(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189317
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】入れ子金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20221215BHJP
B29C 45/26 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097843
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】504122859
【氏名又は名称】株式会社 エムエス製作所
(71)【出願人】
【識別番号】518444473
【氏名又は名称】トヨタ紡織滋賀株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】東 幸秀
(72)【発明者】
【氏名】園田 佑二
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA33
4F202AD03
4F202AH16
4F202AJ02
4F202AJ12
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CD30
4F202CK42
4F202CK81
4F202CK90
4F202CN05
4F202CN27
4F202CN30
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来(ベリリウム銅合金(BeCu))の熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型を提案する。
【課題を解決するための手段】射出成形用の金型に組み込まれる入れ子金型20であって、入れ子金型20は、鋼材である硬質部材部40と、硬質部材部40に形成された空洞部44に装着される銅材である高熱伝導部材部50と有し、硬質部材部40と高熱伝導部材部50との隙間には、熱伝導性を有する充填部材70が充填されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用の金型に組み込まれる入れ子金型であって、
前記入れ子金型は、硬質部材部と、
前記硬質部材部に形成された空洞部に装着される高熱伝導部材部を有することを特徴とする入れ子金型。
【請求項2】
前記硬質部材部は、鋼材であり、前記高熱伝導部材部は、銅材である請求項1に記載の入れ子金型。
【請求項3】
前記硬質部材部と前記高熱伝導部材部との隙間には、熱伝導性を有する充填部材が充填されている請求項1又は請求項2に記載の入れ子金型。
【請求項4】
前記充填部材は、放熱グリースである請求項3に記載の入れ子金型。
【請求項5】
前記放熱グリースは、熱伝導性の粒子又は粉末を含有するシリコーンである請求項4に記載の入れ子金型。
【請求項6】
前記高熱伝導部材部は、前記硬質部材部の前記空洞部を形成するために用いられた放電加工用の銅材からなる放電マスターである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の入れ子金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂の射出成形用の金型に組み込まれる入れ子金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型を作製する際、例えば、金型形状に少しだけ凸形状が出ている場合などでは、この凸形状を一体で加工すると材料取りの効率が悪く、且つ一気に切削加工することが難しい。そこで、このような場合は、凸形状を別部品にすることにより、歩留まりや加工性を向上させることができる。この別部品(金型)を「入れ子(入れ子金型)」という。
【0003】
合成樹脂成形用の金型材料としては、一般的に高強度、多種類、且つ安価な鋼材が使用されている。しかし、金型においては、熱伝導性もまた重要な必須要素であり、鋼材は、非鉄金属金型に比べて高強度である反面、熱伝導率が格段に劣る。金型本体については、金型内に水が流れる冷却流路を形成し、金型を冷却することが可能であるが、入れ子金型の場合、上記の冷却流路を形成することが難しい場合が多い。そこで、入れ子金型において、鉄鋼の3~7倍の熱伝導率を有するベリリウム銅合金(BeCu)が多く使用されるようになった。
【0004】
入れ子金型を使用した樹脂の射出成形に関し、例えば、特許文献1には、以下の技術が開示されている。特許文献1は、
図1に示す合成樹脂製中空成形体である自動車のインテークマニホールドを製造する製造装置及び製造方法に関する技術である。なお、特許文献1には、入れ子金型を構成する材料に関する記載はない。
【0005】
このインテークマニホールド30は、一対の第1半割部材31、第2半割部材32と、この第2半割部材32の端部に設けられる箱状の第3半割部材33とを備えて構成され、各衝合部31a、32a、33aが接合されて製造される。
【0006】
図2に示すように、射出成形装置1は、固定型2(第1の金型)と可動型3(第2の金型)を備えている。固定型2は、上記第1半割部材31を成形するための雌型部4と、上記第2半割部材32を成形するための雄型部5と、上記第3半割部材33を成形するための雄型部6とを有している。これら雌型部4、雄型部5及び雄型部6は、型開閉方向Pと直交する方向(図中上下方向)に沿って配列されている。また、固定型2側は、溶融樹脂を射出可能な一次射出ノズル7及び二次射出ノズル8を備えている。
【0007】
上記可動型3は、図示しない走行手段によって型開閉方向Pに走行可能な可動型本体10と、この可動型本体10に設けられる突出し機構A、旋回機構B及びスライド機構Cとを備えている。スライド機構Cは、可動型本体10に型開閉方向Pと直交する方向(図中上下方向)へスライド自在に支持されるスライド部材11と、このスライド部材11をスライドさせる駆動シリンダ12とを有している。
【0008】
入れ子金型20は、可動型3の旋回機構Bの旋回プレート15上に載置された回転子22に組み込まれている。また、入れ子金型20は、型締めされた
図2の状態において、対向する固定型2の雄型部5に当接する。
【0009】
一次射出時の型締め状態で、固定型2の雌型部4とスライド部材11の雄型部17との間に第1半割部材31用のキャビティが形成され、また、固定型2の雄型部5と突出しプレート13の雌型部18と回転子22の入れ子金型20との間に第2半割部材32用のキャビティが形成され、さらに、固定型2の雄型部6と回転子23の雌型部19との間には第3半割部材33用のキャビティが形成されている。この状態で、一次射出ノズル7から射出される溶融樹脂がランナー9aを介して上記各キャビティに供給され、第1半割部材31、第2半割部材32、第3半割部材33が射出成形される。
【0010】
型開きすると、固定型2の雌型部4に第1半割部材31が保持され、また、突出しプレート13の雌型部18及び回転子22の入れ子金型20に第2半割部材32が保持され、さらに、回転子23の雌型部19に第3半割部材33が保持される。
【0011】
その後、駆動モータ16の作用で旋回プレート15が所定角度(例えば、180度)で旋回され、回転子23の雌型部19に保持された第3半割部材33を第2半割部材32の下端部と型開閉方向Pに対向させ、さらに、駆動シリンダ12の作用でスライド部材11を上方に移動させると、第1半割部材31、第2半割部材32、第3半割部材33が型開閉方向Pに対向することとなる。
【0012】
そして、
図3に示すように、二次射出を行うために再度型閉めすると、第1半割部材31、第2半割部材32、第3半割部材33の各衝合部31a、32a、33aが衝合され、各衝合部31a、32a、33aの間に二次射出ノズル8より射出される溶融樹脂がランナー9bを介して供給され、第1半割部材31、第2半割部材32、第3半割部材33の各衝合部31a、32a、33aが接合されて
図1のインテークマニホールド30が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、ベリリウム銅合金(BeCu)は鋼材に比較して熱伝導率は良いが、強度の面で劣るので、鋼材を用いた場合に比較して射出成形時の摩耗が大きい。特に、特許文献1のように型締めされた状態において、入れ子金型が対向する金型に当接する場合は、当接に伴い摩耗の程度は大きくなる。
【0015】
例えば、上記の特許文献1では、入れ子金型20において、対向する金型面との当接部分の摩耗の進行は、インテークマニホールド30の空気流路の障害になるバリとなって現れる。そのため、入れ子金型20の摩耗対策として定期的な溶接修理や交換等を行うことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、従来(ベリリウム銅合金(BeCu))の熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型を提案するものであり、請求項1の本発明は、射出成形用の金型に組み込まれる入れ子金型であって、入れ子金型は、硬質部材部と、硬質部材部に形成された空洞部に装着される高熱伝導部材部を有することを特徴とする入れ子金型である。
【0017】
請求項1の本発明では、入れ子金型は、硬質部材部と、硬質部材部に形成された空洞部に装着される高熱伝導部材部を有するので、硬質部材部によって摩耗を抑制し、硬質部材部に形成された空洞部に高熱伝導部材部を装着することにより冷却を素早く行うことができる。その結果、熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型を作製することができる。
【0018】
ここで、硬質部材部とは、高熱伝導部材部より硬度の大きい部材で形成されたものをいい、高熱伝導部材部とは、硬質部材部より熱伝導性に優れた部材で形成されたものをいう。
【0019】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、硬質部材部は、鋼材であり、高熱伝導部材部は、銅材である入れ子金型である。
【0020】
請求項2の本発明では、硬質部材部は、鋼材であるので高強度で安価である。また、高熱伝導部材部は、銅材であるので、熱伝導率が高く熱伝導性が極めて良好である。その結果、熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型を作製することができる。
【0021】
請求項3の本発明は、請求項1または請求項2の発明において、硬質部材部と高熱伝導部材部との隙間には、熱伝導性を有する充填部材が充填されている入れ子金型である。
【0022】
請求項3の本発明では、硬質部材部と高熱伝導部材部との隙間には、熱伝導性を有する充填部材が充填されているので、硬質部材部と高熱伝導部材部との隙間を、熱伝導性を有する充填部材によって連結することができ、硬質部材部から高熱伝導部材部への熱の伝達をスムーズに行うことができる。その結果、熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型を作製することができる。
【0023】
請求項4の本発明は、請求項3の発明において、前記充填部材は、放熱グリースである入れ子金型である。
【0024】
請求項4の本発明では、充填部材は、放熱グリースである入れ子金型であるので、放熱グリースが硬質部材部、高熱伝導部材部の形状に順応してその間の隙間を埋めることができ、硬質部材部と高熱伝導部材部との間の熱的連結を確実に行うことができる。その結果、熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型を作製することができる。
【0025】
請求項5の本発明は、請求項4の発明において、熱伝導性の粒子又は粉末を含有するシリコーンである入れ子金型である。
【0026】
請求項5の本発明では、熱伝導性の粒子又は粉末を含有するシリコーンである入れ子金型であるので、熱伝導性の粒子又は粉末により硬質部材部と高熱伝導部材部との間の熱伝導を確実に行うことができると共に、シリコーンは、耐熱性が高く、合成樹脂の射出成形時の温度においても劣化し難い。その結果、熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型を作製することができる。
【0027】
請求項6の本発明は、請求項1から請求項5の発明において、高熱伝導部材部は、硬質部材部部の空洞部を形成するために用いられた放電加工用の銅材からなる放電マスターである入れ子金型である。
【0028】
金型を加工する方法として放電加工がある。放電加工は、電極を金型部品に近づけ火花を飛ばすことにより金型を削る技術であり、金型を電極(放電マスター)の形状に仕上げることが可能な加工技術である。また、電極には銅材が使用される。これは、消耗率が0.001%と低く、通電性に優れているので効率良く加工することができるためである。なお、加工後の電極は、廃棄されるのが一般的である。
【0029】
請求項6の本発明では、高熱伝導部材部は、硬質部材部の空洞部を形成するために用いられた放電加工用の銅材からなる電極(放電マスター)であるので、硬質部材部の空洞部を高熱伝導部材部の形状に精度よく加工することができ、空洞部に放電マスターを装着することにより、硬質部材部から高熱伝導部材部への熱伝導を効率よく行うことができる。
【0030】
また、放熱グリースを使用する場合も、その使用量も少なくできる。さらに、電極(放電マスター)を有効活用することができる。したがって、冷却効率と耐久性に優れ、安価な入れ子金型を作製することができる。
【発明の効果】
【0031】
射出成形用の金型に組み込まれる入れ子金型であって、入れ子金型は、硬質部材部と、硬質部材部に形成された空洞部に装着される高熱伝導部材部を有するので、硬質部材部によって摩耗を抑制し、硬質部材部に形成された空洞部に高熱伝導部材部を装着することにより冷却を素早く行うことができる。その結果、熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】射出成形装置の一次射出時の型締め状態を示す側断面図である。
【
図3】射出成形装置の二次射出時の型締め状態を示す側断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の入れ子金型の上面図である。
【
図6】本発明の実施形態の入れ子金型の作製を説明する模式断面図であり、(a)は放電加工時、(b)は放電加工後、(c)は放電マスター(電極)の装着後である。
【
図7】本発明の効果を説明する成形回数と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について
図1から
図6に基づいて説明する。
図1は、インテークマニホールド30の斜視図であり、インテークマニホールド30は、一対の第1半割部材31、第2半割部材32と、この第2半割部材32の端部に設けられる箱状の第3半割部材33とを備えて構成されている。使用した樹脂材料は、ポリアミド(PA)樹脂である。なお、ガラス繊維強化のPAを使用してもよく、他の材料を使用してもよい。なお、インテークマニホールドは、
図1の形状には限定されない。
【0034】
図2は、射出成形装置1の一次射出時の型締め状態を示す側断面図であり、
図3は、射出成形装置1の二次射出時の型締め状態を示す側断面図である。射出成形装置1を用いたインテークマニホールド30の成形方法については、背景技術において説明した通りである。
【0035】
図4は、本発明の実施形態の入れ子金型20の上面図であり、
図5は、
図4のA-A断面図である。
図4から
図6に示すように、入れ子金型20は、硬質部材部40、高熱伝導部材部50と硬質部材部40、高熱伝導部材部50の間を埋める充填部材70から構成される。
【0036】
硬質部材部40は、平坦な上面に円柱状に突出する凸部43が形成された本体部41と、図示しないボルトを用いて射出成形装置1の旋回プレート15の回転子22に取付けるための取付部42から構成されている。取付部42には、凸部43側が広径の2段階の直径を有する孔部45、46が形成されている。
【0037】
また、本体部41には、凸部43とは反対の下面に開口部47を有する空洞部44(
図6(b))が形成されている。空洞部44の形成方法については、後に詳述する。
【0038】
凸部43が、一次射出成形時に対向する固定型2の雄型部5に当接し、固定型2の雌型部4と雄型部5の間に溶融樹脂が一次射出ノズル7から供給され、円柱形状の空気流路を有するフランジ部34を有する第2半割部材32が成形される。
【0039】
入れ子金型20の硬質部材部40は、鋼材であり、本実施形態では、鋼材の中でも熱伝導率の高い大同特殊鋼(株)製のDHA-Thermoを使用した。なお、他の鋼材を使用してもよい。
【0040】
次に、高熱伝導部材部50と、硬質部材部40の空洞部44の形成方法について
図6に基づいて説明する。硬質部材部40の空洞部44は、放電加工によって形成した。上記の通り、放電加工は、電極を金型部品に近づけ火花を飛ばすことにより金型を削る技術であり、金型を電極(放電マスター)の形状に仕上げることが可能な加工技術である。
【0041】
まず、DHA-Thermoを材料とし、硬質部材部40の外形を切削や研削によって作製する。その後に、取付部42に、凸部43側が広径の2段階の直径を有する孔部45、46を形成する。
【0042】
次に、硬質部材部40に空洞部44を形成するための放電マスターである電極60を、タフピッチ銅(JIS 合金番号 C1100)を材料とし、左記材料を切削や研削することによって作製する。ここで、タフピッチ銅とは、銅鉱石から製造した粗銅を電気分解により精製したものである。なお、この電極60が後の高熱伝導部材部50となる。
【0043】
次に、
図6(a)に示すように、硬質部材部40の開口部47側と電極60を対峙させ、水または石油などの液体の中で、向かい合った硬質部材部40と電極60との間に電圧を印加し、火花を断続的に飛ばし、非接触の状態で電極60の形状を硬質部材部40に彫るように加工する、すなわち、形彫放電加工を行う。
【0044】
その結果、放電加工後は、
図6(b)に示すように、電極60の形状が、硬質部材部40の空洞部44として形成される。なお、放電加工の性質上、硬質部材部40の空洞部44は、電極60よりも0.1mm程度大きく形成される。また、
図6(b)において、放電加工後の本体部41の肉厚tは3mmである。本体部41の肉厚を3mm程度にすることにより、硬質部材部40の強度を確保するとともに熱伝導の低下を抑制することができる。
【0045】
次に、高熱伝導部材部50(電極60)の表面に充填部材70を塗布した後、高熱伝導部材部50を硬質部材部40の空洞部44に挿入して装着し、高熱伝導部材部50に直径が孔部46と同じ孔部61を形成する(
図6(c))。これにより、入れ子金型20が完成する。本実施形態では、充填部材70として、シリコーンオイルを基油に、熱伝導性のよいアルミナの粉末を配合したグリース状である信越化学工業(株)製のG-779を使用した。なお、左記の材料には限定されない。
【0046】
そして、入れ子金型20を図示しないボルトを用いて回転子22に取付け、一次射出成形を行うと、凸部43が、固定型2に当接し、円柱形状の空気流路を有するフランジ部34を有する第2半割部材32が成形される。
【0047】
図7は、本発明の効果を説明するインテークマニホールド30の成形回数と入れ子金型20の表面温度との関係を示すグラフである。測定点は、
図4の凸部43の近傍の部位Xである。また、温度の測定は、一次射出成形の型締め前に実施した。
図7において、〇及び実線は、本実施形態を示し、▲及び破線は、ベリリウム銅合金(BeCu)を使用した従来の場合であり、■及び一点鎖線は、比較例として、入れ子金型20を本体部41と同じDHA-Thermoを使用し、凸部43と反対側の面に直方体形状の凹部を放熱部として数箇所形成した場合である。
【0048】
図7から明らかなように、入れ子金型20を本体部41と同じDHA-Thermoを使用して作製した場合(■)は、1回目の成形後から温度が十分低下せず、3回目の成形において、成形後の合成樹脂に固化不良が発生した。一方、本実施形態の場合(〇)は、従来(▲)以上の冷却効果を有している。
【0049】
したがって、熱伝導性を損なわず、耐摩耗性に優れた入れ子金型20を作製することができるので、入れ子金型20の溶接修理や交換等の保全回数とそれに伴う費用の発生を大幅に削減することができる。また、電極60(放電マスター)を有効利用できるので、入れ子金型20を安価に作製することができる。
【0050】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、上記の実施形態では、型締め時に入れ子金型が対向する金型に当接する射出成形について説明したが、本発明は、型締め時に、対向する金型に当接しない入れ子金型にも適用することができる。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、射出成形体を車両の自動車のインテークマニホールドとし、射出成形装置を背景技術と同じ装置として説明したが、自動車のインテークマニホールド以外の射出成形体にも適用でき、さらには、
図2の形態以外の射出成形装置にも適用することができる。
【0053】
例えば、上記の実施形態では、電極60としてタフピッチ銅を使用したが、テルル(Te)を添加して被削性を改善した快削銅(JIS 合金番号 C1450)や真空溶着鋳造などにより酸素残留量を低下させた無酸素銅(JIS 合金番号 C1020)など他の銅材を使用してもよい。
【0054】
例えば、上記の実施形態では、硬質部材部40と高熱伝導部材部50との間を充填部材70で埋めたが、充填部材70を使用しなくてもよい。ただし、充填部材70を使用しない場合は、硬質部材部40と高熱伝導部材部50との間に非常に薄い空気層が形成されるので、充填部材70を使用する場合に比較して冷却効率が少し低下する。
【0055】
例えば、上記の実施形態では、硬質部材部40に形成した空洞部44に放電加工時に使用した放電マスターである電極を装着して高熱伝導部材部50としたが、電極60ではなく、別に加工した高熱伝導部材部を装着して入れ子金型20を作製してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 射出成形装置
20 入れ子型
30 インテークマニホールド
34 フランジ
40 硬質部材部
41 本体部
42 取付部
43 凸部
44 空洞部
47 開口部
50 高熱伝導部材部
60 電極(放電マスター)
61 孔部
70 充填部材