(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189293
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】レンズマウント及びそれを有するレンズ装置
(51)【国際特許分類】
G03B 35/10 20210101AFI20221215BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20221215BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221215BHJP
H04N 13/218 20180101ALI20221215BHJP
G03B 11/00 20210101ALN20221215BHJP
G02B 7/02 20210101ALN20221215BHJP
【FI】
G03B35/10
G03B17/14
H04N5/225 400
H04N5/225 100
H04N13/218
G03B11/00
G02B7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097794
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 豊人
(72)【発明者】
【氏名】上原 匠
【テーマコード(参考)】
2H044
2H059
2H083
2H101
5C061
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AD01
2H059AA09
2H083AA02
2H083AA26
2H083AA48
2H101EE08
2H101EE33
5C061AB03
5C061AB06
5C122DA03
5C122DA04
5C122DA30
5C122EA42
5C122EA56
5C122FA02
5C122FA04
5C122FB03
5C122FB04
5C122FB17
5C122GE03
5C122GE05
5C122GE07
(57)【要約】
【課題】簡単な構造でフィルターの取り付けや取り外しが容易なレンズマウント及びそれを有するレンズ装置を提供すること。
【解決手段】レンズマウントは、第一光学系と第二光学系とを備えるレンズ装置を撮像装置に着脱可能に装着するためのレンズマウントであって、第一光学系に対応する第一の開口部と第二光学系に対応する第二の開口部とが形成されたカバー部材と、第一の開口部と第二の開口部の配列方向と直交する方向の一方の側に配置される第一の保持部材と他方の側に配置される第二の保持部材とを備え、第一の開口部と第二の開口部とを覆うフィルターを保持可能な保持部材と、カバー部材と保持部材との間に形成され、フィルターを挿入可能な溝とを有する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一光学系と第二光学系とを備えるレンズ装置を撮像装置に着脱可能に装着するためのレンズマウントであって、
前記第一光学系に対応する第一の開口部と前記第二光学系に対応する第二の開口部とが形成されたカバー部材と、
前記第一の開口部と前記第二の開口部の配列方向と直交する方向の一方の側に配置される第一の保持部材と他方の側に配置される第二の保持部材とを備え、前記第一の開口部と前記第二の開口部とを覆うフィルターを保持可能な保持部材と、
前記カバー部材と前記保持部材との間に形成され、前記フィルターを挿入可能な溝とを有することを特徴とするレンズマウント。
【請求項2】
前記第一の保持部材と前記第二の保持部材は、同一形状であることを特徴とする請求項1に記載のレンズマウント。
【請求項3】
前記第一の開口部が内側に形成され、前記撮像装置との装着面側の端部が前記第一の開口部の内側に突出している第一の壁部と、
前記第二の開口部が内側に形成され、前記撮像装置との装着面側の端部が前記第二の開口部の内側に突出している第二の壁部とを更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズマウント。
【請求項4】
前記第一の開口部は、円形状から前記第二の開口部の側の領域がカットされた形状を備え、
前記第二の開口部は、円形状から前記第一の開口部の側の領域がカットされた形状を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のレンズマウント。
【請求項5】
前記第一の開口部によりケラレる範囲は、前記第二の光学系の画像で第一の光学系のレンズが映り込む範囲に含まれる範囲であり、
前記第二の開口部によりケラレる範囲は、前記第一の光学系の画像で第一の光学系のレンズが映り込む範囲に含まれる範囲であることを特徴とする請求項4に記載のレンズマウント。
【請求項6】
第一光学系と、
第二光学系と、
請求項1乃至5の何れか一項に記載のレンズマウントとを有することを特徴とするレンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置及びそれを有するレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交換レンズシステムの一つとして立体撮影用交換レンズが知られている。特許文献1には、2つの光学系が並列に配置され、一つの撮像素子に二つのイメージサークルが並列に結像するレンズが開示されている。
【0003】
また、交換レンズの最像面側にフィルターを取り付ける構造が知られている。特許文献2には、交換レンズの被装着側の開口部の周辺でU字状又は半円状の部材でフィルターを保持する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-3022号公報
【特許文献2】実開昭57-130808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VRゴーグルで視聴する際、立体感だけでなく、臨場感も得るためには、動画又は静止画の画角は180度以上であることが望ましい。製造誤差等も考慮して、少なくとも180度の映像を提供するためには、撮影レンズは180度を超える画角で撮影できることが望ましい。
【0006】
しかしながら、特許文献1のレンズは、180度を超える画角で撮影することができない。180度を超える画角で撮影するためには、外装部材が前玉レンズに入射する180度以上の光束を妨げないように、外装部材を前玉レンズの頂点よりも撮像面側に配置し、外装部材に2つのレンズがそれぞれ入り込む開口部を設ける必要がある。この場合、レンズの位置ずれが生じると、開口部とレンズとの間の隙間が不均一となり、外観品位に問題が生じてしまう。また、防滴構造が設けられている場合、隙間の不均一が防塵防滴性能に悪影響を与えてしまう。隙間が不均一とならないように開口部とレンズを径篏合させると、レンズの位置ずれを矯正することになり、光学性能や2つの光学系間の相対関係に悪影響を与えてしまう。
【0007】
立体撮影用交換レンズでは、2つの開口部が並列に設けられているため、特許文献2の構造を使用すると画角がけられてしまう。また、特許文献2の構造を1部品として作製する場合、開口部が長くなるため、成型が困難であると共に、取り付けるフィルターが細長いため取り付けや取り外しが困難になる。
【0008】
本発明は、簡単な構造でフィルターの取り付けや取り外しが容易なレンズマウント及びそれを有するレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としてのレンズマウントは、第一光学系と第二光学系とを備えるレンズ装置を撮像装置に着脱可能に装着するためのレンズマウントであって、第一光学系に対応する第一の開口部と第二光学系に対応する第二の開口部とが形成されたカバー部材と、第一の開口部と第二の開口部の配列方向と直交する方向の一方の側に配置される第一の保持部材と他方の側に配置される第二の保持部材とを備え、第一の開口部と第二の開口部とを覆うフィルターを保持可能な保持部材と、カバー部材と保持部材との間に形成され、フィルターを挿入可能な溝とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構造でフィルターの取り付けや取り外しが容易なレンズマウント及びそれを有するレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るカメラシステムの概略構成図である。
【
図3】被写体側から見たレンズ装置の分解斜視図である。
【
図4】撮像面側から見たレンズ装置の分解斜視図である。
【
図9】各光軸と撮像素子上のイメージサークルとの位置関係を示す図である。
【
図10】右眼光学系で撮像した場合の左眼光学系の映り込みを示す図である。
【
図12】全周魚眼レンズの結像するイメージサークルを示す図である。
【
図15】フィルターホルダーを外した状態のマウントカバーの背面図である。
【
図16】フィルターを取り付けた状態のマウントカバーの斜視図である。
【
図17】フィルターを取り付けた状態のマウントカバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラシステム100の概略構成図である。カメラシステム100は、カメラ本体(撮像装置)110とレンズ装置(交換レンズ)200とを有し、立体映像を撮影可能である。
【0014】
カメラ本体110は、撮像素子111、A/D変換部112、画像処理部113、表示部114、操作部115、記憶部116、カメラ制御部117、及びカメラマウント122を有する。
【0015】
レンズ装置200は、右眼光学系(第一光学系)201R、左眼光学系(第二光学系)201L、レンズマウント(マウント部)202、及びレンズ制御部209を有し、カメラ本体110に着脱可能に装着される。二つの光学系は、並列に(対称に)配列され、撮像素子111に二つのイメージサークルが並列に結像するように構成されている。二つの光学系は、所定の距離(基線長)だけ離間して水平方向に並べられる。撮像面側(像側)から見て、右の右眼光学系201Rで結像する像を右眼用の動画又は静止画として記録し、左の左眼光学系201Lで結像する像を左眼用の動画又は静止画として記録する。動画又は静止画の再生時には、3DディスプレイやVRゴーグル等を用いて鑑賞することで、鑑賞者の右眼には右眼用の映像が映り、左眼には左眼用の映像が映る。このとき、基線長によって、右眼と左眼には視差のある映像が投影されるため、鑑賞者は立体感を得ることができる。このようにレンズ装置200は、二つの光学系により視差のある二つの像を結像可能な立体撮影用のレンズ装置である。
【0016】
レンズ装置200をレンズマウント202及びカメラマウント122を介してカメラ本体110に装着すると、カメラ制御部117とレンズ制御部209が電気的に接続される。
【0017】
被写体の像は、右眼光学系201Rを介して結像される右眼像と左眼光学系201Lを介して結像される左眼像が並んで撮像素子111に結像される。撮像素子111は、結像された被写体の像(光信号)をアナログの電気信号に変換する。A/D変換部112は、撮像素子111から出力されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号(画像信号)に変換する。画像処理部113は、A/D変換部112から出力されたデジタルの電気信号に対して種々の画像処理を行う。
【0018】
表示部114は、各種の情報を表示する。表示部114は、例えば電子ビューファインダや液晶パネルを用いることにより実現される。操作部115は、カメラシステム100に対する指示をユーザが行うためのユーザインタフェースとしての機能を有する。なお、表示部114がタッチパネルを有する場合、当該タッチパネルも操作部115の一つになる。
【0019】
記憶部116は、例えばROM、RAM、及びHDDを用いることにより実現され、画像処理部113で画像処理が行われた画像データ等の各種のデータやプログラムを記憶する。
【0020】
カメラ制御部117は、例えばCPUを用いることにより実現され、カメラシステム100全体を統括制御する。
【0021】
図2は、レンズ装置200の断面図である。
図3は、被写体側(物体側)から見たレンズ装置200の分解斜視図である。
図4は、撮像面側から見たレンズ装置200の分解斜視図である。
【0022】
以下の説明では、右眼光学系201Rについての記述には符号の末尾にRを付け、左眼光学系201Lについての記述には符号の末尾にLを付ける。右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの両方に共通する記述には、符号の末尾にRもLも付けない。右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの各光学系は、180度を超える画角で撮影することが可能である。各光学系は、反射面を2つずつ持つ屈曲光学系である。各光学系において、被写体側から順に、第1光軸OA1、第1光軸OA1と略直交する第2光軸OA2、第1光軸OA1と平行な第3光軸OA3が設定される。各光学系は、第1光軸OA1上に配置される被写体側のレンズ面211Aが凸形状である1群レンズ211、第2光軸OA2上に配置される2群レンズ221、第3光軸OA3上に配置される3群レンズ231a,231bを有する。また、各光学系は、第1光軸OA1の光束を折り曲げて第2光軸OA2に導く第1プリズム220、及び第2光軸OA2の光束を折り曲げて第3光軸OA3に導く第2プリズム230を有する。なお、以下の説明において、光軸方向とは、被写体側と撮像面側に延びる方向である、第1光軸OA1に平行な方向を示す。
【0023】
各光学系は、レンズトップベース300にビス締め等で固定される。レンズトップベース300は、レンズボトムベース301にビス締め等で固定される。レンズボトムベース301は、不図示の直進構造で回転方向の移動を規制されたまま、光軸方向へ移動可能に保持される。これにより、各光学系は一体となって光軸方向へ移動可能であるため、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは同時にフォーカス位置を調整することができる。
【0024】
図5は、レンズ装置200の正面図である。
図6は、
図5のA-A線断面図であり、1群レンズ211とその周辺の構造を示している。
図7は、レンズ装置200の変形例を示す図である。
図8は、
図5のB-B線断面図であり、レンズ装置200の1群レンズ211とその周辺の構造を示している。
【0025】
レンズ装置200は、外装カバー部材203及び前面外装部材(外装部材)204を有する。外装カバー部材203は、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lを収納する。前面外装部材204は、外装カバー部材203にビス締め固定され、外装カバー部材203とでレンズ装置200の前側を、蓋をするように収納することができる。
【0026】
前面外装部材204は、右眼光学系201Rの1群レンズ(第1レンズ)211Rと左眼光学系201Lの1群レンズ(第2レンズ)211Lのそれぞれが入り込む開口部(第2開口部)204Fを有する。前面外装部材204は、右眼光学系201R及び左眼光学系201Lの180度を超える有効画角FOVの有効光束を遮らない形状を有する。1群レンズ211R,211Lの被写体側のレンズ面211Aは、被写体側に有効光束の入射面である。レンズ面211Aのうち、有効入射面外径211Cよりも内側を有効入射面211Bとしたとき、画角が180度の光束は有効入射面211Bと光軸と略直交方向に水平に伸びる。画角が180度を超える光束は有効入射面211Bよりも撮像面側にあり、1群レンズ211から遠ざかるほど撮像面側に延びていく。したがって、画角が180度を超える光束を遮らないため、前面外装部材204及びカバー部材213は有効入射面211Bよりも撮像面側に配置される。
【0027】
ここで、
図5に示されるように、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの間の中心点Oより右眼光学系201R側を右眼領域20R、左眼光学系201L側を左眼領域20Lとする。前面外装部材204は、右眼領域20Rにおいて、左眼光学系201Lの最外有効光束(
図8の太点線部)を遮らないように、左眼光学系201Lの1群レンズ211Lから離れるほど撮像面側に近づく被写体側面204Aを有する。また、前面外装部材204は、左眼領域20Lにおいて、右眼光学系201Rの最外有効光束を遮らないように、右眼光学系201Rの1群レンズ211Rから離れるほど撮像面側に近づく被写体側面204Bを有する。ただし、右眼光学系201Rから見た1群レンズ211L及びその周辺や、左眼光学系201Lから見た1群レンズ211R及びその周辺は、互いの有効光束の一部を遮る領域も有する。
【0028】
前面外装部材204は、開口部204Fを形成するために、被写体側面204A,204Bよりも被写体側に突出する壁部204C,204Dを有する。壁部204Cは、右眼光学系201Rの1群レンズ211Rと略同軸の円弧形状を有し、右眼光学系201Rの有効光束を遮らないが、左眼光学系201Lの有効光束の一部を遮る。また、壁部204Dは、左眼光学系201Lの1群レンズ211Lと略同軸の円弧形状を有し、左眼光学系201Lの有効光束を遮らないが、右眼光学系201Rの有効光束の一部を遮る。
【0029】
図6に示されるように、レンズ装置200は、1群レンズ保持部材212及びカバー部材213を有する。1群レンズ保持部材212は、1群レンズ211R,211Lを保持する。カバー部材213は、1群レンズ211R,211Lの被写体側のレンズ面211Aの外周部を覆い、1群レンズ211R,211Lが入り込む開口部(第1開口部)213Aを有する。開口部213Aは、光軸方向から見て1群レンズ211R,211Lを露出させるように形成されている。
【0030】
1群レンズ211の有効入射面外径211Cよりも外周側には、レンズ面211Aとの境界211Dが存在する。境界211Dは、レンズ面211Aとそれ以外の表面、又は部材との境界である。例えば、境界211Dは、レンズ面211Aと1群レンズ211の側面211Eとの境界であってもよいし、
図7に示されるように、レンズ面211Aと1群レンズ211R,211Lをカシメ固定しているカシメ爪形状の内径先端部との境界であってもよい。
【0031】
カバー部材213は、境界211Dを覆っている。すなわち、カバー部材213の開口部213Aの内径は、境界211Dの径よりも小さい。開口部213Aの内径をΦA、境界211Dの径をΦBとするとき、片側のオーバーラップ量Xは以下の式(1)で表される。
【0032】
X=(ΦB-ΦA)/2 (1)
境界211Dを覆い隠すことで外観品位を向上させることができる。
【0033】
カバー部材213の内周の一部には、溝部213Bが形成されている。1群レンズ保持部材212の外周の一部には、外周側に延びる凸部212Aが形成されている。溝部213Bと凸部212Aは光軸方向から見て重ならない位置にあるときに組み付けられ、カバー部材213を回転させることで、溝部213Bに凸部212Aが入り込む。これにより、カバー部材213は、1群レンズ保持部材212と光軸方向において位置決めされる。なお、1群レンズ保持部材212に溝部が設けられ、カバー部材213に凸部が設けられてもよい。
【0034】
1群レンズ保持部材212とカバー部材213との間には、光軸方向と直交する方向(径方向)の所定のガタ(第1の隙間)Yが形成される。所定のガタYはカバー部材213のオーバーラップ量Xよりも小さいため、1群レンズ保持部材212又はカバー部材213が所定のガタYだけ移動した場合でもカバー部材213は境界211Dを覆うことができる。
【0035】
カバー部材213は、1群レンズ保持部材212と光軸方向において位置決めされるため、1群レンズ保持部材212と一体的に光軸方向へ移動可能である。カバー部材213の外径は、前面外装部材204の開口部204Fの内径と篏合している。該嵌合による前面外装部材204とカバー部材213との間に形成された光軸方向と直交する方向のガタ(第2の隙間)は、微小で、所定のガタYよりも小さい。
【0036】
カバー部材213は回転規制キー(突起部)213Cを有し、前面外装部材204は回転規制キー213Cに対応する回転規制溝(溝部)204Eを有する。これにより、前面外装部材204が組み込まれると、回転規制溝204Eに回転規制キー213Cが入り込み、カバー部材213は回転規制される。そのため、カバー部材213が回転して1群レンズ保持部材212から外れることを防止することができる。なお、カバー部材213に回転規制溝が設けられ、前面外装部材204に回転規制キーが設けられてもよい。すなわち、カバー部材213と前面外装部材204の一方が回転規制キーを有し、他方に回転溝が形成されていればよい。
【0037】
光軸方向シール部材214は、防滴防塵のための部材であり、カバー部材213の撮像面側の面(第1面)213Dと1群レンズ保持部材212の面213Dに対向する被写体側の面(第2面)212Bとの間に配置され、面213D,212Bの間を封止する。面213D及び面212Bは全周であることが望ましいが、一部でもよい。光軸方向シール部材214が光軸方向において挟み込まれることによって、カバー部材213と1群レンズ保持部材212は光軸方向へ付勢され、光軸方向のガタを減らすことができる。
【0038】
また、所定のガタYが保たれるように、光軸方向シール部材214は、光軸方向と直交する方向において、カバー部材213及び1群レンズ保持部材212と所定のガタYよりも大きいクリアランス(隙間)が形成された状態で配置される。光軸方向シール部材214は、例えばゴムやスポンジ等の弾性変形できる材質でできており、所定のガタYを吸収することができる。
【0039】
径方向シール部材215は、防滴防塵のための部材であり、カバー部材213と開口部204Fにより光軸方向と直交する方向において挟み込まれた状態で配置される。右眼光学系201R側の径方向シール部材215は左眼光学系201Lの有効光束を遮る位置に配置され、左眼光学系201L側の径方向シール部材215は右眼光学系201Rの有効光束を遮る位置に配置される。
【0040】
以上説明した構成により、外観品位を維持しつつ、防塵防滴性能及び光学性能を両立可能であり、180度を超える画角で立体撮影が可能なレンズ装置200を実現することができる。1群レンズ保持部材212を直接、前面外装部材204の開口部204Fで篏合させないため、1群レンズ保持部材212が製造誤差等の影響で位置ずれしてしまっても、その位置を矯正されることがない。そのため、光学性能や右眼光学系201Rと左眼光学系201Lとの相対誤差は、前面外装部材204を組み込んでも変化することはない。
【0041】
図9は、レンズ装置200の各光軸と撮像素子111上のイメージサークルとの位置関係を示す図である。
【0042】
撮像素子111上には、右眼光学系201Rによって結像する有効画角の右眼イメージサークルICRと、左眼光学系201Lによって結像する有効画角の左眼イメージサークルICLとが並列に像を結ぶ。イメージサークル同士がなるべく重ならないように、イメージサークルの直径ΦD2とイメージサークル同士の離間距離を設定するとよい。例えば、撮像素子111の受光範囲を中央で左右に半分に分けた領域のうち右領域の略中央に右眼イメージサークルICRの中心が来るように設定し、左領域の略中央に左眼イメージサークルICLの中心が来るように設定することが好ましい。
【0043】
図9は、レンズ装置200の各光軸と撮像素子111上のイメージサークルとの位置関係を示す図である。
【0044】
撮像素子111上には、右眼光学系201Rによって結像する有効画角の右眼イメージサークルICRと、左眼光学系201Lによって結像する有効画角の左眼イメージサークルICLとが並列に像を結ぶ。イメージサークル同士がなるべく重ならないように、イメージサークルの直径ΦD2とイメージサークル同士の離間距離を設定するとよい。例えば、撮像素子111の受光範囲を中央で左右に半分に分けた領域のうち右領域の略中央に右眼イメージサークルICRの中心が位置するように設定し、左領域の略中央に左眼イメージサークルICLの中心が位置するように設定することが好ましい。
【0045】
また、各光学系は、広角の魚眼レンズである。本実施形態では、各光学系は全周魚眼レンズになっており、撮像面に結像される像は180度を超える画角の範囲を写した円像になり、
図9に示されるように左右にそれぞれ2つの円像が結像される。右眼光学系201Rの第1光軸OA1Rと左眼光学系201Lの第1光軸OA1Lとの間の距離(基線長)L1が長いほど、鑑賞時の立体感が増す。例えば、撮像素子111のサイズを縦24mm×横36mm、イメージサークルの直径ΦD2を17mm、第3光軸OA3R,OA3Lの間の距離L2を18mm、第2光軸の長さを21mmとする。第2光軸が水平方向へ延びるように各光学系を配置すると、基線長L1は60mmとなり、成人の眼幅とほぼ等しくなる。また、レンズマウント202の直径ΦDを基線長L1よりも短く、かつ第3光軸間の距離L2をレンズマウント202の直径ΦDよりも短くすることで、第3光軸上に配置されるレンズをレンズマウント202の内側に配置することが可能となる。VRとして視聴する場合、立体感を得られる画角は120度程度と言われているが、視野が120度では違和感が残るため、180度まで画角を広げることが多い。本実施形態では有効画角が180度を超えるため、本実施形態のイメージサークルの直径ΦD2は画角が180度の範囲のイメージサークルの直径ΦD3よりも大きい。
【0046】
図10は、右眼光学系201Rで撮像した場合の左眼光学系201Lの映り込みを示す図である。前面外装部材204の壁部204Dは有効画角であるイメージサークルの直径ΦD2よりも内側に撮像されるが、180度の画角には撮像されず、画角が180度の範囲のイメージサークルの直径ΦD3よりも外側に撮像される。したがって、VRとして視聴する場合、180度の画角で視聴する際には影響を与えない。例えば、右眼光学系201Rの有効画角内には、左眼領域20Lの左眼光学系201Lの1群レンズ211L、カバー部材213、及び前面外装部材204の壁部204Dがあり、それらが
図10に示されるように実際の有効撮像範囲に映り込んでいる。1群レンズ211Lのみ180度画角のイメージサークル内(直径ΦD3よりも内側)に映り込んでいるが、カバー部材213や壁部204Dは180度画角のイメージサークルの外側にある。また、壁部204Dの映り込みは、1群レンズ211Lの頂点部よりも水平方向で見た場合でも外側(
図10で示す左側)に撮像されている。画像処理や画像編集の際に、仕様上必ず映り込んでしまう1群レンズ211Lの直線Zで示す頂点部よりも外側をカットすれば、壁部204Dの映り込みは影響を与えることはない。左眼光学系201Lで撮像した場合の右眼光学系201Rの映り込みに関しても同様である。以上説明したように、壁部204Dは有効画角内ではあるが、実際のVR用途としての撮像に関してはほとんど影響を与えないように配置されている。
【0047】
以下、レンズマウント202について説明する。
図11は、マウントカバー258の背面図である。
図12は、全周魚眼レンズの結像するイメージサークルを示す図である。
図13は、マウントカバー258の断面図である。
図14は、マウントカバー258の斜視図である。
図15は、フィルターホルダーを外した状態のマウントカバー258の背面図である。
図16は、フィルターを取り付けた状態のマウントカバー258の斜視図である。
図17は、フィルターを取り付けた状態のマウントカバー258のマウント中心を通る断面図である。
【0048】
マウントカバー258は、左右の最終レンズ面より被写体側に位置する第1のカバー部258aと、第1のカバー部258aの中央部に第1のカバー部258a及び左右の最終レンズ面より撮像面側に突出するように形成された第2のカバー部258bとを有する。第2のカバー部258bのうち左右の最終レンズ面に対向する位置には、最終レンズ面から射出された光が通る開口部(第一の開口部、第二の開口部)が内側に形成された左右の円筒壁部(第一の壁部、第二の壁部)258R,258Lが形成されている。円筒壁部258R,258Lは、カメラ本体110との装着面側に左右の最終レンズ面の外周を囲むように形成されている。円筒壁部258R,258Lの撮像面側の端部258cは、開口部の内側に突出した円弧エッジ形状に形成されている。端部258c及び円筒壁部258R,258Lは最終レンズと同軸位置の円になっており、端部258cが円筒壁部258R,258Lで反射した不要光をカットすることでゴーストの発生を防ぐことができる。端部258cのマウント中央内側には、Dカット部258fが設けられている。すなわち、第2のカバー部258bに形成された開口部は、円形状から隣接する開口部の側の領域(開口部の中心線より隣接する開口部の側の所定の弦から隣接する開口部の側の領域)がカットされた領域を備える。ここで、円形状とは、厳密に円形状だけでなく、実質的に円形状(略円形状)も含んでいるものとする。撮像面側の光軸を近接させるためにプリズム等の反射光学系を用いる場合、1回反射するだけの正規な光路以外に、プリズム内で複数回反射した光が撮像面まで到達してゴーストが発生しやすくなる。Dカット部258fは、左右の最終レンズ面の一方から射出された光が他方から射出された光によって撮像素子111上に形成されるイメージサークル内に入り込むクロストークが生じないように遮光する遮光壁としての役割を有する。
【0049】
なお、本実施形態では円筒壁部258R,258Lの一部に遮光壁であるDカット部258fを設けるが、円筒壁部を設けずに(すなわちマウントカバー258を設けずに)遮光壁のみを設けてもよい。
【0050】
また、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lが全周魚眼レンズである場合、各光学系の全周における不要光をカットすることができる。なお、前述したように、各光学系は全周魚眼レンズであってもよいし、全周魚眼レンズではない広角の魚眼レンズであってもよい。
【0051】
全周魚眼レンズ等の超広角のレンズは画角が広いため、レンズよりも被写体側にフィルターを配置することは困難である。本実施形態では、マウントカバー258側にフィルターを取り付ける。
図15に示されるように、ガイド部258hは、フィルターをガイドするための段差になっている。2つのフィルターホルダー(第一の保持部材、第二の保持部材)259を取り付けることで、マウントカバー258と2つのフィルターホルダー259のそれぞれとの間の隙間に、フィルターを挿入可能な溝部DTがガイド部258hに沿って上下対称に形成される。溝部DTにフィルターを挿入することで、2つのフィルターホルダー259はフィルターを保持可能である。2つのフィルターホルダー259は、上下対称形状(同一形状)であり、それぞれマウントカバー258に形成された開口部の配列方向と直交する方向の一方の側と他方の側に配置される。
【0052】
図17は、ガイド部258hと2つのフィルターホルダー259のそれぞれとの間の隙間にフィルターが差し込まれた状態を示している。フィルターを差し込むことにより、光学的な効果を撮影する画像に加えることができる。
【0053】
図16では、右眼側には青色のフィルター260R、左眼側には赤色のフィルター260Lが取り付けられている。左右どちら側からもフィルターを取り付け可能であるため、左眼と右眼に別々のフィルターを取り付けることができ、従来の3D画像を青赤眼鏡で再生するための画像を撮影することが可能である。
【0054】
フィルター260を溝部DTに差し込む際にストッパー258iを乗り越えて組み込むことにより、ストッパー258iの凸部によりフィルターが外れることを防止することができる。
【0055】
また、フィルター260が搭載される面よりも一段低くなっている凹部258gが4隅に4つ設けられている。このため、溝部DTとストッパー258iが近いにもかかわらず凹部258gが誘い込み形状となってガイド部258hにつながっているため、フィルター260を溝部DTに沿って容易に差し込むことができる。
【0056】
また、フィルター260の角部が凹部258gからはみ出すため、フィルター260の角部をピンセット等でつまむことにより容易に取り外し可能である。なお、左右どちらか一方から左右一体のフィルターを取り付けることも可能である。この場合、左右二つの光学系のフィルターを同一の1枚のフィルターでカバーするため、左右のフィルターの特性にばらつき等がなく、フィルターの取り付けや取り外しの手間も一度で済むというメリットがある。また、そのようにする場合、左右のストッパー258iのうち取り付ける側の方のみストッパー258iを短くする等の変形を行うと取り付けがより容易になる。また、取り付ける側のストッパーをなくすようにしてもよい。
【0057】
図12に示されるように、2つの光学系が1つの像面に結像することにより、通常の像面は上下と左右が逆に結像する。該像面を180°回転した状態が通常使用される画像の状態となるため、画像の左側に右眼光学系201Rの画像300Rが結像し、画像の右側に左眼光学系201Lの画像300Lが結像する。
【0058】
しかしながら、魚眼レンズのように画角の広いレンズを2つ並べることで左側のイメージサークルには右眼光学系201Rの画像が結像し、領域Aには左眼光学系201Lの1群レンズ211Lとその周りのカバー部材213及び外装部分が常に結像している。同様に、右側のイメージサークルには左眼光学系201Lの画像が結像し、領域Bには右眼光学系201Rの1群レンズ211Rとその周りのカバー部材213及び外装部分が常に結像している。したがって、左右の眼のいずれかのみでは完全な360°の像は写らないことになる。
【0059】
円筒壁部258R,258Lの端部258cによって全周魚眼レンズの有効光線は遮られることなく像面結像する。しかしながら、Dカット部258fは端部258cの円弧部分より凸形状になっているため、
図12の領域311,312では完全に像が消失するわけではないが、結像する光線の一部が遮られる。そのため、他の周辺部と比べて比較的に暗い画像になるいわゆるケラレ現象が生じる。ケラレ現象の発生している領域311,312はそれぞれ、右眼光学系の領域A、左眼光学系の領域Bに相当する。立体撮影用交換レンズにおいて、魚眼レンズ等の超広角な光学系を使用する場合、隣接する光学系の最も被写体側のレンズが写り込んでしまうという現象が生じる。この場合、隣接するレンズが写る領域は、他方の光学系でしか被写体が写らないため、立体視可能な像を得ることができない。したがって、隣接する光学系のレンズや外装が写ってしまうとその領域では立体視が不可能なため、それに相当する部分の他方の光学系の像にケラレが生じても、実用上問題がない。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組み合わせ、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
110 カメラ本体(撮像装置)
200 レンズ装置
201R 右眼光学系(第一光学系)
201L 左眼光学系(第二光学系)
202 レンズマウント
258 マウントカバー(カバー部材)
259 フィルターホルダー(保持部材)
260 フィルター
DT 溝部