれば遮光部材が配置された状態となり、移動させれば透明部材のみが嵌装された状態となるような構成、調光レンズのように1つの部材を遮光部材としても透明部材としても使用できるようにする構成等も広く含む。
【0087】
このように遮光部材と透明部材とを交換可能とすることで、ユーザが装置内部の爪Tの様子等を確認したい場合には外光取込部に対応する位置に透明部材を配置し、撮影部5による撮影を行う際等、できるだけ外光SLを遮断したい場合には外光取込部に対応する位置に遮光部材を配置する、というように切り替えることができる。
装置内を目視したいユーザとしては、外光取込部から装置内を覗いたときに遮光部材を介した青色光によって自分の爪Tや指Uが青く見えることには違和感がある。また青い光を集中して見続けてしまうと目が疲れるといった問題もある。
この点、遮光部材と透明部材とを適宜交換できるようにすれば、装置内を目視したいというユーザの要望と爪輪郭の誤認識を生じないようにできるだけ青色等以外の入射光を規制したい要望とを両立させることができる。
【0088】
さらに、遮光部材等とともに、外光取込部に外光SLの入射を阻止するシャッタ等を設けてもよい。
特に実施形態2に示すように、外光取込部18を広く設けた場合には、遮光部材を設けても入射してくる外光SLの光量が多すぎて、適切に撮影を行うことが難しい場合も生じうる。
この場合にはシャッタを閉めることで外光取込部からの外光SLの入射を遮断してもよい。
【0089】
また、上記各実施形態では、印刷ヘッド41が「第1の位置」にあるときの「第1の照度」と印刷ヘッド41が「第2の位置」にあるときの「第2の照度」の青色光の強度の相対値と、出荷時における照度(青色光の強度)の状況とを比較して輪郭認識(爪Tの輪郭形状の認識)への影響度を判断する場合について説明したが、輪郭認識への影響度を判断する手法はこれに限定されない。
例えば、実施形態のように、外光取込部15,18から装置内に入射する光が爪Tの輪郭認識に影響を及ぼさない青色光である場合には、「第1の照度」と「第2の照度」との相対値ではなく、外光取込部15,18からの入射光が遮断されない状態の「第1の照度」を照度センサ6で取得して、これを出荷時の「第1の照度」と比較してもよい。
【0090】
また、赤色光(長波長領域の光)は肌色に近いためより爪輪郭の認識において誤動作を生じやすいが、爪輪郭を認識するための画像(爪画像)の撮影に影響しない箇所に外光取込部及び照度センサ等を配置する場合には、外光取込部から入射する光は青色光に限定しなくてもよく、外光取込部に対応して設ける遮光部材も、青色偏光のものに限定されない。例えば赤色や白色等であってもよい。
また、撮影装置51の感度の調整によって対応することができる場合には、光に多少赤色成分が含まれていてもよい。
【0091】
また、上記各実施形態では、出荷時における照度(青色光の強度)の設定値との比較において輪郭認識への影響度を判断する場合を例示したが、輪郭認識への影響度を判断する際の比較対象は出荷時の設定値に限定されず、例えば輪郭認識において誤認識を生じないとされる所定の理想値との比較において判断を行ってもよい。
【0092】
また上記各実施形態では、撮影装置51の感度の調整は、輪郭認識への影響度を考慮して行う場合を例示したが、調整の仕方や調整の程度は、毎回同じ設定でなくてもよく、装置の使用環境等に応じて適宜設定値を変えてもよい。
例えば印刷装置を使用する会場や、装置を設置する店舗の店内等が赤やオレンジ色等の暖色系の色味である場合等、各種の使用環境を考慮して適宜感度調整をカスタマイズしてもよい。
【0093】
また、上記各実施形態では、印刷装置が端末装置8と連携し、各種指示の入力や、画像やメッセージの表示等を端末装置8側で行う場合を例示したが、印刷装置の構成はこれに限定されない。
例えば印刷装置に表示部等を備えて、端末装置と連携することなく、印刷装置が単体で印刷動作を完結できるように構成してもよい。
【0094】
また、上記各実施形態では、印刷装置の制御部71が、撮影装置51によって取得された爪画像から爪Tの輪郭形状の認識等を行い、印刷データを生成する場合を例示したが、制御部71の構成はこれに限定されない。
例えば、撮影装置51によって取得された爪画像が端末装置側に送られ、端末装置の制御部81が爪画像から爪Tの輪郭形状の認識等を行い、印刷データを生成してもよい。この場合には印刷装置の制御部71は、印刷データを端末装置8から受け取り、印刷部4を動作させて印刷動作を行わせる。
【0095】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
装置内に配置された対象を撮影する撮影部と、
装置内に外光を取り込むことが可能である外光取込部と、
前記外光のうち第1波長域の光を遮断する遮光部材と、
を備え、
前記遮光部材は、少なくとも前記撮影部による撮影の際に、前記外光取込部に対応する位置に配置されることで前記第1波長域の光以外の第2波長域の光を装置内に透過させる、
ことを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記対象は印刷対象となる爪であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記外光取込部は、装置の前面又は側面であって前記対象が見える位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
<請求項4>
前記遮光部材は、前記第2波長域の光として前記対象の色に対する反対色又は補色の波長域の光を透過させるものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項5>
予め記憶されている照度の値と照度センサによって取得した値とを比較する比較部を備え、前記撮影部は、前記比較部の比較結果が許容範囲内である場合に撮影を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項6>
前記照度センサは、前記第2波長域の光に対して高い感度を有することを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
<請求項7>
前記比較部の比較結果が許容範囲内でない場合に、前記撮影部の撮影感度を調整する撮影制御部を備えていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の電子機器。
<請求項8>
前記遮光部材と交換可能であって、透過させる光の波長域を制限しない透明部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項9>
前記撮影部は、前記対象である爪への印刷中にも撮影を行い、
前記印刷中に前記撮影部によって撮影された爪の画像を出力する画像出力部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項10>
印刷動作を行う印刷ヘッドを備え、
前記印刷ヘッドは、非印刷時において前記外光取込部からの外光を遮らない第1の位置に配置され、印刷時において前記外光取込部から取り込まれた外光を遮断できる第2の位置に配置されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項11>
前記撮影部によって撮影された画像に基づいて前記対象である爪の輪郭形状を含む爪に関する情報を取得する情報取得部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項12>
前記爪に関する情報に基づいて設定された印刷範囲に印刷を施すように印刷動作を制御する印刷制御部を備えていることを特徴とする請求項11に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0096】
1 筐体
2 装置本体
3 指配置部
4 印刷部
41 印刷ヘッド
5 撮影部
51 撮影装置
6 照度センサ
15 外光取込部
16 遮光部材
71 制御部
100 印刷装置
Ar1 移動可能領域
Ar2 待機領域
Ar3 印刷動作領域
Ar4 メンテナンス領域
SL 外光
T 爪
U 指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7