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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018926
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】食用油用の濾過処理剤
(51)【国際特許分類】
   C11B 13/00 20060101AFI20220120BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20220120BHJP
   B01D 35/02 20060101ALI20220120BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20220120BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20220120BHJP
   A47J 37/12 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C11B13/00
B01D29/04 510A
B01D29/04 510D
B01D29/04 530B
B01D35/02 E
B01J20/24 B
B01D39/16 E
A47J37/12 391
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122377
(22)【出願日】2020-07-16
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】507381628
【氏名又は名称】株式会社コマツ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】小松 節朗
【テーマコード(参考)】
4B059
4D019
4D116
4G066
4H059
【Fターム(参考)】
4B059AA01
4B059AB02
4B059BF07
4D019AA03
4D019BA12
4D019BA13
4D019BB01
4D019BC05
4D019BD01
4D019CA04
4D116AA01
4D116BB01
4D116BC03
4D116BC71
4D116DD01
4D116EE03
4D116EE06
4D116FF13B
4D116GG12
4D116GG34
4D116HH14C
4D116KK06
4D116QA41C
4D116QA41F
4D116VV06
4G066AA30B
4G066AC02B
4G066BA09
4G066BA12
4G066BA20
4G066BA36
4G066CA05
4G066CA43
4G066CA56
4G066DA08
4G066FA37
4H059AA11
4H059BC01
4H059BC45
4H059CA05
4H059CA21
4H059CA93
4H059EA23
(57)【要約】
【課題】使用済みの食用油の寿命を延ばすことが可能な食用油用の濾過処理剤を提供する。
【解決手段】食用油用の濾過処理剤1は、使用済みの食用油を再生するために用いられ、食用油中の不純物を吸着する吸着剤10と、食用油及び吸着剤10を濾過するための濾過シート20と、を備えている。吸着剤10は、食用油中の水分を少なくとも吸着する粉状又は粒状の吸着材料を含む混合物である。濾過シート20は、吸着材料よりも低い水分吸着性を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの食用油を再生するために用いられる濾過処理剤であって、
前記食用油中の不純物を吸着する吸着剤と、
前記食用油及び前記吸着剤を濾過するための濾過シートと、を備え、
前記吸着剤は、前記食用油中の水分を少なくとも吸着する粉状又は粒状の吸着材料を含む混合物であって、
前記濾過シートは、前記吸着材料よりも低い水分吸着性を有していることを特徴とする食用油用の濾過処理剤。
【請求項2】
前記吸着材料は、セルロースであって、
前記吸着剤は、前記セルロースと、前記食用油中の遊離脂肪酸を少なくとも吸着する粉状又は粒状の第2吸着材料とを含む混合物であって、
前記吸着剤の総重量に対して前記セルロースの含有量が前記第2吸着材料の含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の食用油用の濾過処理剤。
【請求項3】
前記第2吸着材料は、ケイ酸マグネシウムであって、
前記吸着剤の総重量に対して、前記セルロースの含有量が15~25重量%であることを特徴とする請求項2に記載の食用油用の濾過処理剤。
【請求項4】
前記セルロースは、
植物由来のパルプを原材料とし、
標準篩い法で測定される粒度分布において50メッシュ通過粒子が90%以上であって、
JIS P-8203に基づいて測定される含水率が7.0%以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の食用油用の濾過処理剤。
【請求項5】
前記濾過シートは、ポリエステル繊維又はセルロース繊維を含むシートであって、
前記濾過シートの坪量が80~120g/mであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の食用油用の濾過処理剤。
【請求項6】
前記濾過処理剤は、前記吸着剤と、該吸着剤を封入するように重ね合わせて設けられた複数の前記濾過シートと、を備えており、
前記濾過処理剤の表面側に位置する第1濾過シートの繊維間隙間が、前記濾過処理剤の裏面側に位置する第2濾過シートの繊維間隙間よりも大きくなっており、
前記第2濾過シートは、前記第1濾過シートと同じ又は前記第1濾過シートよりも低い水分吸着性を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の食用油用の濾過処理剤。
【請求項7】
温度170~180度の前記食用油を前記吸着材料中に5分間通したときの、前記食用油中の水分量から求められる前記吸着材料による水分除去率が、カールフィッシャー法による測定において30%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の食用油用の濾過処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な食用油用の濾過処理剤に係り、特に使用済みの食用油を再生するために用いられる食用油用の濾過処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーや惣菜屋、コンビニエンスストアー等では、揚げ物調理において大量の食用油が使用されている。揚げ物調理では、高温に加熱された食用油中に惣菜等の揚げ種を繰り返し投入するため、食用油が加水分解や酸化等によって変質し、劣化してしまう。劣化した食用油を使用すると、揚げ物の褐色化、味や香りの低下を引き起こすとともに、揚げ物の保存性も低下してしまう。
そうしたなかで、劣化した食用油(使用済みの食用油)を粉状の吸着剤中に通すことで、食用油中の不純物(遊離脂肪酸等)を吸着除去し、当該食用油及び吸着剤を濾過シートで濾過することで、劣化した食用油の脱色、脱酸及び脱臭を行い、当該食用油を再生することが可能な濾過処理剤が広く知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の濾過処理剤は、濾過装置内に設置され、使用済みの食用油を再生剤(吸着剤)と不織布製の濾布(濾過シート)とを用いて濾過処理するものである。
詳しく述べると、濾過処理剤は、粉状の再生剤と、当該再生剤を封入するように重ね合わせて設けられた2枚の濾布と、から構成されている。また、2枚の濾布について食用油が出て行く裏面側の濾布の繊維間隙間が、食用油が入り込む表面側の濾布の繊維間隙間よりも小さくなっている。
上記構成により、再生剤の飛散を防止することができ、また再生剤の交換も容易になる。
【0004】
特許文献2に記載の食用油の濾過処理剤も同様であって、2種類以上の粉末状の吸着性濾過材を混合したものを繊維製の袋に封入して構成されている。
吸着性濾過材の候補としては、セルロースのほか、シリカ、活性白土、珪藻土、ゼオライト、活性炭等から選定されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-199661号公報
【特許文献2】特開2010-65077号公報
【0006】
ところで、特許文献1、2のような食用油用の濾過処理剤において、揚げ物調理を行う業者のコスト削減、揚げ物の品質維持、フライヤーの安全性確保を主な目的として、使用済みの食用油をより効果的に再生し、従来よりも食用油の寿命を延ばすことが求められていた。
また、使用済みの食用油中に含まれる不純物をより短い時間で除去し(急速除去し)、食用油を効率良く再生することが可能な濾過処理剤が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、新規な食用油用の濾過処理剤を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、使用済みの食用油の寿命を延ばすことが可能な食用油用の濾過処理剤を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、使用済みの食用油中に含まれる不純物をより短い時間で除去し、食用油を効率良く再生することが可能な食用油用の濾過処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究した結果、使用済みの食用油を濾過処理剤を用いて再生するにあたって、当該食用油を濾過する濾過シートが、食用油中に含まれる水分によって目詰まりを起こしてしまい、濾過機能を失ってしまうことを見出した。特に、水分量の多い揚げ種(例えば、豆腐)を揚げる際に用いられる食用油を再生するにあたっては、濾過シートの目詰まりが比較的早く起こることを見出した。
そして、食用油中の水分による濾過シートの目詰まりを抑制することで、濾過処理剤の寿命を延ばすことができ、使用済み食用油の寿命を従来よりも延ばすことができることを見出して、本発明をするに至った。
【0009】
従って、前記課題は、本発明によれば、使用済みの食用油を再生するために用いられる食用油用の濾過処理剤であって、前記食用油中の不純物を吸着する吸着剤と、前記食用油及び前記吸着剤を濾過するための濾過シートと、を備え、前記吸着剤は、前記食用油中の水分を少なくとも吸着する粉状又は粒状の吸着材料を含む混合物であって、前記濾過シートは、前記吸着材料よりも低い水分吸着性を有していることによって解決される。
上記構成により、使用済みの食用油の寿命を延ばすことが可能な新規の食用油用の濾過処理剤を実現することができる。
詳しく述べると、吸着剤が食用油中の水分を吸着する粉状又は粒状の吸着材料を含む混合物であって、かつ、濾過シートが吸着材料よりも低い水分吸着性を有しているため、吸着剤が食用油中の水分を積極的に吸着除去することで、濾過シートが食用油及び吸着剤を濾過するときに、食用油中の水分に曝されることが抑制される。また、一般的に濾過シートは水分吸着性を有する材料から形成されているところ、本発明の濾過シートは、吸着材料よりも低い水分吸着性を有する材料からなるため、当該濾過シートが食用油中の水分を吸着することを抑え、濾過シートの水分による目詰まりを抑制することができる。
その結果、本発明者は、濾過処理剤の寿命を延ばすことができ、使用済み食用油の寿命を延ばすことを達成している。
【0010】
このとき、前記吸着材料は、セルロースであって、前記吸着剤は、前記セルロースと、前記食用油中の遊離脂肪酸を少なくとも吸着する粉状又は粒状の第2吸着材料とを含む混合物であって、前記吸着剤の総重量に対して前記セルロースの含有量が前記第2吸着材料の含有量よりも少ないと良い。
また、前記第2吸着材料は、ケイ酸マグネシウムであって、前記吸着剤の総重量に対して、前記セルロースの含有量が15~25重量%であると良い。
また、前記セルロースは、植物由来のパルプを原材料とし、標準篩い法で測定される粒度分布において50メッシュ(目開き297μm)通過粒子が90%以上であって、JIS P-8203に基づいて測定される含水率が7.0%以下であると良い。
また、前記濾過シートは、ポリエステル繊維又はセルロース繊維を含むシートであって、前記濾過シートの坪量が80~120g/mであると良い。
上記のように、食用油中の水分による濾過シートの目詰まりを一層抑制するために、好適な吸着材料(セルロース)、セルロースの含有量、セルロースの原材料、セルロースの粒径、セルロースの含水率等を定めることで、理想的な濾過処理剤を実現することができる。
また、好適な濾過シート(ポリエステル繊維又はセルロース繊維製のシート)、濾過シートの坪量を定めることで、理想的な濾過処理剤を実現できる。
【0011】
このとき、前記濾過処理剤は、前記吸着剤と、該吸着剤を封入するように重ね合わせて設けられた複数の前記濾過シートと、を備えており、前記濾過処理剤の表面側に位置する第1濾過シートの繊維間隙間が、前記濾過処理剤の裏面側に位置する第2濾過シートの繊維間隙間よりも大きくなっており、前記第2濾過シートは、前記第1濾過シートと同じ又は前記第1濾過シートよりも低い水分吸着性を有していると良い。
上記のように、濾過処理剤は、吸着剤を封入するように複数の濾過シートを重ね合わせて設けられているため、吸着剤の飛散を防止することができ、また濾過処理剤を容易に交換することもできる。
また上記のように、濾過処理剤の裏面側に位置する第2濾過シートが、濾過処理剤の表面側に位置する第1濾過シートと同じ又はより低い水分吸着性を有している。そのため、繊維間隙間がより小さい第2濾過シートにおいて、食用油中の水分による目詰まりを一層抑え易くすることができる。その結果、濾過処理剤の寿命を延ばすことができる。
【0012】
このとき、温度170~180度の前記食用油を前記吸着材料中に5分間通したときの、前記食用油中の水分量から求められる前記吸着材料による水分除去率が、カールフィッシャー法による測定において30%以上であると良い。
上記構成により、使用済みの食用油中に含まれる不純物をより短い時間で除去し(急速除去し)、食用油を効率良く再生することができる。
詳しく述べると、使用済みの食用油中に含まれる水分を比較的短い時間で効率良く除去することができるため、濾過シートの水分による目詰まりを一層抑えることができる。水分による目詰まりを抑えることで、濾過シートが食用油を効率良く濾過することができる。言い換えれば、濾過シートが、不純物を除去した食用油を効率良く通すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規な食用油用の濾過処理剤を実現することができる。
また、使用済みの食用油の寿命を延ばすことが可能な濾過処理剤を実現できる。
また、使用済みの食用油中に含まれる不純物をより短い時間で除去し、食用油を効率良く再生することが可能な濾過処理剤を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の濾過処理剤の外観斜視図である。
図2図1のII-II断面図であって、吸着剤及び濾過シートを示す図である。
図3】濾過装置の縦断面図であって、濾過装置内に濾過処理剤が設置された状態を示す図である。
図4図3の要部拡大図であって、濾過処理剤が設置された状態を示す図である。
図5図4のV-V断面図であって、濾過処理剤を除いた状態を示す図である。
図6】第2実施形態の濾過処理剤の外観斜視図である。
図7】実施例1-6の吸着材料(セルロース)の物性、各吸着材料による食用油中の水分除去効果の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図1図7を参照しながら説明する。
本実施形態は、使用済みの食用油を再生するために用いられる濾過処理剤であって、食用油中の不純物を吸着する吸着剤と、食用油及び吸着剤を濾過するための濾過シートと、を備えており、吸着剤は、食用油中の水分を少なくとも吸着する粉状又は粒状の吸着材料を含む混合物であって、濾過シートは、吸着材料よりも低い水分吸着性を有していることを主な特徴とする食用油用の濾過処理剤の発明に関するものである。
【0016】
<濾過処理剤>
濾過処理剤1は、図1図4に示すように、濾過装置D内に設置され、使用済みの食用油を通過させて当該食用油を再生する際に用いられる座布団状の袋体であって、食用油中の不純物を吸着する吸着剤10と、吸着剤10を封入するように2枚重ね合わせて設けられた濾過シート20と、から主に構成されている。
ここで「食用油」とは、揚げ物調理において揚げ種を揚げるために高温(例えば、170~180度)に加熱して用いられる植物性油又は動物性油である。「植物性油」としては、菜種油、胡麻油、コーン油、パーム油、サラダ油等が挙げられ、「動物性油」としては、バター、ラード、魚油、鶏油等が挙げられる。
「使用済みの食用油」とは、繰り返しの揚げ物調理によって劣化した食用油であって、当該食用油中には不純物が含まれている。「不純物」としては、油の劣化によって生じた遊離脂肪酸(劣化生成物)、水分、揚げ滓(夾雑物)が主に挙げられる。
【0017】
吸着剤10は、食用油中の不純物のうち、水分を少なくとも吸着する粉状の吸着材料11と、遊離脂肪酸を少なくとも吸着する粉状の第2吸着材料12とを含む混合物である。
吸着材料11は、好ましくは「セルロース(セルロース粉末)」である。セルロースであれば、食用油中の水分や細かい揚げ滓等を吸着することができる。
第2吸着材料12は、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、マグネシア、二酸化ケイ素、珪藻土及び活性白土からなる群から選択されるものであって、好ましくは「ケイ酸マグネシウム」である。
なお、吸着材料11は、セルロースに特に限定されることなく、食用油中の水分を吸着する水分吸着性の比較的高い材料であれば適宜採用することができる。
第2吸着材料12も、食用油中の遊離脂肪酸を吸着する脂肪酸吸着性の比較的高い材料であれば適宜採用することができる。
【0018】
吸着剤10は、吸着材料11と第2吸着材料12の混合物であって、吸着材料11の含有量が第2吸着材料12の含有量よりも少なくなるように構成されている。
詳しく述べると、吸着剤10の総重量に対して吸着材料11の含有量が10~30重量%、好ましくは15~25重量%、より好ましくは18~20重量%であると良い。
また、第2吸着材料の含有量が70~90重量%、好ましくは75~85重量%、より好ましくは80~82重量%であると良い。
例えば、吸着剤10の総重量が370gである場合に、吸着材料11が70g、第2吸着材料が300gであると良い。
【0019】
上記のように、吸着材料11の含有量が第2吸着材料12の含有量よりも少ないことで、吸着剤10が食用油中の遊離脂肪酸及び水分を効率良く吸着し、濾過シート20の水分による目詰まりを抑えられることが確認されている。
また、吸着剤10の総重量に対して吸着材料11の含有量が15~25重量%であって、第2吸着材料の含有量が75~85重量%であるときに濾過シート20の目詰まりを好適に抑えられることが確認されている。
一方で、吸着材料11の含有量が第2吸着材料12の含有量よりも多くなってしまうと、吸着剤10が食用油中の遊離脂肪酸を効率良く吸着することができず、食用油中に含まれる不純物を短い時間で除去できないことが確認されている。
【0020】
濾過シート20は、食用油及び吸着剤10を濾過するための矩形状の濾紙又は濾布であって、吸着材料11よりも低い水分吸着性を有する繊維状のシートである。
濾過シート20は、「ポリエステル繊維」又は「セルロース繊維」、好ましくは「ポリエステル繊維」からなるシートであって、濾過処理剤1の表面側に位置する第1濾過シート21と、濾過処理剤1の裏面側に位置する第2濾過シート22と、から主に構成されている。
第1濾過シート21及び第2濾過シート22は、上下方向に重ね合わされて配置されており、重ね合わせた外周部分20aが密閉接合され、重ね合わせた中央部分20bがやや膨出するように形成されている。
詳しく述べると、濾過シート20の四辺それぞれからやや内側に位置する外周部分20aには、2枚のシートを密閉接合するための接合部23が形成されている。そして、濾過シート20の中央部分20bの内部には、吸着剤10が略均一な厚さとなるように充填されている。
【0021】
上記濾過シート20では、第1濾過シート21の繊維間隙間が、第2濾過シート22の繊維間隙間よりも大きくなっている。
詳しく述べると、第1濾過シート21の「坪量」が50~90g/m、好ましくは60~80g/mとなるように設定されており、第2濾過シート22の「坪量」が80~120g/m、好ましくは90~110g/mとなるように設定されている。
そのため、第1濾過シート21が、食用油中の揚げ滓等を捕捉することができ、第2濾過シート22が、食用油中の細かな揚げ滓等を捕捉できることが確認されている。また、濾過シート20から吸着剤10が漏れ出すことがないことが確認されている。
【0022】
また上記濾過シート20では、第2濾過シート22が、第1濾過シート21と同じ又は第1濾過シート21よりも低い水分吸着性を有している。好ましくは、第2濾過シート22が、第1濾過シート21よりも低い水分吸着性を有している。
そのため、第1濾過シート21よりも繊維間隙間が小さく、目詰まりし易い第2濾過シート22が、食用油中の水分によって目詰まりを起こしてしまうことを抑えることができる。その結果、濾過処理剤1の寿命が延びることが確認されている。
【0023】
<濾過処理剤の物性>
本実施形態の吸着剤10は、吸着材料11及び第2吸着材料12の混合物であって、吸着材料11は「セルロース」であり、第2吸着材料は「ケイ酸マグネシウム」であると好ましい。
また、本実施形態のセルロースは、「植物由来のパルプ」を原材料とすることができる。
植物由来のパルプとしては、例えば、イネ科植物、広葉樹または針葉樹から産生される植物由来のパルプが挙げられる。好ましくは「広葉樹」であると良い。
パルプとしては、入手しやすく安価である点から製紙用パルプ(精選パルプ)を用いることができ、製造方法は特に限定されないが、例えば漂白クラフトパルプ、未晒クラフトパルプ、古紙パルプ等のパルプが挙げられる。
【0024】
本実施形態のセルロースは、標準篩い法で測定される「粒度分布」において50メッシュ(目開き297μm)通過粒子が90%以上であって、「平均粒子径」が40~50μmであると好ましい。
上記セルロースの「粒度分布」、「平均粒子径」であれば、食用油中の水分を効果的に吸着除去することができることが確認されている。すなわち、セルロース1gあたりの水分吸着量が格段に高くなることが確認されている。詳しく述べると、セルロースの繊維長が比較的長くなって繊維間隙間が大きくなるため、当該隙間に水分を溜めこみ易くなることが主な理由として挙げられる。
そのほか、「粒度分布」において100メッシュ通過粒子が90%以上、「平均粒子径」が30~40μmのセルロースであっても良いし、「粒度分布」において400メッシュ通過粒子が90%以上、「平均粒子径」が20~30μmのセルロースであっても良い。
なお、セルロースの「粒度分布」において各メッシュ通過粒子が90%未満になってしまうと、セルロースの粒度が均一化されず、食用油中の水分を好適に吸着除去できなくなることが確認されている。
また、セルロースの「平均粒子径」が20μm未満になってしまうと、食用油中の水分を好適に吸着除去できず、かつ、濾過シート20から漏れ出す虞があることが確認されている。さらに、セルロースの「平均粒子径」が50μm以上になってしまうと、食用油中の水分以外の不純物を好適に吸着除去できなくなることが確認されている。
【0025】
本実施形態のセルロースは、JIS P-8203に基づいて測定される「含水率」が10.0%以下、好ましくは7.0%以下であると良い。
上記セルロースの「含水率」が10.0%超えになってしまうと、食用油中の水分を効果的に吸着できないことが確認されている。
また、セルロースの「含水率」が10.0%以下、好ましくは7.0%以下であると、食用油中の水分を効果的に吸着することができ、かつ、製品の品質を確保し易くなることが確認されている。
【0026】
本実施形態のセルロースは、「嵩比重(見掛比重)」が0.10~0.30g/mlであって、好ましくは0.15~0.20g/mlであると良い。
上記セルロースの「嵩比重」であれば、食用油中の水分を効果的に吸着除去することが確認されている。また、セルロース粉末が比較的軽量になるため、濾過処理剤1(吸着剤10)の取り扱いが容易になること、製品の品質を確保し易くなることが確認されている。
【0027】
本実施形態のセルロースは、水及び有機溶剤に不溶であると好ましい。
また本実施形態のセルロースは、JIS P-8133に基づいて測定される「熱水抽出pH」が5.0~7.5、好ましくは6.0~8.0であると良い。また、JIS P-8204に基づいて測定される「含灰率」が0.3%以下、好ましくは0.25%以下であると良い。さらに、JIS P-8123に基づいて測定される「白色度」が80%以上、好ましくは85%以上であると良い。
上記セルロースの「熱水抽出pH」、「含灰率」、「白色度」であれば、食用油中の水分を効果的に吸着除去することが確認されている。また、製品の品質を確保し易くなることが確認されている。
【0028】
本実施形態のセルロースについて、温度170~180度の使用済み食用油をセルロース中に5分間通したときの、食用油中の水分量から求められるセルロースによる「水分除去率」は、カールフィッシャー法による測定において25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは30~40%であると良い。
上記セルロースによる「水分除去率」であれば、使用済みの食用油中に含まれる水分を短い時間で(急速で)吸着除去することができ、濾過シート20の水分による目詰まりを一層抑えられることが確認されている。水分による目詰まりを抑えることで、濾過シートが食用油を効率良く濾過することができる。
【0029】
本実施形態のケイ酸マグネシウムは、ケイ酸マグネシウムの総重量に対して「二酸化ケイ素(SiO)」の含有量が60%以上、好ましくは67%以上であると良く、「酸化マグネシウム(MgO)」の含有量が10%以上、好ましくは15%以上であると良い。
上記ケイ酸マグネシウムであれば、食用油中の遊離脂肪酸等を効果的に吸着除去すること、製品の品質を確保し易くなることが確認されている。
【0030】
<濾過処理剤の使用方法>
次に、濾過処理剤1を含む濾過装置Dの使用方法について、図3図5に基づいて説明する。
濾過装置Dは、小型のフライヤーFの下方に設置され、濾過処理剤1を用いて使用済みの食用油Lを濾過及び再生(以下、濾過処理とも呼ぶ。)するための装置である。
濾過装置Dは、上方に位置する未処理室D1aと、下方に位置する処理済室D1bとに仕切り部D2で分けられた油処理室D1を備えており、当該仕切り部D2上には金網D2aが取り付けられている。そして、濾過処理剤1が、仕切り部D2及び金網D2a上に設置されている。
また、仕切り部D2上には、濾過処理剤1を位置決めするための矩形枠D2bが取り付けられており、ハンドルD2cを操作することで矩形枠D2bを押し下げることができる。
処理済室D1bの底部には、吸引管D3が設けられており、濾過処理剤1によって濾過処理された食用油をポンプD4で吸引することで、未処理室D1aに戻して循環させることができる。また、食用油が充分に濾過処理された後は、処理済みの食用油をフライヤーFに再び戻すことが可能となっている。
その後、濾過装置Dの未処理室D1aから濾過処理剤1を必要に応じて取り除き、新たなものと交換することができる。
【0031】
上記構成により、使用済みの食用油は、まず、滓受けかごD5を通って未処理室D1a内に溜められることで、未処理室D1a内の食用油中から「大きな揚げ滓」が除去される。
そして、使用済みの食用油は、自重及びポンプD4で吸引されることで第1濾過シート21、吸着剤10、第2濾過シート22の順に濾過処理剤1中を通過し、濾過処理される。
詳しく述べると、濾過処理剤1は、第1濾過シート21によって食用油中の「中程度の大きさの揚げ滓」等を濾過し、吸着剤10によって食用油中の「遊離脂肪酸」、「水分」、「細かい揚げ滓」等を吸着除去し、かつ、第2濾過シート22によって食用油中の「細かい揚げ滓」等を濾過する。
繰り返し濾過処理された食用油は、フライヤーFの油溜めF1に戻され、再度揚げ物調理に使用される。
【0032】
<その他の実施形態>
上記実施形態において、図1に示すように、濾過処理剤1は、吸着剤10と、吸着剤10を封入するように2枚重ね合わせて設けられた濾過シート20とから構成されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、図6に示すように、濾過処理剤101が、吸着剤110と、1枚の濾過シート120とから構成されていても良い。
上記構成であっても、使用済みの食用油の寿命を延ばすことが可能な新規の食用油用の濾過処理剤を実現することができる。
【0033】
上記実施形態において、吸着剤10は、吸着材料11と第2吸着材料12からなる混合物であるが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、吸着剤10が、食用油中の水分を吸着する吸着材料11を含む3種類以上の吸着材料からなる混合物であっても良い。
その場合には、吸着剤10の総重量に対して吸着材料11の含有量がその他の吸着材料全部の含有量よりも少なくなっていることが好ましい。
【0034】
上記実施形態では、主として本発明に係る濾過処理剤に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【実施例0035】
以下、本発明における吸着材料11の実施例について詳しく説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0036】
<吸着材料の実施例1-6>
図7に示すように、吸着材料11として実施例1-6の「セルロース」を用意した。
詳しく述べると、実施例1-6のセルロースは、広葉樹由来の精選パルプを原材料とする粉末状のセルロースであって、図7に示す「粒度」、「平均粒子径」、「含水率」、「含灰率」、「嵩比重(見掛比重)」、「pH(熱水抽出pH)」及び「白色度」となるように調製したものを用意した。
【0037】
<試験1:吸着材料による食用油中の水分除去効果>
実施例1-6のセルロースを吸着材料として用いて、温度170~180度の使用済み食用油(菜種油)18Lをセルロース100g中に5分間通したときの、当該食用油中の水分量から求められる各セルロースによる水分除去率(%)を測定し、各セルロースによる「水分除去効果」について下記の評価基準に従って判定した。

◎:食用油中の水分を好適に除去している
〇:食用油中の水分を除去している
×:食用油中の水分をほぼ除去していない

食用油をセルロース中に5分間通す方法として、図3図5に示すような公知の濾過装置(吐き出し量10L/分)を用いて食用油を循環させることとした。
セルロースによる水分除去率(%)の測定方法としては、カールフィッシャー法による測定方法を採用することとした。
【0038】
試験1の試験結果を図7に示す(n=2)。
図7の試験結果から、実施例1-6全てのセルロースについて、使用済みの食用油中の水分を除去していることが確認された。また、実施例1のセルロースについて、使用済みの食用油中の水分を好適に除去していることが確認された。
また図7の試験結果から、実施例1-6全てのセルロースについて、使用済みの食用油中に含まれる水分を短い時間(5分間)で除去していることが確認された。
【符号の説明】
【0039】
1、101 濾過処理剤
10、110 吸着剤
20、120 濾過シート
20a 外周部分
20b 中央部分
21 第1濾過シート(表面側濾過シート)
22 第2濾過シート(裏面側濾過シート)
23 接合部
L 食用油
D 濾過装置
D1 油処理室
D1a 未処理室
D1b 処理済室
D2 仕切り部
D2a 金網
D2b 矩形枠
D2c ハンドル
D3 吸引管
D4 ポンプ
D5 滓受けかご
F フライヤー
F1 油溜め
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7