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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018927
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】血液処理フィルター
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
A61M1/02 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122379
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉海 卓
(72)【発明者】
【氏名】山本 挙
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077BB02
4C077CC06
4C077EE01
4C077KK13
4C077LL17
4C077LL23
4C077NN02
4C077PP08
4C077PP10
4C077PP12
4C077PP14
4C077PP15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い白血球除去能と高い血小板回収率という両立困難な2つ課題を同時に達成できる血液処理フィルターを提供する。
【解決手段】被処理液の入口及び処理済み液の出口となる2つの口を有する容器と、前記容器内に充填された濾材とを含む血液処理フィルターであって、(a)濾材の平均孔径の全体総計が、250.0μm以上500.0μm未満であり、(b)濾材の総比表面積が、250m2/g以上660m2/g未満であり、(c)濾材が、厚み0.2mm換算した不織布一枚当たりの平均孔径が0.1μm以上7.0μm未満であるフィルター材Aと、平均孔径が7.0μm以上20.0μm未満であるフィルター材Bとを含み、(d)フィルター材Aが、フィルター材Bよりも被処理液の入口に近い側に配置されており、(e)フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が70%以上95%未満である、血液処理フィルター。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液の入口及び処理済み液の出口となる2つの口を有する容器と、前記容器内に充填された濾材とを含む血液処理フィルターであって、
(a)前記濾材の平均孔径の全体総計が、250.0μm以上500.0μm未満であり、
(b)前記濾材の総比表面積が、250m2/g以上660m2/g未満であり、
(c)前記濾材が、厚み0.2mm換算した不織布一枚当たりの平均孔径が0.1μm以上7.0μm未満であるフィルター材Aと、平均孔径が7.0μm以上20.0μm未満であるフィルター材Bとを含み、
(d)前記フィルター材Aが、前記フィルター材Bよりも被処理液の入口に近い側に配置されており、
(e)前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が70%以上95%未満である、
血液処理フィルター。
(ただし、前記濾材の平均孔径の全体総計が250.0μm以上300.0μm未満であり、前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が85%以上95%未満であるものを除く。)
【請求項2】
前記濾材の平均孔径の全体総計が250.0μm以上400.0μm未満であり、前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が70%以上90%未満である、請求項1記載の血液処理フィルター。
【請求項3】
前記濾材はポリマーを含み、前記ポリマーが、双性イオンを含む官能基と、塩基性含窒素官能基と、非イオン性基を含有し、前記非イオン性基を有するモノマー単位(l)と、前記塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、前記双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、l/m/n=50~78.5/1.5~10/20~40である、請求項1又は2に記載の血液処理フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、白血球を除去し血小板を選択的に回収するための血液処理フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
輸血後副作用を予防するために、輸血前に白血球を除去する必要がある。血液製剤から白血球を除去する方法には、大別して、血液の比重差を利用した重力遠心分離方法と不織布などの繊維状媒体や連続孔を有する多孔質体を濾材としたフィルター法の2種あるが、白血球除去効率の良いこと、操作の簡単なこと、コストが低いことの利点からフィルター法が広く用いられている。
【0003】
フィルター法による白血球除去の機構は、主として濾材表面と接触した白血球が、濾材表面に粘着又は吸着されることによると考えられている。白血球除去能を向上させるには、濾材として不織布などの繊維状媒体を使用する場合、より繊維径の細い極細繊維を使用するかまたは不織布の充填密度を高めることにより達成可能なことが知られている。また、より孔径を小さくすることで達成可能であることが知られている。しかしながら、白血球除去能の向上にともなって、血小板も除去されてしまい、全血から血小板製剤を製造することができずに、除去される血小板は無駄となる。
特許文献1には、血液の入口から出口に向かって多孔質体の平均孔径が実質的に連続的または段階的に減少させることで、圧力損失を増大させずに単位体積当たりの白血球除去能を高めることが記載されている。
特許文献2では、血小板回収を向上させる手段として、親水性官能基、塩基性官能基、および反応性官能基からなる共重合体表面処理剤を基材に被覆し、血小板回収効率を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6080356号公報
【特許文献2】特開平5-168711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された方法では、白血球除去能を高くすることはできるものの、それに伴って、血小板も同様に除去されてしまう。
また、特許文献2に記載された方法では、血小板回収率は向上できるが、白血球除去能を良好に保つことが難しい。
上記事情に鑑み、本発明は、高い白血球除去能と高い血小板回収率という両立困難な2つ課題を同時に達成できる血液処理フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、濾材として2種のフィルター材を用い、濾材及び各フィルター材の平均孔径、平均孔径の総計、総比表面積、配置等を適切な範囲に設定することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
被処理液の入口及び処理済み液の出口となる2つの口を有する容器と、前記容器内に充填された濾材とを含む血液処理フィルターであって、
(a)前記濾材の平均孔径の全体総計が、250.0μm以上500.0μm未満であり、
(b)前記濾材の総比表面積が、250m2/g以上660m2/g未満であり、
(c)前記濾材が、厚み0.2mm換算した不織布一枚当たりの平均孔径が0.1μm以上7.0μm未満であるフィルター材Aと、平均孔径が7.0μm以上20.0μm未満であるフィルター材Bとを含み、
(d)前記フィルター材Aが、前記フィルター材Bよりも被処理液の入口に近い側に配置されており、
(e)前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が70%以上95%未満である、
血液処理フィルター。
(ただし、前記濾材の平均孔径の全体総計が250.0μm以上300.0μm未満であり、前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が85%以上95%未満であるものを除く。)
[2]
前記濾材の平均孔径の全体総計が250.0μm以上400.0μm未満であり、前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が70%以上90%未満である、上記[1]記載の血液処理フィルター。
[3]
前記濾材はポリマーを含み、前記ポリマーが、双性イオンを含む官能基と、塩基性含窒素官能基と、非イオン性基を含有し、前記非イオン性基を有するモノマー単位(l)と、前記塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、前記双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、l/m/n=50~78.5/1.5~10/20~40である、上記[1]又は[2]に記載の血液処理フィルター。
【発明の効果】
【0008】
本発明の血液処理フィルターは、高い白血球除去能と高い血小板回収率という2つ課題を同時に達成できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
本実施形態の血液処理フィルターは、
被処理液の入口及び処理済み液の出口となる2つの口を有する容器と、前記容器内に充填された濾材とを含む血液処理フィルターであって、
(a)前記濾材の平均孔径の全体総計が、250.0μm以上500.0μm未満であり、
(b)前記濾材の総比表面積が、250m2/g以上660m2/g未満であり、
(c)前記濾材が、厚み0.2mm換算した不織布一枚当たりの平均孔径が0.1μm以上7.0μm未満であるフィルター材Aと、平均孔径が7.0μm以上20.0μm未満であるフィルター材Bとを含み、
(d)前記フィルター材Aが、前記フィルター材Bよりも被処理液の入口に近い側に配置されており、
(e)前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が70%以上95%未満である。
ただし、前記濾材の平均孔径の全体総計が250.0μm以上300.0μm未満であり、前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が85%以上95%未満であるものを除く。
【0011】
本実施形態の血液処理フィルターは、被処理液の入口及び処理済み液の出口となる2つの口を有する容器と、該容器内に充填された濾材とを含む。
【0012】
[容器]
濾材を収容する容器は、被処理液(血液成分を含む液体又は血液)の入口と、処理済み液(白血球等の好ましくない成分が除去された液体(血液))の出口になる2つの口を有するものであれば特に限定はなく、各種液体処理フィルターに使用されている一般的な容器を使用することができる。
【0013】
その形状(本体部の形状)は、濾材の形状に応じた形状、例えば、濾材が平板状の場合には、四角形、六角形等の多角形や、円形、楕円形等の曲線からなる形状の平らなもの、濾材が円筒状の場合には円筒状、とすることができる。その材料に限定はなく、硬質材料であってもよいし、可撓性材料(シート状)であってもよい。濾材は、容器中に、容器内部を入口側と出口側とに隔てるように配置される。
【0014】
[要件(a)]
本実施形態における血液処理フィルターは、濾材の平均孔径の全体総計が、250.0μm以上500.0μm未満である。濾材の平均孔径の全体総計が250.0μm未満であると全体的な孔径が小さくなるため、血小板回収率が低下する。一方で、濾材の平均孔径の全体総計が500.0μm以上であると、孔径が大き過ぎて、白血球除去能が低下する。
濾材の平均孔径の全体総計は、上記と同様の観点から、好ましくは250.0μm以上400.0μm未満であり、より好ましくは250.0μm以上350.0μm未満であり、さらに好ましくは280.0μm以上330.0μm未満である。
【0015】
濾材の平均孔径の全体総計を上記範囲に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、濾材の枚数変更により調整する方法、孔径の異なる濾材を組み合わせて調整する方法等が挙げられる。
【0016】
[要件(b)]
本実施形態における血液処理フィルターは、濾材の総比表面積が、250m2/g以上660m2/g未満である。濾材の総比表面積が250m2/g未満であると白血球の吸着座席が少なくなるため、白血球除去能が低下する。一方で、濾材の総比表面積が660m2/g以上であると、吸着座席が多くなり過ぎて、血小板回収率が低下する。
濾材の総比表面積は、上記と同様の観点から、好ましくは280m2/g以上600m2/g未満であり、より好ましくは300m2/g以上550m2/g未満であり、さらに好ましくは320m2/g以上500m2/g未満である。
濾材の総比表面積は、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
【0017】
濾材の総比表面積を上記範囲に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、濾材の枚数変更により調整する方法、濾材1枚当たりの比表面積(繊維径)の異なる濾材を組み合わせて調整する方法等が挙げられる。
【0018】
[要件(c)]
本実施形態において血液処理フィルターは、濾材として平均孔径が異なる2種類のフィルター材を少なくとも含む。具体的には厚み0.2mm換算した不織布一枚当たりの平均孔径が0.1μm以上7.0μm未満であるフィルター材Aと、平均孔径が7.0μm以上20.0μm未満であるフィルター材Bとを含む。本実施形態において、フィルター材とは、濾材を構成する複数の層のうち、他から分離可能に一体をなしているシート状体のものをいい、一層からなっていてもよいし、複数層からなっていてもよい。
【0019】
フィルター材Aの厚み0.2mm換算した不織布一枚当たりの平均孔径は0.1μm以上7.0μm未満であり、これは白血球の大きさが約7~20μmであることに基づいている。すなわち、フィルター材Aの平均孔径は、最も小さな白血球を補足できるサイズに調整されている。
フィルター材Aの平均孔径は、上記と同様の観点から、好ましくは1.0μm以上6.5μm以下であり、より好ましくは2.0μm以上6.0μm以下であり、さらに好ましくは 3.0μm以上6.0μm以下である。
【0020】
フィルター材Bの厚み0.2mm換算した不織布一枚当たりの平均孔径は7.0μm以上20.0μm未満である。フィルター材Bの平均孔径が20.0μm以上であると、フィルター材Aを通過した残りの白血球の除去が不十分となる。一方で、フィルター材Bの平均孔径が7.0μm未満であると、処理液の流れ性が悪くなることで血小板が十分に抜けなくなり、血小板回収率が低下する。
フィルター材Bの平均孔径は、上記と同様の観点から、好ましくは7.0μm以上15.0以下未満であり、より好ましくは7.0μm以上10.0μm以下であり、さらに好ましくは7.5μm以上10.0μm以下である。
【0021】
フィルター材の不織布一枚当たりの平均孔径、及び、濾材の平均孔径の全体総計は、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
【0022】
フィルター材A及びフィルター材Bの平均孔径を上記範囲に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、濾材をプレスし調整する方法、濾材紡糸時に嵩密度または繊維径により調整する方法等が挙げられる。
【0023】
フィルター材A、Bは、各々、1枚含まれていてもよいし、複数枚含まれていてもよい。また、フィルター材A、Bは、各々、1種類であってもよいし、複数種類含んでいてもよい。さらに、本実施形態において、濾材は、上述のフィルター材A、B以外のフィルター材、すなわち、厚み0.2mm換算した不織布一枚当たりの平均孔径が0.1μm未満もしくは20.0μm以上のフィルター材をさらに含んでいてもよい。
【0024】
濾材を構成する各フィルター材の形態は、血液を濾過し得る細孔を有する形態であって、各々の平均孔径を有するものであれば特に限定はなく、各種多孔質体を使用することができる。とりわけ、天然繊維、合成繊維、ガラス繊維等からなる編布、織布、不織布等の繊維状媒体、多孔膜、三次元網目状連続孔を有するスポンジ状構造物が好ましい。
【0025】
またフィルター材の材料としては、血球にダメージを与えにくいものであれば特に限定はなく各種のものを用いることができ、例えば、有機高分子材料、無機高分子材料、金属等が挙げられる。その中でも有機高分子材料は切断等の加工性に優れるため好ましい基材である。有機高分子材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ弗化ビニル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリスルホン、ポリ弗化ビニリデン、ポリトリフルオロクロロビニル、弗化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリエーテル-ポリアミドブロック共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、セルロース、セルロースアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、好ましくはポリエステル、ポリオレフィン、特に好ましくはポリエステルである。
【0026】
フィルター材の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、メルトブロー法が挙げられる。具体的には、例えば、樹脂粘度、溶融温度、単孔あたりの吐出量、加熱気体温度、加熱気体圧力、紡口と集積ネットの距離などの紡糸因子を検討することにより、所望の物性を有する不織布をフィルター材として得ることができる。また、従来公知の情報(例えば、「不織布の基礎と応用」 P.119-127、平成5年8月25日発行、社団法人 日本繊維機械協会等)を基本として、製造条件を適宜変更することによって、適切な物性を有する不織布を製造することができる。
【0027】
[要件(d)]
本実施形態の血液処理フィルターにおいては、フィルター材Aが、フィルター材B(フィルター材Bが複数枚ある場合には、その中で最も入口側に位置するフィルター材B)よりも被処理液の入口に近い側に配置されている。平均孔径の小さなフィルター材Aを入り口側に配置することで、白血球濃度が高い処理初期の血液から白血球が除去されると同時に血小板が補足される小さな孔が白血球で埋まるため、血小板は通過することができると推測される。フィルター材Aよりも出口側に配置されたフィルター材Bは、血小板が通過するには十分に大きく、且つ、フィルター材Aを通過した白血球が補足される大きさの平均孔径を有している。
【0028】
[要件(e)]
本実施形態の血液処理フィルターにおいて、フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合は70%以上95%未満である。上記割合が70%未満であると全体的な孔径が小さくなり、血小板回収率が低下する。一方で、上記割合が95%以上であると孔径が大きすぎて白血球除去能が低下する。
フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合は、好ましくは70%以上90%未満であり、より好ましくは75%以上90%未満である。
【0029】
本実施形態の血液処理フィルターは、上記要件(a)~(e)を満たすものであるが、それに包含されるものの一部で、本願発明の課題を解決できない範囲が存在する。そのような範囲は、濾材の平均孔径の全体総計が250μm以上300μm未満であり、前記フィルター材Bの平均孔径の総計の前記全体総計に対する割合が85%以上95%未満のものであり、上記範囲にあるものは、本実施形態の血液処理フィルターには含まれない。
上述した血液処理フィルターが本願発明の課題を解決できない理由については定かではないが、白血球を補足する孔径7.0μm未満である孔の総数が少なすぎるため、白血球の補足能が不足するからであると推測される。但し、上記は推測であり、これに限定される趣旨ではない。
【0030】
[コーティングポリマー]
本実施形態の血液処理フィルターのフィルター材は、血球の選択分離性や表面の親水性等を制御する目的からコーティング、薬品処理、放射線処理等の公知の技術によりその表面が改質されていてもよい。コーティングとは、フィルター材の表面の少なくとも一部にポリマーをコートすることであり、ポリマー被覆層を設けることによって、その表面を親水性化又は疎水性化することができる。
【0031】
コーティングのためのポリマーとしては、特に限定されないが、双性イオンを含む官能基と、塩基性含窒素官能基と、非イオン性基を含有するポリマーであることが好ましい。濾材がこのようなポリマーを含んでいる場合、双性イオンと塩基性含窒素官能基の電荷のバランスにより、濾材表面が血球非吸着性表面となり、血小板吸着を抑制することができる傾向にある。
【0032】
[双性イオン]
双性イオンを含む官能基としては、下記一般式(1),(2),(3)で表される官能基が挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
一般式(1)は、カルボベタインを示す。一般式(1)中、R1は炭素数1以上のアルキル基である。
【0035】
【化2】
【0036】
一般式(2)は、スルホベタインを示す。一般式(2)中、R2は炭素数1以上のアルキル基である。
【0037】
【化3】
【0038】
一般式(3)は、ホスホベタインを示す。一般式(3)中、R3は炭素数1以上のアルキル基である。
一般式(1),(2),(3)で表される双性イオンを含む官能基のうち、経済性の面から好ましいのは、下記一般式(4)で表されるメタクリル酸メチルベタインに由来する官能基である。
【0039】
【化4】
【0040】
[塩基性含窒素官能基]
塩基性含窒素官能基は、ブレンステッド・ローリーの酸塩基の定義より水素イオンを受容する能力を有する窒素原子を含む官能基として定義されることができる。すなわち、水素イオンを受容するための非共有電子対を有する-NH2,-NHR1,-NR23(R1,R2,R3は炭素数1~3のアルキル基)で表されるアミノ基である。
【0041】
一般に白血球等の生体の細胞は負の電荷を有する為、フィルターにおける上記の塩基性含窒素官能基の非共有電子対が水素イオンを受容した後にカチオン性を有することで、白血球と相互作用し、結果としてフィルターが白血球を除去できると考えられる。しかしながら、第四級アミンの様に溶液のpH等の環境に依らずカチオンを示す官能基が存在すると、カチオン性が強くなりすぎ、赤血球を溶血させてしまう可能性が高まる。そのためカチオン性を付与する官能基として、-NH2,-NHR1,-NR23で表される塩基性含窒素官能基が用いられる。
【0042】
塩基性含窒素官能基を有する化合物の典型的な例としてはN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも入手の容易性や経済性を勘案するとN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
以下の理論に拘束されるものではないが、同じ側鎖内に正荷電と負荷電が存在する双性イオンを含む官能基によって正荷電と負荷電を担体に導入することにより、特定の荷電がフィルター表面に局在することがないため、赤血球同志の相互作用を緩和することができ、溶血性を低減できているものと考えられる。また双性イオンを含む官能基と塩基性含窒素官能基とを含むポリマー構成単位とすることにより、塩基性含窒素官能基で導入される正電荷により白血球除去性能の向上を図りつつ、組み合わされた双性イオンを含む官能基によって赤血球同志の相互作用を緩和し溶血防止性能も発揮することができているものと考えられる。
【0044】
より高い溶血防止性を発揮させる観点で、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位の割合はコーティングポリマーが有するモノマー単位全体に対してモル比で1.5%以上が好ましい。全モノマー単位に対する双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位の割合は、ポリマーを可溶な溶媒に抽出し、核磁気共鳴(NMR)測定、アミノ基量測定、を組み合わせて算出することができる。
【0045】
濾材を構成するポリマーは、非イオン性基を有するモノマー及び塩基性含窒素官能基を有するモノマーと共重合し得るモノマーとの共重合体であることが好ましい。共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0046】
[非イオン性基]
非イオン性基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、及びフェニル基が挙げられる。
【0047】
非イオン性基を有する化合物の典型的な例としてアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも入手の容易性や経済性を勘案すると2-メトキシエチル(メタ)アクリレートである事が好ましい。
【0048】
濾材に含まれるポリマーは、非イオン性基を有するモノマー単位と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、側鎖に双性イオン含む官能基を有するモノマー単位と、からなり、これら以外のモノマー単位は含まないことが好ましい。換言すれば、ポリマーを構成するモノマー単位のモル比の全体を100として、コーティングポリマーに含まれる非イオン性基を有するモノマー単位(l)と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、側鎖に双性イオン含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、l+m+n=100,0<l,m,n<100であることが好ましい。モル比が上記範囲内にあることにより、赤血球に溶血等のダメージを抑えつつ、優れた白血球除去性能及び血小板回収性能を実現できる。本願発明の効果をより一層発揮するという観点から、コーティングポリマーに含まれる非イオン性基を有するモノマー単位と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位と、のモル比は、好ましくはl/m/n=50~78.5/1.5~10/20~40であり、より好ましくは54~77/1.0~8.0/22~38であり、さらに好ましくは59~73/2.0~6.0/25~35である。
【0049】
ポリマーに含まれる非イオン性基を有するモノマー単位と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位と、のモル比の測定及び算出手順を、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートと、メタクリル酸メチルベタインと、を例に説明する。まず、ポリマーをジメチルスルホキシド等の適切な溶媒へ溶解後、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)測定を行う。得られた1H-NMRから、すべてのモノマー単位に含まれるHに帰属するピークからモノマー単位の全体量を求める。次に、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートに含まれるHに帰属されるピーク(d)と、双性イオンを側鎖に有するモノマー単位に含まれるHに帰属するピーク(i)から、各々の量を求める。さらに、モノマー単位の全体量から、先に求めた2つのモノマー単位の量を差し引いた残りを、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの量として、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートと、メタクリル酸メチルベタインとの存在比を算出する。
【0050】
(ポリマーの原料)
上述の式(1)~(3)で表される双性イオンを含む官能基を有するポリマーを合成するために、下記一般式(5),(6),(7)で表される化合物を原料としてポリマーを合成するのが好ましい。
【0051】
【化5】
【0052】
一般式(5)中、R5,R6は、H又は炭素数1~3のアルキル基であり、R4,R7は、CH2-CH2、CH2-CHRa、CHRa-CH2、CHRa-CHRb、CHRa-CRbc、CRab-CHRc、CRaRb-CRcd、及び(CH2g(g=2~6の整数)のいずれかであり、Ra,Rb,Rc,Rdは、炭素数1~3のアルキル基である。
【0053】
【化6】
【0054】
一般式(6)中、R9,R11は、H又は炭素数1~3のアルキル基であり、R8,R10は、CH2-CH2、CH2-CHRa、CHRa-CH2、CHRa-CHRb、CHRa-CRbc、CRab-CHRc、CRab-CRcd、及び(CH2g(g=2~6の整数)のいずれかであり、Ra,Rb,Rc,Rdは炭素数1~3のアルキル基である。
【0055】
【化7】
【0056】
一般式(7)中、R14,R15,R16は、H又は炭素数1~3のアルキル基であり、R12,R13は、CH2-CH2、CH2-CHRa、CHRa-CH2、CHRa-CHRb、CHRa-CRbc、CRab-CHRc、CRab-CRcd、及び(CH2g(g=2~6の整数を表す)のいずれかであり、Ra,Rb,Rc,Rdは、炭素数1~3のアルキル基である。
【0057】
ポリマーに非イオン性基を導入するためには、例えば、下記一般式(8)で表されるモノマーを原料の一部とするのが好ましい。
【0058】
【化8】
【0059】
一般式(8)-1,(8)-2中、R16は、H、炭素数1~3のアルキル基、フェニル基及び誘導体のいずれかであり、R17は、H、炭素数1~6アルキル基、フェニル基、及び-Y-O-Xで表されるアルコキシアルキル基(Yは炭素数0~6のアルキル基、XはH又は炭素数1~3のアルキル基)のいずれかであり、R18は、炭素数1~3のアルキル基、アルコキシアルキル基、フェニル基、及びこれらの誘導体のいずれかである。
【0060】
一般式(8)で表されるモノマーの典型的な例としてアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも入手の容易性や経済性を勘案すると2-メトキシエチル(メタ)アクリレートである事が好ましい。
【0061】
塩基性含窒素官能基をポリマーに導入するためのモノマーとしては、例えば、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
【化9】
【0063】
一般式(9)中、R19,R21,R22は、H、又は炭素数1~3のアルキル基、フェニル基、及びこれらの誘導体のいずれかであり、R20は、CH2-CH2、CH2-CHRa、CHRa-CH2、CHRa-CHRb、CHRa-CRbc、CRab-CHRc、CRab-CRcd、及び(CH2e(e=2~6の整数を表す)のいずれかであり、Ra,Rb,Rc,Rdは、炭素数1~3のアルキル基である。
【0064】
一般式(9)で表されるモノマーの典型例としてはN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも入手の容易性や経済性を勘案するとN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0065】
本実施形態において、フィルター材(フィルター材がコート層を有する場合は、コート層で被覆したもの)の臨界湿潤表面張力(CWST)は、70mN/m以上110mN/m以下であることが好ましい。このような臨界湿潤表面張力の不織布では、血液に対する安定した濡れ性を確保しつつ、白血球等の好ましくない成分を効果的に捕捉することができる。
また、本実施形態において、特にフィルター材BのCWSTが80mN/m以上90mN/m以下であることが好ましい。この場合、白血球等の好ましくない成分をフィルター材Bにより効果的に捕捉させることができる。このことは、密なフィルター材Bで血球の目詰まりが増加し、処理速度が低下することが懸念されるが、疎なフィルター材Aを密なフィルター材Bの上流に配置することにより、優れた白血球除去性能と濾過時間を両立することができる。おそらく、その理由は、上流に配置したフィルター材A内で濾材の厚み方向に徐々に白血球を捕捉することにより、下流に配置したフィルター材B内では白血球濃度や凝集物含有量が下がった血液から効率よく白血球を除去できるためと推測される。したがって、濾過時間を増大させることなく、白血球等の好ましくない成分をより効果的に捕捉することができると考えられる。
【0066】
以下に、CWST値の測定方法を示す。
複数の異なる表面張力を有する表面張力が既知の溶液を、購入、調製する等して用意する。用意した溶液の表面張力は、温度23℃、相対湿度50%の標準試験室雰囲気(JIS K 7100)で、自動表面張力計(協和界面化学製、Wilhelmy平板法)にて測定するものとする。
水平にした試料の上に、或る表面張力を有する溶液を、1滴あたり10μLずつ静かに10滴載せ、10分間放置する。濾材と溶液の接触角が90度以下となった場合、滴下した溶液が湿潤したと判断し、10滴中9滴以上が湿潤した場合、濾材はその表面張力の溶液に湿潤したと判定する。10滴中2滴以上が湿潤しない場合、濾材はその表面張力の溶液に湿潤しないと判定する。
濾材が湿潤しなかった場合には先に使用した溶液より2mN/m小さい表面張力を有する溶液を用い、また、試料が湿潤した場合には先に使用した溶液より2mN/m大きい表面張力を有する溶液を用いて、同様の操作を繰り返して、湿潤する溶液の表面張力の最大値と、湿潤しない溶液の表面張力の最小値を決定し、その平均値を試料のCWST値とする。
温度23℃、相対湿度50%とは異なる温度及び/又は湿度での測定した場合は、換算表がある場合、表を用いて温度23℃、相対湿度50%におけるCWST値を算出する。
【0067】
本実施形態の血液処理フィルターは、フィルター材A及びフィルター材Bを準備する工程、及び、フィルター材Aを、フィルター材Bに重ね、積層体を作製する工程、を含む、製造方法によって製造することができる。
【0068】
また、本実施形態の血液処理フィルターは、被処理液の入口及び処理済み液の出口となる2つの口を有する容器を備えるが、本実施形態の製造方法において、上記のとおり得られた積層体を上記容器に格納する工程を含んでいてもよく、このとき、積層体におけるフィルター材Aの層が容器の被処理液の入口に近い側に配置される。
【実施例0069】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。実施例、比較例において、フィルター材や血液処理フィルターの各種物性は以下の方法により測定した。
【0070】
(平均孔径の測定)
フィルター材の平均孔径(μm)は、ASTM F316-86に準じて、PMI社製パームポロメーターCFP-1200AEXS(多孔質材料自動細孔径分布測定システム)を用いて、サンプルを試液に浸漬させたウェット状態で加圧し、流量を測定して求めたウェットカーブと、サンプルが乾いたドライな状態のドライカーブという2つの圧力―流量曲線を使用して測定できる。濾材をφ25×φ25のサイズに1枚切り出し測定した。
【0071】
(平均孔径の全体総計の算出)
上記測定方法により求めたフィルター材Aの平均孔径をa、フィルター材Bの平均孔径をbとし、フィルター材Aの枚数をX、フィルター材Bの枚数をYとし、以下の式により平均孔径の全体総計を算出した。
平均孔径の全体総計=aX+bY
【0072】
(フィルター材Bの平均孔径の総計の全体総計に対する割合の算出方法)
上記で求めた平均孔径の全体総計のうちのフィルター材Bの平均孔径の総計を割合で算出した。
フィルター材Bの平均孔径の総計=bY
フィルター材Bの平均孔径の総計の全体総計に対する割合=bY/(aX+bY)
【0073】
(比表面積の測定)
フィルター材の比表面積は、吸着ガスをクリプトンとするBET吸着法を用いて、マイクロメリティックス社製トライスター3020装置により測定できる。濾材を0.6gとなるように切り出し、例えば40g/m2の濾材であれば3.5cm×23.5cmのサイズに2枚切り出し、2枚1組として1組測定した。
【0074】
(総比表面積の算出)
上記測定方法により求めたフィルター材Aの比表面積をc、フィルター材Bの比表面積をdとし、以下の式により総比表面積を算出した。
総比表面積=cX+dY
【0075】
(嵩の測定)
濾材を5cm×20cmのサイズに3枚切り出し、これをダイヤルシックネスゲージ(型番:G、メーカー:尾崎製作所)に載せ、濾材中心1点の嵩(mm)を測定したときの、その平均値とする。
【0076】
(白血球除去性能)
全血製剤を用い、これを実施例、比較例の血液処理フィルターを用いて自然落差で濾過、回収し、濾過後血液製剤を得た。
次いで、濾過後の血液製剤中の白血球濃度をベクトンデッキンソン社(BD社)製白血球数測定用キット「LeucoCOUNT」及びBD社製フローサイトメーター FACS CantoIIを使用して測定し、以下の計算式に従い、白血球除去能を算出し、血液処理フィルターの白血球除去性能の指標とした。
白血球除去能=log((濾過前血液製剤中の白血球濃度-濾過後血液製剤中の白血球濃度)×濾過後血液製剤の量)
【0077】
(血小板回収率)
濾過後の血液製剤中の血小板数をシスメックス社製他項目自動血球分析装置XT―1800iを使用して測定し、以下の計算式に従い、血小板回収率を算出し、血液処理フィルターの血小板回収率の指標とした。
血小板回収率[%]=(濾過後血液製剤中の血小板数/濾過前血液製剤中の血小板数)×100
【0078】
(コーティングポリマーの合成及びモル比測定)
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート(MEMA)と、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DEAEMA)と、メタクリル酸メチルベタイン(CMB)と、の共重合体を通常の溶液重合によって合成した。重合条件は、各モノマー濃度が1モル/Lのエタノール溶液に、開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)0.0025モル/L存在下、60℃で8時間重合反応を行った。得られたポリマー重合液を水中に滴下し、析出したポリマーを回収した。回収したポリマーは粉砕した後、減圧条件下で24時間乾燥してコーティングポリマーを得た。
コーティングポリマー中の2-メトキシエチル(メタ)アクリレートモノマーと、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートモノマーと、メタクリル酸メチルベタインと、のモル比は、得られたコーティングポリマーをジメチルスルホキシドへ溶解した後、1H-NMR測定を行うことにより算出した。
【0079】
(コーティング方法)
フィルター材を210mm×150mmの大きさに切り出し、上記コーティング液を入れた金属製バットへ20秒間浸漬させた。余剰コーティング液を落とした後、熱風乾燥機により1時間乾燥した。
【0080】
(実施例1、2、4、5、7~10、12~16)
フィルター材Aおよびフィルター材Bとして、表1に示す物性のポリエチレンテレフタラートからなる不織布を各々表1の枚数用意し、フィルター材A、フィルター材Bの順に重ね、積層体として濾材を作製した。
この濾材を、血液入口又は出口となるポートを有する2つのポリカーボネート容器の間に上流側(容器入口側)がフィルター材Aとなるように挟み、超音波溶着機を用いて、ポリカーボネートの周縁部分を溶着、一体化させ、有効濾過面積45cm2の血液処理フィルターを作製し、白血球除去性能及び血小板回収率試験を行った。
【0081】
(実施例3、6、11、17)
フィルター材Aおよびフィルター材Bとして、表1に示す物性のポリエチレンテレフタラートからなる不織布を、モル比が70/03/27のMEMA/DEAEMA/CMBポリマーを用いて上記コーティング方法によりコートした。その後、各々表1の枚数用意し、フィルター材A、フィルター材Bの順に重ね、積層体として濾材を作製し、実施例1と同様の方法により血液処理フィルターを作製して、白血球除去性能及び血小板回収率試験を行った。
【0082】
(比較例1)
フィルター材Aおよびフィルター材Bとして、表1に示す物性のポリエチレンテレフタラートからなる不織布を各々表1の枚数用意し、フィルター材A、フィルター材Bの順に重ね、積層体として濾材を作製した。
この濾材を、血液入口又は出口となるポートを有する2つのポリカーボネート容器の間に上流側(容器入口側)がフィルター材Bとなるように挟み、超音波溶着機を用いて、ポリカーボネートの周縁部分を溶着、一体化させ、有効濾過面積45cm2の血液処理フィルターを作製し、白血球除去性能及び血小板回収率試験を行った。
【0083】
(比較例2)
フィルター材Aおよびフィルター材Bとして、表2に示す物性のポリエチレンテレフタラートからなる不織布を各々表2の枚数用意し、フィルター材A、フィルター材Bの順に重ね、積層体として濾材を作製し、比較例1と同様の方法により血液処理フィルターを作製して、白血球除去性能及び血小板回収率試験を行った。
【0084】
(比較例3)
フィルター材Aおよびフィルター材Bとして、表2に示す物性のポリエチレンテレフタラートからなる不織布を、モル比が70/03/27のMEMA/DEAEMA/CMBポリマーを用いて上記コーティング方法によりコートした。その後、各々表2の枚数用意し、フィルター材A、フィルター材Bの順に重ね、積層体として濾材を作製し、比較例1と同様の方法により血液処理フィルターを作製して、白血球除去性能及び血小板回収率試験を行った。
【0085】
(比較例4~13)
フィルター材Aおよびフィルター材Bとして、表2に示す物性のポリエチレンテレフタラートからなる不織布を各々表2の枚数用意し、フィルター材A、フィルター材Bの順に重ね、積層体として濾材を作製した。
この濾材を、血液入口又は出口となるポートを有する2つのポリカーボネート容器の間に上流側(容器入口側)がフィルター材Aとなるように挟み、超音波溶着機を用いて、ポリカーボネートの周縁部分を溶着、一体化させ、有効濾過面積45cm2の血液処理フィルターを作製し、白血球除去性能及び血小板回収率試験を行った。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】