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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189255
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】柱と梁との接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20221215BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E04B1/30 E
E04B1/58 508P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097742
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】澤口 香織
(72)【発明者】
【氏名】仁田脇 雅史
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB13
2E125AC04
2E125AC15
2E125AC29
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG31
2E125AG49
2E125BB01
2E125BB16
2E125BD01
2E125BE01
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】柱と梁の接合部において梁軸方向の引張剛性を柱曲げ耐力を確保しながら高めることができるとともに、柱と梁との接合部の施工性を向上させることができる柱と梁との接合構造を提供する。
【解決手段】鋼管21の内部にコンクリート23が充填されたコンクリート充填鋼管造の柱と鉄骨造の梁との接合構造1であって、梁3は、フランジ33と、ウェブ34と、を備え、柱2と梁3との接合部11に設けられたダイアフラム部材4を備え、ダイアフラム部材4は、鋼管21の外周面から外方に突出し、外周縁部411,421にフランジ33が接合された平面視環状の外ダイアフラム部4aと、外ダイアフラム部4aの内周縁部412,422に架設され、放射状に延びて形成される補強部4bと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管造の柱と鉄骨造の梁との接合構造であって、
前記梁は、フランジと、ウェブと、を備え、
前記柱と前記梁との接合部に設けられたダイアフラム部材を備え、
前記ダイアフラム部材は、
前記鋼管の外周面から外方に突出し、外周縁部に前記フランジが接合された平面視環状の外ダイアフラム部と、
前記外ダイアフラム部の内周縁部に架設され、放射状に延びて形成される補強部と、
を備えた、
柱と梁との接合構造。
【請求項2】
前記補強部は、前記内周縁部における前記フランジと前記外周縁部との接合部の平面視端部と前記柱の柱芯とを結ぶ線上に設けられる、
請求項1に記載の柱と梁との接合構造。
【請求項3】
前記外ダイアフラム部は、平面視円形の外形形状を有する、
請求項1または2に記載の柱と梁との接合構造。
【請求項4】
前記外周縁部と前記フランジとの接合面の形状は略一致する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の柱と梁との接合構造。
【請求項5】
前記補強部は、前記外周縁部の前記梁が接合される接合位置と前記梁の梁軸方向に近接対向する位置において前記内周縁部に架設される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の柱と梁との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と梁との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CFT造(コンクリート充填鋼管造)の柱とS造の梁(鉄骨梁)とを組み合わせたRCST構造では、柱と梁との接合形式として、梁が柱を貫通するように接合する梁貫通形式と、柱の外側に接合されたダイアフラムに梁を接合する外ダイアフラム形式が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
このうち、外ダイアフラム形式においては、鉛直方向の平面視が円形の円形外ダイアフラムや矩形の矩形外ダイアフラムが採用される。円形外ダイアフラムは、矩形外ダイアフラムと比べて外壁などとの納まりがよく、無駄のない架構計画を実施することができる。また、斜め梁に対して用いる場合に、柱と梁との接合部のディティールを簡略化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-2628号公報
【特許文献2】特開2020-2638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、円形ダイアフラムは、矩形ダイアフラムと比較して、梁からの引張力に抵抗する際に板面内方向および板面外方向に変形しやすいため、架構剛性が低下するという問題がある。
【0005】
また、柱の接合鉄筋の必要な定着長さを管理するためのガイドを設置する際に、梁貫通形式のように接合部内の貫通梁がなく、梁のフランジを利用することができないため、鉄筋配筋用の治具を別途接合部内に設ける必要がある等施工性に問題がある。
上記の問題を解決するために円形ダイアフラム内に貫通補強材を梁軸方向に設ける場合においても、補強材の幅長がある程度大きいと、柱断面内において最外端に鉄筋を配筋することができず、柱曲げ耐力の確保が非効率的になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、柱と梁の接合部において柱曲げ耐力を確保しながら梁軸方向の引張剛性を高めることができるとともに、柱と梁との接合部の施工性を向上させることができる柱と梁との接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る柱と梁との接合構造は、鋼管の内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管造の柱と鉄骨造の梁との接合構造であって、前記梁は、フランジと、ウェブと、を備え、前記柱と前記梁との接合部に設けられたダイアフラム部材を備え、前記ダイアフラム部材は、前記鋼管の外周面から外方に突出し、外周縁部に前記フランジが接合された平面視環状の外ダイアフラム部と、前記外ダイアフラム部の内周縁部に架設され、放射状に延びて形成される補強部と、を備える。
【0008】
上記の構成とすることで、ダイアフラム部材は、梁からの引張力に抵抗する際に板面内方向および板面外方向に変形することを抑制することができる。また、補強部の配設により、柱曲げ耐力を向上させることができる。そのため、柱曲げ耐力を確保しながら柱と梁との接合部の引張剛性を向上させることができる。
また、補強部を内周縁部に架設することにより、接合構造の施工時において、柱の接合鉄筋の必要な定着長さを管理するためのガイドを設置する際に、鋼管の内側に備えられる補強部を利用できる。そのため、現場施工作業の省力化等の柱と梁との接合部の施工性を向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造において、前記補強部は、前記内周縁部における前記フランジと前記外周縁部との接合部の平面視端部と前記柱の柱芯とを結ぶ線上に設けられてもよい。
【0010】
上記の構成において、「前記フランジと前記外周縁部との接合部の平面視端部と前記柱の柱芯とを結ぶ線上」なる構成は、接合構造の危険断面に含まれる。なお、一般的に曲げ応力に対する危険断面となる。そのため、上記の構成とすることで、補強部が接合構造の危険断面と重複して配設されるため、所望の柱曲げ耐力の確保に対してより合理的な構造とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造において、前記外ダイアフラム部は、平面視円形の外形形状を有してもよい。
【0012】
上記の構成とすることで、ダイアフラム部材を外壁等との納まり等を向上させた無駄のない構成で架構することができる。また、斜め梁等の複雑な構造に対して用いる場合に、柱と梁との接合部のディティールを簡略化することができる。
【0013】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造において、前記外周縁部と前記フランジとの接合面の形状は略一致してもよい。
【0014】
上記の構成とすることで、フランジとダイアフラム部材の外周縁部との接合性を向上させた状態で柱と梁との接合構造を形成することができる。
【0015】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造において、前記補強部は、前記外周縁部の前記梁が接合される接合位置と前記梁の梁軸方向に近接対向する位置において前記内周縁部に架設されてもよい。
【0016】
上記の構成とすることで、ダイアフラム部材の引張剛性と柱曲げ耐力とを効率よく向上させることができ、柱と梁との接合部における所望の引張剛性と柱曲げ耐力とを確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、柱と梁の接合部において柱曲げ耐力を確保しながら梁軸方向の引張剛性を高めることができるとともに、柱と梁との接合部の施工性を向上させることができる柱と梁との接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態による柱と梁との接合構造の一例を示す鉛直断面図であり、図2のB-B線に沿う鉛直断面図である。
図2】本発明の実施形態による柱と梁との接合構造の一例を示す水平断面図であり、図1のA-A線に沿う水平断面図である。
図3】本発明の実施形態による柱と梁との接合構造の一例におけるダイアフラム部材の斜視図である。
図4】本発明の実施形態による柱と梁との接合構造の一例における解析モデルに対する比較例を示す断面図である。(a)は比較例の鉛直断面図であり、(b)のE-E線に沿う鉛直断面図である。(b)は比較例の水平断面図であり、(a)のC-C線に沿う水平断面図である。
図5】本発明の実施形態による柱と梁との接合構造の一例における解析モデルと比較例との解析結果(変位と荷重との関係)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態による柱と梁との接合構造について、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態による柱と梁との接合構造1は、コンクリート充填鋼管造(CFT造)の柱2と鉄骨造(S造)の梁3との接合部11(以下、「柱梁接合部11」という)の構造である。
本実施形態において、柱梁接合部11は、鉛直方向に延びる上部の柱2と下部の柱2との間と、柱2に対して水平一方向に延びる梁3,3の間と、柱2に対して水平他方向に延びる梁3,3の間とに位置する。なお、以下の説明で特に断りがない限り、柱2に対する水平一方向をX方向、X方向に直交する柱2に対する水平他方向をY方向、梁3に対する鉛直方向(柱2の配設方向)をZ方向とする。
【0020】
柱2は、梁3に対するZ方向に延びる鋼管21と、鋼管21の内部に配置されZ方向に延びる鉄筋22と、鋼管21の内部に充填されたコンクリート23と、を備える。なお、図1図2および後述する本実施形態における解析モデルの比較例を説明する図4では、コンクリート23のハッチングを省略している。
【0021】
梁3は、H形鋼の鉄骨梁で、上フランジ31と下フランジ32とを備えるフランジ33と、ウェブ34と、を備える。梁3はZ方向平面視で隣り合う梁3に対して垂直に配設される。また、X方向に延びる梁3,3はX方向が梁軸方向となり、Y方向に延びる梁3,3はY方向が梁軸方向となる。上フランジ31と下フランジ32との鉛直方向の長さT1(フランジ厚)は略一致する。
【0022】
柱梁接合部11は、接合部鋼管24と、後述するダイアフラム部材4とを備える。ダイアフラム部材4は、外ダイアフラム部4aと補強部4bとを備える。外ダイアフラム部4aは、上ダイアフラム部41と下ダイアフラム部42とを備える。補強部4bは、上補強部43と下補強部44とを備える。本実施形態において、上ダイアフラム部41と下ダイアフラム部42および上補強部43と下補強部44とは、Z方向同軸上に配置される。また、上ダイアフラム部41と上補強部43および下ダイアフラム部42と下補強部44とは、それぞれ一体となって柱梁接合部11に設けられる。
【0023】
接合部鋼管24は、Z方向上部の柱2と下部の柱2との間に設けられ、柱梁接合部11は、上ダイアフラム部41と下ダイアフラム部42とを介してX方向に延びる梁3,3およびY方向に延びる梁3,3とX方向両端およびY方向両端の4箇所で接合されている。上ダイアフラム部41は上フランジ31と接合され、下ダイアフラム部42は下フランジ32と接合される。上ダイアフラム部41および下ダイアフラム部42は、Z方向平面視の外形形状が略円形となるように形成される。
また、接合部鋼管24は、柱2の鋼管21と略一致する径により形成され、鋼管21とZ方向同軸上に配置され、柱梁接合部11のZ方向の略全体にわたって延びている。接合部鋼管24の内部は、Z方向上部および下部の柱2の鋼管21内部に設けられる鉄筋22が連続して設けられ、鋼管21の内部と同様にコンクリート23が充填される。また、ウェブ34の端部(ウェブ端341)は対向する接合部鋼管24の外周面に溶接接合されてもよい。
【0024】
図1乃至図3に示すように、上ダイアフラム部41および下ダイアフラム部42は、接合部鋼管24の外周全体から円環状に突出するように設けられている。また、上ダイアフラム部41の外周縁部である上ダイアフラム外周縁部411(以下、「外周縁部411」という)は、X方向に延びる梁3,3と接合する箇所をYZ平面に沿ってカットされ、上梁接合部45が形成される。下ダイアフラム部42も同様に、外周縁部である下ダイアフラム外周縁部421(以下、「外周縁部421」という)は、X方向に延びる梁3,3と接合する箇所をYZ平面に沿ってカットされ、下梁接合部46が形成される。上記と同様に、外周縁部411および外周縁部421のY方向に延びる梁3,3と接合する箇所についてもXZ平面に沿ってカットされ、上梁接合部45および下梁接合部46が形成される。上記より、上梁接合部45および下梁接合部46はそれぞれX方向およびY方向に合計で4箇所形成される。
【0025】
上梁接合部45は、近接対向する梁3の上フランジ31の端部(以下、「上フランジ端311」という)と溶接接合される。また、上梁接合部45の接合面形状は、対向する上フランジ端311の接合面形状と略一致する大きさで形成される。また、下梁接合部46は、近接対向する梁3の下フランジ32の端部(以下、「下フランジ端321という」)と溶接接合される。また、また、下梁接合部46の接合面形状は、対向する下フランジ端321の接合面形状と略一致する大きさで形成される。
また、本実施形態において、ダイアフラム部材4のZ方向の長さ(ダイアフラム部厚)T2は、上フランジ31および下フランジ32のフランジ厚T1と略一致する。上ダイアフラム部41と上フランジ31および下ダイアフラム部42と下フランジ32とは、それぞれ梁軸方向に正面視で面一となるように形成される。
【0026】
上ダイアフラム部41は、上ダイアフラム内周縁部412(以下、「内周縁部412」という)が接合部鋼管24の外周全体のZ方向上端部と接合されている。下ダイアフラム部42は、下ダイアフラム内周縁部422(以下、「内周縁部422」という)が接合部鋼管24の外周全体のZ方向下端部と接合されている。
【0027】
上補強部43は、上ダイアフラム部41の内側(環状形状内)に設けられ、Z方向平面視において接合部鋼管24の内側に配置される。下補強部44も同様に、下ダイアフラム部42の内側(環状形状内)に設けられ、Z方向平面視において接合部鋼管24の内側に配置される。
上補強部43は、柱2の柱芯2aに設けられた上芯部431と内周縁部412との間を放射状に延びる上補強部材432を備える。同様に、下補強部44は、柱芯2aに設けられた下芯部441と内周縁部422との間を放射状に延びる下補強部材442を備える。なお、本実施形態において上補強部43と下補強部44とは、Z方向平面視の形状が略一致して形成されている。
また、ダイアフラム部材4が所望の性能を得られれば、上補強部43および下補強部44の構成は本実施形態に限定されない。例えば、上芯部431および下芯部441を省略し、上補強部材432および下補強部材442がそれぞれ柱芯2aで1箇所に集約する放射状形状に形成されてもよい。
【0028】
上補強部材432は、上フランジ31の上梁接合部45に近接対向する端部におけるX方向またはY方向の梁幅(上フランジ31の上梁接合部45に近接対向する端部における梁軸方向およびフランジ厚T1方向に直交する方向の部材長)W1の端部312と柱芯2aとを結ぶ線L1上に設けられる。
同様に、下補強部材442は、下フランジ32の下梁接合部46に近接対向する端部におけるX方向またはY方向の梁幅(下フランジ32の下梁接合部46に近接対向する端部における梁軸方向およびフランジ厚T1方向に直交する方向の部材長)W2の端部322と柱芯2aとを結ぶ線L2上に設けられる。
なお、本実施形態において、上補強部材432および下補強部材442は、X方向に延びる梁3およびY方向に延びる梁3に対して同様の構成により形成される。梁幅W1と梁幅W2とは略一致する。また、本実施形態において上補強部43と下補強部44とは、Z方向平面視の形状が略一致するため、線L1と線L2とは、Z方向平面視で重複する。以下、線L1と線L2とを線Lとおき、一例を図2に示す。
また、線Lを含むZ方向の断面は柱梁接合部11の曲げ応力に対する危険断面となり、上補強部材432および下補強部材442の配設向きは危険断面の延長上となる。なお、鋼管21および接合部鋼管24の内部に連続して設けられる鉄筋22は、ダイアフラム部材4の内側で上補強部43および下補強部44と干渉しない領域に挿通されている。
【0029】
上補強部43は、内周縁部412に対向する一方の端部が内周縁部412に接合されている。すなわち、上補強部43は、内周縁部412の内側に架設されている。また、上ダイアフラム部41と上補強部43とは、所望の外力に対する強度を有する鋼板を平板状に加工して一体として形成される。上ダイアフラム部41と上補強部43のZ方向上面は、正面視で面一となるように設けられている。また、Z方向下面についてもZ方向上面と同様に正面視で面一となるように設けられている。
同様に下補強部44は、内周縁部422に対向する一方の端部が内周縁部422に接合されている。すなわち、下補強部44は、内周縁部422の内側に架設されている。また、下ダイアフラム部42と下補強部44は、所望の外力に対する強度を有する鋼板を平板状に加工して一体として形成される。下ダイアフラム部42と下補強部44のZ方向上面は、正面視で面一となるように設けられている。また、Z方向下面についてもZ方向上面と同様に正面視で面一となるように設けられている。
また、ダイアフラム部材4が所望の性能を得られれば、上補強部43および下補強部44の構成は本実施形態に限定されない。例えば、上補強部43および下補強部44は、それぞれ内周縁部412および内周縁部422に対向する一方の端部が接合部鋼管24の内表面に接合されてもよい。
【0030】
次に、上記の本実施形態による柱と梁との接合構造1の作用・効果について説明する。
本実施形態による柱と梁との接合構造1では、ダイアフラム部材4は、接合部鋼管24の外周面から外方に突出し梁3が接合される環状の上ダイアフラム部41を備え、上ダイアフラム部41の内側に上補強部43が架設されている。また、同様に接合部鋼管24の外周面から外方に突出し梁3が接合される環状の下ダイアフラム部42を備え、下ダイアフラム部42の内側に下補強部44が架設されている。
上記の構成により、ダイアフラム部材4は、梁3からの引張力に抵抗する際に板面内方向および板面外方向に変形することを抑制することができる。そのため、柱曲げ耐力を確保しながら柱梁接合部11の引張剛性(架構剛性)を向上させることができる。
【0031】
また、上補強部材432は、上フランジ31の上梁接合部45に近接対向する端部におけるX方向またはY方向の梁幅W1の端部312と柱芯2aとを結ぶ線L上に設けられる。同様に、下補強部材442は、下フランジ32の下梁接合部46に近接対向する端部におけるX方向またはY方向の梁幅W2の端部322と柱芯2aとを結ぶ線L上に設けられる。
そのため、上補強部43および下補強部44は、それぞれ上フランジ31および下フランジ32と同軸上で放射状に延びるZ方向平面視の外径形状を形成する。また、鋼管21および接合部鋼管24の内部に設けられる鉄筋22は、ダイアフラム部材4の内側で上補強部43および下補強部44と干渉しない領域に挿通されている。
上記の構成により、柱梁接合部11の施工時において、鋼管21に梁3を通す必要がなく、柱2内部に設ける鉄筋22の必要な定着長さを管理するためのガイドを設置する際に、接合部鋼管24の内側に位置する放射形状の上補強部43および下補強部44を利用することにより、鉄筋22の位置に合わせてガイドを設置することができ、現場施工作業の省力化等の柱梁接合部11の施工性を向上させることができる。
また、上記の構成により、ダイアフラム部材4は、柱梁接合部11の曲げ応力に対する危険断面に上補強部43および下補強部44が配設されるため、柱2からの曲げ応力に対して所望の曲げ耐力を確保して、所望の梁軸方向の引張剛性を確保することができる。
【0032】
また、本実施形態による柱と梁との接合構造1において、ダイアフラム部材4は、X方向およびY方向両側の4方向から梁3が接合される。上補強部43は外周縁部411の梁3が接合される4つの位置とそれぞれ対向する4箇所において、内周縁部412に接合される。下補強部44も同様に、外周縁部421の梁3が接合される4つの位置とそれぞれ対向する4箇所において、内周縁部422に接合される。梁3は隣り合う梁3に対してZ方向の平面視で垂直に配設される。また、X方向に延びる梁3,3はX方向が梁3の梁軸方向となり、Y方向に延びる梁3,3はY方向が梁3の梁軸方向となる。
上記の構成により、ダイアフラム部材4と4つの梁3とが十字状に接合される構成となるため、ダイアフラム部材4の剛性を効率よく向上させることができ、柱梁接合部11における所望の剛性を確保することができる。
【0033】
また、本実施形態による柱と梁との接合構造1において、上ダイアフラム部41および下ダイアフラム部42は、接合部鋼管24の外周全体から円環状に形成されている。また、外周縁部411は、X方向に延びる梁3,3と接合する箇所をYZ平面に沿ってカットされ、上梁接合部45が形成される。Y方向に延びる梁3,3と接合する箇所についても同様にXZ平面に沿ってカットされ、上梁接合部45が形成される。外周縁部421も同様に、X方向に延びる梁3,3と接合する箇所をYZ平面に沿ってカットされ、下梁接合部46が形成され、Y方向に延びる梁3,3と接合する箇所をXZ平面に沿ってカットされ、下梁接合部46が形成される。以上より、上梁接合部45および下梁接合部46はそれぞれX方向およびY方向に合計で4箇所形成される。
上記の構成により、梁3とダイアフラム部材4とを確実に接合し、ダイアフラム部材4を周囲の構造物に対して無駄のない構成で架構することができる。また、斜め梁等の複雑な構造に対して、柱梁接合部11のディティールを簡略化することができる。また、柱梁接合部11をフランジ33と外周縁部411,421との接合性を向上させた構成で形成することができる。
【0034】
次に、本実施形態による柱と梁との接合構造のダイアフラム部材の剛性に関する解析について説明する。
本実施形態の解析モデルでは、Y方向両側の梁3,3は無視する。スケールは50%であり、X方向両側の梁3,3(SN490B材)は上フランジ31,下フランジ32の梁幅W1,W2(図3参照)を170mm、フランジ厚T1を25mm、ウェブ厚を18mmとする。上ダイアフラム部41および下ダイアフラム部42(SN490B材)は外径D1を600mm、内径D2を430mm、ダイアフラム部厚T2を25mmとし、上梁接合部45および下梁接合部46は梁端に15mmずつ水平部を設ける大きさでYZ平面に沿ってカットした。上補強部材432および下補強部材442の幅長Wdは10mmとする。50%スケールの要素実験試験結果と比較するため、材料降伏点には試験体の実降伏強度値350.8N/mmを用いたが、ヤング係数には一般値2.05×10N/mmを用いた。また、鋼管21および接合部鋼管24の内部に充填したコンクリート23は無視し、中空条件とした。
【0035】
また、上記の解析モデルの比較例として、比較例1を上補強部43および下補強部44を設けない構成(無補強)とした柱と梁との接合構造とし、比較例2を図4に示すように、上補強部43および下補強部44がZ方向平面視でX軸およびY軸を通る十字形状(補強材幅長20mm)の外形形状を有する構成(十字貫通補強)とした柱と梁との接合構造とする。また、比較例1および比較例2は、本実施形態の解析モデルと同様にY方向両側の梁3,3と、鋼管21および接合部鋼管24の内部に充填したコンクリート23とは無視する。
上記の解析モデルおよび比較例について、X方向両側の梁3,3に逆方向で同じ大きさの強制変位を与える。解析は平面FEM解析によって実施し、解析結果として与えた荷重と変位量との関係図を図5に示す(図5において、本実施形態の解析モデルを「実施例」と称する。)。
【0036】
図5に示す解析結果から、本実施形態の解析モデルは、同一変形時の比較例2と比較して危険断面の発生応力度を低減した。また、変位が7mm付近の荷重を比較すると、比較例1に対して本実施形態の解析モデルが約1.8倍、比較例2が約2.0倍の反力を有しており、本実施形態の解析モデルは、補強部の配設による補強効果(引張剛性の増加)があることがわかる。
【0037】
以上、本発明による柱と梁との接合構造1の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、ダイアフラム部材4は、Z方向平面視の外形形状が略円形となる環状に形成されているが、環状矩形形状や環状多角形形状等で形成されてもよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、ダイアフラム部材4には、X方向およびY方向両側の4方向から梁3が接合され、上補強部43は、外周縁部411における梁3が接合される4つの位置とそれぞれ対向する4つの位置において内周縁部412に架設される。下補強部44は、同様に外周縁部421における梁3が接合される4つの位置とそれぞれ対向する4つの位置において内周縁部422に架設される。
上記の構成について、柱と梁との接合構造1は本実施形態に限定されない。例えば、梁3が接合される位置や、上ダイアフラム部41および下ダイアフラム部42に対して上補強部43および下補強部44が接続される位置は適宜設定されてもよいし、構造物の隅部の柱2(隅柱)等の梁3が2方向や3方向から接合される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 柱と梁との接合構造
2 柱
2a 柱芯
3 梁
4 ダイアフラム部材
4a 外ダイアフラム部
4b 補強部
11 柱と梁との接合部
21 鋼管
22 鉄筋
23 コンクリート
33 フランジ
34 ウェブ
411 上ダイアフラム外周縁部
412 上ダイアフラム内周縁部
421 下ダイアフラム外周縁部
422 下ダイアフラム内周縁部
図1
図2
図3
図4
図5