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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189287
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】バルブおよびエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/52 20060101AFI20221215BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B65D83/52
B05B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097788
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】大高 史有
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB08
3E014PD01
3E014PE06
3E014PE09
3E014PF10
4F033RA02
4F033RB06
4F033RC04
4F033RC05
4F033RC07
4F033RC08
(57)【要約】
【課題】 耐久性を向上することができるバルブおよびエアゾール製品を提供する。
【解決手段】 バルブ30は、ステム31、スプリング32およびブッシュ33を備え、ブッシュ33に対するステム31の位置には、ステム31のステム孔31aを介してエアゾール製品10に内容物が充填されるための充填位置と、定量室30aに存在していた内容物がステム孔31aを介して噴射されるための噴射位置と、ステム孔31aが定量室30aに連通しない状態でスプリング32による付勢力によってステム31が静止する静止位置とが存在し、ステム31は、ブッシュ33に対して、静止位置と、充填位置との間を、噴射位置を介して遷移し、ブッシュ33の開口部33cは、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置と、噴射位置との間を遷移する場合に、ステム31の外周面の少なくとも一部との接触を維持する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール製品のバルブであって、
前記エアゾール製品の内容物を流通させるためのステム孔が形成されているステムと、
前記ステムが挿入される開口部を備え、前記ステムとの間に定量室を形成する定量室形成部と、
前記ステムを付勢する付勢部材と
を備え、
前記定量室形成部に対する前記ステムの位置には、
前記ステム孔を介して前記エアゾール製品に前記内容物が充填されるための充填位置と、
前記定量室に存在していた前記内容物が前記ステム孔を介して噴射されるための噴射位置と、
前記ステム孔が前記定量室に連通しない状態で前記付勢部材による付勢力によって前記ステムが静止する静止位置と
が少なくとも存在し、
前記ステムは、前記定量室形成部に対して、前記静止位置と、前記充填位置との間を、前記噴射位置を介して遷移し、
前記開口部は、前記定量室形成部に対する前記ステムの位置が前記静止位置と、前記噴射位置との間を遷移する場合に、前記ステムの外周面の少なくとも一部との接触を維持することを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記定量室形成部のうち少なくとも前記開口部の近傍の部分は、前記ステムのうち前記開口部に接触している部分の外径に応じて前記開口部の内径が変化可能に弾性を有しており、
前記ステムは、
前記静止位置である場合に前記開口部に接触する第1の接触部と、
前記噴射位置である場合に前記開口部に接触する第2の接触部と
を外周面に備え、
前記第1の接触部の外径は、前記第2の接触部の外径より小さいことを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記ステムのうち、前記ステムが前記充填位置である場合に前記開口部に対向する部分の外径は、前記開口部の内径より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記定量室形成部のうち少なくとも前記開口部の近傍の部分は、前記開口部の内径が変化可能に弾性を有しており、
前記定量室形成部は、前記エアゾール製品に前記内容物が充填される際の前記開口部と、前記ステムとの間の隙間における前記内容物の流れの方向における上流側から前記開口部に向けて、前記開口部の近傍において内径が徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のバルブ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のバルブを備えることを特徴とするエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品のバルブおよびエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエアゾール製品のバルブとして、エアゾール製品の内容物を流通させるためのステム孔が形成されているステムと、ステムが挿入される開口部としての弁口部を備え、ステムとの間に定量室を形成するハウジングと、ステムを付勢するコイルばねとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されたバルブにおいて、ハウジングに対するステムの位置には、ステム孔を介してエアゾール製品に内容物が充填されるための充填位置と、定量室に存在していた内容物がステム孔を介して噴射されるための噴射位置と、ステム孔が定量室に連通しない状態でコイルばねによる付勢力によってステムが静止する静止位置とが少なくとも存在する。特許文献1に記載されたバルブにおいて、ステムは、ハウジングに対して、静止位置と、充填位置との間を、噴射位置を介して遷移する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-112088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたバルブにおいては、ステムが静止位置から噴射位置に遷移する間に、ステムと、ハウジングの弁口部との衝突が生じるので、ステムおよびハウジングの少なくとも一方が破損する可能性があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、耐久性を向上することができるバルブおよびエアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバルブは、エアゾール製品のバルブであって、前記エアゾール製品の内容物を流通させるためのステム孔が形成されているステムと、前記ステムが挿入される開口部を備え、前記ステムとの間に定量室を形成する定量室形成部と、前記ステムを付勢する付勢部材とを備え、前記定量室形成部に対する前記ステムの位置には、前記ステム孔を介して前記エアゾール製品に前記内容物が充填されるための充填位置と、前記定量室に存在していた前記内容物が前記ステム孔を介して噴射されるための噴射位置と、前記ステム孔が前記定量室に連通しない状態で前記付勢部材による付勢力によって前記ステムが静止する静止位置とが少なくとも存在し、前記ステムは、前記定量室形成部に対して、前記静止位置と、前記充填位置との間を、前記噴射位置を介して遷移し、前記開口部は、前記定量室形成部に対する前記ステムの位置が前記静止位置と、前記噴射位置との間を遷移する場合に、前記ステムの外周面の少なくとも一部との接触を維持することを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明のバルブは、定量室形成部に対するステムの位置が静止位置と、噴射位置との間を遷移する場合に開口部がステムの外周面の少なくとも一部との接触を維持するので、定量室形成部に対するステムの位置が静止位置と、噴射位置との間を遷移する場合にステムおよび開口部の一方が他方から強い衝撃を受ける可能性を低減することができ、その結果、耐久性を向上することができる。
【0008】
本発明のバルブにおいて、前記定量室形成部のうち少なくとも前記開口部の近傍の部分は、前記ステムのうち前記開口部に接触している部分の外径に応じて前記開口部の内径が変化可能に弾性を有しており、前記ステムは、前記静止位置である場合に前記開口部に接触する第1の接触部と、前記噴射位置である場合に前記開口部に接触する第2の接触部とを外周面に備え、前記第1の接触部の外径は、前記第2の接触部の外径より小さくても良い。
【0009】
この構成により、本発明のバルブは、定量室形成部に対するステムの位置が静止位置である場合に開口部に接触する第1の接触部の外径が、定量室形成部に対するステムの位置が噴射位置である場合に開口部に接触する第2の接触部の外径より小さいので、定量室形成部に対するステムの位置が静止位置から噴射位置に遷移する場合に、開口部の内径が、第1の接触部の外径に応じた大きさから、第2の接触部の外径に応じた大きさに大きくなり、その結果、定量室形成部のうち開口部の近傍の部分の復元力によって開口部を第2の接触部に密着させることができる。したがって、本発明のバルブは、定量室形成部に対するステムの位置が噴射位置である場合に、開口部と、ステムとの間のシール性を向上することができる。
【0010】
本発明のバルブにおいて、前記ステムのうち、前記ステムが前記充填位置である場合に前記開口部に対向する部分の外径は、前記開口部の内径より小さくても良い。
【0011】
この構成により、本発明のバルブは、定量室形成部に対するステムの位置が充填位置である場合に、開口部がステムの外周面に接触しないことによって、開口部と、ステムとの間の隙間を大きく確保することができるので、エアゾール製品への内容物の、単位時間当たりの充填量を増加させることができ、その結果、エアゾール製品への内容物の充填の効率を向上させることができる。
【0012】
本発明のバルブにおいて、前記定量室形成部のうち少なくとも前記開口部の近傍の部分は、前記開口部の内径が変化可能に弾性を有しており、前記定量室形成部は、前記エアゾール製品に前記内容物が充填される際の前記開口部と、前記ステムとの間の隙間における前記内容物の流れの方向における上流側から前記開口部に向けて、前記開口部の近傍において内径が徐々に小さくなっていても良い。
【0013】
この構成により、本発明のバルブは、エアゾール製品に内容物が充填される際の開口部と、ステムとの間の隙間における内容物の流れの方向における上流側から開口部に向けて、開口部の近傍において定量室形成部の内径が徐々に小さくなっていることによって、エアゾール製品に内容物が充填される際に内容物の流れによって開口部が押し広げられ易いので、エアゾール製品に内容物が充填される際に開口部と、ステムとの間の隙間を大きく確保することができる。したがって、本発明のバルブは、エアゾール製品への内容物の、単位時間当たりの充填量を増加させることができ、その結果、エアゾール製品への内容物の充填の効率を向上させることができる。
【0014】
本発明のエアゾール製品は、上述のバルブを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明のエアゾール製品は、定量室形成部に対するステムの位置が静止位置と、噴射位置との間を遷移する場合に開口部がステムの外周面の少なくとも一部との接触を維持するので、定量室形成部に対するステムの位置が静止位置と、噴射位置との間を遷移する場合にステムおよび開口部の一方が他方から強い衝撃を受ける可能性を低減することができ、その結果、耐久性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバルブおよびエアゾール製品は、耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】アクチュエーターが押されていない状態での、本発明の一実施の形態に係るエアゾール製品の一部の断面図である。
図2図1に示すエアゾール製品のステムの斜視図である。
図3】(a)図1に示すブッシュの断面図である。 (b)図1に示すブッシュの斜視図である。
図4】ショルダーおよびアクチュエーターが取り付けられていない状態での図1に示すエアゾール製品の一部の断面図である。
図5】内容物が充填されている最中の図1に示すエアゾール製品の一部の断面図である。
図6】アクチュエーターが押された状態での図1に示すエアゾール製品の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本発明の一実施の形態に係るエアゾール製品の構成について説明する。
【0020】
図1は、アクチュエーター50が押されていない状態での、本実施の形態に係るエアゾール製品10の一部の断面図である。
【0021】
図1に示すように、エアゾール製品10は、噴射する目的物質と、この目的物質の噴射のための噴射剤とを含む内容物を収納する容器20と、容器20に装着されるバルブ30と、バルブ30の一部を覆うショルダー40と、内容物を放出するためのアクチュエーター50とを備えている。噴射剤としては、LPG(Liquefied Petroleum Gas)などの液化ガスが採用される。
【0022】
容器20は、バルブ30が挿入されるための開口20aが形成されている。容器20の外径は、例えば、15mmである。
【0023】
バルブ30は、内容物を流通させるためのステム孔31aが形成されていてアクチュエーター50が取り付けられるステム31と、ステム31の延在方向、すなわち、矢印10aおよび矢印10bで示す方向のうち、矢印10aで示す方向にステム31を付勢する付勢部材としてのスプリング32と、ステム31が挿入される穴33aが形成されていて、矢印10aおよび矢印10bで示す方向へのステム31の移動を案内するブッシュ33と、ステム31の一部、スプリング32およびブッシュ33を収納するハウジング34と、ブッシュ33に対するステム31の位置が後述の静止位置である場合にステム孔31aを後述の定量室30aに連通させないための環状のステムガスケット35と、容器20およびハウジング34の間の隙間をシールするための環状のガスケット36と、ハウジング34を容器20に固定するためのマウンティングカップ37と、容器20内の内容物をハウジング34まで流通させるためのディップチューブ38とを備えている。図1に示す状態において、ステム31およびブッシュ33の間の空間は、定量室30aを形成する。
【0024】
図2は、ステム31の斜視図である。
【0025】
図1および図2に示すように、ステム31は、矢印10aで示す方向における先端部に開口する縦穴31bが形成されている。ステム孔31aと、縦穴31bとは、連通している。
【0026】
ステム31は、内容物を流通させるための溝31cが外周の一部に形成されていてブッシュ33の後述の開口部33cに対して外周面で摺動する第1の摺動部31dと、第1の摺動部31dに対して矢印10aで示す方向に配置されていてブッシュ33の開口部33cに対して外周面で摺動する第2の摺動部31eとを備えている。溝31cは、矢印10aおよび矢印10bで示す方向に延在している。第1の摺動部31dは、ブッシュ33に対するステム31の位置が後述の静止位置である場合にブッシュ33の開口部33cに接触する部分であり、本発明の第1の接触部を構成している。第2の摺動部31eは、ブッシュ33に対するステム31の位置が後述の噴射位置である場合にブッシュ33の開口部33cに接触する部分であり、本発明の第2の接触部を構成している。第1の摺動部31dの外径は、第2の摺動部31eの外径より小さい。
【0027】
ステム31は、第2の摺動部31eに対して矢印10aで示す方向に配置されている環状の溝31fが外周に形成されている。
【0028】
図3(a)は、ブッシュ33の断面図である。図3(b)は、ブッシュ33の斜視図である。
【0029】
図1および図3に示すように、ブッシュ33は、矢印10aおよび矢印10bで示す方向へのステム31の移動を案内するために内周に周方向に等間隔で6か所配置されている突起部33bと、ステム31が挿入される開口部33cとを備えている。ブッシュ33は、ステム31との間に定量室30aを形成する定量室形成部を構成しており、例えば、ポリエチレン製である。突起部33bは、矢印10aおよび矢印10bで示す方向に延在している。ブッシュ33のうち少なくとも開口部33cの近傍の部分は、ステム31のうち開口部33cに接触している部分の外径に応じて開口部33cの内径が変化可能に弾性を有している。ブッシュ33は、エアゾール製品10に内容物が充填される際の開口部33cと、ステム31との間の隙間における内容物の流れの方向、すなわち、矢印10bで示す方向における上流側から開口部33cに向けて、開口部33cの近傍において内径が徐々に小さくなっている。
【0030】
図1に示すように、ハウジング34は、矢印10aおよび矢印10bで示す方向へのステム31の移動を案内するために内周に周方向に等間隔で6か所配置されている突起部34aを備えている。なお、図1においては、2か所の突起部34a以外の突起部34aについては、図示が省略されている。突起部34aは、矢印10aおよび矢印10bで示す方向に延在している。ハウジング34は、ディップチューブ38が挿入される穴34bが形成されている。
【0031】
マウンティングカップ37は、側方から容器20に対してかしめられることによって、バルブ30を容器20に対して固定する。
【0032】
アクチュエーター50は、内容物の放出のために利用者によって押されるための操作部50aを備えている。アクチュエーター50は、ステム31の先端部が挿入される穴50bと、内容物を放出するための放出口50cとが形成されている。アクチュエーター50は、穴50bにステム31の先端部が挿入されることによって、ステム31に取り付けられる。穴50bと、放出口50cとは、連通している。
【0033】
次に、エアゾール製品10の動作について説明する。
【0034】
まず、内容物が充填される場合のエアゾール製品10の動作について説明する。
【0035】
図4は、ショルダー40(図1参照。)およびアクチュエーター50(図1参照。)が取り付けられていない状態でのエアゾール製品10の一部の断面図である。図5は、内容物が充填されている最中のエアゾール製品10の一部の断面図である。
【0036】
エアゾール製品10は、図4に示すようにショルダー40およびアクチュエーター50が取り付けられていない場合に、エアゾール製品10に内容物を充填するための図示していない充填装置によって図5に示すようにステム31が矢印10bで示す方向に押されながらステム31の縦穴31bの開口から内容物が注入される。
【0037】
図5に示す状態では、矢印10bで示す方向におけるステム31の先端部がハウジング34に接触しているので、ステム31は、ハウジング34と、ハウジング34に固定されているブッシュ33とに対して、矢印10bで示す方向に更に移動することができない。図5に示す状態でのブッシュ33に対するステム31の位置は、ステム孔31aを介してエアゾール製品10に内容物が充填されるための充填位置である。
【0038】
図5において、ステム孔31aは、ステムガスケット35に対して矢印10bで示す方向に配置されていて、ステム31およびブッシュ33の間の空間と連通している。また、図5に示す状態においてステム31のうち開口部33cに対向する部分の外径が開口部33cの内径より小さいため、ブッシュ33の開口部33cが、ステム31の溝31fの内部に配置されて、ステム31の外周面と接触していないので、ステム31およびブッシュ33の間の空間は、ステム31およびハウジング34の間の空間と連通している。
【0039】
したがって、ステム31の縦穴31bの開口から注入された内容物は、ステム31の縦穴31bと、ステム31のステム孔31aと、ステム31およびブッシュ33の間の空間と、ステム31およびハウジング34の間の空間と、ディップチューブ38の内部とを順に通過して、容器20内に収納される。すなわち、内容物は、エアゾール製品10に充填される。
【0040】
エアゾール製品10は、充填装置による充填が終了して充填装置によってステム31が押されなくなると、スプリング32の付勢力によって、図4に示す状態に戻る。
【0041】
図4において、ブッシュ33の開口部33cは、ステム31の溝31cに対向する部分では、ステム31の第1の摺動部31dの外周面と接触していない。したがって、ステム31およびハウジング34の間の空間は、ステム31の溝31cを介して、ステム31およびブッシュ33の間の空間、すなわち、定量室30aと連通している。しかしながら、ステム孔31aがステムガスケット35に対して矢印10aで示す方向に配置されているので、定量室30aは、ステム孔31aと連通していない。
【0042】
したがって、エアゾール製品10に充填された内容物は、容器20およびバルブ30の間の空間における気体状態の噴射剤の圧力によって、バルブ30内の空間のうち、ディップチューブ38の内部から、ステム31およびハウジング34の間の空間と、ステム31の溝31cとを介して、定量室30aまで満たすことが可能であるが、エアゾール製品10の外部には放出されない。
【0043】
なお、エアゾール製品10は、内容物が充填された後、図1に示すようにショルダー40およびアクチュエーター50が取り付けられる。図1および図4に示す状態でのブッシュ33に対するステム31の位置は、ステム孔31aが定量室30aに連通しない状態でスプリング32による付勢力によってステム31が静止する静止位置である。
【0044】
次に、内容物を噴射する場合のエアゾール製品10の動作について説明する。
【0045】
図6は、アクチュエーター50が押された状態でのエアゾール製品10の一部の断面図である。
【0046】
エアゾール製品10は、図1に示すようにショルダー40およびアクチュエーター50が取り付けられている場合に、利用者によってアクチュエーター50が矢印10bで示す方向に押されると、図6に示す状態になる。
【0047】
図6に示す状態では、矢印10bで示す方向におけるアクチュエーター50の先端部がショルダー40に接触しているので、アクチュエーター50に固定されているステム31は、ショルダー40に対して固定された位置に配置されているハウジング34と、ハウジング34に固定されているブッシュ33とに対して、矢印10bで示す方向に更に移動することができない。図6に示す状態でのブッシュ33に対するステム31の位置は、定量室30aに存在していた内容物がステム孔31aを介して噴射されるための噴射位置である。
【0048】
図6において、ステム孔31aは、ステムガスケット35に対して矢印10bで示す方向に配置されていて、ステム31およびブッシュ33の間の空間、すなわち、定量室30aと連通している。しかしながら、ブッシュ33の開口部33cが、ステム31の第2の摺動部31eの外周面と接触しているので、定量室30aは、ステム31およびハウジング34の間の空間とは連通していない。
【0049】
したがって、定量室30aに存在していた内容物は、この内容物の圧力によって、ステム31のステム孔31aと、ステム31の縦穴31bとを介して、アクチュエーター50の放出口50cから放出されるとともに、この内容物における噴射剤が気化する。しかしながら、ステム31およびハウジング34の間の空間と、定量室30aとが連通していないので、ステム31およびハウジング34の間の空間から定量室30aに内容物が供給されることはない。すなわち、エアゾール製品10は、定量室30aに存在していた定量の内容物をアクチュエーター50の放出口50cから放出する。
【0050】
エアゾール製品10は、利用者によってアクチュエーター50が押されなくなると、スプリング32の付勢力によって、図1に示す状態に戻る。
【0051】
図1において、ブッシュ33の開口部33cは、ステム31の溝31cに対向する部分では、ステム31の第1の摺動部31dの外周面と接触していない。したがって、ステム31およびハウジング34の間の空間は、ステム31の溝31cを介して、ステム31およびブッシュ33の間の空間、すなわち、定量室30aと連通している。しかしながら、ステム孔31aがステムガスケット35に対して矢印10aで示す方向に配置されているので、定量室30aは、ステム孔31aと連通していない。
【0052】
したがって、エアゾール製品10内の内容物は、容器20およびバルブ30の間の空間における気体状態の噴射剤の圧力によって、バルブ30内の空間のうち、ディップチューブ38の内部から、ステム31およびハウジング34の間の空間と、ステム31の溝31cとを介して、定量室30aまで満たすことが可能であるが、エアゾール製品10の外部には放出されない。
【0053】
なお、図1および図4に示すステム31の静止位置と、図5に示すステム31の充填位置と、図6に示すステム31の噴射位置との関係は、ブッシュ33に対してステム31が図1および図4に示す静止位置と、図5に示す充填位置との間を、図6に示す噴射位置を介して遷移する関係である。
【0054】
次に、ガス抜きされる場合のエアゾール製品10の動作について説明する。
【0055】
エアゾール製品10は、ガス抜きされる場合、図5に示すように、ショルダー40およびアクチュエーター50が取り外されて、ステム31が矢印10bで示す方向に押される。
【0056】
図5に示す状態では、矢印10bで示す方向におけるステム31の先端部がハウジング34に接触しているので、ステム31は、ハウジング34と、ハウジング34に固定されているブッシュ33とに対して、矢印10bで示す方向に更に移動することができない。
【0057】
図5において、ステム孔31aは、ステムガスケット35に対して矢印10bで示す方向に配置されていて、ステム31およびブッシュ33の間の空間と連通している。また、図5に示す状態においてステム31のうち開口部33cに対向する部分の外径が開口部33cの内径より小さいため、ブッシュ33の開口部33cが、ステム31の溝31fの内部に配置されて、ステム31の外周面と接触していないので、ステム31およびブッシュ33の間の空間は、ステム31およびハウジング34の間の空間と連通している。
【0058】
したがって、容器20内の内容物は、気体状態の噴射剤の圧力によって、ディップチューブ38の内部と、ステム31およびハウジング34の間の空間と、ステム31およびブッシュ33の間の空間と、ステム31のステム孔31aと、ステム31の縦穴31bとを順に通過して、エアゾール製品10外に放出される。すなわち、エアゾール製品10は、ガス抜きされる。
【0059】
以上に説明したように、バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置と、噴射位置との間を遷移する場合に開口部33cがステム31の外周面の少なくとも一部との接触を維持するので、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置と、噴射位置との間を遷移する場合にステム31および開口部33cの一方が他方から強い衝撃を受ける可能性を低減することができ、その結果、耐久性を向上することができる。なお、静止位置と、噴射位置との間の遷移は、エアゾール製品から内容物が噴射される度に発生するので、噴射位置と、充填位置との間の遷移と比較して極めて高頻度で発生する。したがって、バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置と、噴射位置との間を遷移する場合に開口部33cがステム31の外周面の少なくとも一部との接触を維持することによる耐久性の向上の有益性が高い。
【0060】
バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置から噴射位置に遷移する場合にステム31および開口部33cの一方が他方から強い衝撃を受ける可能性を低減することができるので、静止位置から噴射位置への遷移を利用者に滑らかに操作させることができ、その結果、利用者による操作感を向上することができる。
【0061】
バルブ30は、本実施の形態において第1の摺動部31dの外径が第2の摺動部31eの外径より小さいが、第1の摺動部31dの外径が第2の摺動部31eの外径と同一であっても良い。しかしながら、バルブ30は、通常、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置である期間が噴射位置である期間より長いので、第1の摺動部31dの外径が第2の摺動部31eの外径と同一である場合、開口部33cの内径が第1の摺動部31dの外径に馴染んでしまい、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置から噴射位置に遷移したときに、外径が第1の摺動部31dと同一である第2の摺動部31eと、開口部33cとの間のシール性が十分ではない可能性がある。
【0062】
バルブ30は、本実施の形態において、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置である場合に開口部33cに接触する第1の摺動部31dの外径が、ブッシュ33に対するステム31の位置が噴射位置である場合に開口部33cに接触する第2の摺動部31eの外径より小さいので、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置から噴射位置に遷移する場合に、開口部33cの内径が、第1の摺動部31dの外径に応じた大きさから、第2の摺動部31eの外径に応じた大きさに大きくなり、その結果、ブッシュ33のうち開口部33cの近傍の部分の復元力によって開口部33cを第2の摺動部31eに密着させることができる。したがって、バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が噴射位置である場合に、開口部33cと、ステム31との間のシール性を向上することができる。
【0063】
バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置から噴射位置に遷移する場合に開口部33cの内径が、第1の摺動部31dの外径に応じた大きさから、第2の摺動部31eの外径に応じた大きさに大きくなるので、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置から噴射位置に遷移する場合に、ブッシュ33のうち開口部33cの近傍の部分の復元力が大きくなって、ステム31と、ブッシュ33の開口部33cとの間の摩擦力が増加する。そのため、バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置を静止位置から噴射位置に遷移させるために必要な操作力が、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置から噴射位置に遷移する間に増加する。したがって、バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が静止位置から噴射位置に遷移する際に、ブッシュ33に対するステム31の位置が噴射位置に遷移したことを利用者に操作力の変化によって認識させることができ、その結果、利用者による操作感を向上することができる。
【0064】
バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が充填位置である場合に、開口部33cがステム31の外周面に接触しないことによって、開口部33cと、ステム31との間の隙間を大きく確保することができるので、エアゾール製品10への内容物の、単位時間当たりの充填量を増加させることができ、その結果、エアゾール製品10への内容物の充填の効率を向上させることができる。
【0065】
なお、バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が充填位置から噴射位置に遷移する間に、ステム31と、ブッシュ33の開口部33cとの衝突が生じる。しかしながら、噴射位置と、充填位置との間の遷移は、エアゾール製品10がガス抜きされる際を除いては、エアゾール製品10に内容物が充填される際にのみ発生するので、静止位置と、噴射位置との間の遷移と比較して極めて低頻度でしか発生しない。したがって、バルブ30は、ブッシュ33に対するステム31の位置が充填位置から噴射位置に遷移する間に生じる、ステム31と、ブッシュ33の開口部33cとの衝突の影響が極めて小さい。
【0066】
バルブ30は、エアゾール製品10に内容物が充填される際の開口部33cと、ステム31との間の隙間における内容物の流れの方向、すなわち、矢印10bに示す方向における上流側から開口部33cに向けて、開口部33cの近傍においてブッシュ33の内径が徐々に小さくなっていることによって、エアゾール製品10に内容物が充填される際に内容物の流れによって開口部33cが押し広げられ易いので、エアゾール製品10に内容物が充填される際に開口部33cと、ステム31との間の隙間を大きく確保することができる。したがって、バルブ30は、エアゾール製品10への内容物の、単位時間当たりの充填量を増加させることができ、その結果、エアゾール製品10への内容物の充填の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 エアゾール製品
10b 矢印(エアゾール製品に内容物が充填される際の開口部と、ステムとの間の隙間における内容物の流れの方向を示す矢印)
30 バルブ
30a 定量室
31 ステム
31a ステム孔
31d 第1の摺動部(第1の接触部)
31e 第2の摺動部(第2の接触部)
32 スプリング(付勢部材)
33 ブッシュ(定量室形成部)
33c 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6