IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-レンズ装置 図1
  • 特開-レンズ装置 図2
  • 特開-レンズ装置 図3
  • 特開-レンズ装置 図4
  • 特開-レンズ装置 図5
  • 特開-レンズ装置 図6
  • 特開-レンズ装置 図7
  • 特開-レンズ装置 図8
  • 特開-レンズ装置 図9
  • 特開-レンズ装置 図10
  • 特開-レンズ装置 図11
  • 特開-レンズ装置 図12
  • 特開-レンズ装置 図13
  • 特開-レンズ装置 図14
  • 特開-レンズ装置 図15
  • 特開-レンズ装置 図16
  • 特開-レンズ装置 図17
  • 特開-レンズ装置 図18
  • 特開-レンズ装置 図19
  • 特開-レンズ装置 図20
  • 特開-レンズ装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189278
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】レンズ装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 35/10 20210101AFI20221215BHJP
   G03B 37/00 20210101ALI20221215BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221215BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20221215BHJP
   G03B 11/04 20210101ALI20221215BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221215BHJP
   G03B 17/08 20210101ALI20221215BHJP
【FI】
G03B35/10
G03B37/00 A
G03B15/00 W
G03B17/14
G03B11/04 A
G03B17/02
G03B17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097777
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】野田 豊人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】上原 匠
(72)【発明者】
【氏名】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】日塔 潔
【テーマコード(参考)】
2H059
2H083
2H100
2H101
【Fターム(参考)】
2H059AA09
2H059BA01
2H083BB01
2H083BB11
2H083BB17
2H100AA41
2H100EE06
2H101CC53
2H101EE08
2H101EE31
(57)【要約】
【課題】外観品位を維持しつつ、防塵防滴性能及び光学性能を両立可能であり、180度を超える画角で立体撮影が可能なレンズ装置を提供すること。
【解決手段】レンズ装置は、最も被写体側に配置されるレンズと、レンズを保持する保持部材と、レンズの光軸方向から見てレンズを露出させる第1開口部を備え、保持部材と光軸方向において位置決めされるカバー部材と、カバー部材の外径と嵌合する第2開口部を備える外装部材とを有し、保持部材とカバー部材との間に形成された光軸方向と直交する径方向の第1の隙間は、外装部材とカバー部材との間に形成された径方向の第2の隙間よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も被写体側に配置されるレンズと、
前記レンズを保持する保持部材と、
前記レンズの光軸方向から見て前記レンズを露出させる第1開口部を備え、前記保持部材と前記光軸方向において位置決めされるカバー部材と、
前記カバー部材の外径と嵌合する第2開口部を備える外装部材とを有し、
前記保持部材と前記カバー部材との間に形成された前記光軸方向と直交する径方向の第1の隙間は、前記外装部材と前記カバー部材との間に形成された前記径方向の第2の隙間よりも大きいことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記カバー部材と前記外装部材の一方は突起部を有し、他方に前記突起部と嵌合する溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記レンズ、前記保持部材、及び前記カバー部材は、一体的に前記光軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記レンズの被写体側のレンズ面と、前記レンズの側面又は前記保持部材との境界は、前記光軸方向から見て前記第1開口部の内周よりも外側に位置することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第1の隙間の大きさが変化したとしても、前記境界は前記光軸方向から見て前記第1開口部の内周よりも外側に位置することを特徴とする請求項4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記カバー部材の像側の第1面と、前記保持部材の前記第1面に対向する第2面との間に配置され、前記第1面と前記第2面との間を封止するシール部材を更に有する備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記シール部材は、前記光軸方向と直交する方向において、前記カバー部材、及び前記保持部材との間に前記第1の隙間よりも大きい隙間が形成された状態で配置されることを特徴とする請求項6に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記レンズの有効入射面よりも像側に配置されることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
1つの撮像面に2つの視差のある像を結像して同時に撮影することで立体映像を撮影可能な撮像装置に取り付けるためのマウント部を更に有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記レンズ装置を覆う外装カバー部材を更に有し、
前記レンズ装置は、レンズキャップが着脱可能に装着されるように構成され、
前記外装カバー部材は、前記レンズキャップと嵌合する結合部を備え、
前記結合部は、前記レンズの有効入射面よりも像側に配置されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記レンズは、第一光学系に含まれる第1レンズ及び第二光学系に含まれる第2レンズを備え、
前記カバー部材は、前記第1レンズを露出させる第1カバー部材及び前記第2レンズを露出させる第2カバー部材を備え、
前記外装部材は、前記第1カバー部材が入り込む開口部及び前記第2カバー部材が入り込む開口部を備えることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記第一光学系と前記第二光学系はそれぞれ、反射面を2つずつ持つ屈曲光学系であり、
前記第一光学系と前記第二光学系において、最も被写体側の第1光軸、前記第1光軸と直交する第2光軸、前記第1光軸と平行であり、最も像側の第3光軸が設定されていることを特徴とする請求項11に記載のレンズ装置。
【請求項13】
前記第一光学系と前記第二光学系は、広角の魚眼レンズであることを特徴とする請求項11又は12に記載のレンズ装置。
【請求項14】
前記第一光学系と前記第二光学系は、180度を超える画角で撮影可能な魚眼レンズであることを特徴とする請求項11乃至13の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項15】
前記第一光学系と前記第二光学系は、全周魚眼レンズであることを特徴とする請求項11乃至14の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項16】
請求項11乃至15の何れか一項に記載のレンズ装置に着脱可能に装着されるレンズキャップであって、
第1レンズを含む第一光学系と第2レンズを含む第二光学系との間に配置される2つのスライダー部材を有し、
前記第1レンズと前記第2レンズの光軸方向と直交する同一平面上に、前記2つのスライダー部材、前記第1レンズ、及び前記第2レンズが設けられていることを特徴とするレンズキャップ。
【請求項17】
前記2つのスライダー部材はそれぞれ、前記第1レンズの光軸と前記第2レンズの光軸との間に配置される連結部を備えることを特徴とする請求項16に記載のレンズキャップ。
【請求項18】
前記2つのスライダー部材はそれぞれ、前記第1レンズの光軸と前記第2レンズの光軸との間の中央に配置され、前記レンズキャップを前記レンズ装置に着脱可能に装着させるための操作部を備えることを特徴とする請求項16又は17に記載のレンズキャップ。
【請求項19】
前記2つのスライダー部材はそれぞれ、前記レンズ装置と嵌合する結合部を備えることを特徴とする請求項16乃至18の何れか一項に記載のレンズキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交換レンズシステムの一つとして立体撮影用交換レンズが知られている。特許文献1には、2つの光学系が並列に配置され、一つの撮像素子に二つのイメージサークルが並列に結像するレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-3022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
VRゴーグルで視聴する際、立体感だけでなく、臨場感も得るためには、動画又は静止画の画角は180度以上であることが望ましい。製造誤差等も考慮して、少なくとも180度の映像を提供するためには、レンズは180度を超える画角で撮影できることが望ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1のレンズは、180度を超える画角で撮影することができない。180度を超える画角で撮影するためには、外装部材が前玉レンズに入射する180度以上の光束を妨げないように、外装部材を前玉レンズの頂点よりも撮像面側に配置し、外装部材に2つのレンズがそれぞれ入り込む開口部を設ける必要がある。この場合、レンズの位置ずれが生じると、開口部とレンズとの間の隙間が不均一となり、外観品位に問題が生じてしまう。また、防滴構造が設けられている場合、隙間の不均一が防塵防滴性能に悪影響を与えてしまう。隙間が不均一とならないように開口部とレンズを径篏合させると、レンズの位置ずれを矯正することになり、光学性能や2つの光学系間の相対関係に悪影響を与えてしまう。
【0006】
本発明は、外観品位を維持しつつ、防塵防滴性能及び光学性能を両立可能であり、180度を超える画角で立体撮影が可能なレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、最も被写体側に配置されるレンズと、レンズを保持する保持部材と、レンズの光軸方向から見てレンズを露出させる第1開口部を備え、保持部材と光軸方向において位置決めされるカバー部材と、カバー部材の外径と嵌合する第2開口部を備える外装部材とを有し、保持部材とカバー部材との間に形成された光軸方向と直交する径方向の第1の隙間は、外装部材とカバー部材との間に形成された径方向の第2の隙間よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外観品位を維持しつつ、防塵防滴性能及び光学性能を両立可能であり、180度を超える画角で立体撮影が可能なレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るカメラシステムの概略構成図である。
図2】レンズ装置の断面図である。
図3】被写体側から見たレンズ装置の分解斜視図である。
図4】撮像面側から見たレンズ装置の分解斜視図である。
図5】レンズ装置の正面図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7】レンズ装置の変形例を示す図である。
図8図5のB-B線断面図である。
図9】各光軸と撮像素子上のイメージサークルとの位置関係を示す図である。
図10】右眼光学系で撮像した場合の左眼光学系の映り込みを示す図である。
図11】レンズ装置に装着されているレンズキャップの外観斜視図である。
図12】レンズ装置に装着時のレンズキャップの外観斜視図である。
図13】レンズ装置に着脱時のレンズキャップの外観斜視図である。
図14】レンズキャップの分解斜視図である。
図15】レンズキャップ装着時のレンズキャップと1群レンズの断面図である。
図16】レンズキャップ装着時のスライダーと1群レンズの側面図である。
図17】レンズキャップ装着時のスライダーと1群レンズの上面図である。
図18】変形例のレンズキャップ装着時のレンズキャップと1群レンズの断面図である。
図19】レンズ装置の外観斜視図である。
図20】レンズ装置の外観側面図である。
図21】レンズ装置の外観下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラシステム100の概略構成図である。カメラシステム100は、カメラ本体(撮像装置)110とレンズ装置(交換レンズ)200とを有し、立体映像を撮影可能である。
【0012】
カメラ本体110は、撮像素子111、A/D変換部112、画像処理部113、表示部114、操作部115、記憶部116、カメラ制御部117、及びカメラマウント122を有する。
【0013】
レンズ装置200は、右眼光学系(第一光学系)201R、左眼光学系(第二光学系)201L、レンズマウント(マウント部)202、及びレンズ制御部209を有し、カメラ本体110に着脱可能に装着される。二つの光学系は、並列に(対称に)配列され、撮像素子111に二つのイメージサークルが並列に結像するように構成されている。二つの光学系は、所定の距離(基線長)だけ離間して水平方向に並べられる。撮像面側(像側)から見て、右の右眼光学系201Rで結像する像を右眼用の動画又は静止画として記録し、左の左眼光学系201Lで結像する像を左眼用の動画又は静止画として記録する。動画又は静止画の再生時には、3DディスプレイやVRゴーグル等を用いて鑑賞することで、鑑賞者の右眼には右眼用の映像が映り、左眼には左眼用の映像が映る。このとき、基線長によって、右眼と左眼には視差のある映像が投影されるため、鑑賞者は立体感を得ることができる。このようにレンズ装置200は、二つの光学系により視差のある二つの像を結像可能な立体撮影用のレンズ装置である。
【0014】
レンズ装置200をレンズマウント202及びカメラマウント122を介してカメラ本体110に装着すると、カメラ制御部117とレンズ制御部209が電気的に接続される。
【0015】
被写体の像は、右眼光学系201Rを介して結像される右眼像と左眼光学系201Lを介して結像される左眼像が並んで撮像素子111に結像される。撮像素子111は、結像された被写体の像(光信号)をアナログの電気信号に変換する。A/D変換部112は、撮像素子111から出力されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号(画像信号)に変換する。画像処理部113は、A/D変換部112から出力されたデジタルの電気信号に対して種々の画像処理を行う。
【0016】
表示部114は、各種の情報を表示する。表示部114は、例えば電子ビューファインダや液晶パネルを用いることにより実現される。操作部115は、カメラシステム100に対する指示をユーザが行うためのユーザインタフェースとしての機能を有する。なお、表示部114がタッチパネルを有する場合、当該タッチパネルも操作部115の一つになる。
【0017】
記憶部116は、例えばROM、RAM、及びHDDを用いることにより実現され、画像処理部113で画像処理が行われた画像データ等の各種のデータやプログラムを記憶する。
【0018】
カメラ制御部117は、例えばCPUを用いることにより実現され、カメラシステム100全体を統括制御する。
【0019】
図2は、レンズ装置200の断面図である。図3は、被写体側(物体側)から見たレンズ装置200の分解斜視図である。図4は、撮像面側から見たレンズ装置200の分解斜視図である。
【0020】
以下の説明では、右眼光学系201Rについての記述には符号の末尾にRを付け、左眼光学系201Lについての記述には符号の末尾にLを付ける。右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの両方に共通する記述には、符号の末尾にRもLも付けない。右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの各光学系は、180度を超える画角で撮影することが可能である。各光学系は、反射面を2つずつ持つ屈曲光学系である。各光学系において、被写体側から順に、第1光軸OA1、第1光軸OA1と略直交する第2光軸OA2、第1光軸OA1と平行な第3光軸OA3が設定される。各光学系は、第1光軸OA1上に配置される被写体側のレンズ面211Aが凸形状である1群レンズ211、第2光軸OA2上に配置される2群レンズ221、第3光軸OA3上に配置される3群レンズ231a,231bを有する。また、各光学系は、第1光軸OA1の光束を折り曲げて第2光軸OA2に導く第1プリズム220、及び第2光軸OA2の光束を折り曲げて第3光軸OA3に導く第2プリズム230を有する。なお、以下の説明において、光軸方向とは、被写体側と撮像面側に延びる方向である、第1光軸OA1に平行な方向を示す。
【0021】
各光学系は、レンズトップベース300にビス締め等で固定される。レンズトップベース300は、レンズボトムベース301にビス締め等で固定される。レンズボトムベース301は、不図示の直進構造で回転方向の移動を規制されたまま、光軸方向へ移動可能に保持される。これにより、各光学系は一体となって光軸方向へ移動可能であるため、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは同時にフォーカス位置を調整することができる。
【0022】
図5は、レンズ装置200の正面図である。図6は、図5のA-A線断面図であり、1群レンズ211とその周辺の構造を示している。図7は、レンズ装置200の変形例を示す図である。図8は、図5のB-B線断面図であり、レンズ装置200の1群レンズ211とその周辺の構造を示している。
【0023】
レンズ装置200は、外装カバー部材203及び前面外装部材(外装部材)204を有する。外装カバー部材203は、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lを収納する。前面外装部材204は、外装カバー部材203にビス締め固定され、外装カバー部材203とでレンズ装置200の前側を、蓋をするように収納することができる。
【0024】
前面外装部材204は、右眼光学系201Rの1群レンズ(第1レンズ)211Rと左眼光学系201Lの1群レンズ(第2レンズ)211Lのそれぞれが入り込む開口部(第2開口部)204Fを有する。前面外装部材204は、右眼光学系201R及び左眼光学系201Lの180度を超える有効画角FOVの有効光束を遮らない形状を有する。1群レンズ211R,211Lの被写体側のレンズ面211Aは、被写体側に有効光束の入射面である。レンズ面211Aのうち、有効入射面外径211Cよりも内側を有効入射面211Bとしたとき、画角が180度の光束は有効入射面211Bと光軸と略直交方向に水平に伸びる。画角が180度を超える光束は有効入射面211Bよりも撮像面側にあり、1群レンズ211から遠ざかるほど撮像面側に延びていく。したがって、画角が180度を超える光束を遮らないため、前面外装部材204及びカバー部材213は有効入射面211Bよりも撮像面側に配置される。
【0025】
ここで、図5に示されるように、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの間の中心点Oより右眼光学系201R側を右眼領域20R、左眼光学系201L側を左眼領域20Lとする。前面外装部材204は、右眼領域20Rにおいて、左眼光学系201Lの最外有効光束(図8の太点線部)を遮らないように、左眼光学系201Lの1群レンズ211Lから離れるほど撮像面側に近づく被写体側面204Aを有する。また、前面外装部材204は、左眼領域20Lにおいて、右眼光学系201Rの最外有効光束を遮らないように、右眼光学系201Rの1群レンズ211Rから離れるほど撮像面側に近づく被写体側面204Bを有する。ただし、右眼光学系201Rから見た1群レンズ211L及びその周辺や、左眼光学系201Lから見た1群レンズ211R及びその周辺は、互いの有効光束の一部を遮る領域も有する。
【0026】
前面外装部材204は、開口部204Fを形成するために、被写体側面204A,204Bよりも被写体側に突出する壁部204C,204Dを有する。壁部204Cは、右眼光学系201Rの1群レンズ211Rと略同軸の円弧形状を有し、右眼光学系201Rの有効光束を遮らないが、左眼光学系201Lの有効光束の一部を遮る。また、壁部204Dは、左眼光学系201Lの1群レンズ211Lと略同軸の円弧形状を有し、左眼光学系201Lの有効光束を遮らないが、右眼光学系201Rの有効光束の一部を遮る。
【0027】
図6に示されるように、レンズ装置200は、1群レンズ保持部材212及びカバー部材213を有する。1群レンズ保持部材212は、1群レンズ211R,211Lを保持する。カバー部材213は、1群レンズ211R,211Lの被写体側のレンズ面211Aの外周部を覆い、1群レンズ211R,211Lが入り込む開口部(第1開口部)213Aを有する。開口部213Aは、光軸方向から見て1群レンズ211R,211Lを露出させるように形成されている。
【0028】
1群レンズ211の有効入射面外径211Cよりも外周側には、レンズ面211Aとの境界211Dが存在する。境界211Dは、レンズ面211Aとそれ以外の表面、又は部材との境界である。例えば、境界211Dは、レンズ面211Aと1群レンズ211の側面211Eとの境界であってもよいし、図7に示されるように、レンズ面211Aと1群レンズ211R,211Lをカシメ固定しているカシメ爪形状の内径先端部との境界であってもよい。
【0029】
カバー部材213は、境界211Dを覆っている。すなわち、カバー部材213の開口部213Aの内径は、境界211Dの径よりも小さい。開口部213Aの内径をΦA、境界211Dの径をΦBとするとき、片側のオーバーラップ量Xは以下の式(1)で表される。
【0030】
X=(ΦB-ΦA)/2 (1)
境界211Dを覆い隠すことで外観品位を向上させることができる。
【0031】
カバー部材213の内周の一部には、溝部213Bが形成されている。1群レンズ保持部材212の外周の一部には、外周側に延びる凸部212Aが形成されている。溝部213Bと凸部212Aは光軸方向から見て重ならない位置にあるときに組み付けられ、カバー部材213を回転させることで、溝部213Bに凸部212Aが入り込む。これにより、カバー部材213は、1群レンズ保持部材212と光軸方向において位置決めされる。なお、1群レンズ保持部材212に溝部が設けられ、カバー部材213に凸部が設けられてもよい。
【0032】
1群レンズ保持部材212とカバー部材213との間には、光軸方向と直交する方向(径方向)の所定のガタ(第1の隙間)Yが形成される。所定のガタYはカバー部材213のオーバーラップ量Xよりも小さいため、1群レンズ保持部材212又はカバー部材213が所定のガタYだけ移動した場合でもカバー部材213は境界211Dを覆うことができる。
【0033】
カバー部材213は、1群レンズ保持部材212と光軸方向において位置決めされるため、1群レンズ保持部材212と一体的に光軸方向へ移動可能である。カバー部材213の外径は、前面外装部材204の開口部204Fの内径と篏合している。該嵌合による前面外装部材204とカバー部材213との間に形成された光軸方向と直交する方向のガタ(第2の隙間)は、微小で、所定のガタYよりも小さい。
【0034】
カバー部材213は回転規制キー(突起部)213Cを有し、前面外装部材204は回転規制キー213Cに対応する回転規制溝(溝部)204Eを有する。これにより、前面外装部材204が組み込まれると、回転規制溝204Eに回転規制キー213Cが入り込み、カバー部材213は回転規制される。そのため、カバー部材213が回転して1群レンズ保持部材212から外れることを防止することができる。なお、カバー部材213に回転規制溝が設けられ、前面外装部材204に回転規制キーが設けられてもよい。すなわち、カバー部材213と前面外装部材204の一方が回転規制キーを有し、他方に回転溝が形成されていればよい。
【0035】
光軸方向シール部材214は、防滴防塵のための部材であり、カバー部材213の撮像面側の面(第1面)213Dと1群レンズ保持部材212の面213Dに対向する被写体側の面(第2面)212Bとの間に配置され、面213D,212Bの間を封止する。面213D及び面212Bは全周であることが望ましいが、一部でもよい。光軸方向シール部材214が光軸方向において挟み込まれることによって、カバー部材213と1群レンズ保持部材212は光軸方向へ付勢され、光軸方向のガタを減らすことができる。
【0036】
また、所定のガタYが保たれるように、光軸方向シール部材214は、光軸方向と直交する方向において、カバー部材213及び1群レンズ保持部材212と所定のガタYよりも大きいクリアランス(隙間)が形成された状態で配置される。光軸方向シール部材214は、例えばゴムやスポンジ等の弾性変形できる材質でできており、所定のガタYを吸収することができる。
【0037】
径方向シール部材215は、防滴防塵のための部材であり、カバー部材213と開口部204Fにより光軸方向と直交する方向において挟み込まれた状態で配置される。右眼光学系201R側の径方向シール部材215は左眼光学系201Lの有効光束を遮る位置に配置され、左眼光学系201L側の径方向シール部材215は右眼光学系201Rの有効光束を遮る位置に配置される。
【0038】
以上説明した構成により、外観品位を維持しつつ、防塵防滴性能及び光学性能を両立可能であり、180度を超える画角で立体撮影が可能なレンズ装置200を実現することができる。1群レンズ保持部材212を直接、前面外装部材204の開口部204Fで篏合させないため、1群レンズ保持部材212が製造誤差等の影響で位置ずれしてしまっても、その位置を矯正されることがない。そのため、光学性能や右眼光学系201Rと左眼光学系201Lとの相対誤差は、前面外装部材204を組み込んでも変化することはない。
【0039】
図9は、レンズ装置200の各光軸と撮像素子111上のイメージサークルとの位置関係を示す図である。
【0040】
撮像素子111上には、右眼光学系201Rによって結像する有効画角の右眼イメージサークルICRと、左眼光学系201Lによって結像する有効画角の左眼イメージサークルICLとが並列に像を結ぶ。イメージサークル同士がなるべく重ならないように、イメージサークルの直径ΦD2とイメージサークル同士の離間距離を設定するとよい。例えば、撮像素子111の受光範囲を中央で左右に半分に分けた領域のうち右領域の略中央に右眼イメージサークルICRの中心が位置するように設定し、左領域の略中央に左眼イメージサークルICLの中心が位置するように設定することが好ましい。
【0041】
また、各光学系は、広角の魚眼レンズである。本実施形態では、各光学系は全周魚眼レンズになっており、撮像面に結像される像は180度を超える画角の範囲を写した円像になり、図9に示されるように左右にそれぞれ2つの円像が結像される。右眼光学系201Rの第1光軸OA1Rと左眼光学系201Lの第1光軸OA1Lとの間の距離(基線長)L1が長いほど、鑑賞時の立体感が増す。例えば、撮像素子111のサイズを縦24mm×横36mm、イメージサークルの直径ΦD2を17mm、第3光軸OA3R,OA3Lの間の距離L2を18mm、第2光軸の長さを21mmとする。第2光軸が水平方向へ延びるように各光学系を配置すると、基線長L1は60mmとなり、成人の眼幅とほぼ等しくなる。また、レンズマウント202の直径ΦDを基線長L1よりも短く、かつ第3光軸間の距離L2をレンズマウント202の直径ΦDよりも短くすることで、第3光軸上に配置されるレンズをレンズマウント202の内側に配置することが可能となる。VRとして視聴する場合、立体感を得られる画角は120度程度と言われているが、視野が120度では違和感が残るため、180度まで画角を広げることが多い。本実施形態では有効画角が180度を超えるため、本実施形態のイメージサークルの直径ΦD2は画角が180度の範囲のイメージサークルの直径ΦD3よりも大きい。
【0042】
図10は、右眼光学系201Rで撮像した場合の左眼光学系201Lの映り込みを示す図である。前面外装部材204の壁部204Dは有効画角であるイメージサークルの直径ΦD2よりも内側に撮像されるが、180度の画角には撮像されず、画角が180度の範囲のイメージサークルの直径ΦD3よりも外側に撮像される。したがって、VRとして視聴する場合、180度の画角で視聴する際には影響を与えない。例えば、右眼光学系201Rの有効画角内には、左眼領域20Lの左眼光学系201Lの1群レンズ211L、カバー部材213、及び前面外装部材204の壁部204Dがあり、それらが図10に示されるように実際の有効撮像範囲に映り込んでいる。1群レンズ211Lのみ180度画角のイメージサークル内(直径ΦD3よりも内側)に映り込んでいるが、カバー部材213や壁部204Dは180度画角のイメージサークルの外側にある。また、壁部204Dの映り込みは、1群レンズ211Lの頂点部よりも水平方向で見た場合でも外側(図10で示す左側)に撮像されている。画像処理や画像編集の際に、仕様上必ず映り込んでしまう1群レンズ211Lの直線Zで示す頂点部よりも外側をカットすれば、壁部204Dの映り込みは影響を与えることはない。左眼光学系201Lで撮像した場合の右眼光学系201Rの映り込みに関しても同様である。以上説明したように、壁部204Dは有効画角内ではあるが、実際のVR用途としての撮像に関してはほとんど影響を与えないように配置されている。
【0043】
以下、レンズ装置200に1アクションで着脱可能に装着されるレンズキャップ400の構造について説明する。図11は、レンズ装置200に装着されているレンズキャップ400の外観斜視図である。図12は、不図示のレンズ装置200に装着時のレンズキャップ400の外観斜視図である。図13は、不図示のレンズ装置200に着脱時のレンズキャップ400の外観斜視図である。図14は、レンズキャップ400の分解斜視図である。
【0044】
レンズキャップ400は、ベース401、スライダー(スライダー部材)402A,402B、及びバネ403A,403Bを有する。スライダー402A,402Bは、同形状であり、180度回転した位相で連結し、ベース401に組み込まれている。スライダー402A(402B)は、操作部402A2(402B2)、レンズ装置200と嵌合する結合部402A3(402B3)、及びベース401と当接するストッパ部402A4(402B4)を有する。また、スライダー402A(402B)は、1群レンズ211Rの光軸と1群レンズ211Lの光軸との間に配置される連結部を有する。第1光軸また、スライダー402A(402B)は、ベース401に組み込まれたバネ403A(403B)により、操作部402A2(402B2)の側に付勢されている。スライダー402A(402B)が付勢された状態でベース401とストッパ部402A4(402B4)が当接している。操作部402A2,402B2を結合部402A3,402B3の側に同時に押すことで、結合部402A3,402B3が開閉し、レンズキャップ400はレンズ装置200に対して装着及び着脱が可能となる。なお、一方の操作部を押すだけでも、レンズキャップ400はレンズ装置200に対して装着及び着脱が可能である。
【0045】
以下、レンズキャップ400装着時のレンズキャップ400と1群レンズ211の構成について説明する。図15は、レンズキャップ400装着時のレンズキャップ400と1群レンズ211の断面図である。図16は、レンズキャップ400装着時のスライダー402A,402Bと1群レンズ211の側面図である。図17は、レンズキャップ400装着時のスライダー402A,402Bと1群レンズ211の上面図である。
【0046】
第1光軸OA1上に配置される1群レンズ211R,211L間に、スライダー402A,402Bが配置され、光軸方向と直交する同一平面上に、スライダー402A,402Bと1群レンズ211R,211Lが設けられている。これにより、スライダー402の厚み分だけ、光軸方向の厚みを薄くすることができる。また、操作部402A2,402B2は、1群レンズ211R,211L間の中央部に配置されている。これにより、滑らかな操作性を実現することができる。
【0047】
図18は、変形例のレンズキャップ400装着時のレンズキャップ400と1群レンズ211の断面図である。
【0048】
第1光軸OA1上に配置される1群レンズ211R,211L間に、スライダー402A,402Bが配置され、光軸方向と直交する同一平面上に、スライダー402A,402Bと1群レンズ211R,211Rが設けられていない。これにより、スライダー402A,402Bの厚みが厚くなるため、レンズ装置200の大型化に伴い重量が重くなり、落下試験等によりスライダー402A,402Bの強度が不足した場合でも、強度を向上させることができる。
【0049】
以下、結合部402A3,402B3と嵌合するレンズ装置200に設けられている結合部203A,203B,203C,203Dの配置について説明する。図19乃至図21はそれぞれ、レンズ装置200の外観斜視図、外観側面図、及び外観下面図である。レンズ装置200の画角は、点線Gで示す範囲であり、被写体側に180度を超える。点線Gで示す範囲より被写体側に結合部を含め部品等が設けられていると画像に映り込んでしまう。そのため、結合部203A,203B,203C,203Dは、点線Gで示す画角外に設けられている。なお、本実施形態では、外観方向から見える方向に結合部203A,203B,203C,203Dが設けられているが、外観方向から見えない方向、つまり内側からレンズキャップ400がレンズ装置200と嵌合する場合もある。その場合も、結合部203A,203B,203C,203Dを点線Gで示す画角外に配置することで、画像に映り込むことを防ぐことができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組み合わせ、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
200 レンズ装置
204 前面外装部材(外装部材)
204F 開口部(第2開口部)
211R 1群レンズ(レンズ)
211L 1群レンズ(レンズ)
212 1群レンズ保持部材(保持部材)
213 カバー部材
213A 開口部(第1開口部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21