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特開2022-189288空気調和機用凍結防止システム及び空気調和機用の制御装置
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  • 特開-空気調和機用凍結防止システム及び空気調和機用の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189288
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】空気調和機用凍結防止システム及び空気調和機用の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/41 20180101AFI20221215BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20221215BHJP
【FI】
F24F11/41 110
F24F140:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097789
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 英次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智洋
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260BA36
3L260CB37
3L260CB63
3L260EA08
3L260EA19
3L260EA27
3L260FB25
(57)【要約】
【課題】外乱や劣化等により、冷水コイル入口圧力が、設備導入時の値から乖離した場合であっても、凍結防止に必要十分な流量を確保可能とする。
【解決手段】コントローラ12は、検出冷水温度Tmが所定の凍結防止閾値温度未満であるときに、冷水温度と制御弁30の開度とが関連付けられた温度-開度マップから、検出冷水温度Tmに対応する開度指令値A*を求める。またコントローラ12は、冷水温度と冷水流量とが関連付けられた温度-流量マップから、検出冷水温度Tmに対応する目標流量Q*を求める。またコントローラ12は、目標流量Q*から、制御弁30の開度を開度指令値A*に設定後の還水配管28の実測流量Qmを引いた、差分流量ΔQを求める。さらにコントローラ12は、差分流量ΔQが正の値の場合に、開度指令値A*を増加方向に再設定する一方で、差分流量ΔQがゼロ以下の値の場合に、開度指令値A*を維持する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプにより送水配管から冷水が供給され、自身を通過する空気との熱交換が行われる、冷水コイルと、
前記冷水コイルからの戻り冷水が送られる還水配管に設けられ、戻り冷水の流量を調整する制御弁と、
前記還水配管に設けられた水温センサ及び流量センサと、
前記水温センサが検出した検出冷水温度に基づいて、前記制御弁の開度指令を生成する制御装置と、
を備える、空気調和機用凍結防止システムであって、
前記制御装置は、前記検出冷水温度が所定の凍結防止閾値温度未満であるときに、
冷水温度と前記制御弁の開度とが関連付けられた温度-開度マップから、前記検出冷水温度に対応する開度指令値を求め、
冷水温度と冷水流量とが関連付けられた温度-流量マップから、前記検出冷水温度に対応する目標流量を求め、
前記目標流量から、前記制御弁の開度を前記開度指令値に設定後の前記還水配管の実測流量を引いた、差分流量を求め、
前記差分流量が正の値の場合に、前記開度指令値を増加方向に再設定する一方で、前記差分流量がゼロ以下の値の場合に、前記開度指令値を維持する、
空気調和機用凍結防止システム。
【請求項2】
ポンプにより送水配管から冷水が供給され、自身を通過する空気との熱交換が行われる、冷水コイルと、
前記冷水コイルからの戻り冷水が送られる還水配管に設けられ、戻り冷水の流量を調整する制御弁と、
前記還水配管に設けられた水温センサ及び流量センサと、
を備える空気調和機に設けられ、前記水温センサが検出した検出冷水温度に基づいて、前記制御弁の開度指令を生成する、空気調和機用の制御装置であって、
前記検出冷水温度が所定の凍結防止閾値温度未満であるときに、冷水温度と前記制御弁の開度とが関連付けられた温度-開度マップから、前記検出冷水温度に対応する開度指令値を求める、温度ベース開度算出部と、
冷水温度と冷水流量とが関連付けられた温度-流量マップから、前記検出冷水温度に対応する目標流量を求める、温度ベース流量算出部と、
前記目標流量から、前記制御弁の開度を前記開度指令値に設定後の前記還水配管の実測流量を引いた、差分流量を求めるとともに、前記差分流量が正の値の場合に、前記開度指令値を増加方向に再設定する一方で、前記差分流量がゼロ以下の値の場合に、前記開度指令値を維持する、開度調整部と、
を備えることを特徴とする、空気調和機用の制御装置。











【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、空気調和機用の凍結防止システム及び空気調和機用の制御装置が開示される。
【背景技術】
【0002】
例えば中央式の空調設備には、空気調和機(空調機)が設けられる。空気調和機は外気を取り込み、加熱(加温)または冷却し、また必要に応じて除湿または加湿して調和空気を生成し、これをテナントやオフィススペース等の空調対象空間に供給する。
【0003】
外気の冷却に当たり、空気調和機には冷水が供給される冷水コイルが設けられる。また外気の加熱に当たり、空気調和機には温水が供給される温水コイルが設けられる。これらのコイルは空気調和機の外気導入口から送気ファンまでの間に設けられる。例えば、外気導入口→冷水コイル→温水コイル→送気ファンの順に各機器が配置される。空気調和機内に導入された外気(導入外気)が各コイルを通過することで冷却または加熱される。
【0004】
例えば冬季等、導入外気を専ら加熱し、冷却する必要が無い場合には、冷水コイルへの冷水供給が止められる。これにより冷水コイル内に冷水が滞留する。寒冷地における寒波の通過時等に、導入外気が冷水コイルを通過することで、冷水コイル内に滞留した冷水が凍結・膨張し、冷水コイルの破損に繋がるおそれがある。
【0005】
そこでいわゆる冷房の不要な冬季等であっても、凍結防止の観点から、所定の流量にて冷水を流して(動かして)いる。例えば、冷水を送るポンプの吐出圧が一定の場合、冷水コイル入り口の圧力は一定となり、制御弁の開度と流量とは比例関係にあるため、開度調整による流量制御が可能となる。
【0006】
このような空気調和機の凍結防止手段として、例えば特許文献1では、冷水コイルに循環する冷水温度が所定の特定温度以下になると、温水循環路を流れる温水の一部が、冷水コイルを含む冷水循環路に供給される。また特許文献2では、凍結防止運転では、冷却用熱交換器の通水路に通水する凍結防止用水の通水量を調整することで、冷却用熱交換器の通水路出口における凍結防止用水の温度を設定凍結防止温度に調整している。さらに特許文献3では、外気温度が予め設定した設定温度以下となったときに、流量調節弁を全開にして、凍結の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-78501号公報
【特許文献2】特開2012-154543号公報
【特許文献3】特開平5-215382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ポンプの劣化、冷水配管のサビ等により、ポンプに対する吐出圧の設定値が一定値であっても、実際の冷水コイル入口圧力が、設備導入時の値よりも低下する場合がある。また、冷水配管が分岐され他の空気調和機にも供給される場合に、当該他の空気調和機における制御弁の急開閉によっても、実際の冷水コイル入口圧力が、設備導入時の値から乖離するおそれがある。
【0009】
そこで本明細書では、外乱や劣化等により、冷水コイル入口圧力が設備導入時の値から乖離した場合であっても、凍結防止に必要十分な流量を確保することの可能な、空気調和機用凍結防止システム及び空気調和機用の制御装置が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、空気調和機用凍結防止システムが開示される。当該システムは、冷水コイル、制御弁、水温センサ、流量センサ、及び制御装置を備える。冷水コイルには、ポンプにより送水配管から冷水が供給され、自身を通過する空気との熱交換が行われる。制御弁は、冷水コイルからの戻り冷水が送られる還水配管に設けられ、戻り冷水の流量を調整する。水温センサ及び流量センサは、還水配管に設けられる。制御装置は、水温センサが検出した検出冷水温度に基づいて、制御弁の開度指令を生成する。また制御装置は、検出冷水温度が所定の凍結防止閾値温度未満であるときに、冷水温度と制御弁の開度とが関連付けられた温度-開度マップから、検出冷水温度に対応する開度指令値を求める。また制御装置は、冷水温度と冷水流量とが関連付けられた温度-流量マップから、検出冷水温度に対応する目標流量を求める。また制御装置は、目標流量から、制御弁の開度を開度指令値に設定後の還水配管の実測流量を引いた、差分流量を求める。さらに制御装置は、差分流量が正の値の場合に、開度指令値を増加方向に再設定する一方で、差分流量がゼロ以下の値の場合に、開度指令値を維持する。
【0011】
上記構成によれば、差分流量が正の値を取る場合、つまり実測流量が目標流量に到達していない場合に、開度指令値が増加調整される。その一方で、差分流量がゼロ以下の値の場合、つまり実測流量が目標流量以上である場合には、凍結防止に十分な流量が確保されているとの観点から、開度指令値が維持される。
【0012】
また本明細書では、空気調和機用の制御装置が開示される。空気調和機は制御装置に加えて、冷水コイル、制御弁、水温センサ及び流量センサを備える。冷水コイルには、ポンプにより送水配管から冷水が供給され、自身を通過する空気との熱交換が行われる。制御弁は、冷水コイルからの戻り冷水が送られる還水配管に設けられ、戻り冷水の流量を調整する。水温センサ及び流量センサは、還水配管に設けられる。制御装置は、水温センサが検出した検出冷水温度に基づいて、制御弁の開度指令を生成する。制御装置は、温度ベース開度算出部、温度ベース流量算出部、及び開度調整部を備える。温度ベース開度算出部は、検出冷水温度が所定の凍結防止閾値温度未満であるときに、冷水温度と制御弁の開度とが関連付けられた温度-開度マップから、検出冷水温度に対応する開度指令値を求める。温度ベース流量算出部は、冷水温度と冷水流量とが関連付けられた温度-流量マップから、検出冷水温度に対応する目標流量を求める。開度調整部は、目標流量から、制御弁の開度を開度指令値に設定後の還水配管の実測流量を引いた、差分流量を求めるとともに、差分流量が正の値の場合に、開度指令値を増加方向に再設定する一方で、差分流量がゼロ以下の値の場合に、開度指令値を維持する。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に開示される空気調和機用凍結防止システム及び空気調和機用の制御装置によれば、外乱や劣化等により、冷水コイル入口圧力が設備導入時の値から乖離した場合であっても、凍結防止に必要十分な流量を確保可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る空気調和機の凍結防止システムを含む。空調システムの構成を例示する図である。
図2】コントローラの機能ブロックを例示する図である。
図3】温度-開度マップ(T-Aマップ)を例示する図である。
図4】温度-流量マップ(T-Qマップ)を例示する図である。
図5】開度調整マップを例示する図である。
図6】本実施形態に係る、制御弁の開度設定フローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、本実施形態に係る空気調和機用の凍結防止システムが例示される。このシステムには、空気調和機10及びコントローラ12(制御装置)が含まれる。なお、信号線が一点鎖線で示される。また、フィルタやフィルタ詰まりを検知する微差圧スイッチや、加湿機構等の、冷水コイル14の凍結防止との関連が低い機器については、適宜図示が省略される。
【0016】
空気調和機10は、外気を導入して調和空気を生成し、これをテナントやオフィススペース等の空調対象空間に供給する。空気調和機10よりも外気側には、ダンパ16及びダンパモータ18が設けられる。空気調和機10は、外気側から順に、冷水コイル14、温水コイル20、及び送気ファン22を備える。
【0017】
ダンパ16は外気ダクト24の開度を調節することで、外気(OA)の導入量を調節する、いわゆる風量調節ダンパ(VD)である。ダンパ16は、例えば板部材から構成される。ダンパモータ18はダンパ16を駆動させて外気ダクト24の開度を調整する。ダンパモータ18は例えばパルスモータから構成される。
【0018】
冷水コイル14の上流端は冷水用の送水配管26に接続される。冷水コイル14の下流端は還水配管28に接続される。ポンプ60により、送水配管26から冷水が冷水コイル14に供給される。冷水コイル14では、外気ダクト24から導入され自身を通過する空気(外気)との熱交換が行われる。図1に示す実施形態では、冷水コイル14と熱交換する空気として、外気に加えて、空調対象空間から戻された還気の一部が含まれる。
【0019】
送水配管26の上流端及び還水配管28の下流端には冷凍機62が接続される。冷水コイル14を通過した冷水は、還水配管28から冷凍機62に戻される。還水配管28にはポンプ60が設けられる。ポンプ60の駆動により、冷水がポンプ60→冷凍機62→送水配管26→冷水コイル14→還水配管28→ポンプ60との流路を循環する。
【0020】
なお図1には図示が省略されているが、冷凍機62から複数本の送水配管26及び還水配管28が分岐され、冷凍機62から複数の空気調和機に冷水を供給可能となっている。
【0021】
また還水配管28には、当該還水配管28を流れる戻り冷水の流量を調整する制御弁30と、戻り冷水の温度を測定する水温センサ32と、戻り冷水の流量を測定する流量センサ34が設けられる。後述するように、コントローラ12は、水温センサ32及び流量センサ34の測定値に基づいて、制御弁30の開度を調整し、冷水コイル14内の冷水凍結を防ぐ。
【0022】
温水コイル20は、冷水コイル14と同様に、外気ダクト24から導入され自身を通過する空気(外気)及び一部の還気との熱交換が行われる。温水コイル20は送水配管36に接続される。送水配管36の上流端にはボイラ72が設けられる。温水コイル20を通過した温水は、還水配管38からボイラ72に戻される。
【0023】
還水配管38には、当該還水配管38を流れる戻り温水の流量を調整する制御弁40が設けられる。さらに還水配管38にはポンプ70が設けられる。ポンプ70の駆動により、温水がポンプ70→ボイラ72→送水配管36→温水コイル20→還水配管38→ポンプ70との流路を循環する。
【0024】
なお図1には図示が省略されているが、ボイラ72から複数本の送水配管36及び還水配管38が分岐され、ボイラ72から複数の空気調和機に温水を供給可能となっている。
【0025】
冷水コイル14と温水コイル20は、基本的には一方のみが使用される。例えば外気を冷却させる際には冷水コイル14に冷水が供給される一方で温水コイル20への温水の供給が停止される(制御弁40閉止)。また外気を加熱(加温)させる際には温水コイル20に温水が供給される一方で冷水コイル14への冷水の供給が停止される(制御弁30閉止)。
【0026】
なお、導入外気の除湿を行う、いわゆるドライ運転では、目標温度を下回る温度まで外気を冷却(過冷却)させた後に加熱する再熱制御が実行される場合がある。このような場合には、冷水コイル14と温水コイル20とにそれぞれ冷水と温水とが供給される。冷却、加熱、除湿、または必要に応じて加湿された調和空気は、送気ファン22から送気ダクト42を介してそれぞれの空調対象空間に送られる。
【0027】
空気調和機10用の制御装置であるコントローラ12は、例えばPLC(プログラマブルロジックコンピュータ)から構成される。コントローラ12は、例えばBA(Building Automation)に対応可能とするために、通信プロトコルであるBACnet(Building Automation and Control Network)に準拠するものであってよい。このBACnetに則り、コントローラ12は中央監視装置(図示せず)と通信可能となっている。
【0028】
図1にはコントローラ12のハード構成図が例示されている。コントローラ12は、内部バスに接続された種々の機器を制御可能となっている。
【0029】
コントローラ12は、CPU44、RAM46、ROM47、ユーザインターフェース48(UI)、及び外部インターフェース50を備える。ユーザインターフェース48は、ユーザの情報を入力する際に用いられ、また情報を表示する際にも用いられる。
【0030】
外部インターフェース50は外部機器との接続やデータ通信に用いられる。具体的には、水温センサ32から、還水配管28を流れる戻り冷水温度の検出温度である、検出冷水温度Tmが送られる。また、流量センサ34から、還水配管28を流れる戻り冷水流量の実測流量Qmが送られる。また、送気ダクト42の送気温度センサ52から、送気温度の測定値が送られる。
【0031】
ROM47は、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリを含んで構成される。ROM47には、コントローラ12を後述する機能ブロック(図2参照)に構成するためのプログラムが記憶される。さらにROM47には、後述する温度-開度マップ(T-Aマップ)、温度-流量マップ(T-Qマップ)、及び開度調整マップ等が記憶される。
【0032】
コントローラ12は、図6に例示される開度設定フローを実行し、制御弁30の開度を設定する。設定された開度は、外部インターフェース50を介して制御弁30に送られる。また、外部インターフェース50を介して、コントローラ12から、温水の還水配管38に設けられた制御弁40への開度指令が送られる。さらに、外部インターフェース50を介して、コントローラ12からダンパモータ18に外気ダクト24の開度指令が送られる。
【0033】
図2に、コントローラ12の機能ブロック図が例示されている。この機能ブロック図は、図6に例示される開度設定フローを実行可能なプログラムを、CPU44が実行することで構成される。またこのプログラムは、ROM47に記憶されるか、DVD等の非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶される。
【0034】
コントローラ12は、温度ベース開度算出部54、温度ベース流量算出部56、及び開度調整部58を含んで構成される。
【0035】
温度ベース開度算出部54には、図3に例示する温度-開度マップ(T-Aマップ)が記憶される。温度-開度マップは、横軸に戻り冷水の温度、縦軸に制御弁30の開度指令値を取り、冷水温度と制御弁30の開度とが関連付けられた特性線L1が定められている。
【0036】
温度-開度マップは、冷水コイル14内の冷水凍結を防止するために作成されており、例えば過去データに基づいて、凍結を回避可能な制御弁30の開度が、戻り冷水の温度別にプロットされている。
【0037】
例えば、ポンプ60と定格出力が同等のポンプの吐出圧が一定値であるときの、戻り冷水の温度、制御弁30の開度、及びそのときの還水配管28の凍結有無のデータ組が、過去の実績から複数点取得される。戻り冷水の温度として、水温センサ32による検出冷水温度が取得される。
【0038】
この、過去実績に基づく複数のデータ組が、温度-開度マップにプロットされ、還水配管28の凍結が無かったプロットを通過するように、特性線L1が定められる。例えば、還水配管28が凍結したプロット群(凍結プロット群)と、還水配管28の凍結が免れたプロット群(凍結回避プロット群)との境界線として特性線L1が定められる。または、上記境界線よりも凍結回避プロット群寄りの領域に、特性線L1が定められる。
【0039】
なお図3では、特性線L1として直線が示されているが、上記2つのプロット群の分布に応じて、特性線L1の形状が定められる。ただし定性的には、検出冷水温度Tmが高いほど、凍結防止に必要な制御弁30の開度指令値A*は絞られる。つまり特性線L1は、全体的に見て右下がりの形状となる。
【0040】
温度ベース開度算出部54は、水温センサ32による検出冷水温度Tmを温度-開度マップにプロットし、検出冷水温度Tmに対応する制御弁の開度指令値A*を求める。
【0041】
温度ベース流量算出部56には、図4に例示する温度-流量マップ(T-Qマップ)が記憶される。温度-流量マップは、横軸に戻り冷水の温度、縦軸に制御弁30を通過する戻り冷水の目標流量を取り、冷水温度と冷水流量とが関連付けられた特性線L2が定められている。
【0042】
温度-流量マップは、冷水コイル14内の冷水凍結を防止するために作成されており、例えば過去データから、凍結を回避可能な冷水の流量が、戻り冷水の温度別にプロットされている。
【0043】
例えば、ポンプ60と定格出力が同等のポンプの吐出圧が一定値であるときの、戻り冷水の温度、戻り冷水の流量、及びそのときの還水配管28の凍結有無のデータ組が、過去の実績から複数点取得される。
【0044】
この、過去実績に基づく複数のデータ組が、温度-流量マップにプロットされる。還水配管28の凍結が無かったプロットを通過するように、特性線L2が定められる。例えば、還水配管28が凍結したプロット群(凍結プロット群)と、還水配管28の凍結が免れたプロット群(凍結回避プロット群)との境界線として特性線L2が定められる。または、上記境界線よりも凍結回避プロット群寄りの領域に、特性線L2が定められる。
【0045】
なお図4では、特性線L2として直線が示されているが、上記2つのプロット群の分布に応じて、特性線L2の形状が定められる。ただし定性的には、検出冷水温度Tmが高いほど、凍結防止に必要な冷水の目標流量Q*は少なくて済む。つまり特性線L2は、全体的に見て右下がりの形状となる。
【0046】
温度ベース流量算出部56は、水温センサ32から取得した検出冷水温度Tmを温度-流量マップにプロットし、温度Tmに対応する戻り冷水の目標流量Q*を求める。
【0047】
なお、還水配管28内を流れる戻り冷水の凍結を抑制する主な要素は、理論的には戻り冷水の流速であることを考慮して、温度-流量マップ(T-Qマップ)に代えて、温度-流速マップ(T-Vマップ)が用いられてもよい。
【0048】
例えば図4の温度-流量マップの作成に際に用いられた、過去実績に基づくデータ群に対して、それぞれの配管内径に基づいて流速Vが求められる。さらに図4の横軸を流速とした平面上に、過去実績に基づくデータ、例えば、ポンプ60と定格出力が同等のポンプの吐出圧が一定値であるときの、戻り冷水の温度、戻り冷水の流速、及びそのときの還水配管28の凍結有無のデータ組がプロットされる。
【0049】
さらに上記のプロット群のうち、還水配管28の凍結が無かったプロットを通過するように、特性線L2‘が定められる。例えば、還水配管28が凍結したプロット群(凍結プロット群)と、還水配管28の凍結が免れたプロット群(凍結回避プロット群)との境界線として特性線L2’が定められる。または、上記境界線よりも凍結回避プロット群寄りの領域に、特性線L2‘が定められる。
【0050】
この場合において、温度ベース流量算出部56は、水温センサ32から取得した戻り冷水温度Tmを温度-流速マップにプロットし、温度Tmに対応する戻り冷水の目標流速V*を求める。さらに温度ベース流量算出部56は、目標流速V*と還水配管28の内径φに基づいて目標流量Q*を求める。
【0051】
開度調整部58は、温度ベース開度算出部54により求められた開度指令値A*を制御弁30の設定開度とした後の実測流量Qmと、温度ベース流量算出部56により求められた目標流量Q*との差異に基づいて、制御弁30に対する開度調整値ΔAを求める。
【0052】
開度調整部58には、図5に例示される開度調整マップが記憶される。開度調整マップは、横軸に目標流量Q*から実測流量Qmを引いた差分流量ΔQを取り、縦軸に制御弁30への開度調整値ΔAを取り、さらに差分流量ΔQと開度調整値ΔAとが関連付けられた特性線L3が定められている。
【0053】
開度調整マップは、冷水コイル14内の冷水凍結に必要十分な冷水の流量を確保するために作成されており、例えば過去データから求められる。制御弁30の設定開度を開度指令値A*に設定したにも関わらず、実測流量Qmが目標流量Q*に届かない場合、つまりΔQ>0の場合、ポンプ60及び制御弁30を含む冷水の循環路内の送水圧力が低下している可能性がある。例えばポンプ60の劣化、配管の劣化、または冷凍機62から分岐する他の空気調和機の制御弁の急開閉により、上記送水圧力が低下し得る。
【0054】
このような場合においても、冷水コイル14の凍結防止に必要十分な流量を確保するために、特性線L3が定められる。定性的に、特性線L3は、差分流量ΔQが大きい程開度調整値ΔAが大きくなるような形状となる。例えば特性線L3は、原点(ΔQ=0,ΔA=0)を起点として傾きが正の一次関数で示される。
【0055】
なお、ΔQがゼロ以下の値を取る場合(ΔQ≦0)、つまり実測流量Qmが目標流量Q*以上である場合には、冷水コイル14の凍結防止に必要十分な流量が確保されていることから、一旦設定された設定開度A*が維持される。つまり特性線L3は、ΔQ≦0の領域ではΔA=0の値を取る。
【0056】
<凍結防止フロー>
図6に、制御装置であるコントローラ12による、開度設定フローが例示されている。コントローラ12は、水温センサ32から、還水配管28を流れる戻り冷水の温度Tmを取得する(S10)。続いてコントローラ12は、検出冷水温度Tmが所定の閾値温度未満(凍結防止閾値温度未満)であるか否かを判定する(S12)。閾値温度は、例えば制御弁30を全閉しても冷水コイル14内で冷水が凍結しない温度であり、例えば+5℃である。
【0057】
検出冷水温度Tmが閾値温度以上である場合には、所定期間待機(S30)の後、本フローの末尾(Return)まで進み、再度フローの起点(Start)まで戻る。検出冷水温度Tmが閾値温度未満(凍結防止閾値温度未満)である場合には、コントローラ12は還水配管28を流れる戻り冷水の流量Qm0を取得する(S14)。
【0058】
続いてコントローラ12は、凍結防止のため、制御弁30の開度を設定する。さらに温度ベース開度算出部54は、T-Aマップ(図3)の特性線L1を参照して、ステップS10にて取得された検出冷水温度Tmに対応する開度指令値A*を求める(S20)。求められた開度指令値A*は、制御弁30の設定開度となり(S22)、制御弁30は開度指令値A*となるまで弁を開放する。制御弁30の設定開度が開度指令値A*に設定された後、例えば設定から1分後に、開度調整部58は、流量センサ34から、戻り冷水の実測流量Qm1を取得する(S24)。
【0059】
ここで、ステップS20にて開度指令値A*を求める処理と並行して、目標流量Q*が求められる(S18)。温度ベース流量算出部56は、T-Qマップの特性線L2を参照して、ステップS10にて取得された検出冷水温度Tmに対応する目標流量Q*を取得する。
【0060】
開度調整部58は、目標流量Q*から、ステップS24で求められた戻り冷水の実測流量Qm1を引いた差分流量ΔQを求める。さらに開度調整部58は、図5の開度調整マップの特性線L3を参照して、差分流量ΔQに対応する開度調整値ΔAを求める(S26)。なお上述したように、差分流量ΔQ≦0の場合、ΔA=0となる。
【0061】
さらにコントローラ12は、制御弁30の開度をΔA分増加方向に再設定する(S28)。例えばコントローラ12は、制御弁30の設定開度を、既に設定済みの開度指令値A*に開度調整値ΔAを加えた値(A*+ΔA)に再設定する。なお、ΔA=0の場合は、設定開度が開度指令値A*に維持される。更に所定期間待機(S30)の後、図6のフローは起点(Start)まで戻される。
【0062】
なお、上述した実施形態では、冷水コイル14内の冷水の凍結防止を目的として制御弁30の開度調整を行っていたが、本実施形態に係る空気調和機用凍結防止システム及び空気調和機用の制御装置は、この形態に限らない。例えば温水コイル20内の温水供給が停止されているとき、温水コイル20内に滞留する温水が温水コイル20を通過する外気により凍結するおそれがある。そこで、温水の還水配管38にも水温センサ及び流量センサが設けられるとともに、図6の開度設定フローがコントローラ12によって還水配管38の制御弁40に対して実行されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 空気調和機、12 コントローラ(制御装置)、14 冷水コイル、16 ダンパ、18 ダンパモータ、20 温水コイル、22 送気ファン、24 外気ダクト、26 冷水の送水配管、28 冷水の還水配管、30 制御弁、32 水温センサ、34 流量センサ、42 送気ダクト、52 送気温度センサ、54 温度ベース開度算出部、56 温度ベース流量算出部、58 開度調整部、60,70 ポンプ、62 冷凍機、72 ボイラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6