(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189281
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】制御支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/192 20120101AFI20221215BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60W30/192
F02D29/02 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097780
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 健太
【テーマコード(参考)】
3D241
3G093
【Fターム(参考)】
3D241BA44
3D241CC02
3D241CE05
3D241DC31Z
3D241DC34Z
3D241DC39Z
3G093AA01
3G093BA14
3G093BA19
(57)【要約】
【課題】アイドリングストップの要否を適切に判断することができる技術を提供する。
【解決手段】制御支援装置は、機械学習による学習済みモデルを用いて車両のエンジンの制御を支援する制御支援装置であって、前記エンジンのアイドリングストップが実行されると推定される所定の状況を検知する検知部と、前記所定の状況を検知した場合に、前記アイドリングストップを行うべき要因となる接近物の有無を、前記車両に搭載されるカメラにより得られる撮影データが入力される前記学習済みモデルを用いて判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習による学習済みモデルを用いて車両のエンジンの制御を支援する制御支援装置であって、
前記エンジンのアイドリングストップが実行されると推定される所定の状況を検知する検知部と、
前記所定の状況を検知した場合に、前記アイドリングストップを行うべき要因となる接近物の有無を、前記車両に搭載されるカメラにより得られる撮影データが入力される前記学習済みモデルを用いて判定する判定部と、
を備える、制御支援装置。
【請求項2】
前記接近物は、前記車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所に接近する移動体である、請求項1に記載の制御支援装置。
【請求項3】
前記接近物の有無の判定に、前記移動体の接近速度が加味される、請求項2に記載の制御支援装置。
【請求項4】
前記接近物の有無の判定に、前記場所と前記移動体との距離が加味される、請求項2又は3に記載の制御支援装置。
【請求項5】
前記撮影データは、少なくとも1つの前記カメラで撮影される動画データである、請求項1から4のいずれか1項に記載の制御支援装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記カメラ、又は、前記カメラとは別に前記車両に搭載される他のカメラで撮影される撮影画像に基づき前記所定の状況を検知する、請求項1から5のいずれか1項に記載の制御支援装置。
【請求項7】
前記所定の状況は、前記車両の運転者が一時的な停車を行うと推定される状況である、請求項1から6のいずれか1項に記載の制御支援装置。
【請求項8】
前記判定部による判定結果に基づく通知を前記エンジンの制御装置に対して行う通知部を更に備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の制御支援装置。
【請求項9】
前記接近物が無いと判定された場合、前記通知により前記アイドリングストップが実行されない、請求項8に記載の制御支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンの制御を支援する制御支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中に赤信号等により車両が停車した場合に、自動で車両のエンジンを一時的に停止させるアイドリングストップ機能が知られる。アイドリングストップ機能の利用により、燃料の節約等を図ることができる。
【0003】
特許文献1には、アイドリングストップに関わる制御を行うエンジンの自動制御装置において、相対的な短時間の一時停止が必要な状況が存在する場合には、アイドリングストップを行わないと判断する技術が開示される。相対的な短時間の一時停止が必要な状況として、例えば一時停止を示す道路標識を検知した場合等、道路交通法上の観点から一時停止が義務付けられている地点を検知した状況が挙げられている。また、相対的な短時間の一時停止が必要な状況として、例えば車両の走行する道路前方を歩行者などが横断している場合等、状況に応じては一時停止が義務付けられた、或いはそのような振舞いが望まれる地点を検知した状況が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
道路標識による一時停止等、信号待ちの停止時等に比べて相対的に車両の停止時間が短くなる場合、アイドリングストップ機能を用いたエンジンの停止により、逆に燃費性能が悪化する場合がある。このために、車両が短時間しか停車しない状況では、アイドリングストップを行わないことが好ましい。
【0006】
一方で、例えば、道路標識に応じて一時停止する状況の場合でも、車両の進行方向を横断する歩行者や他の車両が存在する場合等には、車両の停車時間が長くなり、アイドリングストップ機能を用いたエンジンの停止を行った方が好ましい場合もある。すなわち、例えば、道路標識に応じて一時停止を行う状況のような場合でも、車両の停車時間は、周囲の状況によって変わり、道路標識に応じた一時停止であるとの理由のみで、アイドリングストップを行わないと判断することが望ましくない場合があると考えられる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、アイドリングストップの要否を適切に判断することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な本発明の制御支援装置は、機械学習による学習済みモデルを用いて車両のエンジンの制御を支援する制御支援装置であって、前記エンジンのアイドリングストップが実行されると推定される所定の状況を検知する検知部と、前記所定の状況を検知した場合に、前記アイドリングストップを行うべき要因となる接近物の有無を、前記車両に搭載されるカメラにより得られる撮影データが入力される前記学習済みモデルを用いて判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
例示的な本発明によれば、アイドリングストップの要否を適切に判断することができる。この結果、車両の燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】制御支援装置により行われる、エンジンの制御に関わる制御支援処理の流れを示すフローチャート
【
図4A】アイドリングストップに関わる第1の制御支援処理例を説明するための図
【
図4B】アイドリングストップに関わる第1の制御支援処理例を説明するための図
【
図5】アイドリングストップに関わる第2の制御支援処理例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、車両の直進進行方向であって、運転席からハンドルに向かう方向を「前方向」とする。また、車両の直進進行方向であって、ハンドルから運転席に向かう方向を「後方向」とする。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転者の右側から左側に向かう方向を「左方向」とする。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転者の左側から右側に向かう方向を「右方向」とする。
【0012】
<1.制御支援システム>
図1は、本発明の実施形態に係る制御支援システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態の制御支援システム100は、車両(不図示)のエンジンの制御を支援するシステムである。詳細には、制御支援システム100は、車両のエンジンのアイドリングストップに関わる制御を支援するシステムである。なお、本実施形態では、車両は、好ましい形態として自動車である。
【0013】
図1に示すように、制御支援システム100は、制御支援装置1と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)2とを備える。制御支援装置1と、ECU2とは、通信バス3を介して通信可能に接続される。なお、制御支援装置1とECU2とは、有線に限らず、無線で通信を行ってもよい。本実施形態では、制御支援装置1とECU2とは、同一の車両に搭載される。通信バス3は、例えばCAN(Controller Area Network)バスである。すなわち、制御支援装置1は、ECU2とCAN通信可能に設けられる。
【0014】
ECU2は、車両のエンジンを制御する。ECU2により行われる制御には、エンジンのアイドリングストップに関わる制御が含まれる。ECU2と通信可能に設けられる制御支援装置1は、車両のエンジンの制御を支援する。詳細には、制御支援装置1は、車両のエンジンのアイドリングストップに関わる制御を支援する。
【0015】
なお、制御支援装置1は、車両のエンジンの支援を行う専用装置であってよい。ただし、制御支援装置1は、車両のエンジンの支援を行う専用装置ではなく、他の機能も備える多機能の装置として構成されてもよい。制御支援装置1は、例えば、ナビゲーション装置、ディスプレイオーディオ、ドライブレコーダ等の車載機器として構成されてもよい。また、制御支援装置1は、車両に持ち込んだり、車両から持ち去ったりすることができる可搬型の装置として構成されてもよい。また、場合によって、制御支援装置1は、ECU2に含まれる装置であってもよい。
【0016】
制御支援システム100は、カメラ4をさらに備える。カメラ4は、制御支援装置1と通信可能に設けられる。制御支援装置1とカメラ4とは、有線又は無線により通信可能に設けられる。本実施形態では、カメラ4は、車両の前方を撮影する前方カメラである。カメラ4は、例えば魚眼レンズを用いて構成され、水平方向の画角は180度以上とされてよい。本実施形態では、カメラ4は、制御支援装置1が搭載される車両と同じ車両に搭載される車載カメラである。
【0017】
なお、カメラ4の数は、1つに限らず、複数であってもよい。また、カメラ4は、前方カメラに限らず、例えば、車両の側方を撮影するサイドカメラであってもよい。例えば、制御支援システムは、前方カメラに替えて、或いは、前方カメラに加えて、車両の左右を撮影する左サイドカメラおよび右サイドカメラを備える構成であってもよい。また、カメラ4は、車載カメラに限らず、車両に持ち込んだり、車両から取り外したりできる可搬型のカメラであってもよい。
【0018】
<2.制御支援装置>
図2は、本発明の実施形態に係る制御支援装置1の構成を示すブロック図である。なお、
図2においては、実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載は省略されている。
図2に示すように、制御支援装置1は、制御部11と記憶部12とを備える。
【0019】
制御部11は、制御支援装置1の全体を統括的に制御するコントローラであり、例えばプロセッサにて構成される。制御部11は、例えば、演算用の集積回路、RAM(Random Access Memory)、および、ROM(Read Only Memory)等を含んで構成される。演算用の集積回路は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、APU(Accelerated Processing Unit)等であってよい。
【0020】
記憶部12は、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータ等を非一時的に格納または記憶する。記憶部12は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、および、光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体である。記憶部12は、各種のプログラムや各種のデータを記憶する。
【0021】
本実施形態では、記憶部12は学習済みモデル121を格納する。学習済みモデル121は、機械学習を行う学習装置(不図示)を用いて予め生成され、記憶部12に予め格納されている。学習済みモデル121は、例えば、ニューラルネットワークやサポートベクターマシン等のアルゴリズムにより提供される。詳細は以下に説明するように、制御支援装置1は、機械学習による学習済みモデルを用いて車両のエンジンの制御を支援する。
【0022】
制御部11は、取得部111、検知部112、判定部113、および、通知部114を含む。取得部111、検知部112、判定部113、および、通知部114は、制御部11の演算用の集積回路がコンピュータプログラムに従って演算処理を実行することにより実現される制御部11の機能である。換言すると、制御支援装置1は、検知部112と判定部113とを備える。制御支援装置1は通知部114をさらに備える。制御支援装置1は取得部111をさらに備える。
【0023】
なお、制御部11が備える取得部111、検知部112、判定部113、および、通知部114のうち少なくともいずれか1つは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。また、取得部111、検知部112、判定部113、および、通知部114は、概念的な構成要素である。1つの構成要素が実行する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてよい。
【0024】
取得部111は、カメラ4の撮影データを取得する。詳細には、取得部111は、カメラ4から所定の周期(例えば1/30秒周期)で撮影画像を時間的に連続して取得する。時間的に連続した撮影画像が、動画(映像)を構成する。すなわち、取得部111は、カメラ4で撮影された静止画および動画を取得可能である。その他、取得部111は、撮影データを用いて行われる各種の処理の前準備として必要となる処理を適宜行う。
【0025】
検知部112は、エンジンのアイドリングストップが実行されると推定される所定の状況を検知する。なお、ここで言うエンジンは、制御支援装置1が搭載されている車両のエンジンである。アイドリングストップは、車両が停止した場合に、所定の停止条件下でエンジンを自動停止するものである。自動停止されたエンジンは、所定の始動条件下で再始動される。
【0026】
本実施形態において、アイドリングストップを行うと推定される所定の状況は、アイドリングストップが行われる所定の停止条件を満たす場合がいつでも該当するわけではなく、特定の条件を満たす場合が該当する。所定の状況は、車両の運転者が安全を確認するために一時的な停車を行うと推定される状況である。所定の状況は、車両が相対的に短時間の一時停止を行うと推定される状況である。このような構成とすれば、例えば信号待ち等の相対的に長い時間の停車が予想される場合には、アイドリングストップの要否を判定する処理を省略することができる。すなわち、車両が相対的に短時間の停車を行うと予想される場合に絞ってアイドリングストップの要否を判定する構成とすることができ、装置の処理負担を低減することができる。
【0027】
所定の状況には、例えば、道路標識にしたがって一時停止する状況が含まれてよい。道路標識には、道路の傍らや、道路の上に配置される標識板および路面標示が含まれる。一時停止を要求する道路標識には、赤色点滅信号が含まれてもよい。また、所定の状況には、例えば、踏切の手前で一時停止する状況が含まれてよい。なお、所定の状況には、踏切の遮断機が降りている場合は含まれないことが好ましい。また、所定の状況には、例えば、車両が特定の場所に入るために右左折を行う状況が含まれてよい。特定の場所は、例えば、コンビニエンスストアや商業施設等の駐車場であってよい。
【0028】
本実施形態では、検知部112は、カメラ4で撮影される撮影画像に基づき所定の状況を検知する。撮影画像には、静止画のみならず、動画が含まれてもよい。このような構成とすれば、画像処理技術を利用して所定の状況を適切に検知することができる。例えば、検知部112は、取得部111から受け取った撮影画像に映る特定対象の画像を認識した場合に、所定の状況を検知する。特定対象は、例えば、一時停止の道路標識、踏切、コンビニエンスストア等の建物である。検知部112は、好ましい形態として、撮影画像中の文字の識別を行うことができる。画像認識には、例えば、ディープラーニング等の機械学習を行って生成された学習済みモデルが利用されたり、パターンマッチングが利用されたりしてよい。
【0029】
なお、検知部112は、カメラ4で撮影される撮影画像にのみ基づいて所定の状況を検知する構成であってもよいが、他の構成でもよい。すなわち、検知部112は、カメラ4から得られる情報以外の情報により所定の状況を検知する構成であってもよい。カメラ4から得られる情報以外の情報は、例えば、車両の速度等の車両の走行情報等であってよい。また、検知部112は、カメラ4から得られる情報と、それ以外の情報とを組み合わせて所定の状況を検知する構成であってもよい。
【0030】
判定部113は、所定の状況を検知した場合に、アイドリングストップを行うべき要因となる接近物の有無を、車両に搭載されるカメラ4により得られる撮影データが入力される学習済みモデル121を用いて判定する。
【0031】
所定の状況は、上述のように、車両が相対的に短時間の一時停止を行うと推定される状況である。このために、所定の状況においては、原則としてアイドリングストップを行わないことが好ましいと考えられる。これは、短時間のアイドリングストップを抑止して、車両の燃費を向上させることができるためである。ただし、所定の状況下においても、接近物が接近している状況では、直ぐに車両を発進させることができず、車両の停車時間が相対的に長くなることがあり得る。このような場合には、アイドリングストップを行った方が、車両の燃費の向上につながると考えられる。本実施形態の構成によれば、所定の状況を検知した場合に接近物の有無を判定するために、アイドリングストップの要否を適切に判断することができ、車両の燃費の向上を図ることができる。また、本実施形態の構成によれば、一時停止を求める目印がない場所でもアイドリングストップの要否を適切に判断することができる。
【0032】
詳細には、アイドリングストップを行うべき要因となる接近物は、車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所に接近する移動体である。すなわち、本実施形態の構成によれば、近い将来において車両の進行方向を通過する移動体が存在するか否かを判定することができ、アイドリングストップの要否を適切に判断することができる。本実施形態では、交差点や踏切といった特定の場所以外でのアイドリングストップの要否についても適切に判断することができる。
【0033】
例えば、車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所は、所定の状況が道路標識にしたがって一時停止する状況であれば、車両が一時停止を行った後に通過する交差点である。また、例えば、車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所は、所定の状況がコンビニエンスストアの駐車場に入るために車両が右折を行う状況であれば、コンビニエンスストアの駐車場の手前にある対向車線や歩道である。車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所に接近する移動体(接近物)は、例えば、歩行者、自転車、自動二輪車、自動車、列車、ボール等である。
【0034】
学習済みモデル121は、例えば、特定の場所に移動体が接近する状況の複数の撮影データを教師データとして、機械学習させた学習済みモデルである。特定の場所は、例えば、交差点や、コンビニエンスストアの駐車場前の道路等である。学習済みモデル121は、車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所を含む或る範囲の場所が映る撮影データが入力されることにより、接近物の有無を判定する。
【0035】
本実施形態において、学習済みモデル121に入力される撮影データは、カメラ4で撮影される動画データである。学習済みモデル121を生成するために使用される教師データも動画データである。上述のように、カメラ4の数は1つ以上であってよい。すなわち、学習済みモデル121に入力される撮影データは、少なくとも1つのカメラで撮影される動画データであってよい。このように動画データを学習済みモデルに入力する構成とすることにより、移動体の動きを判断し易く、接近物の有無を適切に判定することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、判定部113は、アイドリングストップを行うべき要因となる接近物の有無を判定する判定処理の全てを、学習済みモデル121を用いて行う構成となっている。ただし、これは例示であり、判定部113は、アイドリングストップを行うべき要因となる接近物の有無を判定する判定処理の一部を、学習済みモデル121を用いて行う構成であってもよい。例えば、判定部113は、車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所の近辺に存在する物体(移動体)の認識を、撮影データを入力される学習済みモデル121を用いて行い、当該物体が接近物であるかどうかは、時間的に連続する複数の画像データの画像解析により判定する構成であってもよい。
【0037】
また、本実施形態では、車両に搭載される制御部11が学習済みモデル121を用いて、アイドリングストップを行うべき要因となる接近物の有無を判定する構成となっている。すなわち、エッジAI(Artificial Intelligence)を用いて接近物の有無を判定する構成となっている。ただし、接近物の有無の判定には、エッジAI以外の手法が用いられてよい。例えば、車両に搭載される装置とネットワークを介して通信可能に設けられるサーバ装置が学習済みモデルを用いて接近物の判定を行う構成としてもよい。この場合、エンジンの制御を支援する制御支援装置は、車両に搭載される装置(例えば車載機器)と、サーバ装置とで構成される。
【0038】
また、本実施形態では、検知部112と判定部113とが利用する撮影データは、同じカメラ4から得られる。ただし、検知部112と判定部113とは、互いに異なるカメラから得られる撮影データを利用する構成であってもよい。すなわち、検知部112は、カメラ4とは別に車両に搭載される他のカメラで撮影される撮影画像に基づき所定の状況を検知する構成であってもよい。
【0039】
通知部114は、判定部113による判定結果に基づく通知を、エンジンの制御装置(本実施形態ではECU2)に対して行う。このように構成することにより、エンジンの制御装置とは別の装置から、エンジンの制御装置に対してエンジンの制御に関わる提案を行うことができる。
【0040】
判定結果に基づく通知は、例えば、アイドリングストップを行うべき接近物の有無の通知であってもよい。また、判定結果に基づく通知は、例えば、判定結果から導出されるアイドリングストップの要否の通知であってもよい。また、判定結果に基づく通知は、例えば、アイドリングストップが不要である場合にのみ通知される構成であってもよい。通知部114は、制御支援装置1がECU2に含まれる構成である場合には設けられなくてよい。
【0041】
なお、判定部113によって接近物が有ると判定された場合には、車両が相対的に長い時間の一時停止を行うと推定されるために、アイドリングストップが必要であると判定される。また、判定部113によって接近物が無いと判定された場合には、車両が相対的に短い時間の一時停止を行うと推定されるために、アイドリングストップが不要であると判定される。
【0042】
<3.制御支援方法>
図3は、本発明の実施形態に係る制御支援装置1により行われる、エンジンの制御に関わる制御支援処理の流れを示すフローチャートである。
図3は、より詳細には、制御支援装置1により行われる、アイドリングストップに関わる制御支援処理の流れを示すフローチャートである。
図4Aおよび
図4Bは、アイドリングストップに関わる第1の制御支援処理例を説明するための図である。
図4Aと
図4Bとは、接近物に関して異なる状況を示す。
図5は、アイドリングストップに関わる第2の制御支援処理例を説明するための図である。制御支援装置1による制御支援処理は、例えば、車両のエンジンの始動により開始される。
【0043】
ステップS1では、検知部112により、エンジンのアイドリングストップが行われると推定される所定の状況が検知されたか否かが確認される。当該確認は、所定の状況が検知されるまで行われる。すなわち、検知部112によって所定の状況の発生が監視される。検知部112によって所定の状況が検知されると(ステップS1でYes)、次のステップS2に処理が進められる。
【0044】
なお、
図4Aおよび
図4Bに示す例では、車両5に搭載されるカメラ4(前方カメラ)から得られる撮影画像により、検知部112は、一時停止の道路標識6を検知する。すなわち、
図4および
図4Bに示す例では、所定の状況が検知される。
【0045】
また、
図5に示す例では、車両5に搭載されるナビゲーション装置(不図示)において予め立ち寄ることが登録されている道路の右側にあるコンビニエンスストア7への、車両5の接近が検知される。当該接近の検知部112による検知は、例えばGPS(Global Positioning System)を搭載するナビゲーション装置からの情報に基づいて行うことができる。すなわち、検知部112は、ナビゲーション装置からの情報に基づいて、車両5が右折のために短時間の一時停止を行う状況になることを推定し、所定の状況を検知する。
【0046】
なお、ここでは、ナビゲーション装置からの情報により、車両5が右折のための短時間の一時停止を行う状況となることを検知する構成としたが、当該状況は別の手法により検知されてもよい。当該状況は、例えば、カメラ4から得られる撮影情報と、車両5のウィンカーの動作情報とに基づき検知される構成であってもよい。
【0047】
ステップS2では、判定部113により、アイドリングストップを行うべき要因となる接近物があるか否かが判定される。当該判定は、本実施形態では、学習済みモデル121を用いて行われる。学習済みモデル121には、検知部112による所定の状況の検知の前後、或いは、検知後にカメラ4により撮影された動画データが入力される。当該動画データの入力により、学習済みモデル121により接近物があると判定された場合(ステップS2でYes)、次のステップS3に処理が進められる。一方、接近物がないと判定された場合(ステップS2でNo)、ステップS4に処理が進められる。
【0048】
なお、学習済みモデル121は、好ましい形態として、一時的な停車を求められる場所(例えば一時停止の道路標識がある交差点等)において移動体の存在により相対的に長時間(例えば15秒以上等)の停車が行われた状況の複数の動画データを、接近物がある場合の教師データとして機械学習させた学習済みモデルである。
【0049】
このような構成とすると、学習済みモデル121を用いた接近物の有無の判定に、移動体の接近速度が加味される構成とすることができる。接近速度は、車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所(交差点等)に接近する移動体の速度である。移動体の接近速度を加味して移動体が接近物であるか否かを判定する構成とすると、実際の交通事情により即した推定を行うことができ、アイドリングストップの要否をより適切に判断することができる。
【0050】
また、このような構成とすると、学習済みモデル121を用いた接近物の有無の判定に、車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所(交差点等)と、移動体との距離が加味される構成とすることができる。移動体との距離を加味して接近物であるか否かを判定する構成とすると、実際の交通事情により即した推定を行うことができ、アイドリングストップの要否をより適切に判断することができる。移動体との距離を加味する構成では、移動体の種類も適切に分類する構成とすることが好ましい。
【0051】
なお、判定部113は、例えば、記憶部12に記憶される学習済みモデルを用いて、車両が停車後直ぐに通過すると推定される場所(交差点等)の近辺に移動体が存在するか否かのみを判定する構成としてよい。この場合、判定部113は、移動体が存在しなければ、接近物が存在しないと判定すればよい。また、判定部113は、移動体が存在する場合、画像解析処理により、移動体の種類と、移動体の接近速度と、上述の推定場所(交差点等)と移動体との距離とのうちの少なくとも1つを取得して、当該取得結果の基づき接近物の有無を判定してもよい。移動体の種類と、移動体の接近速度と、移動体との距離とのうちのいずれかは、機械学習による学習済みモデルを用いて得られる構成としてもよい。
【0052】
例えば、
図4Aに示す状況では、移動体が存在せず、接近物は無いと判定される。
図4Bに示す状況では、交差点に接近する歩行者(移動体)8aが存在している。この状況のみを捉えて、接近物が有ると判定されてもよい。また、歩行者8aの交差点への接近速度と、歩行者8aと交差点との距離との少なくとも一方が加味されて接近物の有無が判定されてもよい。なお、移動体8と交差点との距離とに基づいて接近物か否かを判定する場合には、移動体8の種類が考慮されることが好ましい。例えば、歩行者と自動車とでは移動速度が全く異なるためである。
【0053】
また、例えば、
図5に示す状況では、車両5が右折により通過する予定の場所(
図5中の破線参照、以下、通過予定場所)に接近する対向車8b(移動体)が存在している。この状況のみを捉えて、接近物が有ると判定されてもよい。また、車両5の通過予定場所への対向車8bの接近速度と、車両5の通過予定場所と対向車8bとの距離との少なくとも一方が加味されて接近物の有無が判定されてもよい。なお、
図5のようにコンビニエンスストア7の駐車場に入る場合には、車両5の通過予定場所への歩行者や自転車の接近も想定されるため、これらも接近物として含まれることが好ましい。
【0054】
ステップS3では、接近物が有り、アイドリングストップの抑止を行う必要がないと判定される場合、通知部114によるECU2への通知は特に行われない。つまり、ステップS3では、動作終了イベントが発生しているか否かが確認される。動作終了イベントは、例えば、エンジンの停止指示である。動作終了イベントが発生している場合(ステップS3でYes)、制御支援処理が終了する。動作終了イベントが発生していない場合(ステップS3でNo)、処理がステップS1に戻される。
【0055】
ステップS4では、接近物が無く、車両の停車時間が相対的に短時間となると推定されるために、通知部114は、ECU2にアイドリングストップが不要であることを通知する。これにより、ECU2では、通常はアイドリングストップを行う状況であるにもかかわらず、アイドリングストップを実行させないことにする。すなわち、接近物がないと判定された場合、通知部114による通知を受けてアイドリングストップが実行されない。これにより、短時間のアイドリングストップを抑止して、車両の燃費を向上させることができる。ステップS4の処理が完了すると、上述したステップS3における動作終了イベントの発生確認処理が行われる。
【0056】
<4.留意事項等>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態及び変形例は可能な範囲で適宜組み合わせて実施されてよい。
【符号の説明】
【0057】
1・・・制御支援装置
2・・・ECU(エンジンの制御装置)
4・・・カメラ
5・・・車両
8・・・移動体
8a・・・歩行者
8b・・・対向車
112・・・検知部
113・・・判定部
121・・・学習済みモデル