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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189272
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B65H3/06 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097768
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 達夫
(72)【発明者】
【氏名】細原 和広
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC29
3F343GA03
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JA01
3F343KB04
3F343LA04
3F343LA15
3F343LC12
3F343LC20
3F343LD10
3F343LD26
3F343MB13
3F343MC20
3F343MC22
(57)【要約】
【課題】共通のモータでカム部材及び搬送部材を駆動する構成において、付勢部材の付勢力によってシート搬送速度が変動することを抑制する。
【解決手段】第1駆動伝達部は、モータの駆動力を第1搬送部材に伝達する。第2駆動伝達部は、第1駆動伝達部の少なくとも一部を介してモータと接続され、第1駆動伝達部から伝達された駆動力をカム部材に伝達する。第3駆動伝達部は、第1駆動伝達部の少なくとも一部を介してモータと接続され、第1駆動伝達部から伝達される駆動力を第2搬送部材に伝達する。第3駆動伝達部は、第2搬送部材に駆動力を伝達する連結状態と第2搬送部材への駆動伝達を解除する解除状態とを切り替え可能なクラッチを有する。制御手段は、第1搬送部材による先行シートの搬送中にカム部材を回転させて給送部材による後続シートの給送を実行させる場合に、クラッチを連結状態とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載されるシート積載部と、
前記シート積載部に積載されたシートを給送する給送部材と、
回転されることで、前記給送部材が前記シート積載部上のシートに当接する状態と、前記給送部材が前記シート積載部上のシートから離間する状態とを切り替えるように構成されたカム部材と、
前記給送部材が前記シート積載部上のシートに当接する状態において前記給送部材をシートに加圧するための付勢力を発生させる付勢部材と、
前記給送部材によって給送されたシートを搬送する第1搬送部材と、
前記給送部材から前記第1搬送部材への搬送経路とは別の搬送経路に配置され、シートを搬送する第2搬送部材と、
モータと、
前記モータの駆動力を前記第1搬送部材に伝達する第1駆動伝達部と、
前記第1駆動伝達部の少なくとも一部を介して前記モータと接続され、前記第1駆動伝達部から伝達された前記駆動力を前記カム部材に伝達する第2駆動伝達部と、
前記第1駆動伝達部の少なくとも一部を介して前記モータと接続され、前記第1駆動伝達部から伝達される前記駆動力を前記第2搬送部材に伝達する第3駆動伝達部であって、前記第2搬送部材に前記駆動力を伝達する連結状態と前記第2搬送部材への駆動伝達を解除する解除状態とを切り替え可能なクラッチを有する第3駆動伝達部と、
前記モータ及び前記クラッチを制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記第1搬送部材による先行シートの搬送中に前記カム部材を回転させて前記給送部材による後続シートの給送を実行させる場合に、前記クラッチを前記連結状態とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記カム部材は、所定の角度範囲内に位置する状態では、前記付勢部材の付勢力によって、前記モータから前記第3駆動伝達部を介して伝達される前記駆動力により回転する回転方向と同じ回転方向に付勢されるように構成され、
前記制御手段は、前記第1搬送部材による先行シートの搬送中に前記カム部材を回転させて前記給送部材により後続シートの給送を実行させる場合に、前記カム部材が前記所定の角度範囲に進入する前に前記クラッチを前記解除状態から前記連結状態に切り替え、前記カム部材が前記所定の角度範囲を離脱した後に前記クラッチを前記連結状態から前記解除状態に切り替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記クラッチを第1のクラッチとして、
前記第2駆動伝達部は、前記カム部材に前記駆動力を伝達する状態と前記カム部材への駆動伝達を解除する状態とを切り替え可能な第2のクラッチを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記第2のクラッチは、係止部を有するギアと、前記係止部に係合して前記ギアを係止する係止爪を有するソレノイドと、を有し、前記ソレノイドに通電して前記係止爪を前記係止部から離脱させる度に前記ギアが一回転するように構成され、
前記制御手段は、前記ソレノイドへの通電と同時に前記第1のクラッチを前記解除状態から前記連結状態とし、前記ギアが一回転した後に前記第1のクラッチを前記連結状態から前記解除状態に切り替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
シートを搬送する第3搬送部材を更に備え、
前記第3駆動伝達部は、前記クラッチを介して、前記駆動力を前記第2搬送部材及び前記第3搬送部材に伝達することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第1駆動伝達部は、前記第1搬送部材と一体に回転する第1ギアと、前記第1ギアと噛合って前記駆動力を前記第1ギアに伝達する第2ギアと、を有し、
前記第3駆動伝達部は、前記第1ギア又は前記第2ギアと接続されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
像担持体と、
前記像担持体に形成された画像をシートに転写する転写部と、
を更に備え、
前記第1搬送部材は、前記転写部にシートを送り込むレジストレーションローラであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
第1面に画像を形成されたシートを反転搬送する反転手段を更に備え、
前記第2搬送部材は、前記反転手段によって反転されたシートを、前記第1面とは反対の第2面に画像を形成するために搬送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記シート積載部を第1のシート積載部として、
前記第2搬送部材は、前記第1のシート積載部とは別の第2のシート積載部から給送されるシートを搬送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記クラッチは、電磁クラッチであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記給送部材を保持し、前記給送部材が前記シート積載部上のシートに当接する下方位置と、前記給送部材が前記シート積載部上のシートから上方に離間する上方位置と、の間で昇降可能なアーム部材を更に備え、
前記付勢部材は、前記アーム部材を前記下方位置へ向けて付勢するバネであり、
前記カム部材は、前記アーム部材と当接するように配置され、回転されることで前記アーム部材を前記上方位置と前記下方位置との間で昇降させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記シート積載部は、前記シート積載部上のシートが前記給送部材に当接する上方位置と、前記シート積載部上のシートが前記給送部材から下方に離間する下方位置と、の間で昇降可能であり、
前記付勢部材は、前記シート積載部を前記上方位置へ向けて付勢するバネであり、
中板を付勢し、
前記カム部材は、前記シート積載部と当接するように配置され、回転されることで前記シート積載部を前記上方位置と前記下方位置との間で昇降させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第2駆動伝達部は、前記第1駆動伝達部の下流側に接続された駆動伝達経路であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第2駆動伝達部は、前記第1駆動伝達部の途中から分岐した駆動伝達経路であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第3駆動伝達部は、前記第1駆動伝達部の途中から分岐した駆動伝達経路であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第3駆動伝達部は、前記第1駆動伝達部の下流側に接続された駆動伝達経路であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第1搬送部材又は前記第2搬送部材から搬送されてきたシートを前記画像形成装置の外部に排出する排出部を有し、
前記制御手段は、前記第2搬送部材を用いずに前記先行シートと前記後続シートが前記シート積載部から給送され、前記第1搬送部材を経由して搬送され、前記排出部によって排出される動作が行われている際に、前記第1搬送部材による前記先行シートの搬送中に前記カム部材を回転させて前記給送部材による前記後続シートの給送を実行させる場合に、前記クラッチを前記連結状態とすることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、プリンタ、複合機等の画像形成装置は、記録材として用いるシートを1枚ずつ給送するシート給送装置と、給送されたシートを搬送する搬送ローラ対等の搬送部材と、を含むシート搬送機構を備えている。シート給送装置は、シートが積載されるシート積載部と、シート積載部からシートを給送する給送部材(ピックアップローラ、給送ローラ)と、シート積載部上のシートに給送部材を適当な加圧力で当接させるためのバネ等の付勢部材とを備える。また、シート給送装置には、給送部材をシート積載部上のシートに対して当接及び離間させるためのカム機構を備えたものがある。カム機構としては、給送部材を保持する昇降可能なアーム部材がカム部材の回転に伴って昇降する方式と、昇降可能なシート積載部(中板)がカム部材の回転に伴って昇降する方式と、が知られている。
【0003】
ところで、近年ではコスト削減を図るために1つのモータでシート搬送機構における複数の駆動対象を駆動する構成が採用される場合が多くなっている。この場合、モータから出力される駆動力は、ギア列等の駆動伝達装置を介して給送部材、搬送部材、カム部材等の駆動対象に伝達される。ここで、カム部材によって給送部材又はシート積載部を昇降させる場合に、付勢部材の付勢力がカム部材を介して駆動伝達装置に作用する場合がある。このようにカム部材を介して作用する付勢部材の付勢力によって、駆動伝達装置と接続されたカム部材以外の駆動対象の駆動速度が変化すると、シートの搬送速度が変動してしまい、画像転写時の画像ブレ等の不都合が生じる可能性がある。
【0004】
特許文献1には、給送カム及び感光ドラム等が1つのモータで駆動される画像形成装置において、給送カムと一体に回転するギアを斜歯ギアとし、当該ギアの側面にブレーキパッドを取り付けた構成が記載されている。この文献によると、中板を昇降させるためのバネの付勢力を受けた給送カムがモータによる駆動速度よりも速く回転しようとすると、斜歯ギアの噛合い面で生じるスラスト力によってブレーキパッドが当接壁に当接し、給送カムが制動力を受ける。これにより、バネの付勢力が給送カムを介して駆動伝達装置に伝わることが抑制され、感光ドラム等の速度変動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-197181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献の構成は、バネの付勢力が駆動伝達装置に伝わることを抑制する目的のために、ブレーキパッド等を追加で配置することによるコストアップや装置の大型化を甘受するものだった。
【0007】
そこで、本発明は、共通のモータでカム部材及び搬送部材を駆動する構成において、付勢部材の付勢力によってシート搬送速度が変動することを抑制可能な新たな構成を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、シートが積載されるシート積載部と、前記シート積載部に積載されたシートを給送する給送部材と、回転されることで、前記給送部材が前記シート積載部上のシートに当接する状態と、前記給送部材が前記シート積載部上のシートから離間する状態とを切り替えるように構成されたカム部材と、前記給送部材が前記シート積載部上のシートに当接する状態において前記給送部材をシートに加圧するための付勢力を発生させる付勢部材と、前記給送部材によって給送されたシートを搬送する第1搬送部材と、前記給送部材から前記第1搬送部材への搬送経路とは別の搬送経路に配置され、シートを搬送する第2搬送部材と、モータと、前記モータの駆動力を前記第1搬送部材に伝達する第1駆動伝達部と、前記第1駆動伝達部の少なくとも一部を介して前記モータと接続され、前記第1駆動伝達部から伝達された前記駆動力を前記カム部材に伝達する第2駆動伝達部と、前記第1駆動伝達部の少なくとも一部を介して前記モータと接続され、前記第1駆動伝達部から伝達される前記駆動力を前記第2搬送部材に伝達する第3駆動伝達部であって、前記第2搬送部材に前記駆動力を伝達する連結状態と前記第2搬送部材への駆動伝達を解除する解除状態とを切り替え可能なクラッチを有する第3駆動伝達部と、前記モータ及び前記クラッチを制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記第1搬送部材による先行シートの搬送中に前記カム部材を回転させて前記給送部材による後続シートの給送を実行させる場合に、前記クラッチを前記連結状態とすることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共通のモータでカム部材及び搬送部材を駆動する構成において、付勢部材の付勢力によってシート搬送速度が変動することを抑制可能な新たな構成を備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る画像形成装置を示す断面図。
図2】第1実施形態に係るシート搬送機構の斜視図。
図3】第1実施形態に係るシート搬送機構を駆動列毎に分離した状態で示す斜視図。
図4】第1実施形態に係るシート搬送機構の駆動部の上面図。
図5】第1実施形態に係るシート搬送機構の駆動構成を表す模式図。
図6】第1実施形態に係るシート搬送機構のレジ駆動列を示す側面図(a)及び給送駆動列を示す側面図(b)。
図7】第1実施形態に係る給送カムの動作を説明するための側面図(a~d)。
図8】第1実施形態に係るギアの噛合い部を示す拡大図(a、b)。
図9】第1実施形態に係るシート搬送機構の制御例を表すフローチャート。
図10】参考例のシート搬送機構の駆動構成を表す模式図。
図11】第2実施形態に係るシート搬送機構の駆動構成を表す模式図。
図12】第3実施形態に係るシート搬送機構の駆動構成を表す模式図。
図13】第4実施形態に係るシート給送装置の斜視図(a)とシート搬送機構の駆動構成を表す模式図(b)。
図14】第4実施形態に係る給送カムの動作を説明するための側面図(a、b)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1図9を用いて第1実施形態に係る画像形成装置1について説明をする。ここでは、画像形成装置1として、カラーレーザービームプリンタを例示する。また、この画像形成装置1は、複数の像担持体(電子写真感光体)上に形成したトナー像を中間転写体に一次転写した後、中間転写体からシートSに一括して二次転写する中間転写方式の電子写真式の画像形成部102を画像形成手段として備えている。
【0013】
なお、「画像形成装置」は、複写機や複合機、ファクシミリ装置であってもよい。画像形成方式も電子写真方式である必要はなく、静電記録方式やインクジェット方式など他の画像形成方式であってもよい。記録材であるシートSとしては、普通紙及び厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材等、サイズ及び材質の異なる多様なシート材を使用可能である。
【0014】
(画像形成装置の全体構成)
図1を用いて、画像形成装置1の全体構成について説明する。図1は画像形成装置の概略構成を示す断面図である。画像形成装置1の装置本体101は、各々が像担持体としての感光ドラム2を備える4つのプロセスユニットP1,P2,P3,P4と、中間転写ベルト130と、を含む画像形成部102が搭載されている。中間転写ベルト130はプロセスユニットP1~P4の下方に配置され、プロセスユニットP1~P4の上方には露光装置としてのレーザスキャナ120が配置されている。
【0015】
各プロセスユニットP1~P4は、感光ドラム2の他に、帯電装置、現像装置、クリーニング装置を備えている。中間転写ベルト130は、二次転写内ローラ105を含む複数のローラに張架されている。中間転写ベルト130の内周側には、中間転写ベルト130を挟んで感光ドラム2と対向する位置に一次転写ローラが配置されている。中間転写ベルト130の外周側には、中間転写ベルト130を挟んで二次転写内ローラ105と対向する位置に二次転写ローラ122が配置されている。そして、二次転写ローラ122と中間転写ベルト130の間のニップ部として、記録材に画像を転写する転写部(二次転写部T2)が形成されている。
【0016】
また、画像形成装置1は、カセット式のシート給送部40と、手差し式のシート給送部400を有する。カセット式のシート給送部40は、シート積載部(第1のシート積載部)としての給送カセット115と、ピックアップローラ116と、フィードローラ117と、分離ローラ118と、を含む。同様に、手差し式のシート給送部400は、シート積載部(第2のシート積載部)としての給送トレイ401(手差しトレイ)と、ピックアップローラ402と、フィードローラ403と、分離ローラ421と、を含む。各シート給送部40,400は、給送カセット115又は給送トレイ401にセットされたシートSをピックアップローラ116,402によって繰り出し、フィードローラ117,402及び分離ローラ118,421によって1枚ずつ分離しながら給送する。
1枚ずつ給送する
【0017】
カセット式のシート給送部40と二次転写部T2の間には、レジストレーションローラ(以下、レジローラ250とする)が配置されている。また、手差し式のシート給送部40とレジローラ250は、手差し搬送ローラ310,320,330及びカセット式のシート給送部40のフィードローラ117及び分離ローラ118を経由する搬送経路で接続されている。
【0018】
シートSの搬送方向における二次転写部T2の下流には、定着フィルム107及び加圧ローラ108を含む熱定着式の定着装置が配置されている。定着フィルム107の内周側には、セラミックヒータ等のヒータと、ヒータを保持するホルダとを含むニップ形成ユニットが配置されている。加圧ローラ108は、定着フィルム107を挟んでニップ形成ユニットと圧接され、定着ニップを形成している。
【0019】
定着器の更に下流には、切替ガイド121と、排出ローラ109、排出コロ110及び反転コロ119からなる排出ローラユニットが配置されている。排出ローラ109及び排出コロ110は、後述する第1搬送部材としてのレジローラ250又は第2搬送部材としての両面搬送ローラ124を介して搬送されてきたシートSを画像形成装置1の外部に排出する排出手段(排出部、排出ローラ対)として機能する。本実施形態の排出ローラ109及び排出コロ110は、シートSを装置本体101外の空間に排出して排出トレイ101aに積載する。なお、画像形成装置1の外部にシートSを排出する排出手段(排出部、排出ローラ対)は、画像形成装置1に接続された他の装置に向けてシートを排出するものであってもよい。他の装置の例は、画像形成装置1によって画像形成されたシートを受け取って綴じ処理等の処理を施すシート処理装置や、更に他の装置に向けてシートを搬送する中継搬送ユニットである。排出ローラ109及び反転コロ119は、両面印刷を行う場合にシートSの反転搬送を行う反転手段(反転ローラ対)として機能する。切替ガイド121は、シートSの搬送経路を排出側と反転側とで切り替えるフラップ状のガイドである。排出ローラ109及び反転コロ119のニップ部とレジローラ250とは、両面搬送路125を介して接続されている。両面搬送路125には、反転搬送されたシートSを再び画像形成部102に向けて搬送するための搬送部材である両面搬送ローラ123,124が配置されている。
【0020】
(画像形成動作)
画像形成装置1による画像形成動作の概要を説明する。画像形成装置1の制御部100(図5)が外部機器から画像情報及び画像形成の実行指示を受信すると、制御部100は予め定められたプログラムに従って画像形成装置1の各部を制御し、以下で説明する画像形成動作を実行する。
【0021】
画像形成動作が開始されると、各プロセスユニットP1~P4の感光ドラム2及び中間転写ベルト130が回転駆動される。感光ドラム2の表面は帯電装置によって所定の極性及び電位に一様に帯電処理される。レーザスキャナ120は、帯電した感光ドラム2の表面に向けて、画像情報に基づいて変調されたレーザ光を照射し、感光ドラム2の表面に静電潜像を書き込む。これらの静電潜像は、現像装置が供給する現像剤によってトナー像として現像される。ここで、各プロセスユニットP1~P4は現像剤に含まれるトナーの色が異なっており、4本の感光ドラム2上にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が形成される。トナー像の作成はプロセスユニットP1~P4において並行して進められ、感光ドラム2に形成されたトナー像は、中間転写ベルト130上で互いに重なり合うように一次転写される。これにより、中間転写ベルト130上にフルカラートナー像としての画像が形成される。中間転写ベルト130に担持された画像は、中間転写ベルト130の回転によって二次転写部T2へ向けて搬送される。
【0022】
このようなトナー像の形成プロセスに同期した所定の給送タイミングでピックアップローラ116及びフィードローラ117が図中時計回り方向に回転駆動され、給送カセット115に積載されたシートSの最上位のシートSが給送される。給送されたシートSは、レジローラ250によって二次転写部T2へ送り込まれる。また、手差し式のシート給送部400からシートSを給送する場合は、給送トレイ401に載置されたシートSがピックアップローラ402及びフィードローラ403によって給送される。給送されたシートSは、手差し搬送ローラ310,320,330及びフィードローラ117を介してレジローラ250に受け渡され、レジローラ250によって二次転写部T2へ送り込まれる。
【0023】
二次転写部T2において、中間転写ベルト130からシートSに画像が転写される。二次転写部T2を通過したシートSは、定着装置に送られ、定着フィルム107及び加圧ローラ108に挟持搬送されながらシートS上の画像に熱及び圧力を加えられる。これによりトナーが溶融、混色した後に固着することで、シートSに定着した画像が得られる。
【0024】
定着装置を通過したシートSは、切替ガイド121により案内された搬送経路に搬送される。片面印刷の場合、シートSは排出ローラ109と排出コロ110のニップ部(排出ニップ)に案内され、装置本体101の上部に設けられた排出トレイ101aに積載される。両面印刷の場合、第1面に画像を形成されたシートSは排出ローラ109と反転コロ119のニップ部(反転ニップ)に案内され、排出ローラ109及び反転コロ119の反転搬送(スイッチバック)によって両面搬送路125に搬送される。両面搬送ローラ123,124を経由して、第1面とその反対の第2面を入れ替えた状態で再びレジローラ250に搬送されたシートSは、二次転写部T2及び定着装置を通過する間に第2面に画像を形成される。第2面に画像を形成されたシートSは切替ガイド121によって排出ニップに案内され、排出トレイ101aに積載される。
【0025】
(シート給送部)
シート給送部40の構成とシート給送部40がシートSを給送する給送動作について詳しく説明をする。図1に示すように、給送カセット115は、装置本体101の下部に着脱可能に装着されている。給送カセット115の内部にはリフト板51によって昇降する中板50が設けられており、シートSは中板50の上に積載された状態で給送カセットに収納される。リフト板51の一端には不図示のギアが設けられており、装置本体101の駆動機構に設けられた中板駆動列から上記ギアに駆動力が伝達されることでリフト板51が駆動される。中板駆動列の制御は、不図示のシート面センサからの検知信号に基づいて中板駆動列を回転させて、中板50に積載されているシートSの上面位置が所定位置(ピックアップローラ116によって給送可能な位置)になるまで上昇させる。
【0026】
ピックアップローラ116は、給送カセット115からシートSを給送する給送部材である。ピックアップローラ116及びフィードローラ117は、後述するピックアップアーム68に回転可能に支持されている。ピックアップアーム68は、フィードローラ117のローラ軸を中心に揺動可能であり、後述する給送カム67に駆動されて揺動することでピックアップローラ116を昇降させる。これにより、ピックアップローラ116は、中板50上に積載されているシートSに当接する位置(給送位置)に位置する状態(当接状態)と、シートSから上方に離間した位置(待機位置)に位置する状態(離間状態)とに切り替わる。ピックアップアーム68については図2図7を用いて後述する。
【0027】
フィードローラ117及び分離ローラ118は、互いに当接して分離ニップを形成し、給送部材によって給送されたシートSを1枚ずつ分離しながら搬送する搬送ユニット(分離ローラ対)を構成する。分離ローラ118としては、装置本体101に固定された軸にトルクリミッタを介して接続されたローラを用いることができる。また、分離ローラ118は、トルクリミッタを介してシートSの搬送方向に逆らう方向(図中時計回り方向)の駆動力が入力される構成としてもよく、分離ローラ118に代えてパッド状の摩擦部材を分離部材として用いてもよい。
【0028】
図1のように、給送動作を開始する前は、ピックアップアーム68がR2方向へ回動した位置(上方位置)に位置決めされることで、ピックアップローラ116はシートSの上方に退避(離間)している。給送動作を開始すると、ピックアップアーム68はR1方向へ回動し、中板50上に積載されたシートSにピックアップローラ116が当接する位置(下方位置)に移動する。このとき、後述する加圧バネ69の付勢力によりピックアップローラ116がシートSの給送に適した所定の加圧力でシートSに当接(圧接)する。そして、ピックアップローラ116が、装置本体101の駆動源から伝達される駆動力によって図1における時計周り方向に回転されることで、シートSを送り出す。
【0029】
ピックアップローラ116により給送されたシートSは、フィードローラ117と分離ローラ118の間の分離ニップに送り込まれ、分離ローラ118から受ける摩擦力の作用によって1枚ずつ分離される。即ち、分離ニップに1枚のシートSが進入した場合には、分離ローラ118はトルクリミッタをスリップさせながらフィードローラ117に追従して回転する。分離ニップに複数枚のシートSが進入した時は、分離ローラ118は回転を停止し、フィードローラ117に接している最上位のシートS以外のシートSが分離ニップを通過することを規制する。分離ニップを通過したシートSは、上述した通り、レジローラ250を介して更に二次転写部に搬送され、シート面に画像を形成される。
【0030】
ところで、分離ニップを通過したシートSの先端が下流側の搬送部材(ここではレジローラ250)に到達した後に、ピックアップアーム68は再びR2方向に回動する。そして、ピックアップローラ116は、次のシートSを給送すべきタイミングまで、シートSの上方に退避(離間)した状態で待機する。以上の給送動作を繰り返し行うことで、シート給送部40から1枚ずつシートSが給送される。なお、手差し式のシート給送部400についても、給送トレイ401が装置本体101に対して開閉可能に設けられている点以外は、カセット式のシート給送部40と同様の構成である。
【0031】
(シート搬送機構の駆動構成)
次に、シート搬送機構の駆動構成について説明する。図2は、本実施形態に係るシート搬送機構103の駆動構成を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係るシート搬送機構103を駆動列毎に分離した状態で示す斜視図である。ただし、図3では、ピックアップアーム68及び加圧バネ69の図示を省略している。
【0032】
シート搬送機構103は、給送部材としてのピックアップローラ116と、カム部材としての給送カム67と、付勢部材としての加圧バネ69と、第1搬送部材としてのレジローラ250と、第2搬送部材としての両面搬送ローラ124と、を有する。更に、シート搬送機構103は、ピックアップローラ116を昇降可能に保持するアーム部材としてのピックアップアーム68と、フィードローラ117と、両面搬送ローラ123と、を含む。ピックアップローラ116、フィードローラ117及びピックアップアーム68は、後述するようにピックアップローラ116を昇降させながらシートSを給送する給送ユニット104を構成している。
【0033】
なお、図2及び図3では、ローラ対であるレジローラ250、両面搬送ローラ123、124の内、モータ60からの駆動力が伝達される駆動ローラのみを図示している。本実施形態では各ローラ対の一方のローラが駆動ローラであり、他方のローラは駆動ローラに追従して回転する従動ローラであるものとして説明するが、ローラ対を構成する2つのローラを共に駆動ローラとしてもよい。
【0034】
また、シート搬送機構103は、上記の各ローラを駆動する共通の駆動源としてのモータ60と、モータ60の駆動力をレジローラ250に伝達する第1駆動伝達部としてのレジストレーション駆動列(以下、レジ駆動列54とする)と、を有する。更に、シート搬送機構103は、モータ60の駆動力を両面搬送ローラ123,124に伝達する第3駆動伝達部としての両面駆動列56と、モータ60の駆動力を給送カム67に伝達する第2駆動伝達部としての給送駆動列55と、を有する。給送駆動列55は、給送カム67だけでなく、フィードローラ117及びピックアップローラ116にも駆動力を伝達している。なお、本実施形態において「駆動列」又は「駆動伝達部」とは、駆動力を供給する駆動源又は上流側の駆動伝達要素と、駆動対象であるローラとを機械的に接続し、駆動対象に駆動力を伝達する1つ以上の駆動伝達要素からなる駆動伝達機構を指す。
【0035】
ピックアップローラ116、フィードローラ117、レジローラ250及び両面搬送ローラ123,124は、実質的に互いに平行に延びる軸線を中心に回転するローラである。レジ駆動列54、両面駆動列56及び給送駆動列55は、いずれもピックアップローラ116、フィードローラ117、レジローラ250及び両面搬送ローラ123,124に対して軸線方向における一方側の端部に設けられている。以下、これら各ローラの軸線方向をシート搬送機構103の「軸方向」とし、軸方向においてレジ駆動列54、両面駆動列56及び給送駆動列55が設けられている側を「駆動側」とし、その反対側を「非駆動側」とする。
【0036】
以下、図4及び図6(a、b)も参照して各駆動列の構成を説明する。図4は、シート搬送機構103の駆動側の端部を、軸方向に対して垂直な方向から(図2の上方側から)見た平面図である。図6(a)は、レジ駆動列54及び給送駆動列55の一部(給送制御ギア65及びソレノイド66)を軸方向における駆動側から見た側面図である。図6(b)は、給送駆動列55を軸方向における駆動側から見た側面図である。
【0037】
図3及び図6(a)に示すように、レジ駆動列54は、モータ60の出力軸に設けられたピニオンギア60aと、レジローラ250への入力ギアであるレジローラギア64とを接続する駆動伝達機構(ギア列)である。レジローラギア64は、レジローラ250のローラ軸に取り付けられており、レジローラ250と一体に回転する。レジ駆動列54は、ピニオンギア60aに噛合う第1レジギア61と、第1レジギア61に噛合う第2レジギア62と、第2レジギア62及びレジローラギア64に噛合う第3レジギア63と、を含む。第1レジギア61~第3レジギア63の少なくとも一部をピッチ円直径が異なる2枚のギアを組み合わせた段ギアとすることで、ピニオンギア60aの回転を減速してレジローラギア64に伝達することができる。図示した構成例では、第1レジギア61及び第2レジギア62が段ギアとして構成される。
【0038】
図3及び図4に示すように、両面駆動列56は、両面入力ギア74と、電磁クラッチ57と、両面ローラギア123a,124aを含むギア列56Gと、を含む。両面入力ギア74は、第3レジギア63と同軸上に設けられ、第3レジギア63と一体に回転する。電磁クラッチ57は、両面入力ギア74に噛合う入力ギア部57aと、ギア列56Gを構成するギアの1つに噛合う出力ギア部57bと、を含む。両面ローラギア123a,124aは、ギア列56Gを介して電磁クラッチ57の出力ギア部57bと接続されている。両面ローラギア123a,124aは、両面搬送ローラ123,124のローラ軸に取り付けられてそれぞれ両面搬送ローラ123,124と一体に回転する。
【0039】
両面駆動列56は、レジ駆動列54を構成する第3レジギア63から分岐して両面搬送ローラ123,124に接続された駆動列である。言い換えると、両面駆動列56は、レジ駆動列54の一部(ピニオンギア60a~第3レジギア63までの部分)を介して伝達されたモータ60の駆動力を両面搬送ローラ123,124に伝達する駆動伝達機構である。
【0040】
電磁クラッチ57は、本実施形態に係るクラッチである。電磁クラッチ57は、入力ギア部57aと一体回転する第1回転体と、出力ギア部57bと一体回転する第2回転体と、通電により磁界を発生させるコイルと、をケース内に有する。第1回転体(入力ギア部57a)と第2回転体(出力ギア部57b)は、非通電時は相対回転可能であり、通電時にはコイルが発生する磁界によって相対回転を規制されて一体回転する状態となる。つまり、電磁クラッチ57は、モータ60から両面搬送ローラ123,124へ選択的に駆動伝達を行うことを可能とする。以下、入力ギア部57aと出力ギア部57bが一体回転する状態(励磁状態)を電磁クラッチ57の「連結状態」とし、入力ギア部57a及び出力ギア部57bの相対回転が許容された状態(非励磁状態)を電磁クラッチ57の「解除状態」とする。
【0041】
電磁クラッチ57としては、例えば単板式又は多板式の電磁摩擦クラッチを用いることができる。この場合、第1回転体はロータ又はアーマチュアのいずれか一方であり、第2回転体はロータ又はアーマチュアの他方である。コイルへの通電によって発生する磁界によってアーマチュアがロータと密着するとアーマチュアとロータが摩擦係合され、コイルへの通電が遮断されるとアーマチュアとロータの相対回転が許容される。なお、電磁クラッチ57として電磁摩擦クラッチ以外の既知の作動原理のもの(例えば、ツースクラッチやパウダークラッチ)を用いてもよい。また、電磁クラッチ57に代えてソレノイド等で作動する機械式クラッチを用いることもできるが、応答速度の観点で電磁クラッチ57が好ましい。
【0042】
図3及び図6(b)に示すように、給送駆動列55は、給送制御ギア65と、給送カム67と、第1給送ギア80と、第2給送ギア81と、給送軸91と、フィードギア82と、アイドラギア83と、ピックアップギア84と、ソレノイド66と、を含む。給送制御ギア65は、レジ駆動列54の第3レジギア63と噛み合っている。(図4及び図6(a))。給送カム67は、給送制御ギア65と同軸上に設けられ、給送制御ギア65と一体に回転する。
【0043】
第1給送ギア80は、給送制御ギア65に噛合っている。第2給送ギア81は、フィードローラ117が取り付けられている給送軸91の駆動側の端部に取り付けられ、第1給送ギア80に噛合っている。フィードギア82は、給送軸91の非駆動側の端部に取り付けられている。アイドラギア83は、ピックアップアーム68(図2)に回転可能に保持され、フィードギア82に噛合っている。ピックアップギア84は、ピックアップアーム68(図2)に回転可能に保持され、アイドラギア83に噛合っている。フィードギア82及びピックアップギア84は、それぞれ、フィードローラ117及びピックアップローラ116と同軸上に設けられて一体に回転する。
【0044】
(駆動構成の模式図)
図5は、シート搬送機構103における駆動伝達経路を表す模式図である。上述したように、モータ60とレジローラ250は、レジ駆動列54を介して駆動伝達可能に接続されている。モータ60と両面搬送ローラ123,124は、レジ駆動列54の一部と、レジ駆動列54から分岐した両面駆動列56とを介して、駆動伝達可能に接続されている。また、両面駆動列56に設けられた電磁クラッチ57により、両面搬送ローラ123,124への駆動伝達は選択的に連結及び解除可能に構成されている。モータ60と給送カム67、ピックアップローラ116及びフィードローラ117は、レジ駆動列54と、レジ駆動列54の下流側に接続された給送駆動列55とを介して、駆動伝達可能に接続されている。つまり、本実施形態において、第2駆動伝達部としての給送駆動列55は、第1駆動伝達部としてのレジ駆動列54の下流側に接続された駆動伝達経路である。また、第3駆動伝達部としての両面駆動列56は、レジ駆動列54の途中から分岐した駆動伝達経路である。
【0045】
なお、画像形成装置1の制御部100(図1)は、アクチュエータであるモータ60、電磁クラッチ57及びソレノイド66に指令を送ることで、シート搬送機構103の動作を制御する。本実施形態の制御手段である制御部200は、中央処理装置(CPU)と、記憶装置としてのROM及びRAMとを有する。CPUは、ROMに格納されたプログラムを読み出して実行し、モータ60等に指令を送ることで画像形成装置1の動作を制御する。RAMは、CPUがプログラムを実行する際の作業空間を提供する。ROMは、画像形成装置を制御するためのプログラムを格納した非一過性の記憶媒体の例である。
【0046】
(給送制御ギアの一回転制御)
給送駆動列55の詳細について説明する。本実施形態において、ピックアップローラ116、フィードローラ117及びピックアップアーム68からなる給送ユニット104は、以下で説明するように、給送制御ギア65の一回転を動作単位とする給送動作を行うように構成されている。
【0047】
図6(b)に示すように、給送制御ギア65にはソレノイド66の係止爪66aに係止される係止部65aが設けられている。係止爪66aはソレノイド66の通電時(励磁時)に吸引されるフラップの先端に設けられており、ソレノイド66の非通電時(非励磁時)は、バネ66bの付勢力によって係止部65aを係止する位置に付勢されている。また、給送制御ギア65には欠歯部65b(図3)が設けられており、係止部65aが係止爪66aに係止された状態では欠歯部65bがレジローラギア64(図6(a))に対向してレジローラギア64との噛合いが解除されるように構成されている。つまり、電磁クラッチ57(第1のクラッチ)とは別に、給送制御ギア65及びソレノイド66は給送ユニット104への駆動伝達を連結及び解除可能なクラッチ(第2のクラッチ)として機能する。以下、欠歯部65bがレジローラギア64に対向する回転角度を給送制御ギア65の初期位置とする。給送動作を行わない場合、ソレノイド66への通電は行われず、給送制御ギア65は係止部65aが係止爪66aに係止された状態で初期位置に待機している。
【0048】
画像形成動作を実行する際に制御部100(図5)がシートSの給送タイミングの到来を判断すると、制御部100はソレノイド66に短時間の通電を行い、係止爪66aを係止部65aから離脱させる。すると、給送制御ギア65は初期位置から所定の回転方向(R5方向)に回転を開始し、図6(a)に示すように有歯部65cがレジローラギア64に噛合う。これにより、給送制御ギア65はレジローラギア64からモータ60の駆動力を受け、R5方向に回転を継続する。そして、給送制御ギア65が待機状態の回転角度から一回転すると、非通電状態のソレノイド66の係止爪66aに係止部65aが係止されることで、給送制御ギア65は再び待機状態の回転角度で停止し、次の給送タイミングまで待機する。
【0049】
給送制御ギア65の一回転制御を可能とする具体的な構成例を説明する。給送制御ギア65は、各々が有歯部65cと欠歯部65bを有する第1ギア651及び第2ギア652(図3)が同軸上で重ね合わされたギアユニットである。第1ギア651はレジローラギア64にのみ噛合い、第2ギア652はレジローラギア64及び第1給送ギア80の両方に噛合う。第1ギア651及び第2ギア652にはストッパ形状が設けられ、所定範囲内で相対回転可能、かつ、所定範囲を超えて相対回転することを規制されている。また、第1ギア651と第2ギア652の間には、第2ギア652を基準として第1ギア651をR5方向に付勢するバネが配置されている。更に、第1ギア651には上記の係止部65aが設けられ、第2ギア652は給送カム67と一体に形成されている。
【0050】
上記構成によると、第1ギア651及び第2ギア652が初期位置に位置する状態でソレノイド66が通電されると、係止爪66aから解放された第1ギア651はバネの付勢力によってR5方向に始動する。そして、第1ギア651の有歯部65cがレジローラギア64に噛合う。これにより、まず第1ギア651がレジローラギア64から駆動力を受けてR5方向に回転する。その後、第1ギア651が所定角度回転するとストッパ形状が当接し、第1ギア651と第2ギア652が一体となってR5方向に回転し始める。第2ギア652の回転が開始することで、給送カム67の回転が開始し、第1給送ギア80の回転も開始してフィードローラ117及びピックアップローラ116の回転駆動が始まる。その後、第1ギア651が再び初期位置に到達すると、係止部65aを係止爪66aに係止されることで第1ギア651は初期位置に保持される。また、第1ギア651に遅れて第2ギア652が初期位置に到達すると、不図示の保持機構によって第2ギア652も初期位置に保持される。保持機構とは、例えば第2ギア652に設けられた半月状のカム部と、該カム部の平面部に当接する板バネとを含み、板バネが平面部に当接する加圧力で第2ギア652を初期位置に保持する機構である。
【0051】
以上のように、給送制御ギア65は、モータ60が回転している状態でソレノイド66に通電される度に一回転するように構成されている。給送制御ギア65の回転により、ギア列を介してフィードローラ117及びピックアップローラ116が回転駆動されると共に、給送制御ギア65と同軸上の給送カム67が回転される。これにより、次に説明するように、ピックアップローラ116の昇降動作並びにピックアップローラ116及びフィードローラ117によるシートSの給送が行われる。
【0052】
(給送カムとピックアップアームの動作)
次に、給送動作における給送カム67とピックアップアーム68の動作について説明する。上述した通り、給送制御ギア65の一回転を単位として給送動作が行われるため、給送制御ギア65と連結された給送カム67は、1回の給送動作につき一回転する。図7(a~d)は、給送カム67が初期位置から一回転して再び初期位置に戻るまでの様子を表している。
【0053】
図7(a~d)に示すように、ピックアップアーム68は給送カム67のカム面67aに当接される被当接部としての凸部68aを有している。ピックアップアーム68は、回転中心68cを中心にして、ピックアップローラ116を下降させるR1方向とピックアップローラ116を上昇させるR2方向とに回動可能(揺動可能)である。ピックアップアーム68には加圧バネ69が接続され、ピックアップアーム68は加圧バネ69によって常にR1方向に付勢されている。そのため、ピックアップアーム68は、凸部68aがカム面67aに当接するか、又はピックアップローラ116が給送カセット115内のシートに当接することで、位置決めされる。
【0054】
また、カム面67aは、次の3つの領域を含む。第1領域a1は、給送カム67の回転中心を中心として実質的に円弧状(円筒面状)に広がる曲面である。第2領域a2は、給送カム67の順回転方向(R5方向)における第1領域a1の上流端から、給送カム67の回転中心に対する径方向内側に向かって延びる曲面である。第3領域a3は、給送カム67の順回転方向(R5方向)における第1領域a1の下流端から、給送カム67の回転中心に対する径方向内側に向かって延びる曲面である。
【0055】
給送動作において給送カム67が1回転する間に、給送カム67及びピックアップアーム68は次のように動作する。まず、給送動作が行われていない待機状態では、給送カム67は図7(a)に示す初期位置(給送制御ギア65の初期位置に対応する位置)に位置する。このとき、ピックアップアーム68は、凸部68aがカム面67aの第1領域a1に当接することで上方位置に保持され、ピックアップローラ116は給送カセット115内のシートから上方に離間した待機位置に保持される。
【0056】
ソレノイド66への通電により給送動作が開始されると、図7(b)に示すように、給送カム67は給送制御ギア65と共に初期位置からR5方向に回転を開始する。すると、ピックアップアーム68は、凸部68aをカム面67aの第2領域a2と摺接させながら、加圧バネ69の付勢力によってR1方向に回動する。給送カム67が更にR5方向に回転すると、図7(c)に示すように、凸部68aはカム面67aの第2領域a2から離間する。すると、ピックアップアーム68は加圧バネ69の付勢力に従って下方位置まで回動し、ピックアップローラ116は給送位置へと移動して給送カセット115上のシートに着地する。そして、給送制御ギア65から第1給送ギア80等を介して伝達される駆動力によりピックアップローラ116及びフィードローラ117が回転することで、シートが給送される。
【0057】
図7(c)の状態から更に給送カム67がR5方向に回転すると、図7(d)に示すように、カム面67aの第3領域a2が凸部68aに当接し、加圧バネ69の付勢力に抗してピックアップアーム68をR2方向に回動させる。そして、給送カム67が初期位置まで回転すると、図7(a)に示すようにピックアップアーム68が下方位置から再び上方位置に移動される。
【0058】
上記のように給送カム67が一回転して給送動作が行われる間に、給送カム67は以下の4つの状態を遷移している。
【0059】
第1状態は釣り合い状態(図7(a))である。第1状態は、給送制御ギア65がソレノイド66によって係止されており、給送動作が行われていない時の状態であり、給送カム67は停止している。また、ソレノイド66の係止爪66aが外れて、給送カム67が回り始めた直後も、第1状態に含まれる。第1状態では、加圧バネ69の付勢力によって、ピックアップアーム68の凸部68aが給送カム67のカム面67aの第1領域a1と当接している。給送カム67が凸部68aから受ける付勢力Fは、給送カム67の回転中心を向いている。つまり、給送カム67の回転軸線方向に見た場合に、加圧バネ69の付勢力によって凸部68aからカム面67aに作用する付勢力Fの作用線は、給送カム67の回転中心を通るか、又は回転中心の近傍を通過している。このため、第1状態では、加圧バネ69がピックアップアーム68を介して給送カム67に加える付勢力Fによっては、給送カム67が順回転方向(R5方向)に付勢されない。ここで、「順回転方向」とは、モータ60の駆動力によりレジ駆動列54及び給送駆動列55を介して給送カム67が回転駆動される回転方向を指す。
【0060】
第2状態はアシスト状態(図7(b))である。第2状態は、給送制御ギア65がソレノイド66の係止から解放され、給送動作が開始した後の状態であり、給送カム67はR5方向に回転している。このとき、加圧バネ69の付勢力によって、ピックアップアーム68の凸部68aは、給送カム67のカム面67aの第2領域a2と当接している。凸部68aがカム面67aを押圧する付勢力Fの方向(付勢力Fの作用線の方向、凸部68aの当接位置におけるカム面67aの第2領域a2の法線方向)は、給送カム67の回転中心に向かっておらず、回転中心より図中下方を通過する。このため、第2状態では、加圧バネ69がピックアップアーム68を介して給送カム67に加える付勢力Fにより、給送カム67に順回転方向(R5方向)のモーメントM1が作用する。つまり、第2状態とは、モータ60の駆動力によって順回転方向(R5方向)に回転されている給送カム67の回転がアシストされた状態である。言い換えると、カム部材としての給送カム67は、所定の角度範囲内に位置する状態では、加圧バネ69の付勢力によって順回転方向(R5方向)に付勢される構成となっている。本実施形態の「所定の角度範囲」は、カム面67aの第2領域a2がピックアップアーム68の凸部68aと接触する給送カム67の角度範囲を指す。この第2状態においてレジ駆動列54に起こる現象を後述する。
【0061】
第3状態は非接触状態(図7(c))である。第3状態は、ピックアップローラ116が給送カセット115内のシートSと当接することでピックアップアーム68のR1方向への回動が停止し、下方位置に位置決めされた状態である。第3状態は、ピックアップアーム68が位置決めされた状態で給送カム67が回転したことで、ピックアップアーム68の凸部68aが給送カム67のカム面67aから離間した非接触の状態である。従って、第3状態では、加圧バネ69の付勢力は給送カム67に作用していない。
【0062】
第4状態は押し上げ状態(図7(d))である。第4状態は、下方位置で停止しているピックアップアーム68の凸部68aに対し、順回転方向(R5方向)に回転する給送カム67のカム面67aし、加圧バネ69の付勢力に抗してピックアップアーム68をR2方向に押し上げている状態である。凸部68aは、給送カム67のカム面67aの内、給送カム67の第3領域a3と当接している。カム面67aは、凸部68aを順回転方向(R5方向)に沿った方向の押圧力F’で押圧し、その反力として、凸部68aからカム面67aに加圧バネ69の付勢力Fが加わる。第4状態では、第2状態と異なり、ピックアップアーム68が給送カム67に加える付勢力Fにより、給送カム67に逆回転方向(図中反時計周り方向)のモーメントM2が作用する。ピックアップアーム68が上方位置まで移動すると、給送カム67は図7(a)の第1状態に戻る。
【0063】
(アシスト状態の説明)
図7(b)で説明した給送カム67の第2状態(アシスト状態)においてレジ駆動列54に起こる現象を説明する。図8(a、b)は、レジローラギア64と給送制御ギア65の噛合い部を拡大した図である。
【0064】
図8(a)は、通常の駆動時(第2状態以外で給送カム67が順回転方向に回転している時)の様子を表している。レジローラギア64は、上流側の第3レジギア63から駆動力が伝えられることで、所定の回転方向(R4方向、図中反時計周り方向)に回転している。給送制御ギア65は、レジローラギア64との噛合いを介して駆動力が伝えられることで、順回転方向(R5方向、図中時計回り方向)に回転されている。
【0065】
ここで、レジローラギア64の歯と給送制御ギア65の歯の間、及び、第3レジギア63の歯とレジローラギア64の歯の間には、それぞれバックラッシ71,72が設けられている。同様に、レジ駆動列54を構成する他のギア同士の噛合い部にも、バックラッシが設けられている。バックラッシは、歯同士が干渉することなくギア間で円滑に回転を伝達できるように設けられた歯面同士の間の隙間(遊び)であり、レジ駆動列54を構成する各ギアに要求される歯車精度に応じて、予め設定されている。
【0066】
図8(b)は、給送カム67が第2状態(アシスト状態)の時、即ちピックアップアーム68を介して加圧バネ69の付勢力を受けることで順回転方向(R5方向)のモーメントM1が作用している時の様子を示す。給送制御ギア65は給送カム67と一体となって回転しているので、給送制御ギア65にも順回転方向(R5方向)のモーメントM1が作用している。
【0067】
このとき、モーメントM1により、給送制御ギア65とレジローラギア64の噛合い部においてバックラッシ71が詰まる(消失する)ように、給送制御ギア65が順回転方向(R5方向)に加速する。つまり、モーメントM1によって給送制御ギア65の回転速度(ピッチ円上での周速)が加速し、レジローラギア64の回転速度(ピッチ円上での周速)よりも一時的に速い速度で回転する。そして、図8(a)の状態では給送制御ギア65の歯に対して順回転方向(R5方向)の下流側に存在していたバックラッシ71が、図8(b)の状態では消失する。このとき、バックラッシ71に相当する隙間が、給送制御ギア65の歯に対して接線方向V5の上流側に生じている。
【0068】
更に、モーメントM1にアシストされて順回転方向(R5方向)に加速した給送制御ギア65によってレジローラギア64が押圧され、レジローラギア64の順回転方向(R4方向)の回転がアシストされる。その結果、レジローラギア64は、第3レジギア63との噛合い部においてバックラッシ72が詰まるように、レジローラギア64が順回転方向(R4方向)に加速する。同様にして、レジ駆動列54を構成する各ギアの噛合い部において、ギア間のバックラッシが詰まるように、下流側のギアが上流側のギアに対して一時的に加速する現象が伝播していく。言い換えると、通常はモータ60からレジローラギア64に向かって順回転方向の駆動力が伝達されるのに対し、給送カム67の第2状態では、加圧バネ69の付勢力により、レジローラギア64からモータ60に向かって順回転方向の付勢力が一時的に逆流する。このようにして、レジ駆動列54の全てのギアの噛合い部においてバックラッシが詰まるまで、レジローラギア64の順回転方向(R5方向)の回転速度が一時的に加速する現象が発生する。
【0069】
上記の現象は、最も上流側の噛合い部であるピニオンギア60aと第1レジギア61の噛合い部におけるバックラッシが詰まると終了する。ただし、モーメントM1の大きさに等によって、上記の現象は、ピニオンギア60aと第1レジギア61の噛合い部に至るまでに終わる場合もある。ここで、モータ60は、シート搬送機構103の各ローラのシート搬送速度の設定値に対応する所定の回転速度で定速制御されているため、加圧バネ69の付勢力に起因する駆動力が入力されてもモータ60の回転速度の変動は抑制される。従って、レジ駆動列54の全てのギアの噛合い部においてバックラッシが詰まった後は、レジ駆動列54の各ギアは通常と同じ回転速度で回転する。
【0070】
給送カム67の第2状態が終了すると、給送カム67はピックアップアーム68から離間して加圧バネ69の付勢力を受けない状態(第3状態、図7(c))となる。すると、加圧バネ69の付勢力に起因するモーメントM1のアシストがなくなるため、給送制御ギア65の回転速度はレジローラギア64の回転速度より一時的に遅くなる。その結果、給送制御ギア65及びレジローラギア64は図8(a)に示す通常の噛合い状態に戻り、給送制御ギア65がレジローラギア64に駆動されて順回転方向(R5方向)に回転する状態となる。同様に、レジ駆動列54を構成する各ギア間の噛合い部においても、下流側のギアの回転速度が上流側のギアの回転速度に比べて一時的に遅くなって通常の噛合い状態に戻り、下流側のギアが上流側のギアに駆動されて順回転方向に回転する状態となる。
【0071】
このように、給送動作の過程で加圧バネ69の付勢力Fに起因するモーメントが給送カム67に作用する状態(第2状態)となることで、レジローラギア64の順回転方向(R4方向)の回転が一時的に変動する可能性がある。このような現象が発生すると、レジローラ250の回転速度が一時的に変動することで、レジローラ250によるシートを送り込むシート搬送速度が変動してしまう。特に、複数枚のシートの片面に連続的に画像形成を行う画像形成動作(以下、片面連続印刷)において、レジローラ250によって搬送されている先行シートに画像の転写が行われている期間中に後続シートの給送動作を開始する場合の影響が懸念される。この場合、先行シートに対する画像転写中にレジローラ250のシート搬送速度が加速すると、先行シートに転写された画像に画像ブレが生じる可能性があるからである。なお、片面連続印刷(片面連続印刷動作)が行われるとき、複数のシート(例えば先行シートと後続シート)は、給送カセット115や給送トレイ401から排出トレイ101aまで、両面搬送ローラ123,124を用いずに搬送される。このとき、複数のシートは、給送カセット115や給送トレイ401から給送され、レジローラ250を経由して搬送され、排出ローラ109及び排出コロ110によって画像形成装置1の外部に排出されるまで、両面搬送ローラ123,124と接触することはない。
【0072】
(クラッチ制御)
そこで、本実施形態では、加圧バネ69の付勢力によってレジローラ250のシート搬送速度が変動することを抑制するように、片面連続印刷における給送動作を行う際に両面駆動列56の電磁クラッチ57を連結状態とする制御を行う。つまり、両面搬送ローラ123,124によってシートを搬送しない状態であっても、電磁クラッチ57を連結状態とする制御を行う。電磁クラッチ57を連結状態とすることで、レジ駆動列54から両面駆動列56に駆動力を分配している第3レジギア63(図3及び図5)に対して、両面駆動列56を構成するギア及び両面搬送ローラ123,124の負荷が加えられる。なお、片面連続印刷では両面搬送ローラ123,124がシートを搬送することはないため、給送動作中に電磁クラッチ57を連結状態とし、両面搬送ローラ123,124が回転しても両面搬送路125内のシートの搬送に影響を及ぼすことはない。
【0073】
図4に示すように、レジ駆動列54を構成する第3レジギア63と、両面駆動列56を構成する両面入力ギア74は、同軸上に配置されており一体となって回転する。そのため、電磁クラッチ57を連結状態としたときは、駆動伝達経路において電磁クラッチ57より下流側の要素の負荷が第3レジギア63に加えられる。電磁クラッチ57より下流側の要素の負荷には、両面搬送ローラ123,124の回転抵抗や、電磁クラッチ57と両面搬送ローラ123,124とを接続するギア列56Gを構成する各ギアの回転抵抗が含まれる。この負荷は、第3レジギア63がモータ60からの駆動力によって回転駆動される順回転方向(図6(a)のR3方向)とは反対方向の負荷トルクである。従って、給送動作中に給送カム67が第2状態(アシスト状態)となってレジローラギア64が加速し、レジローラギア64から第3レジギア63に順回転方向(R3方向)のモーメントが作用したとしても、上記負荷により第3レジギア63の加速が抑制される。
【0074】
給送動作中は電磁クラッチ57を常に解除状態とする構成の場合、上述した通り、レジローラギア64からピニオンギア60aに至る全てのギアの噛合い部でバックラッシが詰まるまで、レジローラギア64の回転速度が加速する可能性がある。これに対し、本実施形態では、給送動作中に電磁クラッチ57を連結状態とすることで第3レジギア63の加速が抑制される。そのため、少なくとも上記構成に比べて、レジローラギア64の回転速度が加速する量(通常の回転速度を維持した場合に比べて余分に回転する量)が低減され、レジローラ250によるシート搬送速度の変動を低減することができる。その結果、二次転写部においてシートに転写された画像に画像ブレが発生する可能性を低減することができる。
【0075】
ところで、電磁クラッチ57を連結状態とすることでレジローラ250のシート搬送速度の変動を効果的に抑制するためには、電磁クラッチ57より下流側の要素の負荷が大きいことが好ましい。本実施形態では、電磁クラッチ57の下流側に、第2搬送部材としての両面搬送ローラ124だけでなく、第3搬送部材としての両面搬送ローラ123が接続されている。従って、電磁クラッチ57の下流側に1つの搬送部材のみが接続される場合に比べて、電磁クラッチ57を連結状態とした時のレジローラ250のシート搬送速度の変動をより効果的に抑制することができる。
【0076】
また、電磁クラッチ57を連結状態とすることでレジローラ250のシート搬送速度の変動を効果的に抑制するには、電磁クラッチ57を含む両面駆動列56が、レジ駆動列54においてレジローラギア64に可能な限り近いギアに接続されることが好ましい。つまり、複数のギアを介してレジローラギア64と接続されたギア(例えば第1レジギア61)に両面駆動列56を接続するよりも、レジローラギア64又はレジローラギア64に直接噛合う第3レジギア63に両面駆動列56を接続する方が好ましい。つまり、第1駆動伝達部が第1搬送部材と一体に回転する第1ギアと、第1ギアと噛合って駆動力を第1ギアに伝達する第2ギアと、を有する場合に、クラッチを含む第3駆動伝達部は第1ギア又は第2ギアと接続されることが好ましい。
【0077】
このような接続関係とすることで、電磁クラッチ57の連結状態において電磁クラッチ57より下流側の負荷を受けるギアからレジローラギア64までの区間に存在するギア同士の噛合い部の数が少なくなる。その結果、給送カム67が第2状態(アシスト状態)となってレジローラギア64が加速した場合にレジローラギア64が余分に回転できる量(上記区間に存在する噛合い部のバックラッシの総和)が小さくなる。本実施形態では、レジローラギア64に直接噛合う第3レジギア63に両面駆動列56を接続している。このため、給送カム67が第2状態(アシスト状態)となった場合でも、レジローラギア64と第3レジギア63との噛合い部におけるバックラッシ72(図8(a))が詰まった時点で、レジローラギア64の順回転方向(R4方向)への加速が規制される。
【0078】
図9に画像形成装置1の制御方法を例示するフローチャートを示す。本制御方法の各工程は、図5に示す制御部100のCPUが制御プログラムを読み出して実行することによって実現される。片面連続印刷の実行指令(ジョブ)が画像形成装置1に投入されると、制御部100は本制御方法の実行を開始する。ジョブの実行が開始されると、モータ60の駆動が開始され(S1)、シートSの給送を開始すべきタイミング(給送タイミング)が到来したかが判断される(S2)。本実施形態における給送タイミングとは、中間転写ベルト130の搬送方向で最上流のプロセスユニットP1においてレーザスキャナ120による静電潜像の書き出しが開始された時刻を基準として、画像形成部102で作成されたトナー像が二次転写部に到達するのと同時にシートSが二次転写部に進入するように予め設定された待機時間が経過した時刻を指す。
【0079】
給送タイミングが到来すると、制御部100はソレノイド66への通電を行って給送制御ギア65の回転を開始させ、給送ユニット104による給送動作を開始させる(S3)。また、制御部100は、ソレノイド66への通電と同時に、両面駆動列56の電磁クラッチ57に通電して電磁クラッチ57を連結状態とする(S3)。係止爪66aが給送制御ギア65の係止部65a(図6(b))から離脱するのに十分な時間が経過した時点で、ソレノイド66への通電は遮断される(S4)。その後、制御部100は所定時間が経過するまで、電磁クラッチ57を連結状態に維持したまま待機する(S5)。この期間中に、給送カム67は第1状態(図7(a))から第2状態(図7(b))を経て第3状態(図7(c))に遷移する。S3から所定時間が経過した時点で、制御部100は電磁クラッチ57への通電を遮断する(S6)。まだ画像形成が行われていない後続シートがある場合(S7:Yes)は、S2に戻って同様の処理が繰り返され、ジョブで指定された全てのシートが給送済みの場合(S7:No)は処理が終了する。
【0080】
上記制御方法において、電磁クラッチ57を連結状態とする期間(所定時間)は、給送カム67が第1状態(図7(a))から第2状態(図7(b))に遷移する時点より前に開始される。また、上記期間(所定時間)は、給送カム67が第2状態(図7(b))から第3状態(図7(c))に遷移する時点より後に終了するように設定される。なお、給送カム67の第1状態から第2状態への遷移時点は、ピックアップアーム68の凸部68aのカム面67aに対する当接位置が第1領域a1から第2領域a2に移った時点とする(図7(a、b))。給送カム67の第2状態から第3状態への遷移時点は、ピックアップアーム68の凸部68aがカム面67aの第2領域a2から離間した時点とする(図7(b、c))。
【0081】
本実施形態の構成例においては、ソレノイド66への通電と同時に電磁クラッチ57を連結状態とし、給送カム67が初期位置から一回転した後に電磁クラッチ57を解除状態とするように、上記所定時間が設定される。これに限らず、例えばソレノイド66への通電開始前に電磁クラッチ57を連結状態としてもよい。また、例えば電磁クラッチ57を連結状態とした後、給送カム67が第2状態から第3状態に遷移した後、かつ、給送カム67が一回転する前の時点で、電磁クラッチ57を解除状態としてもよい。
【0082】
(参考例の駆動構成)
参考例と比較して本実施形態の利点を説明する。図10は参考例に係るシート搬送機構の駆動構成を表す模式図である。この参考例では、モータ60のピニオンギアが、レジ駆動列54を構成するギアと給送駆動列155を構成するギアのそれぞれに噛合っている。つまり、モータ60からレジローラ250への駆動伝達経路であるレジ駆動列54と、モータ60から給送カム67の駆動伝達経路である給送駆動列155が互いに重複せずに根元から分岐している。その他のシート搬送機構の構成は、本実施形態と同様であるものとする。
【0083】
参考例の構成では、給送動作時に加圧バネ69の付勢力によって給送カム67に順回転方向のモーメントが作用しても、その負荷がモータ60によって受け止められ、レジ駆動列54に伝播しない。そのため、本実施形態と同様に、加圧バネ69の付勢力によってレジローラ250のシート搬送速度が変動して画像ブレが発生することは抑制される。
【0084】
しかし、参考例の構成ではモータ60からレジローラ250への駆動伝達経路と駆動伝達経路とが互いに重複せずに根元から分岐した構成であるため、本実施形態よりも多くのギアが必要となる。具体的には、第1レジギア61及び第2レジギア62のように、モータ60が出力する回転の速度をレジローラ250及び給送カム67の駆動に適した速度まで減速するための減速機構が、レジ駆動列54及び給送駆動列155のそれぞれについて必要となる。必要なギアの数が増えることで、シート搬送機構を製造コストが増大し、ギアを配置するためのスペースが必要となって画像形成装置の大型化につながる。
【0085】
これに対し、本実施形態ではレジ駆動列54の下流側に給送駆動列55を配置している。つまり、給送カム67は、モータ60からレジ駆動列54を介して伝達される駆動力によって回転駆動される構成とした。これにより、シート搬送機構全体でのギアの数を可能な限り少なくして、低コストかつ省スペースな構成とすることができる。
【0086】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態によれば、片面連続印刷において、レジローラ250による先行シートの搬送中に後続シートの給送動作を開始する場合に、電磁クラッチ57を連結状態とする。言い換えれば、本実施形態の制御手段は、第1搬送部材による先行シートの搬送中にカム部材を回転させて給送部材による後続シートの給送を実行させる場合に、クラッチを連結状態とする。これにより、加圧バネ69(付勢部材)の付勢力によってレジローラ250のシート搬送速度が変動することを抑制し、シートに転写される画像の画像ブレを抑制することができる。
【0087】
特に、本実施形態では、給送動作中に少なくとも給送カム67の第2状態(アシスト状態)となる期間は、電磁クラッチ57を連結状態とするように構成される。即ち、カム部材は、所定の角度範囲内に位置する状態では、付勢部材の付勢力によって、モータから第3駆動伝達部を介して伝達される駆動力により回転する回転方向(R5方向)と同じ回転方向に付勢されるように構成される。そして、制御手段は、第1搬送部材による先行シートの搬送中にカム部材を回転させて給送部材による後続シートの給送を開始させる場合に、カム部材が所定の角度範囲に進入する前にクラッチを解除状態から連結状態に切り替える。また制御手段は、カム部材が所定の角度範囲を離脱した後にクラッチを連結状態から解除状態に切り替える。
【0088】
また、レジ駆動列54が、モータ60からレジローラ250への駆動伝達経路であると共に、モータ60から給送カム67への駆動伝達経路を兼ねている構成とした。即ち、モータの駆動力をカム部材に伝達する第2駆動伝達部としての給送駆動列55が、第1駆動伝達部としてのレジ駆動列54を介してモータと接続されている。これにより、レジ駆動列54及び給送駆動列55を構成するギアの数を可能な限り少なくして、低コスト化及び装置の小型化が可能となる。
【0089】
<第2実施形態>
図11を用いて第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態と共通の符号を付した要素は、第1実施形態で説明したものと実質的に同一の構成及び作用を有するものとして説明する。本実施形態は、シート搬送機構103の駆動構成の一部が第1実施形態と異なっており、画像形成装置1の全体的な構成は第1実施形態と同様である。
【0090】
第1実施形態は、図5に示したように、レジ駆動列54の途中から分岐して両面搬送ローラ123,124に接続された両面駆動列56を備える構成であった。本実施形態では、図11に示すように、給送駆動列255を構成するギア280に両面駆動列256が接続され、両面駆動列256が給送駆動列255の途中から分岐した構成とする。ギア280とは、例えば、図6(a)に示す第1実施形態の第1給送ギア80に相当するギアである。つまり、本実施形態において、第2駆動伝達部としての給送駆動列255は、第1駆動伝達部としてのレジ駆動列54の下流側に接続された駆動伝達経路である。また、第3駆動伝達部としての両面駆動列256は、給送駆動列255の一部であるギア280を介して、第1駆動伝達部としてのレジ駆動列54の下流側に接続された駆動伝達経路である。
【0091】
給送カム267は、レジ駆動列54及び給送駆動列255を介してモータ60からの駆動力を伝達されて順回転方向に回転することにより、ピックアップローラ116を保持するピックアップアーム68を昇降させる。本実施形態においても、給送カム267の回転中に、加圧バネ69の付勢力によってピックアップアーム68が給送カム67を押圧し、給送カム267が順回転方向に付勢された第2状態となる。
【0092】
画像形成装置1の制御部100は、レジローラ250による先行シートの搬送中に後続シートの給送を実行させる場合に、第1実施形態と同様のタイミングで電磁クラッチ57を連結状態とする。これにより、ギア280に対して、電磁クラッチ57より下流側に配置された両面搬送ローラ123,124等の負荷が加わる。この負荷は、モータ60からギア280に伝達される駆動力の方向(順回転方向)とは反対方向の負荷トルクである。従って、給送動作中に給送カム267が第2状態(アシスト状態)となって、給送カム267からギア280に順回転方向のモーメントが作用したとしても、上記負荷によりギア280の加速が抑制される。これにより、ギア280と接続されたレジローラギア64の加速も抑制され、レジローラ250のシート搬送速度の変動が抑制される。
【0093】
このように、本実施形態の構成によっても、加圧バネ69(付勢部材)の付勢力によってレジローラ250のシート搬送速度が変動することを抑制し、シートに転写される画像の画像ブレを抑制することができる。
【0094】
ところで第1実施形態では、レジローラギア64の上流側に設けた第3レジギア63に負荷トルクを与えていた。そのため、第3レジギア63の加速は抑制されているものの、レジローラギア64と第3レジギア63との噛合い部におけるバックラッシが詰まるまでは、レジローラギア64が順回転方向に加速することが許容されていた。
【0095】
一方、本実施形態では、レジローラギア64の下流側に設けたギア280に負荷トルクを加えてギア280の順回転方向の加速を抑制している。そのため、給送動作中に給送カム267が第2状態(アシスト状態)となったとしても、加圧バネ69の付勢力に起因する順回転方向のモーメントがレジローラギア64に作用することを規制することができる。このとき、第1実施形態のように、レジローラギア64と負荷トルクを受けているギア280との噛合い部のバックラッシが詰まるようにレジローラギア64が加速することはない。そのため、第1実施形態に比べてレジローラ250のシート搬送速度の変動を更に低減することが可能である。
【0096】
<第3実施形態>
図12を用いて第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態と共通の符号を付した要素は、第1実施形態で説明したものと実質的に同一の構成及び作用を有するものとして説明する。本実施形態は、シート搬送機構103の駆動構成の一部が第1実施形態と異なっており、画像形成装置1の全体的な構成は第1実施形態と同様である。
【0097】
本実施形態では、レジ駆動列54の途中から分岐して手差し搬送ローラ310,320,330に駆動力を伝達する手差し搬送駆動列356を設けている。手差し搬送駆動列356は、レジ駆動列54を構成するギア363に接続される。ギア363とは、例えば、図6(a)に示す第1実施形態の第3レジギア63に相当するギアである。
【0098】
更に、手差し搬送駆動列356の下流側には、手差し式のシート給送部400のピックアップローラ402及びフィードローラ403に駆動力を伝達する手差し給送駆動列357を設けている。ピックアップローラ402は、不図示のソレノイドを駆動することで、給送トレイ401(図1)からシートを給送する。本実施形態において、第2駆動伝達部としての給送駆動列55は、第1駆動伝達部としてのレジ駆動列54の下流側に接続された駆動伝達経路である。また、第3駆動伝達部としての手差し搬送駆動列356は、第1駆動伝達部としてのレジ駆動列54の途中から分岐した駆動伝達経路である。
【0099】
手差し搬送駆動列356の途中には、電磁クラッチ157が配置されており、手差し搬送ローラ310、320、330及びその下流側のピックアップローラ402及びフィードローラ403を選択的に駆動可能に構成されている。手差し搬送ローラ310は、給送部材としてのピックアップローラ116から第1搬送部材としてのレジローラ250への搬送経路とは別の搬送経路に配置され、クラッチ(電磁クラッチ157)を介して駆動力を伝達される第2搬送部材の一例である。手差し搬送ローラ310は、第1のシート積載部としての給送カセット115とは別に設けられた第2のシート積載部としての給送トレイ401(図1)から給送されるシートを搬送する。また、他の手差し搬送ローラ320,330、ピックアップローラ402及びフィードローラ403の各々は、手差し搬送駆動列356に設けられたクラッチ(電磁クラッチ157)を介して駆動力を伝達される第3搬送部材の例である。
【0100】
画像形成装置1の制御部100は、レジローラ250による先行シートの搬送中に後続シートの給送を実行させる場合に、第1実施形態と同様のタイミングで電磁クラッチ157を連結状態とする。これにより、レジ駆動列54のギア363に対して、電磁クラッチ157より下流側に配置された手差し搬送ローラ310,320,330等の負荷が加わる。この負荷は、モータ60からギア363に伝達される駆動力の方向(順回転方向)とは反対方向の負荷トルクである。従って、給送動作中に給送カム67が第2状態(アシスト状態)となって、給送カム67からギア363に順回転方向のモーメントが作用したとしても、上記負荷によりギア363の加速が抑制される。これにより、ギア363と接続されたレジローラギア64の加速も抑制され、レジローラ250のシート搬送速度の変動が抑制される。
【0101】
このように、本実施形態の構成によっても、加圧バネ69(付勢部材)の付勢力によってレジローラ250のシート搬送速度が変動することを抑制し、シートに転写される画像の画像ブレを抑制することができる。
【0102】
ところで、第1実施形態の電磁クラッチ57は両面搬送ローラ123,124への駆動伝達経路に設けられていたため、両面印刷を行うためのシートが両面搬送路125に待機している状態では電磁クラッチ57を連結状態とはしていなかった。これに対し、本実施形態では、電磁クラッチ157は手差し式の給送トレイ401からのシートを搬送する手差し搬送ローラ310,320,330への駆動伝達経路に設けられている。このため、両面印刷か片面印刷かに関わらず、レジローラ250による先行シートの搬送中に給送カセット115からシートSを給送する場合に電磁クラッチ157を連結状態とすることで、レジローラ250のシート搬送速度が変動することを抑制できる。
【0103】
なお、本実施形態では、第2搬送部材としての搬送ローラ310は、第2のシート積載部としての手差し式の給送トレイ401から給送されるシートを搬送するものとして説明した。これに限らず、第2搬送部材は、例えば画像形成装置1に連結されるシート給送装置(オプションフィーダ)から画像形成装置1に給送されてきたシートを搬送する搬送ローラであってもよい。即ち、クラッチを含む第3駆動伝達部によって、給送部材から第1搬送部材への搬送経路とは別の搬送経路に設けられた第2搬送部材に選択的に駆動力を伝達可能な構成であれば、本技術を適用可能である。
【0104】
<第4実施形態>
図13(a、b)及び図14(a、b)を用いて第4実施形態について説明する。以下、第1実施形態と共通の符号を付した要素は、第1実施形態で説明したものと実質的に同一の構成及び作用を有するものとして説明する。本実施形態は、シート給送部における給送部材とシートとの加圧機構が第1実施形と異なっており、画像形成装置1の全体的な構成は第1実施形態と同様である。
【0105】
図13(a)は、本実施形態に係るシート給送部の斜視図であり、図13(b)は、本実施形態に係るシート搬送機構の駆動構成を表す模式図である。図14(a、b)は、シート給送部を給送ローラ216の回転軸線方向に見たときの断面構成を表す断面図であり、図14(a)は中板246が下方位置に位置する状態、図14(b)は中板246が上方位置に位置する状態を示す。
【0106】
図13(a、b)及び図14(a、b)に示すように、本実施形態のシート給送部は、シート積載部としての中板268と、給送部材としての給送ローラ216と、第1搬送部材としてのレジローラ350と、を有する。また、シート給送部は、付勢部材としての中板バネ282と、カム部材としての給送カム467と、を有する。
【0107】
本実施形態のシート給送部は、中板268を中板バネ282の付勢力によって上方に付勢することで給送ローラ216とシートとを加圧する、所謂中板加圧方式を採用している。シートは中板268の上面に積載される。給送ローラ216は、中板268の上方に配置される。給送ローラ216の回転軸線の位置は実質的に固定されている。給送ローラ216の下面には、給送ローラ216によって給送されるシートを1枚ずつ分離するための分離パッド269が当接している。
【0108】
中板268は、積載されたシートの上面が給送ローラ216に当接する位置(上方位置、給送位置、図13(b))と、積載されたシートの上面が給送ローラ216から下方に離間する位置(下方位置、待機位置、図13(a))とに昇降可能である。中板バネ282は中板268の下方に配置され、中板268を上方位置へ向けて付勢している。
【0109】
給送カム467は、給送ローラ216のローラ軸216aに取り付けられ、給送ローラ216と一体に回転する。給送ローラ216及び給送カム467を支持するローラ軸2216aには、更に給送制御ギア65が取り付けられている。給送制御ギア265は、レジローラ350のローラ軸に取り付けられたレジローラギア264と噛合っている。給送制御ギア265は、第1実施形態と同様の機構により、モータ60の回転中にソレノイド266(図14(a))に短時間の通電が行われる度に一回転するように構成されている。
【0110】
図13(b)に示すように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、レジ駆動列54の途中から両面駆動列56が分岐しており、両面駆動列56の途中には電磁クラッチ57が設けられている。また、給送制御ギア265及びローラ軸216a(図13(a))は、レジ駆動列54の一部であるレジローラギア264から受け取った駆動力を給送ローラ216及び給送カム467に伝達する給送駆動列455を構成している。つまり、本実施形態において、第2駆動伝達部としての給送駆動列455は、第1駆動伝達部としてのレジ駆動列54の下流側に接続された駆動伝達経路である。また、第3駆動伝達部としての両面駆動列56は、レジ駆動列54の途中から分岐した駆動伝達経路である。
【0111】
図14(a、b)を用いて、給送カム467と中板268の動作を説明する。中板268は、中板バネ282によって常に図中上方に付勢されているため、給送カム467のカム面467aに、中板268のカム面268aが当接する。
【0112】
図14(a)は、給送カム467の第1状態(つり合い状態)を表す。第1状態は、給送カム467が停止している状態、又は、ソレノイド266が駆動して給送カム467が回り始めた直後である。第1状態では、中板バネ282の付勢力によって、中板268のカム面268aが給送カム467のカム面467aの第1領域a1と当接している。このとき、給送カム467が受ける付勢力Fは、給送カム467の回転中心を向いている。この状態では、中板268は給送カム467にモーメントを与えない。つまり、第1状態では、中板バネ282の付勢力Fによっては、給送カム467は順回転方向(図中時計回り方向)に付勢されない。
【0113】
図14(b)は、給送カム467の第2状態(アシスト状態)を表す。第2状態は、給送制御ギア265がソレノイド66の係止から解放され、給送動作が開始した後の状態であり、給送カム467は順回転方向(図中時計回り方向)に回転している。このとき、中板バネ282の付勢力によって、中板268のカム面268aが給送カム467のカム面467aの第2領域a2と当接している。中板268が給送カム467を押圧する付勢力Fの方向(付勢力Fの作用線の方向)は、給送カム467の回転中心に向かっておらず、回転中心より図中下方を通過する。このため、第2状態では、中板バネ282からの付勢力Fにより、給送カム467に順回転方向(図中時計回り方向)のモーメントが作用する。つまり、第2状態とは、モータ60の駆動力によって順回転方向に回転されている給送カム467の回転がアシストされた状態である。従って、本実施形態のように中板加圧方式の構成でも、中板バネ282の付勢力によって給送カム467に順回転方向のモーメントが作用することで、給送カム467と接続されたレジローラ350のシート搬送速度が変動する可能性がある。
【0114】
画像形成装置1の制御部100は、レジローラ350による先行シートの搬送中に後続シートの給送を実行させる場合に、第1実施形態と同様のタイミングで電磁クラッチ57を連結状態とする。これにより、レジ駆動列54の第3レジギア63に対して、電磁クラッチ57より下流側に配置された両面搬送ローラ123,124等の負荷が加わる。この負荷は、モータ60から第3レジギア63に伝達される駆動力の方向(順回転方向)とは反対方向の負荷トルクである。従って、給送動作中に給送カム467が第2状態(アシスト状態)となって、給送カム467から第3レジギア63に順回転方向のモーメントが作用したとしても、上記負荷により第3レジギア63の加速が抑制される。これにより、第3レジギア63と接続されたレジローラギア264の加速も抑制され、レジローラ350のシート搬送速度の変動が抑制される。
【0115】
このように、本実施形態の構成によっても、加圧バネ69(付勢部材)の付勢力によってレジローラ250のシート搬送速度が変動することを抑制し、シートに転写される画像の画像ブレを抑制することができる。
【0116】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、カム部材に駆動力を伝達する第2駆動伝達部が、第1搬送部材に駆動力を伝達する第1駆動伝達部の下流側に配置される構成を説明した。この構成では、付勢部材の付勢力によってカム部材が順回転方向に付勢されたときに、第1駆動伝達部に含まれる全てのギアの噛合い部におけるバックラッシが詰まるまで第1搬送部材が加速する可能性がある。そのため、各実施形態で説明したクラッチの制御による第1搬送部材のシート搬送速度の変動の抑制が特に効果的である。
【0117】
しかしながら、カム部材に駆動力を伝達する第2駆動伝達部が、第1搬送部材に駆動力を伝達する第1駆動伝達部の途中から分岐した構成に、各実施形態で説明したクラッチの制御を適用してもよい。例えば、第1実施形態(図6(a))におけるレジ駆動列54の第2レジギア62又は第3レジギア63に給送制御ギア65が噛み合う構成としてもよい。この場合でも、給送カム67が第2状態(アシスト状態)になった時に、第2レジギア62又は第3レジギア63からピニオンギア60aまでのギアの噛合い部のバックラッシが詰まるまで、加圧バネ69の付勢力によってレジローラギア64の回転が加速する可能性があるからである。つまり、第2駆動伝達部は、第1駆動伝達部の下流側に接続され、又は第1駆動伝達部の途中から分岐して配置され、第1駆動伝達部の少なくとも一部を介してモータと接続された構成とする。同様に、上記各実施形態で例示したように第3駆動伝達部は、第1駆動伝達部の下流側に接続され、又は第1駆動伝達部の途中から分岐して配置され、第1駆動伝達部の少なくとも一部を介してモータと接続された構成とする。
【0118】
また、上記の各実施形態では、各駆動列(駆動伝達部)がギア列によって構成される場合を説明したが、駆動列の一部又は全部が歯車以外の駆動伝達機構で構成されていてもよい。例えば、歯付ベルトを用いたベルト伝動機構の場合、ベルト側の歯とプーリー側の歯との間にバックラッシが設けられている。そのため、カム部材が第2状態(アシスト状態)となった時に、バックラッシが詰まるまで付勢部材の付勢力によって第1搬送部材のシート搬送速度が変動する可能性があるからである。
【符号の説明】
【0119】
1…画像形成装置/54…第1駆動伝達部(レジ駆動列)/55,155,255…第2駆動伝達部(給送駆動列)/56,256…第3駆動伝達部(両面駆動列)/60…モータ/67,467…カム部材(給送カム)/69,282…付勢部材(加圧バネ、中板バネ)/200…制御手段(制御部)/115,268…シート積載部(給送カセット、中板)/116,216…給送部材(ピックアップローラ、給送ローラ)/124,310…第2搬送部材(両面搬送ローラ、手差し搬送ローラ)/250,350…第1搬送部材(レジローラ)
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