(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189279
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】直動案内ユニットおよび直動案内ユニットの荷重測定方法
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20221215BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20221215BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C41/00
G01L5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097778
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】菊池 直樹
(72)【発明者】
【氏名】板橋 成政
(72)【発明者】
【氏名】小椋 秀明
【テーマコード(参考)】
2F051
3J104
3J217
【Fターム(参考)】
2F051AB09
2F051BA07
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA72
3J104AA74
3J104AA76
3J104DA13
3J217JA02
3J217JA14
3J217JA24
3J217JA39
3J217JB02
(57)【要約】
【課題】ケーシングに加わる荷重の向きをより正確に判定することが可能な直動案内ユニットを提供する。
【解決手段】直動案内ユニットは、レールと、ケーシングと、複数の転動体と、側面ひずみセンサと、端面ひずみセンサと、一対の方向変換部材とを備える。レールは、幅方向の両側に配置された一対のレール側転走面を含む。ケーシングは、ケーシング本体と、ケーシング本体の幅方向の両側に接続される一対の袖部とを含む。一対の袖部には、レール側転走面との間に一対の転動体転走路を形成するケーシング側転走面が形成されている。ケーシングには、ケーシングを貫通する一対のリターン路が形成されている。一対の方向変換部材には、転動体転走路とリターン路とを繋ぐ方向変換路が形成されている。側面ひずみセンサは、ケーシング側面に配置されている。端面ひずみセンサは、長手方向におけるケーシングの端面であるケーシング端面に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、
前記レールの長手方向に沿って移動可能なケーシングと、
前記レールおよび前記ケーシングの間に前記レールおよび前記ケーシングに接触しつつ転走可能に配置される複数の転動体と、
前記ケーシングに配置された側面ひずみセンサと、
前記ケーシングに配置された端面ひずみセンサと、
前記ケーシングの前記長手方向の両端に配置される一対の方向変換部材と、を備え、
前記レールは、前記長手方向に垂直な幅方向の両側に配置され、前記長手方向に延びる一対のレール側転走面を含み、
前記ケーシングは、
前記幅方向に延びるケーシング本体と、
前記ケーシング本体の前記幅方向の両側に接続される一対の袖部と、を含み、
前記一対の袖部には、前記一対のレール側転走面に対向すると共に前記長手方向に延び、前記レール側転走面との間に一対の転動体転走路を形成するケーシング側転走面が形成されており、
前記ケーシングには、前記一対のレール側転走面のそれぞれに沿って延び、前記ケーシングを貫通する貫通孔である一対のリターン路が形成されており、
前記一対の方向変換部材には、前記転動体転走路と前記リターン路とを繋ぐ方向変換路が形成されており、
前記転動体は、前記転動体転走路、前記リターン路および前記方向変換路によって形成される環状の軌道を循環し、
前記側面ひずみセンサは、前記幅方向において前記袖部の前記レールに対向する側とは反対側の表面であるケーシング側面に配置されており、
前記端面ひずみセンサは、前記長手方向における前記ケーシングの端面であるケーシング端面に配置されている、直動案内ユニット。
【請求項2】
前記ケーシングの前記端面には、前記リターン路の端部である開口が形成されており、
前記ケーシング本体は、
前記レールに対向する面であるレール対向面と、
前記長手方向および前記幅方向に垂直な上下方向において、前記レール対向面とは反対側に位置する上面と、を含み、
前記端面ひずみセンサは、前記端面のうち前記開口よりも前記上面に近い位置に配置される、請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記ケーシングの前記端面には、前記リターン路の端部である開口が形成されており、
前記端面ひずみセンサは、前記幅方向において、前記端面のうち前記レール側転走面よりも前記ケーシング側面に近い位置で且つ前記開口よりも前記レール側転走面に近い位置に配置される、請求項1または2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記ケーシング本体は、
前記レールに対向する面であるレール対向面と、
前記長手方向および前記幅方向に垂直な上下方向において、前記レール対向面とは反対側に位置する上面と、を含み、
前記端面ひずみセンサは、前記側面ひずみセンサよりも前記上面に近い位置に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記端面のうち前記端面ひずみセンサが取り付けられるセンサ取付領域は、前記端面のうち前記センサ取付領域以外の領域よりも表面粗さが大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記端面ひずみセンサの出力を検出する端面ひずみ検出部と、
前記端面ひずみセンサの出力の正負を判定する端面ひずみ判定部と、
前記端面ひずみ判定部の判定結果に基づいて、前記ケーシングに加わる荷重の向きを判定する荷重向き判定部と、をさらに備えた、請求項1~5のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の直動案内ユニットにおいて、前記ケーシングに加わる荷重を測定する方法であって、
前記側面ひずみセンサの出力に基づいて前記ケーシングに加わる荷重の大きさを判定すると共に、前記端面ひずみセンサの出力に基づいて前記ケーシングに加わる荷重の向きを判定する、直動案内ユニットの荷重測定方法。
【請求項8】
前記端面ひずみセンサの出力が正の値であるときに前記ケーシングに引張荷重が加わっていると判定し、
前記端面ひずみセンサの出力が負の値であるときに前記ケーシングに圧縮荷重が加わっていると判定する、請求項7に記載の直動案内ユニットの荷重測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動案内ユニットおよび直動案内ユニットの荷重測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のIоT(Internet Of Things)の進展により、軸受や直動案内ユニット等の機械部品に実際に加わる負荷を監視する技術について、市場での要求が高まっている。この種の技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1には、直動案内ユニットのひずみ検出方法が記載されている。この直動案内ユニットは、軌道レールと、当該軌道レールに沿って摺動するスライダとを含む。スライダは、ケーシングと、当該ケーシングの摺動方向両端に設けられたエンドキャップとを含む。このケーシングは、軌道レールの上面と水平な取付部と、当該取付部の幅方向両端から下方に延びると共に軌道レールを跨いで対向する一対の袖部とからなる。
【0004】
特許文献1では、ケーシングにおける幅方向の側面に、2つのひずみ検出用センサが隣接して配置されている。この公報では、ケーシングの側面に生じるひずみが各センサによって検出され、検出されたひずみ値に基づいてひずみ割合を算出することにより、ケーシングに加わる荷重の向きが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ケーシングの側面におけるひずみ値の測定誤差や部品(ケーシングやセンサ等)の個体差に起因して、ひずみ割合の値に誤差が生じる場合がある。このため、特許文献1では、ケーシングに加わる荷重の向きを正確に判定するのが困難という課題がある。
【0007】
本開示の目的は、ケーシングに加わる荷重の向きをより正確に判定することが可能な直動案内ユニットおよび直動案内ユニットの荷重測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に従った直動案内ユニットは、レールと、レールの長手方向に沿って移動可能なケーシングと、レールおよびケーシングの間にレールおよびケーシングに接触しつつ転走可能に配置される複数の転動体と、ケーシングに配置された側面ひずみセンサと、ケーシングに配置された端面ひずみセンサと、ケーシングの長手方向の両端に配置される一対の方向変換部材と、を備えている。レールは、長手方向に垂直な幅方向の両側に配置され、長手方向に延びる一対のレール側転走面を含む。ケーシングは、幅方向に延びるケーシング本体と、ケーシング本体の幅方向の両側に接続される一対の袖部と、を含む。一対の袖部には、一対のレール側転走面に対向すると共に長手方向に延び、レール側転走面との間に一対の転動体転走路を形成するケーシング側転走面が形成されている。ケーシングには、一対のレール側転走面のそれぞれに沿って延び、ケーシングを貫通する貫通孔である一対のリターン路が形成されている。一対の方向変換部材には、転動体転走路とリターン路とを繋ぐ方向変換路が形成されている。転動体は、転動体転走路、リターン路および方向変換路によって形成される環状の軌道を循環する。側面ひずみセンサは、幅方向において袖部のレールに対向する側とは反対側の表面であるケーシング側面に配置されている。端面ひずみセンサは、長手方向におけるケーシングの端面であるケーシング端面に配置されている。
【0009】
本開示に従った直動案内ユニットの荷重測定方法は、上記直動案内ユニットにおいて、ケーシングに加わる荷重を測定する方法である。この方法では、側面ひずみセンサの出力に基づいてケーシングに加わる荷重の大きさを判定すると共に、端面ひずみセンサの出力に基づいてケーシングに加わる荷重の向きを判定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ケーシングに加わる荷重の向きをより正確に判定することが可能な直動案内ユニットおよび直動案内ユニットの荷重測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る直動案内ユニットの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る直動案内ユニットのケーシング端面を示す正面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る直動案内ユニットのひずみ検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、ケーシングに加わる荷重とケーシング端面のひずみとの関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、ケーシングに加わる荷重とケーシング側面のひずみとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の概要]
本開示に従った直動案内ユニットは、レールと、レールの長手方向に沿って移動可能なケーシングと、レールおよびケーシングの間にレールおよびケーシングに接触しつつ転走可能に配置される複数の転動体と、ケーシングに配置された側面ひずみセンサと、ケーシングに配置された端面ひずみセンサと、ケーシングの長手方向の両端に配置される一対の方向変換部材と、を備えている。レールは、長手方向に垂直な幅方向の両側に配置され、長手方向に延びる一対のレール側転走面を含む。ケーシングは、幅方向に延びるケーシング本体と、ケーシング本体の幅方向の両側に接続される一対の袖部と、を含む。一対の袖部には、一対のレール側転走面に対向すると共に長手方向に延び、レール側転走面との間に一対の転動体転走路を形成するケーシング側転走面が形成されている。ケーシングには、一対のレール側転走面のそれぞれに沿って延び、ケーシングを貫通する貫通孔である一対のリターン路が形成されている。一対の方向変換部材には、転動体転走路とリターン路とを繋ぐ方向変換路が形成されている。転動体は、転動体転走路、リターン路および方向変換路によって形成される環状の軌道を循環する。側面ひずみセンサは、幅方向において袖部のレールに対向する側とは反対側の表面であるケーシング側面に配置されている。端面ひずみセンサは、長手方向におけるケーシングの端面であるケーシング端面に配置されている。
【0013】
直動案内ユニットのケーシングに加わる荷重の向きを正確に判定するための方策について、鋭意検討が行われた。その結果、ケーシング端面においては、ケーシングに対して上下方向の圧縮荷重(下向きの荷重)が加わる場合にひずみ値が負の値になる一方、ケーシングに対して上下方向の引張荷重(上向きの荷重)が加わる場合にひずみ値が正の値になることが見出された。
【0014】
本開示は、上記の観点に基づくものである。すなわち、本開示に従った直動案内ユニットにおいては、ケーシング端面にひずみセンサ(端面ひずみセンサ)が配置されているため、当該端面ひずみセンサの検出値の正負に基づいて、ケーシングに対して上下方向に加わる荷重が圧縮荷重であるか引張荷重であるかを判定することができる。したがって、本開示の直動案内ユニットによれば、ケーシングに加わる荷重の向きをより正確に判定することが可能になる。
【0015】
しかも、本開示に従った直動案内ユニットでは、端面ひずみセンサとは別に、ケーシング側面にもひずみセンサが配置されている(側面ひずみセンサ)。このため、ひずみセンサ同士が隣接するのを回避することができる。したがって、ひずみセンサのサイズの制約が緩和され、小型のケーシングにも複数のひずみセンサを容易に配置することができる。
【0016】
上記直動案内ユニットにおいて、ケーシングの端面には、リターン路の端部である開口が形成されていてもよい。ケーシング本体は、レールに対向する面であるレール対向面と、長手方向および幅方向に垂直な上下方向において、レール対向面とは反対側に位置する上面と、を含んでいてもよい。端面ひずみセンサは、当該端面のうち開口よりも上面に近い位置に配置されていてもよい。この構成によれば、ケーシング端面に生じるひずみをより高感度に検出することができる。
【0017】
上記直動案内ユニットにおいて、ケーシングの端面には、リターン路の端部である開口が形成されていてもよい。端面ひずみセンサは、幅方向において、当該端面のうちレール側転走面よりもケーシング側面に近い位置で且つ開口よりもレール側転走面に近い位置に配置されていてもよい。この構成によれば、ケーシング端面に生じるひずみをさらに高感度に検出することができる。
【0018】
上記直動案内ユニットにおいて、ケーシング本体は、レールに対向する面であるレール対向面と、長手方向および幅方向に垂直な上下方向において、レール対向面とは反対側に位置する上面と、を含んでいてもよい。端面ひずみセンサは、側面ひずみセンサよりも当該上面に近い位置に配置されていてもよい。この構成によれば、ケーシング端面に生じるひずみを一層高感度に検出することができる。
【0019】
上記直動案内ユニットにおいて、ケーシングの端面のうち端面ひずみセンサが取り付けられるセンサ取付領域は、当該端面のうちセンサ取付領域以外の領域よりも表面粗さが大きくなっていてもよい。この構成によれば、端面ひずみセンサをケーシング端面に容易に取り付けることができる。
【0020】
上記直動案内ユニットは、端面ひずみセンサの出力を検出する端面ひずみ検出部と、端面ひずみセンサの出力の正負を判定する端面ひずみ判定部と、端面ひずみ判定部の判定結果に基づいて、ケーシングに加わる荷重の向きを判定する荷重向き判定部と、をさらに備えていてもよい。この構成によれば、ケーシングに加わる荷重の向きを自動で正確に判定することができる。なお、端面ひずみ検出部、端面ひずみ判定部および荷重向き判定部は、一部または全部が一体として構成されていてもよい。
【0021】
本開示に従った直動案内ユニットの荷重測定方法は、上記直動案内ユニットにおいて、ケーシングに加わる荷重を測定する方法である。この方法では、側面ひずみセンサの出力に基づいてケーシングに加わる荷重の大きさを判定すると共に、端面ひずみセンサの出力に基づいてケーシングに加わる荷重の向きを判定する。この方法によれば、ケーシング端面のひずみ値に基づいて、ケーシングに加わる荷重の向きをより正確に判定することができる。
【0022】
上記直動案内ユニットの荷重測定方法において、端面ひずみセンサの出力が正の値であるときにケーシングに引張荷重が加わっていると判定してもよい。端面ひずみセンサの出力が負の値であるときにケーシングに圧縮荷重が加わっていると判定してもよい。この方法によれば、ケーシングに加わる荷重の向きを簡単且つ正確に判定することができる。
【0023】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の直動案内ユニットおよび直動案内ユニットの荷重測定方法の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0024】
まず、本実施の形態に係る直動案内ユニット1の構成を、
図1~
図3に基づいて説明する。
図1は、直動案内ユニット1の全体構成を示す斜視図である。
図2は、ケーシング21から第1エンドキャップ22が取り外された状態において、直動案内ユニット1をレール10の長手方向D1から見た正面図である。
図3は、直動案内ユニット1のひずみ検出装置70の構成を示すブロック図である。
【0025】
図1を参照して、直動案内ユニット1は、レール10と、スライダ20とを主に備えている。レール10は、長手方向D1において直線状に延びている。スライダ20は、レール10を幅方向D2(長手方向D1に垂直な方向)の両側から挟むように当該レール10に取り付けられており、長手方向D1に沿って移動可能になっている。スライダ20は、ケーシング21と、第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23(一対の方向変換部材)とを含む。
図1に示すように、第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23は、ケーシング21の長手方向D1の両端に配置されている。
【0026】
図2を参照して、レール10は、レール上面15と、上下方向D3(長手方向D1および幅方向D2に垂直な方向)においてレール上面15と反対側のレール下面16と、幅方向D2の両側に配置された一対のレール側転走面(第1レール側転走面11および第2レール側転走面12)とを含む。レール上面15、レール下面16、第1レール側転走面11および第2レール側転走面12は、長手方向D1(
図2の紙面奥行方向)に延びている。第1レール側転走面11および第2レール側転走面12は、上下方向D3に並んで2つずつ形成されている。
【0027】
ケーシング21は、ケーシング本体24と、一対の袖部(第1袖部25および第2袖部26)とを含む。
図2に示すように、ケーシング本体24は、長手方向D1から見て、幅方向D2に延びている。ケーシング本体24は、幅方向D2においてレール10よりも外側に位置する第1端部24Aと、幅方向D2においてレール10よりも外側に位置すると共に第1端部24Aと反対側に位置する第2端部24Bとを含む。一対の袖部は、ケーシング本体24の幅方向D2の両側に接続されている。第1袖部25は、ケーシング本体24の第1端部24Aからレール下面16に向かって上下方向D3に延びている。第2袖部26は、ケーシング本体24の第2端部24Bからレール下面16に向かって上下方向D3に延びている。
【0028】
ケーシング本体24は、レール上面15に対向する面であるレール対向面36と、上下方向D3においてレール対向面36とは反対側に位置するケーシング上面35(上面)とを含む。一対の袖部には、一対のレール側転走面に対向する一対のケーシング側転走面(第1ケーシング側転走面31および第2ケーシング側転走面32)が形成されている。第1ケーシング側転走面31は、第1レール側転走面11に平行であり、長手方向D1に延びている。第2ケーシング側転走面32は、第2レール側転走面12に平行であり、長手方向D1に延びている。
図2に示すように、第1ケーシング側転走面31および第2ケーシング側転走面32は、上下方向D3に並んで2つずつ形成されている。
【0029】
ケーシング21は、長手方向D1におけるケーシング21の端面であるケーシング端面37を含む。このケーシング端面37に、第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23(
図1)がそれぞれ配置されている。第1袖部25は、幅方向D2においてレール10に対向する側とは反対側の表面である第1ケーシング側面38を含む。第2袖部26は、幅方向D2においてレール10に対向する側とは反対側の表面である第2ケーシング側面39を含む。
【0030】
図2を参照して、直動案内ユニット1は、レール10およびケーシング21の間にレール10およびケーシング21に接触しつつ転走可能に配置される複数の転動体(第1転動体41および第2転動体42)を備えている。第1ケーシング側転走面31は、第1レール側転走面11との間に第1転動体転送路(一対の転動体転送路のうち一方)を形成しており、当該第1転動体転送路に第1転動体41が配置されている。第1転動体41は、第1レール側転走面11および第1ケーシング側転走面31に接触している。また第2ケーシング側転走面32は、第2レール側転走面12との間に第2転動体転送路(一対の転動体転送路のうち他方)を形成しており、当該第2転動体転送路に第2転動体42が配置されている。第2転動体42は、第2レール側転走面12および第2ケーシング側転走面32に接触している。第1転動体41および第2転動体42は、例えば円筒ころであるが、これに限定されない。
【0031】
ケーシング21には、一対のレール側転走面のそれぞれに沿って延び、ケーシング21を長手方向D1に貫通する貫通孔である一対のリターン路(第1リターン路51および第2リターン路52)が形成されている。
図2に示すように、第1リターン路51は、長手方向D1から見て円形の貫通孔であり、一方のケーシング端面37から他方のケーシング端面37まで至るように第1袖部25を長手方向D1に貫通している。第1リターン路51は、第1袖部25において上下方向D3に並んで2つ形成されている。第2リターン路52は、第1リターン路51と同様に、長手方向D1から見て円形の貫通孔である。第2リターン路52は、一方のケーシング端面37から他方のケーシング端面37まで至るように、第2袖部26を長手方向D1に貫通している。第2リターン路52は、第2袖部26において上下方向D3に並んで2つ形成されている。第1袖部25の長手方向D1の端面には、第1リターン路51の長手方向D1の端部である開口が形成されており、第2袖部26の長手方向D1の端面には、第2リターン路52の長手方向D1の端部である開口が形成されている。
【0032】
第1エンドキャップ22には、第1転動体転走路(第1レール側転走面11と第1ケーシング側転走面31との間の空間)と第1リターン路51とを繋ぐ第1方向変換路が形成されている。より具体的には、2つの第1転動体転走路のうちケーシング上面35に近い第1転動体転走路と、2つの第1リターン路51のうちケーシング上面35から遠い第1リターン路51とが、第1方向変換路により繋がっている。また2つの第1転動体転走路のうちケーシング上面35から遠い第1転動体転走路と、2つの第1リターン路51のうちケーシング上面35に近い第1リターン路51とが、第1方向変換路により繋がっている。なお、第2エンドキャップ23においても、第1エンドキャップ22と同様に第1方向変換路が形成されている。スライダ20(
図1)がレール10の長手方向D1に沿って直線移動すると、第1転動体41(
図2)は、第1転動体転走路、第1リターン路51および第1方向変換路によって形成される環状の軌道を循環する。
【0033】
なお、図示は省略するが、第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23には、第2転動体転走路と第2リターン路52(
図2)とを繋ぐ第2方向変換路が、第1方向変換路と同様に形成されている。このため、スライダ20の直線移動に伴い、第2転動体42(
図2)は、第2転動体転走路、第2リターン路52および第2方向変換路によって形成される環状の軌道を循環する。
【0034】
直動案内ユニット1は、ケーシング21に配置された側面ひずみセンサ61および端面ひずみセンサ62を備えている。
図1に示すように、本実施の形態では、第1ケーシング側面38において、2つの側面ひずみセンサ61が長手方向D1に並んで配置されている。また第2ケーシング側面39(
図2)においても、2つの側面ひずみセンサ61が長手方向D1に並んで配置されている。側面ひずみセンサ61は、第1ケーシング側面38および第2ケーシング側面39に生じる上下方向D3のひずみを検出する。側面ひずみセンサ61は、ひずみゲージであり、例えば接着剤によって第1ケーシング側面38および第2ケーシング側面39にそれぞれ貼り付けられている。
【0035】
図2を参照して、端面ひずみセンサ62は、ケーシング端面37において幅方向D2に並んで2つ配置されている。より具体的には、端面ひずみセンサ62は、上下方向D3において、ケーシング端面37のうち第1リターン路51および第2リターン路52の開口よりもケーシング上面35に近い位置に配置されている。すなわち、端面ひずみセンサ62は、
図2中の破線L1よりもケーシング上面35側に位置している。また
図2に示すように、端面ひずみセンサ62は、側面ひずみセンサ61よりもケーシング上面35に近い位置に配置されている。端面ひずみセンサ62は、ケーシング端面37に生じる上下方向D3のひずみを検出する。端面ひずみセンサ62は、ひずみゲージであり、例えば接着剤によってケーシング端面37に貼り付けられている。なお、
図2では一方のケーシング端面37に配置される端面ひずみセンサ62を示しているが、他方のケーシング端面37にも2つの端面ひずみセンサ62が同様に配置されている。
【0036】
一方の端面ひずみセンサ62(
図2中の右側の端面ひずみセンサ62)は、幅方向D2において、ケーシング端面37のうち第1レール側転走面11よりも第1ケーシング側面38に近い位置で且つ第1リターン路51の開口よりも第1レール側転走面11に近い位置に配置されている。すなわち、当該一方の端面ひずみセンサ62は、
図2中の破線L2よりも第1ケーシング側面38側で且つ破線L3よりも第1レール側転走面11側に位置している。同様に、他方の端面ひずみセンサ62(
図2中の左側の端面ひずみセンサ62)は、幅方向D2において、ケーシング端面37のうち第2レール側転走面12よりも第2ケーシング側面39に近い位置で且つ第2リターン路52の開口よりも第2レール側転走面12に近い位置に配置されている。すなわち、当該他方の端面ひずみセンサ62は、
図2中の破線L4よりも第2ケーシング側面39側で且つ破線L5よりも第2レール側転走面12側に位置している。
【0037】
本実施の形態では、ケーシング端面37のうち端面ひずみセンサ62が取り付けられるセンサ取付領域は、ケーシング端面37のうち当該センサ取付領域以外の領域よりも表面粗さが大きくなっている。しかし、本開示の直動案内ユニットはこれに限定されず、ケーシング端面37の表面粗さが均一であってもよい。
【0038】
図3を参照して、直動案内ユニット1は、ひずみ検出装置70をさらに備えている。
図3に示すように、ひずみ検出装置70は、端面ひずみ検出部71と、側面ひずみ検出部72と、端面ひずみ判定部73と、荷重推定部74と、荷重向き判定部75とを含む。
【0039】
端面ひずみ検出部71は、端面ひずみセンサ62の出力を検出する。側面ひずみ検出部72は、側面ひずみセンサ61の出力を検出する。端面ひずみ検出部71および側面ひずみ検出部72は、端面ひずみセンサ62および側面ひずみセンサ61からデータを受け付ける受信ユニットを構成している。端面ひずみ判定部73は、端面ひずみセンサ62の出力の正負を判定する。荷重推定部74は、側面ひずみセンサ61の出力に基づいて、ケーシング21に加わる荷重の大きさを推定する。荷重向き判定部75は、端面ひずみ判定部73の判定結果に基づいて、ケーシング21に加わる荷重の向きを判定する。端面ひずみ判定部73、荷重推定部74および荷重向き判定部75は、演算部を構成している。荷重推定部74および荷重向き判定部75は、例えばディスプレイ等の表示部80と通信可能に接続されており、荷重の推定値および荷重の向きが表示部80に表示される。以下、ひずみ検出装置70を用いて実施されるケーシング21の荷重測定について説明する。
【0040】
本実施の形態に係る直動案内ユニットの荷重測定方法について説明する。この方法では、以下のようにして、上記直動案内ユニット1においてケーシング21に加わる荷重を測定する。
【0041】
まず、側面ひずみセンサ61が第1ケーシング側面38および第2ケーシング側面39に生じる上下方向D3のひずみを検出すると共に、端面ひずみセンサ62がケーシング端面37に生じる上下方向D3のひずみを検出する。これらの検出データは、側面ひずみ検出部72および端面ひずみ検出部71にそれぞれ送信される。
【0042】
次に、ひずみ検出装置70が、側面ひずみセンサ61の出力に基づいてケーシング21に加わる荷重の大きさを判定すると共に、端面ひずみセンサ62の出力に基づいてケーシング21に加わる荷重の向きを判定する。まず、ケーシング21に加わる荷重の向きの判定について説明する。
【0043】
図4は、ケーシング21に加わる荷重の大きさ(横軸)とケーシング端面37のひずみ(縦軸)との関係を示している。
図4中、(1)はケーシング21に上下方向D3の引張荷重(上向きの荷重)が加わったときのデータであり、(2)はケーシング21に上下方向D3の圧縮荷重(下向きの荷重)が加わったときのデータである。
図4に示すように、本発明者らは、ケーシング21に引張荷重が加わったときにケーシング端面37に生じるひずみが正の値となり、一方でケーシング21に圧縮荷重が加わったときにケーシング端面37に生じるひずみが負の値となることを見出した。
【0044】
端面ひずみ判定部73は、端面ひずみ検出部71が検出したケーシング端面37のひずみの正負を判定する。この判定結果に基づいて、荷重向き判定部75がケーシング21に加わる荷重の向きを判定する。すなわち、荷重向き判定部75は、端面ひずみセンサ62の出力が正の値であるときにケーシング21に引張荷重が加わっていると判定し、端面ひずみセンサ62の出力が負の値であるときにケーシング21に圧縮荷重が加わっていると判定する。
【0045】
次に、ケーシング21に加わる荷重の大きさの判定について説明する。
図5は、ケーシング21に加わる荷重の大きさ(横軸)とケーシング側面のひずみ(縦軸)との関係を示している。
図5中、(1)はケーシング21に上下方向D3の引張荷重(上向きの荷重)が加わったときのデータであり、(2)はケーシング21に上下方向D3の圧縮荷重(下向きの荷重)が加わったときのデータを示している。この相関データは、予め取得され、記憶部(メモリ)に格納されている。
【0046】
荷重推定部74は、側面ひずみ検出部72が検出したひずみと
図5の相関データとに基づいて、ケーシング21に加わる荷重の大きさ(
図5の横軸値)を算出する。ケーシング21に加わる荷重の向きは、上記の方法により判定されている。ケーシング21に引張荷重が加わる場合には
図5中の(1)の相関データが用いられ、一方でケーシング21に圧縮荷重が加わる場合には
図5中の(2)の相関データが用いられる。すなわち、
図5中の(1)または(2)の相関データにおいてケーシング側面のひずみを縦軸値とすることにより、ケーシング21に加わる荷重の推定値が横軸値として得られる。
【0047】
次に、ケーシング21における内部荷重の算出方法について説明する。まず、
図5のグラフの直線(1)の傾きと直線(2)の傾きとの間の傾きを有する直線(ケーシング21に幅方向D2の横荷重が加わるときの荷重と側面ひずみとの関係を示す直線)において、側面ひずみセンサ61の検出値を縦軸値として代入する。これにより、ケーシング21に加わる荷重の推定値が得られる。
【0048】
次に、
図4に示すように、ケーシング21に加わる荷重の推定値Aに基づいて、引張荷重の場合(直線(1)の場合)の端面ひずみの理論値B1および圧縮荷重の場合(直線(2)の場合)の端面ひずみの理論値B2が算出される。引張荷重の場合には、上下一対の第1および第2ケーシング側転走面31,32(
図2)における負荷割合は、上側が100%で且つ下側が0%となる。一方、圧縮荷重の場合には、当該負荷割合は、上側が0%で且つ下側が100%となる。
【0049】
引張荷重の場合と圧縮荷重の場合とにおいて、端面ひずみの理論値の差は、B1-B2となる。ここで、100/(B1-B2)により、端面ひずみの変化に対する上記負荷割合の変化率が算出される。この変化率を用いて、上下一対の第1および第2ケーシング側転走面31,32(
図2)における実際の荷重の負荷割合を、以下のように算出することができる。すなわち、端面ひずみセンサ62により検出される端面ひずみの実測値と圧縮荷重の場合の端面ひずみの理論値B2との差分を求め、当該差分に上記の変化率を乗じる。これにより、完全な圧縮荷重(上側の負荷割合が0%で且つ下側の負荷割合が100%)の場合からの負荷割合のずれ量が算出される。なお、上下一対の第1および第2ケーシング側転走面31,32(
図2)の負荷割合が50%ずつである場合は、ケーシング21に対して幅方向D2の横荷重が加わる場合である。
【0050】
次に、ケーシング21の全体における荷重の推定について説明する。
図1に示すように、ケーシング21は、長手方向D1および幅方向D2の中心C1を原点として、4つの領域に分割することができる(第1~第4領域R1~R4)。本実施の形態では、第1~第4領域R1~R4のそれぞれにおいて、側面ひずみセンサ61および端面ひずみセンサ62のセットが1組ずつ配置されている。
【0051】
第1領域R1において、上下一対のケーシング側転走面に加わる力Fは、荷重の推定値に上記の負荷割合を乗じることにより算出される。この力Fのベクトルと、中心C1からケーシング側転走面に向かうベクトルとの外積により、中心C1を原点とする力FによるモーメントMが算出される。このモーメントMを、第2~第4領域R2~R4においても上下一対のケーシング側転走面について同様に算出し、これらを合算することにより、ケーシング21に加わる全体の荷重を推定することができる。
【0052】
以上の通り、本実施の形態に係る直動案内ユニット1によれば、ケーシング端面37に端面ひずみセンサ62が配置されているため、当該端面ひずみセンサ62の検出値の正負に基づいて、ケーシング21に加わる荷重が圧縮荷重であるか引張荷重であるかを判定することができる。したがって、ケーシング21に加わる荷重の向きを簡単且つ正確に判定することができる。
【0053】
ここで、その他実施の形態について説明する。
【0054】
ケーシング端面37における端面ひずみセンサ62の位置は、
図2に示す位置に限定されない。例えば、端面ひずみセンサ62は、
図2中の破線L1よりもレール下面16の近くに位置していてもよいし、
図2中の破線L3,L5よりもケーシング側面の近くに位置していてもよいし、
図2中の破線L2と破線L4との間に位置していてもよい。また側面ひずみセンサ61が端面ひずみセンサ62よりもケーシング上面35の近くに位置していてもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 直動案内ユニット、10 レール、11 第1レール側転走面、12 第2レール側転走面、15 レール上面、16 レール下面、20 スライダ、21 ケーシング、22 第1エンドキャップ、23 第2エンドキャップ、24 ケーシング本体、24A 第1端部、24B 第2端部、25 第1袖部、26 第2袖部、31 第1ケーシング側転走面、32 第2ケーシング側転走面、35 ケーシング上面(上面)、36 レール対向面、37 ケーシング端面、38 第1ケーシング側面、39 第2ケーシング側面、41 第1転動体、42 第2転動体、51 第1リターン路、52 第2リターン路、61 側面ひずみセンサ、62 端面ひずみセンサ、70 ひずみ検出装置、71 端面ひずみ検出部、72 側面ひずみ検出部、73 端面ひずみ判定部、74 荷重推定部、75 荷重向き判定部、80 表示部、D1 長手方向、D2 幅方向、D3 上下方向